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【アニメMAO最終回】幽羅子はなぜ摩緒を好きになった?岩屋で届いた「大丈夫?」

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幽羅子が摩緒を好きになったのは、呪いを受ける器として扱われていた自分を、摩緒が一人の人間として気遣ったから。
岩屋での最初の出会いから、幽羅子にとって摩緒は外の世界と自分の人生を結ぶ相手になった。
最終回で菜花に語った過去を辿ると、九百年続いた恋心と、今も摩緒へ向かう思いが見えてくる。

  1. 第1章 幽羅子はなぜ摩緒を好きになった?最初の出会いが答え
    1. 呪いの器として暮らす幽羅子を、摩緒は気遣った
    2. 岩屋で届いた一言が、九百年続く思いの始まりになった
  2. 第2章 摩緒と出会う前、幽羅子は岩屋でどう暮らしていた?
    1. 呪符に囲まれ、御降家の呪いを引き受けていた
    2. 外の世界を知っても、自分の意思で出られる暮らしではなかった
  3. 第3章 摩緒が御降家へ来てから、幽羅子の思いはどう変わった?
    1. 岩屋の外をのぞき、あの日の少年を見つめ続けた
    2. 摩緒の心は紗那へ向かい、幽羅子は言葉を渡せなかった
  4. 第4章 紗那と同じ顔なのに、なぜ摩緒は幽羅子を見てくれない?
    1. 第14・15話で摩緒が見たのは、紗那の面影と不知火の手先だった
    2. 菜花に過去を語ったのは、摩緒のそばにいる相手だから
  5. 第5章 幽羅子はなぜ菜花を気にする?摩緒が見せた行動に答えがある
    1. 第19・20話で摩緒が菜花を助ける姿を見た
    2. 第25話の連れ去りで、幽羅子は菜花を自分の前に立たせた
  6. 第6章 幽羅子の思いを聞いた菜花と摩緒は、どう向き合う?
    1. 菜花は幽羅子の過去を知っても、自分の気持ちを消せない
    2. 摩緒が向き合うのは昔の少女だけでなく、今の幽羅子でもある
  7. 第7章 幽羅子は摩緒と結ばれる?第26話の後に残る問い
    1. 摩緒に届いた一言と、幽羅子が返せなかった言葉は違う
    2. 幽羅子の過去を知った後も、菜花と摩緒の選択は続く

第1章 幽羅子はなぜ摩緒を好きになった?最初の出会いが答え

※ここからアニメ第26話までの内容に触れる。

呪いの器として暮らす幽羅子を、摩緒は気遣った

幽羅子が摩緒を好きになった始まりは、
紗那と同じ顔をしていたからではない。
御降家の呪いを引き受けるため岩屋に置かれ、
一人の人間として気遣われたことのなかった彼女に、
摩緒が「大丈夫?」と声を掛けたからだ。
彼女の役目を知らない少年の、短い問いだった。

第26話では、幽羅子が菜花に自分の過去を語る。
呪符に囲まれた岩屋で過ごした平安時代、
外に別の世界があると知り、初めて摩緒と出会う。
菜花の前に立つ現在の幽羅子からは、
摩緒へ強い思いを向ける女の姿が見える。
その始点には、呪いを宿す道具としてではなく、
目の前で困っている人として見られた瞬間がある。

ただし、摩緒が岩屋から幽羅子を救い出し、
二人で逃げたという出会いではない。
幽羅子が岩屋の外を知った時に出会った摩緒は、
まだ御降家へ弟子入りする前の少年だった。
彼は彼女が背負う呪いや屋敷の事情を知らない。
だからこそ、顔を見て案じるその反応が、
幽羅子にはそれまでの扱いと違って聞こえた。

誰かにとっては、通りすがりの一言だろう。
だが岩屋の内側で人と接する機会が限られ、
自分の体に降りかかる呪いを受け続けた幽羅子には、
「大丈夫?」と問われる経験そのものが珍しい。
呪いを引き受けられるかではなく、
いま目の前の彼女が無事かを尋ねられた。
その違いを知ると、恋が突然生まれたというより、
やっと自分を見た人を忘れられなかったと分かる。

第1話で菜花が大正時代へ迷い込み、
妖に襲われた時、摩緒は彼女を助けている。
その後も菜花の身に起きた異変を見過ごさず、
猫鬼の呪いと向き合う道へ引き込まれていく。
困っている相手を前にすると目を向ける摩緒の姿は、
第26話の幽羅子との出会いにも通じる。
菜花には物語の入口だったその行動が、
幽羅子には長く閉ざされた暮らしの外から届いた。

摩緒の側から見れば、あの日は一度会った相手に
声を掛けただけだったかもしれない。
その時点で同じ思いを交わしたとは言えないし、
初対面を相思相愛の場面にはできない。
けれど幽羅子には、彼が再び姿を見せるまで
その記憶を抱えて過ごす時間があった。
二人に流れた時間の重さの違いが、
後の再会でぶつかる思いの差につながっている。

岩屋で届いた一言が、九百年続く思いの始まりになった

幽羅子の気持ちを考える時、まず第14話を思い出す。
鉄仮面の下に現れた顔を見て、摩緒は驚く。
そこにいたのは、かつての紗那と同じ顔の女だった。
第15話では、摩緒はその顔の女がなぜ不知火の側に
いるのかを問いただし、怒りもあらわにする。
視聴者にも摩緒にも、最初に突きつけられるのは
「紗那と同じ顔」という強烈な事実だ。

