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【これ描いて死ね】手島零はもう一人の主人公?安海相と正反対の漫画人生を歩く先生

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公式上の主人公は安海相だが、手島零にも「ロストワールド」という一本の漫画人生があり、現在の物語と並行して何度も過去が描かれている。
安海が漫画を描く歓びを知って駆け上がる一方、手島は☆野0として漫画家を目指し、創作の厳しさに苦しんだ末に教師へたどり着いた。
だから手島零は単なる顧問ではなく、安海相とは反対側から「漫画を描く人生」を見せる、もう一人の主人公と呼びたくなる存在になっている。

  1. 第1章 結論|主人公は安海相、でも手島零にも一本の主人公級の物語がある
    1. 公式の主人公は安海相
    2. それでも「もう一人の主人公」と感じるほど手島の人生が深く描かれる
  2. 第2章 第1話から安海相と手島零は二つの漫画人生を歩いていた
    1. 漫画を愛してこれから描き始める安海
    2. 漫画を否定するように見えた手島にも隠された過去があった
  3. 第3章 手島零の正体が分かるほど先生という立場だけでは収まらなくなる
    1. 安海が憧れた「ロボ太とポコ太」の作者だった手島
    2. 漫画家を目指し、コミティアにも立っていた若い手島
  4. 第4章 ロストワールドは普通の回想ではない
    1. 手島の昔だけに名前が付いたもう一本の物語
    2. 23歳ではへびちか先生の「スイートへびいちご」の現場まで進んでいた
  5. 第5章 安海は漫画で上へ進み、手島は漫画の厳しさへ沈んでいく
    1. 仲間が増え、描く歓びを知っていく安海相
    2. 才能・評価・職業としての漫画に苦しんでいく手島零
  6. 第6章 手島の過去が挟まれるたび現在の先生が違って見える
    1. 第1話の「漫画に冷たい教師」という印象が少しずつ反転する
    2. 安海たちを止めたいのに漫画から離れ切れない手島
  7. 第7章 二人の主人公が見せているのは「漫画を描いた先にある二つの人生」
    1. これから漫画との関係を作っていく安海
    2. 一度失った漫画との関係を取り戻していく手島

第1章 結論|主人公は安海相、でも手島零にも一本の主人公級の物語がある

公式の主人公は安海相

『これ描いて死ね』の主人公は安海相。
漫画が大好きで、
読むだけだった少女が自分でも描き始め、
仲間と出会い、
少しずつ漫画の世界へ進んでいく。

第1話の安海は、
まだ漫画家でもなければ、
完成された描き手でもない。
好きだから読む。
好きだから描いてみる。
そこから物語が始まる。

だから視聴者も、
安海と一緒に漫画の世界へ入っていく。
初めて原稿を完成させる。
人に見せる。
感想をもらう。
コミティアへ出る。
一つ進むたびに、新しい景色が見える。

主人公としての安海は、
「これから」の人物。
まだ知らない。
まだ決まっていない。
失敗もする。
でも前へ進む。
その未完成さが物語の勢いになる。

一方で、
手島零は最初から完成された大人に見える。
学校の教師。
漫画へ冷たい。
安海たちへも簡単には同調しない。
第1話の段階では、
主人公を導く側の人物にも見える。

ところが話が進むと、
手島の中にも別の物語があると分かってくる。
昔は漫画を描いていた。
漫画家を目指していた。
コミティアにも出ていた。
さらにプロの現場まで入っていた。

現在の手島だけなら、
過去を持つ顧問の先生で終わる。
でも手島の場合、
その過去が何度も本編へ戻ってくる。
一度の回想では済まない。
若い手島の時間そのものが、
もう一本の物語として続いていく。

そこに「ロストワールド」がある。
手島の過去だけに、
はっきり別の名前が付いている。
昔こんなことがありました、
で終わらない。
漫画家を目指していた人生を、
現在とは別の流れで追っていく。

だから手島零は、
公式上の主人公ではない。
でも見ている側からすると、
単なる脇役にも見えなくなる。
安海相とは別の時間を生き、
別の形で漫画と向き合っている。
そこまで描かれるから、
「もう一人の主人公」と感じやすい。

