シズとヒナタの再会は、シズが生き返った場面ではない。
シズを受け入れたリムルがクロノアの精神世界へ入り、無限牢獄にいるヒナタとクロエを救おうとした先で、二人は向き合った。
ヒナタがシズに伝えられなかった言葉と、かつて幼いシズを救った勇者の正体を辿ると、第96話の別れがつながる。
第1章 結論|シズとヒナタは、どうして再会できた?
シズは復活していない――二人が向き合ったのは精神世界
第96話でシズとヒナタが再会できたのは、
亡くなったシズが現世へ戻ったからではない。
リムルがクロノアの精神世界へ入り、
「無限牢獄」にいるヒナタとクロエを救おうとした。
その心象風景の中で、二人は向き合ったのだ。
この場面でまず思い出したいのは、第8話の別れだ。
イフリートとの長い戦いに疲れたシズは、
最期にリムルの中で眠ることを望んだ。
リムルは彼女を受け入れ、シズの姿と力を継ぎ、
残された願いを果たすために動き始めた。
第20話では、シズがイングラシアで
召喚された子供たちを教えていた夢を見る。
リムルはその未練を放っておけず、
自由学園へ向かい、クロエたちに会った。
シズとの別れは、リムルの中で終わっていなかった。
だから第95話、クロノアの精神世界へ入った
リムルの前にシズの姿が現れた時、
第8話から続く関係を思い出せる。
シズはリムルを昔の名前で呼び、
リムルは今の自分の名を告げる。
二人が再び言葉を交わす場所は、現実の街ではない。
第96話の再会も、同じ心象風景の中にある。
シズが肉体を得て帰還したわけでも、
ヒナタが過去の教室へ戻ったわけでもない。
クロノアの内側へ進んだリムルと、
そこに留められていたヒナタの魂が、
シズの姿を前にして言葉を交わせた。
ここで「シズはリムルの中にいる」と言っても、
生前と同じ姿で暮らし続けていた、という話ではない。
第8話で託された願いをリムルが抱え、
第95~96話では心象風景にシズが現れた。
彼女の死と、今回交わされた言葉を、
どちらも消さずに受け止めたい場面だ。
ヒナタが抱えていたのは、恩師に感謝を告げず去った悔い
ヒナタがシズに伝えたかったことを知るには、
第56話のリムルとの戦いが欠かせない。
あの時ヒナタは、師から学んだ剣を握りながら、
感謝を言えないままシズのもとを去った過去を
悔やんでいた。再会した第96話で、
初めて生まれた気持ちではなかったのだ。
シズはヒナタの教師であり、
異世界で行き場を失った彼女を助けた人だった。
それでもヒナタは師のそばを離れ、
聖騎士として別の道を選んだ。
離れた後もシズを大切に思っていたことは、
その教えを剣に残していた姿から伝わる。
第30話では、シズがリムルに殺されたと
吹き込まれたヒナタが、リムルの話を聞かずに襲う。
師を失った痛みが、誤った情報と結び付いた。
後に誤解は解けたが、シズ本人に向かって
感謝を伝える機会まで戻ったわけではない。
そこに、ヒナタの長い心残りがあった。
第56話でヒナタがリムルへ向けた技には、
シズから受け継いだ経験が込められていた。
剣を振るうたび師を思い出しながら、
本人には「ありがとう」と言えなかった。
第96話の再会が胸に迫るのは、
長く言えずにいた言葉を届けられるからだ。
さらに第93話、過去へ渡ったヒナタは、
勇者クロノアの体を通して幼いシズを助けている。
かつて自分を救った師を、今度は自分が救った。
ただし、幼いシズに会えたことと、
教え子だった自分として恩師に向き合えたことは違う。
後者の再会が、第96話でようやく訪れる。
したがってヒナタの謝罪だけを、
「師のもとを去ったのが悪かった」と
単純に受け取る必要はない。
あの時には言えなかった感謝があり、
シズを思い続けても埋められなかった距離がある。
二人の再会は、その距離を越えて言葉を交わす時間だった。
第2章 第96話の再会|ヒナタはシズを前に何を伝えた?
