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【片田舎のおっさん剣聖II】合成獣とは何? 4体のキマイラはどれほど強い?モーリスが送り込んだ禁忌

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合成獣は自然に生まれた魔物ではなく、複数の獣やモンスターを人為的につなぎ合わせ、魔力で動かした禁忌の存在だった。
ディルマハカには4体が現れ、ヴェルデアピス傭兵団のクリウでも剣を通せないほど硬く、ベリルが過去に戦ったゼノ・グレイブルより二回りほど大きい個体までいる。
しかも動く死体の騒ぎが収まりきる前に投入されており、モーリス教皇側が王族だけでなく教都全体へ被害を広げるため用意した「次の一手」だったことが分かる。

※ここからは『片田舎のおっさん、剣聖になるII』第10話以降の内容と、原作で明かされる合成獣の情報に触れます。

  1. 第1章 合成獣とは何?自然の魔物ではなく人為的に作られた禁忌
    1. 獣やモンスターをつなぎ合わせ、魔力で無理やり動かした異形だった
    2. 動く死体と似ているのは魔力で身体を動かす点、違うのは最初から戦闘用に組まれていること
  2. 第2章 なぜ合成獣は禁忌とされている?
    1. 生き物を継ぎ接ぎして魔力で動かす行為そのものが、通常の魔術から大きく外れている
    2. これほど強いなら普通の軍隊が使いそうなのに、普及していないこと自体が作成の難しさを示している
  3. 第3章 合成獣は何体現れる?ディルマハカ外縁部に4体
    1. 動く死体の混乱が続く中、被害はすでに教都の外縁部へ広がっていた
    2. 4体が中心部へ来ていなかったのは足止めされたからではなく、外縁部で人間を弄んでいたから
  4. 第4章 合成獣はどれほど強い?クリウの剣すら通らない
    1. 「大きい・速い・硬い」が同時にそろい、普通の剣士では傷すら付けにくい
    2. ベリルの新しい剣とハノイの大剣だからこそ、正面から勝負できる可能性があった
  5. 第5章 ベリルは合成獣をどう倒した?硬い外皮を削り、姿勢を崩して頭部へ届かせた
    1. ゼノ・グレイブル由来の剣でも一撃では斬れず、まず前脚を壊す戦いへ切り替えた
    2. 本体を倒した直後、尾の大蛇だけが独立して襲い掛かり、ロゼがベリルを救った
  6. 第6章 誰が4体の合成獣と戦った?ベリルたちは戦力を分けて各個撃破した
    1. ベリル・アリューシア・ハノイとプリム・スレナ側へ分かれ、四体を同時に市街へ進ませなかった
    2. アリューシア戦ではベリルが前脚を断ち、ロゼが大蛇を抑え、最後はアリューシアが咽喉を貫いた
  7. 第7章 ※原作ネタバレ 合成獣を送り込んだのはモーリス教皇側
    1. 大聖堂の動く死体が止められた後、次の一手として4体の合成獣が投入された
    2. ホワイト・メイデンがモーリスの名を出し、合成獣も大聖堂襲撃と同じ線につながる

第1章 合成獣とは何?自然の魔物ではなく人為的に作られた禁忌

獣やモンスターをつなぎ合わせ、魔力で無理やり動かした異形だった

合成獣は、
森や山で自然に生まれた魔物ではない。
複数の獣やモンスターを人為的につなぎ合わせ、
さらに魔力を使って身体を動かすよう作られた存在。
だから通常の魔物とは、誕生の仕方そのものが違う。

大聖堂襲撃を抜けた後、
ハノイから「合成獣が投入される」と聞いたグレン王子は、
その言葉へすぐ反応する。
王子自身も過去の犯罪記録で名称を知っており、
古くから禁忌として扱われてきた存在だと説明する。

単純に二種類の動物を掛け合わせた生物ではない。
別々の生き物の肉体を継ぎ合わせ、
本来一つではない身体を魔力で成立させている。
自然界の生態系から生まれた魔物とは、
根本的に成り立ちが異なる。

実際にベリルが後に目撃する個体も、
一種類の魔物として説明できる姿ではない。
巨大な胴体へ複数の特徴が混ざり、
一見しただけでも普通の獣とは思えない。
身体の一部から別の生物のような部位まで動き、
攻撃方法も一方向ではなかった。

