第2期最終回でモーリス教皇は死亡する。ベリルに動きを封じられた後、最後に剣を突き立てたのはロゼだった。
ハノイを追い詰めていた時も、敗北を認めた時も穏やかだったモーリスは、自らの死さえ信仰に背く出来事とは受け取らなかった。
なぜ罪を償う道を拒んだのか。ロゼは何を確かめて手を下したのか。二人が交わした最後の言葉から、その結末を追う。
第1章 結論:モーリス教皇の最後はロゼの剣による死亡
ベリルが動きを封じ、ロゼが最後の一撃を放つ
第2期最終回でモーリス教皇は死亡する。
ベリルたちとの戦いに敗れた後、
最後に剣を向けたのはロゼだった。
ベリルがモーリスの体を動けないように
押さえている間に、ロゼが自分の剣で
決着を付ける。教皇は倒された後に
逃げ延びたのでも、負傷したまま
姿を消したのでもない。
この最後を見分けるには、
ベリルの攻撃とロゼの攻撃を
一つに重ねないことが大切だ。
ベリルがまず剣を届かせた場所は腹部で、
続いて肩を貫いて地面へ縫い留める。
モーリスはここで動きを封じられるが、
まだ生きている。ロゼが教皇へ問いを向け、
返答を聞く時間も残されていた。
しかも腹部の傷は、二人が話している間に
モーリス自身の回復の力で塞がっていく。
ベリルが肩へ刺した剣を抜かずにいるのは、
負傷させただけでは拘束し切れないからだ。
ここで勝負が決まったからといって、
教皇の死亡まで決まったわけではない。
自分を治せる人物を目の前にして、
ベリルは剣を押さえ続けている。
ロゼが動くのは、その後である。
ベリルがモーリスと話し、
教皇が自分の行いを罪と認めないと分かる。
さらにロゼも、人々の暮らしを
信仰の前にどう置くのかと尋ねる。
返ってきた言葉を聞いてから、
彼女は教皇との別れを告げ、
ショートソードで最後の一撃を放つ。
戦闘中の勢いで斬った場面ではない。
ベリルはすぐそばにいたが、
ロゼの動きを止められなかった。
肩を押さえる剣から手を離せば、
回復できるモーリスを自由にしかねない。
スレナやアリューシアも居合わせたが、
最後の行動はロゼ自身が選んでいる。
四人が協力して勝った戦いと、
ロゼが教皇の生涯を終わらせた行動には、
この違いがある。
原作では、戦いを終えた後に
教皇の遺体が回収される。
その後も彼が生きて暗躍する余地を
残した描写ではない。
モーリスの生死だけを確かめたいなら、
答えは死亡で確定している。
ただ、それだけでは最終回の
あの場面が強く残るわけを
言い尽くせないだろう。
教皇はハノイを追い詰めていた時から、
強い怒りを見せていない。
ベリルの剣で身動きを封じられた後も、
取り乱して命乞いをする様子がない。
最後の一撃を受ける時まで
穏やかな顔を保っている。
人を危険にさらし、自分も死を迎えるのに、
なぜ同じ態度でいられるのか。
ここがモーリスの最後で最も気になる点だ。
穏やかな顔のまま死を迎えたのは何を受け入れたからか
モーリスが落ち着いて見えたことを、
何も感じない人だった、とだけ捉えると
最後の言動を見落としてしまう。
原作の彼は、ベリルに拘束された時点で
自分の計画が進められなくなったことを
認めている。そのうえで、自分が
ここで命を失うことにも逆らわない。
敗北と死を、信仰の外に起きた
不条理な出来事として扱わないのだ。
その態度は、戦いに勝っていた時と
ほとんど変わらない。
ハノイが膝をついていても、
集まった剣士たちに囲まれても、
モーリスは会話を続ける。
合成獣を放った計画が思うように
進まなかったことさえ、静かに口にする。
自分が優勢な時だけ余裕を装い、
劣勢になると表情が崩れる人物ではない。
ベリルは教皇へ、生きて罪を償う道を
示そうとする。ところがモーリスは、
世間から大罪と呼ばれる行いを
自分の罪とは認めない。
彼にとって先にあるのは
人々の暮らしや国の法ではなく、
信仰する神の教えだ。
その順番を最後まで変えないから、
ベリルの言葉も彼の中へ届かない。
ここで「死を望んでいた」とまで
決め付ける必要はない。
モーリスは死者蘇生の実現を目指し、
実際に合成獣を使って
計画を進めていた。生きていれば
なお動いた可能性もある。
ただ、敗北して逃げ道を失った時、
自分の死だけを特別な悲劇とはしない。
他者の犠牲も自分の最期も、
同じ信仰の中で受け止めてしまう。
だから、穏やかな顔は
無実を示すものでも、
反省したことを示すものでもない。
原作のベリルは最後まで教皇の
表情が変わらないことを見ているが、
その心の内を完全にはつかめていない。
穏やかさと、起こしたことの残酷さが
同時にそこにある。この食い違いが、
モーリスの最後を忘れにくくしている。
ロゼはその食い違いを、
自分の問いで確かめる。
教皇が人々の生活を尊ぶと言いながら、
信仰より上には置かないと答えると、
彼女はそこで行動を決める。
モーリスの表情が変わらないまま
ロゼの剣が動くからこそ、
最後の場面には勝利の高揚よりも
冷たい重さが残る。
第2章 ハノイを追い詰めた時から、なぜ穏やかだった?
