ロキシー死亡後の未来で、ルーデウスは悲しみに沈むだけでは終わらず、酒、女性関係、シルフィとの決裂、家族からの孤立へ進み、現在とは別人のような老デウスへ変わっていく。
未来のルーデウスが壊れたのは、一度の死だけではなく、「救えなかった後悔」と「失った後の選択」を重ね、自分で残った家族まで遠ざけてしまったからだった。
老デウスの末路を見ると、ロキシー死亡が単なる悲劇ではなく、ルーデウスの人生そのものを反転させた分岐点だったことが分かる。
第1章 ロキシー死亡後、ルーデウスは家族も自分自身も失って老デウスになった
最初の崩壊は、ロキシーの葬儀後に「何もかもどうでもいい」となった時だった
ロキシー死亡後の未来で、
ルーデウスがいきなり復讐鬼の老デウスへ変わったわけではない。
最初に起きたのは、何もする気が起きなくなるほどの無気力だった。
魔石病を治すため神級解毒魔術を求めてミリスまで動き、
その途中でクリフまで失ったのに、帰宅した時にはロキシーの身体は半分まで結晶化していた。
日記にはロキシーの葬儀を終えた後、
何もやる気が起きず、涙だけが流れ、
すべてがどうでもよくなった状態が残されている。
さらにエリナリーゼが町から姿を消したと聞いても、
以前のルーデウスなら心配したはずなのに、関心を向ける余裕すら失っている。
それでもシルフィは夫を見捨てなかった。
ロキシーを失ったルーデウスを元気づけようとし、
家庭へ引き戻そうと何度も側にいる。
しかし未来のルーデウスは、
「もうロキシーはいない」という喪失から抜け出せず、その支えを受け取れなかった。
次に始まるのが酒だった。
酒を飲めば少しだけロキシーを考えずに済む。
だが家で飲めばリーリャや家族の目があるため、
次第に外の酒場へ通い、家庭で悲しみを受け止めるのではなく、
酔って記憶を鈍らせる方向へ逃げるようになる。
さらに酒場で知り合った女性と関係を持ち、
女性の匂いを残したまま帰宅する。
それを察したシルフィは傷つき、
自分ではルーデウスを救えないのかと泣く。
ロキシー死亡まではヒトガミによって壊された未来だったが、ここからはルーデウス自身の行動が家庭を壊し始める。
シルフィを失った後は、家族そのものがルーデウスの日常から消えていく
さらに深刻なのは、
シルフィとの関係が壊れた後だった。
シルフィが家を出ても、
ルーデウスはすぐに追い掛けることができない。
リーリャに促され、ゼニスに頬を叩かれてようやく動き出すほど、判断力まで鈍っている。
そしてシルフィを失った後、
日記はいったん長期間途切れる。
現在のルーデウスが読むと紙質そのものが変わっており、
一年、二年、あるいはそれ以上、
未来の自分が何をしていたのか分からない空白が存在していた。
再び記録が始まった頃には、
文章の内容まで変わっている。
街で見かけた女性、酒場の給仕、娼館、
誰を口説いたかという話が増え、
かつて家族を最優先していたルーデウスとは思えない生活になっている。
さらに現在のルーデウスが違和感を覚えるのが、
アイシャ、ノルン、リーリャ、ゼニス、
そして娘ルーシーの名前がほとんど出てこないことだった。
家族が死亡したと書かれているのではなく、
日記の中から存在そのものが消えていく。
ここが老デウス化で最も重い。
ロキシーを失った直後には、
まだ「悲しんでいる夫」だった。
ところがシルフィまで失った後には、
悲しみを共有する家族そのものから離れ、
女性と酒で時間を潰す人間へ変わっている。
その後、未来のルーデウスは魔術研究へ深く入り込み、
現在では扱えない技術まで身につけていく。
肉体は老い、家族との時間は消えていく一方、
魔術師としての能力だけは上がっていく。
この逆転が、若いルーデウスと老デウスを分ける大きな境目だった。
