幽羅子が900年生きてるのは、岩屋で「呪いの器」を務めたことだけでは説明できない。
後継者争いの日、五色堂に入った幽羅子の妖が「壺結の術」に巻き込まれ、幽羅子自身も年を取らない体になった。
摩緒や百火と幽羅子では何が同じで、何が違うのか。不老になった経緯と、今も寿命が止まったままの事情を追う。
第1章 結論|幽羅子はなぜ900年生きてる?
※この章には、アニメ第26話より先の原作第23巻の内容を含む。
五色堂に入った幽羅子の妖が、本人まで不老の呪いに巻き込んだ
幽羅子が900年生きているのは、
人間ではないからでも、紗那が名前を変えて
生き延びたからでもない。平安時代の御降家で、
後継者を決めるためにかけられた「壺結の術」に
巻き込まれたためだ。五色堂にいた弟子たちと
同じく、彼女の時間も止まってしまった。
ただし、幽羅子は後継者候補として
五色堂へ呼ばれた五人の一人ではない。
彼女自身が堂内に座っていたわけでもなかった。
中にいたのは、幽羅子が使う妖だ。原作第224話では、
その妖が五色堂にいたために幽羅子まで術にかかり、
弟子たちと同じ不老の体になったと明かされる。
この点を知らずに第26話を見ると、
岩屋で呪いを取り込んでいたことが、そのまま
長生きの原因に見える。呪符に囲まれて育ち、
普通の子供とは違う役目を負わされた少女が、
大正時代まで同じ姿で現れるからだ。だが岩屋は
幽羅子がどう扱われたかを示す場所であり、
老化が止まった決定的な場所は五色堂である。
第8話で百火は一度死んでから生き返り、
900年前に五人の弟子が五色堂へ呼ばれたと語る。
第16話では白眉も、百火や華紋と同じく
五色堂に呼ばれた人物だと分かる。平安の弟子が
大正にも生き、傷ついてなお戻ってくる。
幽羅子だけが突然900年を越えたわけではなく、
あの日の御降家には複数の生存者がいた。
しかし幽羅子には、百火たちとの違いがある。
候補者でない彼女が、なぜ同じ結果を背負ったのか。
そこへ「堂内にいた妖」という一つの事実が入ると、
別々に見えた場面がつながる。第20話で夏野が語った
幽羅子の黒い邪気も、第26話で見た岩屋の少女も、
術を受ける前から彼女が人の呪いと妖に深く
関わっていたことを示している。
五色堂でかかったのは、単に長寿を与える
ありがたい術ではない。原作第223・224話で、
師匠と猫鬼が仕掛けた後継者争いと、
候補者同士の呪いによってしか決着しない
「壺結の術」の条件が明らかになる。幽羅子は
自分から後継者を望んでいないのに、
その争いが終わらない限り続く時に捕まった。
摩緒も900年生き、猫鬼の呪いを背負っている。
第2話から摩緒が追っているのは、自分を呪った
猫鬼だ。だから「摩緒と同じく猫鬼に呪われた」
という答えで幽羅子を片付けたくなるかもしれない。
だが幽羅子について原作が示した直接の接点は、
猫鬼との体の融合ではなく、妖を通じて
五色堂の術に触れてしまったことだ。
岩屋で背負った呪いと、寿命を止めた術は別の出来事
第26話「幽羅子の世界」で菜花に語られる
少女時代へ戻ろう。幽羅子は御降家に放たれた
呪いを取り込む「器」として岩屋で暮らし、
外の世界をほとんど知らなかった。
呪符に囲まれた場所から出られない子供にとって、
摩緒との出会いは、それまで届かなかった
外の暮らしに触れる出来事でもあった。
あの岩屋で負わされた仕事は、
御降家へ向かう呪いを幽羅子へ集めることだ。
呪いを受けていた事実は、その後に妖を使う
彼女の姿を考えるうえで欠かせない。
一方で、岩屋に閉じ込められた時点から
老化が止まっていた、と第26話は語っていない。
幼い幽羅子の過去を見せても、900年間を
生き抜いた仕組みまでは明かしていない。
ここは二つの疑問が重なりやすい。
一つは、御降家がなぜ少女を岩屋へ入れ、
他人から来た呪いを負わせたのか。
もう一つは、その少女がどうやって
平安から大正まで生きたのか。前者の答えを
知っても、後者の答えにはまだ届かない。
寿命を変えたのは、後に五色堂でかけられた術だ。
原作第224話の説明では、幽羅子の妖が
