姉を失ったマーガレットには、一人生きて帰ったリリィを許せない思いがある。
それでも、一緒に危機を切り抜けるうちに、憎しみだけでは割り切れない関係へ変わり始める。
復讐心の揺らぎは、姉を忘れたからではなく、目の前のリリィを知っていく過程に重なる。
漫画3巻・5巻のネタバレあり。
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第1章 マーガレットの復讐心はなぜ揺らいだ? 一緒に戦って見え始めたリリィ
| 段階 | 二人の関係 |
|---|---|
| アニメ第3話 | 姉の死を巡る疑いと憎しみ |
| アニメ第4話 | 危機を越え、少しずつ接近 |
| 漫画3巻 | 記憶の回復と和解、共闘 |
憎む相手と、同じ危機を切り抜けていく
姉を見捨てて逃げた相手と、これから一緒に戦う。
マーガレットの立場から考えると、
光竜の遺跡への旅は出発前から苦しいものになっている。
姉は帰らず、リリィだけが帰ってきた。
その記憶を抱えたまま、今度は自分が
リリィと同じ場所へ向かうことになる。
それでも二人の距離は、
旅の間ずっと変わらないままではない。
ゴブリンの攻撃を切り抜ける中で、
リリィとマーガレットは少しずつ打ち解けていく。
復讐心の揺らぎを考える出発点は、この変化にある。
謝罪の言葉を聞いただけでは動かなかった気持ちが、
一緒に行動する時間の中で動き始めている。
姉を失った事件について、
マーガレットはリリィを疑っている。
一方、遺跡で接するリリィは、
過去の噂や想像の中にいる人物ではない。
目の前の危険に向き合い、
同じ道を進む一人の冒険者としてそこにいる。
憎しみを向けてきた相手にも、
これまで知らなかった姿がある。
もちろん、戦いを共にすれば
誰とでも分かり合えるという話にはならない。
危険な場所へ同行しただけで、
姉の死への疑問が消えることもない。
それでも、相手の行動を間近で知ることと、
離れた場所から生還の報せだけを受け取ることには
違いがある。その違いが二人の関係に
表れていると考えられる。
ここで少し切なくなるのは、
打ち解ける相手が、マーガレットにとって
長く憎んできたリリィということ。
話しやすくなったり、同じ目的で動けたりするほど、
最初の怒りだけでは相手を捉えきれなくなる。
姉への思いと、今のリリィへの反応が、
簡単には重ならなくなっていく。
マーガレットがすぐにリリィを好きになったと読むよりも、
嫌いなままでは説明できない相手になり始めたと
考えるほうが、この時点の二人には近い。
姉のことを思うたびに浮かぶ相手と、
いま隣で危機を越えた相手が、同じ顔をしている。
その食い違いは、優しい気持ちだけで
済むものでもない。
心が近づくことと、過去を許すことは同じではない
アニメ第4話までの二人については、
距離が縮まり始めたところと、
その後の和解を分けると経過がつかみやすい。
ゴブリンとの危機を越えて打ち解ける変化は、
過去の全容を知る前にも起きている。
真相がすべて判明してから、
突然リリィへの見方を変える流れだけではない。
漫画3巻では、燐光竜と対峙したリリィが
過去を詳しく思い出し、
マーガレットと和解して共に戦う展開へ進む。
つまり、この関係には、
相手を身近に知る過程と、
過去に向き合う過程の両方がある。
接してみるうちに生じる迷いと、
記憶が戻ることで生じる変化は、
それぞれ別の働きを持っている。
タイトルにある「姉の仇」は、
マーガレットがリリィへ向けている見方を指している。
リリィが直接姉を殺したという事実と
同じには扱えない。
彼女の怒りは、姉たちを見捨てたのではないかという
疑いと結び付いている。
誰が生還したかだけでは、
現場で誰が何をしたかまでは決まらない。
とはいえ、その区別だけを持ち出しても、
マーガレットの苦しみは収まらない。
彼女が知りたいのは言葉の定義ではなく、
姉がどうして帰ってこなかったのかということ。
リリィへの疑いを解くことは、
その問いに向き合うことと切り離せない。
姉の最期が分からない間は、
憎しみだけをやめるきっかけも得にくい。
復讐心が揺らいだ背景には、
目の前のリリィを知り始めたことと、
