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【転生したら剣でしたⅡ】怨念炉とは何?30万GPで作ったリッチ強化装置の正体

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怨念炉は、アンデッドが放つ怨念を集めて魔力へ変え、リッチへ膨大な魔力を供給するダンジョン設備である。
だが30万GPを投じた代償として、増えたのは魔力だけではなく、リッチ自身の憎悪・恨み・記憶欠落まで段階的に強まっていった。
つまり怨念炉の正体は、リッチを強化した装置であると同時に、元の人格を「悪霊の王」へ近づけていった危険な増幅装置なのである。

  1. 第1章 結論|怨念炉とは何?30万GPで作ったリッチ強化装置
    1. アンデッドの怨念を吸収し、魔力へ変えてリッチへ送り続ける設備
    2. 増えたのは魔力だけではない|憎悪・恨み・記憶欠落まで始まった
  2. 第2章 なぜ30万GPも使った?リッチが怨念炉を欲しがった背景
    1. 魔石まで残さずGPへ変換|レイドスへの復讐を最優先していた
    2. 迷宮を強くする設備ではなく「自分を強くする装置」を選んだ
  3. 第3章 怨念炉はどうやってリッチを強くした?魔力供給だけではない仕組み
    1. 怨念を魔力へ変換し、ダンジョンマスターへ継続供給する
    2. 「無尽蔵」に見えたのは、本人のMPと迷宮側の補給が重なっていたから
  4. 第4章 怨念炉を壊すとリッチはなぜ弱くなる?ジャン側が最優先で狙った設備
    1. 第78話で怨念炉が破壊された瞬間、余裕だったリッチが初めて取り乱す
    2. ところが怨念は消えなかった|破壊後の残滓を再吸収して逆に暴走する
  5. 第5章 怨念炉はリッチの人格へ何をした?最初は「憎しみが増えた」だけだった
    1. 設置半年後には本人が異変へ気付いていた|力と一緒に恨みまで濃くなる
    2. 「一瞬の空白」が週二日へ拡大|監視映像で自分の別人格を見る
  6. 第6章 記憶欠落はどこまで進んだ?「悪霊の王」が主人格へ変わる
    1. 一日の半分を失い、最後は半年近く元人格が表へ出なくなる
    2. 「吾輩」「くかかか」は元からの本性ではない|演技だった悪霊の王が本物になる
  7. 第7章 怨念炉はリッチを強くしたのか、壊したのか?師匠も最後まで疑問を残した
    1. 破壊すれば弱体化する、それでも最後は何万もの怨念を直接吸収した
    2. 第85話で師匠も引っ掛かった|日記を書いた「僕」は最後まで眠ったままだったのか

第1章 結論|怨念炉とは何?30万GPで作ったリッチ強化装置

アンデッドの怨念を吸収し、魔力へ変えてリッチへ送り続ける設備

怨念炉は、浮遊島のダンジョン内に設置された特殊設備。
簡単に言えば、アンデッドが放つ怨念を集め、
それを魔力へ変換し、
ダンジョンマスターであるリッチへ供給する装置になる。

原作Web版第84話「Side Diary」で、
リッチ本人がこの機能をかなり具体的に記録している。
周囲の怨念を吸収して魔力へ変える。
さらに自分自身と怨念炉を接続することで、
魔力だけでなく怨念まで継続して取り込めると考えていた。

だから怨念炉は、
単なる「魔力を作る炉」ではない。
迷宮内に大量に存在するアンデッドから怨念を集め、
その負の感情を燃料へ変え、
最後はリッチ自身の強化へ戻す循環装置になっている。

浮遊島には、
地表のゾンビやスケルトンだけでなく、
空中にはボーン・バード、
地下には高位アンデッドまで大量に存在する。
長期間ダンジョン内へ死霊が蓄積された環境なら、
怨念を集める材料にも事欠かない。

しかもリッチ自身が、
怨念と非常に相性の良い高位死霊。
後の原作Web版第79話「怨念」で本来の能力が開示されると、
レベル71、
MP7467、
魔力4312。
死霊支配と死霊魔術は最大級で、
さらに怨念吸収、怨念変換、大怨霊、不浄の理まで持っている。

つまり怨念炉だけが強いのではない。
怨念を集めて魔力へ変える装置と、
怨念そのものを吸収して自分の力へ変えられるリッチが
組み合わさったことで、
非常に強い強化循環が成立した。

この仕組みは、
原作Web版第78話「VSリッチ」の戦闘でも直接示される。
ジャンは正面からリッチを倒そうとするだけでなく、
自分の配下を別働隊として迷宮内部へ送り込み、
施設そのものを破壊させている。

戦闘中、
突然ダンジョン全体を揺らすほどの爆発が起こる。
それまで余裕を崩さず、
フランたちを弄ぶように笑っていたリッチが、
そこで初めて露骨に取り乱す。

怨念炉の魔力が消えていく。
自分の悲願が失われる。
そう叫び、
怒りを剥き出しにする。

ジャンはその直後、
リッチが弱体化するはずだと説明する。
理由は明確。
リッチの強みの一つが、
ダンジョンから継続的に受けていた魔力供給だから。
その大本を壊したことで、
今までのような潤沢な魔力補給が止まる。