しかし幽羅子の側から出会いをたどると、
見る順番が逆になる。摩緒に顔を見られる前から、
彼女はあの少年を知り、覚えていた。
御降家に入る前の摩緒から掛けられた一言と、
その後に屋敷で再び彼を見ることになる時間。
顔が似ているために誰かと取り違えられる痛みと、
自分を案じてくれた相手への思いが、
同じ摩緒をめぐって重なっていく。

第25話では、かがりが菜花を幽羅子のもとへ連れ去る。
摩緒が助けようとする菜花を、幽羅子は目の前に置く。
第26話で菜花へ過去を語り始める流れは、
恋の昔話を穏やかに聞かせる場面ではない。
摩緒に気遣われ、共に行動する菜花だからこそ、
幽羅子の言葉を直接受け止めることになる。
初めて声を掛けられた日の幽羅子と、
いま菜花の前に立つ幽羅子を同時に見る場面だ。

菜花は摩緒に助けられた後も、彼のそばで
呪いの手掛かりを追い、自分の足で動いてきた。
幽羅子は摩緒の一言を胸に残しながら、
自由に彼を追える境遇にはいなかった。
同じ人物から受けた気遣いでも、
その後を一緒に過ごせたかどうかは違う。
だから幽羅子と菜花が向き合う第26話では、
過去の出会いが現在の二人の距離を際立たせる。

第20話では、夏野が幽羅子の放つ暗い気配を、
九百年前の出来事と結びつけている。
現在の幽羅子がただ昔の恋を懐かしむ人物なら、
菜花をさらう側に立つ姿まで説明できない。
摩緒を思い続けた時間の間に何が起き、
誰と手を組み、菜花をどう見ているのか。
その答えは初対面の一言だけでは決まらない。
けれど思いがどこから始まったかは、
岩屋の外で彼女を案じた少年に戻って確かめられる。

摩緒を好きになったのは、助け出してくれる
英雄だと決めたからではない。
自分の体を呪いの受け皿として扱う日々に、
自分の無事を尋ねる声が初めて入り込んだ。
その小さな接点を幽羅子だけが長く覚えていた。
第14話で摩緒が顔に驚いた場面も、
第26話で菜花に過去を話す場面も、
その記憶を持つ側から見ると違って映る。

第2章 摩緒と出会う前、幽羅子は岩屋でどう暮らしていた?

呪符に囲まれ、御降家の呪いを引き受けていた

第26話で幽羅子が話す出会いの前には、
岩屋で過ごした長い暮らしがある。
平安時代の御降家には、その家へ向けられた呪いを
取り込むための器として幽羅子がいた。
住まいは呪符に囲まれた岩屋であり、
外の人々と顔を合わせて暮らす場所ではない。
彼女を知るには、摩緒の名を口にする前の
その部屋から目をそらせない。

呪符が並ぶ場所に身を置き続けるのは、
ただ屋敷の奥で静かに暮らすこととは違う。
御降家へ放たれた呪いが、自分のところへ来る。
当主の家を守る仕組みの内側に彼女の体があり、
傷つく本人の願いは役目より後に置かれる。
彼女に「つらくないか」と聞く人ではなく、
彼女が呪いを受け止めることを必要とする人が
周囲にいたのだと、岩屋の暮らしから見えてくる。

外にも世界があると知るくだりが重いのは、
屋敷の外へ遊びに出られなかったからだけではない。
幽羅子の毎日は、岩屋と呪符と御降家の都合で
ほとんど満たされていた。誰と会いたいか、
どこを歩きたいかを自分で決めて暮らす人なら、
外の存在を初めて知る場面にはならない。
摩緒と会う前に彼女が知らなかったものは、
知らない土地ばかりではなく、別の暮らし方だった。

第1話から摩緒の診療所を見てきた視聴者には、
その差が分かりやすい。摩緒は菜花の異変を見て、
目の前に来た者の体に何が起きたか確かめる。
大正時代の診療所では、人が自ら訪ね、
苦しみを話し、摩緒が手を尽くす。
幽羅子のいた平安の岩屋では逆に、
彼女自身が苦しみを抱える側なのに、
その体は御降家の呪いを受けるために使われた。

第20話で夏野が感じ取った幽羅子の暗い気配も、
突然そこに生まれたものではない。
九百年前の御降家で起きたことと現在の彼女が
つながっていると示された後に岩屋を見ると、
呪いが一度きりの事件ではなかったと分かる。
過去を語る幽羅子は、ただ被害を報告して
いるだけではない。いまなお摩緒や菜花と
向き合う彼女の中に、その日々が残っている。

だから第26話の「大丈夫?」は、
傷ついた相手への普通の気遣いでありながら、
幽羅子の暮らしの中では普通ではない。
呪いを取り込む体を必要とされた彼女に、
その体の持ち主を心配する少年が現れる。
岩屋の場面を抜かして言葉だけを聞くと、
些細な出会いに見えるかもしれない。
岩屋で何を求められていたかを知れば、
彼女がその声を持ち帰った重さが伝わる。

