PR

【片田舎のおっさん剣聖II】大聖堂の阿鼻叫喚は何が起きた?動く死体と暗殺者が婚姻の儀を襲撃

記事内に広告が含まれています。

大聖堂の阿鼻叫喚は、グレン王子とサラキア王女の婚姻を狙い、魔術で動かされた大量の死体と生身の暗殺者が同時に雪崩れ込んだ王族襲撃だった。
ベリルは第1期のレビオス司教事件と同じ異常を見抜き、アリューシアやホワイト・メイデンと迎撃するが、死体の群れは王族へ暗殺者を近づけるための壁としても利用される。
しかも大聖堂の惨劇は本命ではなく、モーリス教皇側には合成獣まで用意されており、婚姻の儀そのものが王権派を一気に潰すための入口だった。

※ここからは『片田舎のおっさん、剣聖になるII』第10話と、その先の展開につながる内容に触れます。

  1. 第1章 大聖堂の阿鼻叫喚は、動く死体と暗殺者による王族襲撃
    1. 婚姻の儀が終わる直前、静まり返った大聖堂の外から異変が始まった
    2. 大量の死体は囮でもあり、その中には生身の暗殺者まで紛れていた
  2. 第2章 婚姻の儀はなぜ襲撃の舞台に選ばれた?
    1. グレン王子とサラキア王女が一か所へ揃う、狙う側には絶好の機会だった
    2. 本来祭壇に立つはずだったモーリス教皇が不在だったことも大きな違和感になる
  3. 第3章 襲ってきた「動く死体」は何者?
    1. ベリルは一目で、第1期第6話のレビオス司教事件と同じ異常だと気付いた
    2. 死体は魔術で動かされており、教都の外まで被害が広がっていく
  4. 第4章 死体の群れには人間の暗殺者まで紛れていた
    1. ベリルは「痛みで止まらない死体」と「狙いを変える人間」の動きの差を見抜いた
    2. 第1期の王族暗殺未遂よりも、護衛側を崩す仕掛けが一段増えていた
  5. 第5章 ホワイト・メイデンは大聖堂で何をした?
    1. 動く死体の最前線に立ち、ベリルたちが王族を逃がす時間を作った
    2. ホワイト・メイデンの行動が、ベリルにとって「味方だ」と判断する材料になった
  6. 第6章 ヴェルデアピス傭兵団はなぜ今度は王族を助けた?
    1. 以前はベリルたちを襲ったハノイが、今度は依頼を受けて救援側へ回った
    2. 「昨日の敵でも今日は依頼相手を守る」という傭兵団の価値観が、ベリルと衝突する
  7. 第7章 大聖堂襲撃は第一段階にすぎず、その先に合成獣まで用意されていた
    1. 大聖堂を脱出しても終わらず、教都全体を巻き込む次の攻撃が待っていた
    2. ホワイト・メイデンがモーリス教皇の名を出し、阿鼻叫喚の背後が一本につながる

第1章 大聖堂の阿鼻叫喚は、動く死体と暗殺者による王族襲撃

婚姻の儀が終わる直前、静まり返った大聖堂の外から異変が始まった

第10話で「大聖堂に阿鼻叫喚が響き渡る」とされる場面は、
単に式典へ暴徒が乱入した程度の騒ぎではない。
グレン王子とサラキア王女の婚姻の儀が大詰めを迎えた瞬間、
大聖堂の外で警備していた教会騎士たちの声が急に荒くなり、
それまで静かだった堂内へ異変が伝わってくる。

ちょうど二人が誓いを終え、
あとは互いの指へ結婚指輪をはめれば婚姻が成立するという場面。
大司教ダートレスが式を進め、
参列者も祭壇へ意識を集中させていた。
そこへ拝廊の向こうから騒ぎが届き、
扉越しに警備の騎士が侵入者を制止する声まで響く。

