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【アニメ手札が多めのビクトリア】8歳でなぜ工作員養成所へ?ランコムに見出されクロエになった過去

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8歳のアンナ・デイルは、最初から工作員を目指していた少女ではなく、父親の商売失敗で家計が苦しくなり、下働きへ出されそうになったところをランコムに見出され、家族への金銭と引き換えに工作員養成所へ入った。
そこで本名アンナではなく「クロエ」として育てられ、語学・変装・体術などを身につけ、15歳から任務へ出る凄腕工作員へ成長する一方、家族とは自由に連絡できず、普通の子供時代からも切り離されていった。
ビクトリアの幼少期、工作員クロエの養成所生活、ランコムとの関係を追うと、第1話で彼女がなぜあれほど「普通の暮らし」を求め、ノンナを放っておけなかったのかまでつながって見えてくる。

  1. 第1章 8歳でなぜ工作員養成所へ?家計の苦しさとランコムとの出会いが人生を変えた
    1. 父の商売失敗で下働きへ出されるはずだったアンナを、ランコムが見出した
    2. 「家族の役に立ちたい」と思った少女が、ランコムに褒められるため人一倍努力した
  2. 第2章 アンナは養成所でどうやってクロエになった?本名を捨て、7年間の訓練へ入った
    1. 8歳でアンナの名を使わなくなり、15歳の初任務まで工作員として育てられた
    2. 毎月の仕送りと「連絡禁止」が、クロエを家族から遠ざけたまま働かせていた
  3. 第3章 養成所では何を身につけた?ビクトリアの「手札の多さ」は7年間の訓練から始まった
    1. 8歳から15歳まで、語学・変装・観察・体術を「任務で使える力」へ変えていった
    2. 第6話の体術、第8話のマリアとライルまで、養成所の技術は日常へ持ち込まれている
  4. 第4章 ランコムはアンナにとって何者だった?上司になる前から家族のように慕った存在
    1. 「しっかりした子」で寂しかったアンナへ、ランコムだけは目を向けてくれた
    2. 6年半後に再会しても、アンナは「褒められて喜んだ少女時代」を思い出している
  5. 第5章 家族とはなぜ会えなかった?毎月の仕送りだけがクロエと実家をつないでいた
    1. 金と品物は送れても、手紙を入れることさえ許されなかった
    2. 第1話の約1年前、18年ぶりに実家へ近づくと家そのものが消えていた
  6. 第6章 クロエはなぜ組織を捨てた?家族の死とランコムへの失望で残る支えがなくなった
    1. ランコムは重要任務を優先したが、クロエには「家族ではなかった」と映った
    2. 事故とも自死とも取れる痕跡を残し、二つ先のアシュベリー王国でビクトリアになった
  7. 第7章 8歳の養成所生活を知ると、第1話でビクトリアが求めた「普通」がまるで違って見える
    1. 自分で働く場所を選び、同じ家で誰かと食事をするだけでも、アンナには長く持てなかった生活だった
    2. 後にアンナは「助けたのは自分ではなくノンナだった」と振り返る

第1章 8歳でなぜ工作員養成所へ?家計の苦しさとランコムとの出会いが人生を変えた

父の商売失敗で下働きへ出されるはずだったアンナを、ランコムが見出した

アンナ・デイルが工作員になった出発点は、
本人が夢見て選んだ職業ではない。

8歳の頃、父親の商売が失敗し、
デイル家の暮らしは苦しくなった。
アンナも家計を助けるため、
どこかの家へ下働きに出されそうになっていた。

そこで声を掛けたのが、
まだ若かったランコムだった。
彼はアンナに工作員としての素質を見つけ、
相応の金銭と引き換えに家族から引き取り、
養成所へ連れていく。

後のアンナ自身は、
この出来事を「親に捨てられた」とだけ受け止めてはいない。
家族の役に立てたことには納得していた。
ただ後年ノンナへ幼少期を話した時には、
8歳で家を出たことはやはり寂しかったと明かしている。

