ヒトガミはルーデウスの夢へ現れて助言を与える存在だが、その本質は親切な案内役ではなく、未来を読みながら人間を使徒として動かし、自分へ迫るオルステッド側の未来を潰し続ける人物だった。
ルーデウスには魔大陸から何度も有益な助言を与える一方、地下室事件ではロキシーとその子孫へつながる未来を断とうとし、必要なら王族や剣士まで別の使徒として利用する。
しかも「本当に人神そのものなのか」は最後まで断定されず、最終的にはルーデウスが築いた未来の先で、オルステッドたちに敗れて封印される光景まで示される。
※ここではアニメ第1期から第3期までのヒトガミの行動を中心に扱います。大きな原作ネタバレは後半の章で触れます。
★第1章 ヒトガミとは何者?夢へ現れて人を動かす「人神」
剣を持って直接戦うのではなく、夢の中から人間を動かすのがヒトガミの基本的な戦い方。
ルーデウスの精神世界へ突然現れ、未来を知っているような助言を与える
ヒトガミとは、
ルーデウスが魔力災害で魔大陸へ飛ばされた後から、
夢のような精神世界へ現れる正体不明の存在。
白一色の空間で人の形を取って現れ、
未来を知っているような口調で進む道を指示してくる。
最初の接触から、
ヒトガミは自分を敵とは名乗らない。
むしろルーデウスへ役立つ情報を与え、
危機を抜ける方向へ導く。
魔大陸でルイジェルドと出会った時も、まず彼を頼るよう勧めている。
この助言がなければ、
ルーデウスは緑色の髪を持つスペルド族を恐れ、
ルイジェルドと距離を取っていた可能性が高い。
しかし実際には彼と行動を共にし、
エリスを連れて魔大陸から故郷を目指す長い旅が始まった。
さらにリカリスの町では、
冒険者として活動する中で特定の依頼を受けるよう示される。
ウェンポートでも、
食べ物を持って裏路地へ向かうよう誘導され、
そこで魔界大帝キシリカと遭遇。
ルーデウスは予見眼を与えられることになる。
つまり初期のヒトガミは、
視聴者から見ても完全な悪役には見えない。
言われた通りにすると、
ルーデウス自身へ利益が返ってくる。
だから本人も警戒しながら、少しずつ話を聞くようになっていく。
ただしヒトガミは、
直接地上へ降りて手を引く存在ではない。
ルーデウスの夢へ入り、
必要な情報だけを出し、
最後に「どうするか」は本人へ任せる形を取る。
ここが非常に厄介なところでもある。
強制されている感覚が薄いため、
ルーデウス自身は自分で判断したつもりになる。
しかし後から振り返ると、
会う人物、
向かう国、
取る行動まで、
ヒトガミの言葉によって少しずつ進路が変えられている。
味方に見えた案内役が、後にはオルステッドと対立する中心人物へ変わっていく
ヒトガミへの印象が大きく変わるきっかけが、
第1期第21話「ターニングポイント2」。
赤竜の下顎でルーデウスたちはオルステッドと遭遇し、
何気ない会話の中でヒトガミの名前を出す。
するとオルステッドは、
それまでとは明らかに違う反応を見せる。
ルーデウスへ
ヒトガミが夢に出るのかと確かめ、
使徒と判断した瞬間から殺意を向ける。
ここで初めて、
ヒトガミには明確な敵がいることが分かる。
しかもその敵は、
ルイジェルドとエリスを短時間で倒し、
ルーデウスの胸まで貫く七大列強第二位の龍神オルステッドだった。
ルーデウスからすれば、
それまでヒトガミは怪しいが役に立つ存在。
ところが世界最強級のオルステッドが、
名前を聞くだけで使徒を排除しようとする。
ここで「本当に信用していい相手なのか」という疑問が一気に強くなる。
それでもヒトガミは、
すぐに本性をすべて見せるわけではない。
第2期へ進んでも、
ルーデウスへ進路を示し、
結果として助かる助言も与える。
善意と悪意が簡単に分けられない状態を維持してくる。
だからヒトガミは、
最初から分かりやすく嘘をつく悪役ではない。
正しい情報も与える。
実際に助けることもある。
その積み重ねで相手へ信用させ、必要な時に大きな選択をさせる。
この性質を理解すると、
第3期の地下室事件が急に重く見えてくる。
何度も役立つ助言を受けてきたからこそ、
ルーデウスは「地下室へ行け」という言葉も、
完全な罠だとはすぐ見抜けなかったのである。
★第2章 ヒトガミはなぜルーデウスへ何度も助言した?