しかも四体とも、
同じ形の量産品というわけではない。
継ぎ合わせた素材によって姿や攻撃方法が変わるため、
目の前の一体を見ただけでは、
次の個体が何をしてくるかまで予測しにくい。

ベリルが過去に戦ったゼノ・グレイブルのような魔物なら、
その生物が持つ牙、
爪、
身体能力を前提に戦い方を考えられる。
ところが合成獣は、
複数の生物の特徴が一つの身体へ押し込まれている。

巨大な身体へ正面から集中していると、
別の部位が突然攻撃へ転じる。
硬い表皮を突破したと思っても、
それだけで完全に戦闘能力を奪えるとは限らない。
普通の大型魔物より「どこまで壊せば止まるか」が読みづらい相手だった。

動く死体と似ているのは魔力で身体を動かす点、違うのは最初から戦闘用に組まれていること

合成獣について聞いたベリルが連想するのが、
直前まで大聖堂で戦っていた「動く死体」。
プリムの説明では、
あちらも死体へ魔力を纏わせ、
外から身体を動かしている存在だった。

二つには確かに共通点がある。
自然な生命活動だけでは動かない身体へ、
魔力という外部の力を加え、
本来なら成立しない状態のまま行動させている。
生命を人為的に作り替える発想そのものが近い。

しかし戦力として見ると、
合成獣は動く死体よりはるかに危険だった。
動く死体は大量投入することで脅威になるが、
一体だけならベリルやアリューシアが対処できる。
脚や胴体を断てば、物理的に前進を止められる。

一方の合成獣は、
一体ごとの戦闘力そのものが高い。
後に実際に戦ったクリウは、
巨大な身体に加えて速度まであり、
さらに自分の剣が十分に通らないほど硬いと報告している。

つまり大聖堂で使われた死体が「数で押す駒」なら、
合成獣は単体で戦線を壊せる大型戦力に近い。
同じように魔力で異常な身体を成立させていても、
黒幕側が与えている役割はまったく違う。

しかも合成獣が出てくるのは、
動く死体と暗殺者による攻撃が失敗した後。
王族が大聖堂から逃げたにもかかわらず、
襲撃側にはまだ四体もの異形が残されている。

この順番を見ると、
合成獣が偶然教都へ現れた魔物ではないことも分かる。
大聖堂での物量攻撃の後へ投入する、
さらに強力な戦力として用意されていた。
そのため「何の魔物なのか」だけでなく、
誰が何のために作ったのかまでが重要になる存在なのである。

第2章 なぜ合成獣は禁忌とされている?

生き物を継ぎ接ぎして魔力で動かす行為そのものが、通常の魔術から大きく外れている

グレン王子が合成獣を知っていたのは、
一般的な魔物図鑑を読んだからではない。
彼が過去に見たのは犯罪記録に近い資料。
つまりスフェンドヤードバニアでも、
通常の魔術研究として公認されている存在ではなかった。

問題は、
強い魔物を飼い慣らして使うこととは違う点にある。
合成獣は元から存在する生物を利用するのではなく、
複数の肉体へ人間が手を加え、
一つの生き物として成立させるところから始まる。

さらに、
つなぎ合わせただけでは身体は正常に機能しない。
本来別々の生物だった部位を、
魔力によって強引に動かしている。
生物の身体そのものを材料として扱う技術だから、
普通の召喚魔術や使役とは性質が違う。

この異常さは、
第1期のレビオス司教事件と比べると見えやすい。
レビオスは死者蘇生の奇跡を再現しようとして、
集めた死体へ魔力を与え、
身体だけを動かすところまで踏み込んだ。

その結果、
ミュイの姉と考えられる遺体まで利用され、
本人の意思とは無関係にベリルへ襲い掛かる。
人間の身体を材料として扱った時点で、
ベリルも強い嫌悪を示している。

合成獣は、
その発想をさらに別方向へ進めたような存在。
死体一つを動かすだけではなく、
複数の獣や魔物から使える部分を集め、
巨大な戦闘個体として組み上げる。

つまり、
「自然に存在する危険な魔物」だから禁じられたのではない。
人の手で生命の形を壊し、
別の形へ組み直し、
さらに魔力で兵器のように動かす。
その過程そのものが禁忌なのである。