しかもアンナは、
幼い頃からしっかりした子供だった。
両親も「この子なら大丈夫」と安心し、
かえって自分へ目を向けなくなったように感じていた。
家族を恨んではいない。
それでも、もっと見てほしかった気持ちは残っていた。

ここへランコムが入ってくる。
自分の素質を見つけた。
養成所へ連れてきた。
訓練生になってからも特別に気に掛けてくれた。
アンナにとってランコムは、
単なる勧誘者ではなく、失った家族の空白へ入っていく人物になった。

この過去を知ると、
第1話でノンナを放っておけなかったビクトリアも見え方が変わる。
ノンナは6歳。
母親が戻らず、父親もいない。
果実水と食べ物を渡したビクトリアは、
身体に暴力の跡がないかまで自然に確かめている。

警備隊へ預ければ、
ビクトリアの役目はそこで終わるはずだった。
それでも一晩預かり、
その後は一緒に暮らす方向へ進む。
8歳で家族から離れたアンナと、
6歳で家族から置いていかれたノンナ。

事情は違っても、
幼い子供が居場所を失う姿を見過ごせなかったことは、
ビクトリアの過去と重ねるとかなり印象が変わる。

「家族の役に立ちたい」と思った少女が、ランコムに褒められるため人一倍努力した

養成所へ入ったアンナを動かしたのは、
生き残りたい気持ちだけではない。

工作員になれば高い報酬を得られる。
その金を家族へ送れる。
自分が訓練を頑張るほど、
離れて暮らす父母や妹を助けられる。
その考えが、幼いアンナを前へ押した。

もう一つ大きかったのがランコムになる。
後年アンナは、
ランコムを兄や父親のように思っていたとノンナへ話している。
自分を見つけ、
自分へ目を向け、
特別に優しくしてくれた大人だった。

だから褒めてもらいたかった。
喜ばせたかった。
他の訓練生より何倍も努力し、
やがて仕事でトップクラスの成績を残すようになる。
「天才だったから自然にエースになった」のではなく、
家族へ金を送りたい気持ちと、
ランコムに認めてもらいたい気持ちが重なっていた。

この二つが、
クロエの長い工作員人生を支える柱になる。
一つは実家の家族。
もう一つはランコム。
後にその両方が崩れた時、
クロエが組織へ残る支えまで失うことになる。

つまり8歳の養成所入りは、
能力を身につけた始まりだけではない。
家族への思い、
ランコムへの依存、
褒められるために努力する性格、
普通の暮らしへの渇き。

第1期のビクトリアへ続く多くのものが、
この時点ですでに始まっている。

第2章 アンナは養成所でどうやってクロエになった?本名を捨て、7年間の訓練へ入った

8歳でアンナの名を使わなくなり、15歳の初任務まで工作員として育てられた

養成所へ入ったアンナは、
まず名前から生活を切り替えられる。

第9話の夏祭りでジェフリーへ明かした通り、
8歳で養成所へ入った時に本名を使わなくなり、
工作員名「クロエ」を与えられた。
父と母が付けたアンナ・デイルという名前を、
その後約20年も表で名乗らずに生きていく。

8歳から初任務の15歳までは約7年間。
この時期にクロエは、
語学、変装、演技、観察、体術など、
任務に必要な幅広い技術を身につけていった。

第3話の王城の夜会では、
華やかな服装のまま周囲の異変を拾う。
第4〜5話では、
外国語や演技の技術をクラークへの家庭教師に使う。
第6話では体術。
第8話では自分をマリア、
ノンナを少年ライルへ変えて別人として暮らす。

アニメで次々と出てきた能力は、
その場で都合よく覚えたものではない。
子供から少女へ変わる7年間に、
仕事として使える水準まで叩き込まれ、
15歳から実際の任務で磨かれていった。

