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【ブラッククローバー2nd】モルゲンの死亡原因は? ナハトを生涯縛る「悪魔契約の代償」

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モルゲンは、ナハトが進めた最上位悪魔との儀式を止めに入り、兄の命を救って亡くなった。
助かったナハトに残ったのは、自分の行動で大切な弟を失ったという消えない後悔。
兄を見捨てなかったモルゲンの最期から、ナハトが自分を許せずにいる胸の内へとたどる。

原作29巻のネタバレあり。

第1章 モルゲンの死亡原因は? 兄を救って命を落とした最期

モルゲンの死に至る儀式

人物

儀式での立場

結果

ナハト

儀式を進めた兄

弟に救われて生存

モルゲン

儀式を止めた弟

兄を救って死亡

ルキフグス

召喚された悪魔

儀式の中断で退く

最上位悪魔との儀式を止めに入ったモルゲン

兄を助けたのに、助けに入った弟のほうが
亡くなってしまう。モルゲンの最期には、
そんなやりきれなさが残る。
ナハトの腕の中にいる弟を前にすると、
儀式が終わった安堵よりも、
どうして二人で帰れなかったのかという気持ちが
先に来る。強敵を退ければ助かる、
という展開にはならなかった。

モルゲンの死亡につながったのは、
ナハトが最上位悪魔との間で進めた従魔の儀。
悪魔を従わせるための危険な儀式に弟が割って入り、
兄を救う代わりに命を落としている。
病気や寿命による死でも、
兄弟同士が敵になって争った末の死でもない。
止めようとした側が犠牲になっているところが、
胸に引っ掛かる。

ナハトが呼び出した相手はルキフグス。
すでに悪魔の力を扱っていた兄にとっても、
手に負える存在ではなかった。
儀式の場にいた家族まで命を奪われ、
ナハト自身も危機に陥る。
その場を終わらせるために動いたのが、
危険を止めるよう訴えていたモルゲンになる。

原作の過去では、モルゲンは
儀式に使われていた腕輪を壊し、
召喚を中断している。
ルキフグスをそのままにしていたら、
兄も助からなかったかもしれない。
ただ、儀式を止めることと、
止めた本人が無傷で帰れることは別だった。
兄を救えた成功と、弟を失った結果が、
同じ場面に重なってしまう。

ここでいう「命と引き換え」は、
助けに入った結果、モルゲンが命を落としたということ。
ナハトが弟の命を差し出す条件で
契約を成立させた、という話ではない。
弟を生贄にして悪魔の力を得た、
と受け止めてしまうと、
兄を止めに来たモルゲンの行動も、
兄が後悔している出来事も違ってしまう。

直接の死因を細かな魔法の仕組みだけで
説明するより、危険な儀式を強制的に終わらせ、
その場で命を落とすほどの被害を受けた、
と捉えるほうが展開に沿っている。
腕輪を壊した行為を、
誰でも安全に使える解除方法にはできない。
モルゲンは、命の危険がある場所へ踏み込んで
兄を助けている。

兄の手元にあるのは、
これから従わせたい相手を呼ぶための道具。
その道具を弟が壊してしまうため、
ナハトの望んだ契約はそこで断たれる。
強い悪魔を手に入れるはずの時間が、
命からがら生き残る時間へ変わっている。
ルキフグスの力を獲得した見返りとして
弟が死んだ、とつなげることもできない。

また、モルゲンはナハトを襲っていた悪魔を
倒しきったわけではない。
敵を討ち取ってから自分も倒れる勝利とは異なり、
まず呼び出された相手をその場から退けている。
敵がいなくなっても失われた命は戻らず、
残された兄の前には弟の身体がある。
危機を脱した場面なのに、
喜べる終わり方にならない。

助かったナハトと、帰ってこなかった弟

それまで儀式を進めていたナハトは、
いざ弟が倒れると、手に入れようとしていた力では
何も解決できなくなる。
悪魔を呼ぶことはできても、
目の前で失われていく弟の命を
元に戻すことはできない。
力を求めた時間の先に、この無力さが待っていた。
その落差が、兄の後悔をいっそう重くしている。

モルゲンは兄を救うために動いている。
ナハトに勝つためでも、
兄の過ちを人前にさらすためでもない。
儀式へ乗り込んだ弟の行動が、
最後まで兄の生存につながっている。
その相手を、ナハトは直前まで退けようとしていた。
助けられたこと自体が、
聞き入れなかった弟の言葉を思い返させる。

この場面でナハトが失ったのは、
戦力として頼れる光魔法の使い手だけではない。
自分のことを知り、同じ家で育ち、
違う生き方を選んでも声をかけてくれた
双子の弟を失っている。
ほかの魔法騎士がそばにいても、
その関係を代わることはできない。
弟の空席は、強い仲間が増えれば
埋まるものではなかった。

