小雪は湊を好きになっても、ようやく心地よく過ごせるようになった友達関係を変えることに踏み出せない。
湊の「友達として」という言葉を聞き、恋心を抑えようとする態度が、近づきたい湊とのすれ違いにつながる。
桃香との交際を知った小雪は、今の関係を守ろうとして動かなかった自分と、消せない湊への思いに向き合う。
この先はアニメ第17話・
原作10巻までのネタバレあり。
第1章 小雪はなぜ湊に告白しなかった? 失いたくなかった友達の距離
小雪が告白へ進めなかった流れ
今の友達関係を失うのが怖い
話すのを偶然聞く
友達の距離へ戻ろうとする
桃香との交際を知り、
伝えなかったことを悔やむ
好きになっても、 今の関係を変えるのが怖い
湊と桃香が付き合っていると知り、
小雪は立ち止まってしまう。
好きな人に恋人ができるなんて、
考えられない出来事ではない。
それでも、実際に聞かされると受け止めきれない。
友達のまま一緒にいられればよいと思っていた心に、
思った以上の痛みが返ってくる。
小雪が告白しなかった背景には、
今の関係を壊したくない気持ちがある。
人と距離を置いていた彼女は、
湊や友人たちと過ごす中で、
ようやく安心できる近さを手にしている。
好きになったからこそ、その近さを失うかもしれない言葉を
出せなくなっている。
恋人になりたいと口にすれば、
相手から答えが返ってくる。
嬉しい返事ならよいけれど、
同じ気持ちではないと分かった後も、
今まで通り話せるのか。
小雪にとって告白は、足りないものを足すだけの行動ではなく、
すでに大切なものを変えるかもしれない行動になる。
小雪にとっては、告白の手前に、
その後も同じように笑えるかという不安がある。
そこを越える答えを、
今は一人ではまだ見つけられずにいる。
小雪は湊を嫌って遠ざけたいわけでも、
彼との時間に関心が薄いわけでもない。
むしろ一緒にいられることが大切になっている。
好意があるなら近づける、という一方向には進めず、
大切になった相手ほど失うのが怖くなる。
その止まり方に、彼女らしい切実さがある。
湊へ言わずにいれば、
少なくとも今この場で断られることはない。
その安心は、小雪が自分を保つ助けにもなっていたと感じる。
ただ、断られないことと、
いつか受け入れてもらえることは同じではない。
交際を知るまでは曖昧なまま置けた二つが、
桃香の存在によって離れてしまう。
小雪の中だけでは保てていた可能性に、
相手の選択が入ってくる。
体育祭で陽太へ気持ちを話す場面にも、
今の関係を保ちたい小雪の思いが見える。
自分の中に恋があることは認められても、
湊とどうなりたいかを本人へ伝えるところまでは進めない。
話せる相手がいることと、
好きな本人へ言えることの間には距離が残っている。
だから、交際を知ってからの後悔は、
単に告白の順番で負けたというものには収まらない。
友達のままでいる選択が、
自分の望みも守ってくれると思っていた。
その見込みが崩れ、実は恋人になりたかった気持ちまで、
隠しきれなくなっている。
湊の言葉を聞き、 気持ちを抑える方へ進んでしまう
さらに小雪は、湊が自分を友達として好きと言うのを
偶然聞いている。
湊の口から届いた言葉には、
想像していた不安より強い重さがある。
今までの親しさも恋愛の好意ではなかったのかと受け取り、
自分の気持ちを戻そうとする方へ傾いてしまう。
湊は小雪へ告白の返事をしていない。
本人がいないつもりの会話で、
恋心を隠している。
それでも小雪には、その隠した部分までは分からない。
湊の本心を確かめる前に、友達としての距離へ戻ることが、
自分にできる対応のように見えてくる。
この時点で小雪が守ろうとするものには、
湊との関係だけでなく、自分の心もある。
好きな気持ちをこれ以上大きくしなければ、
今ほど傷つかずに済むかもしれない。
そう考えても、思いを止める方法が
すぐ見つかるわけではないところが苦しい。
私には、告白しない小雪が
何も望んでいないようには見えない。
彼の優しさが嬉しくて、
近づけたことを喜んできた時間がある。
自分だけに向けられた好意かもしれないと期待したから、
友達という言葉が刺さる。
引き返そうとする姿にも、すでに育った恋が残っている。
桃香との交際が動くのは、
そんな小雪が友達として接し直そうとする時期になる。
小雪は自分の恋を抑えることに力を使い、
湊は彼女の態度から好意を読み取りにくくなる。