だから第1話でクロエが組織を抜けても、
能力だけは消えない。
普通の服を着ても周囲を見る。
知らない相手を観察する。
危険があればすぐ動く。

ビクトリアという名前へ変わっても、
クロエとして作られた判断は身体に残っている。

毎月の仕送りと「連絡禁止」が、クロエを家族から遠ざけたまま働かせていた

クロエは家族を忘れて働いていたわけではない。
むしろ毎月、
ちょっとした品物と金を実家へ送っていた。

ただし家族との直接連絡は禁止。
クロエが室長へ荷物を渡し、
ランコムが手紙などが入っていないか確認してから発送する。
自分の家族なのに、
自由に手紙一本送ることもできなかった。

それでもクロエは、
父母や妹が仕送りを喜んでいるはずだと思って働いた。
会えない。
話せない。
返事ももらえない。
それでも自分の報酬が家族へ届いているという想像が、
危険な仕事を続ける支えになっていた。

第1話でビクトリアが望んだ「普通」は、
この生活の反対側にある。
自分で働く場所を選ぶ。
帰る家を決める。
ノンナの顔を毎日見る。
食事を出せば、その場で食べる姿を見られる。

クロエ時代は、
大切な家族を助けているつもりでも、
その暮らしを自分の目で確かめることができなかった。

だからノンナと始めた生活は、
ただ工作員を辞めたあとの隠れ家ではない。
8歳から失っていた、
家族と同じ場所で生きる時間を取り戻す生活でもあった。

そしてこの仕送りが、
後にランコムとの関係を壊す最大の出来事へつながる。
クロエは家族が生きていると信じて働き続ける。
ところが家族はすでに亡くなっていた。
その事実をランコムが2年間知らせていなかった。

8歳の養成所入り、
クロエという名前、
家族への仕送り、
ランコムへの信頼。

別々に見える過去は、
すべて一本につながっている。

第3章 養成所では何を身につけた?ビクトリアの「手札の多さ」は7年間の訓練から始まった

8歳から15歳まで、語学・変装・観察・体術を「任務で使える力」へ変えていった

アンナが養成所へ入ったのは8歳、
初めて実際の任務へ出たのは15歳になる。
つまり約7年間、普通なら学校へ通い友人と遊ぶ時期を、
クロエは工作員になるための訓練へ使っていた。
原作でも彼女は語学、変装、文書偽造、体術、家事まで幅広くこなし、
一つの特技ではなく「必要な時に必要な手を出せる」人物として描かれている。

工作員は強ければ務まる仕事ではない。
他国へ入り込むなら言葉を操り、身分に合わせて服装や話し方を変え、
相手へ疑われない態度を作り、周囲の視線や小さな変化まで読む必要がある。
危険を察知した後には逃げる技術も、相手を制圧する体術も必要になる。
8歳から始まった訓練は、クロエを一つの型へ育てるのではなく、
状況ごとに自分そのものを変えられる工作員へ育てていった。

その名残が分かりやすいのがアニメ第3話の王城の夜会になる。
ジェフリーの相手として美しく着飾り、貴族たちの中へ自然に入りながら、
ビクトリアは宴を楽しむだけではなく周囲の人間を見続けている。
不審な動きへ気付けば、ドレス姿のままでも迷わず行動へ移る。
華やかな社交の場と危険を探す仕事を同時にこなせるのは、
長年「別の顔を見せながら本当の目的を進める」仕事を続けてきたからになる。

第4話から第5話のクラークへの家庭教師でも、
同じ能力がまるで違う形で表へ出る。
外国語が苦手なクラークへ一方的に暗記させるのではなく、
何につまずいているのかを観察し、芝居まで取り入れて実際に言葉を使わせる。
工作員時代なら語学や演技は潜入先へ溶け込み、相手を信用させるための技術だった。
ビクトリアになってからは、その手札が子供へ勉強の面白さを伝える力へ変わっている。