第2期第11話から最終回へ、キマイラの混乱の先に教皇が立つ
モーリスの穏やかさは、
最後に敗れた時だけのものではない。
第2期第11話でベリルたちは、
グレン王子とサラキア王女を守りながら
宮殿へ向かう。その道中ではハノイと
激しく衝突し、互いの立場を
簡単には信じられない状況が続いた。
ようやく宮殿へ着いたところで、
モーリスが生み出した新たな脅威が現れる。
第12話では、ベリルたちが
キマイラを相手に別々の場所で戦う。
アリューシアは硬い獅子の頭へ
剣を届かせ、スレナたちも
別の個体を引き離して倒す。
ホワイト・メイデンとして戦うロゼも、
ベリルと行動を共にする。
一体を退ければ終わりではない。
教都の各所に放たれた脅威を止め、
残る仲間の安否を確かめる必要があった。
キマイラとの戦いが一段落すると、
ベリルとロゼはアリューシア、
スレナたちと合流する。
最後に向かうのは、ハノイと
プリムが担当した個体のいる方面だ。
ハノイはベリルと正面から衝突した
腕利きであり、簡単に倒される
相手とは考えにくい。
その男のいる戦場へ行けば、
事態を収められるという見通しもあった。
ところが、たどり着いた先で
目に入るのは、膝をついたハノイと
静かに立つモーリス教皇である。
剣を持つハノイが追い詰められ、
武器も構えも目立たない老人が
平然としている。最終回の公式あらすじも、
二人のこの対照的な姿を示していた。
モーリスの危険は、激しい形相から
伝わってくるものではなかった。
原作のベリルも、初めは目の前の老人から
戦士らしい圧力を感じ取れない。
善良な聖職者だと言われれば
信じてしまいそうな姿をしている。
しかしハノイが膝をつき、
ロゼも強く警戒している。
二人の状態が、見た目だけで
相手を判断してはいけないと告げる。
穏やかな顔と戦場の惨状が、
同じ場所に並んでいるのだ。
ロゼから黒幕がモーリスだと聞いていた
ベリルにも、本人の姿は予想外だった。
王族の婚姻を脅かし、教都に
キマイラを放った中心人物が、
目の前で静かに話している。
戦いを始める前から感情をむき出しに
していれば、まだ危険を測りやすい。
何も変わらない顔で立っているため、
どこから手を出すべきか分からない。
この静けさは、第1期から積み重なった
教会の出来事を知るほど重くなる。
第1期の終盤でベリルとロゼは
剣を交え、教会に属する彼女が
師へ武器を向けるところまで進んだ。
第2期では仮面を着けたロゼが戻り、
教会の頂点にいるモーリスを
危険な人物として見ている。
教会の内側を知る彼女が緊張しているのに、
教皇本人だけが落ち着いている。
その差が、戦いの前から不気味だ。
ハノイの窮地と対照的な態度が、モーリスの異様さを際立たせる
アリューシアはモーリスへ
拘束して連行すると告げる。
ベリル、スレナ、ロゼに加え、
スレナが連れてきた冒険者たちもいる。
人数だけなら教皇一人を押さえるのに
十分に見える。だがモーリスは、
取り囲まれたことへ声を荒らげない。
逃げるつもりはないと話しながら、
今ここで動けなくなることは困ると返す。
近くで膝をついていたハノイは、
教皇が妙な技を使うと警告する。
その声とほぼ同時に、
プラチナムランクの冒険者二人が
モーリスへ向かった。
次の瞬間、二人とも腹部を押さえて
吹き飛ばされる。ベリルは目を
離していなかったのに、
教皇が何をしたか捉えられない。
アリューシアにも動きは見えなかった。
神速の剣を振るう騎士団長の目にも
分からない攻撃を、モーリスは
大きな武器も持たずに放っている。
ハノイが倒れていた光景は、
偶然や不意打ちの結果ではなかった。
本人がまた二人を打ち倒したことで、
目の前の老人の危険が
ベリルたちにも現実のものとなる。
それでもモーリスの話し方は
戦闘の熱に引っ張られない。
周囲へ向けていた計画が思い通りに
進まなかったことを口にし、
倒れた者たちの犠牲まで
死者蘇生の実現へつなげて考える。
相手が痛みに苦しむ様子を見ても、
そこで自分の行いを止めようとはしない。
穏やかな声と、目の前で起きている
暴力がかみ合っていない。
ベリルは攻撃の正体を考え、
かつて教会騎士たちが使った
体を強める力へ思い当たる。
モーリスはそれを魔法ではなく、
神から授かった力として語る。
同じ現象を前にしても、
ベリルと教皇では受け止め方が違う。
この違いは、最後の問答へも続く。
ベリルが人の命と罪を問う間も、
モーリスは信仰の側から答え続ける。
ハノイの姿を見ていたからこそ、
ベリルたちは相手を甘く見ずに済んだ。
剣の技量だけなら、アリューシアや
スレナにも十分な自信がある。
それでも、攻撃した冒険者が
どう倒されたか見えない相手へは、
普段通りに踏み込めない。
ハノイが先に受けた打撃は、
モーリスの穏やかな顔の下に
どれほどの力があるかを示している。
そしてこの態度は、教皇が
追い詰められるにつれて消える
見せかけの余裕ではない。
ハノイを倒した時も、
ベリルの剣で動きを封じられた時も、
モーリスは大きく顔色を変えない。
戦況が逆転してなお続く静けさだから、
最後の表情が強く残る。
あの穏やかさを支えていたものは何か。
次に見るべきなのは、負けた教皇が
ベリルとロゼへ返した言葉である。
第3章 敗れたモーリスは、なぜ取り乱さなかった?
