ノーランドがニコルを殺した背景には、ニコル個人への強い憎しみより、アッシュ兄弟を最初から「役に立つかどうか」でしか見ていなかった冷酷さがある。
体の弱いニコルは早くから価値を低く見られ、暗殺任務で問題が起きた時にも、家族ではなく不要になった駒として切り捨てられた。
第1章 結論|ノーランドがニコルを殺したのは、兄弟を最初から「使える駒」としてしか見ていなかったから
ニコルは息子ではなく、役に立つかどうかで評価される存在だった
ノーランドがニコルを殺した場面だけを見ると、
あまりにも唐突で冷たい。
まだ幼い。
体も強くない。
それでも迷いなく切り捨てる。
そこに、ノーランドが兄弟をどう見ていたのかが出ている。
アッシュとニコルは、
もともと戦争で家族を失った兄弟だった。
ラベンダーホームで暮らし、
二人で支え合う。
兄のアッシュは、
体の弱いニコルをいつも気にかけている。
そこへノーランドが現れる。
兄弟は引き取られる。
一見すると、
孤児だった二人に新しい居場所ができたようにも見える。
でも実際には、家庭へ迎えられたのとは違う。
ノーランドが見ていたのは、
兄弟の幸福ではない。
どちらが使えるか。
どちらが役に立つか。
戦わせられるか。
命令に従わせられるか。
その目線が最初から強い。
アッシュは身体能力も高い。
戦闘の適性もある。
訓練を受ければ伸びる。
だから暗殺者として育てられていく。
一方ニコルは、体が弱い。
咳き込むことも多い。
同じような戦力にはなれない。
ここで兄弟への扱いに差が出る。
アッシュは使える。
ニコルは使いにくい。
兄弟だから同じように守る、
という発想はノーランドにはない。
家族としてではなく、
性能の違う二人として見ている。
だからニコルが命令どおりに動けなくなった時、
ノーランドは迷わない。
守る。
かばう。
失敗を許す。
そういう親としての反応をしない。
役目を果たせない存在として切る。
この冷たさが、
ニコル殺害の中心になる。
ニコル個人を強く憎んでいたからではない。
逆に、
人として強い感情を向けていなかったことの方が怖い。
ノーランドにとって、
価値があるかどうかが先に来る。
使えるなら残す。
使えないなら捨てる。
アッシュ兄弟は、
最初からその基準の中へ置かれていた。
だから「なぜニコルを殺したのか」を考える時、
その場の失敗だけを見ると浅くなる。
もっと前から、
ニコルはノーランドに家族として見られていなかった。
その積み重ねが、
最後の一線で一気に表へ出た。
暗殺任務で問題が起きた時、ノーランドは迷わずニコルを切り捨てた
ニコルの死につながる場面では、
アッシュが暗殺者として使われている現実も重要になる。
兄弟は引き取られたあと、
普通の少年として暮らしていたわけではない。
アッシュは訓練を受け、
殺すための技術を身につけさせられていた。
そして実際の暗殺任務へ出る。
相手を仕留める。
命令を成功させる。
それがアッシュに求められた役割。
ノーランドにとっては、
育てた暗殺者がどれだけ使えるかを見る場でもある。
そこへニコルが関わる。
本来なら戦闘要員として強くない弟。
それでも兄アッシュとの関係の中で、
任務から完全に切り離されるわけではない。
そして過去につながる人物との遭遇で、
状況が崩れていく。
ここでニコルは、
命令だけを優先する機械にはなれない。
昔の記憶。
人とのつながり。
迷い。
そういう感情が残っている。
だからノーランドが求めるような、
完全な道具にはなれない。
ノーランドは、
その人間らしさを守ろうとしない。
むしろ邪魔なものとして扱う。
任務を乱す。
計画を狂わせる。
なら切る。
そこにためらいがない。
アッシュから見れば、
最も守りたかった弟になる。
戦争で家族を失ったあとも、
ずっと二人で生きてきた。
雨の日には弟へ傘を寄せる。
体調を気にする。
自分より先にニコルを見る。
その弟を、
引き取った相手に殺される。
しかも家族として悲しまれることもない。
必要がなくなったから処分されたように見える。
アッシュにとって、
ここでノーランドへの感情が決定的に変わる。
そしてこの出来事は、
後のアッシュの生き方そのものに残る。
一番守りたかった弟を守れなかった。
その悔いがある。
だから次に「弟」と認識した相手へ、
異常なほど強い保護を向けることになる。
ニコル殺害は、
一人の少年が死んだだけの過去ではない。
アッシュがなぜノーランドを憎むのか。
なぜ弟という存在に執着するのか。
なぜロゼを命懸けで守るのか。
全部の根にある出来事になる。
第2章 アッシュとニコルは、もともとどんな兄弟だった?