百火を脅した際、五色堂の中にいた。
幽羅子は離れた場所から妖を通して堂内を見ており、
そこで起きたことを不知火にも伝えている。
候補に選ばれず、直接そこへ入っていない彼女が、
なぜ堂内の術と無関係でいられなかったのか。
この妖の存在が、その疑問への答えになる。
第14話に幽羅子が大正のサロンへ現れたとき、
摩緒はその顔を見て言葉を失う。第15話には
不知火と行動する幽羅子を前に、紗那と
同じ顔をした彼女がなぜそこにいるのか、
怒りをあらわにした。この場面で摩緒が確かめたい
相手と、第26話の岩屋にいた少女はつながっている。
別人への入れ替わりで900年を埋める話ではない。
しかも、900年生きていることは
傷つかないことや、望めばいつでも
命を終えられることと同じではない。
第8話の百火が死から戻る場面には、
命の終わり方まで縛られる不気味さがあった。
幽羅子が得たのも、自由に使える延命術ではなく、
五色堂の争いに結び付いた不老の呪いである。
幽羅子が岩屋で過ごした時間と、
五色堂の夜に起きた出来事を分けると、
「呪いの器だったから不老になった」という
短い答えでは届かない部分が見えてくる。
岩屋は彼女の生い立ちを変えた。
五色堂は彼女の寿命を変えた。
その二つを抱えた幽羅子が、900年後の
大正時代にも摩緒の前へ立っている。
第26話で菜花が聞いた少女の話は、
その長い生涯の始まりにあたる。
岩屋で受けた呪いが消えたから自由になった、
あるいは摩緒に会ったから長生きした、
という単純な変化ではない。外へ出たあとも
御降家の争いに巻き込まれ、本人が望まない形で
生き続けることになった点に目を向けたい。
第2章 平安の少女と大正の幽羅子は、どうつながる?
第26話の岩屋で、摩緒と出会った少女の過去を見る
第25話では、女学校へ潜入した菜花が
宝生かがりに襲われる。摩緒がその場で救っても、
かがりは呪いの針で菜花の居場所を突き止め、
幽羅子のもとへ連れ去った。追う側だった菜花が
幽羅子と向き合う側へ移される。この出来事が、
第26話で幽羅子自身の過去を聞く入口になる。
幽羅子が話し始めると、舞台は
大正の事件から平安の御降家へ移る。
彼女の暮らす岩屋には呪符があり、
外には自分の知らない世界が広がっている。
大正では不知火のそばで動く幽羅子が、
ここでは外へ出ることもままならない少女だ。
同じ人物を見る目が大きく変わる場面である。
この過去で摩緒が幽羅子に出会う。
第14話で彼女の顔を見て驚き、第15話で
不知火と一緒にいることへ怒った摩緒には、
大正で初めて見た相手という以上の過去がある。
幽羅子もまた、摩緒を900年前から知っている。
二人が同じ時代にいたことがはっきりすると、
彼女がどうして今も生きているのかが
いっそう避けられない疑問になる。
第26話の時点で見えるのは、
岩屋に閉じ込められた少女が外を知り、
摩緒と会ったという過去までだ。
ここに五色堂の不老の仕組みを
そのまま重ねてしまうと、出来事の順が崩れる。
摩緒との出会いが彼女をすぐに不老にした、
という場面もない。少女時代の記憶と
寿命が止まる事件の間には、別の過去がある。
摩緒については第1話から、大正の町で
菜花を救い、妖を相手にする姿が描かれた。
第2話になると、自分を呪った猫鬼を
追い続けていると分かる。視聴者には
摩緒の900年へつながる猫鬼の名前が、
早い段階で渡されていた。それに対して幽羅子は、
第26話で平安の本人だと分かっても、
長命の仕組みはまだ明かされていない。
だから岩屋の回想には、二つの見方がある。
初めて見る人には、幽羅子が御降家で
どんな生活を強いられたかが分かる。
大正の幽羅子を先に見た人には、
この少女がいくつもの時代を越えたという
新たな疑問が残る。第26話は過去を見せながら、
まだ語られていない900年にも目を向けさせる。
第14・15話のサロンと不知火のそばに、同じ顔の幽羅子が現れる
大正での幽羅子の初登場を見直すと、
第14話の舞台は政財界のサロンだ。
「寿命を繋ぐ御降家の陰陽師が来る」という
噂が広がる頃、幽羅子が人々の集まる場所に現れる。
