第6話「DUMB BARTER」は、単なる廃工場での銃撃戦ではなく、草薙素子の過去にいる相馬亨が現在へ戻り、恋人まで巻き込んで素子個人を狙う事件として見ると一気に濃くなる。
第1話から公安9課が組織として形になり、人形使いや汚職事件へ向き合ってきた中で、第6話では初めて「公安9課の草薙」ではなく「一人の草薙素子」へ攻撃が届く。
第1章 結論|第6話「DUMB BARTER」は草薙素子自身の過去が現在へ襲いかかる回
草薙と恋人への襲撃は、公安9課全体ではなく素子個人へ向けられている
第6話「DUMB BARTER」で最も大きいのは、草薙素子が事件を追う側から、事件に狙われる側へ回ること。
これまで草薙は、荒巻のもとで公安9課を率い、電脳犯罪や政治の裏側へ踏み込んできた。
危険な現場へ自分から入ることはあっても、基本的には犯人へ近づいていく側だった。
ところが今回は、その関係が最初から反転する。
草薙だけではない。
彼女と一緒にいた恋人まで襲われる。
二人は負傷し、病院へ運ばれる。
公安9課の任務中に銃撃されたのではなく、草薙の私生活へ敵の手が伸びているところが今回の重さになる。
公安9課の少佐としてなら、草薙は常に危険と隣り合わせにいる。
全身義体を持ち、銃撃戦にも電脳戦にも対応できる。
敵の拠点へ踏み込む時にも、彼女自身が先頭へ出ることが多い。
だが恋人まで狙われれば、単純な「任務」として切り離せなくなる。
そこで名前が浮上するのが相馬亨。
草薙と過去に因縁を持つテロリストとして、今回の襲撃へ深く関わっている人物になる。
ここが第6話の中心。
相馬が狙っているのは、
公安9課という組織なのか。
草薙が現在追っている事件なのか。
それとも草薙素子という一人の人間そのものなのか。
恋人まで襲われていることで、最後の可能性が一気に強くなる。
第1話から振り返ると、この変化はかなり大きい。
荒巻が新たな実働部隊を作ろうと動き、草薙がその中心になる。
バトーやトグサたちが加わり、公安9課という形が少しずつ出来上がっていく。
その後は電脳化社会で起きる犯罪を、草薙たちが外側から追ってきた。
人の脳へ侵入する。
記憶を書き換える。
義体を利用する。
ネットワーク越しに他人を操る。
この世界では、「自分自身だと思っているもの」さえ簡単には信用できない。
そんな社会の中で、草薙は冷静に相手を追い詰めてきた。
しかし第6話では、その冷静さを保てるかどうかを試すように、極めて近いところへ攻撃が届く。
自分の身体なら義体で耐えられる。
銃弾を受けても、生身の人間よりは大きな耐久力がある。
だが身近な人間まで同じではない。
草薙素子がどれほど強くても、守りたい相手まで完全に強くできるわけではない。
そこに今回の事件の痛さがある。
さらに襲撃後、草薙は安全な場所で回復を待つだけでは終わらない。
トグサと共に動き始める。
そして二人は追われる側となり、廃工場へたどり着く。
そこで待っているのは、武装集団との戦闘。
つまり第6話は、
「襲撃された」
だけで終わらない。
病院。
逃亡。
追跡。
廃工場。
武装集団。
相馬亨。
一つずつ状況が悪化していく。
その中心にいるのが草薙本人になる。
これまでなら公安9課が敵を包囲していくところを、今回は草薙たちが包囲されていく。
この立場の逆転が、「DUMB BARTER」を緊張感の強い回にしている。
相馬亨との因縁を追うと、廃工場の銃撃戦も単なるアクションではなくなる
第6話で相馬亨という名前が出てくることで、今回の襲撃は偶然ではないことが見えてくる。
草薙と「因縁がある」。
この一言だけでも、現在の公安9課の任務より前へ話が広がる。
草薙が公安9課へ入る以前。
現在とは違う立場にいた時期。
そこで何があったのか。
相馬との間に何が残っているのか。
今回の襲撃は、その過去が現在へ戻ってきた事件として見ることができる。
『攻殻機動隊』では、身体を交換することができる。
脳をネットワークへつなげられる。