アリューシアの神速もかわした教皇を、ロゼの盾とベリルの剣が止める
原作でベリルたちがモーリスへ向かう時、
四人で囲めば押さえられるという
単純な見通しは持てなかった。
ハノイはすでに膝をつき、
駆け出した冒険者二人も
何をされたか分からないまま倒れている。
敵が武器を構えていれば
剣の間合いを測れる。しかしモーリスは、
静かに話しながら突然打撃を入れてくる。
ベリルが先に踏み込み、
スレナとロゼが左右から続く。
モーリスが二人の剣を避けて
体をねじったところへ、
アリューシアが背後から斬り込む。
「神速」と呼ばれる彼女の剣なら
届きそうな位置である。それでも
教皇は無理な姿勢から蹴りを放ち、
アリューシアを地面へ転がした。
四人で作った好機が反撃へ変わる。
アリューシアがすぐには戻れない中、
スレナは双剣で攻め続ける。
モーリスは剣の達人のように
攻撃を受け流しているのではない。
刃が届く寸前に体を曲げ、
本来なら次の動作へ移りにくい姿勢から
また逃げる。速い攻撃を重ねても
当たらないため、ベリルは
相手の体が強いだけでは説明できないと気付く。
教皇が強めているのは、
腕や脚の力だけではなかった。
原作のベリルは、目で動きを捉える力、
反射する速さ、見た情報を扱う
頭の働きまで高めていると見抜く。
アリューシアが背後へ回っても
反撃を受けたのは、剣の腕が
教皇に劣っていたからではない。
普通なら追えない動きまで
モーリスが見て、体を動かしたからだ。
ここでベリルが選ぶのは、
もっと速く斬ることではない。
アリューシアの速さで届かなかった以上、
正面から刃を振り続けても
相手に見られて避けられる。
必要なのは、モーリスが
攻撃を見通せない一瞬を作ること。
そのためにスレナが双剣で圧力をかけ、
ベリルが間合いへ入り、
ロゼは盾を持ったまま機会を待つ。
ベリルは自分の動きに隙を作り、
モーリスに反撃の拳を出させる。
その拳へ、ロゼが盾を差し入れた。
盾は打撃を受け止めると同時に、
教皇の視線も遮る。
体がどれほど強くても、
見えない場所の刃には
普段通りの反応ができない。
ベリルの剣は盾が作った死角から入り、
ようやくモーリスの腹を貫いた。
この場面のロゼは、まだ教皇へ
とどめを刺していない。
彼女はベリルの攻撃を通すために、
盾を持って前へ出た。
第1期の最後に師と剣を交えた元弟子が、
第2期の最終決戦では
師の剣を届かせる側へ回っている。
後でロゼ自身が下す判断とは別に、
まず二人が協力してモーリスの
強化された目を破ったことが重要だ。
モーリスの腹へ剣が届いた瞬間、
ベリルたちは優勢に立つ。
だが、攻撃が通っただけでは
教皇を拘束し切れない。
相手には傷を治す力もある。
剣の勝負を終わらせても、
モーリス本人とどう向き合うかが
まだ残っていた。彼が取り乱さない
様子を確かめるのは、
むしろここからになる。
腹の傷を治せても動けない――敗北を悟った後の振る舞い
ベリルは腹から剣を抜いた後、
モーリスの肩を貫いて
地面へ動けないように押さえる。
肩に剣が刺さっている限り、
簡単には体を起こせない。
それでもベリルは手を緩めない。
教皇が腹の深い傷さえ治せるなら、
少し自由を与えた隙に
反撃や逃走を許すかもしれないからだ。
モーリスは肩を貫かれ、
体を固定されたまま口を開く。
腹と肩に傷を負ってなお、
荒い声で怒鳴り散らさない。
自分が負けたことを認めても、
その口調は戦いの前と大きく変わらない。
ハノイを追い詰めていた時に見えた
穏やかさが、敗北した後にも続いている。
優勢な時だけ見せた余裕ではなかった。
ベリルの剣がモーリスに
刺さったままの場面を思い出すと、
二人の態度の差が際立つ。
ベリルは動きを封じるため
全力で剣を押さえ、教皇が
何をするか見張っている。
モーリスは傷つきながらも、
目の前の剣の出来まで気に掛ける。
同じ場所にいながら、
一人は次の危険に備え、
一人は会話を続けている。
ただし、落ち着いて話せることと、
もう何もできないことは違う。
原作では、ベリルたちが言葉を交わす間に
モーリスの腹の傷が塞がっていく。
肩は剣に押さえられているため
自由に治せないが、腹部は回復した。
ベリルが剣を抜いてしまえば、
敗れたはずの教皇がまた動けるかもしれない。
