アッシュのギアスが解けたのは、復活したアーノルドがクリストフの改造によって得たギアスキャンセラーで、サクヤの命令そのものを無効化したから。
確かに「ロゼを大切な弟として扱う関係」には、亡くなったニコルへ向けていた兄の感情をサクヤへ重ねさせるギアスが深く入り込んでいました。
しかしアッシュにはその前から皇重護と交わした「サクヤを守る」という約束があり、解除後にサクヤを選び直すことで、二人の関係は偽物だったのではなく、強制された兄弟関係から本人たちが選ぶ関係へ変わっていきます。
第1章 アッシュのギアスはなぜ解けた?解除したのは復活したアーノルド
第8話でアーノルドが使ったギアスキャンセラーが、サクヤの命令を無効化した
第8話「銀兎」で、
アッシュの中にあった大きな前提が崩れる。
ローエングリンを駆るアーノルドとの戦闘中、
アッシュは自分が忘れていた弟ニコルの存在を突きつけられる。
さらにロゼが本当の弟ではなく、
皇サクヤがギアスで作った関係だったことまで知らされる。
そこで使われたのが、
アーノルドのギアスキャンセラーだった。
アーノルドは以前、
アバシリでアッシュに敗れている。
ところが死亡したと思われたあと、
クリストフの手で改造を受けて復活。
機体もローエングリンへ強化され、
本人には他者へかけられたギアスを無効化する
ギアスキャンセラーが組み込まれていた。
つまり第8話で起きたのは、
アッシュ自身が強い意志でギアスを破ったわけではない。
時間が経って自然に効果が消えたわけでもない。
アーノルドが外部から干渉し、
サクヤがアッシュへかけていた命令そのものを解除した。
ここがまず一番大きな答えになる。
解除されたのは、
アッシュがロゼを
「自分にとって最も大切な存在」と認識し、
弟として守り続けるよう強制されていた部分になる。
第1話からアッシュは、
ロゼを完全に弟として扱っていた。
ナナシの傭兵では兄が戦闘、
弟が情報収集と作戦指揮を担当し、
アッシュはロゼの指示を受けてZi-アポロを駆る。
危険な場所へ入る時も、
アッシュは自分が前へ出る。
ロゼには後方から状況を見させる。
依頼を受けても、
兄として弟を守ることを当然のように優先する。
二人だけを見れば、
長く一緒に生きてきた兄弟にしか見えない。
公式の人物紹介でも、
当初はロゼが弟、
アッシュが兄として紹介されている。
ただし第2話では、
その兄弟関係に早くも違和感が出る。
サクヤがアッシュへ、
自分にとって一番大切な人間を確かめるような問いを向けると、
アッシュはロゼを挙げる。
その瞬間、
瞳にはギアスの影響を示す赤い反応が現れる。
兄として自然に答えているようで、
そこにはサクヤの力が食い込んでいた。
第8話のギアスキャンセラーは、
この第1話から続いていた状態を切ったことになる。
だからアッシュにとって衝撃が大きい。
目の前にいるロゼが弟ではないと知るだけではない。
自分が弟として守り、
一緒に戦い、
何度も命を懸けてきた関係そのものに、
他人のギアスが入っていたと分かる。
しかも、
解除された瞬間に戻ってくるのは、
穏やかな記憶ではない。
アッシュには本当の弟ニコルがいた。
そのニコルは、
ノーランドによって殺されている。
サクヤのギアスによって覆われていた場所の下には、
アッシュが最も失いたくなかった弟の死が残っている。
そのため第8話は、
単に「洗脳が解けた」場面ではない。
アッシュにとっては、
ロゼという弟を失うのと同時に、
ニコルという本当の弟をもう一度失う場面になる。
ギアスキャンセラーによって、
忘れさせられていた痛みまで一気に戻ってくる。
ギアスが解けても、ロゼと過ごした時間そのものまで消えたわけではない
ここで気になるのが、
「ではアッシュはサクヤをもう大切に思わないのか」という部分になる。
ギアスキャンセラーが解除したのは、
サクヤが強制した命令。
しかし、
その命令を受けてから実際に二人が過ごした時間まで、
なかったことになるわけではない。
アッシュはロゼと共に、
ナナシの傭兵として何度も戦ってきた。
ネオ・ブリタニアの支配下で依頼を受け、
ロゼが敵の配置を読み、