安海は漫画へ入っていく。
手島は一度深く入ったあと、
現在では距離を取っている。
一人は始まり。
一人はその先を知っている。
この二つが並ぶことで、
物語が一方向だけにならない。

だからこの記事で見たいのは、
「手島の出番が多いから主人公っぽい」
という話ではない。
安海と手島が、
それぞれ別の漫画人生を歩いていること。
そこに主人公級の重さがある。

それでも「もう一人の主人公」と感じるほど手島の人生が深く描かれる

手島零の存在感が強くなる最大のところは、
現在だけでは人物像が完成しないこと。
今の手島を見る。
過去を見る。
また現在へ戻る。
そのたびに印象が変わっていく。

最初は漫画へ冷たい先生。
次に、
漫画をかなり詳しく知っている人。
さらに、
昔は漫画家を目指していた人。
その先で、
安海が憧れた「ロボ太とポコ太」を描いた☆野0だったと分かる。

ここまで来ると、
手島はただの顧問ではなくなる。
安海が今歩き始めた道を、
すでに一度歩いた人物。
しかも途中で、
その道から離れている。
現在の安海と過去の手島が、
自然に重なって見えてくる。

手島には、
漫画を描く楽しさを知っていた時間がある。
人に読んでもらう喜びも知っている。
コミティアへ出た経験もある。
へびちか先生のアシスタントとして、
「スイートへびいちご」の現場へ入った時間もある。

つまり漫画との関係がかなり深い。
読む。
描く。
人へ見せる。
プロへ近づく。
挫折する。
離れる。
そして教師として、
もう一度漫画を描く生徒たちと出会う。

この流れだけでも、
一本の主人公級の人生になる。
何か一つを好きになった。
夢へ進んだ。
途中で傷ついた。
離れた。
それでも完全には切れなかった。
現在の手島には、
その全部が残っている。

だから安海たちを見ても、
単純に応援できない。
かといって、
完全に止めることもできない。
漫画の楽しさも知っている。
苦しさも知っている。
その両方を抱えた大人として、
生徒の前に立っている。

ここが安海とは正反対。
安海は今、
漫画によって世界が広がっている。
仲間が増える。
描く楽しさを知る。
人へ読まれる喜びも知る。
未来はまだ開いている。

手島は逆。
漫画によって広がった世界を、
一度失っている。
だから現在では、
同じ漫画を見ても感じ方が違う。
安海にとって希望の入口が、
手島にとっては昔の傷へつながることもある。

それでも、
手島は安海を放っておかない。
原稿を見る。
必要なことを教える。
漫研へ関わる。
漫画を描こうとする姿に、
どこかで昔の自分を重ねている。

この関係があるから、
手島は主人公の横にいる脇役では終わらない。
安海の現在だけでは見えないものを、
自分の過去で見せる。
漫画を描く歓びの先に何があるのか。
その答えの一つを、
自分の人生そのもので持っている。

だから手島零は、
安海相と同じ主人公ではない。
でも物語のもう片側を背負う人物。
安海が「これから」を進むなら、
手島は「その先を一度歩いた人」として立っている。
そこに、
もう一人の主人公と呼びたくなる重さがある。

第2章 第1話から安海相と手島零は二つの漫画人生を歩いていた

漫画を愛してこれから描き始める安海

安海相の物語は、
漫画を好きな気持ちから始まる。
最初から漫画家を目指しているわけではない。
描くことより、
読むことの方がずっと近い。
好きな作品がある。
新しい漫画を待つ。
それだけで日常が少し明るくなる。

だから最初の一歩も大きい。
自分で描く。
頭の中にあったものを、
紙の上へ出してみる。
思ったようにいかない。
でも、
完成すれば嬉しい。

そこから漫画が一人の趣味ではなくなる。
藤森たちと出会う。
誰かの絵を見る。
意見を言う。
一緒に考える。
漫画を通して、
人間関係そのものが広がっていく。

漫研ができることで、
安海の世界はさらに変わる。
自分だけで描くのではない。
仲間と作品を作る。
見せ合う。
修正する。
完成させる。
一つ一つの経験が新しい。

コミティアでは、
自分たちの漫画を外へ出す。
知らない人が前を通る。
誰も立ち止まらない時間もある。
それでも一冊を手に取ってもらえる。
読まれる。
買ってもらえる。
描いたものが誰かへ届く。