外の世界を知っても、自分の意思で出られる暮らしではなかった

幽羅子は外の世界があると知り、岩屋を出る。
そこで初めて、御降家の当主以外の人間である
摩緒と顔を合わせる。長く外にいられたわけではなく、
彼女は再び元の場所へ戻ることになる。
外を見た経験は、そのまま自由を得たことではない。
一度知ってしまった世界と、戻らなければならない
岩屋との差が、彼女の中に残った。

この時の摩緒は御降家の弟子ではない。
岩屋で会った直後に同じ屋敷で暮らし始めた、
という順番でもない。摩緒が後に御降家へ来るまで、
幽羅子はあの少年を再び見られる日を待つ。
偶然声を掛けてくれた人が、もう一度
自分の暮らす場所に現れる。短い出会いを
覚えていた彼女にとって、それは偶然で
終わらなかった記憶が形を持つ時だった。

けれど摩緒が屋敷に来たからといって、
幽羅子と並んで外を歩けるようにはならない。
摩緒は弟子として御降家の中に入り、
幽羅子は呪いの器としてそこにいる。
同じ家に関わっていても、与えられた立場も
動ける場所も違う。出会った日、彼が目の前に
立って声を掛けたことと、その後も同じように
彼の隣にいられることは別だった。

外を見ることを覚えた幽羅子は、
岩屋にいながら摩緒の姿を追うようになる。
会いたい相手が同じ屋敷にいても、
普通に訪ねて話せるとは限らない。
彼が何をしているかを知りたい気持ちと、
自分から会いに行けない日々が重なる。
最初の「大丈夫?」が忘れられなかったのは、
次の言葉を簡単には交わせなかったからでもある。

第14話で摩緒が幽羅子の顔に驚いた時、
視聴者は紗那と幽羅子をどう見分けるか考える。
だが岩屋から屋敷までを幽羅子の側でたどると、
彼女は誰かの顔に似ていることを知ってほしい
だけではなかったと分かる。かつて自分を見て
声を掛けた少年に、目の前の自分として
気づいてほしい。その望みが届くかどうかは、
摩緒が顔を見た瞬間の反応にも表れている。

第25話で菜花を連れ去らせ、第26話で
菜花本人へ過去を話す現在の幽羅子には、
岩屋で声を待っていた少女と同じ面だけを
見るわけにはいかない。菜花を困らせる行動は
行動として見なければならない。
それでも、彼女の言葉がどこから来たのかを
知るには、外へ出た短い時間と、その後に
自由に出られなかった年月の両方が要る。

幽羅子は摩緒を好きになった日から、
二人で同じ道を歩いたわけではなかった。
岩屋の外を知り、少年の声を聞き、
元の場所へ戻ってからもその人を覚え続ける。
菜花が第1話から摩緒と行動を共にできた
歩みと比べると、その届かなさはさらに際立つ。
第26話の出会いを悲しくするのは、
声が届いた後にも壁が残り続けたことだ。

第3章 摩緒が御降家へ来てから、幽羅子の思いはどう変わった?

岩屋の外をのぞき、あの日の少年を見つめ続けた

幽羅子が岩屋の外で摩緒に会った時、
少年はまだ御降家の弟子ではなかった。
一度声を掛けられた後、幽羅子は元の場所へ戻る。
だから二人の間に続いたのは、
一緒に話して仲を深める日々ではない。
摩緒の顔を覚えたまま、呪符に囲まれた
岩屋で暮らす日々だった。

幽羅子はやがて、取り込んだ妖を通じ、
外の様子をうかがうことを覚える。
呪いを引き受けるために閉じ込められた体と、
岩屋の外を見たいという自分の望み。
同じ力が、それまでとは違う方向へ使われる。
外を見られても自分の足で出歩けないところに、
彼女の暮らしの苦しさが残っていた。

そんな中、かつて出会った摩緒が
御降家へ弟子として入ってくる。
岩屋の外で一度だけ会った少年が、
今度は自分のいる家の中で暮らし始める。
幽羅子の側には、再び会えるかもしれない
という期待が生まれる。ただ、摩緒が
同じ強さで彼女との出会いを覚えていたかは別だ。
再会を待った時間は、二人で共有していない。

第8話で百火が語る御降家には、
師匠に五色堂へ呼ばれる弟子たちがいた。
第9話では華紋、第16話では白眉も現れ、
摩緒が身を置いた家の人間関係が広がる。
弟子の摩緒には、術を学び、師匠や兄弟子と
関わりながら過ごす毎日がある。
一方の幽羅子にとって同じ御降家は、
呪いを引き受ける岩屋を抱えた場所だ。

摩緒が屋敷に来たことは、幽羅子が
岩屋から解放されたことを示さない。
屋敷のどこかで彼が動き、誰かと話す。
その気配を知ることと、正面から会いに行き
「あの日の私だ」と伝えられることは違う。
すぐ近くまで来た相手へ届かない距離が、
かえって最初の言葉を濃く残した。
摩緒を見る時間だけが増えていく。

岩屋の中の幽羅子にとって、
弟子たちの話し声が届く場所と、
自分の声が相手へ届く場所は違う。
摩緒が家の中にいると分かるほど、
一度だけ面と向かって話せた日が
遠く感じられたはずだ。ここで彼女が
欲しかったのは、外の景色だけではない。
もう一度、自分を見て話す機会だった。

第26話の出会いを思い返すなら、
「大丈夫?」の後に何が続いたかが大切だ。
摩緒に声を掛けられて恋人同士になったのではない。
岩屋へ戻され、それでも外をのぞき、
数年後に弟子となった摩緒を見つける。
幽羅子の恋には、相手と交わした会話より、
相手を見ることしかできない時間が長かった。