つまり老デウスは、
ロキシー死亡だけで完成した人物ではない。
ロキシーを失って無気力になる。
酒へ逃げる。
シルフィを傷つける。
残った家族から離れる。
女性関係へ逃避し、最後には魔術とヒトガミへの執着だけが濃くなる。
この一段ずつの変化を経て、
現在のルーデウスから老デウスへ変わっていったのである。
第2章 パウロ死亡時には戻れたのに、ロキシー死亡後は立ち直れなかった
第2期第23話では、ロキシー自身が絶望したルーデウスを家庭へ戻していた
ルーデウスはロキシーを失う以前にも、
大切な人間の死で立てなくなった経験がある。
第2期第22話「親」では、
転移迷宮最下層のマナタイトヒュドラ戦でパウロがルーデウスを庇い、
身体を両断されて死亡する。
救出したゼニスも、
以前のように会話できる状態ではなかった。
父親を失い、母親も元には戻らず、
自分自身も左腕を失う。
第2期第23話「帰ろう」のルーデウスは食事もまともに取れず、
ベッドから動けないほど沈んでいた。
そこへ入ってきたのがロキシーだった。
ロキシーはパウロを生き返らせることはできない。
それでも一人で絶望するルーデウスの部屋へ入り、
側に残り、彼が再び生きる方向へ戻るきっかけになる。
その後の第2期第24話「嗣ぐ」では、
ルーデウスはシルフィが待つシャリーアの家へ帰還する。
パウロ死亡、ゼニスの変化、
さらにロキシーとの関係まで自分の口で伝え、
苦しい現実を抱えながら家庭へ戻る道を選んでいる。
だから未来のロキシー死亡は、
パウロ死亡とは条件が決定的に違う。
父親を失った時にルーデウスを立たせた人物そのものが、
今度は死者になっている。
以前のようにロキシーの部屋へ逃げ込み、その言葉に救われることは二度とできない。
エリス離脱時にも戻れたルーデウスが、未来では「帰る場所」を自分で壊してしまう
第1期第23話でも、
ルーデウスは一度完全に止まっている。
エリスが短い手紙を残して去った時、
「釣り合う男になるため」という真意を知らないルーデウスは、
自分が捨てられたと思い込み、再び部屋へ閉じこもった。
それでも当時には、
ゼニスを探すという目的が残っていた。
前世のように何年も閉じこもるのではなく、
母親を救うという役目を思い出し、
再び外へ出ることができた。
エリス離脱後にはゼニスがいた。
パウロ死亡後にはロキシーがいた。
つまり以前のルーデウスには、
深く沈んでも「この人のために戻る」という対象が残っていた。
ところが未来のロキシー死亡後は、
その支えを自分から切り始める。
シルフィは残っているのに拒絶し、
リーリャやノルンのいる家を離れて酒場へ通い、
最後には女性との関係まで持って帰宅する。
過去のルーデウスは、
大切な人を失うたびに別の誰かへ救われていた。
未来のルーデウスは、
大切な人を失った後に差し伸べられた手を自分で遠ざけた。
その違いが時間とともに大きくなり、現在とは別人の老デウスへつながっていく。
だから老デウスの始まりは、
白髪になった時でも、
重力魔術を覚えた時でもない。
ロキシーを失った後、
シルフィや家族のいる場所へ戻らず、
悲しみを酒と孤独で押し潰そうとした時から始まっていたのである。
第3章 ロキシーを救おうとして、クリフまで失ったことで最初の歯止めが外れた
神級解毒魔術を取りに行けば助けられる――その希望まで途中で崩れていく
ロキシーが倒れた時、
未来のルーデウスは最初から絶望していたわけではない。
足先が紫色の結晶へ変わり、
クリフの識別眼で魔石病と判明すると、
神級解毒魔術さえ手に入れば助けられると考えてすぐ動いている。
ここまでは現在のルーデウスと同じだった。
転移迷宮でゼニスを救う時も、