最初から害するのではなく、実際に助かる助言を重ねて信用を作っていった
ヒトガミのやり方を最も分かりやすく示すのが、
第1期第19話「ルート選択」。
ルーデウスはヒトガミから、
リーリャとアイシャがシーローン王国にいると知らされる。
さらにヒトガミは、
アイシャと出会った時に本名を名乗らず、
「デッドエンドの飼主」を名乗るよう指示する。
その後、王宮にいる知り合いへ手紙を出せば、
リーリャとアイシャを助けられると具体的な手順まで示している。
ルーデウスは実際にシーローンへ向かい、
街中で兵士に追われるアイシャと遭遇する。
ヒトガミから見せられた光景に近い場面が本当に起こり、
その場でアイシャを助けることになる。
ここで重要なのは、
ヒトガミの情報が本当に当たっていること。
リーリャとアイシャは実際に拘束されており、
ルーデウスが寄り道したことで救出へつながった。
少なくともこの一件だけなら、完全に恩人へ見える。
最終的にはザノバの介入もあり、
パックスの企みは崩れ、
リーリャとアイシャは解放される。
ルーデウス自身も後になって、
自分が情報を得てシーローンへ来たことが家族救出につながったと受け止めている。
こういう成功体験が、
ヒトガミへの信用を積み上げていく。
最初から
「地下室へ行けば家族が死ぬよう仕向ける」
ような露骨な誘導をしても、ルーデウスは従わない。
まず小さな助言を当てる。
助かる経験を重ねる。
自分だけが知る未来を見せる。
その上で相手へ「こいつの言うことは怪しいが、結果は出る」と思わせる。
ルーデウスも完全には信用していない。
人神のことをエリスやルイジェルドへ詳しく話さず、
自分の中で警戒しながら使っている。
それでも役立つ情報を何度も受ければ、完全に無視するのは難しくなる。
助言の本当の狙いはルーデウスを救うことではなく、未来を自分に都合のよい形へ動かすことだった
ヒトガミの目的が単なる親切ではないことは、
後の行動を見ると明確になる。
同じ人物へ助言していても、
その時々でルーデウスが助かるかどうかより、
未来がどちらへ進むかを重視している。
象徴的なのが、
ベガリット大陸へ行くかどうかを迷った時。
ヒトガミはルーデウスへ、
ベガリットへ向かわず別の選択をするよう勧める。
しかしルーデウスは最終的に家族を助けるため旅立つ。
その結果、
迷宮ではパウロを失う一方、
ロキシーを救出し、
後に結婚することになる。
ここで生まれたロキシーとの家族関係が、
さらに先の未来ではヒトガミにとって大きな問題へ変わっていく。
第3期では、
その流れが地下室事件へ直結する。
ヒトガミは今度は、
ルーデウスへ地下室を確認するよう促す。
表面だけなら、家の中を調べる程度の小さな助言にしか見えない。
しかし未来ルーデウスが現れたことで、
その先に何があるかが判明する。
地下室へ入ることでネズミが外へ出て、
ロキシーが魔石病に感染し、
死亡へつながる未来が存在していた。
ここで初めて、
過去の助言が持っていた構造も見えてくる。
ヒトガミはルーデウスを助けたいから接触したのではなく、
ルーデウスがどの人物と結ばれ、
誰が生まれ、
その子孫が将来どこへつながるかまで見ながら動かしていた。
つまり初期の助言は、
全部が嘘だったわけではない。
むしろ本当に役立つからこそ厄介だった。
何度も当てて信用させ、
大事な局面で本人が疑わず動く状態を作る。
シーローンでアイシャを救った助言と、
第3期の地下室へ向かわせる助言。
表面上はどちらも同じ「未来を知る存在からの忠告」だが、
その先にあるものは大きく違う。
ヒトガミという人物の怖さは、
嘘をつくことそのものではない。
正しい情報と有益な助言を混ぜながら、
相手が自分から選んだと思える形で未来を動かすことにある。
だからルーデウスも、
長い間完全には切り離せなかった。
助言が当たる。
助かることもある。
しかしその先で誰が得をするのかは、ルーデウス本人には見えていない。
第1期から第3期までのヒトガミを追うと、
「親切な案内役が途中で悪くなった」のではないことが分かる。
最初から未来を見ながらルーデウスを動かし、
信用が必要な時には助け、
排除したい未来が生まれれば家族まで狙う。
その一貫したやり方こそ、
ヒトガミが物語全体で最も厄介な存在になっている根本なのである。
| 場面 | ヒトガミの助言 | ルーデウスに起きたこと |
