イルドアは第9話時点で帝国の敵へ回ったわけでも、帝国軍と共に戦う味方へ戻ったわけでもなく、「厳正中立」を守りながら両陣営との交渉路を残しています。
カランドロを帝国軍へ送り、講和仲介まで担う一方、撤退支援は拒否するため、「イルドアは裏切ったのか」「結局どちら側なのか」が分かりにくく見えます。
ただし原作のその後では、この曖昧な関係が維持できなくなる重大局面へ進み、イルドア参戦と帝国との関係は大きく変化します。
第1章 イルドアは帝国の味方なのか?第9話時点では「敵でも完全な味方でもない」
撤退支援を拒否しても、帝国との同盟関係や外交交渉まで切ったわけではない
第9話「観光旅行」まで見ると、
イルドア王国は帝国を裏切って敵側へ移ったようにも見える。
第8話「雷撃」では南方大陸から撤退する帝国軍に対し、
同盟国でありながら「厳正中立」を掲げて支援を拒否。
その結果、第二〇三航空魔導大隊は連合王国海軍を突破する危険な作戦へ投入されている。
ただし、この時点でイルドアが帝国との外交関係を断絶したわけではない。
第9話では帝国からターニャたち第二〇三航空魔導大隊が送り込まれ、
イルドア側も表敬訪問そのものは受け入れている。
本当に敵対国へ転じたなら、
帝国軍精鋭部隊を国内へ迎え入れる状況自体が成立しにくい。
イルドアの立場を考える時に重要なのは、
「帝国軍へ協力すること」と「帝国との関係を維持すること」を分けること。
イルドアは後者を捨てていない。
第3話「善意の仲介人」ではカランドロ大佐を帝国側へ送り、
帝国と敵対国をつなぐ講和仲介まで進めていた。
そのカランドロは、
単なる大使館員として遠くから戦況を眺めていたわけではない。
観戦武官として帝国軍のサラマンダー戦闘団へ入り、
ターニャとも直接言葉を交わしている。
帝国軍の前線指揮官が戦争終結をどう考えているのか、
かなり近い位置から確認する役目を持っていた。
ここでターニャは、
戦争終結そのものを否定しない。
むしろ長期戦を合理的に嫌いながら、
軍人である以上、
最終判断は国家上層部へ委ねる姿勢を崩さない。
カランドロはその反応をイルドア側へ持ち帰り、
ガスマン大将へ報告している。
つまり第3話のイルドアは、
帝国から離脱する準備だけをしていたわけではない。
帝国と話す。
帝国軍内部を見る。
講和条件を探る。
敵対国側とも接触可能な位置を維持する。
戦場へ直接入らず、
外交で戦争終結へ関わろうとしていた。
その基本姿勢が第8話でも続いている。
帝国を敵と宣言したから撤退を助けなかったのではない。
連合王国海軍と帝国軍が衝突する撤退経路へ手を貸せば、
イルドア自身が戦争参加国と見なされる危険がある。
そこで「厳正中立」を優先した。
帝国から見れば、
同盟国なのに最も苦しい場面で手を貸さない。
イルドアから見れば、
同盟関係があるからといって他国との戦争へ直接参戦する必要まではない。
この認識差が、
第9話の「嫌がらせを兼ねた表敬訪問」につながる。
だから「イルドアは帝国の味方なのか?」への第9話時点の答えは、
軍事面では完全な味方ではない。
しかし外交面では帝国との関係を残している。
敵国へ完全転向したわけでもない。
この中間地点にいる。
イルドアが分かりにくく見えるのは、
態度が毎回変わっているからではない。
むしろ第3話以降、
「帝国との関係は切らないが、帝国の戦争へ全面参加もしない」という線を、
かなり頑固に守っているからになる。
帝国側が本当に「裏切り」と判断していたなら、第9話は表敬訪問ではなく外交断絶や軍事対立へ進む
第9話で帝国が取った行動にも、
イルドアがまだ敵国ではないことが表れている。
撤退支援拒否への怒りはある。
ルーデルドルフたち軍上層部にも、
第3話の抜き打ち動員演習からイルドアへの不信が蓄積している。
それでも帝国は、
宣戦布告しない。