リムルがクロノアの魂に触れ、無限牢獄へ向かう
第96話へ入る直前、リムルが探していたのは、
目の前で暴れるクロノアを倒す方法ではない。
その内側にいるクロエとヒナタを救う道だった。
第94話までの戦いでは、力で押さえるだけでは
二人へ届かない。リムル自身が精神世界へ入り、
クロノアの魂に触れる必要があった。
第95話で先に現れるのはシズの姿だ。
リムルは思いがけない相手と再び会い、
クロノアが抱えてきたものを聞く。
だが、ヒナタがすぐ隣にいるわけではない。
彼女はクロエと共に「無限牢獄」の中にいる。
シズとの再会には、まだその先が残っていた。
そもそもヒナタは第91話で倒れた後、
現代の肉体から離れ、クロエと共に過去へ渡った。
第92~93話では約二千年前から歩みを重ね、
一つの体の中で意識を交代しながら行動する。
第96話のリムルが救おうとしているのは、
その長い時間を経て内側に残るヒナタだ。
クロノアには、クロエとヒナタが
共に過ごした年月が積み重なっている。
第93話にはクロエが勇者として行動し、
ヒナタが彼女の体を動かす場面もある。
外から見れば一人の勇者でも、
内側で歩んでいた二人を無視しては救えない。
そこで第96話、ラファエルは
クロノアの能力への干渉を試みる。
リムルがクロノアの魂に触れたことが、
無限牢獄にいる二人へ近づく入口になる。
剣で牢を壊す戦いではなく、
閉じ込められた相手を見つけ出す場面だ。
その心象風景にシズがいることで、
リムルにとっての救出は、
ヒナタとクロエだけの出来事ではなくなる。
シズが託した願いを受けて子供たちへ会いに行き、
クロエを守り、ヒナタとも和解してきた。
かつて別々に見えた行動が、同じ場所で重なる。
謝罪と感謝の後に訪れる、二度目の別れ
ヒナタがシズを前にした場面では、
第56話の戦いを思い返したい。
リムルへ剣を向けた時のヒナタは、
シズから教わった技を使えても、
師に感謝を伝えることはできなかった。
再会を諦めていた相手が、今は目の前にいる。
ヒナタの胸には、師のもとを離れた悔いだけでなく、
自分を助けてくれた人に礼を言えなかった思いがある。
第93話で幼いシズを助けた時には、
「今度は自分が助ける」という行動で恩を返した。
しかし、過去のシズはまだ、
未来で自分の教え子になるヒナタを知らない。
だから第96話で向き合う二人には、
第93話の救出とは違う重みがある。
シズの教え子だったヒナタが、
自分を知っているシズに言葉を届ける。
助けた側と助けられた側が入れ替わった事実も、
ようやく同じ場所で受け止められる。
第30話のヒナタは、リムルを
シズの仇と信じて剣を向けた。
第56話には、シズから教わった技で
再びリムルと戦っている。
だが第62話では、攻撃を受けるリムルをかばった。
第96話でシズが見るヒナタは、その道を歩んできた人だ。
リムルも、ただ二人の傍らに立つ人物ではない。
第8話ではシズの最期を引き受け、
第20話では彼女の教え子を訪ね、
第30話にはヒナタの誤解から命を狙われた。
それでも今、ヒナタとクロエを救おうとしている。
三人が同じ場に立つまでにも長い時間があった。
再会したからといって、
シズとヒナタが現世で暮らし直せるわけではない。
第8話でシズと別れたリムルと同じように、
ヒナタも再び彼女を見送ることになる。
だからこそ、謝罪だけで終わらせず、
会えてよかったという感謝まで受け取りたい。
第96話の別れが切ないのは、
もう会えないと思っていた相手と話せた後に、
その時間が長くは続かないと分かるからだ。
シズは現世へ戻らない。それでもヒナタは、
言えなかった言葉を抱えたまま
再び離れることにはならなかった。
第3章 シズはリムルの中へ何を託した?
