『転剣Ⅱ』でリッチへの攻撃がすり抜ける現象には、時空魔術が関わっている。
Web原作では、短時間だけ異空間へ移って攻撃をかわす「ディメンション・シフト」と説明される。
剣も魔術も届かない状況を支える条件と、その防御が崩れる転機から、無敵に見えたリッチの仕組みを追っていく。
Web原作第79話までのネタバレあり。
第1章 リッチへの攻撃はなぜすり抜けた? 異空間へ移る時空魔術
| 気になる現象 | 関わっている力 |
|---|---|
| 攻撃が体を通り抜ける | 異空間へ移る時空魔術 |
| 何度攻撃しても届かない | 大きな魔力と詠唱破棄 |
| 能力をすぐ見抜けない | 本来の情報を隠す鑑定偽装 |
| 防御を崩す転機 | 時空魔術を奪って回避を封じる |
体を硬くするのではなく、 攻撃を受ける場所から離れる
確かに斬ったように見えたのに、
リッチには何も起きない。
フランが近づいても、師匠が攻撃を変えても、
相手はそこに立っている。
剣が弱いのか、それとも目の前の姿そのものが偽物なのか。
反撃を受ける危険の中で、
当たらない仕組みまで探さなければならない。
攻撃がすり抜ける現象には、
リッチの時空魔術が関わっている。
Web原作でジャンが見抜く術の名は、
ディメンション・シフト。
短い間だけ異空間へ移り、
敵の攻撃をかわす働きを持つ。
姿を目で追えていても、
攻撃を受ける本体が同じ場所にとどまっているとは限らない。
つまり、剣を受け止める硬い骨や、
刃を弾く鎧が問題になっているのではない。
攻撃が届こうとする瞬間に、
相手がその場から外れてしまう。
目の前へ剣を振り抜けた感触と、
実際に相手へ傷を負わせることの間に、
見た目からは気付きにくい隔たりがある。
この仕組みを知ると、
フランが何度も空振りしているように見える苦戦も
変わってくる。
近づく速さや振り抜く強さだけで
解決できる相手ではない。
狙ったところへ刃を運べても、
相手がその攻撃を受けない状態へ移れるなら、
いつもの成功が手応えへつながってくれない。
ただし、リッチの体が常に別の空間にあり、
何もしなくても全てが抜けるという話ではない。
使っているのは回避のための術になる。
生まれつき触れられない存在として片付けると、
術を使える条件や、
それを失った後の変化がつながらなくなる。
しかも、厄介なのは一度だけかわされることではない。
ディメンション・シフトは
大きな魔力を使う術として説明されるが、
リッチには繰り返し使う余裕がある。
フランたちが別の手を試しても、
そのたびに攻撃が届かない。
普通なら続けにくい回避が、
戦いの間ずっと立ちはだかる。
無敵に見える姿にも、使っている術がある
ここでの異空間への移動は、
遠くの町へ逃げてしまうような転移とは
使いどころが異なる。
リッチは戦いをやめず、
攻撃をやり過ごすために使っている。
姿が捉えられないまま消え去るよりも、
すぐ前でこちらを見ている相手に届かないほうが、
次は当たるかもしれないと思わされる。
その近さが、攻め続ける側を苦しくしている。
ここで少しぞっとするのは、
相手の傷を見つけられないまま、
こちらだけが疲れていくこと。
強敵へ少しずつでも傷を付けられるなら、
苦しくても前へ進んでいる感じは残る。
リッチの場合は、その実感をつかめない。
届いていない攻撃にも、
フランたちは力を使っている。
師匠はフランの手元にいて、
同じ相手を見ながら考えている。
それでも、いつものように
敵の能力がすぐ分かる状況ではない。
見えている姿、鑑定で得られる情報、
実際に受ける攻撃が、素直につながってくれない。
二人で考えられる頼もしさがあっても、
判断の足場が揺れている。
この防御が崩れる転機になるのは、
同じ攻撃をさらに強く打つことだけではない。
Web原作では、
師匠がリッチから時空魔術を奪い、
ジャンの浄化が届くようになる。
相手の体そのものより、
攻撃を受けずに済む手段へ働きかけたことが、
結果の変化につながっている。
それまで平然としていた相手が、
同じようにはやり過ごせなくなる。
その変化があるから、
すり抜ける姿を見ていたときの行き詰まりが
少しほどける。