国境へ軍を集結させるわけでもない。
外交関係を切るわけでもない。
選んだのは、
ターニャと第二〇三大隊を使った表敬訪問だった。
この選択は、
帝国側もイルドアを「扱いにくい同盟国」と見ていることを示す。
完全な敵なら、
友好儀礼を使って圧力を掛ける必要はない。
まだ同盟・外交という枠内にいるからこそ、
その枠を逆利用して嫌がらせができる。
イルドアも同じ。
ターニャたちを迎える。
表向きの友好関係を維持する。
それでも軍事参戦まではしない。
第9話でも、
敵か味方かの境界線上に立ち続けている。
この曖昧さは、
今後の戦況が悪化するほど維持が難しくなる。
帝国が勝ち続けるなら、
イルドアは中立でも関係を保ちやすい。
しかし帝国が敗北へ傾けば、
講和仲介国として何を優先するかまで問われる。
第9話は、
その分岐へ入る直前の段階。
イルドアがどちら側へ付くかではなく、
いつまで「どちらにも完全には付かない」を続けられるのか。
そこが、この国のその後を見る一番大きなポイントになる。
第2章 第3話のカランドロはなぜ帝国軍にいた?イルドアは最初から帝国を切っていない
観戦武官としてサラマンダー戦闘団へ入り、ターニャから戦争終結への考えを直接聞いていた
イルドアが帝国の敵なのかを判断するうえで、
第3話「善意の仲介人」のカランドロ大佐は外せない。
この時イルドアは、
帝国軍から距離を置いて眺めていたわけではなく、
軍人を実際の帝国部隊へ送り込んでいる。
派遣先は、
ターニャが指揮するサラマンダー戦闘団。
第2期第1話で新編されたこの部隊は、
第二〇三航空魔導大隊を中心に、
歩兵、砲兵、機甲戦力まで組み込んだ実戦部隊になる。
カランドロはその現場へ観戦武官として同行する。
彼が確認したいのは、
単純な帝国軍の強さだけではない。
長期戦を続ける帝国が、
本当に和平へ向かう意思を持っているのか。
前線軍人は戦争をどう見ているのか。
講和仲介へ入るイルドアには、
その判断材料が必要だった。
カランドロはターニャへ、
戦争の出口に関わる話を振る。
ターニャ自身は、
無限に戦争を続けたい人物ではない。
前世から一貫して合理性と安全を優先し、
不必要な損失や長期消耗戦を嫌っている。
第1期でも、
ライン戦線では参謀本部の作戦へ従いながら、
共和国撃破後には敵主力を完全に潰し切らなければ、
戦争が再燃すると警戒していた。
実際、その懸念通りド・ルーゴは海外へ逃れ、
自由共和国軍として戦闘を継続。
ターニャは「軍事的勝利だけでは戦争は終わらない」現実をすでに経験している。
だから第2期第3話でも、
講和そのものを感情的に拒絶しない。
一方でターニャは軍人。
講和条件を決定する権限はなく、
国家が決めた方針へ従うしかない。
この現実的な返答が、
カランドロに強い印象を残す。
カランドロは、
ターニャとの接触内容をイルドアへ報告する。
そこから見えるのは、
イルドアが帝国軍を単純な敵国軍として観察しているのではなく、
講和可能な相手として内部事情を探っていることになる。
もしこの段階でイルドアが、
帝国を見限って連合王国や連邦へ完全接近するつもりなら、
帝国軍内部へ観戦武官を置き、
講和の可能性を探る必要は薄い。
まだ帝国との関係を残す価値があるからこそ、
カランドロが前線へ入っている。
カランドロとターニャの接触は、この後のイルドア外交へ続く重要な接点になる
第3話のカランドロは、
その場限りの外国人軍人ではない。
イルドアという国が、
帝国との関係を保ちながら戦争終結へ関与するための窓口になっている。
この時点の帝国では、
講和へ進みたい気持ちと、
もっと戦果を積みたい気持ちが衝突している。
ウーガやヴァイスは、
これまでの犠牲を考えれば不利な和平を飲めないと感じる。
前線で多数の戦死者を見てきた軍人ほど、
成果なしの終戦を受け入れにくくなっている。
ターニャは、