|---|---|---|
| 魔大陸 | ルイジェルドを頼る | 帰還の旅を始められた |
| キシリカとの遭遇 | 指定された行動を取る | 予見眼を得た |
| シーローン王国 | アイシャへ近づく | リーリャ救出へつながった |
| 地下室 | 地下室を確認する | 老デウスが止めなければ悲劇へ進む |
★第3章 ヒトガミの使徒とは何者?一度に動かせるのは最大3人
同時に使える使徒は最大3人。悪人だけではなく、ルーデウスやルークのように誰かを守ろうとする人物も利用される。
夢へ現れて助言を与え、本人が自分で選んだように動かしていく
ヒトガミの使徒とは、
ヒトガミから夢の中で助言を受け、
その言葉に沿って行動する人物のこと。
ただし本人が洗脳されて操り人形になるわけではなく、
最後の判断そのものは自分で下している。
ここがヒトガミの厄介なところで、
使徒になった人物が明らかに様子を変えるとは限らない。
普段通りに考え、
普段通りに大切な人を守りながら、
その中へヒトガミの助言だけが混ざってくる。
ルーデウス自身が最初の分かりやすい例だった。
第1期では魔大陸でルイジェルドを頼り、
シーローンではアイシャを助け、
キシリカとの出会いでは予見眼まで得ている。
本人からすれば、役立つ助言をくれる相手だった。
しかしオルステッドから見れば、
この時点のルーデウスもヒトガミの使徒。
第21話「ターニングポイント2」で、
ルーデウスが夢の中でヒトガミと会っていると知った瞬間、
それまで静かだったオルステッドが殺意を向けたのもそのためだった。
原作後半では、
使徒の仕組みがさらに具体的になる。
オルステッドによれば、
ヒトガミが同時に使える手駒は最大三人。
何十人もの人間へ一斉に命令を出しているわけではない。
アスラ王国の王位継承争いでは、
その三枠を誰が使っているのかが大きな問題になる。
ルーデウスたちが警戒したのはルーク、
ダリウス上級大臣、
そして北帝オーベールや水神レイダといった強者だった。
特にルークは分かりやすい。
アリエルを長年支え、
命を懸けて守ってきた側近なのに、
ヒトガミから未来を見せられたことで判断を揺さぶられる。
最初からアリエルを裏切りたかった人物ではない。
だからルーデウスも簡単には割り切れない。
アリエルのすぐ隣で鎧を着け、
いつでも彼女を庇える位置に立つルークを見ながら、
本当にこの男を殺さなければならないのかと迷っている。
ヒトガミは、
こうした人間の願いや不安を利用する。
権力を欲しがる者だけを選ぶわけではなく、
家族を守りたい、
主君を助けたい、
死にたくないという感情まで入口にできる。
三人という制限があるからこそ、誰が使徒なのか分からないこと自体が武器になる
使徒が最大三人なら、
一見するとヒトガミ側は不利にも見える。
しかし実際には、
その三人が誰なのか分からないことが大きな脅威になる。
仲間の中へ一人混ざるだけでも、作戦全体が筒抜けになるからだ。
アリエルを王にする作戦でも、
ルーデウスは情報を誰まで話すか慎重になっている。
ルークが使徒なら、
アリエルやシルフィへ話した内容が
そのままヒトガミへ届く可能性がある。
だからオルステッドの目的や行動を、
味方にすら全部説明できない。
ルーデウスは仲間を信じたいのに、
その仲間が悪意なく情報源になっている可能性まで考えなければならなかった。
さらにヒトガミは、
三人を完全に連携させるわけでもない。
アスラ王国ではルークへ与えた助言と、
ダリウス側へ与えた助言にズレが生まれ、
ルーク自身が予想外の展開に動揺する場面もある。
オルステッドはそこで、
ヒトガミは未来を見る能力には優れていても、
複数の使徒を同時に動かすと綻びが出ると見る。
未来を知っているから何でも完璧に操れるわけではない。
それでも使徒が怖いのは、
本人が最後まで普通の人間に見えるから。
ルーデウスのように家族を思う者も使徒になり、
ルークのように主君へ忠誠を持つ者も利用される。
だから「使徒=悪人」ではない。
ヒトガミが見せた未来を信じ、
自分にとって大切なものを守ろうとした結果、
オルステッド側と敵対することもある。
ヒトガミは直接剣を握らない。
その代わり、
人が持つ恐怖や希望へ未来の情報を差し込み、
本人の足で目的の場所まで歩かせる。
使徒という仕組みは、その戦い方を最もよく表しているのである。