あの問答は安全な場所での会話ではなく、
危険な相手を押さえ続ける最中にある。
それでもモーリスは、
自分の力を誇示して助けを求める
取引へ持ち込もうとはしない。
敗北を認めた後も、
神への信仰を曲げる兆しを見せない。
ベリルからすれば、腹を治すほど
生きる力がある相手を、
このまま捕らえて裁きに渡す道もある。
だが教皇本人の口からは、
罪を認めて償うという言葉が出てこない。
ここでモーリスの穏やかな顔を
「観念して反省した表情」と
受け取ると、その後の問答と合わなくなる。
彼は負けたことを認めても、
それまで人々へしてきたことまで
間違いだったとは認めない。
剣で止めることはできた。
しかしベリルの言葉で、
モーリスの価値の置き方を
変えることはできなかった。
最終回の前半では、
教皇がなぜあれほど戦えるのかを
ベリルたちが探る。
ここでは逆に、動けなくなっても
なぜ態度が変わらないのかが
目の前の疑問になる。
モーリスの最後へつながるのは
強化された体だけではない。
傷を負った後も揺れなかった、
彼の言葉そのものなのである。
第4章 モーリスはなぜ「殺してくれ」と告げた?
死者蘇生を実現するという信仰は、敗北後も揺らがない
ベリルがモーリスへ確かめたのは、
教都の人々を危険にさらしてまで
何を成し遂げたかったのかということだ。
王子と王女を守りながら宮殿へ進み、
街に放たれたキマイラと戦った後では、
目の前の被害をただの計画の一部と
呼んで済ませることはできない。
ようやく教皇本人を止めたベリルには、
その口から答えを聞く必要があった。
モーリスが掲げるのは死者蘇生である。
亡くなった人を戻せるようになれば、
失った相手ともう一度会える。
願いそのものには、人が引き寄せられる
余地があるだろう。だが教皇は、
実現へ向かう途中で犠牲になる人々を
止まるべき合図とは捉えない。
街が傷つき、命が脅かされても、
計画を進める姿勢を変えなかった。
第1期を振り返ると、
ベリルはすでに教会の扱う
死と蘇生の異常へ触れている。
第6話では、死体が動いて人を襲う
事態に直面した。
亡くなった人を戻すという言葉から
思い浮かべる、懐かしい再会とは
かけ離れた光景である。
ベリルが見たその異常が、第2期では
教都を巻き込む計画へと大きくなる。
だからベリルには、
教皇の掲げる先の願いだけを聞いて
今起きている被害を忘れることができない。
第2期第11話には、王族を守って
宮殿へ移る一行と、モーリスが生み出した
脅威が描かれる。第12話では
ベリルたちがキマイラを止めても、
なおハノイが追い詰められている。
死者を救いたいと言う教皇の計画が、
生きている人々を危険にさらしていた。
モーリスの返答が恐ろしいのは、
その被害を知らないからではない。
彼は現実に人が犠牲になることを
踏まえたうえで、信仰と計画を
優先している。冒険者二人を
吹き飛ばした直後にも、
彼らを助けるために動くのではなく、
死者蘇生が完成した後のことを口にする。
目の前の命を後回しにする考えが、
戦闘中の行動にも表れていた。
ベリルに敗れた時点で、
少なくともその場で計画を
続けることはできなくなった。
しかしモーリスは、
敗北を教えの誤りとは結びつけない。
目指したことが途中で止まっても、
それまで自分が従ってきたものを
手放そうとしないのである。
体を拘束されても声が穏やかなのは、
ベリルと同じ尺度で勝敗や
人の命を見ていないからだろう。
彼が自分の死を受け入れる態度も、
この一続きの中にある。
犠牲になった人々の命を
信仰の下へ置いてきた人物が、
最後に自分だけは助かりたいと
訴えるわけではない。
その一貫性は、行いを正しくするものでは
決してない。ただ、自分自身の最期にも
同じ考えを向けているから、
命を絶たれる場面でも表情が
大きく崩れなかったと読める。
ベリルが求めた償いを拒み、自分の行いを罪と認めない
モーリスから自分を殺すよう
促す言葉が出た時、ベリルは驚く。
教皇を倒したからといって、
その場で処刑するつもりではなかった。
生きて捕らえ、してきたことに
向き合わせる道があると考えている。
だからベリルは、死んで終えるより
生きて償うべきだと伝える。
ところがモーリスは、