フランたちの攻撃が全部弱かったのではない。
届く前に避けられていたところへ、
ようやく届く状況を作れている。
リッチへの攻撃がすり抜けた答えは、
時空魔術による一時的な異空間への回避にある。
ただ、術の名前だけで戦いが楽になるわけではない。
その術を何度も使える魔力があり、
仕組みを隠す手段もある。
一つの術へたどり着くまでに、
フランたちは幾つもの分からなさを越えている。
第2章 剣だけでなく魔術まで通じない? 攻撃を変えても残った壁
斬れなければ魔術を、という試みも届かない
斬撃が駄目なら、別の方法を試したくなる。
師匠とフランには、剣を振る以外の手段もある。
これまで集めた力が、
難しい相手へ立ち向かう助けになってきた。
それなのに今回の相手には、
攻め方を変えても同じ結果が返ってくる。
選べる手があるだけに、
通じない状況がもどかしい。
Web原作の戦闘では、
フランが属性を伴う剣の攻撃を試し、
師匠も魔術を放っている。
それでもリッチを捉えられない。
剣で切れないものへ魔術を当てる、
という切り替えでも突破できていない。
攻撃の種類が一つしかないせいで
行き詰まっている場面ではない。
相手が硬いなら、
より鋭い刃や大きな力が役立つかもしれない。
特定の属性への耐性が高いなら、
別の属性を使う方法も考えられる。
けれど、異空間へ移る回避に対しては、
同じ場所へ違う攻撃を運ぶだけでは足りない。
何で攻撃するかの前に、
相手へ届くかという問題がある。
このため、効かなかった攻撃を
そのまま弱い技と呼ぶこともできない。
威力を受け止められてなお
傷を付けられなかった場合と、
攻撃そのものが触れていない場合では、
起きていることが異なる。
リッチの見た目に変化がないという結果だけでは、
その二つを判別しにくい。
フランが剣を振るたびに、
攻撃へ移るための動きは必要になる。
師匠が魔術を使えば、そのための力も使う。
相手へ成果が出なくても、
こちらが何もせず待っていたことにはならない。
回避される一回一回が、
フランたちの余裕を削る側へ積み重なっていく。
当てたいからとさらに近づけば、
相手からの反撃も近くなる。
遠くから魔術で様子を見ても、
届かなければ決着へ進めない。
近距離か遠距離かだけで
安心できる場所が決まらないところも厳しい。
攻撃を試すこと自体が、
相手の出方を受け止める危険と結び付いている。
浄化が効かない姿に、別の疑問が生まれる
攻撃の範囲を広げればよいのか、
という疑問も浮かぶ。
原作では、師匠たちは浄化の結界も試している。
それでも届かないため、
狭い一点を外しているだけとも考えにくくなる。
場所を広く覆うことと、
異なる空間へ退いた相手に働きかけることは別になる。
広さに頼る手まで通じないと、
次を選ぶ難しさが増していく。
さらに、アンデッドを相手にするなら
頼りたい浄化にも、リッチは平然としている。
Web原作では、
ジャンの杖が配下の死霊たちへ効果を見せる一方、
リッチ本人は残る。
その落差が、ただ相手の体力が多いのか、
それとも別の仕組みがあるのかという
疑問を強めている。
周囲の敵へ効いた手段が、
本体にも効くとは限らない。
そう聞くだけなら珍しい話ではないが、
ここでは目の前でその落差を見せられる。
頼れそうな手が一度はっきり成果を出した直後に、
肝心の相手には通じない。
持ち直しかけた気持ちが、
また引き戻されるような場面になる。
ただ、浄化そのものがリッチに通用しない能力と
決まったわけではない。
後に時空魔術を失ったリッチへ光が届くことからも、
回避できていた段階と、
実際に浄化を受ける段階には違いがある。
相手が死霊の王を名乗ることだけで、
浄化への完全な免疫までは決まらない。
そう考えると、ジャンが最初に選んだ手段も、
単に見当違いと片付けられない。
死霊へ働きかける力が不足していたのか、
届くところへ相手がいなかったのか。
その違いが分からないままでは、
次の行動も選びにくい。
失敗したように見える一手の中にも、
まだ確かめる余地がある。
フランと師匠が苦しんでいるのは、
手段の少なさより、
試した結果を読み切れないことでもある。
剣も魔術も浄化も駄目となると、
