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【リゼロ4期】レムは目覚めたのになぜ記憶が戻らない? 「俺はお前の英雄だ」で始まる二度目のゼロから

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レムは目覚めた。だが「レムの記憶が戻らない」ままなので、スバルとの再会は元通りになった瞬間ではない。
「俺はお前の英雄だ」は、第1期でレムがスバルを立たせた言葉を、今度はすべてを忘れたレムへスバルが返したもの。
『リゼロ4期』最終回が描いたのはレム復活のゴールではなく、二人がもう一度「ゼロから」関係を作り始める瞬間だった。

  1. 第1章 レムは目覚めたが、スバルとの記憶は戻っていない
    1. 第85話「あなたは誰ですか」で分かったレムの現在
    2. 「俺はお前の英雄だ」は、昔のレムへ返した言葉
  2. 第2章 レムはなぜ目覚めてもスバルを覚えていないのか
    1. 第2期第26話で暴食に奪われたのは「名前」と「記憶」だった
    2. ライとの決着で眠りは終わっても、記憶の回復までは起きなかった
  3. 第3章 レムがスバルを忘れた衝撃は、屋敷での出会いから分かる
    1. 第7話で命を奪った相手を、第11話では信じられるようになった
    2. 「知らない人」から始まった二人は、もう一度そこへ戻った
  4. 第4章 第18話「ゼロから」と第85話「英雄」で立場が逆転した
    1. 第18話では、全てを諦めかけたスバルをレムが引き戻した
    2. 第85話では、スバルが覚えていないレムへ「英雄」を返した
  5. 第5章 スバルだけが覚えている再会は、なぜこんなにも苦しいのか
    1. 第2期でレムを忘れた世界でも、スバルだけは彼女の名前を呼び続けた
    2. 喜ぶスバルと戸惑うレムでは、同じ言葉の受け取り方も違う
  6. 第6章 記憶を失ったレムは、昔と同じレムに戻るだけなのか
    1. 第11話で変わったレムも、最初から今のレムだったわけではない
    2. 原作26〜28巻が示すのは、目覚めた後にも続く「英雄」の問題
  7. 第7章 「俺はお前の英雄だ」は、レムとの新しい約束になった
    1. 第18話でレムが信じたスバルは、第85話でも諦めなかった
    2. レムの記憶が戻らなくても、二人はもう一度始められる

第1章 レムは目覚めたが、スバルとの記憶は戻っていない

第85話「あなたは誰ですか」で分かったレムの現在

『リゼロ4期』第85話「シャウラ/英雄」で、
レムは長い眠りからようやく目を覚ました。
ただし、スバルを覚えているわけではない。
目の前で自分の名前を呼ぶ相手に、
レムが返したのは「あなたは誰ですか」という言葉。
目覚めたことと、記憶が戻ったことは別だった。

スバルにとって、この瞬間は待ち続けた再会だった。
第2期第26話「それぞれの誓い」で、
レムが自分以外の人々から忘れられたと知ってから、
彼は眠ったままのレムを救おうとしてきた。
水門都市プリステラで大罪司教と戦った後も、
プレアデス監視塔へ向かった目的の一つはレムの救出。
だから彼女が目を開けたこと自体は、確かな前進だ。

ところが、再会した二人の立場は同じではない。
スバルはレムの声も、笑顔も、過去の会話も覚えている。
レムは今のスバルを知らず、二人が築いた関係も知らない。
再会を喜ぶ側と、初対面の相手を見る側。
同じ場所で向き合っていながら、
二人の心には、それほど大きな距離が残っていた。

ここで「レムは復活した」とだけ言ってしまうと、
第85話が残した最も重要な問題を見落とす。
レムの身体は動き、相手へ言葉を返せるようになった。
しかし、ロズワール邸で過ごした日々も、
スバルに救われた経験も、彼を信じた時間も、
以前と同じ形で思い出した様子はない。
眠りが終わっても、失った過去まで戻ったわけではない。

第1期を覚えているほど、この反応は痛い。
レムは最初からスバルに好意を寄せた人物ではなかった。
屋敷へ来たばかりの彼を警戒し、
魔女の残り香を疑うあまり命まで奪った周回もある。
それでも第11話「レム」へ至る魔獣との戦いで、
スバルが必死に手を伸ばしたことで関係は変わった。
二人は簡単に信頼し合えたわけではない。