★第4章 ※原作ネタバレ ヒトガミはどこにいる?無の世界の中心
老デウスは数十年かけて世界を巡り、ようやく「無の世界」までたどり着いた
ヒトガミは、
ルーデウスの夢へ何度も現れるのに、
現実世界では一度も姿を見せない。
だから「どこにいるのか」は、
長い間ルーデウスにも分からなかった。
その答えへ最も近づいたのが、
未来から来た老デウスだった。
ロキシーとシルフィを失った未来で、
彼はヒトガミへの復讐だけを支えに世界中を巡り、
長生きする人物や古代の遺跡から情報を集め続ける。
未来の日記には、
その調査が何十年にも及んだことが書かれている。
重力魔術、
電撃魔術、
転移魔術まで研究しながら、
それでも肝心のヒトガミの居場所だけはなかなか掴めない。
やがて古代龍族の遺跡で、
世界そのものの構造へたどり着く。
この世界は人の世界だけではなく、
龍の世界、
魔の世界、
獣の世界、
海の世界、
天の世界を合わせた六つの面から成り立っていた。
老デウスの日記では、
それをサイコロのような形として捉えている。
六つの世界が外側の面にあり、
その内側に空洞のような領域が存在する。
そこが「無の世界」だった。
そして古代龍族の壁画を調べた末、
ついに一文へたどり着く。
ヒトガミがいるのは、
その無の世界のさらに中心。
地面を掘れば着く場所ではなく、六面世界の内側に隔てられた領域だった。
この事実は、
第3期の老デウス登場ともつながる。
彼が若いルーデウスの前へ現れた時、
単に地下室の未来だけを知っていたわけではない。
ロキシーを失った後、数十年を使ってヒトガミそのものを追い続けていた。
だから老デウスは、
ヒトガミがどれほど遠くから未来を操っているかも知っている。
夢の中ではすぐ目の前に立っているのに、
現実では普通の移動手段で会いに行くことすらできない相手だったのである。
無の世界へ入るには五龍将の秘宝と龍神の秘術が必要で、オルステッドが不可欠になる
居場所が分かっても、
老デウスはヒトガミへ到達できなかった。
古代龍族の壁画をさらに調べると、
無の世界の中心へ進むには
五つの秘宝が必要だと判明する。
その秘宝を持つのが五龍将。
さらに世界への扉を開くには、
龍神が受け継ぐ秘術まで必要になる。
場所を知るだけでは足りず、
入口を開くための条件が別に存在していた。
老デウスはペルギウスにも会う。
召喚術や転移魔術へ詳しい彼なら、
無の世界について何か知っているのではないかと考えたから。
しかしペルギウス自身はヒトガミの正体まで把握していなかった。
知っていたのは、
ラプラスがヒトガミという名前へ強い反応を示したこと程度。
老デウスは古代龍族の遺跡をさらに探し、
ようやく五つの秘宝と龍神の秘術という条件へ到達する。
ところが、
秘宝の一部は所在不明。
五龍将の一人もまだ表へ出ていない。
老デウス自身はすでに六十歳を超え、
長年の戦闘と研究で身体も限界へ近づいていた。
結局、
ヒトガミの居場所までは突き止めても、
本人のところへ行くことはできない。
そこで残された可能性として浮かぶのがオルステッドだった。
龍神であるオルステッドなら、
無の世界へ至る秘術を知っている可能性がある。
この事実が、
現在のルーデウスにとっても大きな分岐になる。
ヒトガミは地下室事件の後、
今度はルーデウスへオルステッドを殺すよう求める。
表向きには家族を守るための取引を持ちかけるが、
オルステッドが消えれば、
将来ヒトガミへ到達する道そのものも大きく遠ざかる。
老デウスの日記を読んだルーデウスも、
そこへ気付いていく。
ロキシーを狙ったこと、
シルフィを失わせた未来、
さらにオルステッドを殺させようとする行動。
全部が別々の嫌がらせではない。
ヒトガミ自身へ届く可能性を持つ人物と、
その未来につながる家族を消していけば、
無の世界の中心まで敵が来なくなる。
だからヒトガミは夢の中から、
現実世界の人間を何度も動かしていた。
夢では簡単に会える。
しかしこちらから会いに行こうとすると、
六面世界の構造、
五龍将の秘宝、
龍神の秘術まで必要になる。
この圧倒的な距離こそ、ヒトガミが長い間安全な場所から人間を動かせた大きな強みだったのである。
↓
さらに中心にヒトガミ
老デウスが長年探しても直接たどり着けなかったのは、ヒトガミが通常の地上世界とは隔てられた場所にいるため。
★第5章 ヒトガミはなぜオルステッドを恐れている?