戦争で家族を失い、ラベンダーホームで二人支え合って暮らしていた
ノーランドに引き取られる前のアッシュを見ると、
現在の印象とはかなり違う。
無口。
冷静。
必要以上に感情を出さない。
今のアッシュは、
そういう人物に見える。
でも幼い頃は違う。
ニコルと一緒にいる時には、
兄らしい柔らかさがある。
弟を心配する。
笑う。
そばにいる。
二人だけの家族として、
普通の兄弟らしい時間を持っていた。
二人は戦争で家族を失っている。
だからニコルにとってアッシュは、
ただの兄ではない。
残された家族そのもの。
アッシュにとっても同じ。
弟を守ることが、
自分が生きることとほとんど重なっている。
ラベンダーホームでの生活は、
裕福でも安全でもない。
それでも兄弟は一緒。
そこには、
後の暗殺者生活にはない普通の時間がある。
戦うためではなく、
生きるために二人で支え合っている。
ニコルは体が丈夫ではない。
咳をする。
無理をすれば心配になる。
だからアッシュは、
自然に弟へ気を配る。
兄として先に立つ。
危険から遠ざけようとする。
この関係を先に見ておくと、
後のニコルの死がかなり重くなる。
アッシュにとって、
弟は守る対象だった。
自分が強くなれば守れる。
そう思っても不思議ではない。
ところがノーランドに引き取られたあと、
アッシュが得た強さは、
弟を守るためではなく暗殺へ使われる。
ここが皮肉になる。
強くなる。
戦えるようになる。
人を殺せるようになる。
それでも一番大切な弟は守れない。
しかもニコルは、
アッシュが暗殺者になっていく過程を近くで見る。
兄が変わっていく。
家庭で暮らす少年ではなく、
命令で人を殺す存在になっていく。
二人の生活も、
ラベンダーホーム時代とは完全に違っていく。
だから兄弟の過去は、
ノーランドの残酷さだけを見るためのものではない。
アッシュが何を失ったのかを知るために必要になる。
弟。
普通の生活。
自分の意志で生きる時間。
全部が少しずつ奪われていく。
雨の中でも弟へ傘を傾けるほど、アッシュはニコルを守っていた
アッシュとニコルの関係を象徴するのが、
派手な戦闘ではなく、
日常の小さな仕草になる。
雨が降る。
二人で歩く。
アッシュは自分より、
弟が濡れない方を気にする。
傘をニコル側へ傾ける。
自分が少し濡れてもいい。
弟の体調を守る方が先。
この一場面だけで、
アッシュが兄として何を優先していたかが分かる。
今のアッシュは、
戦闘能力の高い人物として描かれる。
銃も使う。
ナイトメアフレームにも乗る。
危険な場面でも冷静。
でもその強さの奥には、
もともと弟を守りたかった少年がいる。
だからノーランドに訓練されても、
人間性が最初から冷たかったわけではない。
殺すことに向いていたから暗殺者になった、
とも少し違う。
環境に押し込まれ、
能力を利用され、
その役割へ作られていった部分が大きい。
ニコルも、
そんな兄を完全に道具として見ていない。
アッシュは兄。
頼る相手。
大切な家族。
だから二人の間だけには、
ノーランドの支配とは別の関係が残る。
それがあるから、
ノーランドにとって兄弟は扱いにくい。
アッシュが完全な駒になるには、
ニコルへの情が邪魔になる。
ニコル側にも、
兄を思う気持ちがある。
二人は互いを人間へ戻す存在でもある。
ノーランドが求めるのは、
命令へ従う暗殺者。
でもアッシュの中心にはニコルがいる。
命令より弟を守る。
任務より家族を気にする。
その部分は最後まで完全には消えない。
だからニコルの死は、
アッシュから弟を奪っただけではない。
彼が人間として残していた一番柔らかい部分を、
力ずくで傷つけた出来事にもなる。
その後のアッシュが、
感情を抑えるようになる。
強くなる。
誰かを守ることへ固執する。
その変化を考える時、
ラベンダーホームで弟へ傘を寄せていた少年の姿が効いてくる。
最初から暗殺者だったのではない。
弟を守る兄だった。
その兄がノーランドに利用され、
最後には守りたかったニコルまで奪われた。
だからアッシュのノーランドへの憎しみは、
単なる主人への反抗ではなくなる。
ニコルを殺されたことは、
アッシュが持っていた家族そのものを、
もう一度戦争のように奪われた出来事。
その喪失が、
後のロゼとの関係にも深く残っていく。
第3章 ノーランドはなぜ兄弟を引き取り、アッシュを暗殺者へ育てた?