この一場面だけでも、
怨念炉が飾りではないことが分かる。
リッチが何年もかけて作った迷宮設備の中でも、
戦闘能力を直接支える中枢に近い装置だった。

しかし、
怨念炉の記事で本当に重要なのはここからになる。
この装置は、
リッチを強くしただけでは終わらなかった。

増えたのは魔力だけではない|憎悪・恨み・記憶欠落まで始まった

怨念炉の危険性は、
設置した本人の日記を追うとよく分かる。
設置後、
最初に現れた変化は期待通りの強化だった。

3624年4月12日。
リッチは、
怨念炉のおかげで自分の力が日々増していると記録している。
このままなら、
復讐に必要な力を得る日も近い。
本人にとっては、
30万GPを投入した甲斐があった状態になる。

ところが同じ記録の中で、
すでに別の変化へ気付いている。
自分の中にある怨念そのものが、
以前より明らかに強くなっている。

リッチには怨念を力へ変える性質がある。
だから本人も、
怨念が増えること自体は
能力増強として受け止めている部分がある。

問題は、
力だけでは済まなかったこと。
本人は続けて、
憎しみや恨みまで増しているように感じると残す。

つまり怨念炉は、
リッチへ魔力だけを供給していたわけではない。
燃料になっている怨念自体も、
接続されたリッチへ流れ込んでいた。

そして3624年11月3日。
今度は感情ではなく、
記憶へ異常が現れる。

本人は、
最近「記憶がない瞬間」があると日記へ書き、
自分から怨念炉の影響を疑っている。

ここが非常に重要になる。
後世の誰かが、
「怨念炉のせいだったのでは」と推測しただけではない。
設備を使っていたリッチ本人が、
強化と精神異常の両方を体感し、
怨念炉との関連を疑っていた。

その後、
記憶欠落は一瞬では済まなくなる。
原作Web版第84話の日記では、
3626年2月24日には、
一週間のうち二日分も記憶がない状態まで進む。

本人はダンジョンの映像記録を確認し、
自分が覚えていない時間の行動を見る。
そこに映っていたのは、
暴虐、冷酷、残忍という言葉が似合う、
自分とは別人のような「悪霊の王」。

さらに症状は進み、
一日の半分を覚えていない状態になり、
最後には元の人格が半年近く表へ出ないところまで侵食される。

だから怨念炉の正体を、
「リッチへ無限に近い魔力を与えた便利装置」
だけで終えると大事な部分を落とす。

確かに強くした。
実際、破壊すれば魔力供給が落ち、
ジャンも弱体化を狙って最優先で壊している。

一方で、
長期間接続したリッチの中へ
怨念そのものを蓄積させ、
憎悪と恨みを増幅し、
記憶欠落から人格侵食まで進めた可能性が高い。

30万GPで手に入れたのは、
強大な魔力だけではない。
復讐へ必要な力と引き換えに、
元の自分まで削っていく危険な装置だったのである。

第2章 なぜ30万GPも使った?リッチが怨念炉を欲しがった背景

魔石まで残さずGPへ変換|レイドスへの復讐を最優先していた

怨念炉の30万GPという数字が重いのは、
リッチが最初から大量のGPを持っていたわけではないから。
原作Web版第84話の日記を読むと、
ダンジョンを少しずつ拡張しながら、
魔獣を倒して地道にGPを稼いでいたことが分かる。

その途中、
浮遊島周辺へレッサー・ワイバーンなどが接近する。
倒せば魔石が残る。
魔石は本来、
強力な魔道具を作る材料として使えるため、
普通なら保存しておきたい資源になる。

リッチ自身も最初は、
魔道具へ利用するため残そうかと考えている。
ところがダンジョンへ吸収させた場合、
素材の中では魔石が最もGPへ変換しやすい。

レッサー・ワイバーン程度でも、
魔石一つで20GP。
そこでリッチは、
せっかく手に入れた魔石を保存せず、
全てダンジョンへ吸収させる判断をする。

この場面から、
怨念炉が衝動買いの設備ではないことが分かる。
将来使える魔道具素材を捨て、
長期間GPを積み上げてでも
手に入れたい施設だった。

本人がそこまで急いで強化を続けた背景には、
レイドス王国への復讐がある。
リッチは元々、
秘密実験施設で人間として扱われず、
両足と右腕を失うほど人体実験を受け、
最後には廃棄対象として大量の怨念を注入された。

リッチとして目覚めた後、
直接の加害者だった研究者は破壊した。
それでも、
施設を作り、
実験を続けていた国家そのものへの恨みは残る。

そのためダンジョンマスターになった後も、
平穏な住処を作るだけでは終わらない。
死霊作成工房を取得。
アンデッド戦力を増加。
地下迷宮を十階層まで拡張。
島表面から上空まで支配範囲を広げ、
航空戦力まで整える。

怨念炉は、
その強化計画の延長線上にある。

守るためだけではない。
いつかレイドスへ復讐するため、
自分自身の魔力を大幅に押し上げる設備が必要だった。

30万GPという大金を投入したのも、
怨念炉を単なる便利施設ではなく、
復讐を現実に近づける切り札として見ていたからになる。

迷宮を強くする設備ではなく「自分を強くする装置」を選んだ

ダンジョンマスターがGPを使う先は、
怨念炉だけではない。
階層を増やす。
罠を置く。
結界を強化する。
死霊作成設備を取る。
新しいアンデッドを生み出す。

実際リッチも、
それまでに複数の設備へGPを使っている。
3620年には念願だった死霊作成工房を取得。
ここからダンジョン産アンデッドを
継続して作れるようになる。