| ヒトガミ | オルステッド | |
|---|---|---|
| 未来への向き合い方 | 未来を見て先回りする | 失敗した歴史を記憶してやり直す |
| 人の使い方 | 使徒へ助言する | 協力者を配置する |
| 弱点 | オルステッドを見通しにくい | 魔力回復が非常に遅い |
| ルーデウス | 利用して未来を変えたい | 配下にして未来を変える |
オルステッドだけはヒトガミの未来視から外れ、何度でも同じ時代をやり直して近づいてくる
ヒトガミが最も警戒している相手が、
七大列強第二位の龍神オルステッドである。
単純に戦えば強いからではない。
オルステッドには、
ヒトガミから見えにくくなる秘術が掛けられている。
原作でルーデウスが事情を聞いた時、
オルステッド自身は、
魔力回復が極端に遅くなる代わりに、
ヒトガミの目から逃れ、大まかな未来まで把握できると説明している。
ヒトガミからすれば、普段頼っている未来視が通じにくい相手になる。
しかもオルステッドは、
一度失敗すれば終わる人物ではない。
甲龍暦330年から約200年間を繰り返し、
ヒトガミへ届かなければ再び最初へ戻る。
前の周回で得た記憶も、そのまま次へ持ち越していく。
誰がどこで生まれるか。
どの国で政変が起きるか。
誰が王になり、
どの人物が後のラプラス復活へ関わるか。
失敗するたびに情報が増え、次の周回では同じ失敗を避けられる。
ヒトガミから見れば、
倒して終わりにできない相手が、
しかも自分の未来視から外れた場所で動き続ける。
だからオルステッドが何を始めたのか分からない状態そのものを、
強く嫌っている。
その様子がはっきり出るのが、
アスラ王国でアリエルを王位へ押し上げる作戦。
この時ヒトガミは、
ルーデウス側の動きを知るためルークへ接触し、
彼を監視役のように使っている。
ルークへ吹き込まれたのは、
ルーデウスがアリエルを裏切り、
ダリウス側へ付き、
ノトス家の地位や金まで狙っているという話だった。
ルーク自身も最初は信じないが、
ヒトガミは細かな未来を見せながら疑念を育てていく。
オルステッドは、
この動きを見てヒトガミの焦りを読み取っている。
手駒を三人しか使えないのに、
その一枠をルークという監視役へ割いている。
それほど「見えないオルステッド側」が怖いということだった。
王位継承でもヒトガミはルーク、ダリウス、強者たちを使い、オルステッド側の未来を潰そうとした
アリエルの王位継承は、
ヒトガミとオルステッドの戦い方が最も分かりやすく出る場面でもある。
オルステッド側が目指すのは、
アリエルを王にして将来の歴史を有利へ変えること。
ヒトガミ側は、その流れを途中で折ろうとする。
使徒として強く疑われたのが、
アリエルの側近ルークと、
敵対するダリウス上級大臣。
さらに三人目には、
北帝オーベールや水神レイダのような戦闘能力の高い人物が候補として挙げられる。
実際、
ルーデウスたちが王都へ入った後は、
単なる政治交渉では終わらない。
オーベールの奇襲、
水神レイダの介入、
ダリウスの逃走まで、
アリエルを王位から遠ざける動きが続いていく。
特にレイダは、
宴の場で水神流奥義を使い、
アリエル側を一気に制圧しようとする。
そこへ現れたオルステッドが、
ほとんど一撃でレイダを倒す。
ヒトガミ側の切り札が、龍神本人によって潰される場面になる。
さらにルーデウス、
エリス、
ギレーヌたちはダリウスを追う。
政争の裏で使徒を減らし、
アリエルを王にする流れを完成させる。
この一連の戦いは、王位争いであると同時にヒトガミとの代理戦争でもあった。
ヒトガミは自分で剣を持たない。
未来を見て、
誰へ何を吹き込めば最も効くのかを選ぶ。
オルステッドは逆に、
過去のループで得た知識を使い、その手を先回りして潰していく。
ただし今回だけは、
そこへルーデウスが加わっている。
オルステッドの呪いが効きにくく、
しかも過去のループに存在しなかった人物。
ヒトガミから見ても、行動を完全には読み切れない駒が増えた。
オルステッド一人の時は、
嫌われる呪いによって人間社会へ入り込みにくかった。
ところがルーデウスなら、
アリエル、
シルフィ、
ペルギウス、
各国の有力者へ普通に接触できる。
オルステッドが今まで打てなかった手を、代わりに実行できる。
だからヒトガミが恐れているのは、
龍神の戦闘力だけではない。
何度でもやり直すオルステッドへ、
歴史にいなかったルーデウスが加わり、
これまで届かなかった未来へ進み始めたこと。
地下室事件でロキシーを狙い、
その後ルーデウスへオルステッド討伐まで求めた流れも、
この危機感とつながっている。
ヒトガミにとって消したいのは一人の強者ではなく、
将来自分のところまで届く道そのものなのである。
★第6章 ※重大ネタバレ ヒトガミの正体は本当に「人神」なのか?
