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【ぐらんぶる3期】原作とアニメの違いは?Season3で笑い方が変わった追加ギャグ演出を比較

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ぐらんぶるの原作とアニメの違いは、物語を大きく変えていることではない。
原作の顔芸や台詞を残しながら、アニメでは声、沈黙、効果音、動きが加わり、笑いが始まる場所と爆発する瞬間が変わっている。

  1. 第1章 結論|原作とアニメの違いは、笑いが爆発する瞬間にある
    1. 物語を大きく変えず、声・沈黙・動きでギャグを膨らませている
    2. Season3では、静かな会話まで危険なギャグへ変わっていく
  2. 第2章 原作は一コマで落とし、アニメは溜めてから壊す
    1. ページをめくる速さと、映像に待たされる時間では笑い方が変わる
    2. 一人の失敗へ全員が反応することで、短いギャグが連続事故になる
  3. 第3章 Season3第1話は、夏祭りの楽しさがPaB式の狂騒へ変わっていく
    1. 浴衣とたこ焼きから始まった計画が、最初の一杯で別物になる
    2. 全員の反応が重なり、短い失言が終わらない騒動へ広がる
  4. 第4章 帰省編は、兄妹の駆け引きが旅館全体を巻き込む騒動へ変わる
    1. パスポートを隠した栞と、何としても取り戻したい伊織が衝突する
    2. 妹を助けて恩を売る計画が、酒飲み対決とカリーナの誤解へ広がる
  5. 第5章 カリーナは、原作の落差が声によって二段階のギャグになった
    1. 礼儀正しい第一印象から、日本文化への強烈な憧れが一気に噴き出す
    2. 伊織との共通点が見えた直後、理解し合えない部分まで浮かび上がる
  6. 第6章 Season1から続く追加演出は、反応する人数が増えるほど強くなる
    1. 伊織一人の失敗から、全員が巻き込まれる集団事故へ変わってきた
    2. パラオでは、初対面の人物まで伊織たちの異常さを目撃する
  7. 第7章 まとめ|原作で知っている場面でも、アニメでは違う瞬間に笑える
    1. 漫画はページをめくった瞬間、アニメは崩れる直前から面白い
    2. 原作とアニメは競い合うのではなく、同じ騒動を別の形で楽しませている

第1章 結論|原作とアニメの違いは、笑いが爆発する瞬間にある

物語を大きく変えず、声・沈黙・動きでギャグを膨らませている

『ぐらんぶる』の原作とアニメの違いは、登場人物や出来事が別物へ変わっているところではない。
伊織が騒動へ巻き込まれ、耕平が悪乗りし、千紗が冷たい視線を向け、時田と寿が酒宴を始める。
物語の中心は、原作漫画の流れをしっかり残している。

大きく変わるのは、その場面を見ている時間。

原作では、普通の顔で話していた伊織が、次のコマで白目をむき、歯を食いしばり、血管を浮かせる。
読者がページをめくった瞬間、穏やかな会話が一気に崩壊する。
一枚の顔が強烈だから、説明がなくても何が起きたのか伝わってくる。

アニメでは、その顔へ変わる直前が長くなる。

伊織が相手の言葉を聞く。
一度は平静を保とうとする。
目だけがわずかに動く。
口元が引きつり、声が低くなり、耐え切れなくなったところで顔が崩壊する。

原作では一コマだった動揺が、アニメでは数秒間の芝居へ広がる。
視聴者は結末を知っていても、伊織がいつ爆発するのか待たされる。
その待たされる時間まで、ギャグの一部になっている。

Season3でも、この見せ方は変わっていない。

第1話では、伊織たちが夏にやり残したことを振り返る。
入口だけを見れば、大学生が過ぎていく夏を惜しみ、残りの時間で何をするか話し合う青春場面にも見える。

ところが、伊織や耕平たちが口を開くたびに、会話が酒、女性、欲望、馬鹿騒ぎへ傾いていく。
誰か一人が妙な発言をすると、別の人物が即座に反応し、さらに周囲が乗っかる。
一つの台詞で終わるはずの笑いが、全員を巻き込む連続事故へ変わっていく。

これが、ぐらんぶる アニメの強さになる。

追加されているのは、長い台詞や新しい事件だけではない。
顔を向ける動き。
言葉を失う沈黙。
一斉に注がれる視線。
誰も止めないまま続いていく悪乗り。

原作に描かれた一場面へ、声と時間と人数を加えることで、笑いがもう一段大きくなっている。

Season3では、静かな会話まで危険なギャグへ変わっていく

ぐらんぶる Season3で目立つのは、酒宴や全裸だけではない。
大声を出さず、暴れず、普通に会話している場面まで笑いへ変わっている。

その代表が、伊織と妹の栞が向き合う帰省編。

栞は、時田や寿のように力ずくで伊織を捕まえない。
耕平のように大声で騒ぐこともない。
兄を心配する妹らしい丁寧な口調を保ち、穏やかな表情で伊織へ話しかける。

しかし伊織は、その笑顔を素直に受け取れない。

栞が大学生活をどこまで知っているのか。
部屋へ隠しカメラを仕掛けていたのか。
パスポートをどこへ隠したのか。
普通の兄妹なら何でもない一言が、伊織にとっては追及や警告に聞こえてくる。

原作では、栞の整った笑顔と、追い詰められていく伊織の顔を並べることで笑いが生まれる。
栞が静かであるほど、伊織の焦りが大きく見える。

アニメでは、そこへ声の温度が加わる。

栞は怒鳴っていない。
言葉遣いも荒れていない。
それでも伊織が返事をするまでに短い空白が入り、視線が止まり、額へ汗が浮かぶ。

何も起きていないように見える食卓や室内が、伊織の中だけでは危険地帯へ変わっている。

さらにパスポート奪還作戦へ進むと、原作で描かれた兄妹の心理戦が、身体を使った騒動へ広がる。
伊織は栞の部屋へ近づき、隙を探し、見つからないように行動しようとする。

しかし、扉を開ける音、足を止める間、誰かが戻ってくる気配が加わると、計画が始まった瞬間から失敗の予感が漂う。
伊織本人は真剣でも、見ている側には危険な場所へ自分から入っていく姿にしか見えない。