この瞬間、
漫画は自分たちだけのものではなくなる。
安海の中にあったものが、
他人の時間へ入る。
描くことの楽しさが、
読まれる喜びへ変わっていく。

安海はまだ、
漫画の世界へ入ったばかり。
だから失敗にも明るさがある。
売れない。
上手く描けない。
思ったように伝わらない。
それでも、
次はどうするか考えられる。

未来が決まっていないから、
何でも可能性になる。
漫画家になるかもしれない。
別の道へ行くかもしれない。
今はただ、
描くことが面白い。
その熱が前へ進ませる。

主人公としての安海は、
この「始まり」を背負っている。
漫画が人生へ入ってくる瞬間。
好きだったものが、
自分自身の表現へ変わる瞬間。
そこを一話ずつ経験していく。

漫画を否定するように見えた手島にも隠された過去があった

その安海の前にいるのが手島零。
第1話では、
二人はかなり遠い。
安海は漫画が大好き。
手島は漫画へ冷たい。
最初だけなら、
漫画好きの主人公と、
それを理解しない教師にも見える。

でも少しずつ違和感が出る。
手島は漫画を知りすぎている。
原稿を見れば分かる。
描く側の苦労も知っている。
安海たちへ助言できる。
ただ漫画を嫌っている人ではない。

そこから手島の過去が見えてくる。
昔は自分でも描いていた。
漫画家を目指していた。
コミティアへ出ていた。
安海が今初めて経験していることを、
手島はすでに通っている。

さらに大きいのが、
「ロボ太とポコ太」。
安海が憧れていた漫画。
その作者が手島だった。
現在の教師姿からは、
まったく想像しにくい過去が出てくる。

ここで第1話の関係が反転する。
漫画を知らない先生ではない。
むしろ深く知っている。
安海より先に描いた。
安海より先に人へ出した。
安海より先に、
漫画家という未来へ近づいた。

へびちか先生のアシスタントになれば、
さらにその先へ進む。
大ヒット作
「スイートへびいちご」の制作現場へ入る。
漫画を仕事として作る人たちの中へ加わる。
手島の過去は、
安海の現在よりずっと深い場所まで行っている。

だから二人は、
第1話から別々の漫画人生を持っていたことになる。
安海は、
これから漫画へ入る人。
手島は、
一度漫画へ深く入ったあと、
現在では外側へ戻っている人。

この差が、
物語の中で何度も効いてくる。
安海が喜ぶ場面。
手島には懐かしく見える。
安海が苦しむ場面。
手島には先の痛みまで想像できる。
同じ出来事でも、
二人が受け取るものは違う。

だから手島は、
安海へ簡単に夢を勧めない。
自分も昔は夢を見た。
その先も知っている。
でも、
だからといって安海の未来を決めることもしない。

安海は安海の人生。
手島は手島の人生。
同じ漫画を好きでも、
同じ結末になるわけではない。
そこを分けながら、
二人の時間が少しずつ重なっていく。

第1話では、
漫画好きの生徒と漫画嫌いの教師に見えた。
でも話が進むほど、
漫画をこれから知る少女と、
漫画を知りすぎた大人だったと分かる。

この二人が並んでいるから、
『これ描いて死ね』は、
ただ「漫画を描いて成長する主人公」の話だけでは終わらない。
安海の始まりの横で、
手島の失われた時間も動いている。
最初から二本の漫画人生が、
同じ物語の中を走っていた。

