老デウスが過去へ来たことで、ロキシーやシルフィが死亡する未来は本編のルーデウスから外れたが、老デウス本人が経験した歴史まで「最初から存在しなかった」わけではない。
原作では老デウス自身が「俺の歩んできた歴史は変わらない」と語る一方、作者は無職転生のタイムスリップをバック・トゥ・ザ・フューチャー寄りと説明している。
つまり老デウスの世界線がパラレルワールドとして今も並行して続くのか、それとも未来が上書きされたのかを、日記・遺体・過去転移・オルステッドのループまでつないで追う
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第1章 老デウスの世界線は消えた?本編の未来は変わったが「経験した過去」までは消えない
老デウスが来たことで、ロキシー・シルフィ・エリスが死ぬ未来から分岐した
結論から言えば、
老デウスが生きた悲惨な未来は、
現在のルーデウスがそのまま到達する未来ではなくなった。
第3期第11話「ターニングポイント4」で老デウスが過去へ現れ、
地下室へ行くなと警告したことで、
ロキシー死亡から始まる崩壊の流れそのものが途中で切られている。
老デウスの時間軸では、
ルーデウスがヒトガミの助言に従って地下室へ入り、
そこから逃げたネズミを起点にロキシーが魔石病へかかる。
さらにロキシーを失った後、
シルフィとの関係も崩れ、
エリスまで失う方向へ人生が傾いていく。
第13話「日記」で若いルーデウスが読むのは、
その未来を実際に生きた自分自身の記録である。
ところが現在側では、
最初の地下室へ行かない。
ネズミが逃げない。
ロキシーは魔石病にならない。
そこから先に続いていた喪失も同じ形では起こらない。
つまり本編のルーデウスは、
老デウスが歩いた人生から明確に外れた。
ここで視聴者が引っ掛かる。
未来が変わったなら、
ロキシーやシルフィが死んだ老デウスの世界は、
最初から存在しなかったことになるのか。
それなら、
なぜ老デウス本人が若いルーデウスの前に立てたのか。
しかも老デウスは、
助言だけを残して消える幻ではない。
年老いた身体で現れ、
若い自分と会話し、
日記を渡し、
未来で何が起きたかを具体的に語る。
そして力を使い果たした末、
その場で死亡する。
さらに日記も残る。
若いルーデウスは、
自分がまだ経験していない数十年分の未来を、
老デウスが実際に書いた文章として読むことになる。
ロキシーの発病、
仲間の死、
ヒトガミへの復讐、
ペルギウスやオルステッドを訪ねた行動まで、
未来側の出来事が物として現在へ持ち込まれている。
だから、
「未来が変わった=老デウスの人生まで全部消えた」
と考えると、
目の前に残った老デウス本人と日記を説明しにくくなる。
未来の結末は変わった。
しかし、その未来を実際に生きた人物の経験まで、
過去へ来た瞬間に無かったことになるわけではない。
原作でも老デウスは、
自分が過去へ来たことで歴史は変わったと理解している。
その一方で、
自分が歩いてきた歴史そのものまで変わるわけではないと話している。
若いルーデウスが別の未来へ進むことと、
老デウスが悲惨な人生を経験した事実は、
別々に考える必要がある。
つまり第13話で起きたのは、
老デウスの人生を消去したことではない。
若いルーデウスが、
同じ終点へ進む道を外れたということ。
老デウスが生きた未来は「本編のこれから」ではなくなったが、
そこへ至った歴史まで最初から存在しなかったとは言えないのである。
ただし「別世界が今も並行して続いている」とまでは原作で断定されていない
ここで注意したいのが、
「なら老デウスの世界は今も別宇宙として続いている」と、
すぐドラゴンボール型のパラレルワールドへ結び付けること。
アニメだけを見ると、
老デウスが別未来から来たため、
二本の世界線が同時に存在しているようにも見える。
ただ、
原作や作者側の補足を見ると、
完全に独立した二つの世界が永久に並んで進む設定として断定するのは慎重な方がいい。
作者はタイムスリップの考え方について、
バック・トゥ・ザ・フューチャー寄りと説明している。
