『MAO』の華紋と真砂は、ただ仲が良かった兄弟子同士ではなく、御降家を離れて二人で生きようとするところまで進んでいた。
華紋が真砂との駆け落ちを選ぼうとした背景には、後継者争いや呪殺に巻き込まれる御降家への嫌悪と、真砂だけはそこから連れ出したいという強い思いがある。
そして真砂を失ったことで、その時に果たせなかった約束が900年後の華紋まで縛り、不知火との対立へつながっていく。
第1章 結論|華紋が捨てようとしたのは御降家、守ろうとしたのは真砂だった
華紋は家よりも、真砂と生きる未来を選ぼうとしていた
華紋が真砂と駆け落ちしようとしたのは、
一時の感情に流されたからではない。
御降家に残れば、
真砂が後継者争いへ巻き込まれ、
誰かを呪い殺す側へ回る可能性があった。
華紋にとって真砂は、
同じ屋敷で修行する仲間以上の存在になっていた。
だから御降家に残ることよりも、
真砂と二人でそこから離れることを選ぼうとした。
御降家は、
外から見れば陰陽師を育てる大きな家。
多くの術者が集まり、
五行の術を学び、
後継者を目指す場所でもあった。
しかし内部では、
その後継者をめぐって、
兄弟子たち同士の緊張が高まっていく。
誰が師の跡を継ぐのか。
その選択が、ただの競争では済まなくなっていった。
真砂も、
その後継者候補の一人として見られていた。
水の術に長け、
御降家の中でも高い実力を持っている。
だからこそ、
本人の気持ちとは関係なく争いの中心へ近づいていく。
けれど真砂は、
人を呪い殺してまで後継者になりたい人物ではない。
誰かを倒して自分が残る。
そんな道を選ぶより、
御降家そのものから離れようとする。
そこに華紋がいる。
華紋もまた、
真砂を一人で逃がすのではなく、
自分も一緒に屋敷を出ようとする。
つまり華紋が選ぼうとしたのは、
「家を捨てる」という反抗だけではない。
これから先も真砂と一緒にいるために、
御降家で得られる立場も、
術者としての居場所も手放す覚悟だった。
二人にとって御降家は、
長く過ごしてきた場所。
修行を重ねた場所でもあり、
兄弟子たちとの関係もある。
そこを出るということは、
簡単に戻れる場所を失うことでもある。
それでも、
華紋は真砂と出ていこうとした。
ここに、
真砂が華紋にとってどれほど大きな存在だったのかが表れている。
駆け落ちは恋愛だけでなく、真砂を御降家の争いから連れ出す選択でもあった
華紋と真砂の関係を、
単なる悲恋として見るだけでは足りない。
二人が逃げようとした背景には、
御降家そのものが危険な場所へ変わっていたことがある。
後継者を選ぶ。
本来なら、
術を学ぶ者にとって名誉にも見える。
けれど御降家では、
その選定が兄弟子同士を追い詰めていく。
真砂は、
その争いへ積極的に参加しようとはしなかった。
むしろ、
呪殺を拒む。
人を殺してまで地位を手に入れることを、
受け入れようとしなかった。
華紋からすれば、
そんな真砂が御降家に残れば、
いずれ逃げ場を失っていくことも分かる。
後継者になりたくないと言っても、
候補に選ばれた以上、
周囲が放っておくとは限らない。
だから、
二人で逃げる。
御降家の外へ出る。
後継者争いから離れる。
そして別の場所で生きる。
そこには、
恋愛感情だけではなく、
「このままここにいたら真砂を失う」
という危機感も混ざっていたように見える。
華紋自身も、
御降家で培ったものを多く持っている。
木の術を学び、
兄弟子としての立場もある。
そこを離れることは、
それまでの人生を大きく変える選択になる。
それでも、
華紋は真砂の側に立つ。
御降家に残って安全な位置を選ぶのではなく、
真砂と同じ危険を引き受けようとする。
ここが、
二人の関係を強く感じさせるところ。