そこへ冷静な警戒を向ける。
既に払った損失を惜しみ、
さらに損失を積み上げれば、
戦争は終わらなくなる。
第4話の鉄槌作戦、
第5話のアンドロメダ計画へ進んだ帝国は、
実際にその危険へ踏み込んでいく。
イルドアは、
その帝国を外から見ている。
軍事力は強い。
しかし戦線は拡大。
補給負担は増加。
第7話ではついに兵站破綻によって攻勢継続が困難になる。
第8話では南方大陸撤退まで決断する。
だからカランドロが第3話で帝国軍内部へ入り、
ターニャと直接接触したことは、
後の中立姿勢とも矛盾しない。
イルドアは帝国を信じ切っていたのではなく、
帝国を切り捨ててもいなかった。
味方だから全部助ける。
敵だから全部拒絶する。
その二択を避け、
必要な関係だけを残す。
第3話のカランドロ派遣は、
そのイルドア外交を最も早く見せた場面になる。
だから第8話の撤退支援拒否だけで、
「イルドアが裏切った」と考えると第3話からの流れを見落とす。
イルドアは最初から、
帝国軍へ全面参加する国ではなかった。
同時に、
帝国との対話を捨てる国でもなかった。
第9話まで続く「厳正中立」は、
急な方向転換ではない。
カランドロを帝国軍へ送り込んだ第3話から、
講和仲介を続けながら軍事参加だけは避けるという、
イルドア独自の立場がすでに始まっていたのである。
第3章 講和仲介までしたのに、なぜ第8話では帝国を助けなかった?
外交で戦争終結を探ることと、帝国軍と一緒に戦うことはイルドアにとって別問題
イルドアの行動が分かりにくく見える最大の要因は、
第3話では帝国と敵対国の間に入り講和仲介へ動いているのに、
第8話では帝国軍の南方撤退支援を拒否していること。
一見すると、
「和平には口を出すのに、肝心な時は助けない国」に見える。
ただしイルドア側からすると、
二つの行動は矛盾していない。
講和仲介は自国軍を戦場へ投入せずにできる。
一方、
帝国軍の撤退経路確保へ直接協力すれば、
連合王国海軍との軍事衝突へ踏み込む可能性が高くなる。
第3話「善意の仲介人」でイルドアが狙ったのは、
帝国軍の勝利を支援することではなく、
戦争そのものを終わらせる位置へ入ることだった。
カランドロ大佐を帝国側へ送り、
サラマンダー戦闘団へ観戦武官として同行させたのも、
帝国軍内部の温度を探るためになる。
そこでカランドロは、
ターニャ本人と戦争終結について会話する。
ターニャは、
戦争を永遠に続けたい軍人ではない。
むしろ長期戦と無駄な損耗を嫌い、
国家上層部が適切な和平を選ぶなら従うという現実的な立場を示す。
一方、
帝国軍内部では別の感情も強い。
第3話ではウーガやヴァイスが、
これまで積み上げた犠牲を考えれば、
十分な成果なしで終戦することへ抵抗を示す。
ターニャは、
既に払った損失を惜しんで追加損失を重ねる危険を警戒する。
この温度差を、
イルドア側は外から見ている。
帝国軍は強い。
しかし軍事的勝利が続くほど、
「もう一勝してから和平へ」という発想も強くなる。
第4話「鉄槌作戦」は、
まさにその考えを軍事行動へ移したものだった。
講和を有利にするため、
さらに大規模反攻を実施。
第5話では和平交渉が先送りされると、
今度は連邦資源地帯を狙うアンドロメダ計画へ進む。
戦争を終わらせたいのに、
終わらせるために戦線をさらに拡大していく。
その代償が、
第6話「囮」と第7話「煉獄」で表面化する。
ターニャたちはソルディム528陣地で包囲され、
帝国軍全体ではヨセフグラード以東の補給が破綻。
ゼートゥーアも、
攻勢継続が困難な段階まで追い込まれた現実を認める。
イルドアから見れば、
ここで帝国軍へ全面協力する危険は大きい。
勝利しているように見える帝国が、
内部では兵站と人的損耗によって疲弊している。
しかも戦争終結の機会を何度も逃し、
追加攻勢へ進んでいる。