さらに迷宮を全十階層へ拡張。
地表から上空約50メートルまでを支配範囲へ入れ、
侵入者が島へ着地する前から
ダンジョン側の攻撃を受ける形へ変える。

第2期の浮遊島攻略で、
フランたちが島へ到達する前から
ボーン・バードの大群に襲われるのも、
こうして空域まで防衛範囲へ組み込まれているから。

地上には森と幻影罠。
地下にはアンデッドと複数階層。
空には航空戦力。
迷宮そのものの防衛力は、
怨念炉以前からかなり高くなっていた。

それでもリッチは、
次に30万GPを怨念炉へ投入する。

ここが重要。
壁をさらに厚くするのでもない。
階層を増やすのでもない。
新しい大量戦力だけを作るのでもない。

選んだのは、
集めた怨念を魔力へ変え、
自分自身へ接続して供給する設備だった。

つまり強化対象が、
「ダンジョン」から「リッチ本人」へ移っている。

これは後の戦闘を見ると非常に分かりやすい。
原作Web版第78話で、
ジャンの配下が怨念炉を破壊した瞬間、
リッチは迷宮設備を一つ失った程度では済まない反応を見せる。

それまでフランたちを見下ろし、
攻撃さえ余裕でかわしていたのに、
爆発音が響いた途端に怒声を上げる。
怨念炉の魔力が消えることを感じ取り、
自分の悲願まで失われると叫ぶ。

ジャンも、
破壊した狙いを明確に説明する。
リッチの強みの一つは、
ダンジョンからの魔力供給。
その大本を壊した。
だから弱体化するはずだと読む。

ここで、
30万GPの価値が戦闘として回収される。
高額だから凄いのではない。
その設備が壊れただけで、
ダンジョンマスター本人の戦力が明確に落ちるほど
深く接続されていたから価値が大きい。

しかも皮肉なのは、
リッチが復讐のために求めた強化が、
本人自身の憎悪までさらに膨らませたこと。

最初は、
レイドスを倒すために強くなりたい。
そのためGPを集める。
魔石まで吸収させる。
30万GPを投入して怨念炉を設置する。

設置後、
狙い通り力は増える。
ところが怨念まで増える。
憎しみも強くなる。
記憶が飛ぶ。
最後には別人格が主人格へ近づいていく。

だから30万GPは、
単に高級設備を買った数字ではない。

リッチが復讐を優先し、
素材を捨て、
迷宮運営を続け、
自分自身まで強化しようとした執念の数字になる。

そして同時に、
その30万GPで手に入れた力が
元の人格を壊し始める。

怨念炉の記事で面白いのは、
ここに明確な反転があること。

リッチは、
復讐するため自分を強くしたかった。
怨念炉は確かにその願いを叶えた。
しかし力が増えるほど、
「復讐したい自分」そのものまで
怨念へ飲み込まれていった。

つまり30万GPで買ったのは、
復讐の切り札であると同時に、
自分を悪霊の王へ近づける装置でもあったのである。

第3章 怨念炉はどうやってリッチを強くした?魔力供給だけではない仕組み

怨念を魔力へ変換し、ダンジョンマスターへ継続供給する

怨念炉の仕組みでまず押さえたいのは、
単純な「巨大MPタンク」ではないこと。
原作Web版第84話「Side Diary」で、
リッチ本人は怨念炉について、
周囲の怨念を吸収して魔力へ変える施設として記録している。

しかも、
作っただけでは終わらない。
リッチ自身と怨念炉を接続し、
迷宮内へ蓄積された怨念と魔力を
自分へ流し込める構造にしている。

これが強い。
浮遊島には地表のゾンビやスケルトン、
空域のボーン・バード、
地下階層の高位アンデッドまで
長期間にわたって大量の死霊が存在する。

アンデッドが増えれば、
その場へ怨念も蓄積する。
普通なら不気味な副産物で終わるものを、
怨念炉は回収し、
魔力へ変換して再利用する。

つまり浮遊島では、
アンデッドがいる。
怨念が発生する。
怨念炉が吸い上げる。
魔力へ変える。
その魔力がダンジョンマスターへ戻る。

死霊の数が多いほど、
迷宮そのものがリッチの燃料庫へ近づいていく。
だから怨念炉は、
単なる設備ではなく
浮遊島全体の死霊環境を利用する中枢になる。

第2期序盤でジャンが語るように、
浮遊島は地下へ入る前からダンジョン領域。
上空のボーン・バードも、
地表のゾンビも、
地下の死霊も同じ迷宮側の戦力になる。

そこへ怨念炉が加わると、
「敵が多い」こと自体が
リッチへの補給へつながる。
倒されても怨念が残る。
迷宮内へ死霊が多いほど、
装置へ集められる材料も増える。

そしてリッチ本人も、
怨念との相性が異常に高い。
原作Web版第79話で鑑定偽装を解除すると、
本来の能力が一気に露出する。

レベル71。
HP4863。
MP7467。
魔力4312。
死霊支配と死霊魔術は最大級。
冥府魔術はLv8。
さらにユニークスキルとして
怨念吸収、怨念変換を持っている。