第6~8話|故郷を語ったシズが、リムルに頼んだ最期の願い
第96話でシズが姿を見せた場面には、
第8話で交わした別れが重なる。
リムルと出会った頃のシズは、長年にわたり
イフリートの力を押さえ込んできた戦士だった。
周囲には「爆炎の支配者」と呼ばれても、
本人が望んで得た力ではなかった。
第6話、リムルの村を訪れたシズは、
同じ日本から来た相手だと知って話をする。
リムルは思念伝達を使い、
彼女が離れてから変わった日本の景色を見せた。
故郷へ帰ることも、過ぎた年月を取り戻すことも
できないシズには、短くても大切な時間だった。
しかし第7話、シズの体に宿るイフリートが暴走する。
かつて東京の空襲から魔王レオンに召喚され、
その後、上位精霊を宿された過去が、
目の前の危機として再び現れたのだ。
リムルはイフリートを止めたが、
長く力を抑えてきたシズの体は限界に近かった。
第8話でシズがリムルに望んだのは、
もう一度戦うための力でも、
別の肉体で生き延びる方法でもなかった。
自分をリムルの中で眠らせてほしいと頼み、
リムルは「捕食者」を使って彼女を受け入れる。
シズによく似た人間の姿を得たのも、その後だ。
リムルが引き継いだ容姿は、
シズを知る人には見過ごせないものだった。
後にヒナタがリムルへ剣を向けた時も、
目の前の魔物と恩師との関係が問題になる。
第8話の選択はリムル個人の姿を変えただけでなく、
教え子がリムルと出会う形まで変えている。
ここで託されたものは、外見だけではない。
シズには、魔王レオンのもとから助けてくれた
勇者の記憶があり、自分が教えてきた子供たちへの
心残りもあった。彼女は長い間、
自分が救われた経験を胸に人々を助けてきた。
その歩みを知ったリムルは、願いを放置しない。
第95話、クロノアの精神世界へ入ったリムルの前に、
シズは思いがけず姿を現す。
彼女はリムルを昔の名で呼び、
リムルは現在の自分の名を告げた。
第8話でリムルがシズを受け入れて以来、
二人が積み重ねた時間を感じさせる再会だった。
ただし、ここでシズが現れたからといって、
第8話の死そのものが覆ったわけではない。
リムルの体の外へ帰ってきて、
誰とでも暮らせるようになったわけでもない。
第96話のヒナタとの対面は心象風景で起きる。
だからこそ、言葉を交わせる時間が貴重になる。
シズを受け入れた第8話と、
シズがヒナタの前に立つ第96話の間には、
リムルが彼女の願いに沿って行動した年月がある。
その行動がなければ、リムルはクロエと出会わず、
ヒナタと向き合う機会も得られなかった。
二人の再会には、この長い道筋が通っている。
第20~23話|シズの教え子を訪ね、クロエと出会う
第20話でリムルが見たのは、
シズがイングラシア王国で子供たちを教える夢だ。
暴風大妖渦との戦いを終えた夜、
自分の姿を託した人が残した仕事に気付き、
リムルはテンペストから王都へ向かう。
ここで「シズの教え子」が目の前の人々になる。
シズが亡くなった後、
教室には新しい先生が必要だった。
リムルは自分と同じ日本から来た子供たちを見て、
シズが生前、誰のことを案じていたかを知る。
夢の中の教室と、目の前で反発する生徒たち。
その差を埋めるために彼は動き始めた。
第21話、自由学園でリムルを迎えた子供たちは、
新しい教師へ素直に従うだけではなかった。
ケンヤ、クロエ、ゲイル、リョウタ、アリスは、
それぞれリムルへ不満をぶつける。
一方的に異世界へ呼ばれ、寿命まで脅かされている。
シズが心配していたのは、その子供たちだ。
リムルは模擬戦で彼らを受け止める一方、
体に溢れる魔素を抑える方法を探した。
第22話では上位精霊の力を求め、
子供たちを連れて精霊の棲家へ向かう。
イフリートを宿したシズの経験があるから、
精霊の力は単なる便利な手段には見えない。
第23話、光の台座へ最後に上がったクロエには、
他の子と同じ精霊が現れなかった。
代わりに現れたのは、膨大な力を持つ精神体。
ラミリスもその存在に反応したが、
当時のリムルには長い時間のつながりまでは見えない。
それでもクロエは、そこで救われた子の一人だった。
精霊を呼んだ四人と違い、
クロエだけに現れた存在は、
その場で簡単に正体を言い当てられない。
リムルは目の前の異変に対処し、
子供を無事に連れ帰ることを優先した。
第96話でクロエを探す姿にも、その姿勢が続く。
第96話から見直すと、第23話のクロエは、
後にヒナタと共に過去を歩く人物だと分かる。
リムルはシズの教え子を救おうとして、
やがてシズを救う勇者へつながる子を守っていた。
最初から結末を知って動いたわけではない。
目の前の子供を助けた行動が、後に再会の道を開く。
第68話の開国祭では、さらに小さな場面がある。
リムルに頼まれたヒナタはクロエたちを引き受け、
子供たちと一緒に屋台を回る。
リムルもヒナタもシズの教え子を見守り、
クロエは二人のそばで祭りを楽しんでいた。
第96話で並ぶ顔ぶれは、ここでも既に交わっている。
第20話の夢から第21話の学園、
第23話の台座まで、リムルは目の前の子を救った。
そこでクロエとの関係が生まれ、
第68話にはヒナタも子供たちと過ごしている。
シズが最期まで気に掛けた子を通じて、
第96話の再会へ道が続いた。
第4章 ヒナタは、なぜシズに謝りたかった?