華紋は真砂へ、
ただ「好きだ」と思っていただけではない。
一緒に生きるために、
自分の居場所そのものを変えようとしている。
しかも、
逃げた先が安全だという保証もない。
御降家を抜ければ、
追われる可能性もある。
術者としての支えを失うかもしれない。
それでも、
御降家に残って真砂が争いへ呑み込まれるよりはいい。
そんな選択だったからこそ、
駆け落ちには軽さがない。
華紋が守ろうとしたのは、
真砂の命だけではない。
人を殺したくないという真砂の気持ち。
後継者になりたくないという意思。
そして二人で生きられる未来そのものだった。
結果として、
その未来は実現しない。
だからこそ華紋の中には、
「一緒に逃げられなかった」という感情が、
900年後まで残っていくことになる。
第2章 華紋と真砂はどんな関係だった?御降家で育った恋が逃亡へ変わるまで
最初から駆け落ちを考えていたのではなく、同じ場所で過ごす中で特別になっていった
華紋と真砂は、
最初から御降家を捨てようとしていたわけではない。
同じ場所で術を学び、
兄弟子たちと過ごす中で、
互いの存在が少しずつ大きくなっていった。
真砂は、
水の気を扱う術者。
その実力は高く、
御降家の中でも水の術に秀でた人物として知られている。
一方の華紋は、
木の気を扱う術者。
現在では飄々とした言動も目立つが、
御降家時代から術を学び、
兄弟子の一人としてその場にいた。
二人は、
同じ屋敷の中で暮らしている。
修行する。
食事をする。
兄弟子たちと顔を合わせる。
そんな日常が長く続いていた。
そこで互いの性格も見えてくる。
誰が何を嫌うのか。
何に傷つくのか。
どんな時に無理をするのか。
同じ場所にいるからこそ、
表面だけでは分からない部分まで知っていったはず。
真砂は、
後継者争いに積極的ではない。
高い実力があっても、
誰かを呪い殺してまで上へ行こうとはしない。
そこには、
術者としての強さとは別の優しさがある。
華紋が真砂へ惹かれていったのも、
そうした部分と無関係ではないように見える。
強いから好きになった。
美しいから惹かれた。
それだけではない。
御降家の中で、
争いが強くなっていく。
周囲の空気が変わる。
そんな中でも真砂は、
自分の意思を簡単には曲げようとしない。
華紋にとって、
その姿は特別だった。
だから真砂が危険へ近づくほど、
ただ見ているだけではいられなくなる。
後継者候補に選ばれたことで、「一緒にいる」だけでは真砂を守れなくなった
二人の関係が大きく変わるのは、
真砂が後継者候補として、
御降家の争いへ深く巻き込まれていくところから。
それまでは、
同じ屋敷にいれば会えた。
同じ御降家にいる限り、
二人の時間も続けられた。
けれど後継者争いが始まれば、
その前提が崩れる。
候補同士は、
同じ兄弟子でありながら、
互いを意識せざるを得なくなる。
誰が残るのか。
誰が選ばれるのか。
誰を呪うのか。
そんな空気の中では、
ただ平穏に暮らしているだけでは済まない。
真砂自身は、
そこで誰かを殺そうとはしない。
後継者になるために、
自分から他人を犠牲にする道を選ばない。
しかし、
本人が戦いたくないからといって、
争いの方が真砂を見逃してくれるわけではない。
むしろ実力があるからこそ、
候補として無視されにくい。
華紋も、
そこを感じ取っていたはず。
このまま御降家に残れば、
真砂は望まない形で争いへ引きずり込まれる。
だから、
「ここにいながら真砂を守る」では足りなくなる。
御降家そのものから離れなければ、
二人の未来を守れない。
その結果として、
駆け落ちという選択が現れる。
恋人同士だから一緒に逃げる。
それだけではなく、
争いから生きて離れるための逃亡でもあった。