記憶すら操作される。
それでも、人間関係の過去までは簡単に消えない。
誰と敵対したのか。
誰を傷つけたのか。
誰から恨まれているのか。
そうしたものは、新しい義体へ替わっても残る。
草薙は全身義体だからこそ、「身体」と「自分」は同じなのかという問題を常に抱えている人物でもある。
外見は変えられる。
義体を交換することもできる。
だが過去の選択や人とのつながりまでは交換できない。
相馬亨の登場は、その部分を草薙へ突きつける。
しかも今回は恋人まで巻き込まれる。
自分だけが狙われるのなら、草薙は少佐として対処できるかもしれない。
しかし自分と関係を持った人間が傷つくとなれば、問題は変わる。
公安9課の事件でありながら、
草薙素子の個人的な問題にもなる。
この二重構造が第6話を濃くしている。
そして廃工場へ逃げ込んだ後の戦闘も、単なる銃撃戦ではなくなる。
目の前の武装集団を倒せば事件が終わるのか。
その背後に相馬がいるのか。
誰が草薙たちの動きを把握しているのか。
病院を出た後まで追跡されているなら、敵はかなり近い位置で情報を得ている可能性もある。
草薙が得意としてきた「相手を読む戦い」が、今度は自分へ向けられている。
だから第6話の中心は、撃ち合いの派手さだけではない。
過去から来た敵。
傷つけられた恋人。
逃亡する草薙。
同行するトグサ。
待ち伏せする武装集団。
それらが重なることで、草薙がどこまで冷静でいられるのかが試される。
第1話から公安9課の中心として動いてきた草薙素子が、
第6話では初めて自分自身の過去へ追いつかれる。
そこが「DUMB BARTER」の一番大きな転換になる。
第2章 草薙素子と恋人に何が起きた?第6話冒頭の襲撃から振り返る
突然の襲撃で病院へ運ばれたことで、草薙の日常そのものが事件へ変わる
第6話は、公安9課が新しい事件の捜査会議を始めるような形では動かない。
先に事件が草薙の側へやってくる。
草薙は恋人と共に襲撃を受ける。
普段の彼女なら、銃撃や戦闘が始まればすぐに相手の位置を読み、義体の能力を使って反撃する。
だが今回は恋人も一緒にいる。
自分だけを守ればいい状況ではない。
二人は負傷し、病院へ搬送される。
ここで「草薙素子にも公安9課以外の時間がある」という部分が強く見える。
第1話以降、草薙が画面に現れる時は、ほとんど事件の中心にいた。
荒巻から話を受ける。
現場へ行く。
バトーたちへ指示を出す。
標的を追跡する。
電脳へ接続する。
公安9課の少佐という姿が前面に出ている。
その草薙が、今回は恋人との時間から事件へ引きずり込まれる。
「少佐を狙った」のではなく、
「草薙素子を狙った」
ように見える始まりになる。
この違いは大きい。
公安9課へ宣戦布告するなら、荒巻やバトー、トグサも標的になる。
だが恋人を巻き込むという行動は、草薙個人へ痛みを与える狙いが強い。
だから捜査が始まった段階から、
「なぜ草薙なのか」
が重要になる。
そこで相馬亨の存在が出てくる。
過去に草薙と因縁を持つテロリスト。
今になって再び姿を見せる。
草薙が公安9課で積み重ねてきた事件とは別の時間軸が動き始める。
第1話から見てきた視聴者にとっても、ここは草薙の知らなかった部分へ入る場面になる。
これまで草薙の能力は多く描かれてきた。
全身義体による身体能力。
銃器の扱い。
電脳への侵入。
状況判断。
公安9課を動かす指揮能力。
しかし「どんな過去を持っているのか」は、それほど簡単には見えてこない。
第6話では相馬との因縁によって、その閉じられていた部分が事件として開き始める。
しかも病院へ運ばれたからといって、安心できる状況にはならない。
草薙は再び動く。
トグサと共に外へ出る。
そこから追跡が始まる。
安全な場所へ逃げるはずが、さらに危険な場所へ追い込まれていく。
この流れによって、第6話では最初から最後まで「草薙が狙われ続けている」という感覚が消えない。
恋人まで巻き込まれたことで、草薙にとって相馬は単なる逮捕対象ではなくなる