アッシュがナイトメアフレームで突破する。
兄弟という形自体は偽物でも、
そこで経験した戦闘や会話まで偽物ではない。
さらに重要なのは、
アッシュがサクヤを守る方向へ向いていたのが、
ギアスをかけられた瞬間からではないことになる。
第7話で明かされた過去まで戻ると、
アッシュはサクヤ本人と行動するより前に、
父・皇重護と出会っている。
そして重護から、
娘であるサクヤを託されていた。
つまりアッシュの中には、
二つの力が重なっていた。
一つは、
サクヤのギアスによってロゼを弟として守る強制。
もう一つは、
皇重護との出会いから生まれた
サクヤを守りたいというアッシュ自身の意志になる。
第8話で消えるのは前者。
後者までは消えない。
だからギアス解除は、
アッシュとサクヤの関係を完全にゼロへ戻すものではない。
むしろここから初めて、
「命令されているから守る」のか、
「自分で守りたいと思う」のかが分かれていく。
第2章 サクヤはアッシュにどんなギアスをかけた?ロゼという弟が生まれた経緯
父の仇だと思ったアッシュへ、サクヤは自分を最も大切な存在として守らせた
サクヤがアッシュへギアスを使った背景には、
皇重護の死がある。
サクヤは長い間、
父を殺したのはアッシュだと信じていた。
アッシュ自身も、
「自分が皇重護を殺した」という形で語っていたため、
サクヤから見れば父の仇が目の前にいる状態だった。
ただし、
サクヤはそのアッシュをすぐ殺さない。
自分のギアスを使い、
アッシュの認識へ介入する。
サクヤを最も大切な存在として扱い、
命を懸けて守るよう強制する。
その結果として作られたのが、
ロゼとアッシュという「傭兵兄弟」だった。
ここでアッシュがサクヤを
「弟」と認識したことには、
本当の弟ニコルが深く関わっている。
アッシュにとって、
最も大切にしていた家族はニコルだった。
病弱で暗殺者としての適性も乏しい弟を、
アッシュは自分が代わりに傷つくことで守り続けている。
ノーランドに引き取られてからも、
アッシュはニコルの分まで訓練を受ける。
暗殺任務も背負う。
弟が捨てられないよう、
自分が結果を出し続けようとする。
アッシュの中では、
「大切な相手を守る」という感情と
「弟を守る」という行動が強く結びついていた。
だからサクヤのギアスが入った時、
その場所へサクヤが入り込む。
外見はロゼへ変える。
立場は弟。
アッシュは兄。
そして、
何より大切な相手として命を懸けて守る。
第1話から見てきたナナシの傭兵兄弟は、
この強制された認識の上に成り立っていた。
ただ、
サクヤ自身もその関係を軽く扱ってはいない。
ロゼとしてアッシュの隣に立ち、
作戦を出す。
戦闘から戻ったアッシュと会話する。
兄として自分を守る姿を見る。
時間が積み重なるほど、
「父の仇へギアスをかけて利用している」だけでは済まなくなる。
第7話で、
その前提はさらに崩れる。
サクヤはアッシュの育ったラベンダーホームを訪れ、
シスターから彼の過去を聞く。
そこで知るのが、
弟ニコルの存在。
ノーランドに暗殺者として育てられたこと。
ニコルを守るためにアッシュが自分を酷使していたこと。
そして、
その弟がアッシュの目の前で殺されたことになる。
さらに、
皇重護についても真実が見えてくる。
アッシュは父を殺した仇ではなかった。
むしろ収容所で重護と出会い、
その人柄に救われ、
最後には娘サクヤを守るよう託されていた。
サクヤはここで、
自分が何をしてしまったのかを知る。
アッシュの「弟を守る心」を利用したからこそ、第8話の解除が重くなる
サクヤが知らずに触れてしまったのは、
アッシュにとって最も痛い場所だった。
ニコルを守れなかった。
目の前で殺された。
それでも忘れられない。
その弟へ向けていた感情の場所へ、
ギアスによって自分を入れてしまった。
第1話から見ると、
アッシュがロゼを守る姿は頼もしく見える。
ロゼの作戦を信じ、
自分は前線へ出る。
多少無茶な状況でも、
弟を危険へ近づけない。
その兄らしさが強いほど、
第7話でニコルの存在を知った時に見え方が変わる。
アッシュは、
初めから兄としてそういう人間だった。