抱きとめられるほど近くにいても、
ナハトは弟を救えない。
双子の間にあった気まずさや反発が消えたとしても、
それだけで傷が治ることはない。
この距離の近さがつらい。
仲直りすれば間に合うような時間を、
儀式は残してくれなかった。
兄の気持ちが変わるより先に、
弟の命が尽きてしまう。

一方で、モルゲンの選択を、
兄を苦しめるために残した罰のように見るのもつらい。
彼が止めたかったのは儀式であり、
救おうとしたのはナハトの命。
助けた後で兄が自分を責め続けることまで
望んでいた、とは言えない。
弟の行動と、その行動を受け止めきれない
兄の苦しさには、食い違いが残っている。

ナハトの側からすれば、
自分が始めなければ起きなかった悲劇になる。
弟の側からすれば、
その場にいる兄を見捨てられなかったのかもしれない。
同じ出来事でも、兄には消せない過失が残り、
弟には助けたい相手がいた。
どちらか一方の気持ちだけでは、
あの最期の重さは言い尽くせない。

死亡原因への答えは、最上位悪魔との儀式を止め、
兄を救った際に命を落としたこと。
その先に残るのが、
なぜナハトは危険へ踏み込み、
モルゲンはそこまでして止めに来たのかという疑問になる。
弟の死が突然降ってきた災難ではないからこそ、
儀式までの兄の足取りも、
簡単には読み飛ばせなくなる。

第2章 ナハトはなぜ危険な 悪魔の儀式に踏み込んだ?

ファウスト家に受け継がれていた 悪魔との関わり

今のナハトは、危険を見極め、
敵の動きに目を配る副団長として登場する。
その姿から過去へ戻ると、
自分の力を過信して悪魔を呼び出した青年との違いに戸惑う。
若い頃から慎重に振る舞ってきたわけではない。
現在の冷静さの裏には、
取り返しのつかない失敗を知っている人の
怖さもにじんでいる。

原作29巻の回想で明かされるファウスト家は、
悪魔について研究を重ねてきた家系。
ナハトは家の裏側にあった営みを知り、
自分の影魔法がそこで求められていると知る。
誰かが偶然持ち込んだ誘惑に一度だけ乗ったのではなく、
身近な家族が認める道として、
悪魔との関わりへ進んでいく。

善良なモルゲンと比べられるような場所から、
自分の才能が歓迎される場所へ移る。
その変化は、ナハトにとって
心地よかったのかもしれない。
周囲の役に立つ弟とは違うところで、
自分にもできることがある。
危険な知識に近づく怖さより、
得意な力を伸ばす面白さのほうが
勝っていったように映る。

モルゲンとヤミが魔法騎士として活動する一方で、
ナハトは悪魔に関する知識と実力を伸ばしていく。
同じ年代の三人が、同じ場所で
腕を競っていたわけではない。
兄にも兄の手応えがあり、
弟の誘いを受けなくても自分の道はあると
感じていたのかもしれない。
その別々の道が、家の地下で衝突する。

しかも、ナハトには実際に
悪魔を従わせる才能があった。
無謀な挑戦を繰り返して何もできなかった青年ではなく、
四体の悪魔との契約を重ね、
力を使いこなしている。
現在もギモデロたちを使役しているように、
その適性そのものは本物。
成功していた経験が、
次も成功するという気持ちを強めてしまう。

自分には向いていない、と早い段階で気づけたなら、
先へ進まなかったかもしれない。
けれど、ナハトの場合は、
できてしまうことが次の挑戦への足場になっていた。
力が足りずに失敗しただけではなく、
力を得てきたから危険の大きさを見誤った。
そこに、単なる無知では片づかない怖さがある。

家族から認められていたことも、
判断を鈍らせた可能性がある。
ひとりで禁じられた遊びを始めたのなら、
止める人の声も届きやすかったかもしれない。
実際には家の営みとして受け入れられ、
さらに強い相手へ挑む流れがあった。
その中で弟の制止だけが、
自分を邪魔する言葉に聞こえてしまったのだろうか。

力を手にしていたナハトが踏み越えた一線

ルキフグスは、これまで扱ってきた悪魔と
同じ感覚で向き合える相手ではなかった。
最上位という立場の違いは、
呼び名の強そうな響きだけでは終わらない。
儀式を行う側が準備を整えていても、
人間の都合で収まってくれるとは限らない。
その隔たりを、ナハトは召喚してから思い知らされる。

従魔の儀は、悪魔を呼んだ瞬間に
安全な主従関係が完成する仕組みではない。
相手を従わせる過程そのものに危険があり、
ナハトが望んだからといって
相手が従う保証もない。
四体を扱えていたことと、
さらに上の存在を扱えることの間には大きな距離があった。
過去の成功だけでは、その距離を測れなかった。

両親も儀式に関わっていたからこそ、
ナハトの中には、家で受け継いできた知識があれば
何とかなるという安心もあったのかもしれない。
けれど、家族が認める手順と、
悪魔を安全に扱える手順は重ならなかった。
自分を選んだ家の人々まで目の前で失うため、
失敗の責任を外へ向けることも難しくなる。