相手には何も効かないように感じられる。
けれど、そこで一つずつ違う攻撃を跳ね返すのではなく、
届く前に外している術へ目が向いたことが、
突破口につながっていく。
第3章 幻なのに殴ってくる? 姿が見えても攻撃が届かない怖さ
目の前にいるはずの相手を、 手応えで確かめられない
目の前に姿がある。
けれど、剣を振るとすり抜ける。
そんな相手を見れば、
実体のない映像を相手にしているのかと思えてくる。
リッチの姿が本物なのか疑いたくなるのは、
フランたちの技量と関係なく、
見えているものと触れた結果が噛み合わないから。
Web原作の師匠も、
相手が幻影のようなものかと考えている。
攻撃が通らない結果を前にして、
別の可能性を探しているところになる。
最初から術の正体を知っている側には簡単な答えでも、
戦っている二人には、
まだ説明のつかない現象が目の前にある。
しかも、師匠たちは相手の姿を眺めて
検証していられるわけではない。
周囲には敵がいて、リッチ自身も動いてくる。
違和感を一つ見つけたら、
その場で安全に次を試せる状況ではない。
フランが前へ出て得た情報には、
そのまま彼女が傷つく危険が付いてくる。
その怖さがはっきりするのが、
攻撃をすり抜けられた後の反撃になる。
こちらの刃は相手を傷つけなかったのに、
向こうからの打撃はフランへ届く。
目の前に何もいないのなら、
こんな痛手は受けないはず。
すり抜けた感触とは逆に、
受けた傷は相手の存在を突き付けてくる。
ここで想像したくなる、
常に体が透明ですべてを無視できる能力と、
実際に使われている回避の術は少し異なる。
リッチは一時的に異空間へ移っている。
ずっと触れられないまま殴り続ける存在と決めるより、
攻撃を外すための動きがある相手として見えてくる。
ただ、その切り替わりを
目の前のフランが自在に狙えるとは限らない。
異空間から戻るまで待てばよい、
という言葉ほど簡単には進まない。
相手の術の発動を読み、
配下を避け、反撃も受け止める必要がある。
仕組みの説明が短くても、
実際に対処する側の仕事は減らない。
一方的に避ける相手から、確かな反撃が来る
また、打撃を受けたフランを回復させる師匠にも、
その場で果たす仕事が増える。
相手の正体を考えることだけに集中できず、
フランを守る対応も重なる。
疑問を口にするまでの短い間にも、
手を止められないことがある。
謎を解く相手と、目の前で傷つく相手が
同時にいるところが、
師匠の焦りへつながっていると考えられる。
こちらの攻撃が抜ける瞬間は、
相手へ当てられると思って体を動かした瞬間でもある。
手応えを見込んだ一振りが空を切れば、
その後の構えを戻す必要が生まれる。
そこへ反撃が来ると、
失敗を考え直すより先に体を守らなければならない。
分からない相手に近づく怖さが、
その近さで伝わってくる。
遠くから見れば、
剣を通しているだけの小さな変化にも見える。
けれど、その一回のすり抜けが、
フランには相手のすぐそばで
無防備になる危険へつながる。
師匠が隣で考えていても、
彼女の体まで別の場所へ逃がせるわけではない。
攻撃する二人と、
傷を受ける体の位置が重なっている。
一方で、リッチの反撃が強いことは、
回避の術だけで説明できない。
触れられるかという問題と、
触れられたときにどれほど危険かという問題が
同時にある。
防御を崩せたら弱い相手という保証がないため、
仕組みが分かった後にも警戒が必要になる。
それでも、幻かもしれないという疑いから、
時空魔術を使う本体がいるという理解へ進むことには、
大きな違いがある。
正体の分からない像へ攻撃を続ける状態から、
相手が使っている手段を考える状態へ移れる。
反撃を受けた悔しさの中で、
敵を捉える手掛かりも増えている。
リッチのすり抜けが厄介なのは、
体に触れられないことだけではない。
見えている相手へ攻撃すれば届く、
といういつもの感覚まで揺らしてくる。
だから、浄化の光が今度こそ届いたときには、
単に一撃が成功した以上の安堵がある。
目の前の相手へ、
ようやく働きかけられたと感じられる。
第4章 なぜ何度も消えられる? 大きな魔力と詠唱破棄の組み合わせ