Season1では、伊織がダイビングショップ「グランブルー」の扉を開けた瞬間、屈強な男たちの裸を目撃した。
慌てて扉を閉め、見なかったことにして逃げようとするが、当然そのまま帰れるはずもない。

あの最初の騒動から、伊織の行動はほとんど変わっていない。

危険を察知する。
逃げようとする。
少し考える。
自分なら切り抜けられると思い直す。
そして、最も悪い方向へ踏み込んでしまう。

Season3では、その相手が酒宴を開く先輩ではなく、笑顔を崩さない妹へ変わった。
舞台が変わっても、伊織が余計な行動を重ね、自分から逃げ道を塞いでいく面白さは残っている。

ぐらんぶる 原作とアニメを比較する時、単純に追加場面の数だけを見ると、この違いは見えにくい。

重要なのは、一枚の表情へ到達するまでに何が足されたか。
一つの台詞が終わった後、誰がどんな顔をしたか。
静かな会話が、何秒後に崩壊したか。

Season3の追加ギャグ演出は、原作にない別の笑いを無理に差し込むものではない。
原作の中に最初からあった不安、勘違い、顔芸、悪乗りを、画面の中で長く味わわせるものになっている。

第2章 原作は一コマで落とし、アニメは溜めてから壊す

ページをめくる速さと、映像に待たされる時間では笑い方が変わる

ぐらんぶる 原作のギャグには、ページをめくる漫画だからこそ成立する勢いがある。

前のコマでは、伊織が真面目な顔で話している。
次のコマへ目を移した瞬間、全裸になっている。
穏やかな会話をしていた人物が、突然、筋肉と血管を浮かせた異様な顔へ変わる。

読者は自分の速度で読むため、異変へ気付く時期も自分で決まる。
台詞を先に読んでから顔を見ることもあれば、巨大な顔芸が真っ先に目へ飛び込むこともある。

特に『ぐらんぶる』では、吉岡公威による表情の落差が強烈。

普段の伊織は、ごく普通の男子大学生に見える。
千紗や奈々華と話す場面では、落ち着いた青年らしい顔も見せる。
ところが欲望を暴かれた瞬間や、耕平と醜い争いを始めた瞬間、顔面全体が別人のように崩れる。

歯をむき出しにする。
目の周囲へ濃い影が入る。
額から頬まで血管が走る。
相手を出し抜こうとする執念が、言葉より先に顔へ現れる。

この一撃の強さは、原作漫画ならでは。

一方、ぐらんぶる アニメは、同じ顔を出す前に視聴者を待たせる。

Season1序盤で、伊織と耕平は初対面から互いをまともな学生だと思っていない。
耕平は整った容姿で現れるが、中身は筋金入りのアニメオタク。
伊織も自分だけは常識人のつもりでいるが、既にPaBの宴会へ染まり始めている。

二人が相手の弱点を見つけた時、すぐに殴り合いへ進むだけではない。

相手を見る。
一瞬だけ黙る。
利用できると判断する。
声色を変えて話しかける。
それから互いの本性が露出する。

原作で数コマの応酬だった部分が、声優の芝居によって段階的に悪化していく。

伊織の声には、最初だけ相手を気遣う柔らかさがある。
しかし耕平を陥れられると分かった瞬間、言葉の端へ喜びが混ざる。
耕平も同じように平静を装いながら、伊織を破滅させる機会を逃さない。

二人とも笑顔なのに、相手を助ける気は一切ない。

その不穏な声を聞いた後で顔芸が出るため、アニメでは顔が崩れた瞬間だけでなく、崩れると分かって待っている時間まで可笑しくなる。

一人の失敗へ全員が反応することで、短いギャグが連続事故になる

アニメ版『ぐらんぶる』では、一人の台詞に対する周囲の反応も大きい。

伊織が余計な発言をする。
千紗が冷え切った目を向ける。
愛菜が引く。
耕平が面白がる。
時田と寿が酒を用意する。

原作では、それぞれの反応が別のコマへ配置される。
読者は順番に目を移しながら、誰が怒り、誰が呆れ、誰が騒ぎを広げたのかを見る。

アニメでは、同じ空間にいる人物が一斉に動く。

伊織が話し終えた瞬間、会話が止まる。
千紗がゆっくり振り返る。
愛菜が言葉を失う。
耕平だけが笑いをこらえている。
次の瞬間、誰かが叫び、全員の声が重なり、穏やかだった場面が崩壊する。

Season3第1話の「やり残し」でも、この集団反応が効いている。

夏の終わりを前に、伊織たちは残された時間の使い方を話す。
本来なら、海、旅行、花火、恋愛といった青春らしい希望が並んでもおかしくない。

だが、そこにいるのはPaBへ関わった者たち。

一人が余計な欲望を口にすると、別の人物が否定する。
否定された側は引き下がらず、さらに恥ずかしい本音を重ねる。
耕平が参戦すると、話題は一層ひどい方向へ進む。

最初の発言だけなら小さな失言。
全員が反応し始めると、誰も引き返せない集団事故へ変わる。

Season1の飲み会でも同じだった。

透明な液体を水と呼び、火を近づけて燃えるかどうか確かめる。
伊織が危険を訴えても、時田と寿は豪快に笑う。
逃げようとすれば捕まり、断ろうとすれば別の杯が差し出される。

原作では、異常な飲み会の光景が大きなコマで突き付けられる。
アニメでは、杯を置く音、液体を注ぐ音、先輩たちの低い笑い声が続き、伊織が逃げ場を失う過程まで見える。

Season2では、栞から届いた手紙を前に、伊織がまともな大学生活を報告しようとする。
しかし思い返すのは、酒、全裸、乱闘、失敗ばかり。
文章を書こうとするたびに過去の騒動が蘇り、妹へ見せられる記憶が残っていない。

原作でも十分に酷い生活だが、アニメでは回想が声と動きを伴って戻ってくる。
伊織が忘れたい過去を、視聴者はもう一度見せられる。
真面目な手紙を書こうとする現在と、全裸で暴れていた過去の落差が強くなる。