閑話・第30話|恩師を失ったヒナタは、リムルを敵だと信じた
ヒナタは異世界でシズに教わった一人だ。
第1期後の閑話では西方聖教会の聖騎士団長となり、
ルベリオスで東の商人から親書を受け取る。
そこで知ったのは、シズと深く関わった
魔物の国の支配者、リムルの存在だった。
師の名が出れば、無関心ではいられない。
第30話、テンペストへ戻ろうとするリムルを
ヒナタが待ち受ける。彼女はリムルを結界に閉じ込め、
魔法を封じた上で剣を向けた。
リムルは自分もシズを知っていると伝えたい。
だが、ヒナタは「リムルがシズを殺した」という
偽りの情報を受け、言葉を聞く余地を失っていた。
この襲撃には、シズを大事に思う気持ちが
確かに含まれている。だが同時に、
師本人から聞けないまま他人の話を信じ、
真相を知る相手へ先に剣を振るった。
リムルとシズの別れを知っていれば、
二人が話せないもどかしさも伝わる。
結界の中で戦うリムルには、
相手がシズの教え子だと分かっている。
ヒナタにも、相手が師と関わった人物だと分かる。
同じシズを思い浮かべているのに、
片方は最期の願いを知り、片方は偽りを信じている。
この情報の差が会話を奪っていた。
リムルは分身体を使って危機を逃れたが、
ヒナタにはまだ別の事実が見えていない。
シズは自ら望んでリムルの中で眠り、
リムルは彼女の教え子を訪ねて救っていた。
第20~23話で築かれた関係を知らないヒナタには、
目の前の相手が師の願いを継ぐ人とは映らなかった。
ヒナタがシズへ謝りたかったことを、
この襲撃だけに狭めることはできない。
リムルとの誤解より前に、
彼女はシズのもとを去っていた。
感謝を言う前に別れたという心残りがあり、
師の死を知っても、本人へ言い直せなかった。
第56話でヒナタ自身が振り返るのは、
シズから学べるものを学んで去りながら、
不器用で感謝の言葉を伝えられなかった過去だ。
第30話の怒りだけでヒナタを見ると、
この悔いが隠れてしまう。
第96話の涙へ続くのは、むしろこちらの言葉だ。
第56~59話|シズから習った剣で戦い、最後はリムルをかばう
第56話、ヒナタは再びリムルと対峙する。
すでに穏便に話す考えも持っていたのに、
届いた挑発的な伝言と聖騎士団の動きが重なり、
戦いを避けられなくなった。
ヒナタは武器を握り直し、
シズから習った技術と経験を剣へ注ぐ。
ここで第30話と同じ敵意だけを見てしまうと、
ヒナタの胸中が見えなくなる。
彼女は師に礼を言えなかったことを悔やみ、
教えられたものを自分の体に残していた。
リムルの攻撃を受け、剣を振り返す動きにも、
シズと過ごした年月が刻まれている。
第58話、ヒナタは自分の全力の一撃を
リムルが受け切れば負けを認めると提案する。
リムルは崩魔霊子斬をしのぎ、
ヒナタも約束通り勝敗を受け入れた。
話せるかもしれないと思った直後、
七曜から渡された剣が勝手にリムルを狙う。
その時、リムルの前へ飛び込んだのはヒナタだった。
一度目はシズの仇だと信じて襲った相手を、
今度は自分の体でかばい、瀕死の傷を負う。
彼女がリムルへの見方を変えたことは、
謝罪の言葉だけでなく、この瞬間の動作に表れた。
シズを大切に思う二人が傷付け合う結末を止めている。
一度目の戦いでは、
ヒナタがリムルを逃がすつもりはなかった。
二度目には勝敗を受け入れ、
不意に剣から襲われたリムルを守る。
剣を向ける位置から、間に入る位置へ。
画面上の立ち位置まで変わった瞬間だった。
第59話には、リムルとヒナタが席に着き、
両国の関係を話す場面が訪れる。
ヒナタは「東の商人」に偽りを吹き込まれたことを明かし、
かつての襲撃についても謝る。
その後には同じ食卓ですき焼きまで囲んだ。
第30話の結界の中では考えられなかった距離だ。
それでも、リムルとの誤解が解けたことと、
シズ本人への感謝を届けたことは別だ。