ベリルはこの時点で、
単なる酔客や式典への乱入ではないと警戒する。
ここまでグレン王子を狙う襲撃を何度も経験しており、
しかも王族二人が同じ場所へ揃う婚姻当日。
警備が厚いことまで承知したうえで来るなら、
突破できる手段を用意していると考える方が自然だった。

そして実際、
扉の向こうから押し寄せてきたのは普通の人間ではなかった。
教会騎士に止められても前進し、
傷を受けても痛みで怯まず、
人間なら倒れるはずの攻撃を受けながら大聖堂へ雪崩れ込んでくる。
内部は一気に婚礼会場から戦場へ変わる。

ベリルたちが直面したのは、
すでに死亡している人間を魔術で動かした集団だった。
剣で斬っても痛みを感じないため、
腕や肩を傷つけた程度では止まらない。
前へ進む機能そのものを奪うため、
胴体や下半身を大きく断たなければならなかった。

この異常な敵を見て、
ベリルの中では第1期の記憶がすぐにつながる。
レビオス司教を巡る事件で、
木箱から現れた死体が動き出し、
通常の人間とは違う止め方をしなければならなかった。
今回の大聖堂でも、それと酷似した異常が再び起きていた。

大量の死体は囮でもあり、その中には生身の暗殺者まで紛れていた

大聖堂が本当に阿鼻叫喚となったのは、
動く死体の数が多かったからだけではない。
ベリルが戦いながら観察すると、
群れの中に明らかに動きの違う者がいる。
ただ前へ進む死体とは違い、
こちらの隙を見て王族へ抜けようとする人影だった。

ベリルが進路を塞ぐと、
その人物の手には鋭い短剣が握られている。
つまり敵は、
大量の死体を無秩序に暴れさせていただけではない。
死体の群れを壁と囮にし、
その中へ生身の暗殺者を混ぜて王子と王女へ接近させていた。

暗殺者はベリルに止められると、
短剣の狙いをすぐ首へ変える。
しかしベリルは手首の動きを見切り、
腕を押さえて腹部へ剣を突き込む。
動く死体と違い、生身の人間なら致命傷で止まる。
戦場の中で敵の種類を瞬時に切り替えて対処している。

その直後、
ベリルはサラキア王女へ身を低くするよう指示する。
王女も混乱して動けなくなるのではなく、
すぐグレン王子の肩を押し、
二人で低い姿勢を取る。
ベリルたちは敵を排除しながら、
まず王族へ攻撃が届かない空間を作らなければならなかった。

この場面は第1期の王族暗殺未遂とも重なる。
バルトレーンでもベリルは、
刺客から王族を守るため周囲を制圧し、
護衛対象へ頭を下げるよう指示している。
今回も構図は似ているが、
敵側はそこからさらに一段進んでいる。

前回は生身の刺客が中心だった。
今回は痛みで止まらない死体を大量投入し、
その隙間へ本物の暗殺者を隠す。
正面から戦えば死体に足を止められ、
死体ばかり見れば暗殺者が王族へ届く。
護衛側へ二種類の判断を同時に要求する攻撃だった。

だから「大聖堂の阿鼻叫喚」とは、
死体が暴れて参列者が逃げ惑っただけの場面ではない。
王族二人が祭壇にいる最も逃げにくい瞬間を狙い、
動く死体を大量投入し、
その混乱へ暗殺者を紛れ込ませた計画的な襲撃だったのである。

第2章 婚姻の儀はなぜ襲撃の舞台に選ばれた?