これほど強いなら普通の軍隊が使いそうなのに、普及していないこと自体が作成の難しさを示している

合成獣について聞いたベリルは、
別の疑問も持つ。
これほど強力な存在を自由に作れるなら、
なぜ各国の軍隊が普通に利用していないのか。
戦争で使えば、大きな戦力になるはずだからである。

ベリルが知る魔術師の代表がルーシー。
レベリス王国でも最高峰に近い魔術師で、
魔装具や特殊な魔術の知識も豊富。
それほどの人物が軍事利用していない以上、
単に術式を知れば誰でも作れるものではないと考えられる。

まず素材が必要になる。
巨大な身体を作るなら、
複数の大型獣や魔物を確保しなければならない。
それぞれを捕獲し、
身体を加工し、
一つの個体としてつなぎ合わせるだけでも大仕事になる。

さらに完成した身体を、
魔力で正常に動かす技術も必要。
単純に魔力を注げば立ち上がるなら、
第1期のレビオス事件以降、
同じような存在がもっと広く使われていてもおかしくない。

そして今回現れるのは一体ではなく四体。
ディルマハカ外縁部へ、
ほぼ同時に複数の合成獣が投入される。
これだけでも黒幕側が、
短期間の思い付きで準備したわけではないことが分かる。

素材集め。
加工。
魔力による維持。
さらに四体を運び、
王族襲撃と同じ時刻へ合わせて配置する。
作るだけではなく、
実戦投入まで含めて相当な準備が必要だったはずである。

しかも大聖堂では、
その前段階として大量の動く死体まで使われている。
人間の死体を操り、
次には複数の生物をつなぎ合わせた合成獣を投入する。
黒幕側が生命を戦力の材料として扱っている点は共通している。

だから合成獣が禁忌とされるのは、
単に「強すぎて危険」だからではない。
作り方そのものが生命を大きく損ない、
しかも完成すれば市街地へ放つ兵器として利用できる。

自然の魔物なら、
危険でもその生物が生きるために行動している。
しかし合成獣は、
誰かが目的を持って作り、
誰かの都合で戦場へ送り込む。
ディルマハカへ現れた四体は、
その禁忌が実際に王族襲撃の戦力へ転用された証拠だったのである。

第3章 合成獣は何体現れる?ディルマハカ外縁部に4体

動く死体の混乱が続く中、被害はすでに教都の外縁部へ広がっていた

ベリルたちが合成獣のもとへ向かう時、
ディルマハカ中心部は意外なほど形を保っている。
大聖堂や宮殿へ続く大通りもまだ使え、
市民の多くは建物や避難所へ逃げ込んでいた。
一見すると、合成獣の被害はまだ小さいように見えた。

しかし馬を走らせて外縁部へ近づくほど、
景色が急激に変わっていく。
道沿いの建物には負傷者が集まり、
その傍らで治療や介抱を続ける者がいる。
中心部が無事なのは被害が軽いからではなく、
被害の中心がまだ外側へ偏っていただけだった。

ベリルも最初は、
合成獣の足が遅いのか、
教会騎士がうまく食い止めているのかと考える。
ところが外縁部へ進むと、
その楽観はすぐ消える。
現地では教会騎士が次々と傷つき、避難民まで増えていた。

途中で一行を呼び止めたのが、
ヴェルデアピス傭兵団のクリウ。
青髪の剣士で、
第8話ではアリューシアと渡り合えるほどの力量を見せた人物である。
そのクリウが、馬と並走しながら合成獣の危険を訴える。

クリウが実際に戦って分かったのは、
単純に巨大というだけではないこと。
動きも速く、
さらに外皮が異常に硬い。
自分の剣ではまともに刃が通らず、
仕留め切れないため撤退してきたと告げる。

その報告を聞いたベリルも、
合成獣への警戒を一段上げる。
アリューシア級の剣士と戦えるクリウが、
正面から倒すより一度引くことを選んだ。
教会騎士が苦戦しているだけならまだしも、
傭兵団の手練れまで押し返されていた。

そして大通りの先、
視界が開けたところでベリルたちは、
ようやく合成獣の姿を直接確認する。
遠目でも分かるほど巨大な異形が、
一定の距離を置きながら複数暴れている。
確認できた数は四体だった。