自分は罪を犯していないと返す。
世間の基準では大罪と呼ばれる
行動だと分かっていても、
自分が従う教えから外れていない以上、
罪を認めることはできない。
ここがベリルとの決定的な食い違いだ。
二人は同じ教都の混乱を見ているのに、
何を裁かれるべき行為と考えるかが違う。
モーリスは、人々が築いてきたものに
価値がないと言い切るわけでもない。
暮らしや文化を尊ぶという言葉も使う。
ただ、それらを信仰より上には置かない。
第2期第11話から最終回にかけて
王族や街の人々が守ろうとした生活は、
彼の中では教えに従うことより後になる。
だからベリルがいくら被害を挙げても、
償いを求める言葉としては届かない。
生きて裁きを受けたとしても、
モーリスが過去を悔いるかどうかは
誰にも断定できない。
だが、剣を向けられたこの時の彼は、
悔い改める姿勢を見せていない。
むしろ自ら死を促し、
罪を認めないまま終わろうとする。
ベリルが求めた償いと、
モーリスが受け入れた最後は
正面からぶつかっている。
ここで第1期のロゼを思い出すと、
二人の違いも見えてくる。
ロゼは教会の内側に身を置き、
孤児院の子供たちを守ろうとして
王子襲撃に関わり、ベリルと
剣を交えるところまで追い込まれた。
第2期では仮面を着け、
教皇が進めた計画を止めるために戻る。
同じ教会へ関わった人物でも、
過去に向き合う方向は一つではない。
ベリルはモーリスに
生きて償う道を示した。
その言葉を拒まれた後、
次に教皇へ問いを向けるのがロゼである。
彼女には、教会にいた者として
確かめずに終われないことがある。
人々の生活を信仰より下へ置くのか。
その答えを本人の口から聞いた時、
モーリスの最後は
ベリルの剣だけでは決まらないものになる。
モーリスは敗北で考えを変えず、
ベリルも罪を認めない教皇を前に
簡単な答えを出せない。
互いの言葉がかみ合わないまま、
ロゼが二人の間へ入ってくる。
穏やかな顔で死を促した教皇に、
彼女は何を聞き、何を選ぶのか。
最後の一撃を理解するには、
ロゼが待っていた返答を
次に確かめる必要がある。
第5章 ロゼは何を聞いて、教皇へ剣を向けた?
人々が築いた暮らしを、信仰より下に置くのかと問う
ベリルがモーリスを地面へ押さえた後、
ロゼはすぐには剣を突き立てない。
教皇とベリルのやり取りを聞き、
自分でも一つ確かめる。
死者蘇生という大きな目標を掲げる一方で、
モーリスは生きている人々の暮らしを
どう扱ってきたのか。ロゼの問いは、
その一点へ向けられていた。
モーリスが起こした事件で、
教都は危険な場所へ変わった。
第2期第11話では、ベリルたちが
グレン王子とサラキア王女を守って
宮殿へ移動する。第12話では、
アリューシアやスレナがキマイラと戦い、
ハノイたちも追い詰められる。
剣士が止めに入れた場所だけが
教都のすべてではない。事件に巻き込まれた
人々の日々の生活も、そこにある。
だからロゼは、剣の勝ち負けを
もう一度問い直しているわけではない。
モーリスの計画が止まった今、
彼自身が市民の暮らしをどう見ているかを
確かめようとしている。
教皇の掲げる信仰が尊いとしても、
人々が長い時間をかけて作った街や生活を
踏みつけてよいのか。ロゼは教会の外から
来たベリルより、その答えを
直接聞かずに終われなかった。
モーリスの返答は、
人間の暮らしには価値がない、
という単純なものではない。
彼も生活や歴史を尊ぶとは言う。
しかし、その上には必ず信仰を置く。
どれだけの人が危険にさらされても、
教えに従うことの優先順位は変わらない。
ロゼが聞きたかったのは、
「大切だ」という言葉の有無ではなく、
どちらを守る時に人が犠牲になるかだった。
この返答は、戦闘中のモーリスの
振る舞いともつながる。
冒険者二人を倒した後、
彼はまず二人の傷を案じなかった。
アリューシアを蹴り飛ばした後も、
負傷させたことを悔いる様子はない。
戦いで人が倒れるたびに、
死者蘇生を成し遂げた先へ
思考を進めてしまう。
ロゼの問いは、現場で見たことが
教皇自身の考えと一致しているかを
最後に確かめるものだった。
第1期第10話を思い返すと、
ベリルが再会したロゼは
隣国の教会騎士団で副団長を務めていた。
人懐っこく、子供たちの相手も