危険だから諦めるのではなく自分から現場へ向かった。
魔石病についても、
治療法が存在すると分かった以上、
待つより自分で取りに行く選択をしている。
ルーデウス、クリフ、ザノバの三人は転移魔法陣でミリス神聖国へ向かう。
神級解毒魔術は大聖堂の奥に保管され、
大司教級でなければ近づけない場所にあった。
そこで正規の許可を待つのではなく、
夜間に侵入して詠唱を持ち帰るという危険な手段を選ぶ。
ところが現物は、
短い詠唱を書き写せば済むようなものではなかった。
辞書ほどの厚さを持つ一冊の本で、
その場で写すことができない。
仕方なく持ち出した結果、発見され、
三人はミリス側から追跡される立場へ転落する。
さらに転移魔法陣で奇襲を受け、
戦闘の余波で魔法陣まで破壊される。
クリフは毒を受けて意識不明となり、
ルーデウス自身も追っ手を殺している。
日記には、その時の手の感触が残って気持ち悪いという記述まで残る。
ここは老デウスの崩壊で見逃せない。
ロキシーを救うために動いたはずなのに、
進むほど別のものを失っている。
治療法を手に入れた代わりにミリス教団を敵に回し、
転移経路を失い、クリフまで重体になる。
そして別の転移魔法陣を目指す途中、
とうとうクリフが死亡する。
それでもルーデウスは止まれない。
家には魔石病が進行するロキシーがいるため、
親友の死を十分に受け止める時間すらなく帰還を急ぐ。
帰宅した時にはロキシーも死亡し、「動けば救える」という感覚が完全に壊れる
ようやく町へ戻ったルーデウスは、
そこでエリスとギレーヌにも出会っている。
エリスは長い修行を終え、
本来ならルーデウスとの再会へつながる重要な場面だった。
しかし未来のルーデウスには、その再会を受け止める余裕がない。
すでに妻が二人いるから相手にはできないと告げ、
エリスをそのまま帰してしまう。
第1期終盤で自分を捨てたと思い込んだ相手が、
実際には自分のために強くなって戻ってきたのに、
最悪の時期が重なったことで関係を結び直す機会まで失っている。
そして家へ到着すると、
ロキシーは身体の半分を結晶化させて死亡していた。
クリフを失い、
ミリス教団を敵に回り、
初めて人まで殺して持ち帰った神級解毒魔術は、
間に合わなかったことで全て無駄になる。
ここで未来のルーデウスは、
単に妻を一人失っただけではない。
「自分が必死に動けば、まだ何とかできる」という感覚まで折られている。
魔大陸でも転移迷宮でも、
危険な状況ほど動くことで道を作ってきた人物にとって、
努力そのものが何も救えなかった衝撃は大きい。
クリフまで犠牲にして救えなかった。
エリスとも再会できなかった。
そして最後にはロキシーまで失った。
この一連の失敗が、
葬儀後の無気力と酒へ逃げる生活へそのままつながっていく。
老デウスが壊れ始めたのは、
ロキシー死亡という一場面だけではない。
「救うために行動するほど、別の大切なものまで失う」
という経験を短期間に連続して味わったことで、
前へ進むこと自体を信じられなくなっていったのである。
第4章 シルフィとの関係が壊れた時、未来のルーデウスは自分から家庭を壊し始めた
シルフィは支えようとしたが、ルーデウスは「誰にも分からない」と閉じていく
ロキシーの葬儀後、
シルフィは何度もルーデウスを支えようとしている。
だが未来のルーデウスは、
ロキシーが自分を家の外へ出してくれたこと、
パウロ死亡時にも寄り添ってくれたことを思い返し、
その喪失を誰にも理解できないと考えるようになる。
酒を飲んでいなければ、
ロキシーを思い出して泣く。
シルフィから飲み過ぎを止められても、
「彼女に何が分かる」と受け止めてしまう。
家で飲めばリーリャに注意されるため、