エクストラスキルには、
大怨霊と不浄の理。
つまりリッチは、
怨念をただ浴びる存在ではない。
吸収し、
変換し、
自分の力へ変える側でもある。

ここへ怨念炉が接続される。
相性が悪いはずがない。
怨念を集める装置と、
怨念を力へ変える個体が
ほぼ一体化している。

戦闘で師匠が最初に鑑定した時、
リッチの表示はレベル23、
MP2467、
魔力1098だった。
それでも目の前に立つだけで
肌が粟立つような寒気を覚え、
表示値と威圧感が噛み合わない。

師匠はその時点で、
「本当にこの程度なのか」と疑っている。
その違和感の答えの一つが鑑定偽装。
そしてもう一つが、
ダンジョンマスターとして
外部から魔力供給を受けられる環境だった。

本来の能力が出た後は、
時空魔術のディメンション・シフトを使い、
攻撃を異空間へ逃して回避する。
本来なら消費が大きく、
連続使用しにくい術でも、
リッチの膨大な魔力と詠唱破棄があれば
実戦で何度も使える。

さらに、
レジェンダリースケルトンを十体召喚。
その直後に蟲型アンデッドまで大量召喚し、
高位呪文を間髪入れず連発する。

ヘル・ブラスト。
ヴェノム・バレット。
グラビティ・プレッシャー。
召喚と高位魔術を重ねても、
簡単には息切れしない。

フランのHPは一気に半減。
師匠のヒールも追いつかない。
この「魔力を惜しまない戦い方」を支えていたのが、
本人の能力値だけではなく、
ダンジョン側からの供給だったのである。

「無尽蔵」に見えたのは、本人のMPと迷宮側の補給が重なっていたから

リッチの強さが厄介なのは、
一度の大技が強いからではない。
高位魔術、
召喚、
時空魔術、
再生、
死霊支配を
同時並行で回せるところにある。

普通の術者なら、
強い術を使うほど次の手が減る。
ところがリッチは、
召喚を重ねても、
攻撃魔術を連発しても、
さらに防御や時空魔術まで使える。

ジャンは、
この強さの大本を正面から殴るのではなく、
迷宮設備側へ切り込む。
自分の配下を別働隊として動かし、
フランたちがリッチを引き付けている間に
施設破壊を進めさせる。

ここが第78話「VSリッチ」の重要場面。
戦闘の最中、
突然ダンジョン全体を揺らすほどの爆発が起こる。
今まで余裕たっぷりだったリッチが、
そこで初めて明確に取り乱す。