得意な人物として描かれている。
人の暮らしや子供のいる場所は、
ロゼにとって遠い話ではない。
その彼女が、守るべきものを
教義の後へ回す教皇と向き合っている。
ベリルはモーリスへ生きて罪を
償うよう伝えたが、教皇は
自分の行動を罪と認めなかった。
ロゼもまた、返答を聞く前から
彼が簡単に考えを変えるとは
思っていなかったかもしれない。
それでも、自分の耳で確かめることには
重みがある。戦いの高ぶりだけで
命を奪うのではなく、最後の言葉を
聞いたうえで彼女は動くからだ。
モーリスが話し終えた後、
ロゼは短く応じる。
仮面に顔の上半分を隠され、
その時どんな表情だったのかを
ベリルは読み取れない。
見えるのは、問いを投げ、
答えを受け取ったという行動だけだ。
彼女が何を胸の中で考えたかを
決め付けるより、その直後に
何をしたかを見た方が、
最後の場面ははっきりする。
最後の答えを聞き、ロゼが自らとどめを刺す
原作でロゼはモーリスへ
別れの言葉を告げる。
モーリスも穏やかなまま応じ、
ロゼのショートソードが
彼の額から頭へ突き通される。
ベリルはその動きを目で追っているが、
肩を押さえた剣を維持しており、
彼女の手を止められない。
近くにいるスレナやアリューシアも
間に合わなかった。
ここで剣を振るったのはベリルではない。
腹を貫き、肩を地面へ固定したのは
ベリルの仕事だった。
だが教皇が生きたまま
言葉を交わせる時間を経て、
ロゼが最後の一撃を選んでいる。
二人の攻撃をまとめて
「ベリルが教皇を倒した」で終えると、
ロゼが引き受けた行動を
見落としてしまう。
ロゼが剣を向ける直前まで、
モーリスは償いを拒んでいた。
自分たちの計画で生じた犠牲を知り、
なお信仰の順番を変えない。
しかも腹の傷を治す力は残っている。
ベリルが押さえている間は動けなくても、
拘束が解けた後に何をするかは分からない。
ロゼの行動には、その場の危険を
終わらせるという面もある。
一方で、危険な相手だったから
誰が殺しても同じ、とはならない。
ロゼは第1期で、教会側の人間として
ベリルと剣を交えた。
その後、第2期では仮面を着けた
ホワイト・メイデンとして戻ってくる。
以前は教会に従う中で
守りたい人々を追い詰めかねなかった彼女が、
今度は教会の頂点に立つ人物へ
自分の剣を向けたのである。
とどめを刺した後、
ロゼはモーリスが教えに従って
命を終えたと告げる。
そこに勝利を喜ぶ様子はない。
教皇が最後まで自分の考えを
捨てなかったことを踏まえ、
その最期を言葉にしている。
彼女がどれほど迷ったかは
仮面の下から確かめられない。
ただ、発した言葉と剣の動きは揺らがない。
ベリルの反応は、ロゼの行動が
軽いものではないと伝える。
彼は教皇を生きたまま捕らえ、
償わせる道を考えていた。
目の前でロゼが決着を付けても、
いつものようにすぐ納得はできない。
モーリスがどんな事件を起こしたかと、
ロゼ自身の手で命を奪ったことは、
ベリルの中で別々に重く残る。
ロゼが教皇を止めた後にも、
彼女の選択は消えない。
人々を守るためだったと言えても、
教皇の命を自分で絶った事実は続く。
だからこの最後は、
悪い敵を倒してすっきり終わる場面ではない。
モーリスは穏やかな顔で死を迎え、
ロゼは教皇を殺した手を持ったまま
その先を生きることになる。
第6章 ロゼとモーリスの対立はいつから始まっていた?
第1期の王子襲撃と孤児院――ロゼが教会に従った過去
ロゼが教皇へ剣を向ける場面を
第2期の戦いだけで見ると、
仮面の傭兵が黒幕を倒した結末になる。
だが第1期から追うと、
彼女はもともとスフェン教の
教会騎士団で副団長を務めていた。
第1期第10話、使節団と共に現れた
ロゼを見て、ベリルはかつての
教え子との再会を喜ぶ。
この時点では再び師弟が
剣を交えるとは思えない。
その直後、王族を狙う襲撃が起きる。
第1期第11話では、刺客から
王族を守ったベリルたちの前で、
捕らえる手掛かりになるはずの
刺客が一斉に自決する。
ルーシーは、計画を立てた者が
隣国側にいると見ていた。
晴れやかなはずの王族の行事は、
王権と教会の対立が噴き出す
危険な場所へ変わっていく。
第1期第12話でベリルが知るのは、
刺客が殺到する状況を作った