草薙は公安9課の中でも、とりわけ感情を表へ出しにくい人物になる。
危険な現場でも声を荒らげることは少ない。
敵を前にしても、まず状況を見る。
相手が何を狙っているのかを読む。
自分の感情より任務を優先する場面も多い。
だからこそ、恋人への襲撃は草薙の普段とは違う部分を引き出す可能性が高い。
自分が撃たれるだけなら任務として受け止められる。
だが自分と関係したことで、別の人間が傷つけられた。
そこには怒りだけではなく、
責任、
後悔、
警戒、
さらに相馬への個人的な感情まで混ざってくる。
公安9課の仲間が襲われた時とも違う。
バトーたちは、自分たちも危険な仕事を選んでいる。
トグサも公安の捜査官として現場へ入る覚悟を持っている。
しかし恋人は、草薙と同じ戦場へ立つためにそこにいたわけではない。
その人物まで巻き込まれた。
だから襲撃は草薙の「仕事」と「私生活」の境界を壊している。
これは『攻殻機動隊』という作品とも相性がいい。
電脳化が進んだ社会では、
仕事と私生活だけでなく、
現実とネットワーク、
自分と他人、
身体と意識の境界まで曖昧になる。
草薙はその境界線上にいる人物。
身体のほとんどが義体。
脳はネットへ接続できる。
自分の存在そのものを、常に電脳社会の中へ置いている。
それでも恋人との関係だけは、単なるデータではない。
その人が傷つけば、
草薙自身の判断も揺さぶられる。
だから相馬亨が恋人まで狙ったのだとすれば、それは草薙の義体を壊す以上に深い攻撃になる。
身体は修理できる。
義体は交換できる。
しかし傷ついた人間関係を、部品のように元へ戻すことはできない。
ここに第6話の痛さがある。
そして草薙は、その状態のままトグサと動く。
トグサは公安9課の中でも、生身に近い感覚を残している人物。
全身義体の草薙とはかなり違う。
その二人が病院を出て、追跡を受け、廃工場へ追い込まれる。
草薙が普段のように敵を追うだけなら、バトーのような高い戦闘力を持つ仲間との組み合わせも考えられる。
しかし今回はトグサが隣にいる。
人間的な感覚を強く残すトグサと、
全身義体の草薙。
この組み合わせも、第6話の緊張感を強くする。
恋人への襲撃。
相馬亨との因縁。
病院からの移動。
追跡。
廃工場。
第6話は一つずつ場面が変わるたびに、草薙と敵との距離が縮まっていく。
最初は誰が襲ったのか分からない。
やがて相馬の名前が浮かぶ。
さらに逃亡先でも武装集団が現れる。
これは偶然ではない。
草薙を狙う意思が、行動として連続している。
だから第6話「DUMB BARTER」は、
公安9課が新たな犯罪を解決する一話では終わらない。
これまで見えにくかった草薙素子の過去と私生活へ、
敵が強引に踏み込んでくる回になる。
そして恋人まで巻き込まれたことで、
相馬亨は「捕まえれば終わる犯人」ではなく、
草薙自身が過去と向き合わなければならない相手として浮かび上がってくる。
第3章 相馬亨は何者?草薙素子とどんな因縁がある?
第6話で浮上する相馬亨は、草薙の現在ではなく過去へつながるテロリスト
第6話「DUMB BARTER」で重要になる名前が、相馬亨。
公式では、草薙素子と因縁を持つテロリストとして示されている。
今回の襲撃が単なる無差別事件ではなく、草薙本人を狙った可能性が強くなるのも、この人物の存在があるから。
公安9課として追っていた犯罪者が偶然草薙を襲った、という流れとはかなり違う。
草薙と恋人が同時に襲われる。
二人は病院へ搬送される。
その後、相馬亨という過去につながる名前が浮かぶ。
ここまで続けば、敵が草薙の行動だけではなく、人間関係まで知っている可能性が出てくる。
草薙が公安9課で何をしているのかだけを調べても、恋人へ近づくことは難しい。
誰と会っているのか。
どんな生活をしているのか。
どこで行動するのか。
そこまで把握していたとすれば、相手はかなり以前から草薙本人へ目を向けていたことになる。