グレン王子とサラキア王女が一か所へ揃う、狙う側には絶好の機会だった

婚姻の儀が危険だった最大の要因は、
グレン王子とサラキア王女が同時に大聖堂へ入ること。
両国の王族が同じ祭壇へ立ち、
儀式の最中は移動することも難しい。
襲撃側からすれば、
別々に狙うより一度に二人へ届く可能性がある。

しかも婚姻の日程は突然決まったものではない。
サラキア王女の輿入れ自体が国家間の重要行事であり、
第9話ではベリルたちも国境を越え、
教都ディルマハカまで正式な護衛団として入っている。
教皇側が婚姻の日を知らなかったとは考えにくい。

大聖堂へ入る前から、
ベリルは警備へ小さな違和感を持っていた。
入口でベリルとアリューシアは武器を預けるよう求められるが、
アリューシアには事前にその話が伝わっていない。
王族警護を担うレベリオ騎士団長へ説明がないのは不自然だった。

もちろん、
王族同士の婚姻へ武器を持ち込ませない措置自体は理解できる。
問題は誰が決め、
なぜ護衛側へ共有されていなかったのか。
ベリルはガトガが教会騎士団の立て直しに動いていることを知っているだけに、
なおさら現場の食い違いを警戒していた。

つまり大聖堂の襲撃は、
完全に何の前触れもない奇襲ではない。
武装解除、
王族二人の集中、
大勢の参列者、
移動しにくい儀式中という条件が重なっていた。
敵側から見れば、混乱を作りやすい状況が揃っていたのである。

本来祭壇に立つはずだったモーリス教皇が不在だったことも大きな違和感になる

婚姻の儀が始まった後にも、
ベリルたちはもう一つ妙な点へ気付く。
祭壇へ現れたのは、
スフェン教の最高指導者モーリス教皇ではなく、
ダートレス大司教だった。

王子と王女という国家の中枢同士の婚姻。
しかもスフェンドヤードバニア側の文化に従って執り行われる式なら、
本来は教皇本人が進行役を務めても不思議ではない。
アリューシアもその点を気にし、
予定ではモーリス教皇が出るはずだったと口にする。

しかし実際には、
教皇は大聖堂へ姿を見せていない。
代わりにダートレス大司教が祭壇へ立ち、
何事もないまま式が進められていく。
その直後に動く死体と暗殺者が雪崩れ込むため、
教皇不在の印象は一気に変わる。

ベリルも戦闘中、
バルトレーンで起きた王族暗殺未遂と今回の事件が似ていると感じる。
どちらも王族が標的になり、
教皇派の関与を疑わせる状況が重なっている。
そして今回は、
本来その場所にいるはずの教皇本人だけが危険な大聖堂から外れていた。

さらに大聖堂を脱出した後、
ホワイト・メイデンが初めて声を発し、
モーリス・パシューシカの名前を告げる。
グレン王子が驚いて問い返すと、
彼女は教皇が今回の凶行へ関わっているという意思を示す。

ここまでつながると、
婚姻の儀が偶然襲撃されたという見方は難しくなる。
王族が二人とも同じ場所へ入り、
本来いるはずの教皇は不在。
そのタイミングで動く死体と暗殺者が大聖堂へ投入される。

しかも攻撃は、
大聖堂だけで終わる予定ではなかった。
外ではさらに別の戦力が用意され、
王族が大聖堂から逃げ延びても次の危機が待っている。
婚姻の儀は襲撃全体の終着点ではなく、
王権側を一気に追い詰める最初の舞台として利用されたのである。

第3章 襲ってきた「動く死体」は何者?

ベリルは一目で、第1期第6話のレビオス司教事件と同じ異常だと気付いた

大聖堂へ雪崩れ込んできた人影は、
剣を向けられても怯まず、
斬られても痛みで止まらない。
外で警備していた教会騎士も、
制止の声を最後まで言い切れないまま群れに呑み込まれている。

その異常を見たベリルは、
アリューシアへすぐ戦い方を伝える。
腕や肩を傷つけるだけでは駄目で、
胴体か下半身を確実に切り離し、
前へ進む機能そのものを奪えという指示だった。

ベリルがここまで早く判断できたのは、
同じような敵と一度戦っているから。
第1期第6話「片田舎のおっさん、死者と対峙する」で、
レビオス司教が祝詞を唱え、
木箱へ収められていた死体を動かした事件があった。