その後の第18話「ゼロから」では、
今度はレムが、絶望したスバルを立たせた。
自分を嫌い、何もできないと泣く彼に、
レムは自分が見てきたスバルの姿を伝えた。
誰より近くでスバルを信じてきた彼女が、
今はそのスバルを知らないと言う。
第85話の短い問い掛けには、長い物語が詰まっている。

しかもスバルは、ただレムと離れていたのではない。
眠る彼女に話し掛けても返事はなく、
危険な場所へ連れて行っても助けてもらえない。
監視塔では自分自身も記憶を失い、
第78話「これからの話」で仲間に打ち明けた後、
レムのことも自分の記憶も取り戻すと宣言していた。
その言葉があったからこそ、目覚めの重さは増している。

公式が公開した最終回記念コメントでも、
スバル役の小林裕介は再会を喜びながら、
手放しでは喜べない終わり方だと受け止めている。
失ったものを取り戻しに行った結果、
確かに取り戻せたものもあれば、残った傷もある。
レムが目覚めたのは、長い願いがかなった瞬間。
しかし、二人の問題が全て解決した瞬間ではなかった。

「俺はお前の英雄だ」は、昔のレムへ返した言葉

レムの「あなたは誰ですか」を受けたスバルは、
過去を一つずつ説明して分かってもらおうとはしない。
その代わりに選んだのが「俺はお前の英雄だ」。
第1期第18話を見た人には、特別な響きがある言葉だ。
かつて自信を失ったスバルを救ったのは、
レムが信じる「英雄」としての彼の姿だった。
今度は、その言葉をスバル自身が名乗る側になった。

第18話のスバルは、王都で失敗を重ね、
大切な人たちを守れず、自分の弱さに押し潰されていた。
エミリアとの関係も壊れ、逃げ出すことまで考えた。
そんな彼の前にいたのがレムだった。
レムは強いスバルだけを褒めたわけではない。
諦めきれずに苦しむ姿まで見ていたから、
彼が自分で否定した価値を認めることができた。

だから第85話の名乗りは、突然生まれた決め台詞ではない。
レムが忘れてしまった二人の過去を、
スバルが今も引き受けていることを示す言葉だ。
かつて「英雄」だと信じてもらった男が、
今度はその言葉を覚えていない本人に向かって、
それでも自分は英雄でありたいと名乗っている。
見ている側が胸を締め付けられるのは、そのためだ。

ただし、この一言でレムの記憶が戻ったわけではない。
第18話の場面を思い出して涙を流した描写でもない。
視聴者が知っている言葉の重さと、
目覚めたばかりのレムが受け取る言葉の重さは違う。
スバルの側には忘れられない約束があっても、
レムの側には、まだその約束を支える記憶がない。
だからこそ、再会の喜びと切なさが重なっている。

第85話は、レムの復活を祝うだけで終わらなかった。
忘れられても、スバルはレムを見捨てない。
昔の関係を思い出してもらえなくても、
まず自分が彼女の前に立って名乗る。
それは以前のレムに戻ることを求める言葉ではなく、
もう一度向き合う覚悟を示す言葉にも聞こえる。
二人の物語は、目覚めたところから続いていく。

第2章 レムはなぜ目覚めてもスバルを覚えていないのか

第2期第26話で暴食に奪われたのは「名前」と「記憶」だった

レムの状態を知るには、第2期第26話へ戻る必要がある。
白鯨討伐とペテルギウスとの戦いを乗り越え、
ようやくエミリアと向き合えたスバルは、
そこでレムの存在が周囲から消えていると知った。
自分にとってあれほど大切な人なのに、
ほかの仲間には誰のことか通じない。
眠っているというだけでは説明できない異変だった。

その原因が、魔女教大罪司教「暴食」の権能だ。
レムはライ・バテンカイトスたちとの遭遇によって、
自分の「名前」と「記憶」を奪われてしまった。
この二つは似ているようで、働き方が違う。
名前を食べられると、周囲から存在を忘れられる。
記憶を食べられると、本人が積み上げた過去が失われる。
両方を奪われたレムは、長い眠りに落ちてしまった。

第26話のスバルが受けた衝撃は、
大切な人が倒れたと聞かされた衝撃だけではない。
エミリアをはじめ、周囲の人々がレムを覚えていない。
自分だけが彼女の存在を知っているため、
何が失われたのかを仲間と共有することさえ難しい。
白鯨討伐を成し遂げても、別の「暴食」に奪われたものは
元へ戻らなかったという残酷さが、ここにあった。