ニコルにも同じことをしていた。
弟が弱ければ自分が働く。
弟が危険なら自分が前へ出る。
弟が生きられるなら自分が傷つく。
サクヤはギアスで、
その最も強い感情を自分へ向けさせていたことになる。
だから第8話でアーノルドがギアスを解除すると、
単純に「サクヤへの好意が消える」だけでは済まない。
アッシュは、
自分が誰を弟として守っていたのかを突きつけられる。
ニコルを失った記憶。
重護との約束。
ロゼとして過ごしたサクヤ。
それらを全部、
自分自身の意志でもう一度見直さなければならなくなる。
ここからの焦点は、
ギアスが効いているかどうかではない。
ギアスが消えたあと、
それでもアッシュはサクヤを守るのか。
その答えによって初めて、
ロゼとアッシュの関係が
「作られた兄弟」だけだったのかどうかが見えてくる。
第3章 本当の弟ニコルは誰?アッシュが「弟を守る兄」になった過去
ラベンダーホームでは、アッシュとニコルは本当に仲の良い兄弟だった
第7話「朧月」で、
サクヤはアッシュが育ったラベンダーホームを訪れる。
第6話までサクヤは、
アッシュが父・皇重護を殺したと思っていた。
だからこそ、
自分が父の仇へギアスをかけ、
ロゼの兄として利用していることにも納得しようとしていた。
ところがシスターから聞かされた過去は、
サクヤが想像していたものとかなり違う。
幼いアッシュには、
ニコルという本当の弟がいた。
ラベンダーホームで暮らしていた頃は、
今の無口で硬いアッシュとは違い、
弟や周囲の子供たちと普通に笑って過ごしている。
その生活を変えたのがノーランドだった。
アッシュとニコルは引き取られ、
穏やかな孤児院から離される。
待っていたのは家族としての新生活ではない。
二人は暗殺者として使うための訓練を受け、
人を殺す仕事へ送り込まれるようになる。
アッシュには、
戦闘や暗殺の才能があった。
一方のニコルには、
同じだけの適性がなかった。
このままでは弟が役に立たないと判断される。
そこでアッシュは、
ニコルの分まで自分が働こうとする。
弟が捨てられないように、
自分が訓練を受け、
危険な任務も引き受けていく。
第1話からロゼを守ってきたアッシュを見ると、
この過去とかなり重なる。
危険な場所には自分が出る。
弟には無理をさせない。
何かあれば自分が盾になる。
アッシュにとって、
弟を守ることはギアスで突然作られた行動ではなかった。
ニコルも、
ただ守られているだけではない。
兄が自分のために無理を重ね、
少しずつ追い詰められていることを分かっている。
だからある暗殺任務では、
アッシュを助けようとして自分も現場へついて行く。
そこで二人の運命が大きく崩れる。
任務先で、
孤児院時代に知っていた少女ルビィと再会する。
アッシュが一瞬動けなくなったところで、
ニコルは兄を助けようとして銃を使う。
しかし騒ぎが広がり、
暗殺任務そのものが失敗してしまう。
ニコルは、
失敗の責任を自分で背負おうとする。
兄を守ろうとする弟。
弟を守り続けてきた兄。
ずっとアッシュがしてきたことを、
今度はニコルが返そうとする場面になる。
しかしノーランドは、
そのニコルを容赦なく殺す。
しかも、
アッシュの目の前で命を奪う。
ずっと自分が守れば大丈夫だと思っていた弟を、
最後には守れなかった。
ここでアッシュの中に、
消えない傷が残る。
だからサクヤのギアスがアッシュへ深く入ったことも分かる。
アッシュにとって
「一番大切な存在」と言われた時、
そこに結びつくのはニコルだった。
サクヤは知らないまま、
アッシュの一番痛い場所へ自分を重ねてしまったことになる。
ニコルの死があるから、「ロゼを弟として守るアッシュ」が第8話で一気に崩れる
第1話から見てきたアッシュは、
ロゼを守ることに迷わない。
ナイトメアフレームへ乗るのは自分。
危険な敵へ向かうのも自分。
ロゼが作戦を考え、
アッシュがその作戦を戦場で形にする。
兄弟として役割がきれいに分かれていた。
だから初見では、
二人に昔から続く強い兄弟愛があるように見える。
しかし第7話でニコルを知ると、
アッシュの「兄らしさ」の元が見えてくる。
アッシュは昔から、