こうした積み重ねがあるため、Season3の帰省も単独のギャグでは終わらない。

栞の前で平静を装う伊織を見た瞬間、視聴者は既に知っている。
この兄は、妹へ隠し通せるような生活を送っていない。
何かを誤魔化そうとするほど、過去の行動が自分を追い詰めていく。

原作とアニメの違いは、どちらが面白いかという単純な優劣ではない。

原作は、ページをめくった瞬間に落差を突き付ける。
アニメは、落差が来る直前まで平静を保たせ、声と沈黙で限界まで溜める。

同じ伊織の失敗でも、原作では顔を見た瞬間に笑い、アニメでは顔が崩れる数秒前から笑い始める。

ぐらんぶる Season3で追加されたギャグ演出を見る時は、新しい台詞や場面だけを探すのでは足りない。
原作の一コマへ何秒の時間が加わったのか。
誰の声が重なったのか。
周囲の人物がどの瞬間に異変へ気付いたのか。

そこまで比較すると、原作を読んで展開を知っていても、アニメでもう一度笑える仕組みがはっきり見えてくる。

第3章 Season3第1話は、夏祭りの楽しさがPaB式の狂騒へ変わっていく

浴衣とたこ焼きから始まった計画が、最初の一杯で別物になる

Season3第1話「やり残し」は、夏の終わりらしい寂しさから始まる。
PaBの三年生たちは、少しずつ引退の時期へ近づいている。
今の仲間で自由に集まり、何も考えず騒げる時間も、永遠には続かない。

そこで持ち上がったのが、夏にやり残したことを全員で楽しむ計画。
浴衣を着たい。
たこ焼きを作りたい。
記憶に残る飲み会を開きたい。

言葉だけを並べれば、大学生らしい納涼祭になる。
千紗、愛菜、梓たちが浴衣へ着替え、普段のダイビング姿とは違う華やかさも加わる。
伊織と耕平にとっても、女性陣の浴衣姿を眺めながら過ごせる貴重な夜になるはずだった。

しかし、計画を書いた紙の端には「全てPaB式で」という危険な条件が付いている。
普通のたこ焼き。
普通の酒。
普通の浴衣。
その一つ一つが、PaBの男たちを通すと必ずおかしな方向へ曲がっていく。

たこ焼きを囲んで穏やかに会話する時間は長く続かない。
飲み物が用意され、時田と寿が笑顔を見せ、伊織と耕平も当然のように酒宴へ加わる。
浴衣を楽しむはずだった納涼祭が、いつもの脱衣と酔っ払いの騒動へ近づいていく。

原作漫画では、紙に書かれた希望と、実際に始まったPaB式納涼祭の落差が素早く飛び込んでくる。
浴衣姿の女性陣を見た直後、屈強な男たちの裸や異様な飲み方へ切り替わり、爽やかな夏祭りの気配が一気に吹き飛ぶ。

アニメでは、その崩れていく途中まで長く映る。

女性陣の浴衣姿を見た伊織たちが一度は感激する。
今夜だけは穏やかに過ごせるのではないかという期待が生まれる。
ところが時田と寿が動き始めると、伊織たちの表情へ警戒が混じり、宴会の空気が急速に変わっていく。

まだ何も起きていない段階から、視聴者には次の騒動が見えてくる。
伊織も危険を察している。
耕平も普通の祭りでは終わらないと分かっている。
それでも二人は、酒と欲望を前にすると逃げる選択を失ってしまう。

Season1の第1話でも、伊織は同じ失敗をしている。

大学進学を機に伊豆へ移り、爽やかな青春を期待しながらダイビングショップ「グランブルー」の扉を開ける。
店内で待っていたのは、全裸で酒を飲む時田と寿たち。
伊織は即座に扉を閉め、見なかったことにして立ち去ろうとする。

危険へ気付く速さだけなら、伊織は決して鈍くない。
問題は、気付いた後に逃げ切れないこと。
Season1では先輩たちに捕まり、Season3では自分からPaB式納涼祭へ参加している。

Season1の伊織は、全裸の男たちを見て恐怖していた。
Season3の伊織は、騒動が始まる前から展開を予想しながら、その中心へ座っている。
数か月の大学生活で、巻き込まれる新入生から、騒ぎを完成させる一員へ変わっている。

この変化があるから、Season3第1話の納涼祭は単なる繰り返しにならない。

伊織はPaBの異常さを知らない被害者ではない。
何が起きるか分かった上で酒を飲み、耕平と張り合い、最後には周囲と同じ熱量で暴れている。
アニメでは、その染まり切った姿が声と動きによって一層鮮明に見えてくる。

全員の反応が重なり、短い失言が終わらない騒動へ広がる

Season3第1話のギャグは、誰か一人が派手な顔を見せて終わるものではない。
一人の発言へ別の人物が反応し、その反応へさらに別の人物が乗り、場面全体が壊れていく。

夏にやり残したことを挙げる場面でも、この連鎖が続く。

女性陣は浴衣や祭りらしい催しを思い浮かべる。
伊織と耕平は、そこへ自分たちの欲望を混ぜようとする。
時田と寿は、最終的に酒が飲めれば何でも構わないような勢いで話を進める。

一人の希望だけを聞けば、まだ健全。
全員の希望を一つの催しへ詰め込むと、PaB式の異常な納涼祭になる。

原作では、各人物の発言と表情を順番に追うことで、会話が悪化する様子を楽しめる。
アニメでは、発言した人物の背後で他の仲間も動いている。

千紗が冷たい目を向ける。
愛菜が慌てて止めようとする。
梓が楽しそうに眺める。
時田と寿が待っていたように酒を持ち出す。

一つの画面へ複数の反応が集まるため、誰を見ても何かが起きている。

Season2でも、この集団ギャグは何度も使われていた。
伊織と耕平が互いを陥れようとすると、愛菜や千紗まで騒ぎへ巻き込まれる。
二人だけなら醜い口論で終わるところが、周囲の誤解や怒りまで加わり、後戻りできない状況へ進んでいく。