ベリルが比較に出したのは、
以前戦った巨大モンスター、ゼノ・グレイブル。
今回の合成獣は、
目測でもそれより二回りほど大きい。
大型魔物を見慣れているベリルでも、
最初に大きさへ意識を持っていかれるほどだった。

4体が中心部へ来ていなかったのは足止めされたからではなく、外縁部で人間を弄んでいたから

四体もの合成獣がいるのに、
なぜディルマハカ中心部がまだ崩壊していないのか。
ベリルは最初、
教会騎士が命懸けで進路を止めている可能性を考えていた。
ところが現場へ着くと、
もっと異常な光景が待っている。

合成獣の一体は、
瀕死になった教会騎士をその場で弄んでいた。
重装の鎧を着ていても、
巨大な爪や牙の前では十分な防御にならない。
腕を失い、脚を折られた騎士を、
すぐ殺すでも食うでもなく振り回している。

普通の魔物なら、
邪魔な相手を排除するか、
食料として捕食する。
ところが合成獣は、
倒した相手を必要以上に痛めつけている。
だから中心部へ進んでいなかったのであって、
足止めに成功していたわけではなかった。

その光景には、
普段ベリルと価値観が合わないハノイまで嫌悪を示す。
戦場で人の死を割り切るハノイですら、
目の前の扱いには不快感を隠さない。
それほど合成獣の行動は、
普通の野生動物や魔物とは違っていた。

しかも四体は、
一か所へ固まっているわけではない。
ある程度距離を取りながら別々に暴れているため、
一体へ全戦力を集めれば、
残り三体が市街へ進む危険がある。
逆に四体をまとめて相手にすれば、乱戦になって不利になる。

そこでハノイは、
孤立している一体を自分とプリムで受け持つと決める。
残り三体に対しては、
ベリルとアリューシアも分かれて向かう必要が出てくる。
巨大な敵を一体ずつ討つしかない状況だった。

合成獣が四体いるという情報は、
単なる数の問題ではない。
四方向へ戦力を分けなければ、
無防備になった場所から市民被害が増えていく。
ディルマハカ全体を守るには、
少人数で一体ずつ止めるしかなかったのである。

第4章 合成獣はどれほど強い?クリウの剣すら通らない

「大きい・速い・硬い」が同時にそろい、普通の剣士では傷すら付けにくい

合成獣の強さを最も分かりやすく示すのが、
実際に交戦したクリウの報告だった。
彼が強調したのは、
大きさだけではない。
巨大なのに速く、
さらに剣が通らないほど硬いという三つの特徴だった。

クリウは、
第8話の遠征団襲撃でアリューシアと戦った実力者。
一般の騎士より遥かに強く、
馬と短時間並走できるほど身体能力も高い。
その彼が自分の剣では厳しいと判断している時点で、
並の相手ではないことが分かる。

特に問題になるのが硬さ。
ベリルも、
剣は技術だけで何でも斬れるわけではないと考える。
人間相手なら刃筋や間合いで差を作れるが、
巨大魔物の厚い皮や筋肉になると、
武器そのものの性能が大きく影響する。

これは過去のゼノ・グレイブル戦でも同じだった。
当時ベリルが持っていた普通の剣では、
柔らかい部分を除いてまともに刃が通らない。
巨大な身体を斬るには、
どれだけ剣技が優れていても限界があった。

今回の合成獣が、
もしゼノ・グレイブル以上に硬ければ、
アリューシアの武器にも問題が出る。
彼女が使い続けているのは、
かつてビデン村の道場を卒業する時に
ベリルから餞別として渡された剣だった。

アリューシア本人の技量は、
レベリオ騎士団長まで上り詰めるほど高い。
しかし武器は、
大型魔物専用に作られた特別な剣ではない。
相手の装甲が極端に硬ければ、
剣士の技量だけでは補えない差が出てくる。

そのためクリウの報告を聞いたアリューシアも、
自分の剣が通るかを気にする。
普段の人間同士の戦いなら、
技量で圧倒できる彼女ですら、
今回は武器性能そのものを心配しなければならなかった。