つまり過去へ干渉すれば、
その先の未来も変化していく考え方に近い。
この見方なら、
老デウスが過去へ到着した瞬間、
若いルーデウス側の未来は別方向へ変化し始める。
地下室へ行かない。
ロキシーを失わない。
ヒトガミの助言をそのまま信じなくなる。
老デウスが経験した出来事を回避する選択が次々に入る。
一方で、
老デウス自身は改変前の記憶を失わない。
ロキシーを亡くしたことも、
シルフィやエリスを失ったことも、
ヒトガミを追って何十年も研究したことも覚えている。
過去が変わったからといって、
その記憶まで若いルーデウス用へ書き換わるわけではない。
ここが、
「世界線が残るのか?」という疑問の一番ややこしい部分である。
現在側から見れば、
老デウスの未来へ進む道は消えている。
しかし老デウス本人から見れば、
そこは自分が確かに生きた人生。
だから「完全に消滅した」とも、
「別世界として今も同時進行している」とも、
簡単な二択では言い切りにくい。
一番自然なのは、
老デウスの未来を
「改変前に実際に存在した未来」
として見ること。
その未来から本人と日記が過去へ到達し、
歴史へ干渉したことで、
本編側のその後だけが別方向へ変わったと考える形である。
第2章 老デウス本人は「俺の歩んできた歴史は変わらない」と何を伝えた?
第13話の元になった原作では、過去へ来た時点で歴史が変わったと本人が認識している
老デウス自身も、
過去へ来れば未来が変わることは理解している。
若いルーデウスへ会った目的は、
自分と同じ人生をもう一度歩ませることではない。
むしろ逆で、
自分が失敗した地点を教え、
そこから外へ出すことだった。
第11話で最初に伝えるのが、
地下室へ行くなという警告。
若いルーデウスには、
その一言だけでは重さが分からない。
だが老デウスは、
地下室の先でロキシーを失い、
家庭が崩れ、
その後も次々と大切な人を失った未来を知っている。
だから第13話「日記」で、
若いルーデウスが未来の記録を読む場面が重要になる。
老デウスの口頭説明だけなら、
「そうなるかもしれない未来」と受け取る余地がある。
しかし日記には、
日付と行動と喪失が積み重なっている。
ロキシーの病気。
治療法を探す行動。
シルフィとの関係悪化。
エリスを失う出来事。
ペルギウスを訪ね、
オルステッドへ近づき、
ヒトガミの居場所を探す長い年月。
若いルーデウスは、
自分の文字で書かれた別の人生を読むことになる。
しかも老デウスは、
「こうなるから怖がれ」とだけ言っていない。
自分が来たことで、
若い自分はもう同じ未来へ進まないことを分かっている。
だからこそ、
未来を変えるための材料として日記を残す。
ここで老デウスが伝えているのは、
「俺の未来を保存しろ」ではない。
「俺と同じ人生を選ぶな」に近い。
自分の世界を守るのではなく、
自分が失ったものを若い自分には失わせない。
時間移動の目的そのものが、
未来改変を前提にしている。
つまり老デウス自身も、
過去へ戻れば歴史が同じ形のまま続かないと理解している。
自分が来た時点で、
地下室へ行くはずだった若いルーデウスへ新しい情報が入り、
未来の条件が変わっているからである。
それでもロキシーやシルフィを失った人生は、老デウスにとって実際に起きた出来事だった
ただし未来が変わるからといって、
老デウスが経験した喪失まで軽くなるわけではない。
若いルーデウスがロキシーを救えたとしても、
老デウスの記憶の中ではロキシーは死んでいる。
シルフィとの関係が壊れたことも、
エリスを失ったことも、
なかった思い出へ変わるわけではない。
だから老デウスの言葉には、
未来予知を説明するだけでは出ない重さがある。
地下室へ行くな。
ヒトガミを信じるな。
家族を大切にしろ。
それは知識として覚えた忠告ではなく、
全部一度失った人物が、
若い自分へ渡している言葉である。
第2期までのルーデウスは、
すでにパウロの死を経験している。
転移迷宮最深部で、
父親が自分を庇って命を落とす。
あの時もルーデウスは、
失った後になって初めて、
戻せないものの重さを知った。
老デウスは、