第6話の体術、第8話のマリアとライルまで、養成所の技術は日常へ持ち込まれている

第6話では第二王子セドリックとのやり取りから、
ビクトリアの体術が趣味程度ではないことも見えてくる。
セドリックは彼女の実力を知り、直接体術を教えてほしいと求めるほど評価している。
相手の動きを見て距離を取り、必要な瞬間だけ身体を動かす姿には、
15歳から27歳まで実戦任務を続けたクロエの経験まで残っている。
養成所の7年間は基礎、その後12年間の現場が手札をさらに磨いた形になる。

そして第8話では、
それまで別々に見えていた能力が一度に使われる。
追跡を避けるためビクトリアは「マリア」と名乗り、
ノンナには少年の服を着せて「ライル」という新しい人物を作る。
髪や服を変えるだけでなく、母親と息子として不自然に見えない生活まで組み立て、
知らない土地で二人がそのまま暮らせるところまで身分を作り込んでいる。

クロエ時代の変装なら、
任務を成功させるため自分が別人になる技術だった。
第8話では同じ技術を使いながら、
隠す対象は情報ではなくノンナの命になる。
語学、演技、観察、変装、危険回避を組み合わせ、
「この子を安全に生かす」という一つの目的へ全部の手札を使っている。

8歳のアンナは家族へ金を送りたくて訓練へ励み、
15歳のクロエは覚えた力を国の任務へ使い始めた。
27歳のビクトリアは組織を離れても能力を捨てず、
クラークを教え、セドリックへ体術を見せ、ノンナを守るために使っている。
ビクトリアが何でもできるように見える背景には、
7年間の養成所生活と12年間の実任務、合計19年近い積み重ねがある。

第4章 ランコムはアンナにとって何者だった?上司になる前から家族のように慕った存在

「しっかりした子」で寂しかったアンナへ、ランコムだけは目を向けてくれた

アンナとランコムの関係を、
「8歳の少女を工作員へ勧誘した人物」だけで見るとかなり足りない。
後年アンナはノンナへ幼少期を話した際、
家を出たことについて両親を恨んではいなかったものの、
やはり寂しかったと自分の口で振り返っている。
自分がしっかりしていたため、両親から「この子なら大丈夫」と思われ、
かえって自分へ目を向けてもらえなくなったようにも感じていた。

その時期にアンナを見つけたのがランコムだった。
工作員として使える素質を見抜き、養成所へ入れ、
訓練生となってからも彼女を特別に気に掛けていた。
アンナは後に、ランコムを兄だけではなく父親のようにも思っていたと明かしている。
実家を離れた8歳の少女にとって、
自分を見つけ、自分へ目を向けてくれる大人がランコムだった。

だからアンナは、
ただ成績を上げるためだけに訓練へ打ち込んだのではない。
ランコムを喜ばせたい。
褒めてもらいたい。
その気持ちから、本人の言葉では「他の子の何倍も」努力した。
やがて仕事でトップクラスの成績を収めるクロエになるが、
その出発点には家族への仕送りと、ランコムから認められたい気持ちの両方があった。

15歳で実任務へ出るようになってからも、
ランコムとの関係は切れない。
ランコムは特殊任務部隊の中央管理室室長となり、
クロエにとっては幼少期から知る人物であると同時に、
任務を預ける直属の上司でもある。
家族と自由に連絡することさえ禁じられた生活の中で、
ランコムだけは養成所時代から続く身近な人物だった。

6年半後に再会しても、アンナは「褒められて喜んだ少女時代」を思い出している

この関係の深さは、
組織を離れてから約6年半後、
アンナとランコムが再会する原作の場面にも残っている。
ランコムの姿を見たアンナは、
彼に喜んでもらうため必死に働いていた日々を一気に思い出す。
別の場面では夢の中でさえ、
十代の自分がランコムに褒められて喜ぶ姿を見るほど、
幼い頃に受けた感情は長く残っていた。

再会したランコムには白髪が増えている。
アンナもすでにジェフリーの妻となり、ノンナの母親になっている。
それでも会話の途中で、
ランコムが子供の頃から変わらない穏やかな笑い方をすると、
アンナはそれをすぐ昔と結び付けている。
敵か味方かだけでは切れないほど、
二人の間には長い時間が積み重なっている。