リムルに謝り、クロエたちと屋台を回り、
昔より穏やかな関係を築いても、
亡くなった師に向けた言葉だけは届かない。
第96話の再会が必要だったのは、そのためだ。
第68話には、その変化が穏やかに映る。
リムルはクロエたちの世話をヒナタに頼み、
彼女は子供たちと屋台を巡った。
かつてリムルを殺そうとした人が、
シズの教え子を任されている。
ヒナタが築いた信頼は、祭りの風景にも残る。
さらに第93話、ヒナタは過去のシズを助ける。
恩師に救われた教え子が、幼い恩師を救い返した。
だが、その子は未来のヒナタをまだ知らない。
救出を果たした後にも残る言葉が、
第96話の心象風景で初めて師へ向かう。
謝罪と感謝は、そこでようやく一緒に届けられた。
第5章 シズを救った勇者は、なぜヒナタだった?
第92~93話|クロエと過去へ渡ったヒナタが、幼いシズに会う
第8話でシズが語った「自分を救った勇者」は、
第93話で思いがけない顔につながる。
シズの教え子であるヒナタだ。
ただし、ヒナタが一人で過去へ渡り、
勇者になったわけではない。
そこにはクロエの時間旅行がある。
第91話、グランベルの攻撃でヒナタが倒れ、
その直後にクロエの姿も消えた。
第92話でヒナタが目覚めた場所は、
現在のルベリオスではなく約二千年前。
クロエはヒナタを自分の中へ守り、
二人で過去へ渡っていた。
ヒナタにとっては、知っている街も仲間も
まだ存在しない時代だ。
一方のクロエは、この旅を初めて経験する
わけではないとヒナタに話す。
過去へ戻るたび、知っている歴史を歩み、
リムルたちのいる時代を目指してきた。
ヒナタはその長い旅に加わった。
第93話、二人はルミナスと協力し、
勇者クロノアとして各地を巡る。
暴れるヴェルドラに挑み、
「無限牢獄」で封じた勇者の姿は、
第1話でヴェルドラが語った過去にもつながる。
リムルが洞窟で出会った暴風竜を、
三百年前に閉じ込めた相手だ。
やがて、幼いクロエがこの世界へ来る
時期が近づく。過去から歩んできたクロエは
表に出られなくなり、意識を眠らせた。
そこで勇者の体を動かす役目を引き受けたのが
ヒナタだった。シズを救った場面を、
勇者の姿だけで見てはいけない。
さらに時が進み、魔王レオンのもとにいた
幼いシズと勇者が出会う。
シズには、目の前の相手が後に自分の教え子に
なるヒナタだと分からない。
ヒナタには、その少女が異世界で自分を
助けてくれるシズ先生だと分かっている。
同じ場に立つ二人の知識は違っていた。
第7話で見たシズの過去には、
空襲の東京からレオンに召喚され、
イフリートを宿された苦しみがあった。
第93話のヒナタは、その過去の途中に
自分の足で入っていく。
まだ教師ではない幼いシズを助け、
抗魔の仮面を渡すことになる。
第8話のシズは勇者に救われた後、
人々を助け、異世界から来た子供たちを教えた。
その教え子の一人がヒナタになる。
後にシズへ助けられるヒナタが、
それより前のシズへ手を差し伸べた。
第93話で初めて、第8話の勇者と
ヒナタの過去が同じ場面に重なった。
かつて救われた教え子が、今度は師を救った
ヒナタが幼いシズを助ける時、
彼女は恩師へ礼を言いに来たわけではない。
目の前には、レオンとイフリートのもとで
苦しむ一人の少女がいる。
未来で自分を助ける人だと知っていても、
今は自分が動かなければ、その少女を
救えない。ヒナタは勇者として行動した。
第56話、リムルとの戦いでヒナタは、
シズから教わった技術を使いながら、
感謝も伝えず師のもとを去った過去を悔やんだ。
そのヒナタが第93話では、
まだ自分を知らないシズを救っている。
言葉にできなかった思いが、
先に行動として現れた場面でもある。
ただ、過去のシズを助けても、
教師だったシズに謝れたわけではない。
幼い少女には、ヒナタと過ごす学園の日々も、
