イブロイ・ハウルマンは、第1期ではレビオス司教の不正をベリルへ託したスフェン教司祭であり、その後は司教へ昇格してスフェンドヤードバニアの内情にも通じる人物になっている。
第11話でイブロイがヴェルデアピス傭兵団を「味方」と断言出来た一方、ハノイとの情報経路や傭兵団の依頼主はベリルにも分からず、原作でもそこ自体が謎として残されている。
つまり「イブロイは何者?」を追うと見えてくるのは、単なるスフェン教の司教ではなく、仮面の女性や王子王女、ヴェルデアピス傭兵団を結ぶ情報線へ触れている人物だということだ。
第1章 イブロイは何者?スフェン教司祭から司教になったベリルの協力者
第1期で現れた時は、ルーシーと旧知のスフェン教司祭だった
イブロイ・ハウルマンは、
スフェン教に所属する聖職者であり、
第1期でベリルと知り合った時点では司祭だった。
第2期では司教へ立場を上げており、
スフェン教内部の事情にも深く通じる人物になっている。
初登場時から特徴的なのは、
スフェンドヤードバニアの聖職者でありながら、
教会上層部の命令へ無条件に従う人物ではないことだ。
むしろ同じスフェン教の内部で起きた不正を問題視し、
外部のベリルへ協力を求めている。
ベリルとの最初の出会いでは、
ルーシーが自宅へベリルを連れて行くと、
すでに応接室でイブロイが待っていた。
白髪交じりの髪に穏やかな物腰を見せる男だったが、
ベリルは第一印象から少し警戒している。
しかもイブロイは、
レベリス王国魔法師団長であるルーシーを、
ごく自然に「ルーシー君」と呼んでいた。
ベリルもその距離感を見て、
単なる地方の聖職者ではないと察している。
そこでイブロイ自身が名乗ったのが、
「イブロイ・ハウルマン」という名前と、
スフェン教の司祭という身分だった。
つまりベリルにとって最初のイブロイは、
得体の知れない宗教関係者という印象から始まっている。
しかし第11話まで関係を追うと、
その立ち位置はかなり変わって見える。
スフェン教内部で不穏な動きがあれば情報を持ち、
王族と教会を巡る情勢にも通じ、
ベリル側へ必要な情報を渡す役割を担うようになる。
第11話でヴェルデアピス傭兵団が大聖堂へ現れた時も、
その立場が重要になる。
第8話で襲われた経験があるベリルは、
ハノイたちを当然のように敵だと判断する。
ところがイブロイだけは、彼らを味方だと知っていた。
この場面だけを見ると、
突然事情を知る人物が現れたようにも見える。
だが第1期から追えば、
イブロイは以前からスフェン教内部の情報を握り、
表向きの立場だけでは判断出来ない人物だったことが分かる。
第2期では「教会側の人物」だけでは説明出来ない存在になっている
第2期でイブロイが重要なのは、
スフェン教司教という肩書きそのものではない。
教皇モーリス・パシューシカを頂点とする教会側と、
グレン王子たち王権側の動きを知りながら、
どちらか一方だけへ単純に従っていないところにある。
第10話でも、
ルーシーとイブロイは二人だけで話し合い、
サラキア王女とグレン王子の婚姻を巡る情勢について、
かなり踏み込んだ情報交換を行っている。
婚姻が単なる祝事ではないことを二人とも把握していた。
サラキア王女の婚姻は、
スフェンドヤードバニア内部の権力関係にも直結する。
王権側が婚姻によって安定を得ようとする一方、
それを歓迎しない勢力も存在している。
イブロイはその危険を外側から眺めている人物ではない。
だから婚姻の儀が行われる大聖堂にも、
イブロイ本人が姿を見せている。
そして教皇が不在のまま式が進み、
直後に大聖堂が襲撃されるという異常事態の中でも、
逃げ惑うだけの聖職者にはならない。
第11話ではさらに、
ヴェルデアピス傭兵団を見たベリルが斬りかかろうとすると、
イブロイが即座にそれを制止する。
ここで重要なのは、
「戦うな」ではなく「彼らは味方だ」と判断していることだ。
ベリルは第8話で、
ハノイ率いる傭兵団と実際に剣を交えている。
ヴェスパーとフラーウも傷つけられ、
ハノイたちを警戒するだけの十分な経験がある。