今度は外の酒場へ居場所を移す。
ノルンからも距離を置かれ、
酒場ではエリスと顔を合わせても喧嘩になる。
本来ならルーデウスを心配している人間たちが、
この時の彼には自分を責める存在に見えている。
周囲に人は残っているのに、
本人の側から関係を閉じ始めていた。
それでもシルフィは、
夫婦として支えようとする。
自分を抱いてロキシーを忘れてもいいとまで言うが、
ルーデウスは怒鳴って拒絶する。
その時点では、シルフィをロキシーの代わりや八つ当たりの対象にしてしまう自覚だけは残っていた。
ここはまだ完全には壊れていない。
シルフィを傷つけたくないという判断は残っている。
しかし感情を受け止める方法を見つけられないまま、
ルーデウスは再び酒場へ向かう。
そして次の一線を、自分自身で越えてしまう。
娼婦との一夜で、外から壊された未来が「自分で壊す未来」へ変わる
酒場で声を掛けられたルーデウスは、
酔った勢いで娼婦と宿へ向かい、そのまま関係を持つ。
ロキシーを失った悲しみから逃げるために、
シルフィではなく別の女性を選んでしまった。
問題は、その後だった。
女性の匂いを残したまま家へ戻ると、
シルフィはすぐに気づく。
そして「なんでボクじゃ駄目なんだ」と泣き、
自室へ閉じこもってしまう。
地下室のネズミも、
魔石病も、
クリフ死亡も、
少なくともルーデウスが望んで起こした出来事ではなかった。
しかしシルフィとの亀裂は違う。
ここでは未来のルーデウス自身が、
残っていた妻を直接傷つけている。
その後シルフィが家を離れても、
ルーデウスはすぐ追えない。
リーリャに追い掛けるよう言われても動けず、
最後にはゼニスから何度も頬を叩かれて、
ようやくシルフィを追う決断をする。
この反応は、
現在のルーデウスとの差がかなり大きい。
第2期第24話「嗣ぐ」では、
パウロの死やゼニスの状態を抱えながらも、
最後にはシャリーアへ戻り、シルフィへ自分の口で状況を伝えている。
未来では逆に、家庭で向き合うことそのものから逃げ始めている。
だからシルフィとの決裂は、
老デウス化の大きな境目になる。
ロキシー死亡までは、
ヒトガミによって未来を壊された人物だった。
だが酒、浮気、シルフィへの拒絶を経た後は、
残されたものまで自分の手で壊す人物へ変わり始める。
ここから先、
シルフィ死亡後には日記そのものが長期間途切れ、
再開した時には女性、娼館、酒場の話が増え、
家族の名前が不自然なほど消えていく。
その変化は突然起きたのではない。
始まりは、
ロキシーを失った悲しみを誰とも共有できず、
自分だけで抱え込んだことだった。
そこから酒へ逃げ、
シルフィの手を拒み、
最後には自分で家庭へ戻れない状態を作った。
未来のルーデウスが老デウスへ変わった過程で、
この「自分から家を壊し始めた瞬間」は、
ロキシー死亡と同じくらい大きな分岐点だったのである。
第5章 家族の名前まで日記から消え、未来のルーデウスは別人になっていく
シルフィ死亡後の日記は途切れ、再開すると酒と女性ばかりになっていた
シルフィを失った後、
老デウスの日記には長い空白が生まれる。
現在のルーデウスが読み進めると紙質そのものが変わっており、
一年なのか二年なのか、それ以上なのかも分からない。
その空白は、未来の自分が家族へ何を感じていたのかさえ書けなくなった時間でもある。
再び日記が始まった時、
文章の内容はそれまでと明らかに変わっている。
町で見かけた女性、酒場の給仕、娼館、
誰を口説き、誰と関係を持ったかという記録が増え、
現在のルーデウス自身が読んでも別人の生活に見えるほどだった。
もっと不気味なのは、
アイシャ、ノルン、リーリャ、ゼニス、
そして娘ルーシーの名前がほとんど出なくなることだ。