「怨念炉の魔力が」
「吾輩の悲願が」
という反応からも、
単なる補助設備ではないことが分かる。

ジャンは、
これで弱体化するはずだと説明する。
リッチの強みの一つが
ダンジョンからの魔力供給。
その大本を破壊したからだ。

つまり怨念炉は、
リッチのMPを増やす装置というより、
戦闘中も迷宮側から補給を受け続けるための
基幹設備に近い。

だから30万GPの価値がある。
高位魔術一発の威力を上げる装置ではない。
長期戦そのものを有利にする。

召喚を続ける。
大技を撃つ。
回避する。
再生する。
また召喚する。
それでも補給が続く。

フランたちから見れば、
「いつ魔力が尽きるのか」が見えない。
公式で無尽蔵に近い魔力を持つ強敵として映るのも、
こうした構造があるからになる。

ただし、
その補給源は安全ではなかった。
怨念を燃料にしている以上、
供給されるのは魔力だけではない。

そこが次章の破壊場面で、
一気に表へ出ることになる。

第4章 怨念炉を壊すとリッチはなぜ弱くなる?ジャン側が最優先で狙った設備

第78話で怨念炉が破壊された瞬間、余裕だったリッチが初めて取り乱す

怨念炉の重要性が最も分かりやすいのは、
設置時の日記ではなく
実際に壊された時の反応になる。

原作Web版第78話「VSリッチ」。
フラン、師匠、ジャン、ウルシは、
迷宮深部でリッチ本人と戦っている。
リッチは最初から本気を見せない。

召喚したアンデッドを前へ出し、
フランたちがどう戦うかを眺める。
攻撃されても、
時空魔術で異空間へずらし、
余裕を崩さない。

「やれるものならやってみろ」
という態度で、
完全に上から戦況を見ている。

フランたちの魔力は減る。
師匠も半分近くまで消耗。
ジャンもウルシも同様。
正面戦闘だけなら、
時間が経つほどリッチ側が有利になる。

ところがジャンは、
最初から別の手を動かしていた。
配下のアンデッドを
ダンジョン内部へ潜ませ、
リッチとつながる施設を破壊させていた。

そして戦闘途中、
腹へ響くほどの大爆発。
迷宮全体が大きく揺れる。

その瞬間、
リッチの態度が変わる。
それまでの「くかかか」と笑う余裕が消え、
何をしたと怒鳴る。

ジャンは、
自分の配下が成功したと答える。

リッチはすぐ、
怨念炉の魔力が消えていくことへ気付く。
自分の悲願まで消えると叫び、
明確な焦りを見せる。

この反応だけでも、
壊された設備が
ただの罠や一階層ではないと分かる。

ジャンも、
破壊の狙いを師匠へ説明する。
リッチは弱体化するはず。
強さの一つが、
ダンジョンから受ける魔力供給だから。
その大本を壊した。

つまりジャンは、
リッチ本人のHPを削る前に、
「補給線」を切ったことになる。

魔力供給が続く限り、
高位魔術も召喚も時空魔術も
長時間回される。
ならば本人ではなく、
供給装置を先に止める。

この判断は、
ジャンが以前一度この浮遊島へ侵入し、
内部構造や死霊戦力を研究していたこととも噛み合う。

単に火力で押すのではない。
死霊術師として、
リッチが何を燃料にしているかを読んで
戦闘外から崩している。

そのため、
怨念炉破壊はリッチ戦の大きな転換点になる。

ところが怨念は消えなかった|破壊後の残滓を再吸収して逆に暴走する

普通なら、
ここで怨念炉を壊した時点で
リッチの強化は終わる。

魔力供給源を失った。
弱体化する。
残った戦力で押し切る。
そう考えたくなる。

実際、
師匠も「付け入る隙がある」と判断する。
しかし怨念炉には、
もう一段厄介な問題があった。

装置を壊しても、
そこへ蓄積されていた怨念そのものは消えない。

原作Web版第79話「怨念」。
ジャンが冥王の祝福を起動し、
師匠がスキルテイカーで
リッチの時空魔術を奪う。

逃げ道を失ったリッチを、
青白い浄化の光が包む。
本人も慌て、
自分の怨念が消えると叫ぶ。

ここで終われば、
ジャン側の狙い通りだった。

ところが光が消えた後、
リッチはまだ立っている。
しかも周囲から、
大量の魔力と怨念が
一気にリッチへ流れ込み始める。

何が起きたのか説明するのが、
ジャンではなく死霊喰らいのステファン。
ジャンは冥王の祝福で生命力を削られ、
地面へ倒れ、
フランからスタミナポーションを受けている状態だった。

ステファンは、
不浄の理が他のアンデッドから怨念を吸い上げ、
自分の力へ変える能力だと説明する。

そして、
破壊された怨念炉に蓄積されていた怨念が
迷宮内へ散ったまま残っていると明かす。

ここが重要。
怨念炉は壊れた。
装置としての魔力供給は止まった。
だが何年も集めてきた「燃料」は、
まだ迷宮内に残っていた。

リッチは、
その残留怨念を不浄の理で吸収する。
さらに怨念吸収、
大怨霊まで噛み合い、
取り込むほど力が上がっていく。

ジャン側は、
補給線を切ることには成功した。
しかし破壊した炉から漏れた燃料を、
リッチ本人が直接飲み始めた形になる。

その量が尋常ではない。
ステファンは、
何万もの怨念が集まっていると見る。

リッチは叫び続け、
まともな言葉すら失う。
黒い瘴気のようなオーラが
身体から猛烈な勢いで膨れ上がる。

師匠が魔術を撃ち込んでも、
その黒いオーラに弾かれる。
近づくことすら危険。
ステファンは、
実体化するほど濃密な怨念で、
生者が呑み込まれれば
一気に命を失うと警告する。

ここで、
「怨念炉を壊せば弱くなる」という単純な話が反転する。

装置としては壊した方がいい。
実際、
通常の魔力供給は止まる。

しかし蓄積した怨念まで
同時に浄化できなければ、
リッチ本人が直接吸収して
一時的にもっと危険な状態へ入る。

つまり怨念炉は、
稼働中は魔力供給装置。
破壊後は、
大量の怨念を迷宮へ放出する危険物でもあった。

そしてこの暴走状態は、
次の「人格侵食」の話へそのままつながる。

何年も怨念炉と接続し、
怨念を取り込み続けたリッチ。
戦闘では、
一度に何万もの怨念を吸収しただけで
正常な思考を失う。

ならば日記で起きていた
憎悪の増加や記憶欠落も、
単なる偶然ではない。

怨念炉がリッチを強くしたことと、
元の人格を壊していったことは、
別々の現象ではなく
同じ仕組みの表裏だったのである。

第5章 怨念炉はリッチの人格へ何をした?最初は「憎しみが増えた」だけだった

設置半年後には本人が異変へ気付いていた|力と一緒に恨みまで濃くなる

怨念炉を設置した直後、
リッチが最初に感じたのは成功だった。
30万GPを費やした設備が動き、
周囲へ溜まる怨念を魔力へ変換し、
自分へ継続して供給する。
復讐へ必要な力を得るという狙い通り、
日を追うごとに能力が増していく。

原作Web版第84話「Side Diary」では、
3624年4月12日の記録で、
本人自身が怨念炉の効果を実感している。
力が増えている。
魔力も以前より扱いやすい。
復讐へ近づいているという手応えまである。