大切な弟を自分の手で守ろうとする人間だった。
第8話でギアスが解除されると、
そこへ本当の記憶が戻ってくる。
ロゼが弟なのではない。
本当の弟はニコル。
そしてニコルは、
もう生きていない。
アッシュは一度に、
二つの事実を突きつけられる。
今まで守っていた弟は誰だったのか。
ニコルを忘れていた自分は何だったのか。
ロゼとして一緒にいたサクヤへの気持ちは、
どこまで自分のものだったのか。
第8話のアッシュが揺れるのは、
ギアスが消えたことだけではない。
第7話でニコルの最期を見せた直後だからこそ、
第8話の解除が重くなる。
アッシュにとってニコルは、
単なる昔の家族ではない。
守れなかった相手。
今でも心の奥に残っていた、
本当に大切な弟だった。
だからギアスキャンセラーは、
アッシュを自由にしただけではない。
忘れていた痛みまで一緒に戻した。
ロゼを弟だと思う優しい時間が消え、
その下に隠れていたニコルの死が再び現れる。
第8話の戦闘中にアッシュが受けた衝撃は、
そこまで含めて見るとかなり大きい。
第4章 アッシュがサクヤを守ったのは、ギアスだけだったのか
ニコルを失ったあと、アッシュをもう一度立たせたのが皇重護だった
ニコルを殺されたアッシュは、
怒りのままノーランドへ反抗する。
しかし勝てず、
収容所へ入れられる。
大切な弟を失い、
自分が守ろうとしてきたものも全部崩れた。
そこで隣の房にいたのが、
サクヤの父・皇重護だった。
第7話の重護は、
最初からアッシュへ大げさな説教をするわけではない。
食事をしながら話す。
隣の房から声をかける。
心を閉ざしているアッシュにも、
普通の人間として接する。
弟を失って何も見えなくなったアッシュが、
少しずつ重護へ言葉を返すようになる。
重護自身も、
自由な立場ではない。
ネオ・ブリタニアに捕らえられ、
娘のサクヤと離されている。
それでも完全には折れていない。
自分を慕う人たちを信じ、
娘が生きていることを願い、
アッシュにもまだ先があるように話しかける。
アッシュにとって、
ニコルを失った直後に出会った重護は大きかった。
自分にはもう守る相手がいない。
生き続けても仕方がない。
そんな状態だったところへ、
重護との時間が入る。
少しずつ、
アッシュの中に人を信じる感覚が戻っていく。
やがて重護の処刑が決まり、
二人は収容所から逃げようとする。
ここでも、
アッシュは自分だけ助かろうとはしない。
重護と一緒に出る。
しかし脱出の途中で、
重護は撃たれてしまう。
その時、
重護がアッシュへ託すのがサクヤだった。
自分の娘を守ってほしい。
アッシュはその願いを受け取る。
つまり、
サクヤ本人からギアスをかけられるより前に、
アッシュはすでに
「サクヤを守る」と決めていたことになる。
重護はそのまま命を落とす。
アッシュは、
自分を逃がすために重護が死んだと思い詰める。
だから後に
「自分が皇重護を殺した」
という形で背負い込む。
実際に手を下したのではなく、
自分のせいで死なせたという罪悪感だった。
ここが第7話の大きな反転になる。
サクヤはずっと、
アッシュを父の仇だと思っていた。
でも実際には、
父はアッシュを信じていた。
そして最後には、
自分の娘をアッシュへ託していた。
サクヤは知らずに、すでに自分を守ろうとしていたアッシュへギアスをかけてしまった
重護を失ったあとも、
アッシュは約束を捨てない。
サクヤを探す。
重護が最後に守ってほしいと託した娘を、
自分の手で守ろうとする。
ここまでは、
ギアスとは何の関係もないアッシュ自身の行動になる。
ところがサクヤは、
その過去を知らない。
目の前にいるアッシュを、
父を殺した男だと思っている。
だからアッシュが自分へ近づいてきても、
「父との約束を守りに来た」とは受け取れない。
警戒し、
怒りを抱えたままギアスを使ってしまう。
その命令によって、
アッシュの中ではサクヤとニコルが重なる。
サクヤはロゼとして男装し、
アッシュは彼女を弟として守る。
ここから第1話で見た
「ナナシの傭兵」の兄弟が出来上がる。
だから二人の関係は、
最初から全部が作り物だったわけではない。