第3章 手島零の正体が分かるほど先生という立場だけでは収まらなくなる

安海が憧れた「ロボ太とポコ太」の作者だった手島

手島零がただの顧問ではないと強く感じるのが、
「ロボ太とポコ太」とのつながり。
安海相にとって大切な漫画。
その作者が、
目の前にいる手島先生だった。

第1話の時点では、
安海から見ても手島は漫画へ冷たい大人。
漫画を読むことにも厳しい。
自分の好きなものを理解してくれない。
そんな距離から二人の関係は始まる。

ところが話が進むと、
手島は漫画を知らないどころか、
自分でも描いていたことが分かる。
しかも安海の心に残った作品を、
過去に自分の手で生み出していた。

ここで先生と生徒の関係が大きく変わる。
安海が今から目指そうとしている場所に、
手島は一度立っていた。
漫画を描く。
作品として完成させる。
読者へ届ける。
その経験を持つ人物が、ずっと近くにいた。

安海にとって「ロボ太とポコ太」は、
単なる昔の漫画ではない。
漫画が好きになる気持ちを支えた作品。
読者として大切にしてきたもの。
だから作者が手島だと分かることは、
先生の過去を知る以上に重い。

手島自身から見れば、
さらに複雑。
昔描いた漫画が、
自分の知らないところで一人の少女へ届いていた。
しかもその少女が、
今は自分の前で漫画を描いている。

漫画家としての道から離れても、
作品は消えない。
描いた本人が過去へ置いてきても、
読者の中には残る。
安海の存在そのものが、
手島の漫画家時代が無駄ではなかったことを見せている。

だから手島は、
安海たちを完全には突き放せない。
自分が一度失った漫画とのつながりが、
別の形で目の前へ戻ってきている。
先生と生徒というだけではなく、
作者と読者という関係まで重なる。

この重なりが、
手島を主人公級の人物へ押し上げている。
安海が漫画によって人生を変えていく一方で、
手島も安海との出会いによって、
過去の漫画人生をもう一度見つめ直すことになる。

安海だけが変わる物語ではない。
手島もまた変わっていく。
昔の作品。
昔の夢。
昔の失敗。
それらが現在へ戻り、
先生としての自分へつながっていく。

「ロボ太とポコ太」は、
その二人をつなぐ大きな橋になる。
安海にとっては憧れの漫画。
手島にとっては過去の自分が残したもの。
同じ作品を挟んで、
二つの時間が現在で重なる。

漫画家を目指し、コミティアにも立っていた若い手島

手島の過去が深くなるほど、
現在の冷静な姿との落差も大きくなる。
昔は自分で漫画を描いていた。
漫画家を目指していた。
作品を人へ見せる場所にも出ていた。
安海たちが今経験していることを、
手島も先に通っている。

コミティアもその一つ。
自分の漫画を持っていく。
机に並べる。
知らない人が前を通る。
読んでもらえるか分からない。
描くだけでは味わえない緊張がある。

安海たちも、
同じように自分たちの漫画を外へ出す。
誰も手に取らない時間を過ごす。
それでも一冊が動けば嬉しい。
作品が自分たちの手を離れ、
読者へ渡る瞬間を知る。

手島は、
その感覚をすでに知っている。
だからコミティアで安海たちを見る視線にも、
単なる付き添い以上のものが入る。
自分もあの場所にいた。
自分も反応を待った。
自分も未来を信じていた。

若い手島にとって、
コミティアは終点ではない。
そこからさらに漫画家を目指す。
へびちか先生のアシスタントになる。
大ヒット作の現場へ入る。
漫画家としての未来を、
少しずつ現実へ近づけていく。

この流れを見ると、
手島が一度かなり深くまで進んでいたことが分かる。
ただ趣味で漫画を描いていた人ではない。
自分の人生を漫画へ寄せていった。
だから現在の距離の取り方にも重さが出る。

もし最初から夢を諦めていたなら、
今の手島はここまで複雑にはならない。
でも実際には進んだ。
届いた作品もある。
プロの現場にも入った。
それでも今は教師として安海たちの前にいる。

この「途中まで進んだ人生」が、
手島の物語を強くする。
安海の未来がまだ決まっていないのに対して、
手島には一度選び、
一度進み、
一度離れた過去がある。

だから二人は同じ漫画好きでも、
立っている場所が違う。
安海はこれから挑戦する側。
手島は一度挑戦した側。
現在と過去が並ぶほど、
手島自身にも主人公級の厚みが生まれていく。