若いナハトが求めた刺激と、
今のナハトが示す警戒心を並べると、
人が変わったように映るのも無理はない。
現在の彼は、悪魔の力を便利な道具として
軽く勧めているわけではない。
危険を知る者としてアスタを導く立場にいる。
教えられる知識の中には、
本人が最も高い代償を払って覚えた怖さも含まれている。

儀式の場で家族まで被害を受けると、
挑戦の失敗は本人だけの問題では済まなくなる。
やめておけばよかった、と思っても、
呼び出した相手が待ってくれるわけではない。
ナハトの自信が恐怖に変わる速さと、
周囲に被害が及ぶ速さの差が残酷。
気づいた時には、止めるために
誰かが動かなければならなくなっている。

その前に、モルゲンは止めに来ていた。
事故が起きるまで誰からも
危険を知らされていなかった、という展開ではない。
兄は弟の言葉を聞いたうえで、儀式を続けてしまう。
ナハトに残った後悔には、
悪魔の強さを読み違えた失敗だけでなく、
あの時に弟の声を聞けたはず、
という悔しさも混じっていそうに感じる。

力を求める場面そのものは、
この作品の中に何度もある。
アスタも仲間を助けるために危険へ踏み込む。
ただ、若いナハトの挑戦には、
他人のために急がなければならない事情より、
自分なら届くという高揚が強く見える。
同じ危険な一歩でも、
何を背負って踏み出したかによって、
後に残る感情が変わってくる。

ナハトを追い詰めたのは、
才能がなかったという事実ではなく、
その才能をどこまで使ってよいか
見極められなかったことになる。
弟の制止は、兄を弱いと決めつける声ではなかった。
実際に守ろうとしていたのは、
兄が自分で危険へ差し出しかけていた命。
その声に応じる機会を逃したことが、
後のナハトから離れなくなっている。

第3章 モルゲンはなぜ ナハトを見捨てなかった?

兄の行動に賛成できなくても、 失いたくはなかった

兄のしていることを止めたい気持ちと、
兄そのものを嫌いになることは同じではない。
モルゲンが儀式へ来た場面には、
その違いがよく出ている。
禁じられた行いを見過ごせないから止める。
それでも、失敗した兄をその場へ置き去りにはしない。
厳しく向き合うことと、助けることが、
彼の中で離れていない。

モルゲンは魔法騎士として、
人を守る側に立っていた。
家族が危険な行いをしていても、
身内だから構わないという態度ではいられない。
かといって、規則に反したから
家族ではなくなるわけでもない。
家の中で起きていることを知った彼には、
魔法騎士としての立場と、
弟としての気持ちの両方があった。

この二つを、どちらか一方だけに寄せると、
モルゲンの動きが少し遠くなる。
職務だけで乗り込んだのであれば、
兄へ呼びかける切実さが薄れる。
家族への甘さだけなら、
儀式を止めるために踏み込んだことが説明しにくい。
大切な兄が間違ったことをしている。
その両方を抱えたまま、その場へ来ている。

自分を止めに来た弟を、
ナハトは素直に迎え入れない。
それでもモルゲンは、
兄から好意的に受け止められることを
助ける条件にはしていない。
言うことを聞いてくれなかったから、
もう知らないとはならなかった。
突き放されてもなお、
兄が死ぬかもしれない状況では手を伸ばしてしまう。
その近さが、兄弟らしくもある。

だからといって、モルゲンに
怖さがなかったとは言えない。
光魔法を使えることと、
最上位悪魔の前でも何も感じないことは別になる。
ナハトでさえ圧倒された相手のいる場所へ入るには、
大きな危険が伴う。
怖くなかったから動けたのではなく、
危険を前にしても兄を残せなかったのかもしれない。

善良な人物として紹介されるモルゲンも、
ただ優しい表情を浮かべているだけではない。
兄に反対し、危険な行為を止めようとし、
事態が悪化した後には自ら動いている。
相手に嫌われるかもしれない言葉も伝えているため、
彼の優しさには踏み込む強さがある。
それが、最後の行動にもつながっている。

兄への制止が届かなかった時点で、
モルゲンの選べる道は急に狭くなる。
言葉を重ねて説得する時間より、
まず儀式を止める必要が生まれてしまう。
弟が穏やかに話せるうちに
兄が聞いてくれれば、と感じるのはここ。
二人の話し合いが終わる前に、
悪魔の力が会話のできる状況そのものを奪っている。

危険な場所へ踏み込んだ弟の思い

モルゲンが壊した腕輪は、
兄と悪魔をつなぐ儀式の要になる。
兄の身体を引っ張って逃がすだけでは、
その場の危険が消えるとは限らない。
儀式自体を中断するという行動には、
目の前の兄を助けるために、
何を止めなければならないかを選んだ切迫感がある。
無事を願うだけでは間に合わない状況にいた。