第17話の診療所には、白眉との戦いで
眠り続ける摩緒を頼って妖たちが訪れる。
菜花、乙弥、百火が代わりに動き、
目を覚まさない摩緒の仕事を支える。
この場面には、摩緒の近くで困り事を
共に引き受ける人たちがいる。
幽羅子がかつて望んだ「近くにいる」と、
同じ言葉でも過ごし方が大きく違う。

摩緒の心は紗那へ向かい、幽羅子は言葉を渡せなかった

御降家で摩緒の心に残ったのは紗那だった。
師匠の娘である紗那は、岩屋の中の幽羅子と
違い、摩緒が屋敷で顔を合わせる相手だ。
幽羅子が外を見て摩緒の姿を追う間にも、
摩緒には紗那と接する時間が積み重なる。
一度声を掛けてくれた少年が誰を見ているか。
それを知っても、幽羅子は同じ場所へ
自分の思いを差し出せる立場ではなかった。

第18話で夏野が摩緒と菜花の前に現れ、
大五と紗那の過去を語る。摩緒が思っていた
紗那にも、摩緒だけでは語れない人生がある。
御降家にいた一人ひとりが別の相手を見ていて、
その思いが同じ方向へそろうわけではない。
幽羅子から摩緒へ、摩緒から紗那へ。
さらに紗那と大五の過去まで聞くと、
誰も相手の心を思い通りにはできないと分かる。

幽羅子の立場から見ればつらいのは、
摩緒と紗那が互いをどう思っていたか
という結末だけではない。
摩緒は紗那の名前を呼び、その姿を
自分の記憶に残せるほど接していた。
幽羅子には、最初に声を掛けられた記憶を
摩緒と確かめる機会さえ乏しかった。
相手が振り向かない以前に、自分が
その人の前に立てない時間があった。

九百年後の第14話で、その差が
残酷な形で表に出る。帝都の政財界の
サロンに現れた幽羅子を、摩緒と華紋が追う。
ようやく摩緒と顔を合わせた時、
摩緒を驚かせたのは、岩屋で出会った
幽羅子が生きていたことではない。
彼女の顔が紗那にそっくりだったことだ。

幽羅子が覚えている摩緒の最初の言葉は、
自分の無事を案じる「大丈夫?」だった。
大正時代に自分を見た摩緒の反応には、
別の女性の面影が入り込んでしまう。
第14話の顔を見た瞬間だけを切り取ると、
よく似た人物に驚いた場面になる。
岩屋から見てきた幽羅子には、
ずっと待った相手から自分を見てもらう
難しさが、また突きつけられた場面でもある。

最初の気遣いが嘘だったわけではない。
摩緒が紗那を大切に思ったことも、
幽羅子を傷つけるために選んだ行動ではない。
ただ、幽羅子の中で続いた年月と、
摩緒の中で積み重なった年月は違った。
第26話から第14話を振り返ると、
幽羅子が欲しかった再会と実際の再会が、
どれほど離れていたかが見えてくる。

第4章 紗那と同じ顔なのに、なぜ摩緒は幽羅子を見てくれない?

第14・15話で摩緒が見たのは、紗那の面影と不知火の手先だった

第14話、幽羅子は帝都のサロンに現れる。
寿命をつなぐ御降家の陰陽師が来るという
噂を追い、華紋と摩緒も彼女の後を追った。
摩緒が顔を見て驚いたのは、
そこに紗那と同じ顔があったからだ。
幼い頃の「大丈夫?」を覚えている幽羅子には、
再会の最初の反応から別の人の存在が
強く割り込んでくることになる。

顔が同じなら、摩緒に選んでもらえる。
そう単純には進まないことを第15話が示す。
不知火が姿を現し、摩緒に泰山府君の秘法を
渡せと迫る。摩緒が怒って問いただすのは、
紗那と同じ顔をした幽羅子が、なぜ
不知火の手先となっているのかという点だ。
顔を見た衝撃の次には、現在の幽羅子が
誰の側で何をしているかが問題になる。

摩緒の目に映る相手は、岩屋で呪いを
引き受けていた少女だけではない。
九百年を経て、華紋たちの前に現れ、
不知火と行動を共にする幽羅子だ。
幽羅子に過酷な過去があったとしても、
今の立場や行動まで消えるわけではない。
摩緒がすぐに昔の声を思い出して
彼女を受け入れないことには、
目の前で起きている対立も関わっている。

第16話で白眉は摩緒を御降家の怨敵と呼び、
金の術で激しく攻める。その戦いの中で
摩緒は獣の姿となって暴走する。
九百年前の御降家から続く仲間や敵が、
現在も摩緒を追い詰めている。
幽羅子だけが過去に足を取られて
いるわけではない。摩緒自身も、
当時の出来事を背負ったまま戦っている。

摩緒にとって紗那の顔は、懐かしさだけを
呼ぶものでもない。第20話で夏野は、
紗那の心臓を掴み出した九百年前の邪気と、
幽羅子が放つ黒い邪気が同じだと語る。
この証言を聞いた後は、似た顔に驚いた
第14話の反応を恋の再燃とは読めない。
紗那の死に何が関わったのかを追う摩緒に、
幽羅子の姿は新たな問いも突きつける。