その状態をさらに何十年も積み重ねた未来の姿。
パウロだけではなく、
妻や仲間まで失い、
ヒトガミへの復讐へ人生を変えてしまった。
若いルーデウスが日記を読むということは、
まだ起きていない喪失を、
すでに経験した自分から突き付けられることでもある。
だから「老デウスの世界線は消えた?」という疑問へは、
ここを分けると分かりやすい。
若いルーデウスがこれから進む未来としては消えた。
だが老デウスが実際に歩いた人生としては消えていない。
その証拠が、
目の前へ来た老デウス本人であり、
残された日記であり、
彼の身体に刻まれた長い年月そのもの。
未来改変によって結末は変えられても、
過去から来た本人の経験まで書き換わるわけではない。
だから老デウスは、
「存在しなかったIFキャラ」ではない。
本当に一度そこまで生き、
その人生を代償にして過去へ戻り、
若い自分へ別の道を残した未来のルーデウス。
そこを押さえると、
世界線が消えたのかという疑問も、
単純な「消えた・残った」ではなく見えてくるのである。
第3章 老デウスの遺体と日記が残ったのはなぜ?未来改変後にも消えなかった二つの証拠
過去転移した老デウスは若い自分の前で死亡し、その身体が現在側へ残る
老デウスの世界線を考える時、
最も引っ掛かるのが「未来が変わったのに、なぜ老デウス本人は消えないのか」という点である。
第3期第11話「ターニングポイント4」で突然現れた老人は幻でも予知映像でもない。
片腕を失い、全身を衰弱させた実体としてルーデウスの家へ現れ、
若い自分へ地下室へ行くなと直接警告している。
しかも老デウスは、
未来の出来事を口頭で伝えるだけではない。
ロキシーが魔石病で死亡したこと、
シルフィとの関係が崩れたこと、
ヒトガミへの復讐へ人生を費やしたことまで語り、
最後には自分が書き続けた日記を若いルーデウスへ渡す。
未来から来た本人と未来の記録が、同時に現在へ持ち込まれたことになる。
その直後、
老デウスの身体は過去転移の負担に耐え切れず死亡する。
未来改変が始まったからといって、
目の前で突然透明になって消えるわけではない。
若いルーデウスは老いた自分の死を確認し、
その遺体が現実の物体として残った状態で未来を変え始める。
ここが「老デウスの世界線は全部消えた」と単純に言い切れない大きな根拠になる。
もし過去を書き換えた瞬間に、
改変前の未来に属する物まで完全消滅する仕組みなら、
老デウス自身も日記も残りにくい。
ところが作中では、
未来から過去へ移動し終えた物は現在側へ残っている。
第13話「日記」では、
若いルーデウスがその日記を実際に読み進める。
書かれているのは予言ではない。
「これからこうなるかもしれない」という想像でもない。
ロキシー発病後の行動、
クリフや周囲の人間との出来事、
ヒトガミを追い続けた年月まで、
老デウス自身が経験した順序で記された記録である。
だから老デウスの未来は、
若いルーデウス側から見れば「回避すべき未来」になったとしても、
老デウス本人にとっては確実に存在した人生だった。
世界線が変わった後も身体と日記が残ることで、
作品側も「起きなかった空想」ではなく、
一度は現実になった歴史として扱っているのである。
未来の日記も残ったからこそ、若いルーデウスは「起こらなくなった未来」を読むことができた
日記が残ることには、
老デウス本人以上に分かりやすい役割がある。
若いルーデウスは未来を経験していない。
地下室へ行かなければ、
ロキシーの魔石病も、
そこから始まる家庭崩壊も自分自身では体験しない。
それでも未来の日記を持つことで、
「起こらなくなった出来事」を知識として保持できる。
これは第1期から続くヒトガミとの関係を変えるうえでも大きい。
第1期第9話「邂逅」で初めてヒトガミと会った頃、
ルーデウスには相手の正体を判断する材料がほとんどなかった。
その後もリーリャとアイシャの救出、
魔眼取得など、助言が実際に役立つ場面があり、
ヒトガミを完全な敵として見る材料は乏しかった。
第2期第18話「ターニングポイント3」でも、
ヒトガミはベガリット大陸へ行かないよう助言する。