それでもイブロイは、その過去を承知した上で味方だと告げる。
つまりイブロイは少なくとも、
第11話でハノイたちが何のために大聖堂へ来たのか、
王子王女へ危害を加える立場ではないことを、
ベリルより先に把握していた可能性が高い。
ただし、この時点で注意したいのは、
イブロイ自身がヴェルデアピス傭兵団を雇ったとは、
まだ断定出来ないことである。
ハノイが誰から依頼を受けたのか、
情報がどの経路でイブロイへ届いたのかは別の問題として残る。
だからイブロイは、
「傭兵団の雇い主」という人物ではなく、
スフェン教内部と王族側の動きの双方へ接点を持ち、
表面には出てこない情報まで把握している人物として見る方が、
第11話の行動を理解しやすい。
第1期では胡散臭い司祭として現れた男が、
第2期では王族の危機に居合わせ、
敵だったはずの傭兵団まで味方だと把握している。
この変化こそが、
イブロイという人物を追う最大の手掛かりになっている。
第2章 イブロイとベリルはどう知り合った?レビオス司教事件から続く関係
ベリルを呼び出したのは、同じスフェン教のレビオスを止めるためだった
ベリルとイブロイの関係が始まったのは、
単なる知人同士の紹介ではなかった。
ルーシーがベリルを自宅へ連れて行った時、
イブロイはすでに彼へ頼みたい問題を抱えていた。
それがスフェン教内部で動いていたレビオス司教だった。
その前段には、
ミュイを巻き込んだ「宵闇の魔手」の事件がある。
ベリルやスレナたちの働きによって、
裏社会で暗躍していた組織は追い詰められたが、
事件は単なる犯罪集団の摘発だけでは終わらなかった。
捕らえられた者が護送中に異常な形で死亡し、
死者や人体を巡る不穏な技術の存在が浮かび上がる。
その背後を追っていく中で、
スフェン教の高位聖職者であるレビオスの名前が、
無視出来ないものとして出てくることになる。
イブロイにとって厄介だったのは、
相手が同じスフェン教の人間だったことだ。
しかもレビオスは司教という立場を持ち、
教会内部の人間だけで正面から動けば、
政治的な問題まで発展する可能性がある。
そこでイブロイは、
ルーシーを通じてベリルへ接触する。
剣の腕が確かでありながら、
スフェン教内部の派閥争いとは距離がある。
そのベリルなら、
教会内部の事情へ巻き込まれ過ぎずに動けると見た。
ベリルからすれば、
初対面の宗教関係者から突然面倒事を持ち込まれた形になる。
しかもイブロイは柔和に話しながら、
明らかに表面以上の事情を抱えている。
ベリルが最初から警戒したのも当然だった。
それでも話を聞き、
レビオスを巡る事件へ関わっていく中で、
イブロイが単なる権力争いのために、
ベリルを利用しようとしているわけではないと分かってくる。
少なくとも彼は、教会内部の不正を放置する側ではなかった。
最終的にレビオスを巡る問題が動いた後も、
イブロイとベリルの関係はそこで切れない。
一度限りの依頼主と剣士ではなく、
スフェン教絡みの問題が起きた時に、
再び接点を持てる関係として残っていくことになる。
第1期で生まれた信用があるから、第11話の「味方だ」が通用した
この過去があるからこそ、
第11話でイブロイが叫んだ一言には重みがある。
もし大聖堂で初めて会った聖職者から、
「ヴェルデアピス傭兵団は味方だ」と言われても、
ベリルが簡単に剣を止めるとは考えにくい。
第8話でベリルは、
ハノイたちと命を懸けて戦っている。
帰路を襲われ、
ヴェスパーは深傷を負い、
フラーウも無傷では済まなかった。
その傭兵団が突然大聖堂へ現れれば、敵と考える方が自然だ。
だから第11話でベリルが斬りかかろうとするのは、
早計でも勘違いでもない。
それまで自分が実際に見てきた事実から判断すれば、
ハノイたちは王子王女を狙って現れた可能性がある。
警戒しない方が不自然な状況だった。
そのベリルを止められたのがイブロイである。
第1期のレビオス事件を通じて、
ベリルはイブロイがスフェン教の肩書きだけで、
人を敵味方へ分ける人物ではないと知っていた。