ただし、その選択を、
最初から死を覚悟しきっていたと
断言することはできない。
命懸けで動くことと、死を望んでいることは違う。
結果として亡くなってしまったからこそ、
助けた後も生きていてほしかったと思ってしまう。
兄だけを戻して自分は消える、
そんな結末まで願っていたとは受け取れない。

弟が兄を責めずに助けたことは、
ナハトの行動に問題がなかったという話でもない。
危険を止めようとしたモルゲンの存在が、
むしろ兄の判断の危うさをはっきりさせている。
間違っているから止める。
間違えた相手でも、命まで失ってほしくはない。
彼はその二つを、行動で示してしまった。

それまで反発してきた兄が、
危険の中で弟に助けを求められるかどうかも、
この場面では待っていられない。
モルゲンは兄の態度が変わるのを
確かめてから動いたわけではない。
言葉でつながり直すより先に、
命をつなぎ止めようとする。
二人の間にあった気まずさより、
目前の危機のほうが速く迫っていた。

ナハトからすれば、
その助け方はなおさらつらく残る。
怒鳴られたり、見放されたりしていたら、
弟への反発で気持ちを逃がせた部分も
あったかもしれない。
実際には自分を救われてしまった。
儀式を進めた兄と、儀式を止めた弟の差を、
兄自身が誰より近くで突きつけられることになる。

それでも、モルゲンが優位に立つために
兄を助けたわけではない。
命を助けたことで兄を従わせようとした言葉も、
この場面の中心にはない。
兄に届いてほしかったのは、
自分を見てくれない悔しさだけではなく、
一緒に歩ける先への願い。
その思いが、兄を責める形ではなく、
最期の言葉へと残っていく。

この救出に、兄弟だから必ず助け合うという
決まりを感じる必要はない。
二人には反発もあり、選んだ道の違いもある。
それでもモルゲンは、あの兄を助けたかった。
その具体的な関係があるから、
善人という紹介だけでは届きにくい気持ちが
伝わってくる。
彼にとって救う相手は、名前のない誰かではなかった。

儀式を止めた後に兄へ残った苦しさは、
弟が望んで渡した重荷ではない。
モルゲンは兄を生きて帰すために動き、
ナハトはその助けを、
自分が弟を死なせた記憶と一緒に受け取ってしまう。
助けた側の思いと、助かった側の痛みがすれ違う。
そこに、悪魔を退けても終わらない
兄弟の悲しさがある。

第4章 正反対の双子でも、 モルゲンには大切な兄だった

周囲への接し方が違っていた ナハトとモルゲン

双子でも、二人は同じ性格には育たなかった。
若いナハトは好き勝手に振る舞い、
モルゲンは周囲を助ける側へ回っている。
同じ家に生まれても、
人への向き合い方は大きく違う。
今のナハトだけを知っていると、
その自由奔放な過去に驚く一方、
弟の真面目さには現在の兄へ通じるものも感じられる。

モルゲンは光魔法、ナハトは影魔法を使う。
ただ、この違いを、そのまま人間の善し悪しへ
置き換えることはできない。
影魔法でも人を救えるし、
ナハトの才能をモルゲンも認めていた。
弟が思い描いていたのは、
自分の光だけで国を守る姿ではなく、
兄の力も一緒に生かされる姿になる。

周囲の役に立つ弟が近くにいると、
兄は何をしても比べられているように
感じたのかもしれない。
モルゲンが兄を見下していなくても、
まぶしい相手を素直に見られない気持ちは残りうる。
ナハトの反発には、
弟が嫌いという一言だけでは収まりきらないものがにじむ。
近くにいるからこそ、距離を置きたくなることもある。

一方、モルゲンの側は、
兄の乱暴な面だけで才能まで見限ってはいない。
魔法騎士へ誘う行動には、
兄も人を守る力を持っているという信頼がある。
ナハトが自分で選んだ生き方をよしとしていても、
弟の目には別の道が見えていた。
二人が見ているナハト自身の姿に、
食い違いが生まれている。

弟から勧められることが、
兄には素直にうれしく響かなかった可能性もある。
立派に働く弟に正しい道へ連れ戻されるようで、
居心地が悪かったのだろうか。
けれど、モルゲンが誘っていたのは、
兄を自分より下へ置く場所ではない。
隣に並べる場所として魔法騎士の道を
差し出しているところが、後から切なく響く。

兄が受け入れなかったからといって、
弟の誘いが空っぽになるわけではない。
ナハトが悪魔の力に居場所を見つけるより前から、
モルゲンは兄の力を認めていた。
その承認は、もっと危険な相手を従わせれば
得られるものではなかった。
すでに弟から向けられていた気持ちへ、
兄が目を向けられなかったのかもしれない。

このすれ違いに、長い口論や明確な絶縁ばかりが
あったわけではない。
誘われても断る、ほめられても受け流す。
その積み重ねでも、
一緒に過ごせる道から離れていくことはある。
儀式の場で急に仲がこじれたのではなく、
それ以前から別々のほうを見ていた二人。
その距離を、最後に弟が命懸けで越えている。