死亡したと書かれているわけではない。
日記の中心から、家族そのものが消えている。
第2期第24話「嗣ぐ」では、
パウロ死亡とゼニスの変化を抱えながらも、
ルーデウスはシャリーアへ帰り、
シルフィ、ロキシー、妹たちと同じ家で暮らす道を選んだ。
当時の再出発は、家庭へ戻ることそのものだった。
ところが未来では逆になる。
同じように悲劇を経験しても、
帰る場所へ戻らず、
酒場や娼館の方へ時間を使うようになる。
ロキシーを思い出して泣いていた段階から、
思い出す時間そのものを別の刺激で埋める段階へ変わっている。
ここは単なる女遊びとして見ると弱い。
未来のルーデウスは、
シルフィ死亡後に悲しみから立ち直ったのではなく、
悲しみを感じる家庭との接点そのものを減らしていた。
家族の名前が日記から消えることが、その変化を最も端的に示している。
そしてヒトガミへの執着だけは逆に濃くなる。
何をしてもロキシーは戻らない。
シルフィも戻らない。
家族との距離も広がる。
その空白を埋めるように、
未来のルーデウスは「ヒトガミを探す」という一点へ時間を使うようになる。
エリスまで敵と思い込み、助けようとする相手の好意を受け取れなくなる
それでもエリスだけは、
未来のルーデウスの前へ何度も現れる。
第1期終盤で離れた後、
剣の聖地で修行を重ねたエリスは、
ルーデウスを嫌って消えたわけではなかった。
しかし未来のルーデウスには、
その真意が届かない。
自分がヒトガミを追う先々へエリスが現れ、
行動を止めようとすることで、
「ヒトガミ側の人間ではないか」という疑念まで抱くようになる。
やがて疑いは強まり、
エリスを拘束して問い詰めるところまで進む。
かつては「エリスに捨てられた」と誤解し、
未来では今度は「エリスは敵だ」と誤解する。
形は違っても、相手の本心を聞けないまま自分だけで答えを決めてしまう点は同じだった。
しかしエリスは、
最後までルーデウスを見捨てない。
アトーフェとの戦いでは、
追い詰められたルーデウスを庇い、
その結果として命を落とす。
そこで初めて、未来のルーデウスは自分の見方が間違っていたと突き付けられる。
ギレーヌから聞かされるのは、
エリスがずっとルーデウスの側にいたかったという事実だった。
第1期で離れたのも、
釣り合うほど強くなって戻るためだった。
未来では死なれてからようやく、
ずっと自分を想っていた相手だと知ることになる。
ここまで来ると、
老デウスが失ったのは家族や仲間だけではない。
人を信じる力そのものまで弱っている。
ロキシーを失ったことで他人の支えを拒み、
シルフィを失ったことで家庭から離れ、
エリスにまで疑いを向ける。
だから未来のルーデウスは、
周囲に人がいなくなったから孤独になっただけではない。
助けようとする相手が残っていても、
その手を敵意として受け取るほど変わってしまった。
老デウス化の後半は、
この「人の好意を受け取れなくなる変化」が大きい。
第6章 【原作ネタバレ】強くなればなるほど、老デウスは守れない人を増やしていった
魔導鎧と新しい魔術を得ても、失った家族を取り戻す力にはならなかった
未来のルーデウスは、
家庭を失った後も何もせず老いたわけではない。
むしろ魔術師としては、
現在とは比較にならない速度で技術を積み上げていく。
目的は一つ、ヒトガミへ辿り着き、殺すことだった。
ルーデウスには、
剣士のように闘気を纏えない弱点がある。
接近戦では身体能力の差を埋められない。
そこでザノバたちと研究を進め、
全身を魔力で動かす魔導鎧へ到達する。
ザリフの義手と同じ発想を拡大し、
鎧全体へ大量の魔力を流すことで、
速度、筋力、防御力を強制的に引き上げる。
魔力消費は大きいが、