レムの「名前」と「記憶」が別のものであることは、
第3期から第4期にかけての被害者を見ても分かる。
水門都市プリステラではクルシュの記憶が失われ、
ユリウスの名前も奪われてしまった。
クルシュは本人の過去を思い出せず、
ユリウスは自分を覚えてもらえない苦しみを抱える。
同じ暴食の被害でも、失われ方は一つではない。

第4期第67話では、この被害を救う手掛かりとして、
スバルたちはプレアデス監視塔を目指すことになる。
賢者の知識を求めて危険な砂丘へ向かうのは、
眠り続けるレムだけでなく、
クルシュやユリウスの問題も残っているからだ。
監視塔へ着けば自然に全員が治るという保証はない。
それでも何もしなければ、失ったものは戻らない。
彼らはそのわずかな可能性を求めて旅立っていた。

さらに第3期第66話では、暴食の恐ろしさが露骨に現れた。
ライは、かつて食べたレムの記憶を利用し、
彼女の言葉を口にして相手をあざ笑った。
レムのことを大切にしてきたベアトリスとオットーは、
そんなライをスバルに会わせまいと戦う。
ここで重要なのは、奪われた過去がただ消滅したのではなく、
暴食の側で利用されていたという事実だ。

この場面を知っていると、第85話の結果も理解しやすい。
レムが失ったものは、怪我や疲労とは違う。
魔法で眠らされ、時間がたてば目覚めるというだけなら、
起き上がった瞬間に以前の会話を続けられるはずだ。
しかし実際には、他人の人生へ手を伸ばす暴食が、
彼女の名前と記憶そのものに干渉していた。
目覚めた後も、スバルを知らない状態が残ったのだ。

ライとの決着で眠りは終わっても、記憶の回復までは起きなかった

第84話「ラム」から第85話「シャウラ/英雄」にかけて、
ラムは因縁の相手ライ・バテンカイトスと戦った。
角を失ったラムの身体には大きな負担がかかる。
その負担をスバルの「コル・レオニス」が支え、
姉と妹の過去を踏みにじった暴食を追い詰めていく。
ライは不利になると、眠ったレムのもとへ向かう。
最後までレムを脅かす存在だったことが分かる。

ラムがライとの決着をつけたことで、
少なくともレムは眠り続ける状態から抜け出した。
ただ、ここで見落としてはいけないのは、
眠りが終わることと記憶が元に戻ることの違いだ。
目を開けて話せるようになったからといって、
過去の経験をすべて思い出したとは限らない。
第85話は、その違いをレム自身の反応で見せている。

第4期では暴食による被害が一種類ではないことも、
ほかの人物の状態を通して描かれてきた。
エミリアの名前が奪われたときは、
ラムさえ彼女を知らない者として扱うことになった。
第80話「五つの障害」でライの出現が問題になったのも、
戦闘力だけでなく、名前や記憶を奪う力が
仲間の関係そのものを壊してしまうからだった。

第85話でレムがスバルを覚えていないのは、
レムが彼を嫌いになったからではない。
目覚めた後に何かを選んで忘れたわけでもない。
二人が親しくなった屋敷での出来事も、
スバルに思いを伝えた第18話の会話も、
以前のようには本人の中でつながっていない。
だから、スバルへの態度だけを見て心変わりと決められない。

そもそもレムがスバルを特別な存在と思うようになったのは、
彼の顔や名前を知っただけではなかった。
第11話で過去の傷と向き合い、
自分を救おうとするスバルの行動を見た。
その後も失敗しながら進む彼を近くで見守り、
第18話では、本人より強くその価値を信じた。
その長い経験が失われれば、同じ顔を見ても
以前と同じ親しさが生まれないのは自然なことだ。

一方で、記憶が戻らなかったからといって、
以前のレムが完全に消えたと決めるのも早い。
第85話で確かめられたのは、レムが目を覚まし、
スバルを自分の知る人物として認識していないこと。
失われた記憶が今後どのように扱われるのかまで、
この一場面だけで結論を出すことはできない。
復活か未復活かの二択では、今の状態は語れない。

スバルが第78話で口にした「取り戻す」という願いも、
全てが望みどおり実現したわけではなかった。
一緒に危険な監視塔を越えた仲間たちには、
それぞれ取り戻せたものと、なお残る問題がある。
レムの目覚めも、その一つだ。
長い眠りから救い出すことには成功した。
しかしスバルを知っていたレムとの再会には、
まだ越えなければならない距離が残されている。

だから第85話の最後に「俺はお前の英雄だ」が響く。
スバルはレムの記憶が戻ったと勘違いしていない。
目の前の彼女が自分を知らないと分かった上で、
それでも彼女に向かって自分のことを名乗った。
かつて彼を救った言葉を、今度は自分の口で伝える。
暴食に奪われた過去はその場で戻らなくても、
二人がこれから向き合うことまでは奪えない。