兄を信じていた弟との、すれ違う距離

モルゲンが最期に伝えるのは、
ナハトと一緒に魔法騎士として国を守りたかったという願い。
兄が自分より弱いから支えてあげたい、
という形にはなっていない。
光と影、それぞれの力を持つ二人が
並んで働く先を望んでいる。
弟の願いの中に、ナハトの居場所は
初めから用意されていた。

それを知る場所が、
二人で未来を選べる場面ではないことがつらい。
兄が気持ちを受け止めても、
今から一緒に入団しようとは言えなくなる。
弟がどんな未来を待っていたのか、
失う時になってようやくはっきり届く。
知らなかったことより、もう応えられないことのほうが、
ナハトに深く残っていそうに感じる。

最期の願いを聞いてからでは、
兄がこれまで断ってきた誘いも違って響く。
一度だけの軽い声かけではなく、
一緒に働く日を待つ弟の気持ちが
あったのかもしれない。
断った時のナハトには、
また言われる機会があるように感じられただろうか。
その次の機会がなくなることを、
儀式の前に知ることはできなかった。

弟は善いことをしていて、
自分は悪いことをしていた。
その対比だけなら、ナハトの後悔は
過ちへの反省として収まったかもしれない。
実際には、自分を信じてくれていた相手を失っている。
兄の欠点を知っても、
なお一緒に働きたいと思ってくれた弟。
失ったのは家族であり、
そんなふうに自分を見る人でもあった。

ナハトが弟を愛していたことも、
悲劇を重くしている。
反発していたから大切ではなかった、とはならない。
好きな相手に冷たく接し、
助けを求められる時にはもう取り返せない。
その悔しさには、言わなかった言葉まで含まれてしまう。
双子という近さが、
思いを十分に伝えられる時間を保証してはくれなかった。

また、モルゲンは兄へ
自分の代役になるよう頼んでいたわけではない。
一緒に国を守りたかったという願いには、
モルゲン自身もそこにいる。
弟を失った後、兄だけで同じ道へ進んでも、
その願いがそのままかなうことはない。
ナハトが魔法騎士になった後も
苦しさを手放せないのは、
そこにもつながっているのかもしれない。

後にナハトが人を助ける側へ回る姿には、
弟の望みに近づいた部分がある。
けれど、その隣へ本人が戻ってくるわけではない。
道を変えることはできても、
二人で歩き始める日に戻ることはできない。
やり直す努力が、失った時間まで埋めてはくれない。
その違いが、現在のナハトの寂しさにも重なって見える。

もし二人が並んで働けていたら、
という想像が自然に浮かぶのは、
弟の願いが大げさなものではないからかもしれない。
世界のすべてを変える話より、
兄と同じ場所で誰かを助けたいという身近な望みに近い。
その小さな未来さえ残らなかったことが、
儀式の被害の大きさを、
数字ではない形で伝えている。

第5章 ヤミの相棒だったモルゲン ――失われた日常もつらい

三人の魔法と所属

人物

魔法

所属

モルゲン

光

灰色の幻鹿の団員

ナハト

影

現在は黒の暴牛副団長

ヤミ

闇

現在は黒の暴牛団長

「灰色の幻鹿」で ヤミと活動していたモルゲン

モルゲンを失ったのは、ナハトだけではない。
灰色の幻鹿で一緒に活動していたヤミにとっても、
彼は相棒のような存在になる。
兄を救った弟という姿に加え、
仕事へ出かけ、仲間と力を合わせていた
若い魔法騎士の姿が見えてくる。
あの儀式の前にも、彼の暮らしは続いていた。

現在のヤミを知っていると、
光魔法を使う穏やかなモルゲンとの組み合わせは
少し意外に映る。
ヤミの魔法属性は闇。言動も粗く、
誰にでも柔らかく接する人物とは違う。
それでも二人は同じ団で活動し、
相棒のような関係を築いている。
性格が似ていることだけが、
一緒に戦う条件ではなかった。

光と闇の組み合わせには、
それぞれ異なる力を持つ者が並ぶ姿がある。
モルゲンが兄と望んでいた光と影の魔法騎士も、
二人とも同じことができる関係ではない。
隣にいる相手の違いを消さなくても、
一緒に誰かを守ることはできる。
ヤミとの日々には、
そんな弟の願いに近いところも感じられる。

ただ、ヤミがいるから兄は必要なかった、
とはならない。
仕事の相棒と双子の兄は、
同じ役割を取り合う相手ではない。
モルゲンはヤミと活動しながら、
ナハトにも魔法騎士の道を勧めている。
今の仲間との関係を大切にすることと、
兄にも隣へ来てほしいと思うことが、
彼の中では両立していた。

ヤミとナハトには、
モルゲンとは別に若い頃からのつながりもある。
かつてはナハトとつるんでいたヤミが魔法騎士となり、
そこでモルゲンと親しくなる。
三人の関係は、
兄が知らない弟の友人というだけでは収まらない。
同じ相手を知っていても、
兄弟がヤミと過ごした時間はそれぞれ異なっている。