一回の回避を、何度も繰り返せるだけの余裕
一度だけ攻撃を避ける力なら、
使った後の隙を探したくなる。
大きな力ほど、次まで時間がかかったり、
使い切った後に余力が減ったりすることがある。
ところがリッチは、
フランたちが攻撃を変えても回避を続ける。
いつになればその守りが切れるのか、
待つ側の見通しが立たない。
ディメンション・シフトは、
もともと気軽に繰り返せる術として
説明されているわけではない。
Web原作では、
消耗の大きさが連続使用を難しくする。
それでもリッチには大きな魔力があり、
呪文の詠唱を省く詠唱破棄も備わっている。
その組み合わせが、途切れにくい回避を支えている。
術の効果だけを見れば、
短時間の異空間への移動になる。
それを一回使えることと、
相手の攻撃に合わせて何度も使えることの間には、
別の強さがある。
リッチの戦いでは、術そのものの便利さに加え、
使い続けられる余裕まで相手にしなければならない。
フランたちにとっては、
次なら通るかもしれないという期待を
外され続ける形になる。
何回も攻撃を避けたのなら、
そろそろ消耗していてほしい。
けれど、その兆しをつかむ前に、
こちらの疲れが見えてくる。
回避が成功するたび、
相手と自分たちの持久力の差まで意識させられる。
詠唱破棄は、魔術を使うための言葉を
唱える手順を省く能力になる。
大きな術を使う準備が長ければ、
そこを狙える可能性も生まれる。
リッチの場合は、その待ち時間へ頼ることも難しい。
術を知るだけでは足りず、
相手がどんな使い方をできるかまで関わってくる。
ただし、詠唱を省けることは、
魔力を使わなくなることとは別になる。
術を出す手順と、術を維持するための余力には、
それぞれ働きがある。
唱えなくても、消耗の大きい術なら魔力は問題になる。
その両方をリッチが持つことで、
簡単には切れない防御になっている。
魔力の供給と、術を使う手順が防御を支える
さらに、浮遊島の迷宮には、
リッチへ魔力を供給する仕組みがある。
Web原作では、
ジャンの配下がその大本へ破壊工作を行う。
敵がどれだけ魔力を持っているかだけでなく、
外から補われる状況まで変えなければならない。
相手の強さは、
目の前の体の中だけで完結していない。
供給を受ける相手と、
手持ちの力を使って戦うフランたちでは、
時間の重さも違ってくる。
長引けば両方が同じように疲れるとは限らない。
攻撃を続けていれば自然に有利になる、
という期待を持ちにくいところに、
リッチの戦い方の嫌らしさがある。
ただ、魔力供給の大本を壊した瞬間に、
回避の術そのものが消えるわけではない。
原作では、その後に時空魔術の仕組みが明らかになり、
師匠が能力へ手を打つ段階が来る。
供給を断つことと、術を使えなくすることは、
それぞれ別の役割を果たしている。
蓄えている力と、
後から補われる力にも違いがある。
供給が止まっても、
リッチがすでに持つ魔力まで瞬時に消えたとは限らない。
原作で施設の破壊後にも戦いが続くことには、
その区別も関わってくると考えられる。
長く支え続ける仕組みを断てても、
今すぐ目の前の一撃が軽くなるとは限らないところが、
気の抜けない相手になっている。
この違いがあるから、
施設へ働きかけたジャンの準備と、
師匠が時空魔術を奪う行動がつながっていく。
一つの手だけで全て終わるなら、
そこへ至るまでの苦戦も違う形になる。
二人が同じ対象を見ながら、
別々のところを崩していることが、
ようやく防御へ届く道を作っている。
なお、転移を封じる部屋で
リッチ自身が時空魔術を使える点にも、
原作では封印無効の能力が関わっている。
フランたちが逃げられない条件と、
相手が回避できる条件がそろっていない。
自分たちの退路は閉ざされるのに、
相手の守りは残る。
その不公平さも、戦いの息苦しさへつながっている。
目の前で繰り返されるすり抜けは、
一つの便利な技だけで成り立っているのではない。
大きな魔力、詠唱を省く力、
迷宮側の支えが重なっている。
フランたちが苦戦したのは、
同じことに気付かず攻撃していたからではない。
相手には、
それだけ崩しにくい条件が用意されている。