ルーデウスは最終的に母ゼニス救出へ向かうが、
この時点でも「未来の家族を破壊する敵」とまでは知らない。
その認識を決定的に変えるのが、
老デウス本人と日記である。
日記を読んだ後のルーデウスは、
まだ起きていない悲劇を知った状態で行動できる。
地下室へ行かない。
ヒトガミの言葉を以前のようには受け取らない。
ロキシーやシルフィ、家族を守る選択を先回りできる。
未来を変えたのは時間魔術そのものより、
老デウスが持ち帰った情報だったとも言える。
だから日記は、
消えた世界線の残骸というより、
改変前の未来と現在を結ぶ物証に近い。
その未来へもう進まなくても、
「そこまで進んだルーデウスが存在した」事実だけは日記として現在へ残る。
老デウスの世界線を考える時、
この一冊が最も分かりやすい証拠になっている。
第4章 無職転生はパラレルワールド方式?作者の「バック・トゥ・ザ・フューチャー寄り」発言
※ここからは原作設定と作者コメントを含む内容に触れます。
独立した世界が二本並んで進むドラゴンボール型とは少し違う
「老デウスの世界は今もどこかで続いているのか?」と考えると、
ドラゴンボールのように、
過去へ戻った結果として別の世界線が生まれ、
元の未来も独立して残る形を想像しやすい。
実際、第13話を見た後にそう考えるのは自然である。
老デウスがいた未来には、
ロキシーを失ったルーデウスがいる。
現在側には、
老デウスの警告を受けて地下室へ行かない若いルーデウスがいる。
二人が同時に存在した瞬間だけを見れば、
完全なパラレルワールドが二本並んだようにも見える。
ただし作者は、
『無職転生』の時間移動について、
考え方として「バック・トゥ・ザ・フューチャー寄り」と説明している。
この型なら、
過去へ戻って行動を変えることで、
そこから先に続く未来そのものが変化する。
実際に老デウスが狙っているのも、
別世界を一つ増やすことではない。
若い自分へ地下室を止めさせ、
ロキシー死亡を回避し、
自分が歩いた人生へ到達させないこと。
最初から「未来を書き換える」目的で過去へ来ている。
だから、
老デウスが帰った後も元の未来で別の老デウスが暮らし続けている、
という形まで作品本文から断定するのは難しい。
少なくとも本編が追っているのは、
警告を受けた若いルーデウス側へ変化した未来である。
過去が変わることで、その先の未来も変化する「上書き型」に近い
ただし「上書き」と言っても、
過去の出来事が全部消去され、
老デウスの経験まで無かったことになるわけではない。
ここを分けると分かりやすい。
変わるのは若いルーデウスがこれから進む未来であり、
すでに過去へ到着した老デウスの記憶や身体ではない。
地下室を例にすると明確である。
老デウス側では、
地下室を開ける。
ネズミが逃げる。
ロキシーが魔石病になる。
そこから家族を失う未来へ進んだ。
この経験を持った老デウスが過去へ来て、
「地下室には行くな」と伝える。
現在側では、
同じ夜に地下室へ行かない。
するとネズミも逃げず、
ロキシーも同じ魔石病へ進まない。
一つの行動を変えたことで、
その後に続く何年分もの出来事が別方向へ変化する。
これが本編で実際に起きている未来改変である。
しかも老デウスは、
自分が来たことで若い自分が別の人生を送ることを理解している。
未来を保存するのではなく、
失敗を伝えて別の選択を取らせる。
その行動自体が、
独立世界を眺める人物ではなく、
自分の過去へ直接干渉する人物として描かれている。
だから一番矛盾が少ない見方は、
老デウスの世界線を
「今もどこかで同時進行する別世界」と断定するのではなく、
「改変前には確かに存在した未来」と捉えることになる。
そこから老デウスと日記だけが過去へ渡り、
若いルーデウスへ情報を残した。
そして現在のルーデウスは、
その未来を知ったまま別の道へ進む。
老デウスの世界線は本編の未来ではなくなったが、
彼が生きた数十年まで消えたわけではない。
その二つを同時に成立させるのが、
『無職転生』の時間移動を読むうえで最も自然なのである。
第5章 では老デウスの悲惨な未来は「無かったこと」になった?