あの時ベリルの前へ現れたのは、
単なる魔物ではなかった。
すでに死亡している人間の肉体を術によって動かし、
攻撃されても痛覚で止まらず、
生きた人間のような恐怖や躊躇も見せない存在だった。

しかも第1期の死体には、
ミュイの姉と考えられる女性まで含まれていた。
ベリルは目の前にいるものが死者だと理解しながら、
それでも止めるために自分の剣で斬るしかなかった。
第6話の中でも、彼に強く残った戦いだった。

だから大聖堂で同じ動きを見た瞬間、
ベリルには「普通の人間ではない」と分かる。
今回違うのは、
かつてのように一体や数体を相手にするのではなく、
拝廊の入口を埋めるほど大量に押し寄せていることだった。

アリューシアもベリルの指示を受け、
通常の対人戦とは斬る場所を変える。
相手を怯ませる、
武器を落とさせる、
傷を負わせて退かせるといった戦い方では足りない。
脚や胴体を断ち、物理的に動けなくする必要がある。

これはベリルたちにとっても厄介だった。
一体ごとの剣技は高くない。
しかし斬られても前進を続けるため、
普通なら一撃で終わるはずの相手へ、
さらに確実な一太刀を使わなければならない。

しかも場所は大聖堂の内部。
広い野外のように自由に距離を取れず、
中央にはグレン王子とサラキア王女がいる。
参列者や外交官まで残っているため、
ベリルたちは好きな方向へ敵を誘導することもできない。

死体は魔術で動かされており、教都の外まで被害が広がっていく

大聖堂を脱出した後、
サラキア王女は「あれは何だったのか」と疑問を口にする。
そこで答えるのが、
ヴェルデアピス傭兵団の魔術師プリム。
死体へ魔力をまとわせ、
外から動かしている魔術の一種だと説明する。

つまり大聖堂の襲撃者は、
蘇生して生き返った人間ではない。
死体そのものへ魔力を通し、
命令に近い方向性を与えて動かしている。
痛みで止まらないのも、
本人の意思で戦っているわけではないからである。

原作では、
暗殺者だけは死体の群れから襲われていない。
ここからベリルは、
死体へある程度の行動方向を与えられると見る。
完全に一人ずつ識別しているわけではなくても、
少なくとも標的側へ押し寄せさせる程度の制御は可能だった。

だから被害は大聖堂内部だけでは終わらない。
脱出したベリルたちが大通りへ出る頃には、
周辺からも悲鳴や怒号が飛び交っている。
あれだけ大量の死体を集めて動かした以上、
大聖堂へ入り切らなかった個体まで教都へ流れ出していた。

ここで第1期のレビオス事件とのつながりも、
さらに重くなってくる。
一度目は地下で行われていた禁忌だったものが、
今度は王族の婚姻という公の場へ大量投入された。
使われている術が似ていても、
規模と使い方は明らかに拡大している。

第1期では、
死者を弄ぶ行為そのものにベリルが怒りを覚えた。
第2期ではその死体が、
王族暗殺のための兵力として大量に利用される。
ベリルにとっては、
過去に止めたはずの異常が別の場所でさらに大きくなって戻ってきた形だった。

第4章 死体の群れには人間の暗殺者まで紛れていた

ベリルは「痛みで止まらない死体」と「狙いを変える人間」の動きの差を見抜いた

大聖堂での戦いが厄介だったのは、
敵がすべて同じ種類ではなかったこと。
動く死体だけなら、
ベリルがアリューシアへ伝えたように、
脚か胴体を切り離して進行を止めれば対処できる。

ところが群れの中から、
一体だけ明らかに違う動きの黒装束が飛び込んでくる。
手には切れ味の鋭い短剣。
死体のように無造作に前へ進むのではなく、
ベリルの位置を見ながら隙を突いて王族へ抜けようとしていた。