ただし、夏野が気配の一致を告げたことと、
幽羅子がどのように紗那へ手を下したかを
すべて見届けたことは同じではない。
第20話で確かめられるのは、過去の惨事と
現在の幽羅子を結ぶ強い手掛かりまでだ。
摩緒が彼女を警戒する場面を読む時も、
そこで判明した事実と、まだ分からない
当夜の経緯を分けて見たい。

紗那と同じ顔を持つから摩緒が振り向く、
という期待には、最初からずれがあった。
摩緒が紗那を思うなら、似た顔を見た瞬間に
紗那を失った記憶も呼び起こされる。
さらに不知火の側にいる今の幽羅子を
目の前で見ている。彼女が望む
「あの日の私を見てほしい」という再会と、
摩緒が置かれた状況は重ならない。

菜花に過去を語ったのは、摩緒のそばにいる相手だから

第25話では、女学校の呪詛事件を調べる
菜花をかがりが襲う。摩緒がその場を助けても、
かがりは呪いの針で菜花の居場所を突き止め、
幽羅子のもとへ連れ去ってしまう。
菜花が偶然昔話を聞くことになったのではない。
摩緒と一緒に行動している彼女を
幽羅子の前へ運ぶ手順が踏まれている。

第26話で幽羅子は、その菜花に向かって
岩屋での暮らしと摩緒との出会いを語る。
摩緒本人に聞かせる代わりに、いま
摩緒のそばにいる菜花へ伝えている。
菜花は第1話で摩緒に妖から助けられ、
第3話には破軍星の太刀に触れても死なない
自分の体を通して、彼と同じ呪いに
関わっていると知らされていた。

第6話、菜花は自分が百年後の世界から
来たことを摩緒と乙弥に打ち明ける。
信じてもらえなくても、令和へ戻って
八年前の事故を思い出し、再び摩緒を訪ねる。
第7話では幼い菜花を守るため、
摩緒が現代へ守護の式神を飛ばす。
互いの秘密や危機に触れながら、
二人の距離は少しずつ変わってきた。

幽羅子には岩屋の外から摩緒を見る
時間があり、菜花には摩緒と共に
事件を追ってきた時間がある。
どちらも彼に助けられた経験を持つ。
だが菜花は自分の言葉で反論し、
危険だと思えば彼のもとへ駆けつける。
幽羅子がかつて欲しくても持てなかった
日々を、菜花は目の前で生きている。

第22話では、傀儡の針を打たれた摩緒が
獣姿に変わり、白眉に操られてしまう。
駆けつけた菜花、百火、乙弥にまで
摩緒が襲いかかる危険な場面だ。
菜花と摩緒の関係は、守られているだけの
穏やかな時間でできたものではない。
呪いで彼を失いかける場にも立ち、
それでも同じ問題から離れていない。

幽羅子が菜花に昔の自分を話すと、
菜花は目の前の相手を単なる敵として
片づけにくくなる。岩屋の暗がりを知らずに
摩緒のそばへ来たわけではないにしても、
二人の出会いの差は無視できない。
ただ、菜花を連れ去った事実まで
消えるわけではない。同情と警戒が
同時に残るところが、この対面の厳しさだ。

幽羅子が本当に摩緒に求めているものを
測るには、紗那と同じ顔だけを見ても足りない。
最初に無事を案じられた自分を覚えてほしいのか。
菜花のように彼の隣で生きたいのか。
その願いをかなえるため、今は誰と組み、
菜花へ何をしているのか。第14話の再会から
第26話の告白までをつなぐと、幽羅子の恋は
優しい出会いだけでは語り切れなくなる。

第5章 幽羅子はなぜ菜花を気にする?摩緒が見せた行動に答えがある

第19・20話で摩緒が菜花を助ける姿を見た

幽羅子が菜花に向ける感情は、
昔の摩緒との出会いを聞くだけでは
見えてこない。第19話の海底の社では、
摩緒たちが夏野の力を借りて不知火を追う。
華紋は真砂の最期を聞かされ、
不知火の術にも追い詰められる。
その混乱の中で幽羅子も姿を現し、
摩緒と菜花が同じ危険の中にいるところを見る。

第20話へ続く場面では、水に呑まれた菜花を
摩緒が助ける。幽羅子にとって気になるのは、
菜花が摩緒のそばにいるという形だけではない。
危険に陥った菜花を摩緒が見つけ、
実際に手を伸ばして連れ戻すところだ。
幼い日に自分へ掛けられた「大丈夫?」を
抱えてきた幽羅子の前で、摩緒は今、
別の少女を案じ、行動している。

もちろん、誰かを助けたからといって、
摩緒がその相手に恋をしていると
決まるわけではない。第1話でも彼は
妖に襲われた菜花を救っているし、
第21話では兄との戦いで傷ついた双馬を
診療所へ運ぶ。目の前の傷を見過ごさない
摩緒らしさは、相手が誰でも変わらない。
それでも幽羅子には、菜花を守る場面が
自分の届かなかった時間を突きつける。

第20話では夏野が、幽羅子の黒い邪気と
九百年前に紗那の心臓を掴み出した邪気が
同じものだと告げる。摩緒にとっては、
紗那の死に迫る重大な証言だ。
幽羅子から見れば、自分の存在が
摩緒の過去の痛みと結びつき、
菜花は今の摩緒のそばで彼を助ける。
同じ場所に立つ二人でも、
摩緒へ近づける道はまるで違う。