傷つかないための振る舞いが、
二人を落ち着かせる形では届かない。
小雪が言えなかったのは、
好きという気持ちが足りなかったからではなく、
好きな相手と今ある関係を失う怖さがあったからと捉えられる。
その怖さを抱えたまま、
湊の言葉を失恋のように受け取ったことが、
告白へ向かう足をさらに止めている。
第2章 湊と普通に話せる毎日が、 小雪には大切になっていた
一人でいた小雪に、 話せる相手が増えていく
湊への告白を考える前に、
小雪には人と関わること自体へのためらいがある。
初めから誰とでも気楽に話せる少女ではなく、
周囲との間に距離を置いている。
そんな彼女に湊が近づいたため、
二人の始まりには、恋の期待より先に戸惑いや警戒がある。
小雪のそばには幼なじみの美姫がいる。
それでも、美姫以外の人へ
同じように素を見せられるわけではない。
知っている相手のいる安心と、
まだ自分を知らない相手へ心を開くことは違う。
湊との親しさも、その違いを少しずつ越えてできたものになる。
湊の近さを最初は苦手に感じても、
関わるうちに見え方が変わっていく。
小雪は彼と話し、自分が相手へ
どんな態度を取ってきたかを考えるようになる。
近づく側だけが頑張ったのではなく、
小雪も相手を知り直している。
その時間が、二人の関係に積もっている。
彼女が湊と笑えるようになることは、
恋愛が始まる前から大きな変化になる。
毎回身構えずに話せる相手がいる。
美姫や陽太と一緒に、同じ時間を過ごせる。
そうした普通のやり取りを手にしているから、
告白の後にも残せるか分からない関係が惜しくなる。
湊を好きになる前の小雪にも、
一人で静かに過ごす時間はある。
恋をしたから急に誰かなしではいられなくなった、
という変化にはしない。
自分のペースでいられることも大切なまま、
湊と過ごす時間も欲しくなっている。
一人で平気な自分と、
その人に会えたら嬉しい自分は矛盾しない。
その両方を持てるようになった先で、
恋がさらに関係を揺らしている。
小雪にとって友達の距離は、
何も起きていない空白ではない。
人と関わる中で怖かったことがあり、
その先でようやく持てた居場所になる。
恋人になれないなら何もないと切り捨てられるほど、
湊と過ごしてきた時間は軽くなっていない。
第1期の中学時代に触れる展開からも、
小雪が人へ近づく時の怖さがうかがえる。
過去の細かな出来事を全部恋へ結びつけなくても、
相手と関われば自分も傷つき、
相手を傷つけることがあると知っている。
その経験が、新しい関係にも影を落としている。
だから今のままでよいという気持ちは、
全てが嘘というわけでもない。
彼と話せることは本当に嬉しく、
友人たちと過ごす時間も大切になっている。
ただ、それだけで満たされると思いたい気持ちの隣に、
もう少し特別になりたい思いが育っている。
今の関係を守るつもりでも、 恋だけは元へ戻せない
小雪は、親しくなった後で湊への恋を自覚する。
同じ会話でも、相手の言葉や距離が以前より気になる。
友達として過ごせていた頃の行動を続けても、
受け取る自分の心が変わっているため、
まったく同じ場所へ戻ることは
難しくなっている。
湊の優しさが自分だけに向いているのかは、
小雪にとって気になるところになる。
誰にでも親しい人なら、
自分への近さもその一つかもしれない。
一方で、特別なら嬉しい。
期待しないようにする気持ちと、期待してしまう気持ちが、
同じ場面で重なっている。
桃香が湊へ近づく姿を見た時の落ち着かなさも、
その変化につながる。
自分は今の関係でよいはずなのに、
ほかの相手と親しくする彼を見れば気になる。
自分が望んでいないことにした先を、
別の人が望んで動くと、心まで静かではいられない。
それでも小雪は、恋心に気づいた途端、
湊へ近づく方法を分かるわけではない。
今まで通りにすれば気持ちが隠れ、
違うことをすれば好意が伝わるかもしれない。
そのどちらも落ち着かない中で、
すでに知っている友達の振る舞いへ戻ろうとしている。
私は、この小雪に少しもどかしくなる一方で、
今の距離が惜しい気持ちも感じる。
告白の後にどうなるかは、本人には分からないから。
湊と話せる毎日が嬉しいほど、
もっと近づくための言葉が、
その毎日を変えるかもしれないと怖くなっている。
恋をしなければ平気で続けられたことが、
恋をしたために難しくなる。
小雪が守ろうとしているのは、