本編ルーデウスは地下室へ行かず、老デウスと同じ人生を歩まなくなる
老デウスが過去へ来たことで、
若いルーデウスは未来を知った状態から人生をやり直すことになる。
最も大きいのが地下室で、
老デウス側ではヒトガミの助言に従って扉を開けたことからネズミが逃げ、
ロキシーの魔石病、死亡、家庭崩壊へ続いていった。
現在側では、その最初の一手を選ばない。
ここで変わるのは、
ロキシー一人の生死だけではない。
老デウスの日記では、妻を失った後にシルフィとの関係まで壊れ、
エリスとも悲惨な別れを迎え、
クリフを含む周囲の人物まで次々と失っていく。
一つの選択が、その後何年分もの人間関係へ連鎖していた。
若いルーデウスは、
第13話でその未来を日記として先に読む。
まだロキシーは生きている。
シルフィも家にいる。
エリスとの関係も老デウスほど壊れていない。
だから未来の自分が失った人物を、
今度は「失う前」に守ることができる。
この構図は、
第2期の転移迷宮とも対照的である。
迷宮ではパウロが死亡した後、
ルーデウスは取り返せない現実を前に心を折られた。
ゼニスを救出しても記憶や言葉を失っており、
「助けに行ったのに全部は戻らない」という後悔を味わっている。
老デウスは、
その後悔をさらに何十年も重ねた姿である。
だから過去へ来て若い自分へ渡したのは、
悲劇を受け止める方法ではなく、
悲劇そのものへ入らないための情報だった。
未来を変えるなら、死後ではなく死ぬ前に選択を変えなければならない。
その結果、
若いルーデウスは老デウスと同じ人生を歩まなくなる。
地下室へ行かない。
ヒトガミを以前のように信用しない。
家族を守ることを優先する。
同じ人物でも、持っている情報が変わった瞬間から未来の分岐が始まっている。
だから老デウスの未来は、
本編ルーデウスにとっては「これから起きる未来」ではなくなった。
ただし、それは最初から存在しなかった空想になったということではない。
老デウスが経験した未来を知ったからこそ、
若いルーデウスはそこへ到達しない選択を取れたのである。
それでも老デウスの後悔と日記が消えないため「存在しなかった未来」とは言い切れない
老デウスの世界線を、
完全に消えた未来として扱いにくい最大の要因が日記である。
若いルーデウスが地下室へ行かなくなれば、
その後にロキシーが魔石病で死亡する未来は回避される。
それでも、その死亡を経験した人物が書いた文章だけは現在に残っている。
日記には、
結果だけではなく過程がある。
ロキシーが倒れた時に何をしたか。
誰へ相談したか。
その後どの人物を失ったか。
ヒトガミへの復讐へ傾き、
ペルギウスやオルステッドまで訪ねた経緯も残る。
そこには老デウスが人生を実際に進んだ痕跡がある。
しかも老デウス本人も、
若い自分へ「お前は俺とは違う人生を送る」と伝える。
この言葉は、
自分の人生が最初から偽物だったという話ではない。
自分は確かにここまで来た。
だが若い自分は同じ場所まで来る必要がない。
そういう別れ方である。
だから老デウスの未来は、
現在から見れば回避された。
老デウスから見れば実在した。
この二つを同時に置くと分かりやすい。
「未来が消えた」というより、
「若いルーデウスがその未来へ到達する道が消えた」と考える方が近い。
老デウス本人が抱えた喪失、
身体に刻まれた老化、
残された日記まで含めれば、
彼が歩いた時間そのものを無かったことにはできないのである。
第6章 オルステッドのループと老デウスの過去転移は何が違う?