サクヤがギアスを使う前から、
アッシュには重護との約束があった。
サクヤを守りたいという方向そのものは、
すでにアッシュ自身が選んでいる。
一方で、
「ロゼを本当の弟のように愛する」
という部分にはギアスが深く入っている。
ニコルへ向けていた兄としての感情を、
サクヤが知らずに自分へ向けさせた。
だからサクヤが第7話で真相を知った時、
簡単に受け流せない。
父の仇だと思っていた男は、
父から自分を託されていた。
しかもその男は、
本当の弟を目の前で失っている。
自分はそれを知らず、
ギアスでニコルの場所へ入り込んだ。
サクヤにとっても、
かなり苦しい事実が続けて出てくる。
そして第8話で、
そのギアスがついに解除される。
ここから初めて、
アッシュの本当の気持ちだけが残る。
重護との約束を守るのか。
サクヤを許せるのか。
ロゼとして一緒に過ごした時間をどう受け止めるのか。
ギアスがある間なら、
答えは決められていた。
サクヤを最も大切な存在として守る。
でも解除後は違う。
守るかどうかを、
アッシュ自身がもう一度選ばなければならない。
だから第8話以降の二人を見る時に大切なのは、
「ギアスが解けたから関係が終わったか」ではない。
ギアスがなくなったあとでも、
アッシュはサクヤのところへ戻るのか。
そこで初めて、
二人の間に本物として残ったものが見えてくる。
第5章 ギアス解除でアッシュはどう変わった?「ロゼは弟」という前提が崩れた
第8話でアーノルドに真実を突きつけられ、アッシュはニコルの死まで思い出す
第8話「銀兎」で、
アッシュの前に再びアーノルドが現れる。
以前アバシリで倒したはずの相手が、
ローエングリンへ乗り、
さらにギアスキャンセラーまで持って戻ってくる。
アッシュにとっては、
戦闘だけでも十分に厄介な相手になる。
その戦いの最中、
アーノルドはアッシュが知らなかった事実を突きつける。
ロゼは本当の弟ではない。
本当の弟はニコル。
そしてニコルは、
すでに死んでいる。
今まで当然だと思っていた兄弟関係が、
一気に崩される。
さらに、
サクヤが自分へギアスをかけていたことも分かる。
アッシュは第1話から、
ロゼを弟として扱ってきた。
戦場では自分が前へ出る。
危険な役目も引き受ける。
ロゼが後方から作戦を出せば、
それを信じてZi-アポロを動かしてきた。
アッシュにとって、
ロゼを守ることには迷いがなかった。
多少無茶な作戦でも、
弟が言うなら応える。
敵の攻撃が激しくなれば、
まず自分が受ける。
第1話から続いてきたこの兄弟の形が、
実はギアスの影響を受けていたと知らされる。
しかも解除によって戻るのは、
ニコルという名前だけではない。
第7話で描かれた、
ラベンダーホームでの生活。
ノーランドに引き取られた後の訓練。
弟を守るため、
自分が危険な任務を背負った時間。
そして最後に、
ニコルを守れなかった記憶まで戻ってくる。
アッシュは、
ずっと弟を守る兄だった。
だからこそ、
ニコルを失った傷は深い。
その一番痛い場所へ、
サクヤのギアスによってロゼという弟が重なっていた。
アーノルドは、
そこを一気に剥がしてしまう。
ここでアッシュが受ける衝撃は、
「騙されていた」だけではない。
自分はニコルを忘れていた。
その代わりにロゼを弟として守っていた。
しかも、
そのロゼの正体は皇サクヤだった。
過去と現在が同時に崩れる。
だから第8話のアッシュは、
ギアスが消えたから急に冷静になるわけではない。
むしろ逆になる。
何を信じればいいのか分からない。
ロゼとの時間。
ニコルとの記憶。
皇重護との約束。
サクヤが自分へギアスを使った事実。
全部を自分で受け止め直す必要が出てくる。
ここまで見ると、
ギアスキャンセラーは
アッシュをただ自由にした装置ではない。
アッシュが避けていた過去まで、
まとめて目の前へ戻した。
本当の弟を失った痛みを、
もう一度自分の記憶として抱え直すことになる。
そして同時に、
ロゼとして過ごした時間まで消えるわけではない。
一緒に戦った。
同じ場所へ帰った。
作戦を成功させた。
危険な場面を何度も越えた。