第3章 レムがスバルを忘れた衝撃は、屋敷での出会いから分かる

第7話で命を奪った相手を、第11話では信じられるようになった

第85話でレムがスバルを知らないと告げたとき、
真っ先に思い出したいのは、第1期の屋敷編だ。
今でこそレムはスバルの味方という印象が強い。
しかし、二人が出会った頃の関係は正反対だった。
ロズワール邸へ運ばれてきた見知らぬ少年を、
レムは最初から安心できる人物とは見ていない。
あの距離を縮めるまでには、何度もの死があった。

屋敷で働き始めたスバルは、レムとラムから
掃除や洗濯を教わり、不器用ながら仕事を覚えた。
同じ食卓に座り、軽口も交わせるようになる。
だが、スバルの身体には魔女の残り香があった。
鬼族の故郷を魔女教に襲われたレムには、
その匂いを持つ相手を簡単に信用できない事情がある。
スバルが親しく接したつもりでも、疑いは消えなかった。

第7話「ナツキ・スバルのリスタート」に至る周回では、
逃げたスバルをレムとラムが追い詰める。
スバルは自分が何を疑われているのかも分からず、
一緒に過ごした時間は何だったのかと苦しむ。
別の周回ではレムに殺された経験もある。
彼の側から見れば、優しく接した相手が突然敵になる。
第85話でレムが覚えていないのは、そんな出発点から
少しずつ変えてきた二人の関係そのものなのだ。

けれどスバルは、レムを危険な相手だと決めつけて
屋敷を去る道だけを選んだわけではなかった。
自分が死に戻りできると知っていても、
痛みや恐怖が軽くなるわけではない。
それでも屋敷の人々を救える道を探し直した。
レムが自分を殺した事実と、目の前で苦しむレムを
助けたい気持ちは、スバルの中で両立していた。
後の信頼は、都合よく過去を忘れた結果ではない。

第10話「鬼がかったやり方」では、魔獣を追う中で
レムが鬼の力を使い、我を失ってしまう。
スバルは魔女の残り香で魔獣を引き寄せながら、
危険な状態のレムを正気へ戻そうとする。
ラムの力を借り、傷つく危険を承知で近づく。
そこには、レムに好かれたいからというだけでは
説明できない切実さがあった。
自分を傷つけた相手でも、今は見捨てたくなかった。

続く第11話「レム」では、鬼族の村が襲われた過去と、
姉ラムに対するレムの負い目が描かれる。
優秀な姉と比べられながら生きてきたレムは、
姉の角が失われた夜の思いを抱え続けていた。
魔獣との戦いでも、また同じ過ちを繰り返したと
自分を責めるレムに、スバルは別の生き方を示す。
レムの過去を知らなかった少年が、彼女の苦しみに触れた。

大切なのは、レムが突然スバルを好きになったことではない。
自分でも許せなかった過去を抱えるレムに、
スバルが今からの人生を見ようとする姿勢を見せたことだ。
レムもまた、スバルの弱さと無茶を目の前で見て、
口先だけではない行動を知ることになった。
最初は疑いを向けていた二人が、ようやく同じ方向を見る。
第85話の「あなたは誰ですか」は、その積み重ねを
レムが思い出せないという痛みまで連れてくる。

「知らない人」から始まった二人は、もう一度そこへ戻った

第85話でスバルだけが過去を覚えているという事実は、
第1期を見返すと、さらに切なくなる。
屋敷で初めて会った頃のレムなら、
スバルが自分のことを親しげに呼んでも警戒しただろう。
今回は魔女の残り香だけが問題ではない。
スバルはレムの性格も、姉への思いも、涙を見せた夜も
知っているのに、それを本人と分かち合えない。
近いはずの相手が、遠いところから自分を見ている。

第11話の後、レムはスバルに対して自然に笑うようになった。
特別編「Memory Snow」で描かれた屋敷の日常も、
命がけの事件ばかりではなかった二人の時間を伝える。
スバルがエミリアとのデートを準備する騒ぎに、
レムや屋敷の仲間たちが巻き込まれていく。
くだらないことで慌てたり、近くで相手を見守ったりする。
そうした平凡な場面があるから、失った時間は大きい。