Season3第1話では、その人数が最初から多い。

伊織が失言する。
耕平が笑う。
千紗が睨む。
愛菜が顔を赤くする。
先輩たちが酒で解決しようとする。

誰かが止めようとしても、その行動さえ次の笑いへ変わる。

特に伊織と耕平は、片方だけが恥をかいて終わることを許さない。
伊織が女性陣の前で有利になりそうなら、耕平が過去の失敗を暴露する。
耕平が良い印象を得そうなら、伊織がオタク趣味を利用して引きずり下ろす。

相手の失敗を笑っている間に、自分の弱点まで晒してしまう。
二人とも勝とうとしているのに、結果として二人まとめて信用を失う。
この救いのなさが、Season1から続く二人の関係になる。

納涼祭でも、二人が協力して騒ぎを止める展開にはならない。
片方が悪乗りすると、もう片方はさらに大きな悪乗りで返す。
時田と寿が加われば、酒宴は誰にも止められなくなる。

アニメでは声が重なるため、混乱がさらに強くなる。

誰かの台詞が終わる前に、別の人物が割り込む。
止める声と笑う声が同時に響く。
伊織の言い訳がかき消され、次の騒動へ押し流される。

原作の一コマに描かれた全員の混乱が、アニメでは数秒間続く騒音へ変わる。
その場にいる全員が同じ熱量で反応するから、納涼祭の異常さが画面全体から伝わってくる。

Season3第1話は、浴衣や夏祭りという新しい外見を用意しながら、中身にはPaBらしい酒、全裸、裏切り、集団暴走を詰め込んでいる。

原作とアニメで起きている出来事は大きく変わらない。
それでもアニメでは、浴衣姿に見とれる時間、酒が出てきた時の沈黙、嫌な予感を覚えた伊織の顔、全員が騒ぎ始める瞬間が連続して映る。

夏祭りが壊れた瞬間だけではなく、壊れるまでの数十秒まで面白い。
そこに、Season3第1話で膨らんだギャグ演出が表れている。

第4章 帰省編は、兄妹の駆け引きが旅館全体を巻き込む騒動へ変わる

パスポートを隠した栞と、何としても取り戻したい伊織が衝突する

Season3第2話「帰省」で、伊織は千紗、耕平と共に実家の旅館へ向かう。
目的は家族との再会だけではない。
海外旅行に必要なパスポートを、栞から取り戻す必要がある。

栞はSeason2から、伊織の大学生活を厳しく見張っていた。

兄を心配して手紙を送りながら、伊織の部屋には隠しカメラを設置。
伊織がPaBの仲間と酒を飲み、全裸で騒ぎ、まともな学生生活から離れていく姿を確認している。
伊織が手紙へ立派な大学生活を書こうとしても、栞には嘘が通じない。

Season3で実家へ帰った伊織は、その栞と正面から向き合うことになる。

栞は兄へ会えた喜びを隠さない。
声を荒らげず、丁寧な言葉で接する。
兄を旅館へ残し、家を継いでもらいたいという希望も真剣。

しかし伊織にとっては、その愛情こそ最大の障害になる。
パスポートを返してもらえなければ、千紗たちとの海外旅行へ行けない。
家族の前で妹と激しく争えば、自分の立場まで悪くなる。

そこで伊織は、兄として威厳を見せる方法を選ぼうとする。

耕平には、自分の事情を説明し、妹へ強く言い聞かせるような態度を見せる。
ところが実際に栞を前にすると、強気な姿勢は続かない。
言葉で押し切るどころか、最後には頭を下げて返却を求める。

威厳を見せるはずの兄が、妹の前で土下座。
この落差だけでも十分に可笑しい。

さらに伊織の両親まで会話へ加わる。

伊織が家族へ欲しい物を尋ねても、父親は高価な一眼レフを挙げる。
母親からは、優秀な息子が欲しいという容赦のない返答。
久しぶりに帰省した息子を歓迎するより、本人の未熟さを次々に突き付けていく。

伊織は栞だけを説得すればよいと思っていた。
しかし実家では、両親も妹の側に近い。
旅館の中に逃げ場がなく、千紗や耕平の前で家族内の立場まで露出していく。

原作漫画では、伊織が強気な顔から土下座へ落ちるまでの変化が、コマの落差で強く伝わる。
アニメでは、言い聞かせると言い張っていた伊織が栞の前へ進み、声の勢いを失い、膝を折るまでが続けて映る。

耕平は、伊織が兄らしく振る舞う姿を期待して見ている。
その直後に土下座が始まるため、伊織の情けなさを視聴者だけでなく、隣にいる耕平も同時に目撃する。

栞は兄が頭を下げても簡単には揺れない。

兄を旅館から帰したくない。
危険な大学生活へ戻したくない。
海外へまで送り出す気はない。

普段のPaBなら、酒を飲むか力ずくで突破する場面。
しかし相手が妹であり、場所が実家であるため、伊織の得意な悪乗りも使えない。
いつもの騒ぎ方を封じられた伊織が、最も苦手な家族との話し合いへ追い込まれていく。

妹を助けて恩を売る計画が、酒飲み対決とカリーナの誤解へ広がる

正面から頼んでもパスポートを返してもらえない。
そこで伊織が考えたのが、栞の危機を救い、兄として大きな恩を売る方法。

旅館には、栞を見つめる謎の人物の気配がある。
さらに伊織たちは、移動中から厄介なドイツ人のオタク二人組と関わっていた。
栞を守る機会が生まれれば、パスポート奪還へ近づけると伊織は考える。

妹の安全より先に、自分の海外旅行を計算しているところが伊織らしい。

もちろん、栞を危険な目に遭わせたいわけではない。
実際に問題が起これば、兄として動こうとする。
しかし頭の片隅には、これで恩を売れる、パスポートを返してもらえるという期待が残っている。

純粋な兄妹愛だけでは進まない。
打算と心配が同じ顔の中で混ざっている。

第3話「パスポート奪還作戦」では、この思惑へ耕平とドイツ人二人組が加わる。

伊織と耕平は、相手が外国人でも普段と変わらない。
言葉や文化の違いより、オタク趣味と酒の強さで張り合う。
一度始まった勝負を引く気はなく、旅館でも飲み比べへ突入する。