止まっていた過去が動き出したことが
重なっていると考えられる。
憎むことを忘れたというより、
憎んでいた相手について新しく知るものが増えていく。
旅の出発時にはなかった関係が、
少しずつ二人の間に生まれている。
リリィの側から見ても、
距離が縮まったことを過去への免罪符にはできない。
姉について説明できていない問題が残っている以上、
普通に話せる時間ができても、
マーガレットが抱える問いはなくならない。
関係が少し和らぐことは、問いを避ける口実よりも、
次に向き合うための足場になっている。
第2章 姉は帰らず、リリィだけが生き残った ――消えない疑いの出発点
二年前の失敗が、姉を待つ側に残したもの
マーガレットの怒りの始まりには、
姉が帰ってこなかったという
取り返しのつかない出来事がある。
二年前、リリィと彼女の姉、その仲間たちは、
伝説の剣レファイドを求めて
ガドレーザ・光竜の遺跡へ挑んでいる。
探索は失敗に終わり、
帰還したのはリリィ一人となっている。
冒険の失敗と短く呼べても、
マーガレットにとっては家族を失った出来事になる。
探索の目標や、挑戦の難しさについての説明だけでは、
姉の不在は埋まらない。
帰りを待つ側には、
現場の事情を見て判断する機会さえなかった。
残された結果から、
何が起きたのかを考えるしかなくなっている。
そのとき、生きて戻ったリリィは、
本来なら当時のことを知る相手として見える。
姉と同じ場所へ行き、
同じ危険に直面した人物が目の前にいる。
マーガレットが答えを求める先として、
リリィを意識する流れにはつながりがある。
帰ってきた人がいるからこそ、
帰れなかった人について聞きたくなる。
ところが、リリィには恐怖以外の記憶が残っていない。
姉がどう動き、仲間たちに何が起こり、
自分がどう生還したのか。
その説明を求めても、
本人から十分な答えを得られない。
この行き違いは、
どちらかが一言だけ言い直せば解けるような
誤解とは異なっている。
マーガレットには姉を失った痛みがあり、
リリィには思い出せないほどの恐怖が残っている。
同じ探索の失敗を挟みながら、
一方は現場のことを知りたくて、
もう一方は現場のことを語れない。
その向きの違いが、
二人の会話を苦しくしている。
二年という時間も、
二人に同じものを残してはいない。
リリィには戦えない時間が続き、
マーガレットには姉がいない時間が積み重なっている。
片方の回復が進めば、
もう片方も同じ速さで前へ進めるとは限らない。
久しぶりに顔を合わせた二人の温度が揃わないことにも、
その隔たりが見える。
生還した事実と、見捨てたという疑いの間
リリィだけが生き残ったことと、
リリィが仲間を見捨てたことは、
同じ出来事ではない。
生還という結果から、
逃げるまでの行動をすべて決めることはできない。
助けようとして届かなかった場合と、
最初から置き去りにした場合でも、
残る結果が似てしまうことはある。
マーガレットの問いは、
その分からない部分へ向かっている。
姉は助けを求めていなかったのか。
リリィにはできることがなかったのか。
こうした疑問が浮かぶ状況でも、
本人に当時の記憶がなければ、
返ってくる説明には限りがある。
答えがないことが、疑いを強める方向へ
働いた可能性がある。
ここでリリィの記憶喪失を、
ただ都合のよい言い逃れとして
片付けることもできない。
彼女は恐怖を残したまま、戦えなくなっている。
帰還したからといって、
以前の暮らしにそのまま戻れたわけではない。
姉を失った側からは見えにくい傷が、
生き残った側にも残っている。
ただ、リリィも苦しんでいると知れば、
マーガレットが怒れなくなるわけではない。
相手の苦痛と、
自分が家族を失った苦痛は交換できない。
傷ついた者同士ならすぐに分かり合えるという
進み方にならないところが、
この関係のつらさにつながっている。
彼女の復讐心は、
姉を大切に思う気持ちと無関係には生まれていない。
一方で、その思いが強いことと、
リリィへの疑いが事実と一致することも別に残る。
マーガレットが過去を確かめる旅へ加わることで、
二人は初めて、怒りと記憶の空白だけでは
決められなかった出来事へ近づいていく。