第4章 ロストワールドは普通の回想ではない

手島の昔だけに名前が付いたもう一本の物語

手島零の過去には、
「ロストワールド」という名前が付いている。
ここが普通の回想とは大きく違う。
昔こんなことがあった。
それだけを短く説明するための過去ではない。

手島が何を好きだったのか。
どうやって漫画を描いていたのか。
誰と出会ったのか。
どこまで漫画家へ近づいたのか。
その時間そのものが、
一本の物語として続いていく。

現在の安海たちの話とは、
空気も少し違う。
安海側では、
新しい経験が次々と増えていく。
仲間と描く。
人へ見せる。
イベントへ出る。
漫画によって世界が広がる。

一方のロストワールドでは、
手島の過去が少しずつ深くなる。
夢を見る。
挑戦する。
憧れの人へ近づく。
その先で、
漫画家として生きる厳しさにも近づいていく。

だから単なる補足には見えない。
安海の現在とは別に、
手島にも一本の漫画人生がある。
過去の出来事が連続し、
若い手島自身が前へ進んでいく。

しかも視聴者は、
現在の手島を先に知っている。
今は漫画家ではない。
学校で教師をしている。
その結果を知った上で、
夢へ向かう若い手島を見ることになる。

ここに独特の重さがある。
若い手島が嬉しそうなら、
その先が気になる。
夢へ近づくほど、
現在との距離も大きくなる。
「何があって今の先生になったのか」
という疑問が常に残る。

ロストワールドが何度も入ることで、
手島は過去を持つ脇役ではなくなる。
現在とは別の時間を生きる人物。
一度終わったはずの人生が、
本編の中でもう一度進んでいく。

だから「もう一人の主人公」と感じる人が出てくる。
安海には現在の成長がある。
手島には過去の成長と挫折がある。
二人とも漫画によって人生が大きく動いている。

違うのは、
その時間の向き。
安海はこれから先へ進む。
手島は失った時間を振り返る。
それでも二つの物語が、
現在の学校で交わっている。

23歳ではへびちか先生の「スイートへびいちご」の現場まで進んでいた

第7話まで進むと、
手島の過去はさらに本格的になる。
23歳の手島零。
漫画家を目指し続け、
憧れのへびちか先生のアシスタントになる。

そこで関わるのが、
大ヒット作「スイートへびいちご」。
手島が読む側だった漫画。
その制作現場へ入り、
今度は作る側として関わることになる。

この出来事は、
手島の過去が単なる失敗談ではないことを示している。
本気で進んでいた。
経験も積んだ。
プロの現場へ入るところまで来た。
夢は遠いままではなかった。

だからこそ、
現在との落差が大きい。
23歳の手島には、
漫画家として続いていく未来が見えている。
憧れの先生の近くで働く。
自分もいつか作品を出す。
そう思える位置まで来ている。

現場へ入れば、
大ヒット作の裏側も知る。
完成原稿だけではない。
描き続ける日々。
読者から期待される重さ。
売れた後にも終わらない仕事。
漫画家として生きる現実が近づく。

安海は今、
漫画を描くことの楽しさを知っている。
手島も昔、
同じように前へ進んでいた。
でも手島の過去は、
その先にある世界まで見せる。

だからロストワールドには、
安海の未来を先取りするような怖さもある。
漫画が好き。
描くのが楽しい。
その先へ進めばどうなるのか。
手島の過去は、
一つの可能性としてそこにある。

ただし、
安海が同じ人生を歩くとは限らない。
手島の過去は未来予告ではない。
むしろ同じ漫画を好きでも、
人生は一つではないことを見せている。

手島は一度深く入って離れた。
安海はこれから進んでいく。
だから二人を並べることで、
漫画との関係にもいくつもの形があると分かる。

23歳の手島まで丁寧に描かれることで、
「先生の昔」という範囲を完全に越えている。
一人の人間が漫画へ入り、
夢を持ち、
仕事の世界まで近づいた人生。
そこまで描かれるから、
手島零は安海相の隣で、
もう一つの主人公のように見えてくる。