だが同じ記録の中で、
本人はもう一つの変化へ気付く。
自分の中の怨念そのものが、
以前より明らかに濃くなっている。

さらに、
憎しみと恨みまで増している。
ここが危険だった。
怨念炉は魔力だけを渡す装置ではなく、
燃料にしている怨念そのものも
接続先であるリッチへ流していた。

本人は元々、
レイドス王国を憎んでいる。
秘密実験施設で人間扱いされず、
両足と右腕を失い、
最後には廃棄対象として
大量の怨念を注入された。

だから復讐心そのものは、
怨念炉を作る前からある。
問題は、
その感情が設備稼働後に
本人の意思を越えるほど増していくことだった。

3624年11月3日。
異変は感情だけでは終わらない。
本人は日記へ、
最近「記憶がない瞬間」があると書き残す。

何かをしていたはずなのに、
その間だけ思い出せない。
気付けば時間が進んでいる。
本人は真っ先に、
怨念炉の影響ではないかと疑う。

ここはかなり大きい。
後から師匠が推測したのではない。
設備へ接続していた本人自身が、
力の増加と精神異常を同時に体感し、
怨念炉を原因候補として見ている。

それでも停止しない。
復讐へ必要な力が欲しい。
レイドスへ届くには、
もっと強くならなければならない。

この判断が、
後の記憶欠落をさらに深くする。
最初は一瞬。
まだ自分で違和感に気付ける程度。
だが怨念炉からの供給を続ける限り、
元の人格へ流れ込む怨念も止まらない。

リッチにとって怨念は、
嫌な感情であるだけではない。
怨念吸収や怨念変換、
大怨霊、不浄の理といった能力と噛み合い、
実際の戦闘力へ変わる。

だから簡単に捨てられない。
憎しみが増えるほど強くなる。
強くなるほど復讐へ近づく。
復讐へ近づくほど、
怨念炉を止める理由がなくなる。

この循環そのものが、
元人格を少しずつ追い詰めていった。

「一瞬の空白」が週二日へ拡大|監視映像で自分の別人格を見る

3626年2月24日。
怨念炉設置から時間が経つと、
記憶欠落は明確な異常へ変わる。
本人の日記では、
一週間のうち二日分ほど
自分に記憶がない状態まで進んでいる。

一瞬なら勘違いで済ませられる。
だが二日となれば無理。
その間にもダンジョンは動き、
アンデッドは命令を受け、
何者かがリッチの身体を使っている。

そこで本人は、
ダンジョン機能に残る映像記録を確認する。
自分が覚えていない時間に、
自分自身が何をしていたのかを見るためだった。

映像の中にいるのは、
同じリッチ。
同じ骨の身体。
同じ迷宮の支配者。

それでも、
本人は自分と同じ人物には見えない。
行動は暴虐。
判断は冷酷。
侵入者や敵へ向ける態度は残忍。
日記を書いている「僕」とは、
明らかに違う人格が表へ出ている。

本人はその姿を、
まさに「悪霊の王」と見る。
ここで皮肉なのが、
その悪霊の王という振る舞い自体、
最初は自分で作った演技だったことになる。

元の人格は、
ジャンを初めて見た時に大笑いした。
髑髏の装飾。
ぼろぼろのローブ。
大仰な口調。
死霊術師らしい芝居がかった態度。

それを見て、
自分もリッチらしく振る舞おうと考えた。
「僕」では格好が付かない。
なら「吾輩」と名乗る。
笑い方も「くかかか」にする。

最初は遊びに近い。
ところが怨念炉を使い続けた後、
監視映像に映る自分は
本当にその「悪霊の王」になっている。

しかも本人は、
ここで完全に抵抗するわけでもない。
いつか自分が飲み込まれると理解しながら、
復讐を果たすなら
甘さのない別人格の方が向いているのではないかと考え始める。

つまり壊れ始めたことに気付いていても、
復讐を捨てられない。
自分を守ることより、
レイドスへ報復することを優先する。

怨念炉が怖いのは、
外から無理やり人格を奪っただけではないところ。
本人自身の復讐心と結び付き、
「壊れてでも力が欲しい」という選択を
少しずつ受け入れさせていった。