本来の目的は、栞を守って恩を売ること。
ところが酒を前にすると、伊織と耕平は目の前の勝負へ熱中する。
計画を進めるはずの二人が、別の騒動を自分たちで増やしている。

Season1から何度も繰り返された失敗が、実家の旅館でも起きている。

試験前には勉強より酒を優先する。
女性の前で良いところを見せようとして、耕平との潰し合いを始める。
危険な状況を抜け出そうとして、さらに危険な選択へ踏み込む。

帰省編でも、伊織はパスポートを取り戻すため冷静に動くつもりでいる。
しかし酒飲み対決が始まると、目的より意地が前へ出る。
勝ってもパスポートが戻るとは限らないのに、男として負けられないという感情だけで杯を重ねる。

一方、千紗と栞はカリーナと話すことになる。

カリーナは、外見だけなら穏やかで礼儀正しいドイツ人女性。
先に騒いでいた男たちを止め、代わりに謝る姿も見せている。
伊織は、厄介な仲間へ振り回されるカリーナに、自分と似た立場を感じる。

しかし会話が日本文化へ向かうと、カリーナの内側にある強烈な憧れが表へ出てくる。

静かだった口調へ熱が加わる。
目を輝かせながら、本人が思い描く日本の文化を語り始める。
千紗と栞は、すぐに否定することもできず、相手の熱量を受け止めるしかない。

原作では、上品な表情から急に情熱的な顔へ変わる落差が大きい。
アニメでは、穏やかに話していた声が徐々に弾み、言葉の速度まで上がっていく。

千紗は困惑しても、大きな声で突っ込む人物ではない。
栞も相手を観察しながら、表面上の礼儀を崩さない。
そのため二人が黙る時間が長くなり、カリーナだけが楽しそうに話し続ける形になる。

大声で争っている伊織たちの酒飲み対決。
静かな部屋で、妙な日本文化を熱弁するカリーナ。
同じ旅館の中で、異なる種類の騒動が同時に進んでいく。

帰省編のアニメは、伊織と栞の兄妹喧嘩だけに絞られない。
ドイツ人二人組。
酒飲み対決。
謎の視線。
カリーナの文化への憧れ。
千紗と栞の戸惑い。

複数の出来事が交互に映ることで、旅館全体が逃げ場のない喜劇へ変わっている。

伊織は栞を助けてパスポートを取り戻したい。
栞は伊織を実家へ残したい。
耕平は酒とオタクの勝負に負けたくない。
カリーナは憧れてきた日本文化へ近づきたい。

全員が真剣に動いているのに、それぞれの望みが噛み合わない。
誰かの真剣さが、別の人物から見ると異様な行動に映る。

原作とアニメの違いは、この噛み合わなさの見え方にも表れる。

原作では、場面が切り替わるたびに別の騒動が飛び込んでくる。
アニメでは、片方の部屋から聞こえる声、人物が移動する足音、会話が途切れる間まで加わり、同じ建物の中で全員が暴走している感覚が強くなる。

パスポートを取り戻すだけだったはずの帰省。
それが兄妹の駆け引き、家族からの容赦ない言葉、外国人との酒勝負、カリーナの誤解まで巻き込む。

Season3の追加ギャグ演出は、原作の筋書きを別物へ変えるのではなく、一つの目的へ余計な騒動を次々に重ねていく。
その結果、伊織がパスポートへ近づくほど、旅館の混乱はさらに大きくなっている。

第5章 カリーナは、原作の落差が声によって二段階のギャグになった

礼儀正しい第一印象から、日本文化への強烈な憧れが一気に噴き出す

カリーナが初めて姿を見せた時、伊織が受ける印象は決して悪くない。
騒ぎを起こしたドイツ人二人と一緒にいるものの、本人は落ち着いており、迷惑をかけたことを丁寧に謝る。
派手に怒鳴るわけでもなく、相手へ圧力をかけるような態度も見せない。

伊織は、カリーナも厄介な仲間へ振り回されている側だと感じる。
時田や寿、耕平に囲まれ、毎日のように馬鹿騒ぎへ巻き込まれてきた自分と重なる部分がある。
酒と欲望で暴走する男たちの隣に立つ、比較的まともな人物に見えていた。

ところが千紗、栞と会話を始めると、その印象が少しずつ変わっていく。

カリーナは日本の文化に強い関心を持っている。
最初は穏やかな笑顔で質問し、千紗と栞の返答を楽しそうに聞いている。
しかし自分が憧れてきた日本の話題へ進むと、目の輝きも声の勢いも急激に増していく。

原作漫画では、この変化が表情の落差として飛び込んでくる。
上品に微笑んでいた顔が、次のコマでは期待と興奮に満ちた表情へ変わる。
口元が大きく開き、身を乗り出し、相手の返答を待ち切れない様子まで伝わってくる。

アニメでは、顔が変わる前から異変が始まる。

初対面の時は、言葉を選びながら静かに話す。
日本文化へ触れた途端、声が明るくなり、質問の間隔が短くなる。
千紗や栞が返事を考えている間にも、次の興味が口から飛び出してくる。

穏やかな外国人女性だと思っていた相手が、実は日本への憧れを大量に抱えていた。
その落差を、原作では顔で受け取り、アニメでは声と顔の両方で受け取ることになる。

ここで可笑しいのは、カリーナ本人がふざけていないところ。

伊織や耕平は、相手を困らせようとして余計な言葉を口にする。
時田と寿は、酒宴を始めれば周囲が巻き込まれると分かっている。
しかしカリーナは、自分の知りたいことを真剣に尋ねているだけ。

本人が真面目であるほど、千紗と栞の困惑が強くなる。

千紗は、相手の勢いへ大声で突っ込む人物ではない。
眉をわずかに動かし、返答を探しながら、相手の話が止まるのを待つ。
栞も礼儀を崩さず、落ち着いた顔を保ったまま、どこまで答えるべきか慎重に考える。

二人が無言で視線を交わす。
それでもカリーナの熱は冷めない。
一人だけ楽しそうに話し続け、静かな部屋の温度を一気に上げていく。

原作では、カリーナの台詞と二人の反応を順番に読むことで笑いが生まれる。
アニメでは、カリーナが話している最中にも、千紗と栞の顔が画面へ残る。
相手の熱量についていけず、言葉を失っていく様子まで同時に見える。