かつて岩屋の中から外を見ていた少女が、
今は大正の社交の場に姿を見せている。
第26話を知ったあとでは、この距離が際立つ。
華紋は幽羅子を不知火の手先と考え、
摩緒とともに追う。ところが摩緒は
彼女の顔を見て驚く。紗那と同じ顔だったからだ。
この反応だけを頼りにすると、紗那が
生き延びて名前を変えたのかと思うかもしれない。
だが第26話で語るのは、紗那の名を借りた誰か
ではなく、岩屋で暮らした幽羅子自身の過去だ。
第15話では不知火が摩緒の前へ現れ、
平安から続く因縁と、寿命を操る泰山府君の
秘法について話す。その不知火の側に
紗那と同じ顔の幽羅子がいるため、
摩緒は怒りを隠せない。顔を見て驚いた
第14話から、誰のそばに立つかを見て
怒る第15話へ、摩緒の反応も変わっている。
この二話だけでも幽羅子には、
紗那と同じ顔であること、不知火と動くこと、
御降家の平安の過去に関わることが重なる。
さらに第20話には、夏野が幽羅子の放った
黒い邪気を見て、900年前に紗那の心臓を
掴み出した邪気と同じだと語る。
顔だけの偶然ではなく、当時の事件と
彼女の現在の力までつながっている。
ただ、見た目が変わらない人を
ひとまとめにしてはいけない。第8話の百火は
一度死んでも生き返り、五色堂に呼ばれた
弟子だったと語る。第18話には夏野が
摩緒と菜花の前に姿を見せ、大五と紗那の
過去を語る。平安を知る人が大正にいることは
共通でも、全員が同じ方法で命をつないだ
わけではない。
幽羅子の900年を問うときに必要なのは、
紗那と同じ顔の謎を解くことだけでも、
岩屋の呪いを見つけることだけでもない。
第14話のサロンで摩緒が見た女性と、
第26話の岩屋で摩緒と出会った少女は、
長い時を隔てた同じ幽羅子である。
では、その間にどの術へ巻き込まれたのか。
百火たちの生存と五色堂の過去が、
次に確かめるべき手掛かりになる。
第25話で幽羅子の元へ連れ去られた菜花は、
第26話に彼女の口から過去を聞く。
摩緒の驚きや夏野の証言を通してしか
見えなかった幽羅子が、自分の記憶を語る。
それでもなお不老について答えが残るからこそ、
第8話で百火が口にした五色堂を
もう一度思い出すことになる。
第3章 「呪いの器」なら、なぜ不老とは言い切れない?
岩屋では御降家に向けられた呪いを引き受けていた
第26話で幽羅子が菜花に語ったのは、
御降家の奥にある岩屋で過ごした少女時代だ。
周囲には呪符が貼られ、外へ出ることもできない。
幽羅子は御降家に放たれた呪いを取り込む
「器」として、そこに置かれていた。
岩屋にいたのは、平安時代の幽羅子本人だ。
第14話、政財界の人々が集まる大正のサロンに
現れた幽羅子を見たあとで第26話を振り返ると、
「この少女が900年後まで生きているのか」と
驚くのは自然だろう。しかも岩屋で人の呪いを
受けていたと知れば、それが不老の原因にも見える。
ただ、第26話で描かれた岩屋の役目は、
御降家に届く呪いを幽羅子へ集めることだ。
そこには「年を取らなくなる」という説明も、
「傷ついても死なない」という説明もない。
人の呪いを受け止める体と、900年にわたって
生き続ける体は、同じようには扱えない。
この違いを考えるときに思い出したいのが、
第10話で不知火側の術者が摩緒に求めた
「泰山府君」の術だ。魚と水でできた巨人は、
人の寿命を操る術を教えろと摩緒に迫った。
御降家の術者であっても、人の寿命を自在に
延ばせるわけではないからこそ、その術を欲しがる。
第13話では華紋が、延命をうたっていたのは
不知火だったと摩緒たちに話す。第14話では、
「寿命を繋ぐ御降家の陰陽師」の噂が広がる
さなかに幽羅子がサロンへ姿を見せた。
彼女が不知火のそばにいるため、幽羅子自身も
延命の術で生きているように見えやすい。
しかし、噂の術と幽羅子の体を
そのまま結び付ける場面はない。第26話の岩屋も、
彼女がどんな呪いを負わされていたかを示すが、
寿命を止めた瞬間までは示していない。
「呪いの器だから不老になった」と答えてしまうと、
五色堂で後に起きた出来事が抜け落ちる。