だから相馬亨は、第6話だけに突然現れた「今回の敵」として見るより、草薙が現在まで背負ってきた過去の一部として見る方が近い。
第1話からの草薙は、公安9課を作る中心人物として描かれてきた。
荒巻から能力を買われ、バトーやトグサたちと行動し、電脳犯罪や政治の裏側へ踏み込んでいく。
視聴者が知っている草薙は、すでに「公安9課の少佐」として完成された姿が多い。
しかし、人間にはその立場へ来るまでの時間がある。
公安9課へ入る前。
荒巻と出会う前。
現在の仲間たちと動く前。
相馬亨という存在は、そこへつながる可能性を持っている。
だから第6話では、草薙が犯人を追跡するだけでは足りない。
「相馬は何者なのか」
「草薙と何があったのか」
「なぜ今になって再び草薙へ近づいたのか」
この三つが、襲撃事件そのものと同じくらい大きくなる。
しかも相馬がテロリストである以上、草薙個人への恨みだけで動いているとは限らない。
政治的な目的。
過去の作戦。
国家や組織への反発。
そこへ草薙との個人的な因縁が重なっている可能性もある。
『攻殻機動隊』では、目の前の犯人一人を捕まえて終わる事件ばかりではない。
誰が命令したのか。
どの組織が利益を得るのか。
電脳の向こう側で誰が人間を動かしているのか。
個人の犯罪に見えたものが、もっと大きな仕組みへつながることがある。
相馬亨についても、
単なる「草薙を恨んでいる男」と決めつけるには早い。
それでも一つだけはっきりしている。
今回の事件は、草薙がこれまで追ってきた事件よりも距離が近い。
公安9課の外から撃たれているのではない。
草薙自身の過去から、現在へ弾丸が飛んできている。
そこが第6話の不穏さになる。
恋人まで巻き込んだ襲撃によって、相馬は草薙の「弱い場所」へ踏み込んでくる
草薙素子は戦闘能力だけを見れば非常に強い。
全身義体。
高い反応速度。
射撃能力。
電脳戦。
敵の位置を読み、状況へ即応する判断力。
これまでの事件でも、自分から危険な場所へ踏み込むことを恐れていない。
だから敵が草薙本人を正面から倒そうとすれば、相当な準備が必要になる。
ところが第6話では、恋人まで襲われる。
これは戦闘能力とは別の場所を狙った攻撃になる。
草薙の義体が頑丈でも、
大切な人間まで同じ強さを持っているわけではない。
自分なら避けられる弾丸。
自分なら耐えられる衝撃。
自分なら反撃できる状況。
それでも隣にいる相手までは守り切れないことがある。
そこへ敵が手を伸ばす。
草薙にとっては、自分が負傷する以上に厄介な攻撃になる。
しかも『攻殻機動隊』の世界では、身体と心の距離そのものが曖昧になっている。
義体は交換できる。
破損すれば修理できる。
電脳を通して遠くの相手とも接続できる。
だが、人間関係は部品のようには交換できない。
だから恋人が傷ついた事実は、義体の損傷とは別の形で草薙へ残る。
相馬亨がそこまで計算して襲撃したのか。
それとも別の狙いがあるのか。
第6話で注目したいのは、相馬の行動そのものだけではなく、草薙がそれをどう受け止めるかになる。
普段の草薙は感情を表へ出しにくい。
任務なら任務として切り分ける。
敵なら追う。
危険なら排除する。
だが今回は、自分の過去と私生活が同じ場所で衝突している。
だから相馬を追うことが、
公安9課の仕事なのか。
自分自身の決着なのか。
その境界まで曖昧になっていく。
廃工場で待ち受ける武装集団との戦闘も、この前提があることで重さが変わる。
ただ撃ち合っているのではない。
その奥に相馬がいるのか。
自分を追っているのは誰なのか。
恋人への襲撃と同じ線でつながっているのか。
草薙は戦いながら、相手の狙いまで読まなければならない。
第6話の相馬亨は、
草薙より強いかどうかだけで見る人物ではない。
草薙が隠してきた過去。
守っている私生活。
公安9課以外の人間関係。
そこへ入り込んでくる存在だからこそ、危険になる。
第4章 第1話から見ると、草薙素子はどんな人物として描かれてきた?