マーガレットの怒りに胸が痛む一方で、
生きて帰ったことそのものを責められる
リリィにも苦しさがある。
どちらか一人を悪者に決めても、
この場面の行き詰まりは消えない。
姉の死について答えがないまま、
残された二人が傷つけ合う形になってしまっていることが、
見ていてつらくなる。
第3章 一緒に遺跡へ向かったのは、 仲直りのためではなかった
同行するという返事に、許しを重ねられない
同じ目的地へ向かうと決まると、
二人の対立もひとまず収まったように見える。
けれど、マーガレットの同行を、
そのまま仲直りの返事として受け取ることはできない。
リリィを憎む気持ちを抱えたまま、
彼女は光竜の遺跡へ向かおうとしている。
姉が亡くなった場所に再び挑むと聞いて、
ただ無関係でいるのも難しい。
自分の知らないところで、
姉の最期について何かが分かるかもしれない。
リリィと一緒に行くことへの抵抗と、
その場で何が明らかになるか確かめたい気持ちは、
同時にあってもおかしくない。
リリィの側にも、
以前の探索について答えを探す目的がある。
過去の真実を知るため、
レインと共にもう一度ガドレーザへ挑む決断をしている。
マーガレットを疑問の外に置いたまま、
自分だけが納得すれば済む状況でもない。
失われた仲間たちの中に、彼女の姉がいるため。
二人が同じ場所を目指すことには、
そのような共通点がある。
ただし、同じことを知りたいからといって、
互いを信じているとは限らない。
リリィが何を思い出すのか確かめたい気持ちと、
リリィの言葉を信じたい気持ちには隔たりがある。
出発時点のマーガレットには、
その隔たりが残っている。
ここは、同行の申し出だけで
安心しきれないところになる。
旅の仲間という形はできても、
その中に抱えているものは揃っていない。
リリィにとって過去へ向き直る行動が、
マーガレットにとっては疑いを確かめる行動にもなる。
二人は違う気持ちを持ったまま、
同じ遺跡へ足を踏み入れていく。
行きたくない相手と、行きたい場所が重なる。
マーガレットの同行には、
そんなねじれもあると考えられる。
リリィへの気持ちだけなら距離を置く選択もある一方、
姉について知る機会がその旅にある。
同じ道を選んでも、その隣を歩く相手への
警戒まで解けるわけではない。
姉のいた場所へ自分も行く以上、
聞いた話だけで相手を責める関係からは動き始めている。
マーガレットが何を見て、何を知るのか。
旅先で得るものによっては、
それまで支えにしてきた怒りにも変化が及ぶ。
同行は仲直りではなくても、
二人の間に新しい出来事が入るきっかけになっている。
姉の最期を知りたい気持ちと、 リリィを責めたい気持ち
復讐を望むことと、真相を知ろうとすることは、
必ずしも同じ方向へ進まない。
もし姉の死について、
それまで考えていたこととは違う出来事が分かったら、
怒りを向ける相手も見直す必要が生じる。
遺跡へ行く行動は、リリィへの疑いを強める可能性と、
揺るがす可能性の両方を含んでいる。
マーガレットが最初から、
そんな変化を受け入れる準備を整えていたとは言い切れない。
少なくとも、リリィへの憎しみが残っている状態で
旅は始まっている。
自分の目で確かめることを選んだ先で、
本人にも予想しなかった感情が生まれる余地がある。
この旅には、二人の関係とは別の思惑も入り込んでいる。
コーネリアスはマーガレットから得た情報を利用し、
遺跡でレインを殺そうと目論んでいる。
姉を巡る疑問を抱えた同行者の情報が、
別の人物を狙う計画へ使われる。
マーガレットとリリィの対立だけで、
旅の危険が収まっているわけではない。
もっとも、そのことからマーガレットが
コーネリアスの計画をすべて把握していたとは決められない。
レインへの殺害計画と、彼女のリリィへの憎しみを、
ひとまとめにすることもできない。
遺跡にはそれぞれの狙いが持ち込まれており、
同じ一行に見える人々の間にもずれがある。
仲直りから始まらなかった旅だからこそ、
そこで生まれる小さな変化が目に留まる。
最初から親しい相手と助け合うのではなく、
疑っている相手と一緒に危機へ入っていく。
マーガレットは姉の最期を探しに来た先で、