第5章 師匠はなぜすぐ見抜けなかった? 隠されていた時空魔術
鑑定に出た数値と、目の前の強さが合わない
師匠には鑑定がある。
それなら、すり抜ける能力も
最初に分かるのではないか。
見ている側としては、そんな疑問が浮かぶ。
相手の情報を得る力が
何度も助けになってきたからこそ、今回も頼りたくなる。
けれど、リッチとの戦いでは、
手に入った情報そのものに落とし穴がある。
Web原作のリッチは、
鑑定偽装によって本来の能力を隠している。
最初に見えていたものが、
持っている力の全てとは限らない。
時空魔術を知らないまま攻撃をすり抜けられれば、
師匠から見ても説明のつかないことが起きている。
持っていないはずの手段で
避けられるような食い違いがある。
このため、師匠が術を見落としたとだけ考えると、
状況から少し離れてしまう。
表示された一覧のどこかに答えがあり、
それを読み飛ばしたという話ではない。
相手が見せている情報と、
実際の行動が一致していない。
鑑定が役立つ場面を知っているほど、
そのずれが厄介になる。
師匠は、見えている数値に比べて
相手の威圧感が大きいことや、
受けた打撃が強いことにも違和感を持つ。
情報をそのまま信じ続けているわけではない。
数字を見た安心と、現場で感じる危険が噛み合わず、
どこかに隠されたものがあると考え始めている。
同じ数値でも、
何を測っているかが違えば比較は難しくなる。
さらに、そもそも見せられた数値が偽られていれば、
計算の前提から揺れてしまう。
師匠が慎重に考えても、
その足場を相手が操作している。
フランへ伝える判断にも、
確かめ切れない部分が残る。
ここは、師匠がいつもより頼りなく見える場面というより、
頼りにしてきた手段まで
敵の側に利用される場面と感じられる。
鑑定を使うから安心できるはずなのに、
使った後にも分からなさが増える。
フランへ危険を伝えたい師匠ほど、
その食い違いを放置できなくなる。
ジャンの知識が、見えなかった術へ届く
原作で最初に見えるレベルは23で、
偽装が解かれた後には71が示される。
途中で急にそこまで成長したのではなく、
隠していた強さが表へ出ている。
この開きは、数字の大きさへの驚きだけでは済まない。
師匠が最初に考えていた相手像を、
戦闘の途中で組み直さなければならなくなる。
フランへ届く攻撃の重さにも、
ようやく説明が付いてくる。
原作では、リッチが偽装を解くことで、
隠されていたスキルが見えるようになる。
その中から、すり抜ける現象を
時空魔術へ結び付けたのはジャンになる。
情報が増えたことと、
その情報が何を示すか分かったことが、
ここでつながっている。
能力名を知るだけでは、
目の前の動きまで説明できないことがある。
ジャンは、時空魔術の中にある
ディメンション・シフトを知っている。
その知識が、師匠の見ていた現象へ結び付く。
師匠一人で答えを出せない間にも、
同行者の経験が別の入口を持っている。
死霊術師としてのジャンを見ていると、
アンデッドの扱いが大きな強みに見える。
けれど、この局面では
相手の術を見抜く知識も助けになる。
自分の配下を動かすだけではなく、
師匠が対処すべき能力を伝える役割がある。
戦場での支えは、攻撃の威力だけでは量れない。
一方、ジャンが知っているからといって、
最初から何でも見通せたわけではない。
原作では、彼の魂魄眼もアンデッドには使えず、
相手を探る手段には制約がある。
それぞれが得意なものを持ちながら、
それぞれに見えない部分が残る。
その穴を、一緒にいる相手が少しずつ埋めている。
ようやく術へ名前が付くと、
すり抜けは説明のつかない現象ではなくなる。
だからといって
フランの傷や疲れが戻るわけではないが、
次に何へ働きかけるかは考えられる。
師匠にとっても、
フランへただ耐えてほしいと願う時間から、
具体的に防御を崩そうとする時間へ進んでいく。
第6章 ジャンは何を見抜いた? すり抜ける防御を崩した連携
| 動く人物 | 担った役割 |
|---|---|
| フランたち | 戦いを続ける時間を支える |
| ジャン | 回避の術を見抜く |
| 師匠 | 時空魔術を奪う |