ベリルの新しい剣とハノイの大剣だからこそ、正面から勝負できる可能性があった

一方、
ベリルには今回の合成獣へ通用しそうな武器がある。
現在使っている剣は、
過去に倒したゼノ・グレイブルの骨や爪を素材に使い、
さらにエルヴン鋼で補強された特別な一本だった。

その性能は、
ロノ・アンブロシアとの戦いですでに証明されている。
通常の物理攻撃が通りにくかった相手でも、
最終的には核を一刀両断している。
だからベリル自身も、
合成獣の装甲へなら刃を通せる可能性が高いと考える。

ハノイの大剣も、
別方向で合成獣と相性がいい。
彼の場合は、
鋭く斬るというより
人間離れした膂力で叩き潰すような攻撃を使う。
多少表皮が硬くても、衝撃そのものを内部へ通せる。

クリウも、
自分の剣では難しいが
ハノイの武器なら通るかもしれないと判断している。
同じヴェルデアピス傭兵団でも、
武器と戦い方によって合成獣への相性が大きく変わる。

さらに厄介なのは、
巨大だから鈍いという常識も通用しないこと。
ベリルが実際に四体を視認すると、
少なくとも動きは鈍重ではない。
ゼノ・グレイブルのように、
巨体のまま素早く動ける可能性が高いと見る。

建物を踏み倒せる大きさ。
剣が通りにくい外皮。
大型なのに俊敏な身体。
この三つが同時に存在するため、
合成獣は単なる巨大な標的ではない。

そしてベリルたちは、
四体を一か所へ集めないよう分散して戦うことになる。
一体だけでも教会騎士を圧倒する敵を、
少人数で個別に止めなければならない。
ここから戦いは、動く死体の物量戦とはまったく違う形へ変わる。

合成獣が危険なのは、
「巨大だから強い」だけではない。
普通の剣士では傷を付けにくい硬さを持ちながら、
俊敏に動き、
一撃で人間や建物を破壊できる。
それが一体ではなく四体同時に投入されたことこそ、
ディルマハカが一気に危機へ追い込まれた最大の問題だったのである。

第5章 ベリルは合成獣をどう倒した?硬い外皮を削り、姿勢を崩して頭部へ届かせた

ゼノ・グレイブル由来の剣でも一撃では斬れず、まず前脚を壊す戦いへ切り替えた

ベリルが一体目の合成獣へ向かう時、
最初に選んだのは馬を降りて徒歩で近づくことだった。
馬上戦闘は本来の得意分野ではなく、
借り物の馬ごと巻き込まれる危険もある。
地に足を付けた剣士として戦う方が確実だと判断している。

現場へ着くと、
合成獣はすでにディルマハカの一般人を啄んでいた。
獅子の頭、
牛やグリフォンを思わせる巨大な胴体、
さらに尾には大蛇。
一目で自然の生物ではないと分かる異形だった。

ベリルはまず、
どれほど硬いのかを確かめるため横薙ぎを入れる。
狙いは前脚一本を奪うこと。
ところが赫々の剣でも、
外皮は破れても筋肉の途中で刃が止まる。
クリウの「硬すぎる」という報告が誇張ではなかったと分かる。

この赫々の剣は、
過去に戦ったゼノ・グレイブルの素材を使った特別な武器。
通常の数打ちより遥かに性能は高く、
ロノ・アンブロシア戦でも決定打を通している。
それでも今回の合成獣を一撃で断つことはできなかった。

ただし、
まったく刃が通らないわけではない。
ここでベリルは、
「倒せない」ではなく「一撃では倒せない」と判断する。
相手の硬さを見て、
正面から急所を狙う戦いから段階的に身体を崩す戦いへ切り替えた。

狙ったのは前脚。
合成獣はゼノ・グレイブルより二回りほど大きく、
頭部まで剣を届かせること自体が難しい。
ならば脚へ傷を重ね、
巨体を支えられなくして、
顔の高さを強制的に下げればいい。

ベリルは近づいて斬り、
すぐ離れ、
また同じ前脚へ攻撃を重ねる。
合成獣も巨大な脚を何度も振り下ろすが、
ベリルは間合いから外れて被弾を避け続ける。
一撃の破壊力より、確実に脚を削ることを優先した。