同じ教会の司教が問題を起こせば、
それを隠すのではなく止める側へ回る。
教会内部の事情であっても、
必要ならルーシーやベリルと協力する。
そうした行動をすでに自分の目で見ている。
しかもイブロイは、
第2期になるとスフェンドヤードバニア情勢についても、
ベリルが頼れる情報源になっている。
遠い教国で何が起こっているのか知りたい時、
ベリルが接点として思い浮かべる人物の一人がイブロイだった。
第10話では、
サラキア王女とグレン王子の婚姻について、
ルーシーと密談するところまで踏み込んでいる。
第1期のレビオス事件だけを知る人物ではなく、
現在進行している教国の政治状況にも触れているのである。
だから大聖堂でイブロイが、
ヴェルデアピス傭兵団を味方だと告げた時、
ベリルにはそれを無視出来ないだけの過去があった。
イブロイが適当に敵味方を判断する男ではないことを、
以前の事件を通して知っていたからだ。
ただしベリルが、
すべて納得したわけではない。
ハノイたちがなぜ今度は王子王女を守るのか、
なぜイブロイがそれを知っているのか、
情報のつながりそのものには疑問が残っている。
ここが第11話のイブロイで面白いところでもある。
ベリルは彼の言葉を信じることは出来る。
しかしイブロイが持つ情報の全体までは知らない。
「信用出来る人物」と「何でも知っている人物」は同じではない。
第1期ではレビオス司教の不正を追うため、
ベリルを頼ったイブロイ。
第2期では立場が逆転するように、
ベリルの知らない教国側の事情を、
イブロイが先に掴んでいる場面が増えていく。
だから第11話の「彼らは味方だ」は、
突然出てきた便利な一言ではない。
第1期から積み上げられてきたベリルとの信用関係と、
イブロイが教会内部で持つ情報網の両方が、
大聖堂の一瞬へつながった場面なのである。
第3章 第11話で何が起こる?イブロイが「彼らは味方だ」と叫んだ場面
ハノイたちが現れた瞬間、ベリルには再襲撃にしか見えなかった
第11話の大聖堂では、
すでに教会騎士たちが動く死体の群れへ対応し、
アリューシアも王子王女を守りながら迎撃している。
ベリル自身も第1期で見た死体兵を思い出し、
胴体や下半身を確実に断つよう指示を飛ばしている。
そこへ突然現れたのが、
ハノイ率いるヴェルデアピス傭兵団だった。
巨大な大剣を持つハノイが翼廊側から飛び出し、
配下の傭兵たちも一気に戦場へ入り込む。
第8話を知るベリルには、警戒しない方が難しい状況だった。
サラキア王女も同じである。
見知らぬ武装集団が戦闘中の大聖堂へ乱入し、
突然こちらへ来いと呼び掛けてくる。
第8話の因縁を知らない王女から見ても、
味方なのか新たな敵なのか判別出来ない。
ベリルに至っては、
ハノイたちが以前何をしたかまで知っている。
フルームヴェルク辺境伯領からの帰路で襲撃され、
ヴェスパーとフラーウが重傷を負った。
その頭領が目の前に現れれば、剣を向ける判断は自然だった。
しかも第11話の大聖堂は、
すでに敵味方の区別が難しい状態になっている。
動く死体の群れに暗殺者まで紛れ込み、
教会騎士たちも混乱している。
そこへ過去の敵まで現れたため、
ベリルの中では情報が一気に錯綜することになる。
そこで割って入るのがイブロイだった。
ベリルがハノイたちへ斬りかかろうとすると、
イブロイは彼らが味方だと告げる。
この一言によって、状況はさらに複雑になる。
ベリルからすれば、
ハノイを信用出来る材料はほとんどない。
それでもイブロイの言葉だけは、
第1期からの関係を通して無視出来ない。
だから即座に攻撃するのではなく、一度判断を止めることになる。
決め手になったのは、イブロイの言葉だけではなく仮面の女性の行動だった
それでもベリルは、
イブロイがそう言っただけで完全には納得していない。
むしろ頭の中では、
なぜ以前自分たちを襲った傭兵団を、
イブロイが信用しているのかという疑問が強くなる。
ベリルはその場で、
イブロイとハノイが以前から知り合いだったのかと考える。