第5章 安海は漫画で上へ進み、手島は漫画の厳しさへ沈んでいく

仲間が増え、描く歓びを知っていく安海相

安海相の漫画人生は、
基本的に前へ進んでいる。
最初は読むだけだった。
そこから自分で描き始め、
仲間と一緒に作品を作るようになる。

一人で漫画を楽しんでいた時間から、
誰かと漫画について話す時間へ。
さらに、
自分たちで一冊を完成させる時間へ進む。
漫画が安海の日常をどんどん広げていく。

コミティアへ出たことも大きい。
島の中だけで完結していた漫画が、
知らない人の前へ出る。
読まれる。
買われる。
反応が返ってくる。
安海にとっては、漫画が外の世界とつながる体験になる。

もちろん失敗もある。
思うように描けない。
人に伝わらない。
売れない。
でもその失敗さえ、
次にどうするかを考える材料になる。

今の安海には、
漫画を描くこと自体が新しい。
だから失敗もまだ未来へ変えられる。
一つ経験すれば、
次の挑戦が生まれる。
その勢いが主人公としての安海を動かしている。

一方で、
手島零の過去は同じ方向には進まない。
若い頃の手島も最初は前向きだった。
自分で漫画を描く。
人に見せる。
漫画家を目指す。
そこまでは安海とよく似ている。

しかし手島は、
さらに深い場所へ進んだ。
へびちか先生のアシスタントになる。
「スイートへびいちご」の現場へ入る。
漫画を仕事にする世界へ近づく。

そこで見えてくるのは、
漫画を描く楽しさだけではない。
締切。
評価。
継続。
読者からの期待。
自分の作品を仕事として成立させる厳しさ。

安海が漫画によって世界を広げている時、
手島の過去では、
漫画へ進むほど逃げ場が少なくなっていく。
好きだからこそ本気になる。
本気だからこそ、
評価されない時の痛みも大きくなる。

ここが二人の大きな違い。
安海には、
まだ漫画の未来が開いている。
手島には、
その未来へ実際に踏み込んだ経験がある。

だから手島は、
安海の楽しそうな姿を見ても、
同じ温度では喜べない。
楽しいことを知っている。
でもその先も知っている。
そこに二人の時間差がある。

安海はこれから漫画との関係を作っていく。
手島は一度、
その関係を深く作りすぎた人。
同じ漫画好きでも、
立っている場所がまったく違う。

才能・評価・職業としての漫画に苦しんでいく手島零

手島零の過去が重く見えるのは、
漫画を本気で好きだったから。
軽い気持ちで目指したわけではない。
自分で描く。
人へ見せる。
プロの世界へ入る。
そこまで進んでいる。

本気だから、
評価も無視できない。
自分の漫画がどう見られるのか。
面白いのか。
届いているのか。
描けば描くほど、
自分自身まで試される感覚が強くなる。

さらに職業として考え始めると、
漫画は趣味だけではなくなる。
描きたい時だけ描く。
気分が乗らなければ休む。
それでは続かない。
仕事としての時間が加わる。

へびちか先生の現場では、
大ヒット作でさえ、
毎回原稿を完成させなければならない。
売れたら終わりではない。
むしろ売れたからこそ、
次への期待が大きくなる。

手島は、
その姿を間近で見る。
憧れの漫画家。
憧れの大ヒット作。
でも近くへ行けば、
成功の裏側にある苦しさも見える。

ここで漫画家という夢は、
ただ眩しいものではなくなる。
夢へ近づいたからこそ、
重さまで見えてくる。
その経験が、
現在の手島へ強く残っている。

だから手島は、
安海へ簡単に「漫画家になれ」と言わない。
才能がある。
好きなら進め。
そう単純には考えない。
自分がその道の先を知っているから。

一方で、
手島は漫画を否定もしない。
描く歓びも知っている。
作品が誰かへ届いた時の嬉しさも知っている。
だから安海を完全には止められない。

この二重性が、
手島をもう一人の主人公らしく見せる。
ただ過去に失敗した人ではない。
今も漫画との距離を測りながら、
自分自身の過去と向き合っている。

安海が漫画で上へ進むほど、
手島の過去は下へ沈んでいく。
でもその二つは別々ではない。
現在の安海を見ることで、
手島の中に眠っていた漫画への感情もまた動き始めている。