ナハトの前でヤミがモルゲンと組んでいた過去は、
弟の生き方が机上の理想ではなかったことも示している。
実際に誰かと力を合わせ、
魔法騎士として働けていた。
兄に勧めていた道には、弟自身の経験がある。
そこへ兄も来てほしかったと思うと、
勧誘の声が少し身近に聞こえる。

そのため、モルゲンの死後に
ヤミとナハトが向き合う場面にも、
説明しなくても共有される喪失があるように映る。
ヤミは弟を知らない人として、
兄に一般的な励ましをかけるわけではない。
一緒に働いてきた仲間を失った人でもある。
同じ人を亡くしても、
二人の立場や痛みは重なりきらないところが残る。

ナハトは儀式を始めた側で、
ヤミは相棒を失った側にいる。
この違いは、仲がよかったから消せるものではない。
顔を合わせること自体が、
ナハトには苦しかったかもしれない。
ヤミの存在には昔の友人としての近さと、
亡くなった弟を思い出させる近さの両方があり、
簡単に元の関係へは戻れなくなっている。

兄弟だけでは終わらない、 残された人たちの喪失

原作の過去では、弟の死後、
ヤミはナハトへ、いつか自分が団を持ったら
副団長になるよう声をかけている。
悲しみを片づけたら来い、という招き方ではない。
苦しさを抱えたナハトにも、
これから先に関われる場所を差し出している。
今の黒の暴牛の団長と副団長は、
その過去の延長に立っている。

ここでヤミがナハトを誘うことを、
すべて許された合図にしてしまうのも少し違う。
失われたモルゲンが戻るわけではなく、
兄の後悔が消えるわけでもない。
それでも、もう何もできない人として
ナハトを置き去りにはしない。
過去を取り消せなくても、
この先で一緒に動く相手にはなれる。
そんな声に聞こえる。

副団長という立場は、
弟のいた場所をそのまま引き継ぐ役ではない。
モルゲンは灰色の幻鹿でヤミと活動しており、
黒の暴牛の副団長を務めていたわけではない。
それでもヤミがナハトを誘ったことで、
弟の死を知る二人が、
新しい団で別の関係を築くことになる。
同じ人を失った後にも、残る人の時間は進んでいる。

一方、ナハトが団へ入ったからといって、
ヤミのような振る舞いに近づくわけではない。
長い潜入任務で団員にも姿を知られず、
表に立つ団長とは違う場所で働いている。
誘いを受けた後も、
近くに並んで笑えるだけの関係にはならなかった。
団長と副団長という肩書きの間にも、
言葉にしきれない過去が挟まっている。

モルゲンが生きていれば、
どの団で誰と活動していたかまでは分からない。
ただ、ヤミとの間にすでに
相棒と呼べるつながりがあったことは、
失われた未来を身近に感じさせる。
次の任務へ出ること、無事に帰ること、
兄にまた声をかけること。
大きな夢の前に、
続くはずの日常がいくつも途切れている。

そこには、戦いの中心にいなければ
軽い命という扱いもない。
モルゲンの出番が兄やヤミほど長くなくても、
二人の中には一緒に過ごした時間が残っている。
後から過去を知る視聴者にとっても、
現在の二人へつながる人として輪郭が増していく。
死の場面だけでは見えなかった空白が、
相棒という関係から伝わってくる。

ヤミがナハトへ残した誘いと、
モルゲンが兄へ向けていた願いは、
同じ言葉ではない。
それでも、ナハトには人を守る側で働ける力がある、
と見ている点では近い。
本人が自分を許せなくても、
そばにいた二人は兄の力まで否定していなかった。
その信頼と自己嫌悪の食い違いが、
ナハトの現在にも続いている。

第6章 ナハトはなぜ自分を許せない? 弟を失って残った後悔

自分が始めた儀式で、 弟が命を落とした苦しさ

弟が助けてくれたのだから、
その分まで幸せに生きればいい。
外からならそんな言葉も浮かぶけれど、
ナハトの中では簡単につながらない。
自分の選んだ儀式がなければ、
モルゲンはあの場所へ来なくてよかった。
助けられた事実と、
助ける必要を生んだ自分の行動が、
いつも一緒について回るからになる。

ナハトの後悔には、
いくつもの戻りたい場所がある。
ルキフグスを呼ぶ直前、弟から止められた時、
さらに強い悪魔へ手を伸ばそうとした時。
そのどこかで立ち止まれていたら、
という思いが生まれても不思議ではない。
ひとつの失敗を反省して次へ進むには、
失われた相手があまりにも近かった。

しかも、弟は兄を救う側へ回っている。
危険を生んだ自分が残り、
止めに来たモルゲンが亡くなる。
この入れ替わりが、ナハトの中では
受け入れがたいものになっている。
善い人ほど救われる、という望みが、
自分の体験では裏切られてしまった。
助かったことを喜ぶより先に、
なぜ弟ではなく自分なのかが迫ってくる。