その後の第20話で、摩緒と菜花は
事件を離れて一緒に歩く時間も持つ。
危険な現場にいた二人が、次には
互いの顔を見ながら話せる。
幽羅子が岩屋から摩緒を追っていた頃には、
こうした何気ない時間すら手に入らなかった。
命を救ってもらう瞬間だけではなく、
無事に戻った後も隣にいられること。
幽羅子と菜花の差はそこにもある。

摩緒は菜花への礼として彼女を連れ出し、
二人は手をつないで歩く。
菜花にとっても、守られた時とは違う
摩緒の表情を近くで見る時間だった。
海底の社で助けた相手と、事件の後で
会話を続ける。その二つの場面が並ぶと、
幽羅子が岩屋で一言を聞いた後に
得られなかった時間がはっきりする。

菜花自身は、摩緒にいつも優しく
扱われていると思っているわけではない。
紗那のことを気にする摩緒を見て、
自分への態度と比べてしまう時もある。
それでも二人は、怒ったり言い返したりしながら
再び同じ事件を追う。相手の言葉を聞き、
自分の言葉を返せる関係だ。
幽羅子が長く抱えた一方通行の思いとは、
日々のやり取りの量が違う。

第22話では傀儡の針を打たれた摩緒が
獣姿へ変わり、白眉に操られる。
菜花、百火、乙弥が駆けつけても、
摩緒は三人に襲いかかってしまう。
菜花は守られるだけの安全な相手ではない。
摩緒の呪いで傷つく危険があっても、
彼のいる場所から離れずに関わってきた。
幽羅子が菜花を見る時には、
摩緒と一緒に背負ってきた出来事も映る。

第25話の連れ去りで、幽羅子は菜花を自分の前に立たせた

第25話、菜花は女学校で続く呪詛を
調べるため潜入する。宝生かがりは
菜花を攻撃するが、摩緒が助けに来る。
そこで終わらず、かがりは呪いの針を使って
菜花の居場所を突き止める。そして彼女を
幽羅子のもとへ連れ去る。
摩緒が救った相手を、別の手で
摩緒のそばから引き離した形だ。

幽羅子が菜花を呼んだのは、
剣や術でその場で倒すためだけではない。
第26話で彼女が始めたのは、
自分の過去を菜花へ話すことだった。
呪符だらけの岩屋、御降家へ放たれる呪い、
閉ざされた場所の外を知った日、
そこで声を掛けてきた摩緒。
摩緒のそばにいる菜花へ、
自分と彼の始まりを順に聞かせる。

第14話に政財界のサロンへ現れた時、
幽羅子は人前に姿を見せながら、
摩緒たちに顔と所属をめぐる疑問を残した。
第25話では反対に、かがりの術を通じて
菜花を人目のない自分のもとへ呼び込む。
ただ摩緒に会いに出るのではなく、
誰に、どの場面で自分を見せるかを
幽羅子は選んでいる。岩屋で外を見る
だけだった頃と、動き方は変わっている。

菜花には、幽羅子の話を聞く前から
摩緒への思いと紗那への戸惑いがある。
第14話で幽羅子の顔を見た摩緒の驚きも、
第18話に夏野が話した紗那と大五の過去も、
菜花は摩緒の近くで受け止めてきた。
そこへ幽羅子が、自分もずっと摩緒を
思っていたと語る。菜花の知らなかった
九百年前の相手が、今度は目の前で
自分の言葉を使っている。

ここで菜花が迷うのは、
幽羅子がかわいそうだと感じる気持ちと、
連れ去られた自分の立場が同時にあるからだ。
岩屋で受けた仕打ちには胸が痛む。
しかし現在の幽羅子は、かがりを介して
菜花を捕らえ、不知火の側にもいる。
過去を知ったことだけで、その行動を
なかったことにはできない。

幽羅子の思いが本物かどうかと、
その思いを受けた菜花が身を引くべきかは別だ。
好きになった経緯が切実であるほど、
聞かされた菜花は簡単に突き放せない。
しかし摩緒の隣で事件を追ってきた
菜花の時間にも、本人の気持ちがある。
第26話で向き合う二人を、単に
先に好きになった者と後から来た者へ
分けられないのは、そのためだ。

第6章 幽羅子の思いを聞いた菜花と摩緒は、どう向き合う?

菜花は幽羅子の過去を知っても、自分の気持ちを消せない

第26話で幽羅子が菜花に話したのは、
摩緒への恋だけではなかった。
自分が御降家の呪いを取り込むために
岩屋で暮らしていたことも明かしている。
同じ顔をした紗那の謎を追っていた菜花には、
目の前の幽羅子が長く人としての暮らしを
奪われていたと知る場面でもある。
聞く前と同じ目で彼女を見るのは難しい。

だが菜花も、摩緒に助けられた第1話から
そのまま何もせず隣に立っていたわけではない。
第3話に破軍星の太刀へ触れても死なず、
幼い頃の猫鬼の血を疑われる。
第6話には八年前の事故の記憶を取り戻し、
摩緒へ会うため大正時代へ戻った。
彼女自身も呪いを背負い、怖さを知った上で
摩緒との関係を選び続けている。