だから第8話で南方撤退支援を求められた時、
イルドアは「厳正中立」を優先した。
帝国との関係を切ったのではない。
帝国軍の戦争へ、
自国軍まで直接巻き込まれる線だけは越えなかった。
つまり、
講和仲介をする。
帝国と会話する。
観戦武官を送り込む。
それでも軍事支援はしない。
この組み合わせこそ、
イルドアが第3話から続けてきた立場になる。
第8話の支援拒否は「帝国への裏切り」より、戦争参加国にならないための線引きに近い
第8話だけを見ると、
帝国側が怒るのも当然に見える。
南方大陸から撤退する帝国軍は、
連合王国海軍が待つ内海を突破しなければならない。
同盟国イルドアが手を貸せば、
危険を減らせる可能性はあった。
しかしイルドアが直接支援すれば、
その瞬間に中立の看板が大きく揺らぐ。
輸送支援。
港湾使用。
護衛。
情報提供。
どこまで協力しても、
連合王国側から見れば帝国軍事作戦への加担になり得る。
だからイルドアは、
帝国との外交関係よりも、
参戦回避を優先した。
結果として第二〇三航空魔導大隊は、
V-2を使ったバルバロイ作戦へ投入され、
自分たちで撤退経路を確保することになる。
帝国側には当然不満が残る。
「同盟国なのに助けない」
という感情は消えない。
だから第9話で、
ターニャたちを表敬訪問という形で送り込む。
ただし、
ここでも帝国はイルドアを敵国扱いしていない。
軍事報復ではなく、
外交儀礼を使った圧力。
つまり両国の関係は、
まだ切れていない。
イルドアは、
帝国を助けなかった。
しかし帝国を攻撃したわけでもない。
この微妙な線を守り続けているからこそ、
「敵なのか味方なのか」が視聴者にも分かりにくく見える。
第4章 第9話の表敬訪問でイルドアは帝国側へ戻る?ターニャ来訪でも中立は崩れていない
第二〇三大隊を受け入れても、それは帝国軍へ参戦することとはまったく違う
第9話「観光旅行」では、
イルドアがターニャと第二〇三航空魔導大隊を国内へ受け入れる。
ここだけ見ると、
「結局イルドアは帝国側へ戻ったのか」
と思いやすい。
しかし、
表敬訪問を受け入れることと、
軍事同盟として共に戦うことは別。
第9話でもイルドアが撤退支援拒否を撤回し、
帝国軍へ兵力を提供するわけではない。
中立姿勢そのものは維持されている。
帝国側が狙っているのも、
イルドアを即座に参戦させることではない。
むしろ、
「帝国との関係を保ちながら中立だけを名乗るなら、
その関係を人前へ出してやる」という圧力に近い。
そこへ使われるのが、
ターニャと第二〇三大隊。
第8話まで南方撤退の最前線で戦い、
V-2を使った危険な海上突破まで経験した精鋭部隊になる。
イルドアが助けなかった作戦を、
自力で成功させた部隊そのものが入国する。
しかも表敬訪問という形式。
武力侵攻ではない。
外交儀礼として受け入れられる。
だからイルドアは、
完全拒否すれば帝国との関係悪化を自分から認めることになる。
逆に手厚く歓迎すれば、
連合王国や連邦から見て、
「帝国軍精鋭を歓待する中立国」という姿が残る。
イルドアにとっては、
どちらへ転んでも中立の説明が難しくなる。
ここが帝国の狙いになる。
軍事的に屈服させるのではなく、
外交上の立場を窮屈にする。
第9話でターニャが送られたのは、
その存在だけで帝国との結び付きを目立たせられるからになる。
それでもイルドアは、
帝国側へ完全復帰したわけではない。
第3話で講和仲介へ動いた時と同じように、
帝国との対話は残す。
しかし自国軍を帝国の戦場へ送り込むところまでは踏み込まない。
だから第9話時点のイルドアは、
「帝国に戻った国」ではなく、
「帝国との関係を切らずに中立を続ける国」と見る方が近い。
第1期から続く帝国の戦争拡大を見れば、イルドアが簡単に片側へ賭けないのも自然に見える
イルドアの慎重さは、
第2期だけを見ても分かるが、