養子として迎えられたあとに待っていたのは、家庭生活ではなく戦うための訓練だった
アッシュとニコルにとって、
ノーランドに引き取られることは、
最初だけ見れば救いにも見える。
戦災孤児だった兄弟に、
新しい居場所が与えられたように見えるからだ。
でも実際に始まったのは、
穏やかな家庭生活ではない。
特にアッシュは、
戦うための能力を徹底して伸ばされていく。
兄弟を守るための強さではなく、
命令された相手を消すための強さになる。
訓練にはクリストフも関わる。
アッシュは戦闘技術を叩き込まれる。
相手の動きを読む。
武器を扱う。
ためらわず仕留める。
生き残るためというより、任務を完遂するための技術が増えていく。
ラベンダーホームにいた頃のアッシュは、
弟ニコルを守る兄だった。
雨が降れば傘を弟側へ寄せる。
体調が悪ければ心配する。
強さの向きは、
最初から家族へ向いていた。
ところがノーランドの下では、
その強さを別の方向へ曲げられていく。
誰かを守るためではなく、
誰かを殺すため。
命令を受けたら実行する。
対象が誰であっても、個人的な感情を挟まないことまで求められる。
ここでノーランドがアッシュを引き取った背景も見えてくる。
愛情を与えたいからではない。
少年の中に使える能力を見た。
鍛えれば役に立つ。
暗殺者として使える。
そう判断した部分が大きい。
ニコルは同じ兄弟でも、
アッシュほど戦闘向きではない。
体が弱い。
咳き込む。
無理をさせれば任務には向かない。
だから二人への見方にも差が生まれる。
アッシュは育てる価値がある。
ニコルは戦力になりにくい。
この物差しそのものが、
後の悲劇につながっていく。
普通の養父なら、
体の弱い子ほど守ろうとする。
でもノーランドは逆。
弱さを抱えていることが、
そのまま価値の低さへつながる。
兄弟を家庭の一員として見ていないからこそ出る冷たさになる。
そしてアッシュは、
その環境から簡単には逃げられない。
ニコルもいる。
自分だけ逃げれば、
弟がどうなるか分からない。
守りたい相手の存在が、
逆にノーランドの支配から離れにくくさせる。
だからアッシュの暗殺者としての強さには、
最初から矛盾がある。
強くなるほどノーランドに使われる。
でも弱ければニコルを守れない。
弟のために力を得ながら、
その力によって暗殺者へ深く沈んでいく。
クリストフから殺し方を叩き込まれ、アッシュはノーランドに都合の悪い人物を消す役目を負わされた
訓練を受けた先にあるのは、
模擬戦だけではない。
アッシュは実際の暗殺任務へ送られる。
ここで彼の人生は、
完全に普通の少年から遠ざかっていく。
標的を確認する。
接近する。
逃げ道を読む。
任務が終われば痕跡を残さない。
そういう仕事を、
まだ若い時期から背負わされる。
ノーランドにとって重要なのは、
アッシュが何を感じるかではない。
標的を消せるか。
命令を守れるか。
失敗しないか。
その三つが優先される。
つまりアッシュは、
養子という立場を与えられていても、
実際には私兵に近い。
ノーランド自身の都合に合わせて動かされる。
普通なら大人が背負うはずの危険を、
少年へ押しつけられている。
それでもアッシュが耐える背景には、
ニコルがいる。
自分が従えば、
弟はそばにいられる。
自分が強ければ、
ニコルを守れるかもしれない。
その思いが、
ノーランドに利用されてしまう。
ここが後から見ると残酷。
アッシュが暗殺者として完成していくほど、
一番大切なニコルとの距離まで危うくなる。
任務は家族を守るための手段だったはずなのに、
いつの間にか家族そのものを壊す場所へ変わっていく。
そしてニコルも、
兄が何をさせられているのかを見ることになる。
人を殺す。
命令に従う。
失敗できない。
兄が自分のために耐えていることも、
ある程度感じていたと考えられる。
だから後の任務でニコルが関わる場面は重い。