しかし仮に旧知だったとしても、
今回の王子王女救出とどうつながるのかが分からない。
本人の中でも情報の線がまったく結び付かない。
一方、現場には考え込む時間がない。
動く死体は押し寄せ続け、
王子と王女を守りながら大聖堂を抜ける必要がある。
ハノイたちが本当に味方なら、
戦力として利用しない方が危険な状況でもあった。
その迷いを断ち切ったのが、
イブロイと仮面の女性のやり取りだった。
イブロイが彼女へ退避を促すと、
前線で戦っていた仮面の女性は即座に応じ、
王子たちが待つ後方へ下がっていく。
ベリルはここを見て判断を変える。
イブロイの言葉だけなら疑いは残る。
しかし自分が戦闘能力を確認している仮面の女性まで、
イブロイの指示を信用して動いた。
ならば今だけは、その判断へ乗る価値があると考えた。
そこでベリルはアリューシアへ声を掛け、
王子王女を連れて移動を開始する。
ヘンブリッツはその場へ残り、
大聖堂内の死体兵を押さえる役割を引き受ける。
護衛と殿を分ける形で、ようやく脱出が始まる。
ただしベリルは、
最後までハノイ本人を信用していない。
王子王女の近くへ合流した後も警戒を解かず、
不審な動きを見せれば即座に斬るつもりでいる。
共闘は信頼ではなく、状況判断によるものだった。
だから第11話の「彼らは味方だ」は、
単なる敵味方の説明ではない。
イブロイが何らかの情報を握っており、
さらに仮面の女性までその判断を共有している。
その見えないつながりが初めて表へ出た場面なのである。
第4章 なぜイブロイは傭兵団を信用できた?ベリルにも情報経路は分からなかった
ベリル自身が「なぜ知っている?」と疑っていることが最大の手掛かり
第11話で重要なのは、
ベリルが後からすべてを理解するわけではないことである。
むしろハノイたちと合流した後も、
なぜイブロイが彼らを味方だと判断出来たのか、
本人には最後まで見えていない。
大聖堂を抜ける途中でも、
ベリルはハノイとの関係を考え続ける。
イブロイとハノイが知り合いだった可能性、
王族側と裏で連絡を取っていた可能性、
別の誰かが両者をつないでいる可能性まで浮かぶ。
しかしどれも決め手にならない。
第8話ではヴェルデアピス傭兵団が、
ベリルたちを襲う側にいた。
それが第11話では、
王子王女を守る側へ突然回っている。
さらに不可解なのは、
ハノイ自身が依頼元を明かさないことだった。
大聖堂を脱出した後、
グレン王子から何者なのか尋ねられても、
ハノイは傭兵団の名だけを答える。
そして今回の仕事を受けたことは認めても、
誰から依頼されたのかは契約上話せないとする。
つまりグレン王子自身でさえ、
ハノイたちを直接雇った人物ではない可能性が高い。
王族側から見ても情報が完全には共有されていない。
ここでさらに、
イブロイの立ち位置が不思議になる。
王子本人が知らない依頼元について、
イブロイは少なくとも結果だけを知っていた。
だからハノイたちが敵ではなく、
王族を守る側だと即座に判断出来た。
ただし、
ここから「イブロイが傭兵団を雇った」と断定することは出来ない。
ハノイは依頼主を伏せたままであり、
イブロイ自身も雇用関係を明かしていない。
分かるのは、何らかの連絡線に触れていたことだけである。
教皇派から攻撃されている事実も、傭兵団が味方であることを裏付けていく
大聖堂を抜けた後にも、
ベリルはハノイたちを観察し続ける。
翼廊側の出口は破壊され、
外には黒いロングコートを着た傭兵たちが待機している。
その周囲には、すでに倒された敵の姿も残っていた。
つまりハノイたちは、
大聖堂へ乱入しただけではない。
外でも動く死体や襲撃者を排除し、
王子王女が脱出出来る経路を確保していた。
行動そのものが護衛側として機能している。
第8話で霧を使ったプリムも、
第11話では同じ魔術を別の形で使う。
大聖堂内を覆っていた霧を解除し、
ハノイの指示に従って撤退経路を整える。
ベリルも彼女が以前の襲撃時にいた魔術師だと気付く。
過去の敵が、
そのまま戦力として目の前に並んでいる。