第1期からの帝国戦争史まで遡るとさらに理解しやすい。
帝国は共和国戦で大きな勝利を収めても、
それだけで戦争を終えられなかった。
第1期終盤では、
共和国軍を軍事的に打倒した後も、
ド・ルーゴが海外へ脱出。
自由共和国軍として戦闘継続へ進み、
ターニャが危惧していた「敵主力を逃せば戦争は終わらない」が現実になる。
劇場版では連邦との戦争がさらに激化。
ターニャは東方へ送られ、
メアリー・スーとの激戦まで経験する。
帝国は一つの敵を倒しても、
別の戦線が次々に開く状態へ入っていく。
第2期では、
その負担が国家全体へ現れる。
東部戦線。
南方大陸。
連合王国海軍。
複数方面で戦力を消耗し、
第7話では補給破綻。
第8話ではついに南方から撤退する。
イルドアが見ている帝国は、
単純な「勝ち馬」ではない。
軍事力は強い。
しかし敵国も増える。
戦線も広がる。
勝利しても戦争が終わらない。
そんな帝国へ全面参加すれば、
イルドア自身まで同じ消耗戦へ入る可能性がある。
逆に完全離脱すれば、
国境近くの大国である帝国を敵へ回す。
だから中間を取り続ける。
第9話のターニャ来訪でも、
その基本線は崩れない。
帝国軍を迎える。
接待する。
関係は切らない。
しかし軍事参戦まではしない。
視聴者からすると、
この態度が「どっちなんだ」と見える。
しかしイルドアからすれば、
どちらか一方へ完全に賭けないこと自体が国家防衛になる。
だから第9話を見た段階で、
「表敬訪問を受けたから帝国の味方へ戻った」と考えるのは早い。
むしろ帝国の圧力を受けても、
イルドアはまだ厳正中立を維持している。
そして問題は、
その中立をいつまで続けられるのか。
帝国の戦況がさらに悪化し、
講和仲介だけでは済まなくなった時、
イルドアは初めて本格的な選択を迫られることになる。
第5章 イルドアがどちら側にも完全には付かない方が得なのはなぜ?
帝国・連合王国・連邦のすべてと話せる立場そのものが、イルドア最大の外交カードになる
イルドアが第9話まで「厳正中立」を手放さないのは、
単に戦争へ参加するのが怖いからではない。
帝国側へ完全参加した瞬間、
連合王国や連邦との交渉経路を失い、
講和仲介国として持っていた価値まで大きく下がる。
逆に帝国を完全に切れば、隣接する強大な軍事国家を直接敵へ回す危険が生まれる。
第3話「善意の仲介人」でカランドロ大佐が帝国軍へ入ったのも、
この中間位置を利用するためだった。
カランドロはサラマンダー戦闘団へ観戦武官として同行し、
ターニャと直接会話。
帝国軍内部に戦争終結を受け入れる余地があるのかを、
外部からではなく前線軍人との接触で確かめている。
イルドアが欲しいのは、
帝国軍の作戦情報を奪って敵へ流す立場ではない。
帝国とも話せる。
敵対陣営とも話せる。
双方が直接交渉しにくい時、
間へ入れる国であり続けることになる。
この位置は、
戦争が長期化するほど価値が上がる。
第1期終盤では共和国が軍事的に崩れても、
ド・ルーゴが自由共和国軍を組織して戦争継続。
劇場版では連邦参戦によって東部戦線が拡大し、
第2期では連合王国海軍や南方大陸まで戦場が広がっている。
つまり一つの敵を倒しても、
次の敵が出てくる。
帝国が軍事勝利だけで戦争を終えられない状況ほど、
「双方と会話できる国」の価値は高くなる。
イルドアはそこへ自国の存在価値を置いている。
第4話「鉄槌作戦」では、
帝国がより良い講和条件を得るため追加勝利を狙う。
第5話では和平交渉が先送りされると、
今度は連邦資源地帯を狙うアンドロメダ計画を発動。
講和の話が出るたび、
帝国は軍事的優位をもう一段積もうとする。
その結果、
第7話「煉獄」では補給破綻。
帝国軍は戦術的には戦えても、
兵站能力が攻勢継続へ追い付かないところまで消耗する。
イルドアから見れば、