ラプラスですら正体を断定できず、「本来の人神へ成り代わった存在」という可能性を残している
ヒトガミという名前からすると、
人の世界を司る神そのものに見える。
本人も自分を「人神」と名乗り、
ルーデウスの精神世界では、
人間に近い白い姿で自然に話しかけてくる。
しかし原作外伝『古龍の昔話』まで追うと、
この正体は最後まで完全には確定していない。
初代龍神に仕え、
古代からヒトガミを追ってきたラプラスですら、
正体については掴み切れなかったと語っている。
ラプラスが覚えているのは、
六つの世界がまだ分かれていた古い時代。
人界、
龍界、
魔界、
獣界、
海界、
天界がそれぞれ独立し、
各世界には対応する神が存在していた。
ところが世界崩壊の後、
ラプラスが人界へ渡ると景色が変わっていた。
本来なら平地が広がるはずの人界へ、
森や山や海があり、
別世界にいた種族まで同じ場所で暮らしている。
六つの世界が一つへ重なったような状態になっていた。
そこでラプラスが思い出すのが、
初代龍神との戦いでヒトガミが口にした言葉。
自分こそ唯一の神だという態度だった。
ラプラスはそこから、
ヒトガミが六つの世界を崩壊させ、他の神々を消した可能性を考える。
さらに根本には、
世界を作った創造神の存在がある。
創造神は六面世界を生み出した後に死んだとされるが、
死体がどこへ行ったのかは分からない。
ラプラスは、そこへヒトガミ誕生の秘密があるのではないかと推測した。
創造神が無の世界の中心で死に、
後から何者かがその遺骸へたどり着いた。
そこで神の力を手に入れ、
六柱の中で最も弱かったとされる人神を取り込み、
あるいは人神そのものへ成り代わったのではないか。
ただし、
ここは作中でも断定されていない。
ラプラス自身が、
あくまで自分の考えにすぎないと認めている。
だから「ヒトガミの正体=偽物の人神」と言い切るのは正確ではない。
分かっているのは、六つの世界が崩壊した後も生き残り、無の世界から人間へ干渉し続けていること
正体そのものは確定していなくても、
ヒトガミが何をしてきたかはかなり見えている。
初代龍神と敵対し、
その後もラプラスへ間接的な妨害を続け、
現在ではオルステッドと長い戦いを繰り返している。
ラプラスも、
初代龍神との戦いが終わった後、
ヒトガミを探して人界を巡った。
しかし現実世界のどこを探しても見つからない。
それでも自分への妨害は続くため、生きていることだけは分かった。
やがてラプラスは、
無の世界に大規模な結界のようなものが存在することを確認する。
そこへヒトガミが閉じ込められている可能性が高いと考え、
解除方法まで調べている。
ただし封印を解けば、
自分が負けた時にヒトガミを現実世界へ解放してしまう。
だから簡単には戦えない。
ヒトガミが直接姿を現さず、
長い間使徒だけを送り出してきた背景にも、この閉ざされた場所が関係している。
現在のヒトガミも、
基本的な戦い方は変わらない。
自分でルーデウスの家へ来ることはなく、
夢へ現れて助言する。
ロキシーを消したい時も、自分で手を下さず、
地下室へ向かわせる形を取る。
オルステッドを倒したい時も同じ。
自分が無の世界から出て戦うのではなく、
家族を人質に近い形で使い、
ルーデウスへ龍神を殺すよう迫る。
常に他人を経由して未来を変えようとする。
ここまで追うと、
ヒトガミの正体について重要なのは、
名前より行動だと分かる。
本物の人神だったとしても、
別の存在が人神へ成り代わったのだとしても、
ルーデウスたちにとって危険である事実は変わらない。
しかもヒトガミ本人は、
必要なら本当のことも話す。
助言が役立つ場合もある。
未来を見せ、
相手が最も信じやすい形へ話を組み替える。
だから正体不明であること自体が、彼の怖さをさらに強くしている。
ルーデウスが第1期で出会った時には、
白い空間で軽口を叩く不思議な神にしか見えなかった。
しかし六面世界の過去まで遡ると、