ただ隣にいる権利ではなく、
自然に話せる自分と相手の関係になる。
ただ、その自然さを必死に守ろうとする時点で、
彼女の心は以前と同じではなくなっている。
第3章 「友達として」と聞いた小雪は、 告白する前に失恋していた
湊の言葉が、 期待していた自分へ刺さる
湊の言葉を聞く場面が苦しいのは、
小雪が彼に気持ちを尋ねたわけではないところにもある。
自分が聞いていると知らない時の言葉なら、
取り繕っていない本音に感じやすい。
そこに友達としてという区切りがあり、
小雪には自分の立つ場所が決まったように響いてしまう。
湊の中には小雪への恋がある。
それでも陽太との会話で、
その気持ちをそのまま出せていない。
視聴者には言葉と内心の差が見えるが、
小雪はその両方を受け取れない。
聞こえた言葉だけを頼りに、
自分が抱いていた期待を引っ込めようとする。
今まで近くで話してくれたことも、
優しくしてくれたことも、
友達だからできることなのかもしれない。
小雪はそう受け止め、
自分だけが恋の好意として受け取っていたと感じてしまう。
湊を好きな分、その思い違いが恥ずかしく、痛くなる。
実際には彼から振られていないのに、
小雪の中では失恋に近いことが起きている。
好きと伝える前に、
返事だけを聞いてしまったような状態になる。
告白をすればまだ違う答えが来る可能性もあるけれど、
その可能性を信じて進めるほどの手応えは残らない。
ここで小雪が聞き返せないのも、
会話に自分が入っていないためになる。
今の話は本当なのかと尋ねるには、
聞いていたことも、自分がその答えを気にすることも相手へ伝わる。
気持ちを隠したい彼女には、
それ自体が大きな一歩になる。
偶然耳にした言葉を、
偶然のまま胸にしまうしかなかったところにも、
本人へ確かめられない難しさがある。
自室で涙を流す姿には、
友達なら一緒にいられるという安心だけでは
足りなかったことが出ている。
彼に嫌われたわけではない。それでも悲しい。
親しい人として大切にされることと、
好きな相手から恋を返してもらうことの差を、一人で受け止めている。
この場面で、ただの勘違いだから泣かなくてよいとは感じない。
小雪が知っているのは、
実際に聞いた湊の言葉になる。
湊の本心を知る側には行き違いでも、
彼女にとっては、育ってきた恋を戻さなければと
思わせるだけの言葉が届いている。
好きになったことまで間違いのように感じると、
思いを伝えることはさらに難しくなる。
小雪は相手を振り向かせる方法より、
これ以上期待しない方法を探す。
告白に踏み出せなかったところへ、
恋をしまい込もうとする気持ちが重なっていく。
美姫には話せても、 湊本人には確かめられない
一方で、この時期の小雪は、
美姫へ湊を好きになったことを打ち明けている。
誰にも話せず、
恋が自分の中だけに閉じているわけではない。
好きな相手が誰かを言葉にできたことは、
彼女にとって一つの動きになる。
美姫との間には、
小雪の恋をめぐる思い違いもあった。
話すことで、互いに別の相手を想定していたことが分かってくる。
同じ場面をそばで見ていても、
気持ちを言葉にしなければ違う受け取り方が続く。
その経験が、小雪自身の恋と並んで起きている。
ただ、友人へ好きな相手を話すことと、
その相手へ告白することは違う。
美姫に伝えても、
湊から恋の返事が来るわけではない。
話せる安心がある場所では言葉にできても、
結果が変わる相手を前にすると、その言葉が出なくなる。
さらに小雪は、
友人たちの告白と返事を近くで見ている。
美姫と陽太のように、
互いを大切にしていても同じ恋心とは限らない。
告白が嬉しい結果だけを連れてくるわけではなく、
話した後も相手を思うから苦しくなることがあると感じられる時期になる。
その中で湊から友達として好きと聞けば、
恋を望まない方が二人にはよいのかもしれない、
と考える余地もある。
彼女は自分が好きだから押し通すより、
相手が今見せている答えに合わせようとする。
その慎重さが、湊の隠した気持ちからは遠ざかってしまう。
第15話の小雪は、告白するかどうかを迷うだけでなく、
好きでいること自体を続けてよいのかと揺れている。
湊の方も本音を伝えられないため、
小雪だけが勇気を出せば済む形にはなっていない。
互いに隠した気持ちが、
相手の諦める根拠になっている。
第4章 気持ちを隠した小雪の態度は、 湊にどう届いてしまった?