この帝国へ全面的に賭ける危険性が具体的に見えてきたことになる。
ここで帝国側へ参戦すれば、
イルドアも兵力、物資、輸送力を同じ戦争へ投じなければならない。
帝国が勝てば恩恵を受けられる。
しかし戦争がさらに長引けば、
帝国と一緒に国力を削られる。
逆に中立を守れば、
国内産業。
輸送網。
食料。
兵員。
戦後に必要となる国家資源を温存できる。
第9話で戦場帰りの第二〇三大隊が見るイルドアの余裕は、
その選択が実際に国力保全へつながっていることを印象付ける。
だからイルドアの中立は、
何も決めない態度ではない。
「どちらかが勝つまで待つ」という単純な日和見とも少し違う。
帝国との関係を残し、
敵国との交渉余地も残し、
自軍だけは全面戦争へ入れない。
三つを同時に維持する積極的な外交になる。
第9話まで国内の余力を残せていること自体が、イルドアの判断が機能している証拠になっている
帝国とイルドアを比べると、
第9話時点の差はかなり大きい。
帝国は第2期開始から東部戦線へ兵力を投入し、
鉄槌作戦。
アンドロメダ計画。
ソルディム528陣地。
南方撤退。
ほぼ休む間もなく大規模軍事行動を続けている。
第二〇三航空魔導大隊も同じ。
新編サラマンダー戦闘団の中核として東部へ送られ、
包囲戦を突破し、
南方ではV-2を使った危険な海上作戦まで担当。
戦果は積んでいるが、
そのたび人的・物的負担も増えている。
対してイルドアは、
自国領土を大規模戦場へしていない。
帝国軍のような継続的消耗も避け、
外交仲介へ回ることで、
戦争参加国とは違う形で存在感を保っている。
帝国軍人から見れば、
その姿が腹立たしく映るのも当然。
自分たちは命を懸けている。
イルドアは安全な場所から中立を語る。
第9話の表敬訪問に、
帝国側の嫌味が混ざるのも理解できる。
ただし国家経営として見ると、
イルドアは目的をかなり達成している。
国土を守る。
兵力を残す。
帝国との窓口を残す。
敵対陣営との会話も可能にする。
戦後まで自国の選択肢を消さない。
だから「イルドアは帝国の味方なのか?」と考える時、
第9話までなら答えは二択ではない。
帝国との関係は必要。
しかし帝国の戦争へ一緒に沈むつもりはない。
この距離感こそが、
イルドアの国益になっている。
第6章 原作ネタバレ注意|イルドアの中立はこの後も続く?レルゲンが外交交渉へ向かう
原作11巻では、戦争継続が限界へ近付く中でレルゲンがイルドアへ派遣される
ここから先は原作小説の展開に触れるため、
アニメ第2期以降のネタバレを含む。
第9話時点の関係だけ知りたい場合は、
ここまでで止めても問題ない。
原作で戦争がさらに長期化すると、
帝国の状況は第7話「煉獄」で見えた補給難より深刻になる。
軍事的勝利を積んでも、
国家全体の人的資源と物資が減少。
戦線維持そのものが、
帝国の存亡へ直結する段階へ進んでいく。
そこで再び重要になるのがイルドア。
原作11巻では、
レルゲンがイルドアへ赴き、
戦争終結へ向けた外交折衝を担当する。
帝国が武力だけでは出口を作れなくなり、
かつて第3話で講和仲介へ動いたイルドアとの外交線が再び前面へ出る。
ここが第3話から長くつながっている。
第3話ではカランドロが帝国軍内部へ入り、
ターニャと接触。
イルドア側から、
帝国に講和意思があるのかを探っていた。
原作11巻では、
今度は帝国側のレルゲンがイルドアへ向かう。
つまり立場が逆になる。
最初はイルドアが帝国へ話を聞きに来た。
戦争末期になると、
帝国側がイルドアを通じて出口を探す必要に迫られる。
レルゲンが選ばれるのも重要。
ターニャのような最前線指揮官ではなく、
参謀本部に所属し、
政治と軍事の両方を理解できる人物。
帝国がこの段階で欲しいのは、
敵軍撃破ではなく、
国家を残すための外交成果になる。
第1期から帝国は、
軍事的には何度も勝利してきた。
共和国本土を崩す。