一方でアンナは警戒も解かない。
再会時には上着の中のダガーへ手を掛け、
いつでも使える状態にしながら話している。
昔は褒めてもらいたくて何倍も努力した相手でも、
今の家族へ危険が及ぶなら容赦しない。
ランコムから幸せそうだと言われたアンナは、
今の幸せを奪う者には誰であっても容赦しないとはっきり返している。

ここまで来ると、
ランコムは単純な恩人でも悪人でもない。
8歳のアンナを見つけ、才能を伸ばし、
家族を失った少女が兄や父のように慕った人物であり、
同時に工作員クロエへ国家の任務を与え続けた上司でもある。
だから後に家族の死を隠されていたと知った時、
クロエが受けた傷は「上司に嘘をつかれた」だけでは済まなかった。

自分を見てくれた人。
褒めてもらいたかった人。
19年近く働く世界の中心にいた人。

そこまで近かったからこそ、
ランコムとの関係が崩れた時、
クロエは組織そのものから離れるところまで進むことになる。

第5章 家族とはなぜ会えなかった?毎月の仕送りだけがクロエと実家をつないでいた

金と品物は送れても、手紙を入れることさえ許されなかった

クロエは8歳で家を離れたあとも、
両親と妹を忘れて仕事をしていたわけではない。
15歳で初任務へ出てからも毎月、ちょっとした品物を買い、
そこへ金を添えて実家へ送っていた。

ただし、家族との直接連絡は禁止されていた。
クロエは荷物を自分で発送するのではなく、まず室長へ渡し、
ランコムが中に手紙を入れていないか確認したうえで発送所へ運ぶ。
工作員クロエにとって、家族との関係まで組織の管理下に置かれていた。

それでもクロエは、家族が仕送りを受け取り、
喜んでくれている姿を想像して働いていた。
しかも彼女は、自由に連絡できなくても、
家族に死亡など重大な出来事があれば知らせてもらえるはずだと、
組織側へ何度も確認していた。

ここが後の出来事を重くする。
クロエは「何も教えてくれない」と最初から諦めていたのではない。
会うことも手紙を書くことも我慢する代わりに、
家族の生死だけは知らされるという最低限の約束を信じていた。
だからこそ、その線まで越えられた時にランコムへの信頼が崩れた。

第1話でビクトリアがノンナと暮らし始める場面は、
この過去を知るとかなり対照的に見える。
食事を渡せば目の前で食べる姿が見え、
夜になれば同じ家で眠り、朝になればまた顔を合わせられる。
クロエが長年できなかった「大切な相手の今日を自分の目で確かめる生活」を、
ビクトリアはノンナと暮らすことで初めて手に入れていく。

第1話の約1年前、18年ぶりに実家へ近づくと家そのものが消えていた

転機になったのは、第1話から約1年前の任務後だった。
クロエは8歳で家を離れて以来、18年ぶりに故郷の町へ足を伸ばす。
正式に帰省したのではなく、正体を知られないよう変装し、
遠くから一目だけでも家と家族の様子を確かめようとした。

ところが記憶にある場所へ行くと、実家がない。
建物は消え、土地は更地になっていた。
調べたクロエは、両親だけでなく家族全員がすでに亡くなっていることを知る。
毎月の仕送りを受け取り、どこかで暮らしていると思っていた相手が、
自分の知らない間に全員いなくなっていた。

さらにクロエを傷つけたのが、ランコムは家族の死を知っていたことだった。
しかも知らせなかった期間は約2年。
クロエが「死亡時には知らせてほしい」と何度も確認していたにもかかわらず、
ランコムは重要任務が続いていた彼女を働かせることを優先し、
家族の死を伏せたまま任務を与え続けていた。

クロエにとって家族への仕送りは、単なる送金ではない。
8歳で家を離れた自分が、まだデイル家の娘でいられる細い線だった。
その線が実際には二年前に切れていたのに、
自分だけが知らず働き続けていた。
しかも事実を隠したのが兄や父のように慕ったランコムだったことが、
クロエを組織から離れる決断へ押していく。