装着時には列強級と戦えるほどの力を得られるようになる。
さらに老デウスは、
重力を操作する魔術まで使えるようになる。
物体を浮かせる。
落下方向を変える。
自分の身体へ応用する。
現在のルーデウスがまだ触れていない領域まで、
長い研究の中で到達していく。
電気や声に関する魔術、
治癒魔術の習得も進み、
魔術師としての引き出しは増え続ける。
老デウス自身が、
魔術は感覚を掴めばさらに広げられると考えるほど、
若い頃とは別次元の技術を持つようになっていた。
しかし、そこには大きな逆転がある。
魔術師として強くなるほど、
守りたかった人間は減っている。
ロキシーはいない。
シルフィもいない。
エリスも失う。
クリフもすでに死んでいる。
第1期からのルーデウスは、
強くなることと大切な人を守ることがほぼ同じ方向を向いていた。
魔術を学べば旅で生き残れる。
戦えるようになればエリスを守れる。
転移迷宮へ入れる力があればゼニス救出にも参加できる。
未来では、その関係が完全に崩れる。
いくら魔術を研究しても、
過去に死んだ人間は戻らない。
だから力は家族を守る道具ではなく、
ヒトガミへ近づくための道具へ変わっていく。
ザノバとアイシャまで失い、老デウスは「強くても間に合わなければ守れない」と知る
その残酷さを決定的にするのが、
ザノバとアイシャの死だった。
未来では神殿騎士団がラノア王国内へ入り込み、
ルーデウスが屋敷へ戻った時には、
すでに取り返しのつかない状況になっていた。
屋敷は焼かれ、
地下室前ではザノバが死亡している。
さらに奥へ進むと、
ジンジャー、ジュリ、
そしてザノバへ預けていたアイシャまで殺されていた。
未来のルーデウスは、
残っていた神殿騎士団を皆殺しにする。
ここまで強くなった老デウスなら、
目の前にいる敵を倒すこと自体はできる。
だが倒した後に残るのは、
間に合わなかったという事実だけだった。
ザノバは、
第2期でも人形研究や魔術技術を通してルーデウスと深く関わり、
後には魔導鎧の完成にも欠かせない人物になる。
アイシャは幼少期から家族を支え、
家庭の実務まで担ってきた妹だった。
戦力ではなく、生活そのものを支えていた人間たちを一度に失う。
ここで老デウスは、
別の形で自分の限界を知る。
戦えば勝てる。
魔術も強い。
魔導鎧もある。
それでも、自分がその場所にいなければ誰も守れない。
地下室事件でも同じだった。
ルーデウス本人が攻撃されたわけではなく、
自分の見ていないところでネズミが動き、
後からロキシーへ結果が届いた。
未来の老デウスは長い年月をかけて強くなっても、
結局この弱点から逃れられなかった。
だからザノバとアイシャを失った後、
ヒトガミを探す執念はさらに強くなる。
大切な人を守る生活へ戻るのではなく、
悲劇の根を断つことだけを目的にして、
世界各地の遺跡や古代龍族の記録まで追うようになる。
やがてベガリット大陸奥地の遺跡で、
古代龍族の壁画へ辿り着く。
そこからヒトガミが無の世界にいる可能性、
召喚術や転移魔術、
世界と世界の間にある場所へ関心を深めていく。
そして最後に行き着いたのが、
時間を越えるための研究だった。
もう未来の自分には家族を救えない。
ならばロキシーが死ぬ前へ行き、
若い自分に地下室を開けさせなければいい。
そこでようやく「未来を直す」のではなく、
「未来そのものを発生させない」という発想へ変わる。
老デウスは、
若いルーデウスよりはるかに強くなった。
重力魔術を使い、
魔導鎧を作り、
世界の秘密へ近づき、
最後には時間さえ越えた。
それでもその力で、
自分の時代のロキシーも、
シルフィも、
エリスも、
ザノバもアイシャも救えなかった。
だから老デウスの末路で最も残酷なのは、