第1話では荒巻と出会い、草薙は「事件を追う側」の中心へ入っていった
第6話で草薙が狙われる展開を強く感じるには、第1話からの立場を振り返ると分かりやすい。
物語の序盤では、荒巻が新たな特殊部隊を作ろうとしている。
そこで目を付けられるのが草薙素子。
高い義体性能を持ち、戦闘だけでなく電脳犯罪にも対応できる。
その能力を買われ、後に公安9課となる集団の中心へ入っていく。
バトー。
トグサ。
イシカワ。
サイトーたち。
それぞれ異なる能力を持つ人間が集まり、単なる警察組織とは違う部隊になっていく。
草薙はその中で、前へ出る役割を担っている。
現場へ入る。
敵の電脳へ接触する。
危険な相手へ近づく。
仲間へ指示を出す。
第1話以降の草薙には、「自分から相手の懐へ入る」という姿が多い。
第2話でも公安9課は、電脳化社会ならではの事件へ踏み込んでいく。
人間の脳がネットワークと接続されている以上、
目の前にいる人物の意思だけを信じることはできない。
本人が操られていることもある。
記憶が書き換えられていることもある。
自分が何をしたのか本人すら知らないこともある。
草薙は、そうした事件の裏側へ潜っていく人物だった。
第3話以降では、人形使いというさらに大きな存在も浮かび始める。
「誰が人間を操っているのか」
「電脳の中にある意識は誰のものなのか」
「自分だと思っているものは本当に自分なのか」
事件を追うほど、犯罪捜査と同時に人間そのものへ近づいていく。
それでも草薙の立場は基本的に変わらない。
調べる側。
追う側。
相手の正体を暴く側。
だから第6話の冒頭で、自分が襲撃を受ける展開は大きな反転になる。
今度は草薙の行動が読まれている。
草薙の生活が調べられている。
草薙自身が標的になっている。
これまで彼女が犯罪者へ向けていた視線が、そのまま自分へ返ってくるような状況になる。
事件を追う少佐から「一人の草薙素子」へ近づくことで、第6話の危険が違って見える
草薙素子は、外見だけを見ても普通の人間とは違う。
身体の大部分を義体化している。
高所から飛び降りる。
銃撃戦へ飛び込む。
ネットワークへ直接接続する。
生身の人間にはできない行動を当然のように行う。
そのため、草薙は非常に強い人物として見えやすい。
実際、公安9課の中心に立てるだけの能力を持っている。
しかし第1話から追うと、草薙の強さは「何も感じない」こととは違う。
事件へ深入りする。
相手の電脳へ触れる。
人間と機械の境界へ何度も近づく。
そのたびに、自分自身が何者なのかという問題から完全には離れられない。
身体が機械なら、どこまでが自分なのか。
記憶を操作できるなら、過去をどう信じればいいのか。
電脳を接続できるなら、自分と他人の境界はどこにあるのか。
草薙は強いからこそ、
こうした疑問の一番近い場所にいる。
第6話では、そこへさらに「恋人」という私的な存在が入ってくる。
公安9課の草薙しか知らなければ、
彼女は任務の中だけで生きているようにも見える。
しかし実際には違う。
仕事以外の時間がある。
親しい相手がいる。
過去に因縁を持った人物もいる。
公安9課へ入る前から続く人生がある。
相馬亨の登場は、その見えなかった部分を一気に表へ引き出す。
だから第6話で草薙が病院から動き出す場面も、
単なる「少佐が犯人を追う」では終わらない。
誰が自分を狙ったのか。
恋人がなぜ巻き込まれたのか。
相馬は何を求めているのか。
自分の過去に何が残っているのか。
それらを抱えたまま、トグサと共に追跡を受ける。
第1話の草薙は、公安9課へ入っていく人物だった。
第6話の草薙は、
公安9課という肩書きの外側にある自分自身へ引き戻される。
この違いが大きい。
これまでなら、
事件の中心にいる他人の過去を調べていた。
今回は、
自分の過去が事件の中心になる。
これまでなら、
敵の弱点を探していた。
今回は、
敵が草薙の弱い場所を探している。
だから「DUMB BARTER」は、
草薙素子の強さを見せる回であると同時に、
その強さだけでは守り切れないものが初めて大きく浮かび上がる回になる。
第5章 草薙とトグサはなぜ逃亡する?廃工場へ追い込まれるまで
病院を出た後も追跡が続き、草薙たちは「守られる側」ではいられなくなる
第6話「DUMB BARTER」では、草薙素子と恋人が襲撃を受け、病院へ搬送される。
普通なら、ここで公安9課が周囲を固め、犯人を外側から追い始めてもおかしくない。
だが草薙は病院の中で安全に待つだけでは終わらない。