一人の発言を聞くだけではなく、聞かされている二人の苦しさまで味わえる。
そこが、カリーナ登場場面で強くなったギャグになる。

伊織との共通点が見えた直後、理解し合えない部分まで浮かび上がる

伊織とカリーナには、似た立場がある。

伊織は、PaBの先輩や耕平が起こす騒動へ巻き込まれる。
カリーナも、酒と妙な欲望で動くドイツ人二人を止めなければならない。
どちらも、周囲の男たちを完全には制御できない。

そのため二人が出会った直後には、言葉が通じ切らなくても妙な親近感が生まれる。
伊織はカリーナの苦労を察し、カリーナも伊織が単なる迷惑な男ではないと感じているように見える。
騒ぎの中心から少し離れた場所で、互いに疲れた表情を見せる瞬間もある。

しかし少し話が進むと、似ているだけでは終わらない。

伊織は日本で暮らしているため、カリーナが思い描く日本像と現実の差を知っている。
カリーナが目を輝かせるほど、伊織たちには何を期待されているのか分からなくなる。
日本人だから説明できると思われても、答えに困る話題が次々に出てくる。

Season1では、耕平がアニメへの強烈な愛情を語るたび、伊織が距離を取ろうとしていた。

耕平は普段、女性から注目される容姿を持っている。
黙って立っていれば、伊織よりも遥かに爽やかな大学生に見える。
ところが好きな声優や作品の話になると、周囲の視線を忘れ、別人のような勢いで語り始める。

伊織は、その姿を何度も利用してきた。
耕平が女性の前で好印象を得そうになると、アニメの話題を振り、本人の暴走を引き出す。
耕平は罠だと気付いても、好きな作品の話を止められない。

カリーナの場面にも、これと似た笑いがある。

普段は落ち着いて見える。
特定の話題へ触れた途端、周囲が見えなくなる。
本人にとっては大切なものだから、途中で止める気もない。

ただし、耕平のように荒々しく叫ぶわけではない。
カリーナは礼儀正しい姿を残しながら、穏やかな笑顔で相手を追い詰めていく。
千紗と栞は怒ることも逃げることもできず、丁寧に付き合い続けるしかない。

この違いがあるため、過去のオタクギャグを繰り返した場面にはならない。

耕平の場合は、発言の激しさと周囲の引いた顔が笑いになる。
カリーナの場合は、優雅な外見と止まらない質問の差が可笑しい。
同じ「好きなものを前にすると止まれない人物」でも、見える騒動は大きく違う。

さらにアニメでは、日本語を話す時の慎重さと、興味が高まった後の流暢さにも差が出る。
最初は言葉を確かめながら話していた人物が、好きな話題では急に速度を上げる。
そこへ千紗の短い返答と、栞の静かな相槌が挟まり、三人の温度差が際立っていく。

伊織たちの酒飲み対決が、大声と勢いで押し切る騒動だとすれば、カリーナの会話は逃げ場のない静かな騒動。

声を荒らげる人物はいない。
物が壊れるわけでもない。
それでも千紗と栞の表情は、酒宴へ巻き込まれた時と同じくらい疲れていく。

原作とアニメを比較すると、カリーナの魅力は台詞の内容だけでは終わらない。

原作では、見た目と中身の差が一枚の絵で強く刺さる。
アニメでは、静かな声が次第に弾み、千紗と栞の返答が減っていく。
誰も叫ばないまま会話の主導権が完全にカリーナへ渡る。

顔の変化で一度笑い、声の勢いでもう一度笑う。
Season3で加わったカリーナは、原作の落差を映像で二段階へ広げた人物になっている。

第6章 Season1から続く追加演出は、反応する人数が増えるほど強くなる

伊織一人の失敗から、全員が巻き込まれる集団事故へ変わってきた

Season1序盤の伊織は、PaBの異常な世界へ放り込まれる被害者に近かった。

ダイビングショップへ入ると、全裸の男たちが酒を飲んでいる。
大学へ向かえば、自分まで裸で歩いていたことで周囲から注目される。
千紗からは冷たい目を向けられ、期待していた爽やかな大学生活は初日から崩れていく。

この頃の笑いは、伊織一人の反応が中心。

伊織が驚く。
逃げる。
捕まる。
言い訳をする。
さらに誤解される。

画面の中心では、常に伊織の表情が崩れていた。

ところが耕平が加わると、騒動の形が変わる。

伊織が恥をかけば、耕平が笑う。
耕平が女性から注目されれば、伊織が弱点を暴露する。
どちらか一人が助かりそうになると、残された側が相手の足をつかんで引きずり落とす。

二人は親友に近い関係になっても、相手だけが得をする状況を許さない。

Season1の学園祭でも、その性格が強く表れていた。
声優の水樹カヤが姿を見せると、耕平は周囲を忘れて熱狂する。
伊織は呆れながらも、その情熱を止めるより、状況を利用しようと考える。

耕平が暴走すれば、伊織も無傷では済まない。
二人の言い争いへ実行委員や観客まで加わり、個人的な失敗が会場全体の騒動へ広がっていく。

アニメでは、この人数の増加が画面と音へそのまま表れる。

伊織が叫ぶ。
耕平が言い返す。
離れた場所から時田と寿が笑う。
千紗が冷たい声で止め、愛菜が慌てて間へ入る。

誰か一人の台詞が終わる前に、別の声が重なる。
視聴者は中心人物だけでなく、背後で呆れている人物や、楽しそうに酒を用意する先輩まで見ることになる。

原作漫画では、各人物の反応が複数のコマへ分かれている。
大きく驚く顔。
無言で見下ろす顔。
騒ぎへ参加しようとする顔。
読む順番に沿って、反応が次々と増えていく。