連邦軍と戦う。
東部で反攻する。
それでも戦争は終わらない。
その最後に必要になるのが、
戦場で敵を倒す能力ではなく、
戦争当事国同士をつなぐ外交経路。
イルドアが長く維持してきた中立性が、
ここで帝国にとって必要な資産へ変わっていく。
つまり第8話で帝国軍を助けなかったイルドアが、
後には帝国を救う可能性のある交渉相手になる。
この反転が面白い。
軍事支援を拒否したからといって、
両国関係そのものが消えたわけではなかったことが、
かなり後になって効いてくる。
第9話で帝国が苛立った「中立」が、戦争末期には帝国自身が必要とする外交経路へ変わる
第9話では、
イルドアの厳正中立が帝国側を苛立たせている。
南方撤退を助けない。
危険な仕事は帝国軍へ残す。
それでも講和仲介国としての立場は維持する。
帝国軍人には都合の良い態度に見える。
しかし戦争が進むほど、
その中立性の価値は逆に上がっていく。
帝国と完全に一体化していないから、
敵側とも話せる。
敵側へ完全転向していないから、
帝国側も交渉相手として利用できる。
もし第8話でイルドアが帝国軍の撤退へ全面参加していれば、
連合王国などから明確な帝国陣営と扱われ、
後の仲介能力まで失っていた可能性がある。
第8話では腹立たしく見えた判断が、
長期的には別の価値を持つ。
第3話のカランドロ。
第9話のターニャ表敬訪問。
そして原作11巻のレルゲン。
人物を並べるだけでも、
両国関係が軍事同盟だけでは動いていないことが分かる。
カランドロは、
イルドアから帝国へ。
ターニャは、
帝国からイルドアへ。
レルゲンも、
戦争末期に帝国からイルドアへ。
双方が何度も人間を送り込み、
完全断絶を避けながら交渉路を維持している。
だから原作11巻まで見ても、
イルドアを単純に「帝国の味方になった」とは言い切れない。
むしろ味方へ完全参加しなかったからこそ、
帝国が困った時に交渉窓口として使える。
ただし、
この中立も永遠には続かない。
戦況がさらに帝国へ不利になり、
各国が戦後を見据えて動き始めると、
イルドアにも中間地点だけでは済まない選択が迫る。
第9話までの
「結局、敵なのか味方なのか」
という疑問は、
原作後半でより大きくなる。
そして次の段階では、
帝国とイルドアの関係そのものが、
外交だけでは収まらない局面へ踏み込んでいく。
第7章 原作重大ネタバレ|イルドアは帝国の味方になる?その後は軍事衝突へ進む
講和仲介だけでは両国関係を支え切れず、戦争末期には「中立」の維持そのものが崩れていく
ここからは原作後半の重大なネタバレを含む。
アニメ第2期より先を知りたくない場合は、
この章は読まずに止めた方がいい。
第9話までのイルドアは、
帝国との関係を切らずに厳正中立を守る国として動いている。
しかし原作後半では、
その中間位置だけで戦争を乗り切ることが難しくなる。
帝国は長期戦による損耗で追い込まれ、
講和へ向けてレルゲンをイルドアへ送る。
第3話でカランドロが帝国側へ入った時とは逆に、
今度は帝国側がイルドアとの交渉路を必要とする。
この段階だけなら、
イルドアはまだ帝国にとって重要な外交相手。
直接戦う国ではなく、
戦争終結へつながる可能性を持つ窓口になる。
だから「その後は帝国の味方になる」と予想しても、
完全に不自然ではない。
ただし戦況がさらに動くと、
帝国とイルドアの関係は外交だけでは収まらなくなる。
原作12巻周辺では、
ついに帝国側とイルドア側が軍事的に衝突する局面へ進む。
イルドア王都まで戦争の影響が及び、
第9話までの穏やかな表敬訪問とはまったく違う関係になる。
つまり結論だけ言えば、
イルドアは最終的に
「帝国の味方として正式参戦し、そのまま最後まで共闘する国」
にはならない。
むしろ情勢の悪化によって、
帝国と直接ぶつかるところまで関係が変化する。