教え子が黙って去る別れも、まだ起きていない。
ヒナタの中に残る心残りは、
勇者として救出を果たしただけでは消えなかった。
抗魔の仮面も、二人の歩みを残す品だ。
第8話までシズが身に着けていた仮面は、
彼女の死後、リムルの手に渡る。
リムルは第23話までにクロエと出会い、
仮面もクロエへ渡した。
第93話で幼いシズへ手渡される場面を見ると、
その品が長い時間を巡っていたと分かる。
だから第96話の再会では、
ヒナタだけを「シズを救った勇者」として
切り離すこともできない。
クロエが時間旅行でヒナタを守り、
二人は勇者クロノアとして旅を続けた。
クロエの意識が眠る時期には、
ヒナタがその体を動かしてシズを助けた。
第96話、シズは心象風景で
ヒナタとクロエの両方に向き合う。
自分を救った勇者の歩みに二人が関わり、
その後、自分が二人を教えていた。
長い時間を一度に知ったシズが、
それぞれへ言葉をかける場面には、
第8話と第93話の両方が重なる。
ヒナタにとっても、ここは過去で少女を
救った時とは違う再会だ。
自分を知っているシズの前に、
教え子として立つことができる。
第56話で胸に残っていた謝罪と感謝を、
ようやく本人へ向けられる。
過去を変えて師と会い直したのではない。
歩んできた過去を抱えたまま、向き合えたのだ。
第6章 クロエとクロノアは、二人の再会にどう関わった?
第23・68話|シズの教え子クロエを、リムルとヒナタが見守った
第96話に並んだシズ、ヒナタ、クロエは、
突然そこで知り合った三人ではない。
クロエはシズが気に掛けていた
異世界から来た子供の一人だ。
第20話にシズの夢を見たリムルは、
子供たちを訪ね、第21話には
自由学園の教師としてクロエに会った。
子供たちは召喚によって命を脅かされ、
新しい教師にも簡単には心を開けない。
リムルは模擬戦で不満を受け止め、
第22話には救う手段を探して
精霊の棲家へ連れて行く。
クロエを守る行動は、シズが生前
心配していた教え子を訪ねるところから始まる。
第23話、光の台座に立ったクロエには、
他の子と同じ精霊が現れない。
彼女のもとへ来たのは、
精霊に似た膨大な力を持つ精神体だった。
当時は正体が見えなくても、
リムルはクロエを連れて帰った。
第92話で語られる時間旅行を知ると、
あの台座の場面も違って見える。
一方のヒナタもシズの教え子だが、
リムルとは第30話に敵として出会う。
シズを失った二人が、彼女の教え子
クロエを守る側へ一緒に立つまでには、
誤解による戦いと、その後の和解が必要だった。
第59話の協議と食卓は、
その距離が縮まった場面だ。
第68話の開国祭でリムルは、
クロエたちの世話をヒナタに頼む。
ヒナタは子供たちを引き受け、
一緒に屋台を巡った。
第30話にはリムルへ剣を向けた人が、
今はリムルから子供を任されている。
シズが見れば、二人の変化が伝わる光景だ。
クロエにとっても、
シズとヒナタは別々の名前だけではない。
シズは自分たちを教えた先生であり、
ヒナタは祭りを一緒に歩いた大人だ。
第92話には、倒れたヒナタを
自分の無限牢獄の中へ守っている。
子供として守られてきたクロエが、
今度はヒナタを守る側へ回った。
第91話、ヒナタが倒れた直後に
クロエが消えた時、二人は離れたように見える。
第92話で明らかになるのは、
クロエがヒナタと共に過去へ渡ったことだ。
第96話のリムルは、学園で救ったクロエと、
和解して子供を任せたヒナタの
両方を探している。
その救出の中へシズが現れるから、
再会は三人だけの思い出話で終わらない。
リムルがシズから引き受けた願い、
ヒナタが師に伝えられなかった言葉、
クロエが二人と過ごした時間が重なる。
第68話の祭りで並んでいた人々が、
第96話には互いを救うために集まった。