華紋にとって、
この決断はかなり大きい。
自分だけなら、
御降家へ残る道もあった。
後継者争いと距離を取りながら、
術者として生きることも考えられた。
それでも、
真砂だけを残すことはしない。
一人で逃げろとも言わない。
自分も一緒に行く。
そこに、
華紋の気持ちの強さが出る。
真砂の人生へ、
途中まで付き合うのではない。
これから先も一緒に生きるつもりで、
自分の人生そのものを動かそうとしている。
だから二人の駆け落ちは、
御降家時代の小さな恋愛話では終わらない。
華紋が何を最優先にする人物なのかを、
はっきり見せた選択でもある。
家より真砂。
立場より真砂。
御降家で積み上げてきたものより、
これから二人で生きられる可能性。
そこまで選ぼうとしたからこそ、
逃亡に失敗した後の後悔も深くなる。
もし軽い気持ちだったなら、
900年後まで引きずることはない。
けれど華紋は、
本当に真砂と生きる未来を選ぼうとしていた。
だからこそ、
その未来を失ったことが、
現在の華紋にも消えずに残っている。
第3章 なぜ御降家を捨てようとした?後継者争いが二人に突きつけたもの
五色堂へ呼ばれることは、名誉ではなく殺し合いへの入口だった
御降家の後継者に選ばれることは、
外から見れば名誉にも思える。
長く修行してきた術者なら、
師の跡を継ぐことは一つの到達点にもなる。
けれど華紋と真砂が置かれていた状況は、
そんな穏やかなものではなかった。
後継者候補となった者たちは、
五色堂へ集められ、
互いの生死まで絡む危険な状況へ追い込まれていく。
そこでは、
誰が最も優秀なのかを試すだけでは済まない。
相手を蹴落とす。
場合によっては呪い殺す。
そんなところまで、
候補者同士の争いが深くなっていく。
真砂にとって、
その空気は到底受け入れられるものではなかった。
水の術に優れ、
後継者候補として名前が挙がるだけの実力はある。
それでも、
力があることと人を殺せることは別だった。
真砂は、
誰かを犠牲にしてまで後継者になりたいとは思っていない。
自分が生き残るために、
同じ御降家で過ごしてきた仲間へ呪いを向ける。
その選択を拒んでいる。
華紋は、
そんな真砂の気質をよく知っていたはず。
御降家に残れば、
いずれ真砂は自分の信念と後継者争いの間で、
逃げ場を失っていく。
戦えば、
真砂らしさを失う。
戦わなければ、
今度は真砂自身が狙われる可能性がある。
どちらを選んでも、
穏やかな未来にはつながらない。
だから華紋にとって、
「真砂と一緒にいたい」という気持ちは、
次第に「ここから連れ出さなければ」に変わっていく。
ただ恋人と暮らしたいからではない。
御降家にいれば、
真砂の命そのものが危ない。
この時点で二人に残された道は、
かなり狭くなっている。
御降家へ従う。
後継者争いを受け入れる。
あるいは、
すべてを捨てて外へ出る。
華紋が選ぼうとしたのは、
最後の道だった。
自分も御降家を離れる。
真砂だけを逃がすのではなく、
二人で出ていく。
それは華紋自身にとっても、
それまでの生活を断ち切る選択になる。
木の術を学んできた場所。
兄弟子たちと過ごした場所。
将来の居場所にもなり得た御降家。
それらを残すより、
真砂と生きられる方を選ぶ。
ここまで来ると、
二人の駆け落ちは単なる恋愛の勢いではない。
生き方そのものを変える覚悟になっている。
真砂は後継者になりたいのではなく、人を殺さずに生きたかった
真砂という人物を見ていくと、
華紋がなぜ彼女を放っておけなかったのかも見えやすい。
真砂は術者として弱いわけではない。
むしろ水の術では、
御降家の中でも高い位置にいた。
それでも、
力があるから争いを楽しむ人物ではない。
後継者候補に入ったからといって、