| ジャン | 回避できなくなった相手を浄化する |
術を特定する役割と、使えなくする役割
リッチが何を使っているか分かっても、
そのまま剣が当たるようになるわけではない。
名前の付いた術を、
今度は使わせない形へ変える必要がある。
ここで師匠とジャンが行うのは、
それぞれが別の攻撃を勝手に打ち込むことではなく、
一つの機会へ行動を合わせることになる。
Web原作では、
ジャンがディメンション・シフトを見抜いた後、
師匠が時空魔術を封じると伝える。
ジャンには、再び杖を使えるかを確かめている。
何を奪うかだけでなく、
その直後に何を届かせるかまで、
二人の間で話がつながっている。
このやり取りで少しほっとするのは、
師匠が杖の威力だけを当てにしていないところ。
ジャンの状態も気にしながら、
使えるかを問うている。
強い手段があっても、
それを使う相手の負担は残る。
自分の隣で戦ってきた仲間を、
便利な攻撃の出どころとして扱っていない。
ただ、相談できれば
好きな瞬間に動ける状況でもない。
周囲の敵がフランの動きを妨げ、
リッチの攻撃も来る。
原作では、ステファンの介入が敵側の動きを変え、
リッチの注意がジャンへ向く。
その隙が、
師匠たちの行動を合わせる機会へつながる。
敵の注意を引く者、
周囲の圧力を減らす者、
術へ手を出す者がいる。
最後に光を放つ一人だけを見ていると、
そこまでの働きは見えにくい。
すり抜ける本体へ攻撃を届かせるために、
まず近くで戦い続けられる状況が必要になる。
防御への対処は、その周りから始まっている。
師匠が使うスキルテイカーは、
相手のスキルを奪う能力になる。
この場面で狙ったのは、
回避を可能にしていた時空魔術。
骨の硬さを減らしたり、
剣の攻撃力だけを上げたりしたのではない。
リッチが攻撃を外すために使っていた選択肢を、
相手から取り去っている。
同じ浄化が、今度はリッチへ届く
攻撃を合わせるための短い相談ができるのも、
二人がまだ持ちこたえているからになる。
師匠が何をするか伝え、ジャンが応じる。
その間にフランの戦いが途切れてしまえば、
考えた手を出す場所そのものがなくなる。
大きな技が目を引く場面でも、
その手前には、
倒れずに相手へ向き合う時間が続いている。
そのため、スキルを奪えたという結果は、
それだけで直接の撃破を表すわけではない。
相手を弱らせる行動にも、
傷を付けるものと、
傷を受けない手段を失わせるものがある。
ここでの師匠は後者を担い、
ジャンが攻撃を届かせる段階へつないでいる。
ジャンが杖を起動し、
師匠がそれに合わせて時空魔術を奪う。
以前はやり過ごせていた浄化の光が、
今度はリッチを包む。
この前後の変化は、同じ力でも、
相手が回避できるかどうかで結果が変わることを
伝えてくれる。
通じなかった手段を、捨てずに生かしている。
ここでリッチが戸惑う姿には、
それまでとは違う立場が表れる。
フランたちは、
何が起きているか分からないまま攻撃を外されてきた。
今度はリッチのほうが、
いつもどおり避けられないことへ対応を迫られる。
相手の余裕が崩れるところに、
それまでの苦戦が少し報われる感じがある。
もちろん、スキルテイカーがあれば
誰にでも同じ対処が簡単にできる、
という話ではない。
ここでは相手の隠していた能力を知り、
対象を選び、ジャンの攻撃と合わせている。
最後に使った能力の名前だけでは、
その前に積み重ねた情報や協力まで置き換えられない。
フランも、この場面で
突然いなくなったわけではない。
相手の攻撃を受けながら戦い、
仲間の行動が届く時間を支えている。
自分の一振りが決定打にならなくても、
その戦いが他の手段へつながっている。
斬れない相手を前にした頑張りが、
空振りだけで終わっていないところに救いがある。
すり抜けを崩したのは、
一人が急に全てを上回った瞬間というより、
別々に持っていた手がかりと力が合った瞬間になる。
ジャンが術を見抜き、
師匠が使えなくし、浄化が届く。
第7章 攻撃が届くようになったら終わり? 無敵の防御とリッチ自身の強さ
すり抜けを止めても、強敵は目の前に残る
ようやくリッチへ攻撃が届く。
それまで何を試しても反応がなかったことを思うと、