ベリルがその進路へ入ると、
暗殺者は短剣を振るって突破を狙う。
最初の攻撃を止められると、
手首を返してベリルの首へ狙いを変える。
この瞬間だけでも、
死体とは判断能力がまったく違う。

ベリルはその右手首を左手で掴み、
腹部へ剣を突き込んで動きを止める。
ここでは死体に使っていた戦い方をしない。
生身の人間なら致命傷を負えば、
痛みと身体機能の低下によって確実に止まるからである。

同じ大聖堂内で、
ベリルは敵を見た瞬間に戦い方を切り替えている。
死体なら脚や胴体を断つ。
生きた暗殺者なら、
攻撃の意思と急所を読んで一撃で止める。
群衆の中でこの判断を誤れば、王族へ道を開けることになる。

そしてベリルは気付く。
敵は死体をただ大量投入したのではなく、
その群れへ本物の暗殺者を隠していた。
止まらない死体へ護衛側の視線を集中させ、
その隙に生身の人間を王子と王女へ近づける構造だった。

第1期の王族暗殺未遂よりも、護衛側を崩す仕掛けが一段増えていた

ベリル自身も、
この状況を見てバルトレーン南区で起きた王族暗殺未遂を思い出している。
第1期でもグレン王子たちは刺客に狙われ、
ベリルは護衛対象へ身を低くするよう指示しながら、
周囲へ入り込む敵を排除した。

今回もベリルは、
サラキア王女へすぐ身を屈めるよう声を掛ける。
王女は動揺して固まるのではなく、
自分だけでなくグレン王子の肩まで押し下げ、
二人で低い姿勢を取る。
護衛側が戦える空間を作るため、自分でも動いている。

ただし第1期と違うのは、
正面にいる敵すべてを斬れば終わらないこと。
死体の中へ暗殺者が紛れていると分かった以上、
知らない人間を王子と王女へ近づけること自体が危険になる。
負傷した参列者でさえ、すぐ安全とは判断できない。

その結果、
ベリルたちは中央の身廊を死守する形になる。
周囲には戦える教会騎士、
戦えない参列者、
外交官、
イブロイ司教まで混在している。
誰を守り、誰を前へ出し、誰を近づけないかを瞬時に判断し続ける必要があった。

しかも正面出口は、
動く死体の数で完全に塞がれている。
ベリル一人なら突破できても、
グレン王子とサラキア王女を守りながら抜けるのは難しい。
暗殺者まで混じっている以上、
護衛対象だけを前へ走らせることもできない。

ベリルは別の出口を探すことまで考えるが、
大聖堂の構造を知らない。
アリューシアやヘンブリッツも、
ここへ来た経験が豊富なわけではない。
教会騎士へ案内を任せようにも、
内部に敵側の人間がいないという保証までなかった。

敵側の狙いは、
まさにこの判断の遅れを作ることだった。
大量の死体で正面を塞ぎ、
護衛をその場へ縫い付ける。
その間に暗殺者を潜り込ませ、
王族へ一度でも短剣を届かせればよい。

だから大聖堂の阿鼻叫喚は、
「大量の敵と大乱戦になった」というだけではない。
死体による物量、
生身の暗殺者による選択的な攻撃、
逃げ場の少ない大聖堂という地形まで組み合わされた襲撃だった。

しかもベリルたちがその状況を突破しようとした時、
今度は大聖堂内部へ濃い霧が広がる。
ベリルには見覚えがあった。
第9話以前、フルームヴェルク領からの帰路で遭遇した、
ヴェルデアピス傭兵団が使ったものと同じ霧だった。

死体と暗殺者だけでも混乱しているところへ、
さらに視界まで奪われる。
ベリルが新たな敵の乱入を警戒した直後、
翼廊から大剣を持ったハノイたちが突入してくる。
大聖堂の戦いは、そこでさらに予想外の方向へ動き始めるのである。

第5章 ホワイト・メイデンは大聖堂で何をした?