「自分こそ跡を継ぐ」と前へ出ることもしない。
むしろ呪殺を拒む側にいる。
その姿は、
華紋にとっても強く映ったはず。
御降家の後継者になれば、
術者として大きな立場を得られる可能性がある。
それでも真砂は、
人を殺すことを優先しない。
つまり真砂が守ろうとしたのは、
地位ではなく自分自身の在り方だった。
誰かの命を奪ってまで、
御降家の頂点には立たない。
その姿勢を変えようとはしない。
けれど、
御降家側からすれば、
本人が望んでいないからといって争いから外せるとは限らない。
実力がある。
後継者候補に入っている。
それだけで、
周囲から警戒される立場になる。
華紋にとっては、
そこが最も苦しい。
真砂自身は争いたくない。
それでも周囲は、
真砂を競争相手として見る。
このままでは、
真砂が誰かを傷つけるか、
逆に誰かに傷つけられる。
華紋が見ていたのは、
その先だった。
だから二人で出ていく。
御降家の外へ行けば、
少なくとも後継者争いからは離れられる。
誰を呪い殺すかという世界から、
真砂を遠ざけられる。
華紋は、
真砂を強い術者だから選んだわけではない。
人を殺したくない。
その気持ちを捨てない真砂だからこそ、
一緒に生きたいと思ったように見える。
そして真砂も、
華紋となら外へ出ることを選ぶ。
一人で逃げるのではない。
華紋と一緒に御降家を離れる。
そこには二人の意思が重なっている。
後継者争いに勝つ未来ではなく、
御降家の外で生きる未来。
それを選ぼうとしたところに、
華紋と真砂の関係の深さがある。
二人が欲しかったのは、
特別な地位ではない。
誰かを倒して得る立場でもない。
ただ一緒に生きられる場所。
その小さな望みすら、
御降家では許されなかった。
だから駆け落ちという形にまで、
追い込まれていった。
第4章 駆け落ち直前に何が起きた?二人の逃亡を不知火が見つける
「二人でここを出る」という未来は、実現する直前で崩れていった
華紋と真砂が選んだのは、
御降家から逃げること。
後継者争いに残るのではなく、
屋敷そのものを離れ、
二人で生きる道だった。
そこまで決めた二人にとって、
あとは実際に外へ出られるかどうか。
御降家を抜ければ、
もう元の立場には簡単に戻れない。
それでも二人は進もうとする。
夜の屋敷から離れる。
誰にも気づかれずに外へ出る。
その先にどんな暮らしが待っているかは分からない。
それでも、
真砂と一緒なら進む。
華紋にとっては、
真砂を救い出す最後の機会でもあった。
五色堂へ進めば、
後継者争いから完全には逃れられない。
だからその前に、
二人で出なければならない。
真砂も、
その選択を受け入れている。
御降家の術者として残る未来より、
華紋と外へ出る未来を選ぶ。
そこまで二人の気持ちは固まっていた。
ところが、
その逃亡は人知れず成功することはなかった。
二人が屋敷を出ようとするところを、
不知火に見つかってしまう。
ここで、
物語の空気が一気に変わる。
あと少しで御降家の外へ出られる。
そんなところまで来ていた二人の未来が、
急に危うくなる。
不知火は、
華紋と真砂にとって知らない人物ではない。
同じ御降家で過ごしてきた弟弟子。
だからこそ、
発見されたことの重さも大きい。
見知らぬ誰かに見つかったのではない。
自分たちの事情を知る側の人物に、
逃亡を知られてしまった。
この瞬間から、
二人の駆け落ちは秘密ではなくなる。
華紋にとっては、
真砂を連れ出すはずだった夜。
二人で別の人生へ進むはずだった夜。
それが、
不知火に見つかったことで崩れ始める。
真砂を待っていたのは、駆け落ち失敗だけではなく命を奪われる結末だった
二人の逃亡が失敗した後、
真砂を待っていたものは非常に重い。
御降家の掟を破り、