レムにとってのスバルは、戦場で一度助けてくれた男ではない。
毎日の仕事で失敗し、妙な冗談を口にし、
それでも誰かのために無茶をする少年だった。
魔獣の群れに突っ込む勇気だけでなく、
情けない姿を見せても投げ出さないところを知っていた。
第18話でスバルが自分を嫌いだと語ったとき、
レムが言葉を返せたのは、あの日々を見ていたからだ。

ここで第85話へ戻ると、残酷な違いが見えてくる。
スバルはレムを助けた出来事を証明できても、
彼女が当時どんな気持ちでいたかまでは戻せない。
屋敷の廊下で交わした言葉を話したとしても、
聞くレムには初めて聞く他人の思い出かもしれない。
同じ名前、同じ顔の少女が目の前にいるのに、
共に過ごした時間だけが二人を結び付けてくれない。

しかも、記憶がないレムを責めることはできない。
レムは自分でスバルを忘れると決めたわけではなく、
暴食によって過去を奪われた被害者だからだ。
スバルにとってつらいのは、忘れられた事実だけではない。
「どうして覚えていない」と問い詰めても、
相手を苦しめるだけだと分かってしまうことだろう。
喜びを押しつけずに向き合う難しさが、ここから始まる。

第1期の二人には、知らない者同士だった時間がある。
疑われ、ぶつかり、命まで失い、それでも信頼へ進んだ。
その過去をレムが思い出せなくても、
スバルまで経験したことが消えるわけではない。
ただし、以前と同じ親しさをすぐ求められるわけでもない。
だから再会は、懐かしい関係へ戻る場面ではなく、
今のレムと改めて出会い直す場面になったのだ。

第4章 第18話「ゼロから」と第85話「英雄」で立場が逆転した

第18話では、全てを諦めかけたスバルをレムが引き戻した

「俺はお前の英雄だ」という名乗りを聞いて、
第1期第18話「ゼロから」を思い出した人は多いはずだ。
あのとき言葉を必要としていたのはスバルだった。
王選の場でエミリアとの約束を踏みにじり、
彼女とぶつかってしまったことも重なっていた。
屋敷へ戻ろうとしても魔女教の襲撃を止められず、
死に戻るたびに救えない人が増えていく感覚があった。

第15話「狂気の外側」では、屋敷を襲った悲劇を前に
スバルが心を壊し、レムが彼を支えようとする。
第17話「醜態の果てに」では白鯨に襲われ、
レムがスバルを逃がすため竜車から降りる。
戻れと叫んでも願いは届かず、彼はまた一人になる。
助けたい相手が目の前から消えていく経験を重ね、
スバルは自分に何もできないと信じ込んでしまった。

そして第18話では、スバルがレムの手を引いて走る。
エミリアたちを救う道を探すのではなく、
何もかも捨てて二人で遠くへ逃げようと持ちかけた。
レムとなら別の土地で暮らせるかもしれない。
そんな未来を語るスバルの姿は一見すると穏やかだが、
本当は大切な人を救う希望を失った姿でもあった。
ここでレムがただ同意すれば、話は違っていた。

レムはスバルと一緒に生きる未来を想像できた。
だからこそ、その誘いを簡単には受け入れなかった。
今ここで逃げれば、自分が好きになったスバルまで
失われてしまうと分かっていたからだ。
彼女が望んでいたのは、傷つかないスバルではない。
転んでも人を助けようとするスバルが、
自分自身を嫌いになったまま終わることを拒んだ。

スバルはそこで、自分の嫌いなところを吐き出す。
何もできないのに大きなことを言い、
努力も覚悟も足りず、肝心な場面で逃げてしまう。
自分が最低の人間だという言葉が止まらない。
見ている側にも、その失敗を知っているから苦しい。
しかしレムは、欠点がないと否定するのではなく、
自分が実際に見てきたスバルの姿を一つずつ伝える。

レムが知っていたのは、格好いい場面だけではない。
屋敷で失敗しながら仕事を覚えたことも、
自分を助けようとして危険へ飛び込んだことも知っていた。
本人が価値を見失っても、見ていた人には残っている。
だから「レムの英雄」という言葉は、
スバルの強さを大げさに褒めるだけの呼び名ではない。
弱いところまで知った上で、なお信じるという言葉だった。

第18話の終わりに、スバルはもう一度進むことを選ぶ。
そこから第19話「白鯨攻略戦」では、
クルシュとの同盟を実現させようと動き出す。
逃げる話から、仲間を集めて戦う話へ変わる。
レムの言葉はその場で涙を拭うためだけではなく、
実際にスバルの次の行動を変えた。
だから長い年月を経た第85話でも、重さを失わない。