モルゲンの最期の願いも、
慰めだけにはならなかったように見える。
兄と一緒に国を守りたかったという言葉を聞けば、
どれほど信じてもらっていたかが届く。
同時に、その未来を自分の行動で壊したという
痛みも増してしまう。
弟の優しさを思い出すほど、
自分がしたことを遠ざけられなくなる。

ナハトが自分を許さないと決める姿には、
忘れてしまうことへの怖さも
重なっていそうに感じる。
普通に暮らして笑える日が来たら、
弟の死を軽く扱ったことになるのではないか。
作中でそのすべてが説明されるわけではないけれど、
喜びを受け取ることから距離を置く姿には、
そんな張りつめた気配がある。

ただ、苦しみ続ければ、
亡くなった人へ埋め合わせができるわけでもない。
ナハト本人も、いくら働いても
モルゲンが戻らないことは分かっている。
それでも自分へ厳しさを向けるのをやめられない。
その姿は、計算して償いを終わらせる人より、
終わりの決め方が見つからない人に近く映る。

ここでナハトの痛みに寄り添うことと、
過去の行動をなかったことにすることは両立しない。
儀式を進めたのは兄で、弟は制止している。
その差があるからこそ、
現在の苦しさにもつながっている。
誰も悪くなかった事故として薄めるより、
後悔しても取り戻せない相手がいることのほうが、
ナハトの表情に重く残る。

悪を嫌う厳しさに、自分への怒りも重なる

今のナハトは、周囲への言葉も容赦がない。
悪いことをした人が後から少し善いことをしても、
それだけで認められるような空気に反発する。
その厳しさを知ると、
かつて好き勝手に生きていた自分へ向けた怒りも
混じっているのかもしれない、と感じる。
他人に言う言葉が、
そのまま過去の自分にも刺さっている。

弟は、初めから人を助ける側にいた。
それなのに、その弟が亡くなり、
自分は後になって人を助ける側へ回っている。
ナハトにとって、途中から変わった自分を
ほめられることは、素直に受け入れにくいのかもしれない。
変わる前に失わせた人がいる。
その記憶が、今の働きだけを見た評価に
引っ掛かってしまう。

だからといって、
現在の善行がすべて見せかけになるわけではない。
ナハトはスペード王国へ長く潜入し、
危険の中で情報を集め、仲間の作戦を支えている。
目立たない場所を選んでいても、
そこでの働きは人を救うことにつながる。
本人の自己評価が低いことと、
実際に誰かの助けになっていることは別に残っている。

アスタへ悪魔の力を教える役目も、
そのひとつになる。
力の危険を知っている人物が、
扱い方を伝える側に回っている。
昔の自分と同じ失敗をさせたくない気持ちも
あるのかもしれない。
ただし、アスタとリーベの関係まで、
若い頃のナハトと同じ形にはならない。
他人へ教える時間の中で、
彼自身の知らない選択も生まれている。

表へ出ずに動けば、
助けた相手から直接感謝されないこともある。
それでも任務を続けるナハトには、
感謝より先に果たしたい役目がある。
弟を救えなかった時間は変えられなくても、
今、危険にいる別の誰かへは手を伸ばせる。
その働きまで空っぽにはなっていない。

モルゲンに似た現在の外見にも、
弟との関わりを感じる人はいるはず。
ただ、髪型を変えた動機をひとつに断定し、
兄が弟へ完全になり代わったとするのは行き過ぎる。
影魔法を使い、
独自の判断で任務を進めているのはナハト本人。
似た姿の内側には、
弟とは違う過去を背負った兄がいる。

人を守る側へ進んでも、
弟と同じ穏やかさを持てるわけではない。
それでも、似ていないから
何も継げていないことにはならない。
モルゲンが信じていた兄の才能は、
影から仲間を助ける形で使われている。
本人が称賛を避けるほど、
その働きを知る側には、
もう少し自分を追い詰めずにいてほしい気持ちも残る。

ナハトの厳しい顔つきは、
冷たい人という一言では収まらなくなる。
誰かを失わせる悪への怒りと、
その悪にかつて近づいた自分への嫌悪が
重なっているからになる。
弟を忘れないために生きているようで、
自分が生きていることを許しきれない。
その苦しさが、
命を懸ける現在の戦いにも持ち込まれている。

第7章 ナハトを縛る「悪魔契約の代償」は、 弟を失った後も続く

命を懸ける戦いに重なる、モルゲンへの贖罪

最上位悪魔を前に、
ナハトが自分の命まで差し出すように戦う。
強い副団長が仲間のために踏ん張る場面でありながら、
過去を知ると、その危うさが気になる。
勝つために命を懸けているのか、
自分を許せないまま命を使おうとしているのか。
どちらかだけでは片づかないものが、
彼の戦いに重なっている。

アニメ2nd Season第4話「贖罪の日」で、
ナハトはリリスとナハマーに追い詰められる。
魔氷と魔炎を操る二体は、
簡単に攻撃を届かせられる相手ではない。
避け続けて時間を稼ぐだけでも、
いつまで持つのか分からない。
余裕のある作戦として立っているのではなく、
危機の中で選択を迫られている。