屋敷を抜けようとした。
その代償は、
単なる叱責や処罰では終わらない。
真砂は、
妖の群れへ放り込まれる。
術者としての実力がある真砂でも、
簡単には切り抜けられない状況。
そこで命を失うことになる。
ここが、
華紋にとって決定的な傷になる。
一緒に逃げると決めた。
自分も御降家を捨てるつもりだった。
それでも最後には、
真砂を守れなかった。
もし二人があと少し早く出ていれば。
誰にも見つからなければ。
不知火に知られなければ。
そう考えてしまう余地が、
いくつも残っている。
だから華紋の後悔は、
単純な「好きな人を失った」だけではない。
自分と一緒に逃げるはずだった相手を、
目の前の未来ごと失った後悔になる。
二人には、
すでに別の人生の入口があった。
御降家を出る。
後継者争いから離れる。
どこかで二人で暮らす。
その未来が、
完全に消えてしまった。
しかも真砂は、
自分が拒んでいたはずの御降家の争いによって命を奪われる。
人を呪い殺したくない。
誰かを犠牲にしてまで後継者になりたくない。
そんな真砂が、
結局は御降家の掟の中で殺される。
華紋からすれば、
受け入れられるはずがない。
真砂が間違っていたから死んだのではない。
むしろ誰かを傷つけたくないと願った結果、
逃げるしかなくなっていた。
そしてその逃亡さえ、
成功しなかった。
だから900年後になっても、
華紋の中では過去になり切らない。
真砂が死んだという事実だけなら、
長い年月の中で受け入れることもできたかもしれない。
けれど華紋には、
「一緒に逃げるはずだった」という記憶が残る。
あと少しで、
二人の人生は変わっていた。
その直前で失ったからこそ、
後悔は消えにくい。
さらに現在では、
真砂の亡骸まで不知火の手元にある。
華紋にとって不知火は、
昔の弟弟子というだけではない。
二人の駆け落ちが崩れた夜と、
真砂の最期へつながる人物でもある。
だから華紋が、
現在の不知火へ強い感情を向けるのも自然になる。
900年前に果たせなかったこと。
真砂を連れ出せなかったこと。
その過去が、
今の対立へそのまま続いている。
華紋と真砂の駆け落ちは、
失敗した恋愛エピソードで終わっていない。
二人が選んだ未来が潰され、
その後悔が900年後まで続く出発点になっている。
第5章 華紋は真砂を助けられなかった|駆け落ち未遂が900年消えなかった後悔
一緒に逃げると決めた相手を、結果として失ってしまった
華紋にとって、
真砂との駆け落ちは、
ただ失敗した恋愛ではない。
一緒に生きる未来そのものを、
目の前で失った出来事だった。
二人は、
御降家を出ようとしていた。
真砂だけを逃がすのではなく、
華紋自身もそこを離れる。
つまり本気で、
今までの人生を捨てるつもりだった。
御降家に残れば、
真砂は後継者争いから逃れにくい。
誰かを呪うか、
逆に狙われるか。
そんな場所へ、
これ以上置いておけない。
だから華紋は、
真砂と一緒に出ていくことを選ぶ。
この時点で、
華紋の気持ちはかなりはっきりしている。
家よりも、
真砂との未来を優先していた。
ところが、
その未来は実現しない。
二人の逃亡は途中で知られ、
真砂は御降家の掟へ引き戻される。
そして最後には、
命まで失うことになる。
華紋からすれば、
あまりにも重い。
一緒に逃げようと言った。
自分も覚悟を決めた。
それでも、
最後まで真砂を連れ出すことはできなかった。
この「助けられなかった」という感覚が、
華紋の中へ長く残る。
最初から何もできなかったわけではない。
むしろ、
助けようとしていた。
あと少し早ければ。
誰にも見つからなければ。
あの時、
別の動き方ができていれば。
そう考えられる余地があるからこそ、