初代龍神、
ラプラス、
オルステッドへ続く何千年もの争いの中心に同じ存在がいる。
ヒトガミとは本当に人神なのか。
その答えだけは、作中でも完全には閉じられていない。
ただ一つ確かなのは、
無の世界から未来を見続け、
使徒を通して歴史へ干渉し、
自分へ届く可能性を一つずつ潰してきた存在だということなのである。
| 分かっていること | まだ断定できないこと |
|---|---|
| 自らを「人神」と名乗る | 本来の人神そのものなのか |
| 無の世界にいる | いつ現在の姿になったのか |
| 初代龍神の時代から敵対が続く | 創造神との正確な関係 |
| 使徒を通して歴史へ干渉する | 本来の人神へ成り代わったのか |
「偽物の人神」と断定するのではなく、ラプラスの推測として読むのが安全。
★第7章 ヒトガミの最後はどうなる?ルーデウスの死後へ続く決着
本編終了時点ではまだ倒されず、ルーデウスの人生が終わっても戦いそのものは続いている
ヒトガミの最後については、
ルーデウスが生きている間に完全決着するわけではない。
ここは誤解しやすい部分で、
本編終盤まで読んでも「ルーデウスがヒトガミを倒して終わり」にはならない。
最終的な戦いは、さらに先の時代へ持ち越される。
ルーデウスがオルステッド側へ付いてからは、
ヒトガミの使徒を一人ずつ潰し、
将来へ必要な人物を残す戦いが続く。
アリエルを王へ押し上げ、
ザノバやクリフとの関係を維持し、
ラプラス復活後を見据えた準備まで進めていく。
終盤ではギースが、
ヒトガミ側の中心人物として表へ出る。
かつてパウロの仲間として迷宮攻略にも関わり、
ルーデウスとも気軽に話していた男が、
実は長くヒトガミへ恩義を感じていたことが判明する。
ギースは単独で戦うのではなく、
世界各地から強者を集める。
北神カールマン三世アレクサンダー、
鬼神マルタ、
剣神ガル・ファリオンなど、
ルーデウス側でも簡単には処理できない人物が次々と集まる。
決戦となるビヘイリル王国では、
ルーデウスたちも総力戦になる。
エリス、
ルイジェルド、
ザノバ、
ドーガ、
オルステッドらが各所で動き、
一つの敵を倒せば終わる戦いではなくなる。
ここでもヒトガミ本人は姿を現さない。
無の世界から使徒を動かし、
ギースへ人脈と未来の情報を与え、
オルステッド陣営を消耗させようとする。
最後まで「自分は安全圏から人を動かす」という戦い方を崩していない。
しかしこの戦いを経て、
ルーデウス側は大きな勝利を得る。
ギースは倒れ、
ヒトガミが用意した強者たちも退けられる。
オルステッド側が将来へ進むための土台が、ここでようやく残る。
ただしルーデウス自身は、
ヒトガミのいる無の世界まで行かない。
彼の役割は、
自分が直接最後の一撃を入れることではなく、
オルステッドが将来そこへ到達できる未来を作ることだった。
ここが『無職転生』の終盤ではかなり重要になる。
老デウスの未来では、
ロキシーを失い、
シルフィを失い、
ヒトガミへの復讐だけを抱えて何十年も生きても、
最後まで本人へ届かなかった。
一方で現在のルーデウスは、
自分一人でヒトガミへ向かわない。
オルステッドへ協力し、
仲間を増やし、
子供たちを含めた次の世代まで残す。
その違いが、老デウスとはまったく別の未来を作っていく。
最後の夢ではオルステッドたちに追い詰められ、ヒトガミが鎖で拘束された未来まで映る
ルーデウスが老年を迎え、
人生の終わりが近づいた時、
物語はもう一度あの白い精神世界へ戻る。
第1期から何度も現れたヒトガミと、
最後にもう一度向き合う形になる。
ただし若い頃とは、
立場が完全に逆転している。
最初のルーデウスは、
ヒトガミが何者かも分からず、
未来を知る相手から一方的に助言を受ける側だった。
最後には、その助言へ頼る必要がなくなっている。
ルーデウスには、
シルフィ、
ロキシー、
エリスとの家族があり、