兄弟という形にギアスが入っていても、
そこで起きた出来事まで消えるわけではない。
だからアッシュの問題は、
「ギアスがなくなったからサクヤを嫌うか」では終わらない。
ロゼという弟ではなく、
皇サクヤ本人をどう見るのか。
ここから初めて、
アッシュ自身が答えを出すことになる。
サクヤも「ギアスを使ったから仕方ない」では済ませず、自分のしたことと向き合う
苦しいのは、
アッシュだけではない。
サクヤも第7話で、
自分が大きな勘違いをしていたと知っている。
父・皇重護を殺したと思っていた男は、
実際には父から信頼され、
最後に自分を託された相手だった。
さらに、
アッシュにはニコルという弟がいた。
その弟を、
目の前で失っていた。
アッシュがどれほど弟を大切にしていたのかも、
ラベンダーホームで過去を聞く中で分かってくる。
その事実を知ったサクヤから見れば、
自分のギアスはさらに重くなる。
父の仇だから利用した。
そう思っていた。
でも実際には、
父が信じた相手だった。
しかも、
その人の一番深い傷へ自分が入り込んでいた。
第8話では、
その状態のままサクヤ自身も捕らえられる。
クリストフは、
サクヤをただ牢へ閉じ込めるだけではない。
彼女のギアスがどんな条件で効くのか、
人を使って確かめようとする。
サクヤは、
自分の力が他人へ何をするのかを
嫌でも見せつけられる。
だから、
アッシュのギアスが解除されたことは、
サクヤにとっても逃げられない出来事になる。
これまでは、
ロゼとして隣にいられた。
アッシュも弟だと信じていた。
でも解除された後は、
もうその関係へ隠れられない。
ロゼではなくサクヤとして会う。
自分がギアスをかけたことも残る。
父の仇だと誤解していたことも残る。
ニコルの代わりへ自分を置いてしまったことも残る。
その全部を抱えたまま、
アッシュと向き合わなければならなくなる。
ここからの二人には、
今までより苦しい会話が必要になる。
でも逆に言えば、
ギアス解除後に初めて
本当のアッシュと本当のサクヤが向き合える。
第8話は、
兄弟関係が壊れた回であると同時に、
二人の本当の関係が始まる入口にもなっている。
第6章 解除後もアッシュはサクヤを守る?命令ではなく自分で選ぶ関係へ変わる
ギアスが消えても、皇重護と交わした「サクヤを守る」という約束は消えない
アーノルドが消したのは、
サクヤがかけたギアスになる。
だから、
それ以前の出来事までは消せない。
アッシュがラベンダーホームで育ったこと。
ニコルを守ってきたこと。
皇重護と収容所で出会ったこと。
その記憶は、
アッシュ自身の人生になる。
特に大きいのが、
皇重護との約束になる。
ニコルを失い、
ノーランドに逆らい、
収容所へ入れられたアッシュ。
その隣にいた重護は、
絶望していたアッシュへ普通に話しかけ続けた。
食事をしながら声を掛け、
少しずつ心を開かせる。
その重護と一緒に、
アッシュは脱出しようとする。
しかし途中で重護は撃たれる。
そこで重護は、
自分の娘サクヤをアッシュへ託す。
アッシュはその願いを受け取り、
サクヤを守ろうと決める。
この約束があるのは、
ギアスを受ける前になる。
サクヤがアッシュの認識を変えるより前。
ロゼという弟が生まれるより前。
アッシュはすでに、
皇サクヤという少女を守る側へ立っていた。
だからギアスが解けても、
全部が消えるわけではない。
「ロゼは自分の弟」という認識は崩れる。
ニコルの記憶も戻る。
サクヤに騙されていたことへの怒りも出る。
それでも、
重護へした約束だけはアッシュ自身のものになる。
さらに、
約束だけでもない。
ロゼと過ごした時間がある。
第1話から、
二人はナナシの傭兵として一緒に戦ってきた。
ロゼが敵の配置を読み、
作戦を出す。
アッシュがZi-アポロで敵陣へ飛び込み、
その作戦を完成させる。
第2話では、
アバシリ強制収容所へ突入する。
第3話以降も、
七煌星団と共に戦う。
兄弟という前提がギアスで作られていても、
戦場で互いを信じた瞬間までは作り物ではない。
命を預け合った経験は、
解除された後も残る。
だから、
アッシュがサクヤへ向ける気持ちは