第6章 手島の過去が挟まれるたび現在の先生が違って見える

第1話の「漫画に冷たい教師」という印象が少しずつ反転する

第1話の手島零は、
かなり冷たい印象を持たせる。
安海が漫画を好きでも、
その気持ちへ寄り添うようには見えない。
むしろ漫画へ距離を取る大人に見える。

だから最初は、
安海と手島は正反対。
漫画が好きな少女。
漫画へ冷たい教師。
その対立で物語が始まったようにも感じる。

でも話が進むと、
その印象が少しずつ崩れる。
手島は漫画に詳しい。
原稿を見る目もある。
描く人間の苦労も知っている。
ただ嫌いな人ではない。

さらに過去が明かされる。
自分で漫画を描いていた。
漫画家を目指していた。
コミティアにも出ていた。
「ロボ太とポコ太」を描いた本人だった。

ここまで来ると、
第1話の態度が逆に気になる。
あれほど漫画へ深く関わった人が、
なぜ今は距離を取っているのか。
その疑問が、
手島の物語を前へ進める力になる。

さらにロストワールドが入る。
23歳の手島。
へびちか先生のアシスタント。
「スイートへびいちご」の現場。
現在とは違う、
漫画へ前のめりだった手島が見える。

昔の手島を知るほど、
現在の静けさが重くなる。
最初から冷めていたのではない。
むしろ逆。
本気で好きだった。
本気で漫画家を目指した。

だから今の距離の取り方には、
過去の経験がそのまま乗っている。
漫画へ冷たいのではなく、
軽く近づけない。
その違いが少しずつ分かってくる。

安海たちが漫画を描くたび、
手島の過去も現在へ戻る。
漫画を見れば、
昔の自分を思い出す。
コミティアを見れば、
かつて立った場所が重なる。

こうして手島は、
一話ごとに別の顔を見せる。
教師。
元漫画家志望。
過去に作品を描いた人。
プロの現場を経験した人。
その全部が一人の中にある。

安海たちを止めたいのに漫画から離れ切れない手島

現在の手島には、
少し矛盾して見えるところがある。
漫画の世界へ進むことに慎重。
安海たちへ夢を煽らない。
でも漫画部から離れるわけでもない。

原稿を見る。
必要なら教える。
コミティアにも関わる。
漫画の話になれば、
かなり真剣になる。
完全に縁を切った人には見えない。

ここに、
手島の過去がそのまま残っている。
漫画は苦しかった。
でも楽しかった。
傷ついた。
でも大切だった。
だから簡単には嫌いになれない。

安海を見れば、
昔の自分と重なる。
描くことが楽しい。
人に読んでもらいたい。
もっと上手くなりたい。
その感覚を、
手島は誰より知っている。

だから止め切れない。
自分が失敗したからといって、
安海も同じになるとは限らない。
漫画家にならなければ幸せとも限らない。
そこは本人に任せるしかない。

同時に、
簡単に背中も押せない。
その先に何があるか知っている。
夢が叶いそうになるほど、
別の苦しさも出てくる。
手島自身が経験している。

この間に立っているから、
手島の存在が深くなる。
正解を教える先生ではない。
自分にも答えが出ていない。
漫画との距離を今も探している。

その点では、
手島も安海と同じく途中の人物。
教師だから完成しているわけではない。
過去を抱えたまま、
現在でも漫画との関係を作り直している。

安海は、
漫画との関係をこれから作る。
手島は、
一度壊れた関係をもう一度作り直す。
この違いはある。
でもどちらもまだ途中。

だから手島零は、
安海相の物語を支えるだけの人物ではなくなる。
自分自身も変化している。
安海と出会うことで、
昔の漫画人生が現在へ戻ってくる。

ロストワールドが挟まれるたび、
現在の手島が別人のように見えるのはそのため。
冷たい先生。
厳しい顧問。
元漫画家志望。
過去を失った人。
その全部が少しずつ重なっていく。