やがて傷口から大量の血が流れ、
前脚が自重を支え切れなくなる。
合成獣が逆上して暴れたことで、
かえって傷口が広がり、
姿勢まで崩れ始める。
そこでベリルは、ようやく勝負へ出る。

使ったのは、
ビデン村の道場に伝わる大上段からの技「鳶落とし」。
普段のベリルは回避と返し技を得意とするため、
大上段を多用する剣士ではない。
それでも巨体を正面から仕留める場面では、
全身の力を一撃へ集めるこの技を選んだ。

突進してきた合成獣へ一歩も退かず、
頭上から全力で振り下ろす。
一閃は獅子頭の頭蓋を砕き、
巨体はその場へ崩れ落ちる。
ゼノ・グレイブル級を超える大きさでも、攻略手順を作ればベリルには討てる相手だった。

本体を倒した直後、尾の大蛇だけが独立して襲い掛かり、ロゼがベリルを救った

ところが合成獣の危険は、
獅子頭を倒したところで終わらなかった。
ベリルは生命反応がないことを確認し、
アリューシアの援護へ向かおうとして剣を鞘へ戻す。
その直後、倒れた巨体の背後から異音が走る。

襲い掛かってきたのは、
尾として付いていた大蛇。
獅子頭の生命が止まっても、
大蛇の部分は独立して動いていた。
ベリル自身も完全に想定外で、
抜剣し直す時間すら足りない。

最低でも腕一本は持っていかれる。
そう覚悟するほどの距離で、
ベリルの身体が突然横へ突き飛ばされる。
同時に銀色の大きな盾が前へ入り、
大蛇の攻撃を受け止めた。

助けに入ったのがロゼだった。
ホワイト・メイデンの仮面を着けたまま、
カイトシールドで攻撃を止め、
続けてショートソードを振るう。
大蛇の首を一撃で断ち、ベリルを完全に救っている。

ベリルが驚いたのは、
ロゼが本来グレン王子の護衛へ残っていたはずだから。
しかしロゼは、
王子から「ディルマハカを守れ」と命を受けたと説明する。
王族のそばに留まるのではなく、市街の合成獣討伐へ回っていた。

ここで分かるのは、
合成獣が単純に「頭を潰せば終わる敵」ではないこと。
複数の生物を継ぎ合わせているため、
部位ごとに別の生命活動を残している可能性がある。
ベリルですら、一体目ではこの仕掛けを見抜けなかった。

逆に二体目以降では、
この経験が決定的な情報になる。
獅子頭と尾の大蛇は別々に止める必要がある。
一体目で受けた不意打ちが、
次の戦闘では攻略法そのものへ変わっていくのである。

第6章 誰が4体の合成獣と戦った?ベリルたちは戦力を分けて各個撃破した

ベリル・アリューシア・ハノイとプリム・スレナ側へ分かれ、四体を同時に市街へ進ませなかった

合成獣が四体いる以上、
全員で一体ずつ順番に倒す方法は使えなかった。
一か所へ戦力を集めれば、
残りの個体が無防備な市街へ進む。
だからベリルたちは最初から、
それぞれ別の合成獣へ向かう必要があった。

右翼側へ向かったのが、
ハノイと魔術師プリム。
中央の二体は、
ベリルとアリューシアがそれぞれ担当する。
そして左翼へ大きく逸れた一体は、
後にスレナたち冒険者側が引き受けていたことが判明する。

この分担は、
単なる人数合わせではない。
ハノイは巨大な大剣と膂力を持ち、
硬い相手へ衝撃を通せる。
プリムは魔術で援護できるため、
近接一人だけより戦いの幅が広い。

ベリルは、
ゼノ・グレイブル素材の剣があるため、
硬い外皮へ確実に傷を入れられる。
アリューシアは剣の性能こそ不足していたが、
速度と足捌きでは合成獣を大きく上回る。
一人ずつでも足止めできる練達が散る形になった。

さらに左翼の一体へ対応したスレナも、
複数個体をまとめて相手にしない判断をしている。
仲間の冒険者たちと一体だけを釣り出し、
他の個体から切り離して討伐した。
ベリルも、この判断を高く評価している。