ゼロからやり直すわけではない。
怒りもある。
戸惑いもある。
でも、
一緒に戦ってきた記憶もある。
重護との約束もある。
サクヤ自身を知った時間もある。
ここで初めて、
「守れ」というギアスではなく、
「自分はどうしたいか」がアッシュへ返される。
ギアスが効いている間なら、
答えは決まっていた。
解除後は、
アッシュ本人が選ばなければならない。
最後には「守らされる」のではなく、アッシュ自身がサクヤと共に戦うことを望む
この答えは、
物語の終盤ではっきり出る。
サクヤとアッシュは、
ギアス解除後も一緒に戦い続ける。
ただし以前と同じ
「兄アッシュと弟ロゼ」ではない。
サクヤとアッシュとして並ぶようになる。
終盤では、
ノーランドのファウルバウトを相手に、
Zi-アポロでも歯が立たない。
アッシュは、
自分より遥かに強い相手を前にして絶望する。
これまで操縦技術で多くの敵を押し切ってきたアッシュでも、
力の差を突きつけられる。
そこでアッシュを再び動かすのが、
サクヤの言葉になる。
ギアスで命令されるのではない。
強制されるのでもない。
サクヤ自身の言葉を聞き、
アッシュ自身がもう一度立ち上がる。
さらにアッシュは、
ノーランドへ勝つため、
サクヤに共に最後まで戦うことを望む。
ここが大きい。
以前なら、
サクヤが命令する側。
アッシュはギアスによって守る側だった。
最後は、
アッシュ自身がサクヤへ共闘を求める。
つまり関係が逆ではなく、
対等になる。
弟だから守る。
ギアスをかけられているから守る。
重護との約束だから守る。
それだけではなく、
今のサクヤと自分が一緒に戦いたいから戦う。
二人の間にあったギアスは、
最初は嘘の兄弟関係を作った。
アッシュからニコルの記憶を遠ざけ、
サクヤを大切な弟として認識させた。
だから決して軽いものではない。
サクヤ自身も、
その責任から逃げられない。
でも解除されたあと、
二人には選び直す時間が残る。
アッシュはサクヤを知った上で残る。
サクヤも、
アッシュを利用するのではなく共に戦う。
公式でも最後の二人は、
ギアスの呪いを誓いへ変えて戦う形で描かれる。
だから
「ギアスが解けたらアッシュはサクヤを大切に思わなくなる?」
への答えは、
そうではない。
ギアスによって作られた兄弟関係はいったん壊れる。
でも壊れたからこそ、
今度はアッシュ本人がサクヤを選べる。
第1話では、
アッシュはロゼを弟として守っていた。
第8話では、
その前提を奪われる。
そして終盤では、
皇サクヤだと知った上で隣へ立つ。
この変化を見ると、
二人の関係は
「ギアスで作られた偽物」で終わらなかったことが分かる。
第7章 アッシュとサクヤは最後にどんな関係になる?兄弟ではなく互いに選んだ相手へ変わる
ギアスが解けたあとも、アッシュはサクヤの隣から離れなかった
第8話でギアスが解除された瞬間、
アッシュとサクヤの関係はいったん大きく崩れる。
アッシュはロゼを本当の弟だと思っていた。
しかし実際の弟はニコルで、
そのニコルはすでにノーランドに殺されている。
さらにロゼの正体が皇サクヤだったことまで分かる。
アッシュから見れば、
簡単に受け入れられる話ではない。
自分が弟として守ってきた相手は、
本当は父・皇重護の娘だった。
しかもサクヤは、
父を殺した男だと思い込んだアッシュへギアスを使い、
自分を最も大切な存在として守らせていた。
それでも、
ギアスキャンセラーで消えなかった物がある。
収容所で皇重護と過ごした時間。
処刑へ向かう重護から、
娘サクヤを託された記憶。
そしてロゼとして一緒に戦い、
何度も互いの命を預けてきた経験になる。
第1話の二人は、
見た目には完全な兄弟だった。
ロゼが作戦を立て、
アッシュが戦場へ出る。
敵のナイトメアフレームが迫れば、
アッシュが前へ出て弟を守る。
ロゼも、
アッシュの操縦技術を信じて指示を出していた。
第8話で、
その「兄と弟」という形は壊れる。
でも、
そこで一緒に過ごした時間まで消えるわけではない。
アッシュはロゼの作戦で何度も戦った。
サクヤもアッシュの帰還を待った。
戦場では、
互いを信じなければ生き残れない場面を越えてきた。