ここまで来ると、
怨念炉は強化装置という言葉だけでは足りない。
力を与え、
憎悪を増やし、
記憶を奪い、
最後には元人格が自分から退く理由まで作った。

30万GPで手に入れた設備が、
復讐の準備と人格崩壊を
同時に進めていたのである。

第6章 記憶欠落はどこまで進んだ?「悪霊の王」が主人格へ変わる

一日の半分を失い、最後は半年近く元人格が表へ出なくなる

記憶欠落は、
週二日で止まらない。
3626年10月6日の記録では、
本人は一日の半分ほど
記憶がない状態まで進んでいる。

起きている時間の半分を、
自分が何をしていたのか分からない。
それでも身体は動く。
ダンジョンも動く。
アンデッドへの命令も続いている。

つまり、
元の人格が眠っている間も
「悪霊の王」側が迷宮を運営している。

この頃の日記で興味深いのは、
本人が治療や怨念炉停止を最優先にしていないこと。
むしろレイドスへどう復讐するかを、
かなり具体的に考え始める。

浮遊島を使って王都へ接近する。
奇襲で王族を狙う。
初戦で殺した者は、
アンデッド兵として戦力へ回す。
全面戦争なら不利でも、
奇襲なら勝算があると計算する。

つまり復讐心は、
感情だけではなく作戦へ変わっている。
その一方で、
その計画を進めている人格の大半は
日記を書く「僕」ではなくなりつつある。

そして3627年3月19日。
元人格が次に意識を取り戻した時、
前回から半年近く経過していた。

本人自身が、
もう主人格は完全に向こう側だと認める。
かつては「記憶が飛ぶ瞬間」があった。
次に週二日。
次に一日の半分。
最後には半年。

段階を追って見ると、
怨念炉が人格へ与えた影響が
かなり具体的に見える。

しかもその半年の間、
迷宮は止まっていない。
防衛設備も動く。
アンデッドも活動する。
復讐計画も進む。

つまり元人格が消えていても、
悪霊の王側は自立して行動できるところまで育っていた。

ここが単なる二重人格という言葉では足りない部分。
元人格は、
自分が身体の主導権を失っていく過程を
日記へ書き続けている。

自分がいつ消えるか分からない。
次に目覚めるかも分からない。
それでも復讐計画は進んでいる。

怨念炉で力を得た代わりに、
その力を使う「自分」そのものが
別の人格へ置き換わっていく。

これが30万GPの最も重い代償になる。

「吾輩」「くかかか」は元からの本性ではない|演技だった悪霊の王が本物になる

現在のリッチだけを見ると、
「吾輩」と名乗り、
「くかかか」と笑い、
侵入者を見下す姿が
元からの性格に見える。

だが原作Web版第84話の日記では、
この口調の始まりがはっきりしている。

3622年10月10日。
浮遊島へ初めて本格的に侵入してきたのがジャン。
グリフォン・スケルトンを従え、
鳥系アンデッドの防衛網を突破し、
地上の森へ入り込む。

リッチは幻影罠とアンデッドを使い、
ジャンを少しずつ消耗させる。
最後は逃げられるが、
戦闘そのもの以上に、
ジャンの見た目と振る舞いが強く印象へ残る。

髑髏を使った装飾。
ぼろぼろのローブ。
大げさな言葉遣い。
自分を大物の死霊術師らしく見せる立ち振る舞い。

リッチはそれを見て、
久しぶりに大笑いする。
生まれて初めてかもしれないほど笑ったと書く。

そして、
自分も死霊術師らしく見せたいと考える。
「僕」では格好が付かない。
なら「吾輩」。
笑い方も「くかかか」。

この時点では、
完全に本人の遊び。
ジャンの真似をして、
悪霊の王らしい仮面を作っただけになる。

だから後に、
その仮面へ本当に飲み込まれる展開が怖い。

怨念炉設置後、
憎しみが増す。
記憶が欠ける。
映像記録の中で、
暴虐な自分を見る。
最後には半年も元人格が戻らない。

口調は同じ。
名乗りも同じ。
だが中身は、
最初の演技とは別物になっている。

そして原作Web版第79話の戦闘では、
怨念炉破壊後に散った残留怨念を
リッチが直接吸収する。

何万もの怨念。
黒い瘴気のようなオーラ。
通常攻撃を弾くほどの強化。

その代わり、
ステファンからは
まともな思考が残っていない状態だと見抜かれる。

ここまで来ると、
悪霊の王という人格すら
怨念へ押し流されている。

最初は「僕」。
次に演技としての「吾輩」。
その後、怨念炉で残忍な別人格が強まり、
最後は大量の怨念そのものに近い暴走状態へ入る。

同じリッチでも、
段階ごとに中身が変わっている。

だから怨念炉の記事で重要なのは、
「人格が壊れた」と一言で済ませないこと。

力が増える。
憎悪が増える。
記憶が飛ぶ。
別人格を監視映像で見る。
その別人格へ身体を奪われる。
最後は大量怨念で思考まで失う。

この順番がある。

さらに本人の日記では、
人格侵食を自覚した後も
怨念炉を即座に停止した形跡がない。
そこが装置の怖さを増している。

危険だと分かる。
記憶が飛ぶ。
別人格まで見える。
それでも復讐へ必要な力を手放せない。

だから怨念炉は、
外からリッチを壊しただけではない。
復讐心そのものを利用し、
本人に使い続けさせる装置になっていた。

この選択が続いたからこそ、
単なる副作用だった異変が、
やがて生活時間そのものを奪う人格交代へ進んだのである。

だから怨念炉は、
リッチを最強へ近づけた設備であると同時に、
「誰がその力を使うのか」という部分まで
変えてしまった装置なのである。

第7章 怨念炉はリッチを強くしたのか、壊したのか?師匠も最後まで疑問を残した

破壊すれば弱体化する、それでも最後は何万もの怨念を直接吸収した

怨念炉について最後に残るのは、
「結局これはリッチを強くした装置なのか、それとも壊した装置なのか」という疑問になる。
答えは片方ではない。
戦闘面では間違いなく強化装置であり、
精神面では元の人格を削っていった可能性が高い。

原作Web版第78話「VSリッチ」では、
その両面のうち、まず「強化装置」としての役割がはっきり描かれる。
フラン、師匠、ジャン、ウルシが迷宮深部で戦っている最中、
ジャンの配下が別働隊として施設破壊に成功。
腹へ響く爆発と大きな揺れが起こり、
それまで余裕だったリッチの態度が一変する。

直前までのリッチは、
高位アンデッドを次々に召喚し、
フランたちへ次はどんな策を見せるのかと余裕を崩さない。
師匠たちの魔力が半分近くまで減っても、
自分だけはまだ戦いを楽しんでいるように見える。
ところが爆発直後、
怨念炉の魔力が消えていくと察した瞬間だけは明確に動揺する。