後悔は消えにくい。
結果だけを見れば真砂は亡くなった。
けれど華紋の中には、
「本当なら一緒に生きられたかもしれない」という感覚が残る。
それが、
900年という長い時間を経ても消えない。
普通なら、
人の一生を何度も重ねるほどの年月。
それでも真砂は、
華紋にとって遠い昔の人物にはならない。
華紋が現在まで真砂を追い続ける根には、果たせなかった約束がある
現在の華紋を見ると、
真砂への感情が、
単なる懐かしさではないことが分かる。
昔好きだった人を思い出しているだけではない。
まだ何かを返さなければならないような動き方をしている。
そこには、
駆け落ちを果たせなかった記憶がある。
二人で御降家を出る。
一緒に生きる。
その未来が途中で切れている。
華紋の中では、
その話が完結していない。
だから真砂に関するものが現れると、
過去が一気に現在へ戻ってくる。
特に不知火との再会は大きい。
不知火は、
華紋と真砂が逃げようとした過去に関わっている。
さらに現在では、
真砂の亡骸まで手元に置いている。
華紋からすれば、
昔と今が同時に重なる相手。
不知火を見るだけで、
900年前に果たせなかったものまで突きつけられる。
第19話では、
真砂の最期をめぐる過去が、
華紋の前へさらに強く戻ってくる。
海底の社へ向かう華紋は、
単に敵を倒しに行っているわけではない。
その奥には、
真砂がいる。
かつて一緒に逃げようとした相手。
自分が守れなかった相手。
その人の痕跡が、
現在まで残っている。
ここで華紋の感情は、
900年前の恋愛だけでは説明しにくくなる。
好きだった。
失った。
悲しい。
それだけではない。
自分は、
一緒に生きると決めた。
それなのに、
その約束を最後まで果たせなかった。
だから今も動く。
この差が大きい。
未練というより、
途中で止まった人生を、
今もどこかで終わらせられていないように見える。
真砂を失った後、
華紋だけが長い年月を生きる。
その間に世界は変わる。
御降家も昔のままではない。
兄弟子たちの立場も変わっていく。
それでも、
真砂との記憶は残る。
だから大正時代になっても、
不知火と真砂をめぐる問題から離れられない。
華紋の900年を見ていくと、
駆け落ち未遂がただの過去ではなかったことが分かる。
一緒に逃げ切れなかった。
その一点が、
ずっと心の奥へ残り続けている。
そして現在では、
過去にできなかったことを、
別の形でやり直そうとしているようにも見える。
真砂を今度こそ手放さない。
その気持ちが、
不知火との対立をさらに激しくしていく。
第6章 900年後も真砂を選び続ける華紋|不知火との対立が激しくなる
真砂の亡骸を取り戻そうとする華紋は、昔と同じ選択をしている
900年前、
華紋は真砂と一緒に御降家を出ようとした。
その時に選んだのは、
家でも後継者争いでもない。
真砂だった。
そして現在でも、
華紋の選択は大きく変わっていない。
真砂の亡骸が不知火の手元にあると分かれば、
それを取り戻そうと動く。
ここが、
二人の関係でかなり重いところ。
真砂はすでに亡くなっている。
昔のように、
二人でどこかへ逃げることはできない。
それでも華紋は、
「もう過去のことだから」と切り離さない。
不知火に真砂を渡したままにできない。
少なくとも、
自分の目の届かないところへ置いておけない。
これは、
900年前の駆け落ちとよく重なる。
当時も華紋は、
真砂を御降家に残してはいけないと思った。
だから一緒に連れ出そうとした。
現在も同じ。
真砂を、
不知火のところに残しておけない。
過去と状況は違っても、
「真砂をそこから取り戻す」という選択は変わっていない。
第20話では、
華紋が真砂の亡骸を取り戻そうとする意志を見せる。