動く死体の最前線に立ち、ベリルたちが王族を逃がす時間を作った

大聖堂が動く死体と暗殺者で埋まり始めた時、
ホワイト・メイデンは後方で様子を見ていたわけではない。
ベリルやアリューシアと同じく前線へ入り、
王族へ向かう死体を止めるため、
仮面姿のまま激しい近接戦へ加わっている。

第1期のロゼは、
大盾とエストックを使う守備型の剣士だった。
一方のホワイト・メイデンは装備も外見も変えており、
短剣系の武器と小型の盾を使って戦うため、
一見しただけでは元教会騎士団副団長ロゼとは結び付きにくい。

それでもベリルは、
彼女の戦い方へ何度か引っ掛かりを覚える。
相手の攻撃を正面から受け続けるのではなく、
必要な一撃だけを盾で処理し、
死体の進路を潰して次の敵へ移る。
守りを軸にした判断の速さには、昔の弟子と重なる部分が残っている。

しかも今回の相手は、
痛みを感じない動く死体。
通常の剣士なら斬撃を当てた時点で相手が怯むことを計算するが、
死体は腕を傷つけても止まらない。
ホワイト・メイデンもベリルたちと同様、
脚や身体の機能を確実に奪う戦い方へ切り替えている。

その最中、
ヴェルデアピス傭兵団が大聖堂へ濃霧を広げ、
翼廊側からハノイ・クレッサたちが乱入する。
ベリルにとってハノイは、
つい最近フルームヴェルク領からの帰路で自分たちを襲った相手。
当然、王族を助けに来たと言われてもすぐには信用できない。

ベリルが判断に迷う中、
イブロイ司教がハノイたちは信用できると叫ぶ。
さらにイブロイがホワイト・メイデンへ退くよう促すと、
彼女は迷わず前線から離れ、
側廊を通ってグレン王子とサラキア王女のもとへ走っていく。

ここでベリルの判断も変わる。
ハノイだけなら罠を疑う。
しかしイブロイが保証し、
さらにホワイト・メイデン本人まで即座に動いた。
ベリルは彼女の判断なら信じられると考え、
アリューシアへ王族を連れて移動すると指示する。

ホワイト・メイデンの行動が、ベリルにとって「味方だ」と判断する材料になった

王族脱出の場面では、
全員が一斉に大聖堂を離れたわけではない。
ヘンブリッツは正面へ残り、
動く死体を食い止める役を引き受ける。
ベリル、アリューシア、ホワイト・メイデンが、
グレン王子とサラキア王女を連れて翼廊側へ移動する。

ここでもホワイト・メイデンは、
王族を守る側から外れない。
第1期第12話では、
ロゼ本人がグレン王子を危険へさらす側に回っていた。
その元弟子が今度は、
大聖堂の襲撃から王子を逃がす側に立っている。

さらに原作では、
大聖堂脱出後にハノイから情報源を尋ねた際、
合成獣の話を彼へ伝えた人物がホワイト・メイデンだと判明する。
つまり彼女は戦闘だけでなく、
襲撃の裏で何が準備されているかまで事前に探っていた。

ベリルはグレン王子へ、
ホワイト・メイデンについて詳しい事情は話せないものの、
間違いなく味方だと言い切る。
第1期で王子を巡って剣を交えたロゼを知る人物が、
今度は王子本人へ「信用できる」と保証する。
ここに師弟関係の変化がはっきり出ている。

大聖堂でのホワイト・メイデンは、
正体を見せるために戦ったのではない。
死体を止め、
王族を逃がし、
次に来る危機の情報まで渡す。
誰の側に立っているかは、名前より行動そのものが示していた。

第6章 ヴェルデアピス傭兵団はなぜ今度は王族を助けた?