ジャンも、
これでリッチは弱体化するはずだと読む。
リッチの強みの一つが、
ダンジョンから受ける魔力供給だから。
その大本を壊した以上、
高位魔術や召喚を延々と回す優位は失われる。

ここだけなら、
怨念炉は「壊せば攻略が進む強化設備」で終わる。
だが第79話「怨念」で状況がひっくり返る。

ジャンが冥王の祝福を使い、
青白い浄化の光でリッチを包む。
リッチは自分の怨念が消えると苦しみ、
そのまま昇天するかに見える。
ところが光が消えても、
まだリッチは立っている。

しかも周囲から、
大量の魔力と怨念が一気に流れ込んでくる。
説明したのは死霊喰らいのステファン。
破壊された怨念炉に蓄積されていた怨念は消滅せず、
迷宮内へ散ったまま残っており、
リッチが不浄の理でそれを回収していると見抜く。

さらにリッチには、
怨念吸収と大怨霊がある。
怨念を取り込むほど力が上がる。
つまり装置としての怨念炉を失っても、
そこに何年も貯め込んだ「燃料」まで消えたわけではなかった。

その結果、
リッチは何万もの怨念を一度に吸収する。
黒い瘴気のような気配が身体から噴き出し、
師匠の魔術まで弾くほど強化される。
しかし同時に、
ステファンはまともな意思など残っていない状態だと見る。

ここが怨念炉の怖さを一番分かりやすく見せる場面になる。
稼働中は魔力を与える。
壊されても蓄積した怨念が残る。
最後はその怨念をリッチ自身が直接飲み込み、
強さと引き換えに思考まで失う。

30万GPで作った装置は、
最後の最後までリッチを強くした。
ただしその強さは、
本人が自分の意思で扱える力ではなくなっていた。

第85話で師匠も引っ掛かった|日記を書いた「僕」は最後まで眠ったままだったのか

戦いが終わった後も、
怨念炉の話はそこで切れない。
原作Web版第85話「ダーズ」で、
浮遊島を離れた師匠が
リッチについて考え直す場面がある。

師匠が気にしたのは、
最後に戦ったリッチが
本当に日記を書いていた人格と同じだったのかという点になる。

日記の中のリッチは、
最初から残忍だったわけではない。
秘密実験施設で人間として壊され、
大量の怨念を注入されてリッチになった後も、
「僕」として日記を書き、
年越しには食べられないパンやスープまで用意している。

浮遊島へジャンが初めて侵入した時も、
髑髏飾りや大げさな振る舞いを見て大笑いし、
「自分もリッチらしくしよう」と考えた。
現在の「吾輩」「くかかか」という話し方さえ、
最初はジャンを見て作った演技だった。

その人格が変わり始めるのは、
怨念炉を設置した後。
3624年4月には、
力が増す一方で憎しみや恨みまで強くなったと自覚。
同年11月には、
記憶がない瞬間があると書き、
本人自身が怨念炉の影響を疑っている。

さらに3626年2月には、
一週間のうち二日も記憶がない。
映像記録を確認すると、
自分が覚えていない時間には
暴虐で冷酷な「悪霊の王」が身体を動かしている。

やがて一日の半分を失い、
3627年3月には元人格が半年近く表へ出なくなる。
そこまで進んでから、
フランたちとの最終戦へつながっていく。

だから師匠も、
怨念炉を破壊した後なら
元の人格へ戻る余地がなかったのかと考える。
破壊直後に激怒していたのは明らかに残忍な方の人格。
しかしその後、
怨念炉からの継続的な侵食が止まったなら、
日記を書いていた「僕」が戻る可能性はなかったのか。

答えは断定されない。
しかも実際には、
破壊直後のリッチは
迷宮中へ散った何万もの怨念を一気に吸収してしまう。
元人格が戻る余白が生まれる前に、
今度は大量の怨念そのものへ呑み込まれたとも読める。

この流れを見ると、
怨念炉がリッチへ与えたものは単純ではない。

30万GPを使い、
復讐のための力を得た。
ダンジョンから魔力供給を受け、
高位魔術と召喚を長時間維持できるようになった。
実際、ジャン側も最優先で壊すほど危険な設備だった。

その一方で、
設置後には憎悪が増え、
記憶が飛び、
別人格が育ち、
最後には元人格が半年も表へ出なくなった。

さらに戦闘後の疑問は、
後の物語にも完全には消えない。
ずっと先の原作では、
浮遊島で散ったリッチの怨念が別の死霊へ残り、
フランたちへの憎悪を叫ぶ場面まである。
それだけリッチに蓄積された怨念は、
一度倒せば綺麗に消える程度のものではなかった。

だから怨念炉を、
「リッチの無限魔力装置」とだけ覚えると半分しか見えていない。

確かに強化した。
しかも30万GPに見合うほど、
戦闘能力を大きく押し上げた。
だが同じ装置が、
本人の憎悪と恨みも増幅し、
元の人格が身体を使える時間まで奪っていった。

リッチが欲しかったのは、
レイドスへ復讐するための力だった。
怨念炉はその願いを叶えた。
しかし最後には、
復讐を望んでいた「本人」が
その力を使う主体ですらなくなっていく。

そこまで含めて見ると、
30万GPで作ったリッチ強化装置の正体は、
最強の補給設備であると同時に、
持ち主そのものを怨念へ近づけていった危険な装置だったのである。

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