ここで、
900年前と現在がはっきり一本につながってくる。
昔は、
生きている真砂を連れ出せなかった。
今は、
亡骸だけでも取り戻したい。
その姿には、
遅すぎると分かっていても手を伸ばす切実さがある。
華紋にとって、
真砂は思い出の中にだけいる人ではない。
今も行動を変える存在。
自分が危険な場所へ入っていくことすら、
迷わせない相手になっている。
だから不知火との戦いも、
単なる兄弟子同士の対立ではない。
華紋からすれば、
真砂をめぐる900年越しの対立でもある。
不知火との対立は、昔に連れ出せなかった真砂を今度こそ取り戻す戦いになっている
華紋にとって不知火は、
昔から知っている弟弟子。
同じ御降家にいた相手。
けれど現在では、
その関係だけでは済まない。
不知火は、
真砂の過去を知っている。
駆け落ちが崩れた時にも関わっている。
さらに現在では、
真砂の亡骸を自分の側に置いている。
だから華紋が、
不知火へ強い感情を向けるのは自然。
昔の記憶と、
現在の問題が、
一人の相手に重なっている。
第19話の海底の社でも、
華紋は不知火を相手にする。
そこで戦う理由には、
摩緒たちのためだけではなく、
真砂をめぐる個人的な感情も強く混ざっている。
もし真砂との過去がなければ、
不知火はただの敵だったかもしれない。
けれど華紋にとっては、
900年前に失った人へ再びつながる存在。
だから、
引けない。
危険でも進む。
そして真砂を取り戻そうとする。
この姿を見ると、
華紋が昔と同じ人物だと感じる部分もある。
900年前も、
真砂を選んだ。
現在も、
結局は真砂を選んでいる。
立場は変わった。
時間も経った。
世界も変わった。
それでも、
一番大切なところだけは変わっていない。
ここが、
華紋と真砂の関係を強く見せる。
恋が終わったから前へ進むのではない。
終わらなかったから、
現在までずっと続いている。
華紋は、
昔に戻りたいわけではない。
真砂ともう一度同じ人生をやり直せるわけでもない。
それでも、
今できることを選ぼうとする。
真砂の亡骸を取り戻す。
不知火の手から離す。
せめて、
自分が守れるところへ戻したい。
そこには、
900年前にできなかったことへの埋め合わせのような感情も見える。
あの時は連れ出せなかった。
今度こそ、
置いていかない。
この「今度こそ」が、
華紋の現在を動かしている。
だから不知火との対立が強くなるほど、
真砂への思いもよりはっきりする。
昔の駆け落ちは、
失敗に終わった。
それでも華紋の中では、
完全に終わっていない。
一緒に生きたかった。
守りたかった。
連れ出したかった。
その選択が、
900年後でも変わらず残っている。
だから華紋は、
現在でも真砂を選び続けている。
第7章 華紋と真砂の恋は、900年前に終わったのではなく現在まで続いている
駆け落ちできなかったことが、華紋の900年を決めてしまった
華紋と真砂の関係は、
900年前に真砂が命を落とした時点で、
すべて終わったようにも見える。
けれど華紋の中では、
そこで完全に終わってはいない。
二人は、
ただ想い合っていただけではない。
御降家を離れ、
それまでの立場も暮らしも捨てて、
一緒に生きようとするところまで進んでいた。
つまり華紋が失ったのは、
真砂という一人の女性だけではない。
二人で生きるはずだった時間。
御降家の外で始まるはずだった暮らし。
まだ形にもなっていなかった未来まで失っている。
だからこそ、
華紋の後悔は深い。
もしあの時、
もっと早く逃げられていたら。
誰にも見つからず、
真砂を連れ出せていたら。
そんな可能性が、
完全には消えない。
最初から叶わない恋だったのではなく、
あと少しで別の未来へ進めそうだったからこそ、