第85話では、スバルが覚えていないレムへ「英雄」を返した

第18話では、レムがスバルの良さを覚えていた。
第85話では、スバルがレムとの過去を覚えている。
ここで二人の立場は入れ替わっている。
レムには昔の会話を思い出す手掛かりがなく、
スバルには忘れたくても忘れられない思い出がある。
だから「俺はお前の英雄だ」は、
かつての言葉をそのまま繰り返す場面ではない。

第18話のレムは、スバルの心が折れそうなとき、
自分が信じる彼の姿を伝えた。
対して第85話のスバルは、レムから知らない人と問われ、
それでも自分がどうありたいかを答える。
「俺を覚えているはずだ」と迫るのではない。
かつて君が信じてくれた人間であり続けたい。
その決意が、短い名乗りに重なって聞こえる。

ただし、レムにその気持ちが全て届いたと
決めつけてはいけない。
スバルが第18話を思い返していても、
今のレムはその告白を覚えているとは限らない。
視聴者なら言葉の出どころも、二人の経緯も分かる。
けれどレムが受け取るのは、初めて会った男の名乗りだ。
その食い違いこそ、第85話を甘い再会だけにしない。

昔のレムは、スバルを立ち上がらせる側だった。
今のスバルは、自分を知らないレムの前に立つ側だ。
スバルがあの言葉を使ったのは、
彼女を思いどおりに変えるためとは限らない。
もう一度信じてもらえる自分でいたいという願いが、
レムの記憶が戻らない現実の前で試されている。
言葉を返すことは、過去へ戻ることとは違う。

だから、第85話の「英雄」を聞いて感じるものは、
懐かしさだけではないはずだ。
かつて救われた少年が成長し、
今度は救ってくれた少女を前にしている。
それなのに少女は、救った相手を覚えていない。
第18話の言葉があったから第85話が響き、
第85話を見ると第18話の温かさも違って見える。
二つの場面は、互いの痛みを深くしている。

スバルは白鯨を倒し、魔女教と戦い、
プレアデス監視塔でも仲間と危機を越えてきた。
しかし、レムに英雄だと認めてもらうには、
過去の功績を並べるだけでは足りないかもしれない。
今のレムが目の前の彼をどう見るかは、これからの話だ。
第85話が描いたのは、英雄として認められた結末ではなく、
そう名乗ったスバルが新たに試される出発点だった。

第5章 スバルだけが覚えている再会は、なぜこんなにも苦しいのか

第2期でレムを忘れた世界でも、スバルだけは彼女の名前を呼び続けた

第85話でレムが目を開けた瞬間、
スバルにとっては長い時間がようやく報われた。
だが、レムにとっては同じ再会ではない。
彼女の前にいるのは、自分をよく知る見知らぬ男。
スバルが喜べば喜ぶほど、二人の間にある
思い出の差がはっきりしてしまう。
「あなたは誰ですか」は、その差を突き付ける言葉だった。

この苦しさを強くしたのが、第2期第26話の出来事だ。
白鯨を倒し、ペテルギウスとの戦いも越えたスバルは、
ようやくエミリアへ自分の気持ちを伝えられた。
ところが、彼にとって当然そこにいるはずの
レムを、エミリアは覚えていなかった。
命を懸けて一緒に戦った仲間の名前が通じない。
レムが消えたと知る場面は、勝利の直後に訪れている。

あのときスバルが失ったのは、話し相手だけではない。
レムについて笑ったり、感謝を伝えたりしても、
同じ出来事を覚えている人が周囲にいない。
白鯨討伐で彼女がどれほど力を尽くしたか、
自分が絶望した日にどんな言葉をくれたか。
それを覚えているのは、ほかでもないスバルだった。
思い出を語れる相手がいなくなる孤独が、
眠り続けるレムの姿に重なっていた。

第2期の聖域編でも、スバルの戦いは続いた。
屋敷の襲撃を止め、エミリアを支え、
ベアトリスに手を伸ばすために何度も動いた。
しかし、そこにレムが助けに来ることはない。
第1期第18話で折れた心を救ってくれた彼女は、
眠ったまま何も答えられなかった。
スバルが別の仲間に頼ることを覚える一方で、
レムを起こしたいという願いは残り続けた。

第3期の水門都市プリステラでも状況は好転しない。
暴食の被害はクルシュやユリウスにも及び、
奪われるものによって苦しみ方が違うと分かる。
第4期第67話では、アナスタシアの提案を受けて
プレアデス監視塔へ向かう決断が下された。
大砂漠を越え、賢者の知識を求める危険な旅。
スバルにとってレムを連れていく行動そのものが、
彼女を置き去りにしないという答えだった。