第92~96話|共に過去を歩んだヒナタとクロエを、リムルが探す
第92~93話、クロエとヒナタは
勇者クロノアとして長い時を歩いた。
旅の途中でヴェルドラを封じ、
幼いシズとも出会う。
しかし二人の意識が眠った後には、
クロノアという別の人格が表へ出る。
同じ姿に見えても、内側の状態は一つではない。
第94話、封印を解かれたクロノアを前に、
リムルは力任せに倒すことを選べない。
中にはクロエとヒナタがいる可能性がある。
第95話には精神世界へ入り、
クロノア自身の声を聞く。
彼女をただの暴走した敵として
扱えば、二人へ届く道も閉じてしまう。
第95話にシズが現れた後も、
ヒナタとクロエはすぐ見つからない。
クロノアはヒナタの状態を説明し、
第96話ではラファエルが無限牢獄への
干渉を試みる。
リムルが向かう先は、剣の届く戦場ではない。
二人の意識が留まる心象風景の奥だ。
第96話、救出の手掛かりが乏しい中で、
シズはヒナタの強さを信じる。
クロエも助けてほしいとリムルへ促す。
かつて子供たちを教え、
ヒナタの師でもあったシズが、
今度は二人を諦めないよう
リムルの背中を押した。
その先でヒナタとクロエに会えた時、
シズも二人に向き合う。
ヒナタは、師に迷惑をかけたくなくて
離れた当時の思いを伝える。
シズも、その時のヒナタの気持ちに
気付けなかったことを謝る。
第56話で残っていた一方通行の悔いが、
ここで二人の会話になる。
シズはクロエにも声をかける。
自分と旅をした勇者にクロエが関わっていたと知り、
教え子の成長を喜ぶ。
第21話の教室では守られる側だった少女が、
ヒナタと過去を歩き、
幼いシズを救う歴史にも加わっていた。
師が教え子を見つめ直す再会でもある。
やがてシズは、自分が幻影であることを告げ、
二人と再び別れる。
ヒナタをリムルへ託して去る場面には、
第8話で自分をリムルへ託した姿も重なる。
シズが残した相手を、
リムルは今度も一人にしない。
再会は短くても、託す言葉は残った。
第96話でヒナタとクロエを探すまでに、
リムルは第23話の少女を守り、
第30話の敵だったヒナタと和解し、
第94話のクロノアにも向き合った。
その積み重ねの先で、
シズと二人の教え子は同じ場所に立つ。
師と弟子が時間を越えて交わした言葉は、
誰か一人の力だけでは届かなかった。
第7章 シズとの別れの後、ヒナタに残ったもの
謝罪して終わりではない――ヒナタが受け継いだシズの教え
第96話でヒナタがシズに向き合えたからといって、
二人で過ごす日々が戻るわけではない。
シズは自分が幻影だと告げ、
リムルにヒナタを託して去っていった。
ヒナタが長く抱えていた感謝と謝罪は届いた。
その後を生きるのは、残されたヒナタ自身だ。
シズから受け取ったものは、剣を握る手にも残る。
第56話、ヒナタはリムルと向き合いながら、
恩師から学んだ技術と経験を全て懸けた。
シズのもとを去った後も、教わった動きは
日々の鍛錬と戦いを通して身に付いている。
別れは、教わった年月まで消せなかった。
第58話には、その剣を握るヒナタが
リムルを守るために体を投げ出した。
第30話ではシズの仇だと信じて襲った相手を、
今度は自分が傷を負ってでもかばう。
誤解が解けたことは口で伝えられる。
だが、とっさの行動にも変化が表れていた。
第59話、ヒナタはリムルと向かい合い、
東の商人から偽りの情報を受けたと明かした。
その後は共に食卓を囲み、両国の関係も話す。
第68話の開国祭では、リムルから頼まれて
クロエたちを連れ、屋台を巡っている。
シズの教え子を安心して任される人になった。
第91話で倒れた時のヒナタは、
クロエに何かを残そうとしていた。
過去では第93話、幼いシズを前に
自分が助ける番だと行動した。
強い相手を倒すことばかりではない。
シズが自分へ向けてくれた手を、