アニメでは、それらが同じ瞬間に起きる。

伊織が言い訳を始めた時点で、千紗は既に信じていない。
耕平は伊織が失敗するのを待っている。
時田と寿は騒ぎを酒宴へ変える準備をしている。

中心の会話が続いている間に、周囲では次の事故が始まっている。

Season2になると、そこへ栞、桜子、乙矢、青梅女子大の学生たちまで加わった。
伊織と耕平だけで完結していた悪ふざけが、大学の外へ広がり、事情を知らない人物まで巻き込むようになる。

無人島キャンプでも、伊織たちは自然の中で穏やかに過ごせない。
女性陣との距離を縮める機会を狙い、男同士で牽制し、先回りしようとして失敗する。
一人の欲望が全員へ伝わり、最終的には集団で信用を失っていく。

Season3では、その範囲が海外まで広がった。

空港で愛菜と再会する。
パラオの寮で共同生活を始める。
現地のダイビングショップで、新しい人物たちと仕事をする。
伊豆の事情を知らない相手まで、伊織たちの勢いへ巻き込まれていく。

舞台が変わっても、騒動の中心にいる顔ぶれは変わらない。
しかし反応する人物が増えるため、同じ失言でも結果が大きくなる。

パラオでは、初対面の人物まで伊織たちの異常さを目撃する

Season3第4話で伊織たちは、ついにパラオへ到着する。

青い海。
強い日差し。
日本とは違う南国の景色。
ダイビングを学んできた伊織たちにとって、胸が高鳴る場所になる。

ところが空港で待っていたのは、実家の手伝いで離れていたはずの愛菜。

伊織たちは、予想していなかった再会へ驚く。
愛菜も事情を抱えながら、同じパラオで過ごすことになる。
ここで一行は、伊織、耕平、千紗だけではなく、愛菜まで加わった状態で海外生活へ入る。

寮へ移動し、ダイビングショップ「ドルフィン」でのアルバイトが始まる。

昼間は仕事。
海へ出れば、これまで身に付けてきた技術を使う。
一見すると、Season1から目指してきた本格的なダイビング生活が始まったように見える。

しかし夜になれば、いつもの酒が出てくる。

南国の夜景を前にしても、伊織たちは静かに海を眺め続けられない。
酒が並べば、伊豆での宴会と同じ空気が戻る。
海外へ来た高揚感まで加わり、声も動きも一段大きくなる。

そこへ現れるのが、千紗の母親であり、パラオ店の責任者でもある紗耶華。

伊織たちは、これまで奈々華や千紗とは暮らしてきた。
しかし紗耶華とは、同じ距離感では接することができない。
遊びに来た観光客ではなく、店を手伝う立場でもあるため、最初から勝手に振る舞える相手ではない。

それでも酒宴の最中に顔を合わせることになる。

真面目に働く姿を最初に見せるはずが、既に南国の夜を満喫している。
伊豆で伊織たちの性格を知る人物なら、また始まったと受け流せる。
初対面に近い人物から見れば、到着早々に騒ぐ危険な学生集団にしか見えない。

この「事情を知らない人物の目」が、Season3のギャグを厚くしている。

Season1では千紗が、伊織の異常さを見る役割を担っていた。
普通の大学生活を送るつもりだった伊織が、全裸で大学へ現れる。
千紗が無言で視線を向けるだけで、伊織がどれほど酷い状態なのか伝わった。

Season2では栞が、その役割を別の角度から担った。

隠しカメラを通して、兄の大学生活を確認する。
酒宴、裸、乱闘を目撃し、伊織の言い訳を一つずつ潰していく。
妹の冷静な視線によって、PaBでは日常になった騒動が、外から見れば異常だと再び示された。

Season3では、パラオ店の人物たちが新しい視線を持ち込む。

チーフやマキは、伊織たちと同じ寮や職場で過ごすことになる。
最初は日本から来たアルバイトとして接していても、すぐに彼らの本性を目撃する。
酒を飲んだ後の騒ぎ、耕平の偏った情熱、伊織の余計な発言が、初対面の人物の前でも隠し切れない。

原作では、新人物が驚く顔を見せた次のコマで、伊織たちがさらに騒ぎを重ねる。
読者は、また信用を失ったと即座に分かる。

アニメでは、新人物が言葉を失う時間が加わる。

目の前の光景を理解できず、一度黙る。
伊織たちを見る。
周囲へ助けを求めるように視線を動かす。
しかし誰も止めず、本人たちは平然と騒ぎ続ける。

この沈黙が入ることで、PaBの異常さがさらに目立つ。

伊織たちは、自分たちだけで笑いを完成させているわけではない。
千紗の冷たい視線。
愛菜の焦った声。
栞の静かな警戒。
紗耶華たち新人物の困惑。

周囲の反応が増えるほど、一つの失敗が長く続く。

Season1では、伊織が巻き込まれるだけだった。
Season2では、伊織と耕平が周囲を巻き込み始めた。
Season3では、舞台そのものを海外へ広げ、初対面の人物まで騒動へ引き込んでいる。

原作とアニメで筋書きが同じでも、画面に映る人数が増え、声が重なるほど笑いは大きくなる。

誰が失言したのか。
誰が最初に呆れたのか。
誰が止めるふりをしながら悪乗りしたのか。
誰が最後まで状況を理解できなかったのか。

その全てが同時に見えるところに、アニメ版『ぐらんぶる』の集団ギャグの強さがある。

第7章 まとめ|原作で知っている場面でも、アニメでは違う瞬間に笑える

漫画はページをめくった瞬間、アニメは崩れる直前から面白い

『ぐらんぶる』原作とアニメの違いは、物語を大きく変えていることではない。
伊織が余計なことを言い、耕平が悪乗りし、千紗が冷たい視線を向け、時田と寿が酒宴を始める。
Season1からSeason3まで、作品の中心にある騒動は変わっていない。

それでも、同じ場面を見た時の笑い方は大きく違う。

原作漫画では、普通の表情から異様な顔芸へ切り替わる一コマが強い。
伊織が平静を装っていた直後、次のコマでは白目をむき、歯を食いしばり、相手を陥れようとする顔へ変わる。
読者がページをめくった瞬間、その落差が一気に飛び込んでくる。