だから解除後のアッシュは、
昔のように何も知らない状態へ戻るわけではない。
ニコルを思い出したアッシュ。
重護との約束を知るアッシュ。
サクヤにギアスを使われたことも知ったアッシュ。
その全部を持った上で、
今度は自分の判断でサクヤを見ることになる。
ここが、
第1話から続いてきた二人の関係で一番大きく変わるところになる。
以前は、
ギアスによって「守らなければならない相手」だった。
解除後は、
守るか離れるかをアッシュ自身が選べる。
それでも最後まで隣に残ったことで、
サクヤへの気持ちが命令だけではなかったことが見えてくる。
サクヤ側も同じになる。
以前は、
ロゼという姿へ隠れていた。
アッシュが自分を弟と思っている状態を利用し、
ナナシの傭兵として戦っていた。
でも真実が明らかになった後は、
もうその関係には戻れない。
皇サクヤとして向き合う。
自分がギアスをかけたことも隠せない。
ニコルの記憶へ入り込んでしまったことも消せない。
それでもアッシュの前へ立ち、
今度は命令ではなく自分の言葉で一緒に戦おうとする。
二人の関係は、
ここからようやく対等になる。
兄と弟ではない。
ギアスをかけた者と、
かけられた者だけでもない。
互いの過去も失敗も知った上で、
同じ敵へ向かう二人へ変わっていく。
最後は「守れ」という命令ではなく、アッシュ自身がサクヤとの共闘を選ぶ
終盤で二人が向き合う最大の敵は、
ノーランドになる。
アッシュにとっては、
幼い頃から自分とニコルを支配し、
最後にはニコルを奪った人物。
サクヤにとっても、
北海道を支配し、
父・重護や多くの人々を追い詰めた相手になる。
アッシュはZi-アポロで戦うが、
ノーランドのファウルバウトは圧倒的に強い。
それまで高い操縦技術で敵を倒してきたアッシュでも、
簡単には押し返せない。
攻撃を受け、
機体も追い詰められ、
自分一人の力では勝てない現実を突きつけられる。
ここで以前なら、
サクヤが命令を出し、
アッシュが従う形になっていた。
しかし最後は違う。
サクヤの言葉を聞き、
アッシュ自身がもう一度戦う意思を持つ。
さらにアッシュの側から、
サクヤと共に最後まで戦うことを望む。
この場面まで来ると、
第8話のギアス解除が何を変えたのかがはっきりする。
解除前のアッシュは、
ロゼを最も大切な弟として守るよう強制されていた。
解除後のアッシュは、
皇サクヤだと知っている。
自分へギアスを使ったことも知っている。
それでも自分で隣へ立つ。
だから、
アッシュとサクヤの関係を
「最初から全部偽物だった」と見ると少し違う。
兄弟という形にはギアスが入っていた。
ニコルへ向けていた兄の感情も利用されていた。
そこは確かに、
サクヤの力によって作られた部分になる。
でも、
一緒に戦った経験は消えない。
皇重護との約束も消えない。
サクヤが本当の姿を明かした後に交わした言葉も残る。
何より、
ギアスを解除されたアッシュが
最後にもう一度サクヤを選んでいる。
第1話では、
ロゼが弟だから守った。
第7話では、
本当の弟ニコルと皇重護の過去が分かった。
第8話では、
ギアスキャンセラーによって兄弟という形が壊れた。
そして最後は、
サクヤとアッシュ本人同士で同じ戦場へ立つ。
つまり二人は、
偽物の兄弟から本物の兄弟へ変わるわけではない。
もっと別の関係になる。
誰かに決められた立場ではなく、
互いを知った上で一緒にいることを選ぶ相手になる。
ギアスは、
最初に二人を無理やり結びつけた。
その力が消えたことで、
今度は本当に離れることも出来た。
それでもアッシュは残った。
だからこそ、
解除後の選択には重さがある。
アッシュのギアスが解けた第8話は、
二人の関係が終わる回ではない。
「ロゼの兄としてサクヤを守る」関係が終わり、
「アッシュ自身が皇サクヤの隣へ立つ」関係へ変わる回になる。
最後まで見ると、
ギアス解除は二人を引き離すためではなく、
二人が自分たちの意思で選び直すための転機だったことが見えてくる。


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