第7話、幼い菜花が猫鬼に連れ去られた際、
獣姿の摩緒は現代へ守護の式神を飛ばす。
第17話には眠り続ける摩緒の診療所で、
菜花が乙弥や百火と訪問者に対応する。
片方が相手を思い続けた年数だけでは、
この積み重ねは測れない。
幽羅子の九百年を聞いても、
菜花が摩緒と過ごした日々まで
消してしまう必要はない。

一方で幽羅子を、紗那に似た顔の
邪魔な女として片づけるのも違う。
彼女には第26話で語った過去があり、
摩緒が初めて掛けた言葉がある。
菜花自身、傷ついた人を目の前にして
何も感じずに済む人物ではない。
だから幽羅子の話は、菜花を力で
押さえつけるのとは違う形で届く。
相手を憎み切れないことが重荷になる。

※ここからは、アニメ第26話の先に当たる
原作第90話の内容に触れる。

原作では幽羅子のもとから戻った後、
菜花は摩緒たちと華紋の屋敷を訪ねる。
連れ去られた件が終わっても、
幽羅子の話を聞いた影響は残っている。
幽羅子がなぜ紗那と同じ顔なのか、
不知火と行動する狙いは何なのか。
肝心な問いにはまだ答えがないまま、
菜花だけが彼女の過去を知ってしまった。

その後、菜花には入学を祝ってもらう
普段の生活も戻ってくる。令和での暮らしと、
摩緒たちがいる大正時代を行き来する彼女には、
これから選べる時間がある。それなのに、
岩屋で選ぶ自由を持てなかった幽羅子を
思い出すと、自分だけ先へ進んでよいのか
迷ってしまう。祝われる場面にも
幽羅子の話の余韻が入り込む。

華紋は菜花の様子を見て、
幽羅子の言葉が彼女を縛っていると察する。
殴られたり術を掛けられたりしなくても、
「あの人には私より長い思いがある」と
考え続ければ、自分の行動をためらう。
原作第90話の題が「言葉は呪い」なのは、
菜花が聞いた話の後味と重なる。
幽羅子の過去を知ることと、
その恋に自分の進路を決めさせることは違う。

摩緒が向き合うのは昔の少女だけでなく、今の幽羅子でもある

摩緒が幽羅子を受け入れるかどうかを、
第26話の出会いだけで決めることはできない。
九百年前、彼が一人の少女を気遣ったのは事実だ。
だが第14話に再会した相手は、
不知火の一味として帝都に現れている。
第15話の摩緒は、紗那と同じ顔の彼女が
なぜ不知火の手先なのかと怒った。
昔の善意を、今の信頼へそのまま
移せる状況ではなかった。

第20話では、紗那の心臓を奪った邪気と
幽羅子の邪気が同じだと夏野が告げる。
摩緒は紗那を失った日の出来事を追い、
自分が知らなかった事実に向き合う。
ここで幽羅子の過去を知ったとしても、
紗那に何が起きたかという疑問は消えない。
幽羅子が背負った苦しみと、
紗那の最期をめぐる出来事の両方が
摩緒の前に残る。

さらに第25話には菜花が連れ去られた。
摩緒が女学校で菜花を助けた後で、
かがりは呪いの針を使って居場所を探す。
摩緒が今、幽羅子をどう見るかには、
自分のそばにいる菜花が危険に
さらされた事実も入ってくる。
昔の幽羅子へ同情する気持ちが
生まれたとしても、それだけで
菜花への行動を許すとは言えない。

摩緒と幽羅子が同じ記憶を持つことも
確かめなければならない。幽羅子には、
岩屋の外で声を掛けられた日から
摩緒を追い続けた年月がある。
摩緒の側には、御降家で紗那と接し、
崩壊の夜を経て、大正時代には
菜花と呪いを追ってきた年月がある。
二人が同じ時を生き延びても、
同じ関係を育ててきたわけではない。

第26話を見た後に第1話へ戻ると、
摩緒が菜花を妖から救った場面も違って見える。
彼は目の前で傷つきかけた相手を助ける。
その行動だけでは恋の行方は決まらない。
菜花とはその後、呪いを調べ、
互いの過去へ踏み込み、何度も危険を越えた。
幽羅子もかつて同じ人に救われるような
言葉をもらったが、その先を一緒には歩けなかった。

幽羅子の恋が切実であることと、
摩緒がその恋に応えることは別の話だ。
摩緒が向き合わなければならないのは、
岩屋にいた少女の願いだけでなく、
紗那に似た顔で現れ、菜花を呼び出した
現在の幽羅子が何を望むかという点だ。
彼女自身も、あの日の「大丈夫?」だけで
止まったままではない。過去を知った後こそ、
いま選んだ行動を見る必要がある。

第7章 幽羅子は摩緒と結ばれる?第26話の後に残る問い

摩緒に届いた一言と、幽羅子が返せなかった言葉は違う

第26話で分かったのは、
幽羅子が摩緒を好きになった始まりだ。
岩屋から外へ出た時、出会った少年に
「大丈夫?」と声を掛けられた。
呪いを引き受ける器として扱われてきた
幽羅子には、その問いが残り続けた。
だが、最初の出会いが明かされたことと、
二人の恋が成就したことは同じではない。

摩緒は当時、御降家へ入る前だった。
幽羅子は岩屋へ戻され、外を見る方法を
覚えながら、後に弟子となった彼を見つめる。
出会った時の気持ちを伝えて返事を待つ、
そんな普通の手順を踏めたわけではない。
摩緒が屋敷で紗那と接している間にも、
幽羅子には岩屋から彼を見る時間があった。
同じ屋敷にいても、恋を育てる場所は違った。