第20話の黒い邪気が示す力と、寿命を止めた術を分けて見る
では、幽羅子は岩屋を出てからも
何か特別な力を持っていたのか。第20話では夏野が、
幽羅子の放った黒い邪気について摩緒たちに語る。
それは900年前、紗那の心臓を掴み出した邪気と
同じものだったという。平安の事件と大正の幽羅子が、
同じ黒い力によってつながる場面だ。
第18話に現れた夏野は、摩緒の兄弟子である
大五と紗那の過去を知っていた。その夏野が
第20話で黒い邪気を見分けたことは重い。
摩緒は第14話に幽羅子の顔を見たとき、
紗那と同じ顔であることに強く動揺している。
夏野の証言は、顔だけでは分からなかった
幽羅子の力を、900年前の事件へ結び付ける。
ここで恐ろしいのは、邪気が紗那の
「心臓を掴み出した」と語られる点だ。
幽羅子が人の姿で立っている場面だけを見れば、
かつて岩屋に閉じ込められた少女に見える。
ところが黒い邪気には、相手の命に直接触れる
ほどの力がある。第26話の過去を見たあとでは、
その落差がいっそう大きく感じられる。
それでも、邪気で人を傷つけられることと、
幽羅子自身が老いないことは別の疑問だ。
黒い邪気が強いから900年生きたのなら、
百火や華紋、白眉まで同じ時代を越えている
ことは説明できない。彼らは岩屋の器ではなく、
幽羅子と同じ邪気を放つとも語られていない。
第22話で摩緒は、双馬に打たれた針によって
獣の姿へ変わり、百火や菜花を襲ってしまう。
第16話の白眉との戦いでも獣姿で暴走した。
摩緒には猫鬼が関わる体の変化があり、
幽羅子には黒い邪気がある。二人の異常な力を
一つの呪いとして片付けると、それぞれの体に
何が起きたのかが見えなくなる。
幽羅子の岩屋暮らしは、彼女が御降家に
どう扱われ、なぜ普通の少女として外を
歩けなかったかを知るために欠かせない。
第20話の邪気も、平安の悲劇と現在の彼女を
つなぐ大切な手掛かりだ。一方、年を取らずに
生き続けたきっかけを探すなら、視線を
五色堂と、そこへ呼ばれた人々に移す必要がある。
第4章 百火たちの生存が、五色堂を指していた
第8話で百火が死から戻り、五色堂へ呼ばれた過去が浮かぶ
第8話「百火」では、摩緒の兄弟子である
百火が火の陰陽術を使い、摩緒たちを襲う。
戦いの中で百火は一度死んだように見えるが、
すぐに生き返った。摩緒や菜花の前で起きたのは、
昔の人が若い姿のまま現れたというだけではない。
今、目の前で命を失っても戻ってくる出来事だ。
百火も900年生きていると分かったあと、
彼の口から出るのが「五色堂」である。
平安時代、師匠は五人の弟子をそこへ呼んだ。
なぜ集めたのか、何をされたのかは、
この段階で全部は明かされない。それでも、
百火が生き返る場面と五色堂の記憶が同じ
第8話に置かれていることは見逃せない。
第1話で菜花が出会った摩緒は、
大正の町で妖に襲われた人々を診る青年だった。
第2話では、自分を呪った猫鬼を追っていると
分かる。摩緒だけを見ている間は、900年の
生存も猫鬼の呪いで説明できそうに思える。
ところが第8話には、別の兄弟子である百火が
現れ、しかも死から戻るところまで見せた。
百火を見た菜花の立場で考えると、
驚きは「平安時代の知り合いがまだいる」
だけでは終わらない。摩緒のそばにいる
自分たちは命を落としかねない戦いをしているのに、
百火は一度倒れても生き返った。誰が同じように
生き返るのか、どうすれば命が尽きるのか。
五色堂という地名は、その疑問と一緒に残る。
第9話には、木の陰陽術を使う朽縄の正体が
摩緒の兄弟子、華紋だと明かされる。
百火一人の生存なら個別の術とも考えられるが、
華紋も大正で活動している。第13話には百火と
華紋がそろって摩緒の診療所を訪れ、不知火の
動きを語る。平安の弟子たちは遠い回想の中に
いるだけでなく、今も互いの行方を追っている。
幽羅子もまた平安の御降家にいた人物だ。
だから百火の蘇生は、幽羅子の疑問と無関係な
戦闘場面ではない。ただし、第8話を見ただけで
「幽羅子も五人の弟子だった」とは言えない。