兄だけの仕事だった暗殺へ、
弟まで巻き込まれていく。
そこでラベンダーホーム時代につながる過去と再び出会い、
兄弟が押し込めていた人間らしさが一気に表へ出る。
ノーランドがアッシュを暗殺者へ育てたことで、
彼は強くなった。
でもその強さは、
自由をくれなかった。
ニコルを守る保証にもならなかった。
むしろ、
ノーランドの命令から逃げられなくなる鎖になった。
その鎖が最後に、
アッシュが最も守りたかった弟の死へつながってしまう。
第4章 ニコルはどんな任務で命を落とした?
アッシュの暗殺任務にニコルまで巻き込まれ、ラベンダーホーム時代の過去が現れる
ニコルの死は、
突然ノーランドに呼び出されて殺されたわけではない。
その前に、
アッシュが命じられていた暗殺任務がある。
この任務が崩れたことが、
兄弟の運命を決定的に変える。
アッシュは、
これまでと同じように標的を消す役目を負う。
ノーランドの命令。
失敗できない仕事。
本人の感情より、
任務達成が先に来る。
ところが今回は、
そこへニコルまで関わる。
しかも任務の中で、
兄弟の過去につながる人物が現れる。
ラベンダーホーム時代を思い出させる相手。
ただの標的として割り切れない存在になる。
ここでニコルは動く。
目の前の状況に対して、
ノーランドが求める完璧な駒としては振る舞えない。
昔のつながり。
恐怖。
兄への思い。
そうした感情が混ざる。
結果として、
任務は予定通りには進まなくなる。
ノーランドから見れば、
ニコルは命令系統を乱した存在になる。
しかももともと体が弱く、
戦力として高く評価されていなかった。
ここでノーランドの価値観が出る。
子供だから仕方ない。
怖かったのだろう。
兄弟を落ち着かせよう。
そういう方向へは進まない。
任務を乱した。
使えない。
なら切る。
それだけで判断する。
ニコルの死が残酷なのは、
失敗の大きさと処分の重さが釣り合っていないことでもある。
まだ少年。
状況に巻き込まれた。
しかもノーランド自身が、
そもそも兄弟を暗殺の世界へ引きずり込んだ側になる。
それでも責任を取るのはニコル。
自分が作った状況なのに、
弱い側へすべてを押しつける。
ここにノーランドの人間観がはっきり出る。
アッシュからすれば、
悪夢のような展開になる。
自分は弟を守るために強くなった。
命令にも従った。
危険な任務もこなした。
それなのに最後は、
その命令を出してきたノーランド自身にニコルを奪われる。
この瞬間、
アッシュが従ってきた時間そのものが裏返る。
弟のためだと思っていた。
耐えれば守れると思っていた。
でも最初から、
ノーランドはニコルを守る対象として見ていなかった。
ニコルの死は「任務失敗の罰」より、ノーランドが人間を道具として扱う人物だと分かる場面
ニコルが殺された流れだけを見れば、
「任務で問題を起こしたから処分された」
と短くまとめることもできる。
でも、それだけではノーランドの怖さが十分に見えない。
大きいのは、
ニコルを殺す時に家族への情がほとんど見えないこと。
一緒に暮らしてきた。
アッシュの弟であることも知っている。
体が弱いことも分かっている。
それでも、判断を止める材料にならない。
ノーランドの中では、
人間関係より用途が優先されている。
アッシュは暗殺者として使える。
ニコルは使いにくい。
そして問題まで起こした。
なら残す価値がない。
この価値観は、
後に明かされるノーランド自身の背景ともつながっていく。
彼もまた、
最初から一人の人間として望まれて生まれた存在ではない。
シャルルのための器という役割を背負わされている。
自分が用途を持つ存在として生まれた。
だからなのか、
他人も用途で見る。
役に立つなら残す。
役に立たないなら切る。
そこに人としての情が入りにくい。
ただし、
それでニコル殺害が正当化されるわけではない。