現在のリリィとも接することになる。
その経験が、当初の目的だけでは収まらない
関係へつながっていく。
リリィが以前の探索に触れないまま暮らすなら、
マーガレットの疑問には答えが増えない。
再挑戦は危険を伴う一方で、
止まっていた問いに変化をもたらす行動でもある。
二人が出発時点で納得し合えていなくても、
同じ場所で確かめるために動き始めたことが、
それまでとの違いになっている。
第4章 憎んでいた相手と背中を預ける ――ゴブリンとの戦いで変わる距離
相手の説明より先に、同じ危険を越えていく
遺跡の中で二人の距離を変えていくのは、
落ち着いた場所での話し合いだけではない。
凶悪なゴブリンたちの攻撃が、
リリィとマーガレットを襲う。
互いへの思いが片付かないままでも、
目の前の危険には対処しなければならない。
過去に何が起きたのかを巡る会話では、
リリィは思い出せず、
マーガレットは答えを得られない。
ところが、今起きている危険については、
同じ場所にいる二人が直接向き合える。
片方だけが知っているはずの出来事ではなく、
二人とも経験する出来事が増えていく。
この違いは、関係の変化を考える手掛かりになる。
マーガレットが抱えてきたリリィへの疑いは、
現場を見られなかった二年前のことに向けられている。
今回の遺跡では、
その相手がどのように危険へ向き合うかを、
同じ時間の中で知ることになる。
ここで、具体的にどちらが何度かばったかという
回数にまで話を広げる必要はない。
二人はゴブリンの攻撃を切り抜け、
その過程で少しずつ打ち解けている。
危機を越える行動と、距離が縮まる変化が
重なっていることが、この場面から得られる
大切な手掛かりになる。
憎んでいた相手と呼吸を合わせるのは、
気持ちを言葉にするより先に起こり得る。
相手を許すと決めてから、
一緒に動けるようになる順番ばかりではない。
目の前の危険を切り抜けているうちに、
昨日までの相手への見方が、
そのままでは収まらなくなることもある。
二人の変化には、そうした戸惑いが重なって見える。
共通の危険がある場面では、
相手への反応も考えだけに留まらなくなる。
言葉では疑っていても、
一緒に状況を切り抜けた経験は自分の中に残る。
マーガレットにとって今回の探索は、
リリィについて誰かから説明を聞く旅ではなく、
自分自身の経験を増やす旅にもなっている。
打ち解けるほど、怒りの向け先が単純ではなくなる
マーガレットがリリィと打ち解け始めたからといって、
姉についての質問が不要になるわけではない。
むしろ、今のリリィと一緒に動けるようになるほど、
なぜ二年前には姉が帰れなかったのかという問いが残る。
現在の関係が良くなれば、
それだけで過去が消えるという作りにはなっていない。
ただ、相手をよく知らないまま疑う段階と、
共に危機を越えたあとでは、
その問いの手触りも変わると考えられる。
リリィを一つの疑わしい結末だけで
捉えていたところへ、別の経験が加わる。
疑いを捨てきれなくても、
それだけで相手の全部を説明できるのかという
迷いが生じる。
同じ遺跡に来たことも、
二年前とのつながりを強めている。
マーガレットが求めていたのは、
姉が亡くなった場所についての答え。
しかし、その場所で新しく積み重なるのは、
リリィと共に生きて進む経験にもなる。
死の経緯を探しに来た旅の中で、
今そこにいる者同士の関係が育っていく。
この変化を、マーガレットが
簡単にほだされたとだけ片付けると、
同行前からの重さが薄れてしまう。
一度の楽しい会話や、
相手の優しい印象だけで復讐心が消えたとは言えない。
危険のある場所を実際に進みながら、
共に行動できる相手として知る過程がある。
そして、少し打ち解けたところで、
二人は謎の遺書に出合う。
目の前のリリィを知る時間と、
遺跡の過去へ近づく出来事が、ここで再び重なっていく。
関係が和らいできたからこそ、
そこに新しい手掛かりが現れる展開には落ち着かなさがある。
ようやく変わり始めた二人の間へ、
まだ解けていない事件が戻ってくる。
姉が最期を迎えた場所に、
恐怖を抱えたリリィも戻ってきている。
その行動だけで過去への答えは出ないものの、
二度と関わらないよう逃げ続けている姿とは異なる。