| 人物 | 気持ちと行動のずれ |
|---|---|
| 小雪 | 好きでも、友達の距離を 守ろうとする。 |
| 湊 | 近づきたくても、 小雪の好意を確かめられない。 |
友達へ戻ろうとする小雪と、 近づきたい湊
湊との距離を戻そうとしても、
小雪は彼を嫌いになったわけではない。
普通に話し、今ある関係を続けようとする。
けれど、恋心を出さないようにと気を張るため、
今まで通りにすることが
かえって難しくなっている。
文化祭の準備が始まる頃、
湊は小雪へ近づこうとしている。
小雪の中では諦める方向へ動いた恋が、
湊の中ではまだ相手へ向かっている。
二人が同じ場所で関わっていても、
近づこうとする人と距離を保とうとする人に分かれてしまう。
小雪は友達としての距離を意識する。
湊から聞いた言葉へ合わせるなら、
その振る舞いには筋が通っている。
ただ、湊は自分の本心を隠していたため、
小雪がどうして態度を変えるのかを知らない。
自分が口にした言葉が、彼女の足を止めたことも分かっていない。
湊から見ると、少し先へ進もうとしても、
友達としての反応が返ってくることになる。
小雪が恋を抑えるために選んだ距離を、
湊は彼女が本当に望む距離として受け取るかもしれない。
彼女なりの配慮が、
同じような配慮としては届かない。
小雪と湊は、同じ教室にいても
同じ情報を持っていない。
彼女は彼の言葉を聞いた経緯を知り、
彼は自分が本音を隠したことを知っている。
どちらも自分の側の事情があるため、
相手の反応が余計に分からなくなる。
話せる機会がないほど遠い二人ではないのに、
話しているだけでは届かないものがある。
その近さが、
かえってもどかしい。
小雪の方も、湊が近くへ来るたびに気持ちが揺れる。
友達として好きなら、
どうしてこんなに近いのか。
そこでまた期待してしまえば、
忘れようとする自分が苦しくなる。
彼の接し方が嬉しいことと、今はそれを喜びきれないことが並んでいる。
二人の気持ちを知っていると、
あと一言だけでも確かめてほしくなる。
ただ、小雪の側には、
すでに聞いた答えをもう一度尋ねるような怖さがある。
湊が自分をどう思うかを探ることも、
彼女には簡単な確認にはならない。
隠せたつもりの恋が、 二人を離してしまう
ここで小雪が冷たい人に変わったわけではない。
自分の恋を扱いきれず、
せめて相手に困られない距離へ戻ろうとしている。
そのために我慢していることが湊には見えないので、
平静に振る舞うほど、
彼女の中の好きという気持ちは伝わりにくくなる。
湊には湊のためらいがある。
小雪から好かれていると確かめられないまま、
自分の気持ちを出すのは怖い。
自分を守るために隠した言葉が小雪を引かせ、
その反応を見てさらに不安になる。
どちらも相手の反応を待つところへ戻ってしまう。
小雪が告白できなかったことは、
この関係の全てを一人で作ったこととは違う。
湊もまた、伝えたいことを相手へ伝えられていない。
彼女の沈黙だけを取り出すと、
湊の言葉を聞いて恋を諦めようとした流れが
見えなくなる。
一方で、小雪が友達のままでよいと振る舞えば、
湊がそれ以上を望まれていないと考える可能性は残る。
内心では好きでも、
相手へ渡せるのは表に出た言葉と態度になる。
小雪が守っている恋心は、
守られている間、湊からは見えないままになる。
私はここに、恋を隠す時の寂しさを感じる。
好きだと気づかれたくないのに、
好きではないと思われるのも苦しい。
小雪が両方を抱えたまま普通に振る舞おうとする姿には、
何も起きていない時間にも疲れてしまうような
張り詰め方がある。
その間にも、桃香は湊への好意を
言葉や行動にしていく。
小雪が恋を見せないようにしている時に、
桃香は自分を見てほしいと伝える。
湊が受け取れるものに差が生まれ、
二人のすれ違いは、二人の間だけで止まらなくなる。
第5章 桃香との交際を知り、 小雪は何を失ったと感じた?