合成獣は一体なら攻略できても、
複数が同時に前脚や牙を振るえば危険度が跳ね上がる。
まして尾の大蛇まで独立して動く。
一体を三人で囲うだけでも死角が生まれるため、
複数同時戦闘は避ける方が合理的だった。

実際、
スレナたちが左翼の一体を仕留めた時点で、
ベリルも一体目を討伐済み。
残る中央ではアリューシアが交戦し、
右翼ではハノイとプリムが戦っている。
四体を完全に分離したことが、市街への被害拡大を止める鍵になった。

アリューシア戦ではベリルが前脚を断ち、ロゼが大蛇を抑え、最後はアリューシアが咽喉を貫いた

一体目を倒したベリルは、
ロゼと一緒にアリューシアのもとへ向かう。
遠くから土煙が上がっており、
戦闘場所はすぐ分かった。
現場ではアリューシアが優勢ながら、まだ決着を付けられていない。

問題はやはり剣だった。
アリューシアが使っているのは、
ビデン村を出る時にベリルから贈られた数打ちのロングソード。
長く使い続けてきた大切な剣だが、
合成獣の硬い外皮を突破する性能までは持っていない。

ベリルが「剣は通るか」と確認すると、
アリューシアは難しいと答える。
実際、合成獣には深い傷がほとんど付いていない。
剣を折らないよう加減すれば、
彼女ほどの技量でも決定打を作れなかった。

そこでベリルは、
事態が終わったら新しい剣を贈ると約束する。
だから今の剣を壊すことを気にせず、
全力で振り抜いていい。
師匠からその言葉を受け、
アリューシアも攻撃へ踏み切る。

役割も明確に分けた。
ロゼには尾の大蛇を任せ、
ベリルとアリューシアが獅子頭側を攻める。
一体目で尾だけが独立して動いた経験を、
そのまま二体目の戦術へ反映させている。

最初に動いたアリューシアは、
合成獣の噛み付きを高速の足捌きでかわし、
獅子頭の顔面へ連続して突きを入れる。
致命傷にはならなくても、
相手の意識を自分へ向けるには十分だった。

合成獣がアリューシアへ前脚を振り下ろした瞬間、
ベリルが下から全力で斬り上げる。
自分へ向かってくる脚の速度と質量まで利用し、
肘に近い位置から前脚を一撃で切断。
巨体は片脚を失い、姿勢を大きく崩す。

頭部が低くなったところへ、
今度はアリューシアが一気に踏み込む。
渾身の突きが獅子頭の咽喉へ入り、
そのまま深く貫通。
一体目とは違い、最後の一撃を弟子のアリューシアが取っている。

同じ頃、
尾の大蛇もロゼが仕留める。
本体が崩れたことで動きが制限された瞬間を逃さず、
伸びた胴をショートソードで一刀両断。
一体目でベリルを襲った仕掛けを、今度は完全に封じている。

ただし代償として、
アリューシアのロングソードは限界を迎える。
咽喉の奥の硬い部分まで突き抜いたことで、
剣先は完全に傷み、
長く使ってきた一本は実戦での役目を終えることになる。

こうして二体目は、
ベリルが脚を崩し、
アリューシアが本体へとどめを刺し、
ロゼが尾の大蛇を処理する連携で撃破された。
合成獣の強さそのものより、
一体目で得た情報を次の一体へ即座に共有したことが勝敗を大きく変えたのである。

第7章 ※原作ネタバレ 合成獣を送り込んだのはモーリス教皇側

大聖堂の動く死体が止められた後、次の一手として4体の合成獣が投入された

合成獣の正体を追うと、
最後に行き着くのは「誰がこれを用意したのか」という疑問になる。
自然発生した魔物ではなく、
複数の獣やモンスターを継ぎ合わせ、
さらに四体も同時にディルマハカへ放った以上、背後には大規模な準備が必要だった。

しかも投入された時機が不自然だった。
その直前には、
グレン王子とサラキア王女の婚姻が行われる大聖堂へ、
大量の動く死体と生身の暗殺者が送り込まれている。
合成獣は、その騒ぎと無関係に偶然現れたわけではない。

大聖堂では、
まず動く死体が正面から押し寄せた。
ベリルとアリューシアたちは、
痛みで止まらない死体を相手に足止めされる。
その群れには短剣を持った暗殺者まで紛れ、
王族へ一撃を届かせようとしていた。