オルステッドは一定時点まで世界そのものを戻し、記憶を持って次の周回へ進む
老デウスの世界線を考える時、
よく比較されるのがオルステッドのループである。
どちらも過去へ関わる力を使うため似て見えるが、
実際には仕組みも見え方もかなり違う。
オルステッドは未来から老人の身体で過去へ飛び込むのではなく、
一定期間を何度も繰り返している。
その片鱗は、
第1期第21話「ターニングポイント2」ですでに出ていた。
赤竜の下顎で初対面したはずなのに、
オルステッドはエリス、
ルイジェルド、
さらにパウロまで知っている。
ところがルーデウスだけは知らず、
そこで初めて予定外の人物を見るような反応を見せる。
この不自然な知識量は、
後のループ設定を知ると意味が変わる。
オルステッドは同じ時代を何度も経験し、
誰が生まれ、
誰が王になり、
誰がどの戦争へ関わるかを見てきた。
アスラ王国の王位争いでも、
アリエルが勝つ条件を過去の周回から把握している。
原作では、
何回やり直したのかと聞かれたオルステッドが、
「100から先は数えていない」と答える。
一周の中で失敗しても、
次の周回では記憶を持ったまま別の選択を試せる。
だから未来予知ではなく、
何度も実際に見てきた経験が知識になっている。
ここが老デウスと大きく違う。
老デウスは一度だけ自分の未来を生き、
その最後に過去転移魔術を完成させた。
オルステッドのように同じ人生を何百回も試したわけではない。
一度しかない人生を失敗し、
最後の一回で若い自分へ警告を届けたのである。
老デウスは自分の身体と日記を過去へ送り、若いルーデウスへ直接未来を変えさせた
オルステッドのループでは、
周回する本人が次の世界でも行動を続ける。
前回の失敗を覚え、
次は違う人物を味方にし、
違う時期へ介入する。
本人が何度も同じ時代へ戻りながら、
ヒトガミへ到達する未来を探している。
老デウスは違う。
年老いた身体そのものを過去へ送り、
若い自分と同じ時間へ同時に存在する。
第11話で老人と青年のルーデウスが向かい合えるのは、
過去へ戻った後も老デウスが若返らないからである。
しかも持ち込んだのは記憶だけではない。
身体、
傷、
魔術知識、
そして日記まで一緒に過去へ持ってきた。
若いルーデウスは未来の記憶を直接受け取るのではなく、
未来を生きた自分から話を聞き、
その人物が残した記録を読む。
この差が、
世界線の見え方にも影響する。
オルステッドは一周を終えて次へ入るため、
前の周回を知る人物は基本的に本人だけ。
一方老デウスは、
改変前の未来に属する身体と日記を現在へ残す。
だから若いルーデウスまで、
改変前の未来を具体的に知ることができる。
さらに第1期第21話を思い返すと、
オルステッドがルーデウスを知らなかったこと自体が重要になる。
それまでの周回には、
ルーデウスという異物が存在していなかった。
だから今回の世界は、
オルステッドにとっても過去と同じではない。
ルーデウスの存在によって歴史が予定外の方向へ変わっている。
老デウスの過去転移も、
その変化をさらに大きくする。
若いルーデウスが未来の日記を持ったことで、
今度は自分自身の失敗まで先回りして回避できる。
オルステッドの周回が「経験を持つ本人がやり直す」ものなら、
老デウスの過去転移は「未来を経験した自分が、過去の自分へ答えを渡す」ものなのである。
第7章 老デウスの世界線は今も残っている?一番矛盾の少ない考え方
「別宇宙が現在も続いている」より「改変前に実在した未来」と見る方が原作に近い
老デウスの世界線について、
一番引っ掛かるのは「今もどこかで続いているのか」という点である。
第11話では老人になったルーデウスが実際に現れ、
第13話では日記まで残る。
そこだけ見れば、
本編とは別に悲惨な未来が今も並行して存在しているようにも見える。
ただし作中の描写を重ねると、
完全な別宇宙が二本並んで進んでいると考えるより、
老デウスが生きた未来は「改変前に実在した未来」で、
若いルーデウスがそこへ到達する道だけが変わったと見る方が自然である。
老デウス自身も、
過去へ来た時点で歴史が変わることを理解している。
だから若い自分へ、
地下室へ行くな、
ヒトガミを信じるな、