失ったものが余計に大きく見える。
しかも真砂は、
自分から争いを望んだ人物ではない。
誰かを呪い殺してまで、
御降家の後継者になろうとはしなかった。
そこから離れようとした結果、
命まで奪われている。
華紋からすれば、
真砂の選択は間違っていたようには見えない。
だから時間が経っても、
「仕方がなかった」と簡単には割り切れない。
御降家の掟。
後継者争い。
逃亡の失敗。
そして真砂の死。
すべてがつながったまま、
華紋の中へ残り続けている。
900年という年月は、
普通なら多くの記憶を遠ざけるほど長い。
それでも華紋は、
真砂のことを忘れていない。
むしろ現在まで、
彼女をめぐる過去へ強く縛られている。
そこに、
華紋と真砂の関係の重さが出る。
若い頃の恋を美しい思い出として残したのではない。
華紋にとっては、
まだ終わっていない出来事になっている。
華紋が今も真砂を選ぶ姿に、二人の関係の重さが残っている
現在の華紋を見ると、
真砂への思いが過去だけのものではないことが分かる。
不知火の動きを追う中でも、
真砂の存在は華紋にとって大きい。
特に、
真砂の亡骸が不知火の側にあることを知ってからは、
華紋の感情がより強く表へ出る。
昔の恋人を懐かしむような距離ではない。
取り戻さなければならない相手として見ている。
900年前には、
真砂を連れ出すことができなかった。
二人で御降家を出ようとして、
その途中で未来を失った。
だから現在の華紋が、
真砂を取り戻そうとする姿には、
昔の駆け落ちの続きのような感触がある。
あの時は、
外へ連れ出せなかった。
今度は、
不知火の手から取り戻したい。
状況は違っても、
華紋が真砂を選ぶところは変わっていない。
この一貫性が大きい。
900年も経てば、
人の価値観も立場も変わる。
実際、
御降家にいた兄弟子たちは、
現在ではそれぞれ別の道へ進んでいる。
華紋自身も、
昔とまったく同じ人物ではない。
大正時代では偽名を使い、
摩緒たちと関わりながら、
独自に動いている。
それでも、
真砂だけは特別なまま。
過去の一人として、
心の奥へしまい込んではいない。
不知火と対峙する時にも、
そこには900年前の感情が混ざる。
ただ敵だから戦うのではない。
真砂の最期。
駆け落ちを阻まれた夜。
助けられなかった記憶。
それらを抱えたまま、
華紋は現在の不知火へ向かっていく。
だから二人の恋は、
真砂が亡くなった時点で、
綺麗に終わった悲恋ではない。
華紋の中では、
今も現在形で残っている。
一緒に生きられなかった。
それでも、
一緒に生きたかったという選択は変わらない。
御降家を捨ててもいい。
自分の立場を失ってもいい。
それでも真砂と行く。
900年前に華紋が選んだものは、
現在の彼を見ても大きく変わっていない。
だから華紋と真砂の駆け落ちは、
昔の恋愛エピソードだけでは終わらない。
華紋という人物が、
何を失っても最後に誰を選ぶのか。
そこまで見せた出来事になる。
そして現在、
真砂をめぐって再び不知火と向き合う華紋を見ると、
900年前の夜と今が一本につながって見えてくる。
あの時、
二人で逃げ切れなかった。
だから今度こそ、
真砂を残したままにはしたくない。
華紋にとって真砂は、
終わった恋ではない。
900年経ってもなお、
自分の行動を変えるほど大きな存在として、
今も残り続けている。
MAOまとめ
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摩緒、菜花、猫鬼、百火、華紋、不知火、白眉、玄武、乙弥など記事一覧はこちら。
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