アニメでは、顔が崩れるまでの時間が加わる。

相手の言葉を聞く。
一度は我慢する。
目だけが動く。
声が少し低くなる。
限界へ達した瞬間、表情が一気に崩壊する。

原作では一枚の顔で笑う場面が、アニメでは数秒前から始まっている。

Season1第1話で、伊織がダイビングショップの扉を開けた場面も同じ。
店内で全裸の男たちを見つけた伊織は、状況を理解した直後、静かに扉を閉めようとする。
見なかったことにして帰ろうとするが、背後から声をかけられ、逃げ道を失う。

原作では、扉を開けた先の異様な光景が一撃で飛び込んでくる。
アニメでは、扉を開ける音、伊織の沈黙、ゆっくり閉じようとする動きまで続く。
危険へ気付いたのに逃げ切れない伊織の苦しさが、長い笑いへ変わっている。

Season2では、栞が兄の大学生活を確認していたことで、別の笑いが生まれた。

伊織は妹へ立派な学生生活を報告しようとする。
しかし思い返すのは、酒、全裸、乱闘、失敗ばかり。
真面目な手紙を書こうとする現在へ、見せたくない過去が次々に戻ってくる。

原作では、現在と過去の落差をコマで追う。
アニメでは、過去の騒動が声と動きを伴って蘇る。
伊織が忘れたい出来事を、視聴者はもう一度最初から見せられる。

Season3の帰省編では、その積み重ねが栞との対面へつながった。

伊織はパスポートを返してもらうため、兄らしく振る舞おうとする。
耕平の前では強気な姿勢を見せる。
しかし栞を前にすると勢いを失い、最後には頭を下げる。

原作では、強気な顔から土下座へ落ちるコマの差が強烈。
アニメでは、声が弱くなり、膝を折り、床へ頭を近づけるまでが続けて映る。
伊織の威厳が少しずつ消えていく過程まで可笑しい。

Season3で加わったカリーナも、原作とアニメの違いが分かりやすい人物になる。

原作では、礼儀正しい表情から、日本文化への情熱が噴き出す顔への変化が大きい。
アニメでは、静かな声が次第に明るくなり、質問の速度が上がっていく。
千紗と栞の返答が減り、カリーナだけが楽しそうに話し続ける。

顔の落差だけでなく、声の温度差まで笑いへ変わっている。

ぐらんぶる Season3の追加ギャグ演出を見る時、原作にない台詞だけを探すと魅力を見落としやすい。

誰が先に異変へ気付いたのか。
誰が言葉を失ったのか。
誰の声が重なったのか。
どの瞬間から場面が壊れ始めたのか。

その細かな違いまで見ていくと、原作を読んで展開を知っていても、アニメで別の笑いを味わえる。

原作とアニメは競い合うのではなく、同じ騒動を別の形で楽しませている

ぐらんぶる 原作とアニメを比較すると、どちらが優れているかという話へ進みやすい。
しかし実際には、同じ場面でも得意な笑わせ方が違う。

原作漫画には、ページをめくる速さがある。

爽やかな海。
真面目な会話。
整った顔。
その次のコマで、全裸、酒、顔芸、裏切りが飛び込んでくる。

一瞬で空気を壊す力は、漫画だからこそ強い。

アニメには、壊れる直前を見せ続ける力がある。

伊織が言い訳を始める。
千紗が無言で見つめる。
耕平が笑いをこらえる。
時田と寿が酒を持って近づいてくる。

まだ騒動は始まっていない。
それでも見ている側には、数秒後に何が起きるか分かる。
その予感が、笑いを長くしている。

Season1では、伊織一人の失敗が中心だった。

大学へ入学し、爽やかな青春を期待しながら、初日から全裸で学内へ現れる。
ダイビングを学びたいのに、毎回酒宴へ巻き込まれる。
千紗から誤解され、言い訳を重ねるほど立場を悪くする。

Season2では、伊織と耕平が騒動を起こす側へ回った。

女性の前で良い印象を得ようとして、互いの弱点を暴露する。
片方が助かりそうになると、もう片方が足を引っ張る。
二人だけの争いが、愛菜、千紗、桜子、栞まで巻き込んでいく。

Season3では、その騒動が実家や海外へ広がった。

栞とのパスポート争奪。
ドイツ人二人との酒飲み対決。
カリーナの日本文化への情熱。
パラオで出会う新しい人物たちの困惑。

伊豆では慣れた光景でも、初めて見る人物には異常そのもの。
周囲の人数が増えるほど、伊織たちの馬鹿騒ぎが別の角度から見えてくる。

ここにも、アニメで強くなった面白さがある。

一人の失言へ、画面の全員が反応する。
止める声、笑う声、呆れる声が重なる。
本人が言い訳している間に、背後では次の騒動が始まっている。

原作では複数のコマへ分かれていた反応が、アニメでは同じ時間に押し寄せる。
そのため、短いギャグが一度で終わらず、連続する事故へ変わっていく。

『ぐらんぶる』は、ダイビングだけを描く作品ではない。
酒と全裸だけを繰り返す作品でもない。

海へ潜る時には、仲間同士で呼吸を合わせ、互いの安全を確かめる。
地上へ戻れば、その仲間たちが容赦なく裏切り、酒を飲み、騒動を起こす。
真剣な時間と馬鹿騒ぎが近くにあるから、どちらの場面も強く見える。

原作は、その落差を一枚の絵とページ運びで突き付ける。
アニメは、声、音、沈黙、動きでその落差を長く味わわせる。

ぐらんぶる Season3で追加されたギャグ演出も、原作を別物へ変えるためのものではない。
原作の中にあった顔芸、勘違い、悪乗り、集団反応を、画面の中でさらに広げている。

原作で先を知っていても、笑う瞬間は同じにならない。

漫画では、次のコマを見た瞬間に笑う。
アニメでは、次の顔が来ると分かった時点から笑い始める。

その違いがあるから、『ぐらんぶる』は原作を読んだ後でもアニメを楽しめる。
アニメを見た後でも、原作の一コマを開き直したくなる。

同じ騒動を二度見るのではない。
同じ騒動を、違う速度と違う温度で二度楽しめる。

そこが、ぐらんぶる 原作とアニメを比較した時に見えてくる、最も大きな違いになる。

ぐらんぶるまとめ

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