子供たちも成長している。
ヒトガミに何を言われても、
自分の人生を失敗だったとは思わない。
ここまで生きてきた結果を、自分で受け入れている。
そこでヒトガミは、
ルーデウスの死後に起きる未来を見せる。
そこには、
これまで何度もヒトガミへ届かなかったオルステッドがいる。
しかも一人ではない。
傷を負ったオルステッドの周囲には、
ルーデウスが生涯をかけてつないだ未来の人物たちがいる。
ルーデウス本人はそこへ立っていない。
それでも彼が残した人間関係と子孫が、
最終決戦へ続いていることが示される。
そして中央にいるのがヒトガミ。
自由に立っている姿ではなく、
魔法陣のようなものと鎖によって拘束され、
オルステッドたちを前に追い詰められている。
ヒトガミは、
この未来を嫌がっている。
これまで未来を見て、
危険な芽を先回りして潰してきた側が、
自分自身の敗北する光景を見ることになる。
ただし、
この場面を「確定した未来」と断定するのは少し違う。
ルーデウス自身も、
見せられたものが必ず起きる未来なのか、
一つの可能性なのかまでは確認できない。
ヒトガミの未来視そのものが、絶対ではないからである。
それでもヒトガミが動揺する以上、
少なくとも本人にとって非常に現実味のある未来だった。
オルステッドだけではなく、
ルーデウスが残した人間関係までそろったことで、
これまでとは違うところまで到達している。
ここまで見ると、
ヒトガミの「最後」は本編中の死亡場面ではない。
ルーデウスの世代で直接倒されるのではなく、
その人生で作られた未来の先に、
敗北と封印へつながる可能性が描かれている。
そしてヒトガミが最後まで恐れていたものも分かる。
ルーデウス本人の強さではない。
ロキシーとの子供。
オルステッドとの共闘。
アリエルの即位。
仲間たちとのつながり。
その一つ一つが次の世代へ残り、自分へ届く道になることだった。
地下室でロキシーを狙ったのも、
オルステッドをルーデウスへ殺させようとしたのも、
ギースを使って最後の総力戦を仕掛けたのも、
全部その未来を消すためだった。
それでもルーデウスは、
ヒトガミの思い通りには進まなかった。
最初は夢の助言へ振り回され、
一度は地下室の罠で人生を壊される未来まであった男が、
最後には自分の選択で仲間と家族を残して死んでいく。
ヒトガミとは何者だったのか。
未来を見て人を動かし、
使徒を通して歴史へ干渉し、
自分へ届く可能性を消し続けた存在だった。
しかし未来が見えることと、
未来を完全に支配できることは同じではない。
ルーデウスという過去の歴史にいなかった一人が入り、
オルステッドと手を組み、
さらに次の世代まで道をつないだことで、
ヒトガミが最も避けたかった結末が現実味を帯びていく。
第1期では、
白い世界から笑いながら助言を与える得体の知れない存在だった。
そのヒトガミが最後には、
自分の未来を恐れ、
オルステッドたちに拘束される光景を前にする。
この反転まで追うことで、
ヒトガミの物語は単なる黒幕の正体探しではなく、
未来を操ろうとした存在が、
予測できなかった人間の選択によって追い詰められていく物語だったことが見えてくるのである。
オルステッドたちがヒトガミへ到達する未来
本編の最後は「ルーデウスがヒトガミを倒す」ではなく、ヒトガミを追い詰められる次の時代まで道を残した形になっている。
無職転生Ⅲまとめ
『無職転生Ⅲ』の記事を、第3期の放送範囲・ナナホシと転移事件・ペルギウスと空中城塞・未来ルーデウス・オルステッド・魔導鎧・エリスとの再会・ルーデウスの家族などに分けてまとめています。
ルーデウス、エリス、シルフィ、ロキシー、ナナホシ、ペルギウス、オルステッド、ゼニス、アリエル、クリフ、エリナリーゼなど、気になる人物や物語の謎はこちらから探せます。
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