以前はベリルたちを襲ったハノイが、今度は依頼を受けて救援側へ回った

大聖堂で最も混乱を深めたのが、
ハノイ率いるヴェルデアピス傭兵団の乱入だった。
濃霧が広がった瞬間、
ベリルはすぐ過去の襲撃を思い出す。
フルームヴェルク領からの帰路でも、
同じ霧の中から彼らが襲い掛かってきたからである。

あの時ハノイたちは、
囮の馬車まで使って街道を塞ぎ、
ベリルとアリューシアたちの遠征団を強襲した。
戦闘ではレベリオ側にも重傷者が出ており、
特にヴェスパーは現在もまともに動けないほどの傷を負っている。

だから大聖堂でハノイが、
王子と王女を守る依頼を受けたと告げても、
ベリルは簡単には信用できない。
つい先日まで自分たちを殺そうとしていた集団が、
今度は王権派の中心人物を助けると言って現れた。
罠を疑う方が自然だった。

それでも状況は待ってくれない。
正面は動く死体で塞がれ、
内部には暗殺者まで潜んでいる。
ハノイたちが開けた翼廊側の道を使わなければ、
王族を安全に逃がせる別経路も見つけにくい。

そこで決め手になるのが、
イブロイとホワイト・メイデンだった。
イブロイが「彼らは大丈夫だ」と断言し、
ホワイト・メイデンもその言葉へ即座に応じる。
ベリルはハノイを信じたのではなく、
この二人が動いたことを根拠に脱出を決断する。

一行はハノイが破壊した翼廊側の出口へ向かう。
プリムが手を上げると、
大聖堂を覆っていた濃霧が薄れていく。
ここで初めて、
霧そのものもヴェルデアピス傭兵団が脱出経路を作るために使っていたことが分かる。

「昨日の敵でも今日は依頼相手を守る」という傭兵団の価値観が、ベリルと衝突する

大聖堂を抜けた後も、
ベリルはハノイへの警戒を解かない。
外にはクリウをはじめとする傭兵団の仲間が待機し、
足元にはすでに倒された動く死体が転がっている。
少なくとも現在は、教皇側と敵対していることが行動から分かる。

グレン王子が素性を尋ねると、
ハノイはヴェルデアピス傭兵団だと名乗る一方、
依頼主については契約上明かせないと答える。
彼らが王族を助けているのは、
突然正義に目覚めたからではない。
新たな依頼を受け、その仕事として動いていた。

この割り切り方が、
ベリルには受け入れにくい。
以前の襲撃でヴェスパーとフラーウが傷ついたことを思い出し、
なぜ平然と今度は味方として振る舞えるのかと怒りが湧く。
移動中、ついにハノイの襟首を掴んでしまう。

しかしハノイ側にも死者が出ていた。
以前の戦闘では、
ジュールとワンディスという仲間を失っている。
それでもハノイはベリルたちを恨んでおらず、
戦場で腕と運が足りなかった結果だと受け入れている。

ベリルには、その感覚が理解できない。
ヴェスパーは現在も後遺症が残り、
元の生活へ戻れるかさえ分からない。
一方のハノイは、
昨日戦った相手でも今日の依頼に必要なら共闘する。
剣士ベリルと傭兵ハノイの価値観が真正面からぶつかる場面になる。

だからヴェルデアピス傭兵団が王族を助けたのは、
過去の敵対が誤解だったからではない。
以前の襲撃も今回の救援も、
彼らにとっては受けた依頼を遂行した結果。
依頼主が変われば、立つ側も変わるという傭兵の論理で動いている。

その冷徹さにベリルは納得できないままでも、
大聖堂から王族を救い出した事実は残る。
動く死体と暗殺者で出口を塞がれた状況を、
昨日までの敵だった傭兵団が破り、
ホワイト・メイデンとベリルたちがその道を使って脱出する。
大聖堂の阿鼻叫喚は、敵味方の関係まで反転させる戦場になったのである。