別の人へ向けられるようになっている。
第95話、クロノアもヒナタから名を与えられたと
リムルに明かしている。かつてのヒナタは、
自分を受け入れたシズへ礼を言えなかった。
その後はクロエと過去を生き、
名前のなかった存在に呼び名を与えた。
師から受けた親切を、別の相手へ渡している。
だから第96話の謝罪は、
ヒナタが悪かったと一方的に裁かれる場面ではない。
ヒナタは当時、迷惑をかけたくなくて
師のもとを離れた気持ちを伝える。
シズも、その苦しさに気付いてやれなかったと謝る。
言えなかったことを、二人で言える時間だった。
第56話では、ヒナタの胸の中にしかなかった
「感謝を伝えられなかった」という悔い。
第96話には、シズ本人が返事をした。
過ぎた日をやり直さなくても、
あの時の別れを二人で見つめ直せる。
ヒナタが受け取ったのは許しの言葉だけでなく、
自分の歩んだ道を見てくれる師の声だ。
第8話の別れから第96話の再会へ|三人がつないだ願い
第8話、シズはリムルの中で眠ることを望んだ。
自分を助けた勇者のことを胸に生き、
異世界から来た子供たちの教師にもなった人が、
最後に選んだ相手だった。
リムルはその願いを受け入れ、
シズに似た姿で彼女の教え子へ会いに行く。
第21話の自由学園でリムルが出会ったクロエは、
新しい教師を待っていただけの子ではない。
仲間と同じく召喚の影響で命を脅かされ、
第23話には精霊の棲家で特別な精神体を迎えた。
リムルは先の歴史を知らないまま、
シズが気に掛けた子を救おうとした。
そのクロエが第92話、倒れたヒナタを守って
約二千年前へ渡る。第93話には二人で
勇者クロノアとして歴史を歩み、
ヒナタが幼いシズを助ける番になる。
第8話で語られた勇者の姿に、
シズの教え子たちの旅が重なった。
第96話でシズは、ヒナタだけでなく
クロエにも声をかける。
かつて共に旅をした勇者にクロエが関わり、
教え子が立派に成長したことを知る。
自分が守ってきた少女の歩みを見届けた後、
シズはヒナタのことをリムルへ頼んだ。
その時、シズ自身は自分を幻影だと告げる。
再会を喜ぶ三人の前で、
永遠にここへ留まるとは約束しない。
会えたことを喜び、別れる時が来たと伝え、
生きて進むヒナタたちを送り出す。
第8話の最期と同じく、別れを自分で選んだ。
その言葉を受けるリムルは、第8話と同じく
シズが大切にした人を引き受ける。
ただし今のヒナタは、誰かに守られるだけの
教え子ではない。リムルをかばい、
クロエと長い時間を戦い抜き、
かつてのシズを救った一人でもある。
ヒナタが師へ謝り、師も教え子へ謝った。
クロエは成長を喜ばれ、リムルは
ヒナタを託される。
第96話に四人が並ぶ時間は短い。
それでも、互いに知らないまま離れた
第8話や第56話の心残りに、
それぞれの言葉が届いた。
第56話のヒナタはシズへの感謝を胸にしまい、
リムルには剣で向き合っていた。
第96話では剣を置いた心象風景で、
シズと会話し、リムルへ託される。
相手を倒さなくても気持ちを伝えられる。
二つの場面を比べると、その変化が見える。
シズは別れを告げ、心象風景から消える。
現世へ帰ってヒナタやクロエと暮らす展開にはならない。
それでも第96話を見終えた後、
第8話でリムルに託した願いも、
第23話でクロエを救った行動も、
第93話でヒナタが幼いシズへ差し伸べた手も、
一つの再会へ続いていたと分かる。
あの場面に残るのは、
シズが再び去った寂しさだけではない。
ヒナタは伝えられなかった言葉を届け、
クロエは先生に成長を見てもらえた。
リムルは二人を助けるために進む。
シズと別れた後も、三人は彼女から
受け取ったものを持って歩いていく。
転生したらスライムだった件まとめ
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