リリィの再挑戦がマーガレットにどう映ったかは
断定できなくても、今の相手を知るうえで
小さくない行動と考えられる。
第5章 リリィは本当に姉を見捨てた? 失われた記憶と遺跡に残る手掛かり
| 人物 | 抱えていること |
|---|---|
| マーガレット | 姉の最期を知りたい |
| リリィ | 当時の記憶を失っている |
| 二人の探索 | 現場で手掛かりを探す |
遺書が見つかっても、すぐに過去の答えにはならない
二人が遺跡で拾う遺書は、
過去について考える新しい手掛かりになる。
ただし、遺書が存在することと、
その内容がマーガレットの疑問をすべて解くことは
別に残る。誰が、いつ、どんな状況で残した文章かによって、
そこから分かる出来事も変わってくる。
マーガレットが知りたいのは、
姉がどのように亡くなったのか、
そしてリリィがそのとき何をしたのかということになる。
遺跡に残された文章を見つけたからといって、
すぐに姉の最期を記したものと決めることはできない。
手掛かりが見つかる期待と、
探している答えに届くかどうかは分けて残る。
ここでは遺書の書き手を決める話よりも、
二人が同じ手掛かりに出合う状況が気になる。
以前はリリィだけが現場から戻り、
マーガレットは説明を受ける側に置かれていた。
今回の探索では、同じ場所で見つかったものを通して、
二人とも過去へ近づいていくことになる。
それまでの対立では、
マーガレットの問いにリリィが答えられない形が続いていた。
遺跡に手掛かりが残っていれば、
本人の記憶だけに頼らず確かめられる可能性が生まれる。
だからこそ、過去を覚えていない人を
問い詰めるだけでは進まなかった関係に、
別の道筋ができる。
とはいえ、遺書を和解の証拠として
先回りさせることはできない。
リリィとマーガレットの関係がその後どう変わるかは、
さらに先の展開と合わせて見る必要がある。
遺跡での発見は、事件がまだ終わっていないことを
二人に突き付ける出来事にもなっている。
文字として残る手掛かりには、
人の記憶とは違う強さがある一方、
その場にいた全員の行動まで書かれているとは限らない。
マーガレットの姉について知りたい気持ちが強いほど、
何か一つ見つかれば答えに届いてほしくなる。
それでも、一つの発見と事件全体の解明の間には、
まだ距離が残っている。
漫画3巻で記憶が戻り、二人は和解へ進む
ここから漫画3巻の展開に触れる。
漫画3巻では、リリィが燐光竜と対峙し、
過去を詳しく思い出す展開がある。
そしてマーガレットと和解し、
燐光竜を倒すために力を合わせる。
この先の関係については、
憎み合ったまま終わるのではなく、
共に戦うところへ進むと答えられる。
この和解を知ると、
アニメで描かれ始めた小さな変化も、
途中で消えてしまうものではないと分かる。
ただし、アニメ第4話の打ち解け始めた関係と、
漫画3巻の和解には進み具合の差がある。
今は少し会話が近づいたという状態を、
すでに過去を乗り越えた状態と混ぜることはできない。
記憶の回復が大きいのは、
マーガレットに欠けていた当時の説明と、
リリィに欠けていた自分の経験が、
同時に動き出すためと考えられる。
片方だけが納得する弁明ではなく、
本人が思い出せなかった出来事へ近づく展開になる。
リリィ自身にも、
自分の過去へ向き合う変化が起きている。
記憶が戻る前には、
リリィ自身にも説明できない部分が残っていた。
そこが動いた先で、
マーガレットと力を合わせる関係が生まれている。
姉を巡って互いの間にあった対立が、
リリィを罰する形とは異なる方向へ進んでいくところに、
和解へ至る変化が表れている。
姉について真実を知ることが、
リリィへの復讐を実行することと重ならなくなる。
マーガレットが遺跡へ来る前には、
そう簡単に思い描けなかった結末かもしれない。
確かめに来た過去が、怒りを強めるだけのものではなくなり、
共に戦う相手との関係を変えることにつながっていく。
失った記憶が戻ることは、
リリィにとっても楽な体験とは限らない。
残っていたものが恐怖なら、
その先で思い出す過去にも向き合う重さがある。
マーガレットが知りたかった出来事は、