友達のままなら続くと思っていた関係が変わる
桃香から湊との交際を知らされると、
小雪には突然、別の関係が目の前へ出てくる。
自分が気持ちを戻そうとしている間に、
彼はほかの人の恋人になっていた。
湊とどうなるかを考える時間が、
二人の間だけで続いていたわけではないと知る。
小雪は湊と付き合う約束をしていたわけではない。
だから桃香に奪われたという言葉だけでは、
この出来事は説明できない。
それでも、誰とも約束していないことと、
恋人ができた知らせに傷つかないことは違う。
自分の恋は、関係の名前がなくても育っていた。
友達としての距離を保てば、
これまでのように彼と話せると思っていた。
少なくとも、すぐ何かを決めなくても、
その近さは続くように感じられる。
そこへ交際の知らせが入り、
動かないことで守れたはずの毎日も、同じ形ではいられなくなる。
恋人がいる相手には、
それまでと同じ近さで接してよいかを考えることになる。
湊と話したい気持ちがあっても、
桃香を意識せずにはいられない。
何かを伝える前に、自分以外の人との約束ができたことが、
小雪の取れる距離を変えてしまう。
知らせが湊本人ではなく桃香から届くことにも、
戸惑いが重なる。
自分がまだ知らなかった彼の変化を、
目の前の後輩は知っている。
彼のそばにいるつもりでも、
恋人として共有する時間には自分は入っていない。
その差が急に見える。
交際という言葉の短さに対して、
小雪が受け取る変化は、
一度に飲み込めないほど大きくなっている。
湊の隣へ行く可能性だけでなく、
彼へ気持ちを伝える時の状況も変わる。
交際前なら自分の恋を届ける言葉でも、
今は恋人のいる相手へ向ける言葉になる。
小雪が言えずにいた一言は、
時間がたった後に全く同じ条件で取り出せるものではなくなっている。
ここは、知ってから覚悟を決めればよいというほど
軽くは感じない。
小雪はもともと、関係を変えることが怖くて言えずにいた。
その相手に恋人ができれば、
伝えることへのためらいはさらに増える。
動けなかった自分を悔やみながら、今はもっと動きにくい場所にいる。
恋人にはなれなくても、 平気ではいられない
それまで小雪が湊に求めていたのは、
今のまま話せること、と本人は考えようとしている。
けれど交際を知って苦しくなると、
それだけではなかった思いが見えてくる。
自分が恋人でなくても平気、という場所には、
気持ちを戻せていなかった。
好きな人に恋人ができた時、
自分は何も失っていないと言うことはできる。
もともと付き合っていなかったから。
ただ、小雪には、それでも失ったように感じるものがある。
いつか近づけるかもしれない期待や、
自分へ向けられる親しさを素直に喜べる時間が揺らいでいる。
湊が自分を友達としか思っていないなら、
この結果にも落ち着いて向き合えるはず、
と自分へ求めたくなるかもしれない。
でも、頭で受け止めようとすることと、
心が平気になることは別になる。
交際を知った衝撃は、抑えようとした恋が残っていたことを伝えてくる。
私は、小雪がここで後悔することを、
今の関係を大切にしていなかった証拠とは感じない。
友達でいられる時間も本当に嬉しかった。
ただ、その嬉しさの中に恋があり、
もっと近づきたい期待もあった。
片方を選んだつもりでも、もう片方まで消すことはできなかった。
桃香は、自分が湊を好きなことを伝え、
交際の返事を受け取っている。
小雪には、その同じ返事を望んでいた自分が、
何も言っていない事実が残る。
桃香への悔しさだけでは終わらず、
自分が自分の気持ちを隠してきた時間へも、痛みが向かっていく。
交際の知らせが変えたのは、
湊に恋人がいるかどうかだけではない。
小雪が自分の恋を、友達のままでよいと言い聞かせて
置いておけるかどうかも変わっている。
好きな相手の選択を前にして、
まだ言葉にしていなかった自分の望みが残ってしまう。
第6章 小雪が悔やんだのは、 桃香より先に告白できなかったことだけ?