弱かったから全てを失ったことではない。
強くなり続けたのに、
強さを手に入れた時には守りたい人間がもういなかったことにある。
最後に残った力を使って救えたのは、
自分の人生ではない。
過去にいる若いルーデウスの人生だった。
その事実こそ、
ロキシー死亡後に始まった老デウスの崩壊が、
どこまで深く進んだのかを示している。
第7章 老デウスの末路が怖いのは、現在のルーデウスと同じ人間だったから
家族を失うたびに強くなり、それでも何一つ取り戻せない人生になった
老デウスの姿だけを見ると、
現在のルーデウスとは最初から別人のように見える。
白髪になり、全身には長年の戦闘で負った傷が残り、
重力魔術や魔導鎧、転移魔術の研究まで進め、
若い頃とは比較にならないほど強大な魔術師へ成長していた。
しかし日記を最初から追えば、
老デウスは突然この姿になったわけではない。
ロキシーを救えず、クリフまで失い、
葬儀後には酒へ逃げ、
支えようとしたシルフィを拒絶し、別の女性との関係によって家庭へ亀裂を入れた。
シルフィまで失うと、
今度は日記から家族の名前そのものが減っていく。
アイシャ、ノルン、リーリャ、ゼニス、ルーシーとの生活より、
酒場、女性、娼館、魔術研究の記録が目立つようになる。
家族を忘れたのではなく、家族と向き合う生活から離れていったのである。
さらにエリスが追い続けても、
その行動をヒトガミ側の妨害ではないかと疑う。
第1期では「自分は捨てられた」と誤解し、
未来では「自分を邪魔する敵だ」と再び誤解する。
死なれてから初めて、エリスがずっと自分を想っていた事実を知ることになる。
ザノバとアイシャを失った時には、
未来のルーデウスはすでに現在以上の戦闘力を持っていた。
残った神殿騎士団を殺すことはできる。
だが、焼けた屋敷へ到着した時には遅く、
地下室の前で倒れたザノバも、その奥にいたアイシャも救えなかった。
ここで老デウスの人生に残酷な逆転が起きる。
第1期から現在までのルーデウスは、
魔術を覚え、経験を積み、強くなるほど守れるものを増やしてきた。
魔大陸ではエリスと共に生き延び、
転移迷宮ではゼニス救出へ参加し、
シャリーアではシルフィやロキシーと家庭を築いた。
老デウスは逆だった。
強くなるほど、
その力を使いたかった相手が先に消えていく。
重力魔術を完成させてもロキシーはいない。
魔導鎧を作ってもシルフィはいない。
世界を渡り歩ける力を得ても、エリス、ザノバ、アイシャは戻らない。
そのため老デウスの魔術研究は、
次第に「家族を守るための強さ」ではなく、
ヒトガミへ到達するための手段へ変わっていった。
敵を倒したかどうかより、
その相手がヒトガミを知っていたか。
遺跡に何が残されているか。
無の世界へどう到達できるか。
人生の中心が復讐と研究へ置き換わっていく。
老デウスの末路が重いのは、
単に大勢の人間を失ったからではない。
家族を守るために強くなった男が、
最後には家族のいない世界で強さだけを残したことにある。
現在のルーデウスが大切にしているものを一つずつ失った先に、
第11話で現れた白髪の老人が立っていたのである。
最後に老デウスが救えたのは自分ではなく、過去にいるルーデウスの人生だった
それでも老デウスは、
最後まで完全に諦めたわけではない。
世界各地を巡り、
ヒトガミの居場所を探し、
古代龍族の遺跡や転移魔術について調べ続ける。
ベガリット大陸奥地では、無の世界へつながる手掛かりにも到達していく。
しかしヒトガミの居場所が分かったとしても、
老デウスの時代ではすでに遅かった。
ロキシーの死は何十年も前の出来事になり、
シルフィもエリスも、
ザノバもアイシャも戻ってこない。