九百年後の第14話に幽羅子の顔を見た摩緒は、
紗那に似ていることに驚く。第15話には、
その顔の女が不知火の側にいると知り、
怒って問いただした。幽羅子が
「あの時の私を見てほしい」と望んでも、
摩緒が現在見ているのは、不知火と行動する
人物であり、失った紗那を思わせる顔だ。
幽羅子の長い記憶が、そのまま
摩緒の記憶と重なるわけではない。

第20話にはさらに、夏野が
幽羅子の黒い邪気について証言する。
紗那の心臓を掴み出した邪気と同じだと
聞いた摩緒には、紗那の最期を
確かめる必要が生まれる。
かつて自分が声を掛けた少女だと分かっても、
それで九百年前の惨事を忘れられない。
幽羅子の恋が深いほど、摩緒にとって
向き合うべき出来事も深くなっている。

幽羅子が好きなのは、現在の摩緒なのか。
岩屋の外で自分を案じた少年なのか。
第26話だけでその二つを切り離すことは
できない。彼女は摩緒を見つめ続け、
九百年を経ても名前を忘れなかった。
一方、摩緒は御降家の崩壊、紗那の死、
猫鬼の呪い、菜花との出会いを経てきた。
今の彼に届きたいなら、初対面の記憶
だけでなく、その後の彼も見なければならない。

摩緒の側にも、答える前に知るべきことがある。
幽羅子が岩屋でどう扱われ、なぜあの一言を
忘れられなかったのか。紗那と同じ顔を
持つ彼女が、現在何を望んでいるのか。
第26話では菜花が先にその過去を聞く。
摩緒が幽羅子本人と向き合い、
同じ話をどう受け止めるかまでは、
この出会いの回だけで決まらない。

幽羅子の過去を知った後も、菜花と摩緒の選択は続く

第25話、菜花は女学校の事件を追い、
かがりに襲われる。一度は摩緒が助けても、
呪いの針で居場所を探され、
幽羅子のもとへ連れ去られた。
続く第26話で聞かされたのが、
岩屋の暮らしと摩緒との出会いだ。
菜花は幽羅子の過去を知ったからこそ、
目の前の行動をどう見るか迷うことになる。

幽羅子をかわいそうだと思うことと、
菜花自身が摩緒から離れることは別だ。
菜花も第1話で摩緒に助けられ、
第3話には自分の体に猫鬼の呪いが
関わると知った。第6話では八年前の事故を
思い出し、自分から大正時代へ戻る。
摩緒の近くにいる時間は、与えられた席に
座って待っていただけの時間ではない。

出会いの言葉も二人では違う。
岩屋の外の幽羅子へは「大丈夫?」。
第1話、菜花を妖から救った摩緒は
彼女に「おまえ、妖だろう」と告げる。
幽羅子には気遣いが残り、
菜花には自分の体への疑問が残った。
出会い方は正反対でも、どちらも
その後の人生を変える入口になっている。

第7話では幼い菜花を守ろうと、
摩緒が現代へ守護の式神を飛ばす。
第17話には白眉との戦いで摩緒が
眠り続ける間、菜花は乙弥や百火と
診療所へ来る妖たちに対応した。
第22話には操られた摩緒に襲われる。
助けられ、今度は彼を支え、
彼の力に傷つけられる危険まで知った。
その積み重ねを幽羅子の九百年と
年数だけで比べることはできない。

摩緒にとっても、菜花は紗那の代わりでも、
幽羅子に会うまでの一時的な相手でもない。
令和から来たと打ち明けられた時は
すぐに信じられなかったが、
菜花は何度も五行商店街の門を越えた。
同じ猫鬼の呪いを追いながら、
互いに知らなかった過去へ近づいてきた。
幽羅子の気持ちを知ることによって、
菜花と過ごした出来事が消えることはない。

幽羅子の側にも、第26話の告白で
答えがすべて出たわけではない。
不知火と共にいる現在の狙い、
紗那と同じ顔を持つこと、
九百年前の黒い邪気とのつながり。
菜花に語ったのは自分が摩緒と出会うまでの
苦しみと、その後に続いた思いだ。
摩緒にどうしてほしいのか、
そのために今何を選ぶのかは、
なお本人の行動から見ていく必要がある。

だから「幽羅子はなぜ摩緒を好きになった?」
への答えは、恋の勝ち負けでは終わらない。
岩屋に閉じ込められた彼女の無事を、
御降家の役目を知らない少年が尋ねた。
その一言を覚えてきた幽羅子が、
大正時代には菜花を自分の前へ呼び、
摩緒の近くにいる相手へ過去を話す。
好きになった日の純粋さと、
現在選んでいる行動の両方が彼女だ。

第1話の菜花と摩緒の出会い、
第14話の幽羅子の素顔、
第20話の紗那をめぐる証言、
第25話の菜花の連れ去り。
第26話の岩屋を見た後では、
これらが別々の出来事に見えなくなる。
誰が摩緒に声を掛けられ、
誰がその後を一緒に歩けたのか。
幽羅子の恋の始まりを知るほど、
摩緒と菜花がこれから何を選ぶかも
気になるところで物語は続いていく。

MAOまとめ

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