今の関係でよいと思いたかった自分に気づく
小雪の後悔には、
もっと早く告白していればという気持ちも含まれる。
けれど、それを桃香より先に
動いた方がよかったという順番の話だけにすると、
告白前の彼女が抱えていたものが抜けてしまう。
小雪は、湊との関係を変える怖さから踏みとどまっている。
今の関係がちょうどよいと考えることには、
安心できるところがある。
うまくいくか分からない返事を待たなくて済み、
好きな相手とも話せる。
小雪はその安心を大切にしていた。
一方で、それを選び続ければ自分の恋も落ち着くと、思いたかった面がある。
交際を知った後には、
その考え方では収まらない感情が出てくる。
友達として一緒にいられるだけでよいなら、
どうしてこんなに苦しいのか。
小雪は、湊に何を望んでいたかを、
気持ちが戻せなくなったところから確かめることになる。
これは、恋をした自分へもっと自信を持てばよかった、
という言葉だけでは終わらない。
彼女は自分の好意が相手に歓迎されるかを心配し、
今ある関係を大切にしていた。
そのためらいも本物のまま、
言わなかったことへの後悔が重なっている。
小雪は、陽太が気持ちを伝えようとする姿にも触れている。
同じように今の関係を大切に思っていても、
相手は言葉にして進もうとする。
自分もそうできればと思う一方、
友人が選べた行動を、そのまま自分へ移すことは難しい。
交際の後悔には、
告白という道が目の前になかったのではなく、
見えていても選べなかった悔しさも
重なっている。
だから、過去の自分が間違っていたと分かれば
楽になるわけでもない。
当時は当時で、
そうするしかないと思う怖さがあった。
今の自分には別の選択が見えていても、
その時の自分に同じ選択ができたかは分からない。
小雪の後悔には、その戻れなさがある。
小雪は、告白したのに選ばれなかったのではなく、
気持ちを差し出す前に交際を知っている。
返事を確かめなかった分、
もし言っていたらという問いが残りやすい。
答えのない可能性を、
現実に起きた別の交際と並べて考えてしまうところがつらい。
あの時言えていたら、 という後悔に答えは出ない
視聴者には湊の恋心が見えるため、
言えていれば違ったかもしれないと感じやすい。
ただ、小雪はその情報を持っていない。
後から二人の気持ちを並べれば近く見えても、
当時の彼女には、
友達として好きという言葉が先に届いている。
湊も自分の気持ちを隠していたことを含めると、
小雪一人が何もかも取り逃した話にはならない。
近づきたい湊と、諦めようとした小雪の間には、
互いに伝えなかった思いがある。
後悔する側が小雪でも、
その関係を作った言葉は二人のものになる。
桃香の行動を見て、
同じように告白すればよかったと思うことはあっても、
三人の状況は同じではない。
小雪には守りたい友達関係があり、
桃香には恋人になりたい願いがある。
動けた人と動けなかった人を並べるだけでは、
何が怖かったかまでは見えてこない。
また、告白していれば必ず望む形で付き合えたと、
小雪自身が確かめることもできない。
湊から返事をもらっていない過去は、
そのまま残る。
だから後悔は、失った結果を数えるだけでなく、
何も確かめなかった自分へ何度も戻ってくる。
私はここで、小雪が望みを持ったことまで
責めてほしくないと感じる。
湊の特別になりたい気持ちも、
友達として話せなくなる怖さも、
同じ彼女の中にある。
片方だけを本心と決めずにいると、交際を知った時の痛みが、
恋を大切にしてきた時間とつながって見える。
今の関係でよいと言い聞かせていた小雪に残るのは、
もっと早く動けばよかったという反省だけではない。
本当はどうなりたかったかを、
自分でも曖昧にしていた苦さがある。
湊へ言えなかった言葉と、自分へ認めきれなかった望みが、
交際の知らせで一緒に浮かび上がっている。
第7章 諦めようとしても、 湊を好きな気持ちは消えなかった
恋人ができたと分かっても、 心は切り替わらない
湊に恋人ができたと分かれば、
好きな気持ちも終わらせられるのか。