この戦いの最中に戻ってくる過去が、
モルゲンを失った記憶になる。
最上位悪魔の前で何もできなかった青年と、
今また最上位悪魔へ向き合う副団長。
力の差を思い知らされる状況に、
かつての儀式が重なる。
今度も善い人が犠牲になるのを
見ているだけではいられない。
その切迫感が、戦いを止めない彼から伝わってくる。

ここで相手にしている二体は、
過去の儀式で呼び出したルキフグスとは
別の悪魔になる。
弟の仇をその場で直接討つ、
一対一の復讐ではない。
目の前の悪魔がほかの人を害する前に止めようとしている。
過去の敵だけへ視線を固定せず、
今、被害を受けるかもしれない人へ向かっているところに、
現在のナハトがいる。

それでも、誰かを守ろうとする思いに、
自分へ罰を与える気持ちが混じっているようにも見える。
命を懸ける姿は頼もしい一方で、
その命をモルゲンが救ったことを思い出すと落ち着かない。
弟のために何かをしたい兄が、
弟の助けた兄自身を傷つけ続けてしまう。
そのすれ違いは、
敵の強さとは別の痛みを残す。

二体の悪魔との悪魔同化、
つまり悪魔の力と一体になる勝負にも、
引き下がれないナハトの必死さが出ている。
以前と同じく力を求める姿でも、
今は仲間が危険にさらされている最中にいる。
自分の可能性を試すために進めた儀式と、
ほかの人へ被害を出さないための戦いには、
背負っているものの違いがある。

ただ、現在の目的が人助けへ変わったからといって、
無茶のすべてを安心して見られるわけではない。
ナハト本人が自分の生存を後回しにするほど、
残る仲間の気持ちも気になる。
モルゲンを失って苦しむ彼を知った後では、
今度はナハトを失う人が生まれるのではないか、
と戦いの先まで不安になってしまう。

弟が助けた兄の命は、今も戦いの中にある

モルゲンは、ナハトの苦しむ姿を見たくて
命を救ったわけではない。
兄と一緒に国を守りたいという願いには、
生きて働くナハトの姿がある。
弟が願った未来と、
兄が自分に課している償いは、完全には重ならない。
だから、ナハトが命を使い切ろうとするたびに、
弟の声が届いてほしいような気持ちになる。

過去を悔やむことをやめれば、
すぐに晴れやかな顔で生きられる、
というほど簡単な傷でもない。
自分が止まらなかったことで弟を失った事実は残る。
新しい仲間ができても、
兄弟の時間をやり直せるわけではない。
現在のナハトは、過去を消した別人としてではなく、
その記憶を抱えたまま危険の中に立っている。

それでも、弟の死後の人生に、
人を救う働きが積み重なっていることまで消えてはいない。
潜入して集めた情報も、アスタに伝えた知識も、
敵の前で稼ぐ時間も、仲間が動く助けになっている。
ナハトが自分を認められなくても、
助かった側には助かった事実が残る。
兄を信じたモルゲンの願いに近い働きは、
すでに始まっている。

弟と同じやり方でなければ、
その願いへ応えられないわけでもない。
光の中で人を助けていたモルゲンに対し、
ナハトは姿を隠し、影から敵を探り、
仲間を支えている。
働く場所も言葉の柔らかさも違う。
けれど、違う力を持つ兄弟が
一緒に国を守りたいという願いには、
もともとその違いも含まれていた。

ナハトを縛っているものに、
悪魔が新しくかけた呪いを持ち出す必要はない。
彼自身の記憶だけで、
当時の声や選択は何度も戻ってくる。
戦えるほど強くなっても、
弟を失った自分には変わりない。
その苦しさを力で振り払えないところが、
敵の攻撃を受ける場面とは違うつらさを生んでいる。

タイトルの「悪魔契約の代償」として残るのは、
単に強い力を使った際の負担だけではない。
自分の才能を試した先で弟を失い、
助かった自分を許せなくなった日々が続いている。
儀式は腕輪が壊れた時に終わっても、
ナハトの中ではそこで起きた出来事が終わっていない。
新しい戦いにも、その痛みがついてくる。

一方、ナハトの人生を罰だけで埋めてしまうと、
兄を助けたモルゲンの思いまで行き場を失ってしまう。
死んで償えば決着する、とは受け止めにくい。
弟の望みには、
兄が生きて誰かを守る未来があった。
だからこそ、戦うナハトには役目を果たすだけでなく、
仲間のいる場所へ帰ってほしいと感じる。

モルゲンの死亡原因は、
兄が進めた危険な従魔の儀を止め、
兄を救ったことにある。
その最期を知ると、今のナハトが立っている姿には、
弟からつながった命も重なって見える。
自分を許せないままでも、
彼の手は別の誰かを助けている。
あの日に守れなかった弟の願いは、
兄の戦う現在から消えてはいない。

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