むしろ逆。
ノーランドがどれだけ歪んだ価値観を持っていたかが分かる。
自分が道具として扱われた痛みを、
別の誰かへそのまま向けてしまったようにも見える。
そして犠牲になったのがニコル。
兄を慕っていた少年。
体が弱くても、
普通の感情を持っていた。
任務より人を見てしまった。
その人間らしさが、
ノーランドの世界では欠点として扱われる。
だからニコルの死は、
アッシュの過去を悲惨にするだけの出来事ではない。
ノーランドが何を大切にせず、
何を基準に人を扱っていたのかを見せる場面でもある。
そしてアッシュは、
その瞬間からノーランドへの従属を続けられなくなる。
弟を守れなかった。
しかも殺したのは、
自分を暗殺者へ育てた相手。
怒りも後悔も、
全部ノーランドへ向かう。
ここからアッシュの人生は、
暗殺者として従うだけの時間から変わる。
ノーランドへの反発。
弟を失った罪悪感。
もう二度と守る相手を失いたくないという執着。
それらが現在のアッシュへ残っていく。
ニコルの死は過去の一事件ではない。
アッシュがなぜここまで「弟を守ること」に強く縛られているのか。
その根を作った出来事になる。
第5章 ニコルを殺されたアッシュは、なぜノーランドへ歯向かった?
守るために強くなったのに、一番守りたかった弟を目の前で失った
アッシュにとって、
ニコルはただの弟ではない。
戦争で家族を失ったあと、
最後まで残った家族そのもの。
だから幼い頃から、
自分が守る側でいようとしてきた。
ラベンダーホームにいた頃も同じ。
体の弱いニコルを気遣う。
雨の日には傘を寄せる。
弟が困れば先に動く。
アッシュの強さは、
もともとニコルを守るためのものだった。
そのアッシュが、
ノーランドのもとで暗殺者へ育てられる。
戦闘訓練を受ける。
武器を扱う。
人を殺す技術まで身につける。
本人が望んだ形ではなくても、
確実に強くなっていく。
どこかでは、
強くなればニコルを守れるという思いもあったはず。
自分が役に立つ。
命令に従う。
そうすれば弟まで危険にさらされずに済む。
少なくとも、
兄としてはそう考えたくなる。
ところが、その前提が崩れる。
ニコルは守られなかった。
アッシュがどれだけ従っても、
どれだけ任務をこなしても、
ノーランドは弟を家族として扱っていなかった。
そして最後には、
ニコル自身が切り捨てられる。
アッシュが一番恐れていたことが、
自分を育てた相手の手で起きる。
ここでノーランドへの従属を続ける意味が消える。
アッシュから見れば、
約束を破られたようなものになる。
自分は命令に従った。
危険な仕事もした。
戦えるようにもなった。
それでも弟は守れなかった。
しかも相手は事故でも敵兵でもない。
ノーランド本人。
自分たちを引き取った人物。
自分を暗殺者へ変えた人物。
その相手がニコルを殺した。
だからアッシュの反抗は、
一度の命令違反への怒りではない。
長年押さえ込んでいたものが、
ニコルの死で一気に噴き出した結果になる。
それまで耐えてきた理由そのものが失われた。
守るために強くなった。
でも守れなかった。
従えば守れると思っていた。
でも従っても奪われた。
その絶望が、
ノーランドへの憎しみに変わっていく。
ここでアッシュは、
暗殺者としての自分にも傷を負う。
人を殺す技術がある。
戦える。
強い。
それなのに、
一番大切な弟を助けられなかった。
だからニコルの死は、
ノーランドへの怒りだけでは終わらない。
アッシュ自身の中にも残る。
自分は何のために強くなったのか。
もっと早く逆らっていれば。
別の選択をしていれば。
そんな後悔まで抱えることになる。
ノーランドへの反抗で拘束され、アッシュは生きる支えまで失っていく
ニコルを殺されたあと、
アッシュが以前と同じように命令へ従えるはずがない。
ノーランドへの感情は決定的に変わる。
養父でも主人でもない。
弟を奪った相手になる。
だからアッシュは歯向かう。
それまで積み上げてきた従属が崩れる。
暗殺者として使われていた少年が、
初めて自分の怒りを優先する。
ただし、その反抗で自由になれるわけではない。
ノーランド側から見れば、
アッシュもまた制御不能になった存在。
ニコルを失って逆らう。
命令へ従わない。
感情で動く。
それでは暗殺者として扱いにくい。
結果として、
アッシュは拘束される。
弟を失った直後に、
自分の自由まで奪われる。
逃げることもできない。
ニコルの死を受け止める時間さえ、
まともには与えられない。
ここがアッシュにとって特に重い。
ラベンダーホームでは、
ニコルがいた。
ノーランドのもとへ来てからも、
どれだけ生活が変わっても、
弟だけは残っていた。
その弟がいなくなる。
守る相手が消える。
自分が耐えてきた根拠も消える。
そこへ拘束まで重なる。
アッシュは、
生きる方向そのものを見失っていく。
だから現在のアッシュが、
静かで感情を表へ出しにくいことにもつながる。
もともと何も感じない人ではない。
むしろ逆。
大切にした相手を失った時の痛みを、
強く抱えすぎた人物になる。
そして、その傷が後に利用される。
「弟」という存在。
ニコルを守れなかった記憶。
兄としてもう一度やり直したい気持ち。
そこへギアスが入り込むことで、
アッシュはロゼを弟として守るようになる。
つまりノーランドがニコルを殺したことは、
過去だけで閉じない。
アッシュの怒り。
喪失。
弟への執着。
現在の行動。
全部へ残り続ける。
ニコルの死で壊れたのは、
兄弟の関係だけではない。
アッシュがノーランドの支配下で生き続ける前提も壊れた。
だから彼が歯向かったのは、
感情的な反発というより、
もう従うものが何も残っていなかったからでもある。
第6章 ニコルの死は、ロゼを「弟」として守り続けたアッシュにどうつながった?
サクヤのギアスによって、アッシュはロゼを本当の弟ニコルだと思い込む
現在のアッシュを見ると、
ロゼへの守り方がかなり強い。
危険があれば前へ出る。
無茶を止める。
戦場でも気にかける。
単なる相棒以上に、
弟を守る兄のように振る舞う。
その背景にあるのが、
サクヤのギアス。
アッシュの認識を書き換え、
ロゼを自分の弟だと思わせる。
つまりアッシュの中に残っていた、
「弟を守る」という感情へ直接触れている。
ここで重要なのは、
何もないところへ感情を作ったわけではないこと。
もともとアッシュには、
ニコルという本物の弟がいた。
大切にしていた。
守ろうとしていた。
そして守れなかった。
だからギアスによって、
弟という位置にロゼが入ると強い。
ただ仲間を守るのとは違う。
過去に失敗した兄として、
今度こそ守らなければならない。
その感情まで動いてしまう。
アッシュがロゼへ向ける優しさには、
ニコルへ向けていた兄としての癖が重なる。
危険から遠ざける。
自分が前へ出る。
多少無茶をしても守る。
それはギアスだけで機械的に生まれた行動ではない。
ニコルとの時間が土台にある。
ラベンダーホームでの生活。
体の弱い弟への気遣い。
守ろうとし続けた記憶。
そして最後に守れなかった痛み。
全部があるから、
ロゼを弟と思った時の反応が強烈になる。
だからサクヤのギアスは、
アッシュにとってかなり残酷。
一番触れられたくない部分。
一番やり直したかった関係。
そこを利用している。
アッシュ自身は、
ニコルを守れなかった。
でもロゼなら守れる。
そう思っていたわけではない。
ギアスによって、
最初から弟として認識させられていた。
その状態で一緒に戦う。
何度も危険を越える。
助ける。
守る。
兄弟のような時間を積み重ねていく。
だから後で真実を知った時の衝撃も大きくなる。
第8話でギアスが解けた時、ニコルを失った記憶とロゼに利用された時間が一気に戻る
ギアスキャンセラーによって、
アッシュの認識が元へ戻る。
そこで起きるのは、
単に「ロゼが弟ではなかった」と分かることだけではない。
本当の弟はニコル。
ニコルは死んでいる。
ノーランドに殺された。
その記憶まで正しい形で戻ってくる。
アッシュにとっては、
過去の傷が一気に開く瞬間になる。
それまでロゼを守ってきた。
弟として見ていた。
一緒に戦ってきた。
その行動の土台が、
サクヤのギアスによって作られていたと知る。
だから怒るのも自然。
自分の記憶を変えられた。
弟を失った痛みまで利用された。
ニコルへの思いを、
別の人物へ向けさせられていた。
これは単なる洗脳以上に重い。
アッシュにとってニコルは、
人生で最も大きな喪失の一つ。
その記憶へ手を入れられた。
だからサクヤへの反発も強くなる。
ただし、
ここでも一つだけ単純ではない部分がある。
ギアスで始まった関係でも、
ロゼと過ごした時間そのものまで消えるわけではない。
一緒に戦った。
危険を越えた。
助け合った。
弟だと思っていた間に、
アッシュ自身が感じたものもある。
真実が戻ったからといって、
全部を瞬間的に無価値にはできない。
ここがニコルとの関係と現在をつなぐ。
ニコルを守れなかったアッシュ。
その痛みを抱えたまま、
今度はロゼを守ってきた。
最初のきっかけはギアスでも、
守るという行動自体はアッシュ本人のものだった。
だからニコルの死は、
過去の説明で終わらない。
現在のロゼとの関係を見る鍵にもなる。
なぜアッシュはここまで弟を守るのか。
なぜ真実を知った時に激しく揺れるのか。
そこへ全部つながる。
ノーランドはニコルを殺した。
その一度の行動が、
アッシュの人生に長く残る。
兄としての後悔を作る。
ノーランドへの憎しみを作る。
そしてサクヤのギアスが入り込めるほど深い傷も残す。
だからアッシュとロゼの関係を見直す時、
ニコルの存在は外せない。
ロゼを守っていたアッシュの中には、
ずっと本当の弟を守れなかった兄が残っていた。
ニコルを失った過去と、
ロゼを弟として守った現在。
この二つがつながることで、
アッシュという人物が単なる強い傭兵ではなく、
「守れなかった弟」をずっと背負ってきた兄だと分かってくる。
第7章 ノーランドは最後まで、アッシュとニコルを本当に何とも思っていなかったのか
人を道具として扱ったノーランド自身も、最初から「用途を持つ存在」として生まれていた
ノーランドの行動だけを見ると、
かなり冷たい。
アッシュを暗殺者として使う。
ニコルを切り捨てる。
兄弟を家族として扱うより、
役に立つかどうかで見ている。
その価値観は、
彼自身の生まれ方とも重なる。
ノーランドは、
最初から一人の人間として普通に育てられた存在ではない。
シャルルにつながる目的を持って作られた人物になる。
つまりノーランド自身も、
「何のために存在するか」を先に決められていた。
本人の希望。
自分が何者になりたいか。
どんな人生を送りたいか。
そういうものより、
先に用途が置かれている。
ここはアッシュ兄弟への接し方と似ている。
アッシュは暗殺者として使う。
ニコルは戦力になりにくい。
役割を果たせるかどうかで価値を見る。
ノーランド自身が受けてきた扱いを、
今度は他人へ向けているようにも見える。
だからといって、
ニコルを殺したことが軽くなるわけではない。
むしろ逆。
自分が人間ではなく道具のように扱われたからこそ、
他人まで道具として見るようになった可能性がある。
そこにノーランドの歪みが出る。
アッシュとニコルを引き取っても、
普通の家庭を作ろうとはしない。
アッシュには戦闘能力を求める。
ニコルには有用性を見る。
二人が何を望んでいるかより、
自分にとってどう使えるかが先に来る。
だからニコルが任務の中で、
人間らしい迷いを見せた時も、
そこへ寄り添わない。
怖かったのか。
苦しかったのか。
兄を守りたかったのか。
そういう心の動きを、
ノーランドは価値として見ない。
任務に使えるか。
使えないか。
それだけで判断する。
そして使えないと見れば、
切り捨てる。
この極端な価値観が、
ニコルの死につながっている。
ノーランドの怖さは、
強く怒って殺すところではない。
感情的に憎んだからでもない。
むしろ、
人間一人の命を価値の計算へ入れてしまえるところにある。
だからアッシュとの違いが際立つ。
アッシュは、
どれだけ暗殺者として育てられても、
ニコルを数字では見なかった。
体が弱い。
戦えない。
それでも大切だった。
弟だから守る。
そこに用途は関係ない。
ノーランドは反対。
使えるかどうかで見る。
アッシュ兄弟の関係そのものを、
最後まで理解できなかったようにも見える。
だからニコルを殺した時、
アッシュがどれほど壊れるかも軽く見ていた。
ニコルの死を見ると、ノーランドとアッシュの決定的な違いは「人を役割以上に見られるか」にある
アッシュもまた、
ノーランドによって道具にされた人物。
暗殺者として育てられる。
命令を受ける。
標的を殺す。
若い頃から、
人間ではなく戦力として扱われてきた。
それでもアッシュは、
ノーランドと同じにはならなかった。
ニコルを守った。
ロゼを守った。
相手が役に立つかどうかではなく、
大切だから守るという感情を失わなかった。
ここが二人の大きな差になる。
同じように利用された側でも、
ノーランドは他人を利用する側へ回った。
アッシュは、
利用されながらも誰かを守る側に残った。
だからニコルの死は、
二人の価値観が真正面からぶつかる場面でもある。
ノーランドにとっては、
使えない存在を切る判断。
アッシュにとっては、
世界で一番失いたくない家族を奪われた瞬間。
同じニコルを見ていても、
二人が見ているものがまったく違う。
ノーランドは性能を見る。
アッシュは弟を見る。
この差が、
その後の敵対を決定的にする。
そして現在のアッシュにも、
その違いは残る。
ロゼとの関係はギアスから始まった。
でも守る時のアッシュは、
また兄として動く。
自分が傷ついても前へ出る。
相手の役立ち方ではなく、
守りたいという感情を優先する。
つまりニコルを殺したことで、
ノーランドはアッシュから家族を奪った。
でも、
アッシュの中にある家族への情まで消すことはできなかった。
むしろ喪失が深かったからこそ、
「今度こそ守る」という思いが強く残った。
ここまで見ると、
「ノーランドはニコルを何とも思っていなかったのか」
という疑問にも少し幅が出る。
少なくとも、
アッシュのように家族として大切にしていたとは言いにくい。
行動を見る限り、
用途や価値を優先していたことの方が強い。
ただノーランド自身も、
最初から普通の人間関係を与えられてきた人物ではない。
自分自身を、
役割とは別の一人の人間として受け止めることが難しかった。
だから他人にも、
同じ見方をしてしまった可能性がある。
その結果、
ニコルは切り捨てられた。
アッシュは深く傷ついた。
そしてノーランド自身も、
誰かと家族になる道から遠ざかっていった。
だからニコル殺害は、
単なる悪役の残虐行為として見るだけでは足りない。
ノーランドが人間をどう見ていたか。
アッシュが人間をどう見ていたか。
その違いが最も強く出る出来事になる。
ノーランドは、
役割で人を見る。
アッシュは、
役割を超えて弟を見る。
この違いがあるから、
ニコルの死はアッシュを完全な暗殺者にはしなかった。
むしろ最後まで、
アッシュの中に残ったのは兄としての感情だった。
ノーランドに壊された過去を抱えながらも、
誰かを大切にすることまで捨てなかった。
そこにアッシュという人物の一番大きな強さがある。


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