トグサと共に外へ出たところから、再び緊張が高まっていく。
ここで重要なのは、
「襲撃は終わった」
のではなく、
敵の狙いがまだ草薙へ向いたままだということ。
病院まで運ばれた後も追跡されるなら、敵は草薙の動きをかなり近い場所から把握していることになる。
どこへ移動するのか。
誰と行動するのか。
どの道を通るのか。
そうした情報まで読まれているなら、草薙にとってはかなり危険な状況になる。
これまでの公安9課では、相手の位置を探す側に回ることが多かった。
監視網を使う。
電脳通信を追う。
現場へ先回りする。
荒巻が情報を集め、草薙たちが敵へ距離を詰めていく。
しかし今回は逆になる。
敵の姿が見えない。
それでも追われている。
草薙たちが場所を変えても危険がついてくる。
ここに第6話ならではの息苦しさがある。
そして草薙と一緒にいるのがトグサという点も大きい。
トグサは公安9課の中では比較的生身に近い身体を持つ人物になる。
草薙やバトーのように、身体能力そのものを全面的に義体へ依存しているわけではない。
だから激しい銃撃戦へ入れば、草薙とまったく同じ動きができるわけではない。
その一方でトグサは、現場を観察し、人間の行動から違和感を拾うことに長けている。
第1話から公安9課へ加わり、
電子情報だけではなく、
人間そのものを見る感覚を持ち込んできた。
草薙が電脳と義体を最大限に使う人物なら、
トグサは最後まで人間の感覚を強く残す人物になる。
この二人が逃げる側へ回る。
ここが面白い。
草薙だけなら、強引に突破する選択肢もある。
だがトグサがいる。
さらに草薙自身も襲撃直後。
恋人のことも残っている。
いつものように「敵を見つけて撃てば終わり」という状況ではない。
だから二人は、追跡を避けながら移動することになる。
そして行き着く先が廃工場。
人気のない場所。
視界が限られる。
柱や設備が残る。
敵が潜んでいてもすぐには分からない。
逃げ込んだ場所のはずが、逆に戦場へ変わっていく。
廃工場での戦闘は、草薙たちが完全に包囲されていることを見せる場面になる
廃工場という場所は、草薙の高い身体能力を発揮できる一方で、敵側にも有利な場所になる。
壁がある。
機械設備が残る。
死角が多い。
どこから撃たれるか分からない。
敵の人数もすぐには把握できない。
公式では、草薙とトグサがそこで武装集団との激しい戦闘へ入ることが示されている。
つまり二人は、
偶然そこにいた犯罪者と遭遇するのではなく、
明確に戦闘へ追い込まれていく。
ここで第6話冒頭の襲撃とつながる。
草薙と恋人が狙われた。
病院へ運ばれた。
病院を出ても追われる。
廃工場へ行っても武装した敵がいる。
攻撃が一度で終わっていない。
そのため、敵は草薙を「脅したい」だけではなく、
もっと明確な目的を持って追っている可能性が高くなる。
草薙に何かをさせたいのか。
捕まえたいのか。
殺したいのか。
相馬亨までつながる別の目的があるのか。
戦闘の裏側まで考えなければ、敵の本当の狙いは見えてこない。
ここで草薙らしい戦い方も重要になる。
彼女は単に身体能力が高いだけではない。
敵の配置を見る。
銃声から位置を読む。
通信が使えるなら相手の情報へ入り込む。
建物そのものを利用する。
状況を瞬時に変えながら動く。
第1話から続く草薙の強さは、
正面から撃ち合って勝つことだけではなかった。
相手より先に状況を理解する。
そのうえで必要な一手を打つ。
だから廃工場の戦闘では、
追われる側になった草薙が、
どこで主導権を取り返すのかが大きな見どころになる。
一方トグサは、草薙ほど義体性能に頼れない。
だからこそ二人が同じ場所で戦うと、
互いの違いがはっきりする。
草薙は危険な場所へ踏み込める。
トグサは人間としての距離感を残す。
二人の役割が重なることで、
単独行動とは違う緊張が生まれる。
しかも草薙の頭の中には、
目の前の武装集団だけがいるわけではない。
恋人への襲撃。
相馬亨。
過去の因縁。
病院から続く追跡。
すべてが同時に残っている。
だから廃工場で敵を倒しても、
そこで事件そのものが終わるとは限らない。
武装集団は誰に雇われたのか。
草薙の居場所を誰が伝えたのか。
なぜ相馬の名前が浮上したのか。
その先を追わなければ、本当の相手には届かない。
第6話の廃工場戦は、
草薙の強さを見せるだけの戦闘ではない。
「敵はどこまで草薙の行動を読んでいるのか」
その恐ろしさが具体的な形になって現れる場面になる。
第6章 なぜ第6話ではバトーではなくトグサが草薙と行動する?