第6章 クロエはなぜ組織を捨てた?家族の死とランコムへの失望で残る支えがなくなった

ランコムは重要任務を優先したが、クロエには「家族ではなかった」と映った

ランコムが家族の死を伏せたのは、
クロエを苦しませるためではなかった。
後年二人が再会した時、ランコムは当時のクロエに重要任務が立て続けに入り、
家族全員の死を知らせれば精神状態へ影響し、
任務を失敗する可能性があると考えたことを認めて謝っている。

上司として見れば、任務を守ろうとした判断ではある。
しかしアンナ側から見ると、その判断自体が決定的だった。
8歳から自分を見てくれたランコムを兄や父のように慕い、
褒めてもらうため他の子の何倍も訓練し、
実家の家族が遠くなったあともランコムだけは身近な家族に近い人だと思っていた。

後の原作でアンナはノンナへ、
家族の死を隠されたと知った瞬間について、
目の前の景色から色が消えたように感じるほど傷ついたと語っている。
親へ仕送りする必要がなくなり、
さらにランコムも自分を本当の家族と同じようには見ていなかったと実感して、
初めて「もうここに残る支えがない」と考えた。

さらに約6年半後の再会では、アンナ自身がランコムへ、
家族が死んだあと自分には彼しか残っていなかったこと、
きちんと知らせてくれていれば、それでも彼のため全力で働いただろうと伝える。
ランコムも自分の判断が間違っていたと謝罪する。
クロエが欲しかったのは任務から外されない配慮ではなく、
悲しむことも含めて自分の人生を自分で決めることだった。

事故とも自死とも取れる痕跡を残し、二つ先のアシュベリー王国でビクトリアになった

だからクロエは、上司へ退職を申し出て普通に辞めたのではない。
国家の秘密を大量に抱えた腕利き工作員が、
「今日で辞めます」と自由に去れる組織ではなかった。
そこで事故とも自死とも取れるよう細工を施し、
クロエという工作員が死んだと思わせる形で姿を消す。
そのまま二つ先のアシュベリー王国まで逃れ、新しい名前を選んだ。

それがビクトリア・セラーズになる。
移住先にアシュベリーを選んだのも無計画ではない。
何代にもわたって侵略戦争を避け、商人の出入りが多く、
人種も多様で、見知らぬ人間が突然住み始めても目立ちにくい。

第1話でビクトリアが「何をして働こうか」と考える場面も、
19年近く仕事を与えられる側だった過去を知ると重さが変わる。
8歳で養成所へ入り、15歳で初任務、
27歳までひたすら働いた彼女にとって、
仕事の内容を自分で選ぶこと自体が新しい経験だった。

そこへ入国初日にノンナが現れる。
ビクトリアは母親に置き去りにされた少女を保護し、
一晩だけのつもりだった関係から同居へ進んでいく。
組織時代は「誰を守るか」まで任務として決められたが、
今度は報酬も命令もなく、自分の判断でノンナを生活へ入れる。
第8話で追っ手から逃げる時も、自分をマリア、ノンナをライルへ変え、
工作員時代の技術を今度は自分で選んだ家族のために使っている。

後年アンナはノンナへ、
自分が助けたつもりだったのに、実際にはノンナに救われていたと打ち明ける。
実家への仕送りも、ランコムに褒められることも失い、
組織へ残る支えがなくなったクロエに、
今度は「一緒に暮らしたい相手」ができた。
第1話の逃亡とノンナとの出会いは、
クロエを捨てただけではなく、アンナが新しい家族を作り始めた地点でもある。

第7章 8歳の養成所生活を知ると、第1話でビクトリアが求めた「普通」がまるで違って見える

自分で働く場所を選び、同じ家で誰かと食事をするだけでも、アンナには長く持てなかった生活だった

第1話で組織を抜けたクロエは、
アシュベリー王国へ移り、
ビクトリア・セラーズという新しい名前で暮らし始める。
何の仕事をするか、どこへ住むか、誰と付き合うかを、
今度は組織ではなく自分で決めようとしていた。