同じ時代を生き延びたという事実と、
同じ立場で五色堂に呼ばれたかどうかは、
まだ分けて考える必要がある。
第16話で白眉も五色堂にいたと判明する
第14話では、摩緒と華紋が幽羅子を追う中、
鉄仮面の男の存在が浮かぶ。第16話でその男は、
御降家の兄弟子・白眉だと明かされた。
白眉は金の術で摩緒を激しく攻撃し、
摩緒は獣姿になって暴走する。かつての弟子が
大正で再会しても、同じ側に立つとは限らない。
その白眉も、百火や華紋と同じく
平安時代に五色堂へ呼ばれていた。
第8話の百火の言葉が、ここで別の人物からも
つながってくる。摩緒を襲う百火、身分を隠して
動く華紋、鉄仮面で現れる白眉。現在の行動は
違っていても、彼らには御降家の弟子だった
過去と、五色堂という共通の場所がある。
第16話の戦いのあと、摩緒は消耗して
診療所で眠り続ける。第17話には妖たちが
治療を求めて訪れ、菜花と乙弥、百火が
摩緒の代わりに対応する。第8話では敵として
襲ってきた百火が、今度は摩緒の家にいる。
900年を経ても弟子たちの関係は途切れず、
対立も協力も続いている。
一方、第15話で不知火は摩緒の前に現れ、
平安時代から続く因縁を語りながら、
寿命を操る泰山府君の秘法を要求した。
そのそばには紗那と同じ顔の幽羅子がいる。
摩緒が彼女を見て怒ったのは、顔を知っている
相手が、いま不知火側に立っているからだ。
幽羅子の900年には、人間関係の変化も伴う。
ただし、五色堂に「呼ばれた」という説明は、
百火や白眉たち弟子へ向けられている。
第26話で見た幽羅子の居場所は岩屋だった。
彼女を最初から五人の候補に数えてしまうと、
なぜ候補ではない幽羅子まで同じ時代を
生きているのかという、肝心の疑問が消えてしまう。
第8話で死から戻った百火、第9話に現れた華紋、
第16話に五色堂との接点が判明した白眉。
彼らを追うと、900年の生存が一人だけの
偶然ではなかったことが分かる。では岩屋で
暮らし、五人の弟子に数えられていなかった
幽羅子は、どうやって同じ呪いを受けたのか。
その答えは、五色堂に入った彼女の妖にある。
第5章 原作第223話|五色堂で何が行われた?
※ここから先は、アニメ第26話より後の原作第23巻に触れる。
御降家の師匠と猫鬼が、後継者を決める争いを仕掛けた
第8話で百火が口にした五色堂は、
昔の弟子たちが集まっただけの場所ではない。
原作第223話では、御降家の師匠と猫鬼が
仕掛けた後継者争いの舞台だったと分かる。
大正に生きる百火や華紋、白眉を見て、
なぜ同じ時代から何人も残っているのかと
感じた疑問は、この堂の中へ戻っていく。
御降家の師匠は、飼い猫の灰丸が
ただの猫ではないと気づいていた。
呪いをかけても効かない相手の正体は猫鬼。
師匠はその力を手に入れようとして、
御降家の行く末を懸けた勝負を持ちかける。
師匠が勝てば猫鬼を従わせ、猫鬼が勝てば
御降家を奪う。弟子たちはその勝負に使われた。
摩緒は自分を呪った猫鬼を、第2話から
追い続けていた。第7話には猫鬼が幼い菜花を
五行商店街の門から現代へ連れ去り、
摩緒は獣姿になって菜花を守ろうとする。
目の前の猫鬼に対抗する摩緒の姿を見てきた
あとで原作の過去を知ると、摩緒自身が
師匠と猫鬼の賭けに組み込まれていた重さが分かる。
後継者候補の弟子たちに示されたのは、
摩緒を呪い殺した者が後を継ぐという道だ。
仲間として同じ家で修行してきた相手を、
今度は倒すべき標的にする。第8話の百火は
摩緒たちへ火の術を向け、第16話の白眉も
金の術で摩緒を追い詰める。大正の衝突には、
五色堂の夜に始まった争いが残っている。
第13話で華紋と百火が摩緒の診療所へ
そろって来た場面には、かつて敵対した
百火まで同じ部屋にいる。相手を殺すよう
命じられた関係が、900年後にも単純な敵味方に
収まっていないのだ。五色堂の命令は、
弟子たちがそれ以前に築いた関係まで
消してはくれなかった。
原作では猫鬼が、五色堂で候補者を
閉じ込めて争わせる企てを明かす。
一人を選ぶ普通の試験なら、勝負が終われば
弟子たちは家を出られる。しかし五色堂では、