全身義体の草薙と、生身に近いトグサだからこそ同じ危険が違って見える
草薙素子と共に激しい戦闘へ入る人物と聞けば、バトーを思い浮かべる人も多い。
バトーは強力な義体を持つ。
身体能力も高い。
銃撃戦にも慣れている。
草薙と並んで前線へ出ても不自然ではない。
それでも第6話では、草薙とトグサが共に動く。
この組み合わせには、戦闘力だけでは測れない違いがある。
トグサは公安9課へ加わった時から、他のメンバーとは少し異なる人物だった。
完全な軍人でもない。
義体化を極端に進めているわけでもない。
家庭を持ち、
生活感があり、
事件を「普通の人間の側」から見る感覚が残っている。
草薙とは正反対に近い。
草薙は身体の大部分が義体。
ネットワークへ深く接続できる。
危険な場所へ入る時にも、
自分の身体を一つの装備のように扱える。
トグサはそうではない。
銃弾を受ければ生身に近い危険がある。
身体を簡単に交換できるわけではない。
だから同じ廃工場へ入っても、危険の重さが違う。
第6話では、その差が草薙自身の問題ともつながる。
恋人が襲われた。
自分だけなら義体で耐えられる。
しかし周囲の人間は同じではない。
その直後に、生身に近いトグサと行動する。
草薙は再び、
「自分は耐えられても、隣にいる人間は違う」
という状況へ置かれることになる。
ここが興味深い。
草薙にとって戦闘は日常でも、
トグサにとっては常に身体そのものを賭ける行為になる。
だから二人で逃げる場面では、
草薙が自分一人だけなら選べる無茶な行動を、そのまま取れるとは限らない。
相手を守る。
位置を確認する。
戦闘の速度を合わせる。
その必要が出てくる。
恋人を巻き込まれた直後だからこそ、
「他人を守りながら戦う草薙」
という姿にも重さが出る。
トグサは草薙が見落としやすい「普通の人間の感覚」を持つ存在でもある
トグサの価値は、義体化が少ないことだけではない。
彼は事件を見る時、
電子的な情報だけで判断しない。
人の言葉。
態度。
生活。
家族。
そこに残る違和感を見る。
電脳化社会では、
データだけを見れば答えが出るように思える。
位置情報。
通信記録。
監視映像。
電脳へのアクセス履歴。
しかし、それがすべて本物だとは限らない。
記憶は改変できる。
映像も作れる。
他人の電脳へ侵入できる。
だから最後に残るのが、
人間として感じる違和感になることもある。
トグサはそこを担う人物。
草薙が電脳の奥へ潜るなら、
トグサは目の前の人間を見る。
この差は、第6話のように草薙自身が感情へ引っ張られる事件で特に大きくなる。
相馬亨という過去の因縁。
恋人への襲撃。
自分自身が標的になっている可能性。
草薙は普段よりも事件との距離が近すぎる。
冷静でいようとしても、
完全に第三者にはなれない。
そこで隣にトグサがいる。
彼は草薙の過去を同じように背負っているわけではない。
相馬へ個人的な感情を持っているわけでもない。
だから草薙が見えなくなっているものを、
別の角度から見ることができる。
公安9課では、仲間同士が同じ能力を持っているわけではない。
バトーにはバトーの強さがある。
イシカワには情報戦がある。
サイトーには狙撃能力がある。
トグサには、人間に近い場所から事件を見る強さがある。
第6話で草薙と同行することで、その特徴がよりはっきりする。
しかも今回の事件は、
「草薙素子は何者なのか」
という部分へ近づいている。
公安9課の少佐。
全身義体のサイボーグ。
優秀な捜査官。
それだけではなく、
恋人を持ち、
過去に相馬亨との因縁を抱え、
私生活まで攻撃される一人の人間。
そんな草薙の隣に、
身体も生活感も人間に近いトグサがいる。
この対比によって、
草薙の特殊さだけではなく、
草薙の中に残っている人間らしさまで見えやすくなる。
廃工場で銃を構える時。
敵の位置を探す時。
次にどこへ動くか決める時。
二人は同じ場所にいても、
同じ危険を同じようには感じていない。
それでも一緒に動く。
そこに公安9課のチームとしての強さがある。
第6話でトグサが草薙の横にいることは、
単なる人員配置ではない。
全身義体と生身。
過去を背負う者と、それを外側から見る者。
感情の中心にいる人物と、その隣で状況を見る人物。
この二人だからこそ、
相馬亨を追う事件が単なる復讐や銃撃戦だけにはならない。
草薙が自分自身の過去へ近づいていく時、
トグサはその横で「現在」を見続ける人物になる。
第7章 「DUMB BARTER」で見えてくるのは、草薙素子にも守りたい私生活があるということ
公安9課の少佐ではなく「草薙素子本人」が狙われることで、これまで見えなかった部分が表へ出る