ここで第3話からの流れが効いてくる。
イルドアは最初から、
帝国への忠誠を最優先していない。
講和仲介。
独自の動員。
厳正中立。
撤退支援拒否。
どの場面でも中心にあるのは、
帝国への義理よりイルドア自身の国家存続だった。
第9話で帝国から圧力を掛けられても、
イルドアは即座に帝国軍へ参戦しない。
原作11巻でレルゲンが外交交渉へ来ても、
帝国の属国のように動くわけではない。
最後まで、
自国の国益を基準に判断する。
だから原作で軍事衝突へ進むのも、
突然の人格変化ではない。
第3話から積み上げてきた
「帝国とは関係を持つが、帝国と運命共同体にはならない」
という姿勢の延長にある。
帝国側から見れば、
ここまで関係を維持してきた相手が敵対へ近付くため、
裏切りに見える。
しかしイルドア側から見れば、
帝国と一緒に国家存亡へ沈む選択を避けた結果になる。
この違いが、
「イルドアは敵なのか味方なのか」という疑問を最後まで単純化できないところになる。
イルドアの立場は「敵か味方か」ではなく、その時点で自国を残せる側へ動き続けたと見るとつながる
第2期第3話から原作後半までを一本で見ると、
イルドアの行動にはかなり一貫性がある。
帝国が強い時は関係を切らない。
講和の可能性があれば仲介へ動く。
しかし帝国の軍事行動には深く入り過ぎない。
第8話では撤退支援を拒否。
第9話では、
その報復に近い表敬訪問を受ける。
それでも外交関係を切らない。
ここまでは、
帝国と敵対せずに距離を維持する段階だった。
原作11巻では、
帝国側が戦争終結へ追い込まれ、
レルゲンがイルドアで外交折衝を続ける。
ここでもイルドアは、
帝国を完全に見捨てた国ではない。
交渉相手として帝国との関係を残している。
しかし戦争末期になると、
国同士の選択肢そのものが減っていく。
帝国。
連合王国。
連邦。
その他の周辺国。
戦後秩序を見据えて、
各国がどの側に立つかを決めなければならなくなる。
そこでイルドアが優先するのは、
やはり自国の存続。
帝国と同盟関係があったからという一点だけで、
崩壊へ近付く帝国と最後まで運命を共にすることは選ばない。
この判断は、
第9話時点のターニャから見れば腹立たしい。
帝国軍は血を流している。
イルドアは距離を取る。
それでも国内の余力を残している。
しかし国家として見ると、
イルドアはずっと同じ判断基準で動いている。
戦争へ深入りしない。
交渉経路を残す。
自国軍と国内資源を守る。
状況が変われば、
帝国との関係そのものも見直す。
だから「イルドアは帝国の味方なのか?」への最終的な答えは、
単純な「はい」ではない。
第9話時点では敵国でもない。
原作中盤では重要な外交相手。
それでも最後まで帝国側へ固定される国ではない。
そして原作後半では、
両国が軍事衝突するところまで進む。
つまりイルドアの「厳正中立」は、
最後まで何も選ばないための言葉ではなかった。
選択肢を残し続け、
最後に自国が生き残る側へ動くための立場だったと見えてくる。
第3話のカランドロ。
第8話の撤退支援拒否。
第9話の表敬訪問。
原作11巻のレルゲン外交。
そして原作12巻周辺の軍事衝突。
この流れを追うと、
イルドアは気まぐれに敵味方を変えた国ではない。
帝国との関係を使える間は使い、
危険が大きくなれば距離を取る。
戦争末期には、
その距離がついに軍事対立へ変わる。
だから視聴者が第9話で感じる
「結局この国は敵?味方?」
という疑問は、
実はかなり本質に近い。
イルドアは、
最後までどちらか一方へ簡単に分類できる国ではない。
その曖昧さこそ、
大国同士の戦争に挟まれた小国が生き残ろうとする姿として、
第3話から原作後半まで一貫して描かれている。


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