リリィ自身が再び直面する出来事でもある。
和解の前には、
その両方が重なる局面を通ることになる。
第6章 レインを交えた時間が、 復讐だけではない関係を生む
二人だけでは進みにくかった旅に、もう一人がいる
マーガレットとリリィの関係を考えるとき、
同行しているレインの存在も外せない。
彼は、二年前に姉を失った遺族でも、
当時の探索から生還した人物でもない。
二人の過去を同じ立場から語れる相手ではないからこそ、
現在の冒険で別の役割を持っている。
リリィはレインと共に、
もう一度ガドレーザへ向かうことを決めている。
マーガレットもそこに加わることで、
旅は姉を巡って向き合う二人だけのものにはならない。
過去についての問いを抱えながらも、
遺跡を進み、今起きる危険へ対処する
一行として動くことになる。
この状況を、レインが二人を説得して
仲直りさせた話へ置き換えることはできない。
誰かが正しい言葉を選んで聞かせれば、
家族を失った悲しみや生還者の恐怖が
収まるわけではない。
レインの同行によって生まれるのは、
まず一緒に行動できる時間と、
過去を確かめに行く機会になっている。
二人きりなら姉の話に戻り続けてしまう関係でも、
三人で冒険を進めるなら、
その場で考えることは増える。
誰が何に対処できるのか、
どう先へ進むのかという現在の問題が間に入る。
実際の行動を通して互いを知る機会が、
対立の外にもできると考えられる。
レインがいるからといって、
マーガレットの復讐心が軽いものになるわけではない。
それでも、彼女とリリィが同じ一行で過ごす時間には、
姉を巡る非難だけでは収まらないやり取りが生まれる。
二人の関係は、過去について答えを求め合う形から、
今の冒険を共に進める形へ少しずつ広がっていく。
しかもレイン自身も、
この旅で狙われる側になっている。
マーガレットの姉を巡る過去とは別に、
コーネリアスによる殺害の計画が持ち込まれているため。
レインがいることは単に場を和ませるだけの役目ではなく、
彼の事情も含めて、
一行の行動や危険が絡み合う形につながっている。
強化された武器だけでも、戦える人だけでも届かない
漫画3巻の燐光竜との戦いでは、
和解した二人が力を合わせても、
相手を倒すには攻撃力が足りない。
そこで頼りになるのが、
レインの強化を受けた武器となっている。
一方、そのレイン自身には戦闘経験が足りず、
強い武器さえあれば簡単に解決する状況でもない。
この組み合わせでは、
一人がすべてを済ませることができない。
武器への強化と、実際に戦うための経験が、
別々のところにある。
リリィとマーガレットが共に戦う展開は、
単に仲直りしたことを示すだけではなく、
目の前の相手を倒すためにも必要になっている。
ここまで来ると、
旅の始まりとは二人の向き合い方が変わっている。
姉を見捨てたのではないかと相手を疑う関係から、
同じ敵に対して力を合わせる関係へ進んでいる。
リリィに何を償わせるかではなく、
いま一緒に何ができるかという行動が前に出てくる。
ただ、共闘できるようになったマーガレットを、
他人にすべてを任せる人物として捉える必要もない。
信頼することと、
自分の判断を手放すことは異なる。
疑いが強かった相手とも、
現場での行動や明らかになった過去を通して、
新しい関係を結べるようになっていく。
レインの力は、失われた姉を取り戻したり、
悲しみを消したりするものではない。
それでも、いま生きている二人が
同じ戦いへ向かうときには力を貸せる。
過去をなかったことにせず、
現在の危機に三人で対処する。
その形が生まれるところに、
復讐のためだけでは終わらなかった旅の変化が表れている。
強化する力を持つレインと、
実際に戦う二人という組み合わせには、
相手の力を借りる必要が残る。
これは、マーガレットがリリィへの感情を
脇へ置けば済むという話ではない。
和解した相手と力を合わせ、
その場を越えようとする行動によって、
変わった関係が目に見える形になっている。
第7章 打ち解けても、姉を失った悲しみは消えない ――二人の関係の行方
和解しても、姉への思いを捨てたことにはならない
マーガレットとリリィが和解すると知っても、