その監視塔でスバルは、自分の記憶まで失った。
かつて何を成し遂げたかも、仲間と築いた絆も、
自分の中から抜け落ちる恐ろしさを味わっている。
第78話「これからの話」では仲間の前で事情を明かし、
それでも先へ進もうと決めた。
ここが大切なのは、記憶を失う側の不安を
スバル自身が経験したという点だ。
レムの混乱を、ただ外から見ている男ではなくなった。

第85話でスバルがレムへ昔の関係を求めても、
彼女にはそれを確かめる記憶がない。
スバルが屋敷での出来事を語ったとしても、
相手から見れば聞いたことのない過去でしかない。
しかもスバルは、仲間が自分を忘れた世界と、
自分が仲間を忘れた監視塔の両方を経験している。
だから「覚えていない相手にも心がある」ということは、
今の彼にとって他人事では済まないはずだ。

喜ぶスバルと戸惑うレムでは、同じ言葉の受け取り方も違う

第85話の名乗りを、レム側から考えてみたい。
長い眠りから覚めたところへ、知らない少年が現れる。
少年は自分の名前を知り、会えたことを喜び、
「俺はお前の英雄だ」と言い切る。
スバルの事情を知っている視聴者には涙の場面でも、
レムにはその言葉を信じる材料がまだない。
相手の気持ちが強いほど、戸惑いも大きくなり得る。

第1期第18話では、その関係は逆だった。
レムは屋敷で過ごしたスバルの姿を覚えており、
彼が自分で否定した良さまで具体的に語れた。
けれど今のスバルが「俺は英雄だ」と名乗っても、
彼女がすぐ昔と同じ気持ちになるわけではない。
あの日の言葉を大切にしているのはスバルの側。
返した言葉が相手の記憶を呼び覚ましたと
第85話の時点で受け取るのは早すぎる。

まして、レムが覚えていないのはスバルだけではない。
姉ラムと生きてきた日々や、屋敷で果たした役割、
自分がどんな気持ちで誰を信じたのかという、
人生の大切な部分まで失われている。
スバルには「元のレムに戻ってほしい」という願いがある。
しかし、目覚めた本人にとっては、まず目の前の世界を
知り直さなければならない状態だ。
その違いを無視して喜べば、再会は一方通行になる。

ラムの立場から見ると、この場面はさらに複雑だ。
第84話から第85話にかけてラムが向き合ったライは、
妹の人生を奪った暴食の大罪司教だった。
角を失った身体に負担をかけながら戦い、
スバルの「コル・レオニス」に支えられて追い詰める。
姉が命がけで守ろうとした妹は、ついに目覚める。
それでも姉妹の時間まで全部取り戻せたわけではない。
勝ったのに終わらない問題が、ここにも残る。

だから第85話の再会を「悲しい結末」とだけ呼ぶのも違う。
レムはもう、呼びかけても返事のない眠りの中にはいない。
こちらを見て、言葉を選び、自分の意思を示せる。
スバルが喜んだことには、間違いなく根拠がある。
ただし、喜びの先に残る距離を消すことはできない。
第1期のように何度もぶつかり、相手の行動を見て、
初めて分かることがこれから生まれていく。

スバルの目には、昔の笑顔を取り戻したいレムが映る。
レムの目には、まだ何者か分からないスバルが映る。
二人の視線が食い違っていることこそ、
単なる目覚めの場面で終わらない第85話の厳しさだ。
思い出を覚えている人が、忘れた人を急がせてはいけない。
かつて信頼を育てた二人だからこそ、
同じ答えをすぐ求めず、新しい言葉を交わす必要がある。

第6章 記憶を失ったレムは、昔と同じレムに戻るだけなのか

第11話で変わったレムも、最初から今のレムだったわけではない

目覚めたレムに記憶がないと聞くと、
昔の優しいレムが消えてしまったように感じる。
ただ、第1期のレムを思い返せば、
彼女自身も最初から同じ姿だったわけではない。
屋敷でスバルを疑った頃と、彼を支えた頃では、
人への向き合い方が大きく変わっている。
それは別人になったからではなく、
出会った人と経験した出来事が彼女を変えたからだ。

第11話「レム」では、彼女が長年抱えていた
姉ラムへの負い目が描かれた。
幼い頃から優秀な姉と比べられ、
姉の角を奪った魔女教の襲撃を忘れられなかった。
自分が姉に代わって苦しむべきだったという思いが、
レム自身の幸せを遠ざけていた。
そんな彼女にスバルは、過去だけを見て生きるのではなく、
これからどう笑うかを考える道を示した。