中心にロゼがいたことだ。
元弟子は師に事情を問われ、
その後二人は剣を構える。
教会騎士団の副団長として
王族を守る側に見えた人物が、
王子の命を狙う計画に関わっていた。
再会の時に見せた親しさと、
ベリルへ剣を向ける行動の差は大きい。
ロゼには、孤児院の子供たちを
守りたいという切実な事情があった。
教会側の圧力に逆らえば、
自分だけでなく子供たちへ
危険が及びかねない。
しかし、守るために従った結果、
王子襲撃へ関わり、
尊敬するベリルとも戦うことになる。
大切な人々を守るつもりで
取った行動が、別の人々の命を
脅かすところまで進んでしまった。
この経験を知ると、第2期最終回で
ロゼが教皇へ向けた問いが
単なる立派な言葉に聞こえなくなる。
自分もかつて教会の中で、
人を守るために従いながら、
別の人を危険にさらした。
人々の暮らしを信仰の下へ置く
モーリスの返答には、
彼女が一度抜け出そうとした
行き止まりが見えていたはずだ。
第1期でロゼがベリルへ
剣を向けたことも、なかったことには
できない。ベリルは彼女の事情を知っても、
王子襲撃への関与を
無傷のまま終わらせられなかった。
師弟であっても、したことの重さは残る。
だから第2期でロゼが教皇を止めても、
彼女自身が突然、何の負い目もない
正しい立場へ移ったわけではない。
第1期第10話の親しげな再会、
第11話の王子襲撃、
第12話の師弟対決を思い返すと、
ロゼがモーリスへ最後に求めた答えが
つながってくる。
教会の頂点に立つ人物は、
人々の生活を守るために
自分たちの行いを変えられるのか。
かつて教会に従ったロゼだからこそ、
教皇本人の口から聞く必要があった。
第2期で仮面を着けて戻り、教皇本人と向き合うまで
第2期のロゼは、かつてと同じ姿で
ベリルの前へ戻らない。
顔の上半分を仮面で隠し、
ホワイト・メイデンという名で動く。
教会騎士団の副団長として
堂々と隣に立った第1期とは違い、
第2期では正体を伏せた傭兵として
戦場に現れる。再会はできても、
以前の役職や距離へそのまま
戻れる状態ではなかった。
仮面を着けた彼女は、
最終回でベリルと行動を共にする。
キマイラとの戦いを越え、
アリューシアやスレナとも合流し、
ハノイが追い詰められた場所へ向かう。
そこにいるモーリスは、
剣士らしい構えも見せず、
静かに話している。
教会の内側を知るロゼは
彼を警戒し、ベリルもその緊張を
見て危険を感じ取る。
モーリスが黒幕だとベリルへ
伝える場面でも、ロゼは
知っていることをすべて
話せるわけではない。
誰から情報を得て、どう動いたかには
口にできない部分が残る。
それでも教皇を止めるため、
仮面のまま剣と盾を持って
現場へ来た。第1期には
教会側の計画から抜け出せなかった
ロゼが、今度は教皇へ向かっている。
戦闘では、ベリルの剣を
モーリスへ届かせる役を担う。
教皇が拳を繰り出した瞬間、
ロゼが盾で受け止め、
同時に相手の視界を遮る。
第1期の公式人物紹介でも、
ロゼは守りの巧みな剣士とされていた。
その得意な戦い方が、
今度はベリルと並んで
教皇を止めるために使われる。
ただし盾を差し入れた時点で、
モーリスの命を奪うことまで
ベリルと決めていたわけではない。
ベリルは剣で体を押さえ、
教皇へ償いを求める。
ロゼはその場でモーリス自身の
答えを聞き、最後に自ら剣を動かした。
戦いの連携と、とどめを刺す判断は、
同じ場面で起きても別の選択である。
第1期では、子供たちを守りたくて
教会に従い、師へ剣を向けた。
第2期では仮面を着け、
教会の頂点に立つモーリスへ
暮らしと信仰について問う。
二つの戦いでロゼが見ているのは、
いつも守りたい人々の命だ。
ただ、そのために剣を向ける相手を
最後は自分で決めたところに、
教皇との対決の重さがある。
モーリスの死亡だけを知れば、
事件の結末は分かる。
しかしロゼの過去まで思い出すと、
彼女が最後の問いを他人任せに
しなかったことも見えてくる。
教皇は人々の暮らしより
信仰を優先する考えを曲げず、
ロゼはその答えを聞いて剣を放つ。
第1期から続いた教会との関わりが、
二人の最後のやり取りへ
つながっていたのである。
第7章 モーリスの死亡後、何が残った?