ここで一気に安心したくなる。
けれど、回避の手段を失わせることと、
相手を倒し切ることは続きながらも別になる。
守りを崩せた後には、
その攻撃を受けるリッチ自身がまだ残っている。
Web原作でも、浄化を受けたリッチが、
その場で簡単に消えてしまう展開にはなっていない。
時空魔術がなくなったから、
全ての強さまで失ったわけではない。
すり抜ける術が目立っていた間にも、
相手には他の力がある。
それまで見えていなかった問題が、
次の形で迫ってくる。
ここを一緒にしてしまうと、
浄化が届いたのに終わらないことまで、
再び同じ術にかわされたように感じられる。
けれど、攻撃が触れない段階と、
触れた攻撃へ耐えたり対抗したりする段階では、
起きていることが違う。
リッチの防御が崩れた成果は、
後の危機によって消えるものではない。
強敵との戦いでは、
一つ解けたら全て解決してほしいと思うことがある。
苦戦の時間が長いほど、その気持ちは強くなる。
フランたちの場合も、
もう十分頑張ったのだから、そろそろ終わってほしい。
それでも相手が残るところに、
この戦いの厳しさがある。
ただ、最初と同じ
何も分からない状態へ戻ったわけではない。
攻撃が通る状況を作れたことで、
フランたちが相手へ働きかける道は開いている。
見えるのに届かない、
という行き詰まりを越えたことは大きい。
次の危険があることと、
ここまでの対処が無駄になることは重ならない。
振り返ると、
フランの最初の斬撃が失敗したことも、
師匠が別の攻撃を試したことも、
相手を知る過程にある。
最初から正解の技を選べなかったから苦戦した、
というだけでは片付かない。
そもそも正解を考えるための情報を、
リッチは隠している。
攻め方を変え続けた時間が、 届く一手へつながる
もし威力を上げることだけに答えを求めていたら、
フランには、
もっと強く振れという負担ばかりが残ってしまう。
今回変わったのは、
その振り方だけでは届かなかった条件のほうになる。
頑張る側へさらに力を求めるのでなく、
敵の守りへ手を伸ばせたことが、
この転機の嬉しさにつながっている。
その相手に対して、
フランたちは分からないまま戦いを続け、
受けた手応えから疑問を増やし、
仲間の知識へつないでいる。
苦しいのは、その間も傷つく側が自分たちになること。
考え直せばよいと外から言えるほど、
次を試す時間に余裕はない。
だから、師匠が術を奪った一手には、
能力の便利さ以上のものが積み重なっている。
そこへ至るまでのフランの接近、
通じなかった魔術、ジャンの準備がある。
最後に成功した行動だけが、
切り離されて降ってきたわけではない。
別々の失敗や観察が、
同じ相手へ向かってつながっている。
リッチが見せる余裕も、
仕組みが分かる前と後では違って見える。
何にも傷つかない存在だから
笑っているように見えていた姿に、
回避の術へ頼れるという条件があった。
その条件を外されると、
相手も対応を変えなければならない。
フランたちだけが一方的に戸惑う時間が、
ようやく終わり始める。
もちろん、それで受けた傷が消えたり、
疲れた体が元へ戻ったりするわけではない。
師匠は引き続きフランを守らなければならず、
ジャンにも負担が残る。
相手へ届いたことを喜びながら、
その場にいる全員が無事でいてほしいとも思う。
一撃の成功だけでは収まらない気持ちが残っている。
リッチへの攻撃がすり抜けたのは、
時空魔術のディメンション・シフトで、
一時的に異空間へ逃れていたため。
その回避を続けられる余力と、
仕組みを隠す力が、無敵に見える姿を作っていた。
師匠とジャンはそこへ手を入れ、
届かなかった攻撃を、届く攻撃へ変えている。
ずっと相手の前で空を切っていた攻撃に、
ようやく手応えが返る。
フランの力が足りないから、
何をしても駄目という話ではなかった。
相手が何をしているかを知り、
仲間と動くことで変えられる状況がある。
その転機には、剣を振り続けていたフランにも、
少し息をつける時間があってほしくなる。


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