第6話「DUMB BARTER」は、草薙素子の強さだけを見る回ではない。
全身義体。
高い戦闘能力。
電脳戦への適応。
公安9課を率いる判断力。
第1話から積み上げてきた草薙は、常に「強い側」にいる人物として描かれてきた。
危険な場所へ入る。
敵を追う。
相手の電脳へ迫る。
バトーやトグサたちへ指示を出す。
何が起きても冷静に動き、事件の中心へ自分から近づいていく。
ところが第6話では、その草薙が最初から揺さぶられる。
自分が襲われる。
恋人まで巻き込まれる。
病院へ運ばれる。
さらに病院を出ても追跡が続き、トグサと共に廃工場まで追い込まれる。
これまで草薙が相手へ向けていた圧力が、逆方向から自分へ返ってきている。
しかも狙われているのは、公安9課の役職だけではない。
恋人という私生活の相手まで知られている。
相馬亨という過去につながる人物まで現れる。
つまり敵は、現在の草薙だけではなく、その後ろにある人生へ入り込んでくる。
ここで初めて、
「公安9課の少佐」という肩書きだけでは草薙を見切れないことがはっきりする。
草薙にも仕事以外の時間がある。
誰かと親しくなる。
過去に誰かと関わる。
その関係が現在まで残る。
どれだけ身体を機械化しても、そうしたものまでは切り離せない。
むしろ全身義体だからこそ、この違いが強く見える。
身体なら修理できる。
義手や義足の一部ではなく、草薙は身体の大部分を機械へ置き換えている。
破損すれば交換できる部分も多い。
それでも、人間関係は交換できない。
恋人が傷ついた記憶。
相馬との過去。
仲間との関係。
そうしたものは、新しい部品へ替えて消せるものではない。
第6話が草薙へ突きつけているのは、そこになる。
電脳化された社会でも、過去や人間関係までは切り離せない
『攻殻機動隊』では、人間の身体と意識の境界が何度も揺らぐ。
脳を電脳化する。
ネットワークへ接続する。
義体へ身体を置き換える。
他人の記憶へ干渉する。
本人が信じている過去さえ、本物とは限らない。
第1話から続く事件でも、
「見えているものがそのまま真実なのか」
という問題が繰り返し出てくる。
だから草薙自身も、自分の存在を単純には捉えていない。
身体のほとんどが機械なら、
自分を自分にしているものはどこにあるのか。
記憶なのか。
脳なのか。
経験なのか。
それとも、その奥にある「ゴースト」なのか。
そんな問いを抱えた人物になる。
第6話では、その難しい問いが、恋人への襲撃という非常に身近な形で戻ってくる。
草薙は全身義体でも、
大切な人が傷つけば無関係ではいられない。
相馬亨との過去が戻れば、
現在の肩書きだけで切り離すこともできない。
トグサと逃げながら戦う時も、
目の前の敵だけを倒せばすべて元通りになるわけではない。
恋人は襲われた。
自分の過去は掘り起こされた。
敵は草薙の生活へ侵入してきた。
この事実は残る。
だから「DUMB BARTER」は、
派手な廃工場戦だけを追うと半分しか見えない。
草薙がなぜ狙われたのか。
相馬は何を知っているのか。
恋人を巻き込んだことで何が変わったのか。
そこまで見ると、今回の事件は「草薙素子という人間そのもの」を試す回に変わる。
第1話では、草薙は公安9課という新しい場所へ入っていった。
第2話以降では、その組織の中心として事件を追ってきた。
第6話では逆に、公安9課へ入る前から続いていたものが彼女を追ってくる。
この流れが大きい。
新しい組織へ入ったからといって、過去が消えるわけではない。
新しい義体へ替えたからといって、人生が初期化されるわけでもない。
どれだけ電脳化が進んでも、
人が誰と関わり、
何を選び、
何を残してきたのかは現在へつながる。
草薙素子も例外ではない。
強い。
冷静。
全身義体。
公安9課の少佐。
そのすべては本当。
だが第6話では、そのさらに内側にいる一人の人間が狙われる。
恋人を持つ草薙。
過去を持つ草薙。
相馬との因縁を背負う草薙。
仲間と逃げ、戦い、それでも自分の現在を守ろうとする草薙。
「DUMB BARTER」が見せるのは、
義体の強さだけでは守れない領域になる。
身体は機械へ替えられる。
情報はネットワークへ流せる。
記憶さえ操作できる。
それでも、
誰かと生きてきた時間までは簡単に消えない。
第6話で敵が踏み込んだのは、草薙の義体ではなく、その時間の中にある。
だから今回の襲撃は、
公安9課への攻撃以上に重い。
草薙素子が「何者なのか」を、過去と現在の両方から浮かび上がらせる事件になっている。


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