ここからは、アニメ第2期最終回の後に原作で描かれる、教皇の遺体回収と事件報告にも触れる。
教皇の遺体が回収され、死者蘇生を追った本人の生涯が閉じる
ロゼの剣を受けた後、
モーリスは再び立ち上がらない。
ベリルたちは負傷者と教皇の遺体を回収し、
グレン王子、サラキア王女らが待つ
宮殿へ向かう。戦闘中には腹の傷を
治したモーリスだが、ここでは
生きて捕らえた人物として
扱われていない。死亡したことは
戦いの後の行動からも確かめられる。
遺体を運ぶ場面が重いのは、
亡くなった人物が教都で
スフェン教を率いてきた教皇だからだ。
第2期第11話、ベリルたちは
王族を守りながら宮殿へ急ぎ、
モーリスが生み出したキマイラに
行く手を脅かされた。第12話では、
ハノイまで追い詰められる。
その中心人物が死亡しても、
傷ついた街がすぐ元に戻るわけではない。
宮殿でベリルたちは、王子へ
教都で起きたことを報告する。
モーリスを生きて捕らえることは
できなかったと伝えるベリルに対し、
グレンは事態を収めた働きを認める。
この場で王子が聞いているのは、
敵を倒したという知らせだけではない。
国教の頂点に立つ人物が、
都を危険にさらした末に命を落とした
という、国全体へ及ぶ出来事だ。
ベリルが報告の際に言葉を選ぶのも、
ロゼの一撃を見ていたからである。
モーリスは戦闘中に受けた傷で
そのまま倒れたわけではない。
ベリルが動きを封じた後、
ロゼが自ら剣を突き立てた。
誰が最後に手を下したのかまで
詳しく語れば、教皇を殺した者として
ロゼの立場が問われることになる。
ベリルには、勝利の報告だけでは
片付かない事情が見えていた。
教都の人々にも、いつまでも
教皇の死を伏せてはおけない。
モーリスは名も知られぬ敵ではなく、
国の信仰の中心にいた人物だ。
死者蘇生を目指して多くの人を
危険にさらした本人が、
最後には遺体となって運ばれる。
生き返らせるという願いを掲げた人の
死が確定した後、残された者たちは
その願いの下で起きた被害と向き合う。
ここで教皇の最期を、
自分の命も差し出したから
立派だったとは受け取れない。
ハノイは倒れ、冒険者も吹き飛ばされ、
アリューシアは戦線を離れた。
ロゼが最後に問うた、街の人々の
暮らしも脅かされている。
モーリスが自分の死を静かに
受け入れたことと、他人へ強いた
犠牲の重さは別に残る。
ロゼが背負う教皇殺しと、ベリルが忘れられない最後の表情
ロゼは教皇を止めた後も、
仮面を着けたままベリルたちのそばにいる。
スレナとハノイが去り、
アリューシアも騎士たちのもとへ戻る。
人々がそれぞれの役目へ向かう中、
ベリルにはロゼへ聞きたいことが残る。
教皇へ向けた最後の問いも、
とどめを刺した判断も、
いつもの師弟の会話だけで
簡単に済ませられるものではない。
第1期第10話でベリルが
ロゼと再会した時、彼女は
教会騎士団の副団長だった。
第12話では王子襲撃に関わった
元弟子として、ベリルと剣を交える。
そして第2期最終回では、
仮面の傭兵として教皇へ剣を向けた。
立場は何度も変わっているが、
ロゼ自身が行ったことまで
仮面で覆い隠せるわけではない。
教皇を生かせば再び危険が及んだ
可能性はある。それでもベリルは、
ロゼが命を絶った瞬間を
その場で受け入れ切れなかった。
彼はモーリスを地面へ押さえ、
生きて償う道を求めていた。
ロゼは教皇から返答を聞き、
別の結末を選んだ。
同じ敵を止めようとしていても、
最後に二人が選んだ行動は違う。
ロゼの言葉が揺らがなかったからといって、
彼女に負担が残らないとも言えない。
第1期では孤児院の子供たちを守ろうとして
教会の計画に関わり、ベリルへ
剣を向けるところまで進んだ。
第2期では自分の足で教皇の前へ立ち、
人々の暮らしをどう見るか問い掛けた。
教会に従わされた過去を持つ彼女が、
今度は教皇を殺した事実と共に
生きていくことになる。
もう一つ、ベリルの目に残るのは
モーリスの最後の顔である。
教皇はハノイを追い詰めた時も、
自分が拘束された時も、
ロゼの剣を受けた後も
穏やかな表情を崩さなかった。
ベリルはその顔を見てなお、
教皇がどのような心境で死を迎えたか
すべて分かったとは思っていない。
表情だけでは、その人のしたことも
心の内も言い切れないからだ。
モーリスの最後を知りたい時、
答えは「ロゼの剣で死亡した」で終わらない。
彼は罪を認めず、ロゼの問いにも
信仰を最優先する考えで答えた。
ロゼはその答えを聞いて手を下し、
ベリルには彼女の行動と
教皇の穏やかな顔が残った。
戦いが終わって遺体が運ばれても、
あの場で交わされた言葉は
すぐには消えない。
最終回で穏やかに立っていた老人は、
敗れた時にも態度を変えず、
最後まで同じ教えの中にいた。
その姿を恐ろしく感じるのは、
死を怖がらなかったからだけではない。
自分の命にも他人の暮らしにも、
信仰より上の位置を与えなかったからだ。
モーリスの死亡によって計画は止まる。
だが、教都で傷ついた人々と、
教皇へ剣を向けたロゼの時間は
その後も続いていく。
片田舎のおっさん、剣聖になるIIまとめ
『片田舎のおっさん、剣聖になるII』の記事を、大聖堂襲撃・モーリス教皇とスフェン教・ロゼとホワイト・メイデン・ハノイとヴェルデアピス傭兵団・アリューシア・スレナ・ミュイなどに分けてまとめています。
ベリル、アリューシア、ロゼ、ハノイ、モーリス、ガトガ、ヴェスパー、スレナなど、気になる人物や物語の謎はこちらから探せます。



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