互いを呪い殺すこと自体が仕組みになっていた。
誰かの勝利のために別の誰かが死ぬ。
師匠が選んだのは、そのやり方だった。
弟子同士の親しささえ、仕掛けの一部になる。
百火は摩緒を知り、華紋は真砂を知っている。
第19話、海底の社で真砂の最期を聞いた華紋が
後悔しながら不知火に立ち向かう場面を思えば、
彼らは名前だけの競争相手ではない。
かつての仲間を呪うよう迫られた一夜が、
900年後の行動にも影を落としている。
ここで幽羅子の姿を探しても、
後継者として名を呼ばれた五人には入らない。
第26話で菜花に語った岩屋暮らしからも、
師匠に候補として育てられた弟子たちとは
違う立場だったことが分かる。だからこそ、
候補者を縛るための五色堂の術が、
どうして彼女にまで及んだのかが問題になる。
「壺結の術」が参加者を死ねない状態に縛った
第223話で猫鬼が明かすのが「壺結の術」だ。
五色堂にいた者たちを、後継者争いから
逃れられないようにする術である。
第224話になると、堂内で術にかかった者は
同じ術に縛られた者の呪いによってしか
命を絶てないという条件も語られる。
強い術者なら誰でも倒せる相手ではなくなる。
第8話の百火が摩緒たちとの戦いで
一度死んでも戻った場面を思い出したい。
火の術を使う百火自身が蘇生の術を唱えた、
という話として見るより、五色堂に呼ばれた
弟子の体に何が起きているのかを考えると
つながりが見えてくる。命を奪ったはずの
攻撃が、争いの決着になっていない。
しかも百火は、再び戦えるからといって
後継者の座を欲しがっているわけではない。
原作第223話で五色堂の争いが再び動くと、
百火は参加したくないとはっきり示す。
それでも猫鬼は、降りるなら命を差し出せと
突きつける。生き返れる力があるほど自由、
という関係ではないことが見える場面だ。
第16話に金の術を振るった白眉も、
第9話に木の術を使う朽縄として現れた華紋も、
五色堂とつながっている。術の系統も性格も
異なる者たちが大正で活動しているのは、
全員が別々に延命法を見つけたからではない。
同じ堂で、同じ後継者争いに縛られた過去がある。
百火の蘇生は、その異常さが見える一場面だ。
「壺結の術」は、傷を負わない体を
作ったわけではない。第8話の百火は
倒れたうえで戻ってきた。第16話の摩緒も
白眉との戦いで獣姿になり、戦いのあとには
消耗して眠り続ける。痛みも戦いも消えず、
ただ普通の終わり方だけが遠ざかる。
五色堂の不老を幸運とは呼びにくい。
第17話では、白眉との戦いから回復しない
摩緒の診療所で、百火が菜花と乙弥を助ける。
第8話の襲撃だけを覚えていると意外だが、
同じ五色堂に縛られた者同士でも、
戦うか支えるかは毎回同じではない。
術が長い命を残した一方、互いの関係は
900年間ずっと動き続けている。
原作第223話では猫鬼が、彼らの老化を
900年にわたって止めていたことにも触れる。
もともと数年で決まるはずの勝負が終わらず、
平安の候補者たちが大正まで残った。
術にかかった幽羅子にも、この長い時間が
及んでいる。彼女の若い姿は、岩屋で得た
特別な褒美ではなく、終わらない勝負の結果だ。
五色堂の仕組みが見えたところで、
もう一つの疑問が鋭くなる。百火や白眉は
呼ばれた弟子だから、堂にいたと分かる。
一方の幽羅子は候補から外れている。
堂の外にいた彼女の体へ、なぜ同じ術が
届いたのか。その一点を明かすのが、
原作第224話で語られる妖の存在である。
第6章 原作第224話|呼ばれていない幽羅子まで、なぜ術にかかった?
※この章には、幽羅子と不知火に関する原作の展開を含む。
百火を脅した妖が五色堂に入り、幽羅子は外から堂内を見ていた
原作第224話で幽羅子の長命に
答えが出るとき、語られるのは彼女が
五色堂へ足を踏み入れたという話ではない。
百火を脅すために現れた幽羅子の妖が、
堂内にいたという事実だ。幽羅子は妖を通して
中で起きたことを見ていた。この間接的な
立ち会いが、彼女を術へ巻き込んでいた。
百火を思い浮かべると、この場面が