ベリルからすれば気分の良い状況ではない。
それでも教皇派と思われる襲撃者を倒し、
王族の逃げ道を確保している以上、
現在は味方として動いていると認めざるを得ない。
さらに外では、
教皇派側の死体兵もハノイたちを攻撃している。
もしヴェルデアピス傭兵団が、
今回も教皇派と同じ側にいるなら、
この状況そのものが成立しにくい。
ベリルもそこで、
少なくとも現時点では、
ハノイたちと教皇派が敵対していると判断する。
イブロイの言葉に加えて、
実際の戦場での行動まで一致してくる。
それでも依頼元だけは分からない。
イブロイがどうしてその情報を知ったのかも、
この段階では説明されない。
だから第11話の謎は、
「傭兵団が本当に味方か」から、
「誰がこの共闘を作ったのか」へ移っていく。
ここにイブロイの記事としての核心がある。
彼はハノイたちを信用した人物ではあるが、
単なる仲介役だと断定出来る材料もまだない。
王族、仮面の女性、傭兵団の間に存在する、
見えない情報経路へ接している人物として描かれている。
第11話で明確に分かるのは、
イブロイが状況をベリルより一歩先に知っていたこと。
そして、その情報源そのものは、
ベリルにもまだ見えていないという二点である。
だからこそ「彼らは味方だ」という一言が大きな謎として残るのである。
第5章 イブロイはどこまで事情を知っていた?仮面の女性とのつながり
ハノイだけでなく、仮面の女性もイブロイの言葉で動いていた
第11話でイブロイが知っていたのは、
ヴェルデアピス傭兵団が味方だという一点だけではない。
大聖堂の最前線で戦っていた仮面の女性に対しても、
まるで事情を共有している相手のように声を掛け、
王子たちの側へ下がるよう促している。
この時の仮面の女性は、
ただ大聖堂へ居合わせた一般人ではない。
動く死体が押し寄せる中でもショートソードを操り、
横から迫る相手をバックラーで弾きながら、
ベリルが目を留めるほど安定した戦いを見せていた。
死体の群れに暗殺者まで混ざり、
アリューシアやベリルでさえ王子王女を守りながら、
突破口を作らなければならない状況である。
その中を単独で戦える時点で、
仮面の女性が普通の参列者ではないことは明らかだった。
しかもイブロイが退避を促すと、
彼女は事情を問い返すこともなく動く。
前線から一気に離れ、
側廊を抜けてグレン王子とサラキア王女の側へ向かう。
ベリルがハノイとの共闘を決めた決定打も、この反応だった。
ベリルはイブロイを信用している。
しかし第8話で自分たちを襲ったハノイまで、
その一言だけで完全に信用出来るわけではない。
そこへ実力を確認済みの仮面の女性まで動いたことで、
少なくとも今は従う価値があると腹を括ったのである。
つまりイブロイは、
ベリルだけに情報を渡す人物ではなかった。
ハノイたちの現在の立場を知り、
仮面の女性とも一定の意思疎通が成立している。
第11話では複数の人物を結ぶ位置に立っている。
ここが第1期のイブロイとの大きな違いでもある。
レビオス事件の時は、
イブロイが問題を把握してベリルへ協力を求める側だった。
しかし第11話では、
ベリルの知らない人物同士の関係まで先に把握している。
ホワイト・メイデンが握る情報は、イブロイ一人では説明出来ない
さらに状況が複雑になるのは、
大聖堂を脱出した後である。
ハノイたちは王子王女を守る依頼を受けていたが、
その後に語られる教皇側の情報まで、
ハノイ自身が最初から調べ上げたわけではなかった。
ハノイが明かす情報の出所は、
大聖堂で一緒に脱出した仮面の女性だった。
彼女は「ホワイト・メイデン」と呼ばれており、
表向きには流れの傭兵として扱われている。
しかし、その情報量はその肩書きでは説明しにくい。
グレン王子やハノイでさえ、
ホワイト・メイデンという名に詳しくない。
有名な傭兵なら通り名が知られていてもよさそうなのに、
実力は明らかに高い一方で、
名前だけが不自然なほど広まっていない。
しかも彼女は、
教皇モーリス側の動きや合成獣に関わる情報まで持っている。