小雪はそう簡単には切り替わらない。
自分には恋の返事がもらえないかもしれないと感じても、
その人と話して嬉しかった記憶まで
一緒に消えるわけではない。
第15話で小雪は気持ちを戻そうとしている。
それでも交際を知って傷つき、
その後にも湊への思いが残る。
諦めると考えたことと、
実際に好きでなくなることは同じではない。
頭の中で決めた通りに心が動かない時間が続いている。
相手を好きなままでも、
桃香と付き合っている事実は変わらない。
湊と話したい気持ちが動くたびに、
そのことも意識する。
気持ちを持っているだけで何かを壊しているわけではないのに、
小雪は自分の恋をどこへ置けばよいか分からなくなっている。
小雪が苦しむところには、
好きな気持ちを消せない自分まで
責めてしまうような近さがある。
相手に恋人がいるなら諦めなければと思っても、
湊を見ればまた心が動く。
今の状況を理解しているからこそ、
理解した通りにならない自分へ困ってしまう。
ただ、好きな気持ちが残ることと、
恋人のいる湊へ今すぐ告白することは別になる。
小雪には、諦めるか告白するかだけでは決められない時間がある。
心が追いつかないままでも、
相手との関わり方を考えながら、
日々を過ごすことになる。
ここからは原作10巻の補足になる。
小雪は、湊への気持ちを捨てきれず、
月子へ苦しい思いを話す。
交際が決まったと聞いてからも、
恋が続いていることが描かれる。
アニメで見えた後悔の先にも、
一度は諦めようとした相手を好きな自分が残っている。
月子へ話すことで、 一人で隠す恋から少し動く
月子へ話すことは、
湊本人へ告白することと同じではない。
それでも、自分の中で消そうとしていた気持ちを、
消えていないものとして口にしている。
何もない顔で一人で抱えるところから、
苦しいと話せる場所へ少し動いている。
美姫へ湊を好きと打ち明けた時と同じように、
小雪の恋には話を聞く友人がいる。
本人へ言えないことでも、誰かへ話せるなら、
自分だけの考えで終わりを決めずに済む。
月子との相談は、湊の返事を代わりにもらう場面ではなく、
小雪が自分の気持ちを言葉にする時間になる。
友人へ相談したから、
すぐ楽になったり、迷わず行動できたりするとは限らない。
相手に恋人がいる現実も、自分が好きなことも残る。
ただ、一人で考えている時には
同じところへ戻っていた問いを、
別の相手と話せるようになる。
その違いが小雪にはある。
この後の恋の結末を先に置けば、
言えなかった時間も必要な遠回りと呼べるかもしれない。
けれど、その時の小雪は先を知らない。
今好きな相手に恋人がいて、
忘れようとしても忘れられない。
その場の苦しさは、未来の結果を知ることで
本人の中から消えるものではない。
小雪が月子へ話す時、
相手にどう思われるかを恐れてきた彼女が、
うまく片づいていない自分の気持ちを見せている。
好きな相手がいることだけなら、
美姫にも話せている。
今度は、恋人のいる人を好きなままで苦しいという、
言い出しにくい部分にも触れる。
誰かへ言う前に完璧な答えを出さなくても、
話せる関係があることが
ここでは支えになる。
小雪は告白できなかったけれど、
湊を好きになったことで何も変わらなかったわけではない。
友人へ話し、相手の言葉に傷つき、
自分が思っていたより特別になりたかったことを知っている。
表に出せなかった恋の中でも、
彼女の気持ちは動き続けている。
湊へ告白しなかった小雪は、
今の関係を守りたかった。
その選択を悔やむ小雪は、
彼の恋人にもなりたかった。
どちらも同じ相手を大切に思う気持ちから続いている。
桃香との交際を知った時の後悔には、失った可能性だけでなく、
言えないまま育っていた恋の大きさが残っている。
氷の城壁まとめ
『氷の城壁』の感想・恋愛考察・キャラ関係・OP考察など記事一覧をまとめています。
小雪、湊、美姫、陽太たち4人の距離感や恋愛模様の記事もこちら。


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