8歳から27歳までの約19年間、
アンナは工作員として管理される生活を送っている。
8歳で実家を離れ、アンナという本名を使わなくなり、
15歳から任務へ出て、家族とは直接連絡もできない。
仕事を選ぶ自由も、好きな時に故郷へ帰る自由もなく、
家族の死を知らされる時期まで自分では決められなかった。

だから第1話で欲しがった生活は、
豪華な暮らしでも大きな成功でもない。
自分で仕事を決め、
自分で家へ帰り、
自分の時間を自分のために使う生活だった。

その最初の日へ飛び込んでくるのがノンナになる。

母親に置き去りにされた6歳の少女を見つけたビクトリアは、
果実水や食べ物を与え、
身体に暴力を受けた跡がないかまで確認する。
警備隊へ連れていけば、それで終わるはずだったが、
結局は一晩預かり、その後も一緒に暮らすことになる。

ここでクロエ時代とは逆の生活が始まる。

実家の家族には毎月金や品物を送っても、
受け取った顔を見ることはできなかった。
ノンナには食事を出せば、その場で食べる姿が見える。
夜になれば同じ家で眠り、
朝になればまた顔を合わせられる。

「誰かと同じ家で暮らす」という普通のことが、
アンナにとっては8歳から長く失われていたものだった。

第6〜7話でノンナの養女話が出た時、
ビクトリアが簡単に決められなかったのも、
自分自身が幼い頃に家族から離れた過去を持つからこそ重く見える。
条件の良い家へ行けば幸せになれるかもしれない。
それでも、ノンナ本人が誰と暮らしたいのかを無視して決めてしまえば、
8歳のアンナと同じように、大人の判断だけで居場所を変えることになる。

後にアンナは「助けたのは自分ではなくノンナだった」と振り返る

原作の後日談では、
成長したノンナへアンナ自身が、
あの時自分がノンナを助けたつもりだったが、
実際には自分の方が助けられていたと振り返っている。

この言葉は、
8歳からの人生を知るとかなり重い。

クロエには、
語学、変装、観察、体術、潜入、危険回避など、
普通の人にはない大量の手札があった。
15歳から27歳まで実任務を続け、
どんな場所でも生き延びられるほど優秀だった。

それでも、
家族と普通に暮らす方法だけは持っていなかった。

ノンナはその逆になる。
戦えない。
変装もできない。
一人では生活できない。

それでもビクトリアへ、
一緒に食事をする相手、
帰る家で待つ相手、
自分が守りたいと思える相手を与えた。

第8話では、
危険が迫るとビクトリアは自分をマリア、
ノンナを少年ライルへ変えて国を離れる。
工作員時代なら任務のために使った変装を、
今度は自分で選んだ娘を守るために使っている。

そして第9話のカディスの夏祭りでは、
ジェフリーと再会したビクトリアが、
長く表へ出してこなかった本名
「アンナ・デイル」を自分から明かす。

8歳でアンナという名前を使わなくなり、
27歳でクロエという工作員を捨て、
ビクトリアとして新しい生活を始めた。
その最後に、
一番古い名前を隠すのではなく、
大切な相手へ自分の意思で伝えられるようになる。

ランコムには、
家族の死を知らされる時期まで決められた。
ジェフリーには、
自分から過去を話す時期を選べた。

この違いも大きい。

第1期でビクトリアが手に入れたのは、
工作員時代にはなかった新しい能力ではない。
ノンナと食卓を囲み、
ジェフリーの隣へ戻り、
アンナという名前まで隠さなくていい生活になる。

8歳で家族を離れ、
19年近くクロエとして生きた少女が最後に選んだのは、
さらに強くなる道ではなく、
自分で選んだ家族と同じ場所で暮らすことだった。

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