単独で各地を渡り歩く傭兵が偶然知ったと考えるには、
あまりにも教会上層部へ近い内容が含まれている。
ここまで来るとベリルも、
一人の傭兵が独力で集めた情報とは考えにくくなる。
仮面の女性の背後には、
教皇派の内情へ接近出来る協力者や、
別の情報網が存在する可能性まで浮かんでくる。
そして第11話の大聖堂では、
その仮面の女性とイブロイが自然に連携していた。
イブロイが彼女の正体をどこまで知っているのか、
誰を通じて接点を持ったのかまでは、
この段階ではベリルにも明らかになっていない。
だからイブロイを、
「ハノイの知り合いだったから味方だと知っていた」
だけで終わらせると重要な部分を見落とす。
ハノイ、ホワイト・メイデン、王子王女という、
別々に見える人物の動きを知っていたこと自体が重要なのである。
少なくともイブロイは、
大聖堂襲撃が始まってから偶然事情を知ったわけではない。
誰を逃がすべきか、
誰を敵として扱わなくてよいのかを判断出来る程度には、
事前の情報を持っていたと考える方が自然である。
第11話で見えてくるのは、
イブロイがすべての黒幕だったという話ではない。
むしろ本人だけでは完結しない情報の流れの中に、
かなり深く入っていたことの方が重要になる。
「彼らは味方だ」の裏には、その情報網が隠れている。
第6章 イブロイは教皇派なのか王権派なのか?スフェン教司教でもモーリス側ではない
第1期では同じスフェン教のレビオス司教を止める側へ回っていた
イブロイの立場を考える時、
「スフェン教の司教だから教皇側」と見ると分かりにくくなる。
第1期の時点ですでに彼は、
同じスフェン教の高位聖職者だったレビオスを、
ベリルたちに止めてもらう側へ回っていた。
レビオスは死者蘇生に関わる研究へ手を出し、
捕縛時には祝詞を唱えて、
木箱から人間の死体を動かしている。
ベリルはその異様な存在を自分の剣で止め、
最終的にレビオス本人の捕縛にも成功した。
事件後、ベリルが結果を報告すると、
イブロイはレビオスを捕らえられたことへ安堵を見せている。
同じスフェン教の人間だから庇うのではなく、
教会内部に危険な存在がいるなら、
排除する方を優先していた。
さらにベリルが、
レビオスの使った死体について報告すると、
イブロイは以前から疑いを持っていた反応を見せる。
つまり事件が起きて初めて驚いたのではなく、
死者蘇生に近い禁忌の研究が行われている可能性を、
それ以前から察していたことになる。
この経験は第11話へ直接つながる。
大聖堂を襲った大量の死体を見たベリルは、
第1期でレビオスが木箱から出した死体を思い出し、
アリューシアへ胴体か下半身を断つよう助言している。
普通の人間なら、
斬られれば痛みや失血によって止まる。
ところがレビオスの死体は、
多少傷を負わせても動きを止めなかった。
第11話でも同じ特徴を持つ死体が、
今度は数を増して大聖堂へ押し寄せてくる。
イブロイにとっても、
見覚えのある禁忌が再び現れた形になる。
第1期ではレビオス個人の問題として表面化したものが、
第2期ではスフェンドヤードバニアの中枢で、
王子王女を狙う大規模な襲撃へ変わっている。
だからイブロイが第11話で、
教会騎士と一緒に王族を守る側へ立つことは、
それまでの行動と矛盾していない。
教会所属であることよりも、
禁忌を利用して人命を奪う側へ立たない姿勢が一貫している。
司教なのに大聖堂で自分の拳を振るうところにも、イブロイの立場が出ている
第11話のイブロイは、
後方から状況を説明するだけの人物でもない。
死体と暗殺者が大聖堂へ雪崩れ込むと、
自身も襲撃者へ対応している。
ベリルが意外に感じるほど、実際に戦える人物だった。
聖職者だからといって、
王子王女の周囲で祈っているだけではない。
襲撃者が迫れば自ら身体を動かし、
ベリルやアリューシアたちと同じように、
その場を突破するための戦力になる。
これもイブロイの人物像を考える材料になる。
第1期ではベリルという剣士を頼り、
レビオスを捕らえる仕事を依頼していたため、