急に身近になる。第8話では火の術を操って
摩緒たちを襲い、一度倒れても戻ってきた。
そんな百火も、900年前の五色堂では
後継者争いを望んでいなかった。
彼が争いを拒みかけたとき、幽羅子の妖が
脅しとして使われた。現在の百火の生存と、
幽羅子の不老は同じ夜の出来事へつながる。
第20話で夏野が摩緒たちに語った
幽羅子の黒い邪気も、過去に紗那の心臓を
掴み出したものと同じだった。アニメで
幽羅子の妖の力を見ていると、彼女が
離れたところからも人へ働きかけられる
人物だと分かる。ただし第20話の邪気が
そのまま五色堂にいた妖の姿を示した、
という話ではない。つながるのは使い手だ。
幽羅子は堂内を妖の目で見ていたため、
誰が後継者候補として呼ばれたかも知った。
そして、選ばれていなかった不知火へ
そこで見聞きしたことを伝えている。
第12話で水の式神を追う華紋が不知火と再会し、
第15話に不知火が摩緒へ因縁を突きつけた頃には、
彼の側にも五色堂の過去に関わる話があった。
原作では幽羅子が、標的にされた摩緒を
守ってほしいと不知火に頼んだことも分かる。
第15話で摩緒が不知火のそばにいる彼女へ
怒りを向けた場面とは、見え方が変わる過去だ。
五色堂を見ていた幽羅子は、候補者の名前だけでなく、
摩緒がどんな危険に置かれたかも知っていた。
この場面で見落とせないのは、
情報だけが幽羅子へ届いたわけでは
なかったことだ。堂の中に妖がいたため、
五色堂でかけられた壺結の術まで、
幽羅子本人に及んだ。離れた場所から
五人の争いを見ていただけのつもりでも、
結果として自分の老いまで止められてしまう。
岩屋で呪いの器にされた幽羅子は、
第26話で外の世界を知り、摩緒と出会った。
しかし自由になり始めた先で、今度は
五色堂へ送った妖を通して別の呪いにかかる。
自ら後継者を望んだためでも、
不老を願ったためでもない。彼女の900年には、
御降家の争いへ巻き込まれた経緯がある。
後継者候補ではないのに、同じ不老を背負うことになった
第8話に百火が語った「五人の弟子」と
幽羅子を、同じ名簿に並べてはいけない。
五人は師匠から五色堂へ呼ばれた。
幽羅子は呼ばれず、妖がその場所にいた。
それでも術の影響を受けたという点が、
幽羅子の長命を特別なものにしている。
原因は同じ堂にあり、そこへ至る道が違う。
原作第224話では、不知火も当初の
五人に選ばれていなかったことが分かる。
幽羅子から五色堂の出来事を聞いた彼が、
候補者たちに対して抱いていた思いも見えてくる。
第15話で幽羅子が彼のそばにいたことは、
大正になって突然結んだだけの関係ではない。
平安のあの夜を知る二人が、長い時を越えて
行動をともにしている。
ただし不知火と幽羅子は、
「選ばれなかった」という一点だけで
同じ状態になったわけでもない。
幽羅子には五色堂にいた妖とのつながりがあり、
そのため壺結の術が体へ及んだ。
不知火の立場まで同じ仕組みで説明すると、
幽羅子だけに示された決定的な接点がぼやける。
第14話、摩緒はサロンで幽羅子の顔を見て
紗那を思い出した。第15話には不知火のそばに
立つ彼女を見て怒る。視聴者がこの場面で
疑うのは、紗那が生きていたのか、あるいは
幽羅子が人間ではないのかということだろう。
しかし原作の答えは顔の秘密でも怪物への
変身でもなく、堂内に入った妖と術のつながりだ。
第26話の少女を知ったあとでは、
幽羅子が大正まで生きたことを幸運だけで
受け取れない。岩屋にいる間は御降家へ届く
呪いを引き受け、外へ出た後には御降家の
後継者争いに関わる術で寿命を止められた。
第25話に菜花を自分のもとへ連れてこさせた
現在の幽羅子にも、その過去が続いている。
幽羅子が900年生きてるのは、
本人に不老を望む資格が与えられたからではない。
百火を脅すために使った妖が五色堂にいた。
そのため候補者を閉じ込めるはずの術に、
候補ではない彼女まで捕まった。
第8話の百火の蘇生、第16話の白眉の生存、
第26話の岩屋の少女が大正にいる事実は、
ここで一つの夜へつながる。
第7章 幽羅子はこれからも死ねないのか?