家族を大切にしろと伝える。
自分が戻れば同じ未来が保存されるのではなく、
若い自分が別の人生へ入ることを前提にしている。
実際、
現在側では最初の分岐から違う。
ヒトガミの助言通り地下室へ行かない。
ネズミが逃げない。
ロキシーは魔石病にならない。
老デウスの日記に記された悲劇が、
一つずつ「これから起きる出来事」ではなくなっていく。
それでも老デウス本人は消えない。
片腕を失った老いた身体も、
何十年分もの記憶も、
未来で書いた日記も現在へ残る。
ここから分かるのは、
改変されたのは若いルーデウスの未来であって、
すでに過去へ到着した老デウスまで書き換えられたわけではないということ。
作者が時間移動を、
バック・トゥ・ザ・フューチャー寄りと説明している点も重なる。
過去の行動を変えれば、
そこから先の未来が変わる。
一方で、
未来から過去へ移動してきた人物は、
改変前の記憶を持ったまま存在する。
だから、
「老デウスの世界線は完全消滅した」と言い切るのも少し違う。
しかし、
「今も別世界でロキシーを失った世界がそのまま進行している」と断定する根拠も薄い。
一番無理がないのは、
あの未来は確かに存在したが、
現在のルーデウスがこれから到達する未来ではなくなった、
という見方である。
消えたのは老デウスの人生そのものではなく、若いルーデウスがそこへ到達する未来だった
この考え方なら、
第11話と第13話で見える矛盾もかなり減る。
老デウスは実在する。
日記も実在する。
しかし若いルーデウスは、
その日記へ書かれた人生を今後なぞらない。
両方を同時に成立させられるからである。
第2期の転移迷宮では、
ルーデウスはパウロを失った後でしか未来を変えられなかった。
父を救うことはできず、
ゼニスも以前と同じ状態では戻らない。
起きた悲劇を受け入れて先へ進むしかなかった。
老デウスは、
その「起きてからでは遅い」を何度も経験した未来の姿である。
ロキシーを失う。
シルフィを失う。
エリスまで失う。
そのたびに後悔し、
最後に時間魔術へ辿り着く。
だから過去転移は、
自分の人生を救うためというより、
若い自分へ同じ失敗をさせないための行動になる。
老デウス自身は若返らない。
家族が戻ってくるわけでもない。
過去へ到着した時点で、
自分の人生はもう終わりに近い。
それでも若いルーデウスなら間に合う。
ロキシーはまだ生きている。
シルフィもエリスもいる。
地下室もまだ開けていない。
ヒトガミの罠も、
未来の日記を読めば先回りできる。
だから老デウスが救ったのは、
自分の過去ではなく、
若い自分のこれからだった。
自分が歩いた悲惨な歴史そのものを消したのではなく、
そこへ続く道を閉じたのである。
第1期第21話でオルステッドがルーデウスを知らなかったように、
この世界は最初から固定された一本線ではない。
オルステッドの周回でも歴史は変わり、
ルーデウスという存在そのものが予定外として入り込む。
さらに老デウスの過去転移が、
その未来へもう一段大きな変化を与えた。
だから「老デウスの世界線は消えた?」への答えは、
単純に「消えた」でも「今も残っている」でもない。
老デウスが生きた未来は確かに存在した。
その証拠が本人であり、
遺体であり、
日記である。
しかし若いルーデウスは、
もうそこへ向かわない。
地下室を避け、
家族を守り、
ヒトガミへの向き合い方まで変える。
老デウスが命を使って過去へ来たことで、
消えたのは彼の人生そのものではなく、
若いルーデウスが同じ結末へ到達する未来だったのである。
無職転生Ⅲまとめ
『無職転生Ⅲ』の記事を、第3期の放送範囲・ナナホシと転移事件・ペルギウスと空中城塞・未来ルーデウス・オルステッド・魔導鎧・エリスとの再会・ルーデウスの家族などに分けてまとめています。
ルーデウス、エリス、シルフィ、ロキシー、ナナホシ、ペルギウス、オルステッド、ゼニス、アリエル、クリフ、エリナリーゼなど、気になる人物や物語の謎はこちらから探せます。
あなたは映画やドラマを思いっきり楽しみたいですか?
- 「観たい映画があっても、配信サービスごとに探すのが面倒…」
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