戦闘とは距離のある人物にも見えていた。
しかし実際には、最低限以上の護身能力を持っている。
それでもレビオス事件を、
自分一人で処理しようとはしなかった。
問題が教会内部だけでは済まず、
死者蘇生や犯罪組織にまで広がっていたからこそ、
ルーシーやベリルという外部の力を借りたのである。
この柔軟さは第11話でも変わらない。
レベリオ騎士団、
ヴェルデアピス傭兵団、
正体の分からない仮面の女性であっても、
王子王女を救うために必要なら同じ側へ置いている。
所属だけを見れば、
本来なら非常に不自然な組み合わせである。
アリューシアはレベリオ騎士団長、
ハノイは少し前まで彼女を襲った傭兵団の頭領、
仮面の女性は素性すら明らかではない。
しかしイブロイは、
その肩書きだけで人を排除しない。
第1期でもスフェン教の司教だったレビオスを敵と判断し、
第11話では以前の敵だったハノイを味方と判断する。
基準になっているのは所属ではなく、今何をしているかである。
そのためイブロイを、
王権派か教皇派かという二択だけで見ると本質を外す。
グレン王子たちを守っている以上、
少なくとも第11話では王族側と行動を共にしている。
しかし王権を信奉する政治家として描かれているわけでもない。
むしろ一貫しているのは、
スフェン教の中で起きた危険な動きを見過ごさないことだ。
レビオスの死者蘇生研究を止め、
今度はその延長にも見える大量の死体兵を前にして、
教会の肩書きより人命を優先している。
さらに教皇モーリスが絡む状況になっても、
「教皇だから正しい」とは動かない。
大聖堂が襲撃され、
王子王女の命が狙われている現実を見て、
その場で助けるべき側を自分で判断している。
だから第11話のイブロイは、
スフェン教を裏切った司教という人物でもない。
教会の中にいるからこそ、
内部で何が起きているかを知り、
危険な方向へ進んだ時には止める側へ立つ人物なのである。
第1期のレビオス事件で見せた行動と、
第11話の大聖堂で見せた行動は一本につながっている。
教会内部の肩書きより、
目の前で誰が何をしているかを見る。
その姿勢があるからこそ、
イブロイはハノイたちまで「味方」と判断出来たのである。
第7章 イブロイが「味方」と言えたことが示すもの|教皇だけではない別の情報線
ハノイの依頼主より重要なのは、イブロイが情報の結節点にいたこと
第11話まで見ても、
ハノイが誰から王子王女の護衛を頼まれたのかは、
はっきり明かされていない。
グレン王子自身も依頼主を把握しておらず、
ハノイも契約上の事情から口を閉ざしている。
だからイブロイについても、
「彼がヴェルデアピス傭兵団を雇った」と、
そのまま結論付けることは出来ない。
第11話で確実に分かるのは、
少なくとも彼らが王族を守る側だと知っていたことだけだ。
しかし、その一点だけでも意味は大きい。
第8話でベリルたちを襲った傭兵団が、
今度は王子と王女を守る側へ回っている。
その変化をベリルより先に知っていた人物が、
スフェン教司教であるイブロイだったからだ。
しかもイブロイが把握していたのは、
ハノイたちの立場だけではない。
大聖堂で戦っていた仮面の女性にも声を掛け、
王子王女側へ退避させている。
彼女もその指示を疑わず受け入れている。
ここまで人物同士がつながると、
偶然その場で事情を知ったとは考えにくい。
ヴェルデアピス傭兵団、
仮面の女性、
王子王女、
そしてスフェン教内部にいるイブロイ。
複数の線が一つの場所へ集まっている。
一方でベリルから見れば、
その全体像は最後まで見えない。
ハノイたちがなぜ今回だけ王族側なのか、
仮面の女性がどこまで教皇側の事情を知っているのか、
イブロイが誰から情報を得たのかも分からない。
だからこそ第11話では、
イブロイ自身が謎を解く人物でありながら、
同時に新しい謎を増やす人物にもなっている。
「彼らは味方だ」という一言で危機を回避させながら、
その根拠のすべては明かしていない。
ベリルは彼を信用している。
だが信用していることと、