第7章 大聖堂襲撃は第一段階にすぎず、その先に合成獣まで用意されていた

大聖堂を脱出しても終わらず、教都全体を巻き込む次の攻撃が待っていた

ベリルたちが大聖堂から脱出した時点でも、
襲撃そのものは終わっていない。
内部では動く死体と暗殺者が暴れ、
外へ出れば教都の各所から悲鳴と怒号が聞こえる。
王族を建物から逃がしただけでは、安全を確保したことにならなかった。

ここでハノイたちが持ち込む情報が、
次の危機を一気に大きくする。
大聖堂へ投入された動く死体とは別に、
さらに危険な戦力として合成獣が用意されている。
つまり敵側は、一度の襲撃で終わる前提では動いていなかった。

大聖堂の中では、
大量の死体で護衛側を足止めし、
その群れへ暗殺者を潜ませて王族へ接近させる。
そこから逃げ延びても、
今度は教都の外側で別の戦力をぶつける。
複数段階で王族と護衛を消耗させる攻撃だった。

ベリルたちにとって厄介なのは、
敵の狙いがグレン王子とサラキア王女だけに留まらないこと。
合成獣まで街へ投入されれば、
一般市民や教会騎士まで被害へ巻き込まれる。
大聖堂だけを守れば済む戦いから、
教都そのものを守る戦いへ規模が広がっていく。

第1期でも、
レビオス司教の事件では死体を利用する禁忌が描かれた。
しかしあの時は、
地下で隠れて行われていた異常だった。
第2期では同じ系統の技術が王族暗殺へ転用され、
さらに合成獣まで実戦投入されるところまで拡大している。

一度見た異常が、
より大きな形で戻ってきている。
ベリルが大聖堂の死体を見て即座に第1期の記憶へ結び付けたのも、
単なる既視感ではない。
過去に止めたはずの禁忌が、
今度は国家規模の争いへ組み込まれていたからである。

ホワイト・メイデンがモーリス教皇の名を出し、阿鼻叫喚の背後が一本につながる

大聖堂を抜けた後、
それまでほとんど声を出していなかったホワイト・メイデンが、
重要な名前を口にする。
モーリス・パシューシカ。
スフェン教の最高指導者である教皇の名だった。

ここでグレン王子も反応する。
婚姻の儀を襲った動く死体、
その中へ紛れた暗殺者、
さらに街へ投入される合成獣。
これらが単発の事件ではなく、
教皇側の大きな計画へつながっている可能性が一気に強まる。

しかも婚姻の儀では、
本来その場にいるはずだったモーリス教皇本人が不在だった。
代わりにダートレス大司教が祭壇へ立ち、
式が終わる直前に大聖堂が襲撃される。
後から見れば、この不在も偶然では済ませにくい。

王族が二人とも大聖堂に集まる。
護衛側は儀式中で動きにくい。
そこへ動く死体を大量投入し、
暗殺者を混ぜ、
逃げた先には合成獣まで用意する。
その一方で教皇本人は最初から危険な場所にいない。

だから「大聖堂の阿鼻叫喚は何が起きた?」への答えは、
死体が暴れたという一場面だけでは終わらない。
大聖堂は王族を一か所へ集め、
護衛を拘束し、
最初の混乱を起こすために使われた場所だった。

そしてベリルたちは、
その第一段階を辛うじて突破したにすぎない。
ホワイト・メイデン、
ヴェルデアピス傭兵団、
アリューシア、
ヘンブリッツがそれぞれ別方向から王族を守り、
ようやく大聖堂の外へ出たところで次の戦いが始まる。

第10話の「阿鼻叫喚」という言葉が強烈なのは、
大量の死体が現れたからだけではない。
婚礼の最中に王族暗殺が始まり、
過去の禁忌が再利用され、
さらに教都全体を巻き込む攻撃へ連続していく。
大聖堂は、その一連の計画が表面へ噴き出した最初の場所だったのである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました