『ぐらんぶる』の毒島桜子は伊織に振られた形になるが、第89話の告白は「嫌われたから終わった恋」ではない。
毒島桜子が伊織へ本気をぶつけたことで、伊織が誰との関係を守りたいのか、千紗を含む恋愛がどこへ向かっているのかまで見えてくる。
第1章 結論|毒島桜子は伊織に振られた?恋人にはならなかった
桜子の恋は実らなかったが、嫌われて拒絶されたわけではない
『ぐらんぶる』で毒島桜子は伊織に振られたのか。
結論から言えば、桜子は伊織へ本気の気持ちを伝えるものの、二人は恋人にはならない。
伊織が桜子を選び、正式に交際を始める展開には進まなかった。
そのため結果だけを見れば、「桜子は伊織に振られた」と考えていい。
ただし、かなり重要なのは振られ方になる。
伊織は桜子を嫌いだから拒絶したわけではない。
性格が合わない、二度と関わりたくないという形でもない。
むしろ二人は、それまで何度も本音をぶつけ合ってきたからこそ、最後まで曖昧な関係では終われなくなっていく。
桜子は伊織に対して、かなり早い段階から遠慮がない。
口では平気で罵倒する。
見た目や言動へ容赦なく突っ込み、伊織も負けずに言い返す。
恋愛作品なら距離が縮まるほど優しくなるところだが、この二人は距離が近くなるほど言葉も雑になる。
それでも桜子は伊織から離れない。
むしろ伊織を男として意識するようになってからは、自分から距離を詰めていく。
他の女性が伊織の周囲にいることも気にする。
伊織が自分をどう見ているのか確かめようとする。
冗談や挑発に隠しながらも、行動は次第に本気の恋へ変わっていった。
そして原作第89話では、その恋が大きな決着を迎える。
ここまで来ると、桜子も以前のように「別にそこまで本気じゃない」と逃げることができない。
伊織を好きになっている。
その気持ちを相手へ伝えれば、当然返事を聞くことになる。
選ばれなければ、自分が傷つくことも分かっている。
それでも桜子は伊織へ向き合う。
だから第89話の桜子は、それまでよりずっと無防備になる。
普段なら強気な言葉で相手を押し切れる。
伊織を馬鹿にして、自分の方が一枚上だという顔もできる。
しかし恋の答えだけは、桜子自身の強さでは決められない。
決めるのは伊織になる。
そして伊織は、桜子と恋人になる道を選ばない。
ここだけを切り取れば失恋。
だが伊織は、桜子の気持ちそのものを笑ったり、軽く扱ったりはしない。
そこが、この二人の決着で大きい。
桜子の恋は届かなかった。
それでも「好きになったことまで間違いだった」と否定される失恋ではなかった。
「振られた」で終わらず、桜子自身の変化まで見える
毒島桜子は、もともと恋愛でもかなり強気な人物だった。
自分が魅力的であることも分かっている。
相手の反応を見ながら距離を詰めることもできる。
だから伊織への接近も、最初は桜子らしい攻め方が目立つ。
しかし伊織への気持ちが深くなるにつれて、その余裕が崩れていく。
伊織が千紗と一緒にいる。
愛菜も伊織を好きでいる。
自分だけが伊織の周囲にいる女性ではない。
しかも伊織自身が、簡単に女性を選んで付き合うような人物でもない。
桜子にも、思い通りにならない時間が増えていく。
だから最終的な告白は、「私と付き合えば得だろう」という話ではなくなる。
桜子自身が伊織を好きだから伝える。
相手がどう答えるか分からなくても、本心を出す。
ここまで来たこと自体が、桜子にとって大きな変化になる。
以前の桜子なら、傷つきそうになれば強がることもできた。
相手を馬鹿にして、最初から大した恋ではなかったように振る舞うこともできる。
実際、乙矢への恋が終わった時には、自分の気持ちまで軽く扱おうとするところがあった。
しかし伊織への恋では違う。
本気だったからこそ、振られた事実から逃げない。
ここが「桜子 振られた」という出来事で一番大きい。
伊織と付き合えたかどうかだけなら、答えは短い。
付き合わなかった。
桜子の恋は実らなかった。
それでも桜子にとっては、人を好きになった自分を認められるようになった恋だった。
だから失恋は、単純な敗北としてだけ描かれない。
さらに伊織との関係そのものまで切れるわけではない。
恋人になれなかったからといって、二人が知らない者同士へ戻ることもない。
互いの性格の悪いところまで知り、散々言い争い、それでも一緒にいられる関係は残る。
毒島桜子は伊織に振られた。
だが、それによって桜子自身が否定されたわけではない。
むしろ最後まで本気で好きだったからこそ、強気な毒島桜子の中にある素直な部分が最もはっきり見えた失恋になる。
第2章 沖縄ではまだ振られていない|桜子の恋が一気に前へ出た時
桜子は自分から距離を詰めるが、恋の決着はまだ先だった
「桜子はいつ伊織に振られたのか」を追う時、混同しやすいのが沖縄周辺の展開になる。
桜子は伊織に対してかなり積極的に動き、二人の距離も一気に近づく。
そのため、この段階ですでに告白して振られたように記憶している場合もある。
しかし桜子と伊織の恋に決定的な答えが出るのは、もっと後になる。
桜子の強みは、待たないことだった。
千紗は伊織への気持ちを自分でも簡単には認めない。
愛菜も伊織を好きでありながら、周囲を気にして動けない場面が多い。
それに対して桜子は、伊織を男として意識した後、自分から恋愛の距離を縮めていく。
伊織の反応を見る。
他の女性との関係を気にする。
自分を意識させるような言動もする。
桜子らしい攻め方になる。
その過程では、伊織との物理的な距離まで一気に縮まる場面も出てくる。
普段なら言い争ってばかりの二人だからこそ、突然恋愛らしい空気になった時の違和感が大きい。
伊織自身も、桜子をただの嫌な女として扱い続けることができなくなっていく。
しかし、それでも伊織はその場ですぐに「付き合おう」とはならない。
ここが重要になる。
桜子が積極的だからといって、伊織の気持ちまで同じ速度で進むわけではない。
伊織の周囲には千紗も愛菜もいる。
さらに伊織自身も、誰か一人を選んで今までの関係を変えることへ慎重になっている。
だから沖縄での桜子は、
「もう振られた女性」
ではない。
むしろ伊織へ本気で近づき、
「自分を恋愛対象として見てほしい」
と勝負を始めた段階になる。
桜子自身も、最初から負けるつもりなどない。
自分なら伊織を振り向かせられる。
千紗にも愛菜にも負ける気はない。
その強さが、この頃の桜子にはまだかなり残っている。
強気に攻めた時間があったから、第89話の告白が重くなる
沖縄周辺の桜子と、第89話の桜子には大きな違いがある。
前者には、まだ攻める側としての余裕がある。
伊織へ近づく。
反応を見る。
動揺させる。
ある意味では恋愛も桜子が主導している。
しかし時間が進むと、桜子自身が伊織の返事を怖がる側へ変わっていく。
これは、伊織への気持ちが遊びではなくなったから。
どうでもいい相手なら、振られても大して傷つかない。
次へ行けばいい。
強がって終わらせることもできる。
だが伊織は、そうできない相手になった。
もともと伊織は、桜子にとって理想的な男ではない。
言動は下品。
酒の場では酷い姿も見せる。
女の前で格好をつけても、すぐに化けの皮が剥がれる。
桜子はその全部を知っている。
それでも好きになった。
ここが大きい。
理想化した相手ではなく、欠点まで見たうえで好きになる。
だから伊織から答えを聞くことが怖くなる。
沖縄で積極的に距離を縮めていた桜子が、最後には自分の本心だけを差し出さなければならなくなる。
その変化があるから、第89話の失恋が単なる恋愛イベントではなくなる。
「桜子は振られたのか」を追うなら、沖縄での接近と最終的な告白を分けて見る必要がある。
沖縄では、まだ勝負の途中。
桜子は伊織へ自分を意識させ、恋愛を前へ動かしている。
そしてその時間を重ねた後で、
本当に伊織を好きだと認め、
自分から逃げられなくなった時に、
ようやく恋の答えを受け取ることになる。
だから桜子の失恋は突然ではない。
強気に攻める。
伊織との距離を縮める。
自分の気持ちが想像以上に大きくなっていることへ気付く。
そして最後に、本気の答えを求める。
その積み重ねの先に、第89話の「毒島桜子」がある。
第3章 第89話「毒島桜子」|強気だった桜子が最後に本音だけで勝負する
いつもの挑発ではなく、自分が傷つく覚悟で伊織と向き合った
毒島桜子の恋が大きな決着へ向かうのが、原作第89話「毒島桜子」になる。
それまでの桜子は、伊織へ好意を見せながらも、常にどこか自分が主導権を握っていた。
伊織をからかい、反応を見て楽しみ、時には大胆に距離を縮める。
自分が押せば伊織を動揺させられるという余裕も残っていた。
だが第89話まで来ると、その余裕がほとんどなくなる。
伊織を好きだという感情が、自分でも誤魔化せないところまで大きくなっている。
相手を揺さぶるための言葉ではなく、自分自身が答えを受け取らなければならない。
ここで初めて、桜子は「攻める側」だけではいられなくなる。
伊織から肯定されれば恋人になれる。
拒まれれば、本気だった分だけ自分が傷つく。
桜子ほど強気な人物でも、この答えだけは自分で操作できない。
だからこそ、それまでの大胆な接近以上に、本音を差し出す場面の方が緊張感を持つ。
桜子は、伊織の格好悪いところを知らないまま惹かれたわけではない。
酒に飲まれる姿も知っている。
女性に対して情けないところも知っている。
くだらないことで騒ぎ、男同士で暴走する姿まで何度も見てきた。
それでも好きになった。
だからこの恋は、外見だけを見た憧れではない。
「こんな男のどこがいいのか」と自分で突っ込みたくなる部分まで知ったうえで、それでも伊織を選んでいる。
毒島桜子にとっては、この感情を認めること自体が大きな変化だった。
以前なら、自分が傷つきそうになった瞬間に相手を馬鹿にして逃げることもできた。
冗談だったことにする。
大して好きではなかったと振る舞う。
そうして自分の方が傷ついていない顔をすることもできる。
しかし伊織への恋では、それをしない。
好きだから答えを聞く。
振られる可能性があっても、本気だったことまで消さない。
普段の強気な毒島桜子ではなく、一人の女性として伊織へ向き合う。
ここに第89話の重さがある。
桜子の恋が一番本物になったのは、勝てる保証がなくなってから
桜子は恋愛でも競争心が強い。
伊織の周囲には千紗がいる。
愛菜もいる。
それでも最初の桜子には「自分なら勝てる」という勢いがあった。
千紗はなかなか自分の感情を表へ出さない。
愛菜も積極的になり切れない。
それなら自分が先に動けばいい。
桜子らしい考え方で伊織との距離を縮めていく。
だが恋が深くなるほど、話は単純ではなくなる。
相手を奪えば勝ち。
他の女性より先に付き合えば勝ち。
そのような勝負だけではなくなる。
伊織本人が誰を大切にしているのか。
どの関係を変えたくないと思っているのか。
そこは桜子がどれだけ押しても決められない。
だから最後は、桜子自身の本音しか残らない。
「自分の方がいい女だ」と証明するのではなく、
「私は伊織が好きだ」と差し出す。
この変化が大きい。
桜子が振られたことだけを見ると、恋愛レースから脱落した一人に見える。
しかし実際には、勝敗を競っていた頃よりも、答えを受け入れなければならない最後の方がずっと本気になっている。
だから桜子の告白には、強い人物が弱くなったというだけではない魅力がある。
自分が傷ついてもいいから、本心を誤魔化さない。
その覚悟まで進んだことで、毒島桜子の伊織への恋は一番はっきりした形になる。
そして伊織から返される答えによって、二人の関係は次の段階へ進むことになる。
第4章 伊織は桜子に何と答えた?選ばなかったところに見える伊織の本音
伊織は桜子そのものを嫌っていたわけではない
桜子が振られたと聞けば、次に気になるのは「なぜ伊織は桜子を選ばなかったのか」というところになる。
桜子は美人で、行動力もあり、伊織へ積極的に好意を見せている。
しかも二人は遠慮なく本音を言える。
条件だけなら、かなり相性が良さそうにも見える。
実際、伊織は桜子を本気で嫌っているわけではない。
最初は互いに印象が悪かった。
桜子は伊織へ容赦なく毒を吐き、伊織も桜子へ綺麗な言葉だけを返すような男ではない。
それでも接点が増えるにつれて、二人は妙に遠慮のいらない関係になっていく。
伊織は桜子の性格の悪い部分まで知っている。
桜子も伊織の情けない部分を散々見ている。
それなのに会えば会話が成立し、言い争っても完全には離れない。
互いに相手の表面だけを好きになった関係ではない。
だから伊織が桜子と付き合わなかったことを、
「桜子に魅力がなかったから」
と考えるとズレる。
桜子は十分に特別な存在になっている。
ただ、伊織にとって「大切な女性」と「恋人として選ぶ女性」は同じではなかった。
ここが桜子の失恋で一番大事になる。
桜子を選ばなかったことで、伊織が守りたい関係が見えてくる
伊織は、恋愛に関して決して器用ではない。
女性に興味がないわけでもなく、むしろかなり俗っぽい。
それでも本当に身近な相手との関係になると、簡単には踏み込まない。
特に千紗との関係は長い。
伊織が大学へ入り、伊豆で生活を始めた時から千紗はそばにいる。
PaBでの騒動。
ダイビング。
沖縄。
島での旅行。
様々な出来事を一緒に経験し、最初は面倒な従姉妹のようだった相手との距離が少しずつ変わっている。
二人は恋人らしい甘い会話ばかりをしてきたわけではない。
むしろ口喧嘩も多い。
伊織が暴走すれば千紗が冷たい視線を向ける。
千紗が困れば、伊織が普段とは違う真剣さを見せることもある。
そうした長い積み重ねがある。
だから桜子が本気で迫った時、伊織は単純に
「こんな美人に告白されたなら付き合えばいい」
とはならない。
桜子を選ぶことは、今まで続いてきた他の関係まで変えることになる。
特に千紗との距離を、今までと同じには保てなくなる。
伊織自身も、そのことを無意識のままではいられなくなっている。
ここまで来ると、桜子の告白は伊織へ一つの選択を迫ったとも言える。
桜子と恋人になるのか。
それとも、今の自分が本当に大切にしている関係を守るのか。
伊織は後者へ進む。
だから桜子は振られた。
しかしその答えは、桜子の価値を下げるものではない。
むしろ桜子が本気で迫ったからこそ、伊織も曖昧なまま逃げずに、自分がどこを向いているのか考えなければならなくなった。
その点で、桜子の恋は伊織の恋愛まで前へ進めている。
桜子の失恋は、千紗との恋が確定したという単純な話でもない
ただし、ここで注意したいのは、
「桜子を振った=その瞬間に千紗を恋人として選んだ」
と一直線に見ることではない。
伊織と千紗の関係も、それほど簡単には進まない。
千紗自身が伊織への気持ちをどう受け止めているのか。
伊織自身が千紗をどう見ているのか。
さらに愛菜も伊織を長く好きでいる。
桜子一人が退いたから、自動的に恋人が決まるわけではない。
それでも桜子の告白は、それまで曖昧だった状況を変える。
誰からも決定的な答えを求められなければ、伊織は今まで通り過ごすこともできた。
桜子が本気で答えを求めたことで、
「誰とも付き合わないまま、全員と同じ関係を続ける」
という逃げ道が少しずつ狭くなる。
そして桜子自身も、その答えを受け取る。
だから第89話の失恋は、毒島桜子だけの恋愛エピソードではない。
伊織。
桜子。
千紗。
愛菜。
それぞれが曖昧に抱えてきた感情を、次の段階へ押し出す転換点になる。
桜子は恋人として選ばれなかった。
だが伊織の中へ何も残せなかったわけではない。
本気で好きになり、
本気で伝え、
本気の答えを受け取った。
その一連の出来事があったからこそ、桜子の失恋は単なる敗北ではなく、『ぐらんぶる』の恋愛関係そのものが動く大きな出来事になっている。
第5章 桜子が振られた後、伊織との関係はどうなった?
失恋しても、二人の関係そのものが消えたわけではない
桜子が伊織に振られたからといって、二人の間にあったものが全部なくなるわけではない。
ここが、桜子の失恋を単純な「恋愛レースからの脱落」で終わらせられないところになる。
伊織と桜子は、告白する以前から恋愛だけでつながっていた二人ではなかった。
出会った頃から互いに遠慮がなく、相手の嫌なところまで知ったうえで付き合いが続いてきた。
桜子は伊織へ平気で毒を吐く。
伊織も桜子だからといって必要以上に気を遣わない。
会えば綺麗な会話より、罵倒や言い争いの方が多い。
それでも本気で嫌いなら、そもそもここまで何度も一緒にいる関係にはならない。
恋心が生まれてからも、この基本は大きく変わらなかった。
桜子が積極的に距離を詰めても、伊織との会話まで急に甘くなるわけではない。
相手の弱点を突く。
くだらないことで張り合う。
それでも必要な時には相手の言葉を聞く。
そんな関係の上に、桜子の恋が重なっていた。
だから告白が実らなかった後も、
「もう二度と顔も見たくない」
という形で終わる二人ではない。
もちろん桜子にとって痛くないわけではない。
本気で好きになった相手へ気持ちを伝え、その相手から恋人としては選ばれなかった。
普段なら強気な態度で何でも押し返す桜子でも、これは簡単に笑って済ませられる出来事ではない。
それでも彼女は、自分が伊織を好きだったことまで否定しない。
ここが乙矢への失恋とは大きく違う。
以前なら「見る目がなかった」「別に大したことじゃない」と、自分の気持ちを軽く扱うこともできた。
しかし伊織への恋は、長い時間をかけて本気になったもの。
振られたからといって、その時間まで無かったことにはできない。
そして伊織も、桜子の告白を受け取った以上、以前と全く同じ感覚ではいられない。
あれだけ強気だった桜子が、
本気で自分を選んでいた。
その事実を知ってしまった。
だから恋人にはならなかったとしても、桜子が伊織の中で「どうでもいい相手」へ戻ることはない。
失恋によって恋愛関係は決着しても、それまで積み重ねた人間関係まで消えるわけではない。
桜子と伊織は「恋人」より本音を言える悪友に近い関係が残る
伊織と桜子の相性を見ると、恋人にならなかったことが、そのまま相性の悪さを示しているわけでもない。
むしろ二人はかなり似ているところがある。
綺麗事だけでは動かない。
相手の本音を見抜けば遠慮なく突く。
他人からどう見えるかより、自分が納得できるかを重視する。
そして何より、互いの格好悪い部分をかなり早い段階から知っている。
普通の恋なら、好きな相手には少しでも良く見られたい。
しかし伊織と桜子の間には、その段階がほとんどない。
伊織のだらしなさも、
桜子の計算高さも、
互いに隠し切れていない。
それでも関係が続く。
ここに、この二人独特の強さがある。
桜子が伊織を好きになったのも、理想的な王子様を見つけたからではない。
格好悪いところまで見た。
自分と平気で言い争うところも知った。
それでも、いざという時に他人の気持ちを軽く扱わない伊織を見て、惹かれていった。
だから失恋後も、
「理想と違ったから嫌いになった」
とはならない。
伊織の人間性を知ったうえで好きになった以上、恋人になれなかったからといって、それまでの信頼まで反転するわけではない。
むしろ本音を全部出したことで、二人の間にあった曖昧さが一つ減る。
桜子は伊織を本気で好きだった。
伊織はその気持ちに応えなかった。
そこはもう誤魔化さない。
だからこそ、告白以前のような駆け引きとは違う距離へ進める。
「もしかしたら付き合えるかもしれない」
という期待を抱えながら伊織へ近づく桜子ではなくなる。
それでも伊織本人との関係まで捨てる必要はない。
この二人の場合、
恋人になることだけが近さではなかった。
散々言い争える。
欠点を知っている。
綺麗な顔をしなくても一緒にいられる。
そういう関係が先にあった。
だから毒島桜子は伊織に振られたとしても、二人の物語までそこで終了するわけではない。
恋が終わったことで消える関係ではなく、恋愛とは別の形でも残れるほど、すでに相手をよく知っていた二人だった。
第6章 桜子の失恋で千紗と愛菜はどう動く?伊織を巡る恋が次へ進む
桜子が本気で答えを求めたことで、曖昧だった恋愛関係が動き始める
桜子の失恋は、桜子一人だけの出来事では終わらない。
なぜなら伊織の周囲には、以前から千紗と愛菜がいるから。
三人とも伊織への距離の詰め方は全く違う。
その中で最も早く、自分から明確な答えを求めにいったのが桜子だった。
桜子は待たない。
伊織が自分から気付いてくれるまで様子を見るのではなく、
自分から近づく。
意識させる。
他の女性がいるなら、そこへ割って入る。
この積極性は千紗や愛菜とはかなり違う。
千紗は伊織と日常的に一緒にいる時間が長い。
PaBでも同じ。
家でも顔を合わせる。
ダイビングへ行けば隣にいる。
だからこそ近すぎて、自分が伊織をどう思っているのか簡単には言葉にできない。
最初から恋愛相手として見ていたわけでもない。
むしろ伊織の馬鹿な行動に冷たい視線を向けることの方が多かった。
それでも旅行やダイビング、大学生活を重ねるうちに、伊織が他の女性と近づいた時の反応も少しずつ変わっていく。
愛菜はまた違う。
伊織への好意自体はかなり早くからある。
しかし桜子ほど強引には踏み込めない。
千紗との関係も知っている。
PaBという仲間同士の距離もある。
そのため「好きだから今すぐ私を選んで」と正面から迫ることが難しい。
そこへ桜子が入ってくる。
遠慮しない。
自分の魅力も使う。
伊織へ実際に近づく。
だから千紗と愛菜にとっても、桜子は無視できない存在になる。
ただの女性の友達なら放っておける。
しかし本気で伊織を奪いに来る相手なら、自分自身も「伊織をどう思っているのか」と向き合わざるを得ない。
桜子の恋が大きく動いたことで、周囲にあった曖昧な感情まで表へ押し出されていく。
桜子が振られたから自動的に千紗が勝つわけではない
桜子が伊織と恋人にならなかったからといって、
「これで千紗の勝ち」
と即座に決まるわけではない。
ここはかなり重要になる。
伊織自身が桜子を選ばなかったことと、
その瞬間に千紗へ告白して恋人になることは別の話。
千紗自身にも、まだ自分の感情と向き合う段階がある。
愛菜も伊織を諦めたわけではない。
だから桜子の失恋は、
恋愛候補が一人消えて最終決戦へ進んだ、
というだけの出来事ではない。
むしろ一人が本気で動いたことで、
残った人物たちも曖昧なままでいられなくなった、
と見る方が近い。
原作23巻では、物語の舞台が伊豆秋祭へ移る。
千紗は再びミスコンへ挑む。
以前の千紗なら積極的に目立とうとするような人物ではなかった。
それでも今回は自分から勝負へ向かう。
一方の愛菜も、春祭で伊織たちと出会った頃から半年を経ている。
最初はケバ子と呼ばれ、周囲に合わせるために濃い化粧をしていた。
PaBへ入り、伊織たちと過ごす中で少しずつ自分を出せるようになっていった。
その愛菜が、恋愛についても以前と同じままではいられなくなる。
桜子の存在は、二人にとって強烈だった。
桜子は伊織へ自分から近づける。
好きだと認められる。
そして最後には、自分が傷つく可能性まで受け入れて答えを求める。
千紗や愛菜から見れば、それは自分には簡単にできないことでもある。
だから桜子が振られた後に残るのは、
「強敵が一人いなくなって良かった」
という軽い話ではない。
あそこまで本気で伊織を好きだった女性が、
実際に答えを求めた。
その姿を見た後では、自分だけ何も言わずにいることの意味も変わってくる。
千紗は伊織との関係をどうしたいのか。
愛菜はいつまで気持ちを胸の中だけに置いておくのか。
そして伊織自身は、誰かから本気の好意を向けられた時、これからも答えを避け続けられるのか。
桜子の失恋によって、こうした問いが前へ出る。
だから毒島桜子は、伊織と結ばれなかったから恋愛物語から何も残さず消える人物ではない。
むしろ誰より先に本気で踏み込んだことで、
伊織を中心に止まっていた恋愛を動かした存在になる。
桜子自身の恋には答えが出た。
しかしその答えによって、
千紗と愛菜、そして伊織の恋は次の段階へ押し出されていく。
第7章 乙矢に振られた時とは違う|伊織への失恋で桜子自身が変わった
乙矢への失恋では、自分の気持ちまで軽く扱おうとしていた
毒島桜子は、伊織を好きになる前にも一度はっきりした失恋を経験している。
相手は乙矢。
見た目も雰囲気も桜子の好みに近く、最初はかなり分かりやすく興味を向けていた。
だがその恋は、桜子が望んだ形にはならなかった。
ここで印象的なのが、失恋した後の桜子の振る舞いになる。
本当は傷ついている。
それでも素直に「悲しい」とは言わない。
相手を見る目がなかった、別に大したことではないと、自分の恋そのものまで軽く扱おうとする。
桜子らしい強がりだった。
人に振られた自分を認めたくない。
本気だったと思われるのも悔しい。
だから先に自分から価値を下げれば、傷ついていない顔ができる。
それまでの桜子には、そうやって自分を守るところがあった。
その桜子に対して、伊織は別の反応をする。
桜子が本気で好きだったなら、その気持ちまで馬鹿にする必要はない。
失恋したからといって、好きだった時間そのものまで無価値になるわけではない。
伊織は、桜子が自分で踏みにじろうとした感情を軽く扱わなかった。
ここが大きい。
伊織は乙矢より格好いい男として桜子の前に現れたわけではない。
むしろ普段の言動だけなら、桜子が何度も馬鹿にしたくなるような男。
それでも、自分が本当に傷ついている時に、その気持ちを笑わなかった。
その一言が、桜子の中に残る。
だから乙矢への失恋は、それだけで終わらない。
その直後に伊織という男の見え方が変わり始める。
外見でもない。
条件でもない。
自分の一番格好悪い瞬間を見たうえで、気持ちまで否定しなかった。
そこから桜子の恋は、今度は伊織へ向かっていく。
伊織への失恋では、今度は桜子自身が「好きだった自分」を否定しなかった
そして時間が進み、今度は桜子自身が伊織に振られる側になる。
ここで乙矢の時との違いがはっきりする。
乙矢に振られた時は、
「こんな恋、大したことではなかった」
と自分で小さくしようとした。
だが伊織への恋では、最後までそれをしない。
伊織を好きだった。
本気で付き合いたかった。
他の女性に負けたくなかった。
自分を選んでほしかった。
そこまで認めたうえで答えを受け取る。
これが桜子の大きな変化になる。
もちろん振られて平気なわけではない。
傷つかないわけでもない。
しかし以前のように、自分の恋まで馬鹿にして逃げることはしない。
伊織に教えられたことを、今度は桜子自身ができるようになっている。
好きになったことは失敗ではない。
選ばれなかったからといって、その時間が無意味になるわけでもない。
振られても、自分が本気だったことだけは消さなくていい。
そこまで桜子が変わったからこそ、第89話の失恋は重い。
桜子は伊織と付き合えなかった。
しかし恋愛で何も得られなかったわけではない。
むしろ最初は、自分の弱さを隠すために他人を見下すところもあった桜子が、
最後には自分の方から弱い場所を見せられるようになった。
これはかなり大きい。
伊織に告白するということは、
自分が選ばれない可能性を受け入れることでもある。
それでも言う。
「好きだったこと」を自分で認めているからできる。
だから桜子の失恋は、恋愛レースで負けたというだけの出来事ではない。
自分の感情を守るために強がる女性から、自分の感情をそのまま認められる女性へ変わった瞬間でもある。
そしてこの変化があるから、桜子は振られた後も伊織との関係を全部壊さない。
本気で好きだった。
でも選ばれなかった。
その二つを同時に受け入れたうえで、伊織本人まで嫌いになる必要はない。
ここまで来ると、乙矢への失恋と伊織への失恋は、同じ「振られた」でも中身が全く違う。
乙矢への失恋では、
桜子は自分の気持ちから逃げようとした。
伊織への失恋では、
桜子は最後まで自分の気持ちから逃げなかった。
この違いが、そのまま桜子の成長になる。
だから「ぐらんぶる 桜子 振られた」という出来事で本当に見えるのは、
誰と付き合えなかったかだけではない。
あれだけ強気で、他人にも自分にも容赦がなかった毒島桜子が、
最後には一人の相手を本気で好きだった自分を、ちゃんと受け入れられるようになったこと。
伊織と恋人にはならなかった。
それでも伊織への恋は、桜子にとって無駄ではない。
むしろ振られたからこそ、
「好きだった自分を否定しない」
というところまで進めた。
そこに、毒島桜子の恋が残した一番大きなものがある。
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