※この章には、アニメ第26話より先の原作第23巻の内容を含む。
原作第225話で、大五の体に起きたことが術の条件を示す
「900年生きてる」と聞くと、幽羅子は
どんな傷を受けても平気なのかと思うかもしれない。
原作第225話に描かれる大五の過去は、
その考えを変える。大五は不知火の水の術で
首を落とされ、それでも動きを止めなかった。
不知火はさらに体を傷つけ、術を使う手まで
切り離す。痛みや損傷が消える体ではない。
不知火が大五をそこまで傷つけても、
命を終わらせられなかったのは、
不知火が壺結の術に縛られた者では
なかったからだ。第224話で語られたのは、
同じ術にかかった者の呪いでなければ
命を絶てないという条件である。
首を落とすほどの攻撃でさえ、
この条件を満たさなければ決着にならない。
大五の体がなお動くのを見て、
不知火は幽羅子にも手を貸すよう求める。
幽羅子の妖は切り離された体を運び、
各所へ散らした。第26話で摩緒と出会った
岩屋の少女を思い出すと、900年後まで
続く御降家の争いに、彼女自身も深く
手をかけていたことが見えてくる。
大五は命を失ったわけではない。
しかし体が離れ、後継者を決める争いも
進められない。勝者が決まらないまま、
猫鬼は関係者の老化を止め、900年が過ぎた。
幽羅子の若い姿も、この中断された時間と
切り離せない。彼女だけが独立した
不老の術を使い続けたわけではなかった。
原作第223話で大五が再び姿を現すと、
猫鬼は止まっていた後継者争いが
また動き出すと告げる。大五一人の体に
何が起きるかが、ほかの者たちの
生存にも関わっていたのだ。幽羅子が
大正にいることを、彼女個人の体質だけで
説明できないのは、このつながりがあるからだ。
百火は第8話で一度死んでも戻った。
大五は首を失っても命が尽きなかった。
二つの場面で起きたことは同一ではないが、
どちらも普通の攻撃では五色堂の争いを
終わらせられないと示す。幽羅子についても、
不老だから絶対に死なないと断言するより、
術が続く間は死に方まで縛られている、
と捉えたほうが正確だ。
第225話では、百火が猫鬼に
術を解けないのかと問う。猫鬼だけでなく
御降家の師匠も術に関わっており、
一方の師匠はすでに死んでいた。
猫鬼が気まぐれに術を消せば終わる、
という状態ではない。幽羅子の寿命が
今後どうなるかは、五色堂から続く
争いと術がどう決着するかに関わっている。
摩緒の猫鬼、夏野の延命と比べて幽羅子の寿命を見る
摩緒が猫鬼を追う姿は、第2話から
描かれていた。第7話では菜花を守ろうと
獣姿になり、第16話には白眉との戦いで
再び暴走する。摩緒の体を考えるとき、
猫鬼と切り離すことはできない。一方、
幽羅子が900年生きた直接のきっかけは、
彼女の妖が五色堂にいたことだ。
同じ五色堂の争いに関わっていても、
摩緒と幽羅子の歩みは同じではない。
摩緒は後継者候補たちの標的となり、
猫鬼にも体を狙われる。幽羅子は候補に
選ばれていないのに、妖を通して術へ
巻き込まれた。二人が大正に並んで立つ姿から、
同じ呪いを同じ形で受けたとは言えない。
夏野も第18話に摩緒と菜花の前へ
姿を見せるため、平安を知る人は
皆同じ術で生きているように見える。
しかし夏野には、土人形の体や
命をつなぐための施術に関わる事情がある。
原作では、当時病んでいた夏野自身が
五色堂の候補として戦ったわけではなく、
大五との関係も後に明かされる。
第23話の「夜歩く患者」では、
患者が墓土を食べて吐き出すのを
摩緒と菜花、乙弥が目撃し、
そこへ夏野が現れた。土の術と命を
つなぐ方法が夏野の周囲にある一方、
幽羅子を大正に残したのは五色堂の術だ。
「900年」という数字が同じでも、
体を支えるものまで同じとは限らない。
第20話には夏野が、幽羅子の黒い邪気と
紗那の心臓を奪った900年前の邪気が
同じだと語った。夏野は過去を知る証人で、
幽羅子はその過去に力を及ぼした人物だ。
同じ時代を生き延びた二人を一括りにせず、
誰が何を見て、どの体にどんな術が
働いたのかを追うと、長命の違いが見えてくる。
幽羅子は第14話に華やかなサロンへ現れ、
第15話には不知火のそばで摩緒と向き合う。
その姿だけなら、長い時を自由に生きてきた
人物にも見える。だが第26話で明かされた
岩屋の少女時代と、五色堂で妖が術を受けた
夜を知ると、同じ顔のまま生きた900年には
本人が選べなかった出来事が重なっている。
幽羅子がいつまで生きるかを、
現在の姿だけで決めることはできない。
原作第225話が示したのは、壺結の術には
命を絶てる相手について条件があり、
後継者争いの停止によって長い不老が
続いてきたということだ。900年を越えた
彼女の命にも、終わらない術の行方が
今なお関わっている。
第26話で幽羅子が菜花へ見せたのは、
呪符の岩屋にいた少女の記憶だった。
その少女が、摩緒を守ろうと五色堂を
妖を通して見た結果、自分も術に捕まる。
「なぜ900年生きてる?」という疑問の先には、
なぜ望まない争いの中で生き続けることに
なったのかという、幽羅子自身の過去がある。
MAOまとめ
『MAO』の考察・キャラ解説・猫鬼の呪い・五色堂・アニメ感想記事をまとめています。
摩緒、菜花、猫鬼、百火、華紋、不知火、白眉、玄武、乙弥など記事一覧はこちら。
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