そして最後には、
漫画を離れた人ではなく、
今も漫画から離れ切れない人として見えてくる。
そこまで変化するからこそ、
手島零は「もう一人の主人公」と呼びたくなる存在になっている。

第7章 二人の主人公が見せているのは「漫画を描いた先にある二つの人生」

これから漫画との関係を作っていく安海

安海相は、
まだ漫画との関係を作り始めたばかり。
読むことが好きだった。
そこから自分で描き、
仲間と作品を作るようになった。

今の安海には、
これから先が残っている。
漫画家になるのか。
別の形で描き続けるのか。
まだ何も決まっていない。

だから一つ一つの経験が大きい。
初めて完成させる。
初めて読まれる。
初めて売る。
初めて失敗する。
全部がこれからの安海を作っていく。

一方で、
手島零はその先を一度歩いた人物。
漫画家を目指した。
作品を描いた。
コミティアにも出た。
へびちか先生のアシスタントにもなった。

安海が今から向かうかもしれない場所を、
手島はすでに知っている。
だから二人が並ぶと、
漫画の入口とその先が同時に見えてくる。

安海の物語には、
まだ可能性がある。
手島の過去には、
すでに失われた可能性がある。
同じ漫画を見ているのに、
二人の時間は正反対に流れている。

それでも手島は、
自分の過去を安海へ重ねすぎない。
自分が苦しんだからやめろとは言わない。
同じ結末になるとも決めつけない。
安海には安海の漫画人生があるから。

だから安海は、
手島のやり直しではない。
手島も、
安海の未来を先に見せるだけの人物ではない。
それぞれ別の人生を持ちながら、
漫画を通して少しずつ重なっていく。

一度失った漫画との関係を取り戻していく手島

手島の物語は、
過去を思い出すだけでは終わらない。
重要なのは現在。
安海たちと出会ったことで、
昔切れたはずの漫画との関係が再び動き始めている。

最初は距離を取っていた。
漫画へ冷たいようにも見えた。
でも原稿を見る。
教える。
コミティアにも関わる。
少しずつ漫画の近くへ戻っている。

それは、
再び漫画家を目指すということではない。
昔と同じ場所へ戻るわけでもない。
教師として。
安海たちを見守る人として。
新しい形で漫画とつながり直している。

ここが手島を強く見せる。
過去に挫折した人物で終わらない。
安海たちの現在に触れながら、
自分自身も少しずつ変わっている。

「ロボ太とポコ太」を読んでいた安海。
その安海が今は漫画を描いている。
自分の昔の作品が、
別の人の現在へつながっていた。
手島にとっても大きな出来事になる。

漫画家としての未来は失った。
でも描いたものまで消えたわけではない。
漫画へ向けた感情も残っている。
それを安海たちが、
別の形で現在へ引き戻している。

だから手島零は、
ただ昔を背負う人物ではない。
現在でも進んでいる。
漫画から離れた大人が、
もう一度漫画との距離を作り直している。

安海は、
これから漫画との関係を作る。
手島は、
一度失った関係を作り直す。
この二人が並ぶことで、
『これ描いて死ね』には二つの漫画人生が見えてくる。

公式の主人公は安海相。
それでも手島零が
「もう一人の主人公」
のように見えるのは、
彼女にも始まりと挫折と再出発があるから。

安海が前へ進むほど、
手島の過去も浮かび上がる。
手島の過去を知るほど、
現在の安海の一歩も重くなる。
二人は別々に進みながら、
同じ漫画によって互いの物語を深くしている。

だから手島零は、
主人公の横に立つ先生では終わらない。
安海相とは反対側から、
漫画を描く人生の厳しさと、
それでも漫画から離れられない気持ちを見せる存在。

その二本の人生が並んでいるから、
『これ描いて死ね』は
一人の少女が漫画を描き始める話だけではなくなる。
漫画に人生を動かされた二人の物語として、
さらに深く見えてくる。

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