情報源まで知っていることは別である。
この距離が残っているから、
イブロイは単なる説明役では終わらない。
第1期のレビオス事件から第11話まで、イブロイは教会内部を見る窓口になっている
イブロイの役割を振り返ると、
第1期から一貫して、
スフェン教の表側では見えない問題を、
ベリルへ伝える人物になっている。
最初はレビオス司教だった。
高位聖職者でありながら、
死者蘇生に関わる禁忌へ踏み込み、
犯罪組織の事件とも接続していく。
イブロイはその危険を教会内部だけで隠さなかった。
ルーシーを通じてベリルへ接触し、
外部の人間を巻き込んででも、
レビオスを止める方向へ動いている。
この時点ですでに、
組織の体面より問題そのものを優先する人物だった。
第2期では、
その役割がさらに大きくなる。
サラキア王女とグレン王子の婚姻、
スフェン教内部の権力関係、
大聖堂襲撃、
ヴェルデアピス傭兵団の動きまで、
イブロイが接する情報の範囲が広がっている。
第10話でルーシーと話していた内容も、
単なる結婚式の予定ではない。
婚姻を巡って何が起きる可能性があるのか、
教国側でどんな力が動いているのか、
二人とも警戒した上で話している。
そして実際に第11話で、
大聖堂は戦場へ変わる。
死体兵が押し寄せ、
暗殺者まで紛れ込み、
王子王女の命が狙われる。
イブロイはその中心で逃げずに動いている。
そこで再び重要になるのが、
第1期から続く死者蘇生の線である。
ベリルは大聖堂の死体兵を見て、
レビオス事件で遭遇した死体を思い出している。
昔の事件が別の形で再び目の前に現れている。
つまりイブロイを追うと、
第1期と第2期が一本につながってくる。
レビオス個人の禁忌だったものが、
第2期では教都全体を巻き込む規模へ拡大し、
王族襲撃にまで利用されるようになっている。
その間ずっとイブロイは、
教会内部にいながら異常を見過ごさない側にいる。
スフェン教そのものを敵視しているわけではなく、
内部で危険な力を使う人物へ同調しない。
ここが彼の立ち位置として最も一貫している部分だ。
だから第11話で、
ヴェルデアピス傭兵団を味方だと告げたことも、
突然の判断ではない。
所属や過去ではなく、
現在その人物が誰を守ろうとしているのかを見る。
イブロイは以前からその基準で動いている。
ハノイたちは第8話では敵だった。
しかし第11話では王子王女を守っている。
仮面の女性も正体不明ではあるが、
大聖堂で襲撃者と戦い、
王族側へ退避している。
イブロイは現在の行動を見て同じ側へ置いている。
そこから見えてくるのは、
イブロイが単なるスフェン教司教ではないことだ。
教会内部の情報、
王族を巡る動き、
外部の傭兵までつながる位置にいて、
必要な時には立場を越えて人を結び付けている。
だから「イブロイは何者?」への答えは、
司教という肩書きだけでは足りない。
第1期からスフェン教内部の異常を知り、
ベリルへ情報を渡し、
第2期では王族救出の場でも判断を下す協力者である。
そして「なぜ傭兵団を味方だと知っていたのか?」についても、
現時点では依頼主まで断定出来ない。
ただしイブロイが、
ハノイや仮面の女性につながる情報線へ触れていたことは、
第11話の行動からかなり明確に見えてくる。
第11話で本当に重要なのは、
イブロイが答えを全部知っていたことではない。
ベリルより先に、
誰が今の敵で誰が今の味方なのかを判断出来たことだ。
その情報力こそが、彼の存在感を大きくしているのである。
片田舎のおっさん、剣聖になるIIまとめ
『片田舎のおっさん、剣聖になるII』の記事を、大聖堂襲撃・モーリス教皇とスフェン教・ロゼとホワイト・メイデン・ハノイとヴェルデアピス傭兵団・アリューシア・スレナ・ミュイなどに分けてまとめています。
ベリル、アリューシア、ロゼ、ハノイ、モーリス、ガトガ、ヴェスパー、スレナなど、気になる人物や物語の謎はこちらから探せます。


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