それでもベリルが暗殺者を止め、
ハノイたちが翼廊側から脱出路を作る。
グレン王子とサラキア王女が大聖堂を出たことで、
最初の襲撃は失敗したように見える。
ところがその直後に出てくるのが、合成獣の情報だった。

ハノイたちは、
巨大な異形が教都へ投入されることを先に掴んでいた。
実際に外縁部へ向かうと、
教会騎士が次々と傷つき、
クリウですら剣が通らず撤退している。
四体は最初から、次の戦力として動かされていたのである。

つまり合成獣は、
大聖堂襲撃が失敗した後に急いで作られたものではない。
素材集め、
身体の加工、
魔力による維持、
四体の搬入まで考えれば、その場で準備できる規模ではない。
婚姻の儀より前から用意されていた可能性が高い。

ここが重要である。
黒幕側は、
「動く死体で王族を仕留められなければ終わり」
という一発勝負をしていない。
最初の攻撃が突破されても、
その後に強力な異形をぶつける二段目まで準備していた。

ホワイト・メイデンがモーリスの名を出し、合成獣も大聖堂襲撃と同じ線につながる

合成獣を誰が用意したのかを考えるうえで、
決定的なのがホワイト・メイデンの証言になる。
大聖堂を脱出した後、
ハノイが合成獣の情報を知っていた理由を問われると、
情報源としてホワイト・メイデンを示す。

彼女は第2期で、
正体を隠すためほとんど声を出していない。
元教会騎士団副団長ロゼであることを悟られないよう、
筆談を中心に意思を伝えていた。
その人物が、この場面では自分から口を開く。

出した名前は、
スフェン教教皇モーリス・パシューシカ。
グレン王子が、
今回の凶行を仕掛けた主犯なのかと確認すると、
ホワイト・メイデンは肯定する。
ここで合成獣も、大聖堂襲撃と同じ計画へつながる。

モーリス側との接点は、
この場面だけで突然出てきたものではない。
第1期から、
スフェンドヤードバニアでは王権派と教皇派が対立していた。
第一王子グレンが王位を継げば、
教皇派にとって政治的な影響力を強めにくくなる可能性があった。

実際、第1期ではグレン王子暗殺未遂まで起きている。
ロゼが孤児院の子供たちを利用され、
刺客を通す側へ回った事件も、
王位継承を巡る政治対立と無関係ではなかった。
グレンは以前から教皇派にとって邪魔な存在だった。

さらに、
第1期のレビオス司教は死者蘇生の研究へ踏み込み、
死体を魔力で動かす禁忌を使っていた。
今回の大聖堂では、
その「動く死体」が大量に投入されている。
過去の禁忌が、今度は王族襲撃の実戦手段へ変わっている。

そしてその次に現れるのが合成獣。
死体へ魔力を与えて動かす技術と、
複数の生物を継ぎ合わせて動かす合成獣は、
方法こそ違っても生命を人為的に加工する発想が近い。

だから合成獣は、
単なる「強い敵」として見るだけでは足りない。
大聖堂の動く死体、
群れへ潜ませた暗殺者、
さらにその後の四体の合成獣。
すべてが王権派を追い詰める連続攻撃として配置されていた。

しかも四体が狙うのは、
王族だけではない。
ディルマハカ外縁部で一般人や教会騎士まで襲い、
都市全体へ被害を広げている。
王子と王女が逃げても、周囲を破壊し続ければ王権側の被害は止まらない。

ベリル、
アリューシア、
ハノイ、
プリム、
スレナ、
そしてロゼまでが別々に動かなければ、
四体を止め切れないほどの規模だった。
一つの建物を襲う刺客とは違い、
都市防衛そのものを強制する兵器として使われている。

合成獣とは何か。
その答えは、
「複数の生物を継ぎ合わせた異形」だけでは終わらない。
第1期から続く禁忌と政治対立が、
第2期で大量破壊の戦力へまで膨らんだ象徴でもある。

大聖堂で動く死体を止めても終わらない。
暗殺者を倒しても終わらない。
その先で四体の合成獣が教都を襲う。
この順番まで見ることで、合成獣がモーリス教皇側の計画に組み込まれた「次の一手」だったことが見えてくるのである。

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