ヒトガミを殺せたとしても、失った人生そのものは元へ戻らない。
そこで研究の方向が変わる。
未来で失った人間を蘇らせるのではなく、
失う前の時代へ自分が戻ればいい。
地下室の扉を開ける前のルーデウスへ会い、
ネズミが外へ出る未来そのものを止める。
老デウスが最後に選んだのは、復讐よりさらに無謀な時間魔術だった。
時間魔術は安全な技術ではない。
第3期第11話で現在のルーデウスの前へ現れた老デウスは、
過去へ到着した時点ですでに瀕死だった。
右腕を失い、身体は衰弱し、
現在の自分へ情報を渡すだけでも限界に近い状態だった。
それでも老デウスは、
地下室へ行くなと最初に伝える。
ロキシーが魔石病で死ぬ未来を説明し、
ヒトガミを疑うこと、
しかし準備もないまま敵対しないことを残す。
自分が何十年もかけて学んだ失敗を、短い時間で現在の自分へ押し込んでいく。
ここで老デウスの行動は、
それまでの人生と大きく変わる。
未来では「自分が強くなってヒトガミを倒す」ことへ執着した。
最後には、自分自身の未来を救うことを諦め、
若いルーデウスへ選択を渡している。
つまり老デウスが最後に救おうとしたのは、
未来の自分ではない。
現在のロキシー。
現在のシルフィ。
まだ生きているクリフ、ザノバ、アイシャ、エリス。
そして、その全員と生きられる若いルーデウスの人生だった。
第1期第23話でエリスに去られた時、
ルーデウスは一度立てなくなった。
第2期第22話でパウロを失った時にも、
食事さえ取れなくなるほど沈んだ。
それでも過去のルーデウスには、
ゼニスを探す目的やロキシー、シルフィという支えが残っていた。
未来では、その支えを一人ずつ失った。
だから第11話で老デウスが現れたこと自体が、
現在と未来を分ける最大の分岐になる。
現在のルーデウスは、
ロキシーが死んでから後悔する必要がない。
シルフィを失ってから大切さへ気づく必要もない。
目の前にいる時点で守れる。
まだ関係が壊れていない時点で選び直せる。
老デウスが何十年もかけて到達した答えを、
現在のルーデウスは悲劇が始まる前に受け取ることができた。
だからロキシー死亡後、
未来のルーデウスはどうなったのかという問いへの答えは、
「老デウスになった」だけでは足りない。
ロキシーを失い、
クリフを失い、
シルフィとの家庭を壊し、
エリスの想いにも気づけず、
ザノバやアイシャまで守れないまま、復讐だけを抱えて老いていった。
そして最後には、
どれだけ強くなっても自分の人生は救えないと悟り、
残された力と命を使って過去へ戻った。
老デウスが最後に成功したのは、
ヒトガミを倒すことではない。
自分が歩いた破滅の道を、若いルーデウスに歩かせないことだった。
現在と老デウスを分けたものは、
才能でも魔力量でもない。
失ってから強くなる未来と、
失う前に選択を変えられる現在という差だった。
第11話で老デウスが命懸けで過去へ来たことで、
ロキシー死亡から始まる未来は初めて回避できる。
白髪の老人として現れた未来のルーデウスは、
自分自身の人生には間に合わなかった。
だからこそ最後の時間を使い、
現在の自分へ「まだ間に合う未来」を残したのである。
無職転生Ⅲまとめ
『無職転生Ⅲ』の記事を、第3期の放送範囲・ナナホシと転移事件・ペルギウスと空中城塞・未来ルーデウス・オルステッド・魔導鎧・エリスとの再会・ルーデウスの家族などに分けてまとめています。
ルーデウス、エリス、シルフィ、ロキシー、ナナホシ、ペルギウス、オルステッド、ゼニス、アリエル、クリフ、エリナリーゼなど、気になる人物や物語の謎はこちらから探せます。
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