姉の死が軽い出来事へ変わるわけではない。
姉が帰らなかった過去は、そのまま残っている。
変わるのは、その出来事を巡って
マーガレットがリリィへ向ける思いや、
これから二人がどのように関わるかという部分になる。
この違いには、少しほっとするものがある。
誰かを許すために、
大切な人を失った悲しみまで
消さなければならないとしたら、
マーガレットには厳しすぎる。
リリィとの関係が変わることと、
姉を大切に思い続けることは、
両立していてもよいはず。
もっとも、本人の内面について、
悲しみが何割残り、
復讐心がどの時点で消えたと数えることはできない。
漫画3巻で示されるのは、
和解し、燐光竜へ共に立ち向かう二人の行動になる。
気持ちの変化は、
そうした具体的な関わり方から考えられる。
旅の前には、リリィと同じ側で戦う未来を、
マーガレットが素直に望めたとは考えにくい。
姉を見捨てたのではないかという疑いが、
相手との間に横たわっていた。
その二人が力を合わせるところまで進む。
疑問を飲み込んで何事もなかったふりをする形とは
違う変化が起きている。
だから、復讐心が揺らいだことを、
姉よりリリィを選んだという対立にする必要はない。
姉の最期を確かめようとした行動が、
リリィについて知り直すことにつながっている。
姉への思いから始まった旅の先で、
憎しみとは別の関わり方が生まれている。
漫画5巻の勧誘で少し気になるのは、
マーガレットに選ぶ立場が残っていること。
皇帝の盾との契約をどうするかも含め、
復讐の相手に反応するだけではない、
自分のこれからについての話が出てくる。
姉を失った人としてだけでは終わらない暮らしが、
物語の先に続いている。
過去に失ったものと、
これから結ぶ関係を同じ選択にしなくてよくなる。
リリィとの和解は、
姉への思いを終わらせる出来事ではなく、
姉を巡る疑いの先で生まれる変化として続いていく。
遺跡を越えた先にも、関わりを続ける余地がある
ここから漫画5巻の展開に触れる。
その後の漫画5巻では、
レインがマーガレットを仲間に誘おうとする展開へ進む。
マーガレットには所属する「皇帝の盾」との
契約更新も控えている。
遺跡での事件を越えたあと、
彼女の行き先は復讐の成否だけでは決まらず、
自分の活動や所属をどうするかという話にも広がっていく。
この勧誘だけで、マーガレットとリリィが
いつでも親密に過ごしているとは断定できない。
それでも、最初の対立で
関係が途切れて終わる展開ではない。
レインを交えたつながりが続き、
今後も一緒に動く可能性が物語の中に残っている。
姉の仇と思っていた相手が、
仲間になり得る相手へ変わる。
その変化には、憎しみを抱えていた時間が長いほど、
戸惑いも重なると考えられる。
最初から嫌っていなかったことにするのではなく、
嫌っていた相手について、
あとから知るものが増えていく関係になっている。
マーガレットがリリィと近づく経過には、
ひとつの出来事だけでは説明しきれない段階がある。
同行しても憎しみは残り、
ゴブリンとの危機を越える中で距離が縮まり、
漫画では過去の記憶と和解の展開へ進む。
出発時の気持ちが、
一度の会話でまるごと反転した話ではない。
二年前に姉がいた場所へ、
今度は自分がリリィと向かう。
その旅でマーガレットが出合ったのは、
姉の死についての疑問だけではなく、
共に戦える相手としてのリリィでもある。
姉を失った事実は変わらなくても、
リリィとの間にこれから積み重なる出来事は、
過去と同じ結末だけに閉じられていない。
リリィもまた、憎まれる相手としてだけ
マーガレットの前に立ち続けるのではなくなる。
過去を思い出し、共に敵へ向かう経験を経て、
二人の間には新しい出来事が残る。
姉のいた日々を取り戻すことはできなくても、
その後の毎日を同じ怒りだけで埋めずに済む道が
開いている。
姉が帰ってこなかった場所から、
今度は一緒に帰ろうとする相手がいる。
復讐のために近づいたリリィと、
そのような関係へ進んでいくところに、
マーガレットの旅の変化がある。


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