だからレムの魅力は、スバルを無条件に褒めることだけではない。
警戒することもあれば、思い込んでしまうこともある。
大切な人のために無茶をする一方で、
自分の価値を低く見積もってしまう弱さもある。
第18話でスバルを励ました強さは、
彼女自身が第11話までに傷ついてきた経験とつながる。
スバルが救われたのは、都合のいい言葉ではなく、
痛みを知るレムが本気で信じてくれたからだった。

この過去を踏まえると、目覚めたレムへ
「前はこんなに優しかった」と求めることには危うさがある。
第85話の彼女は、目の前の人物を知らない。
以前の経験が欠けた状態で戸惑っていても、
それだけで冷たい人間に変わったとは言えない。
知らない相手を簡単に信じられないのは自然な反応だ。
むしろ屋敷で出会った頃にも、レムには
相手を警戒して慎重に見る一面が確かにあった。

「昔のレムに戻ってほしい」という願いは、
スバルにも視聴者にも理解できる。
しかし彼女が再び笑うために必要なのは、
以前の会話を何度も聞かせることだけではないはずだ。
目の前にいる相手が何をする人なのか、
危険なときに誰が守ろうとしてくれるのか。
一つずつ自分で確かめられる時間が必要になる。
第1期第10話と第11話の関係の変化も、
言葉だけでなく行動を見たから生まれていた。

ここで見逃したくないのが、スバル自身の成長だ。
屋敷編の彼は助けたい気持ちが強すぎて、
相手の疑いを解く前に突っ走ることもあった。
王選の場ではエミリアの気持ちを置き去りにし、
第1期第13話「自称騎士ナツキ・スバル」で衝突した。
自分が正しいと信じているだけでは、
大切な人との関係もうまくいかない。
この失敗を経た彼だから、レムとの再会でも
相手が今どう感じるかを問われることになる。

第2期の聖域編では、スバルが一人で抱え込まず、
仲間に頼って戦うことも覚えていった。
監視塔でも自分の記憶喪失を打ち明け、
ベアトリスたちと危機を越えた。
彼がレムのためにできることは、
一度の英雄的な行動で全てを元へ戻すことではない。
レムが知らない世界を前に立ち止まったとき、
その不安を受け止めて信頼を積み上げることだろう。

原作26〜28巻が示すのは、目覚めた後にも続く「英雄」の問題

第85話でレムが目覚めても話が終わらないことは、
原作小説の紹介からもうかがえる。
第26巻の公式あらすじでは、待ちわびた再会の後、
記憶を失った少女が魔女の瘴気を漂わせるスバルを
警戒する展開が紹介されている。
ここで大切なのは、具体的な行き先や事件よりも、
目覚めたから信頼が戻るわけではないという点だ。
再会の先には、二人の距離を測り直す時間がある。

魔女の瘴気は、第1期の屋敷編を思わせる要素だ。
レムはかつて、スバルの身体から漂う匂いを
疑いのきっかけにしていた。
あの頃の彼女は、彼が誰かを守ろうとしても、
すぐにはその気持ちを受け入れられなかった。
記憶を失った後も、過去の信頼がそのまま使えないなら、
似た壁にぶつかる可能性は十分にある。
これは昔の話の繰り返しというより、
過去を知るスバルだけが違う位置にいる再出発だ。

原作第27巻の紹介でも、目覚めたレムとの再会は
その後の危険な出来事へつながる出発点になっている。
スバルには守りたい相手が戻ってきた。
しかしレムには、自分を守ろうとする男を
なぜ信じればいいのかという問題がある。
誰かが自分のために命を懸けてくれたと聞いても、
覚えていない過去をすぐ自分の気持ちにはできない。
二人が同じ出来事を経験し直すことが重要になる。

さらに第28巻の公式紹介では、
レムの言葉がスバルの「英雄」という在り方を
揺さぶることまで示されている。
第18話でスバルを立たせた言葉が、
第85話でレムへ返されて終わるわけではない。
今のレムがスバルをどう見るかによって、
彼自身が抱える英雄像も試されることになる。
詳しい出来事を知らなくても、
あの名乗りが今後も重いことは伝わってくる。

ただ、原作の先で起こる事件を全部知る必要はない。
アニメ第85話までで確かめられるのは、
レムが目を覚まし、スバルを覚えていないこと。
そしてスバルが、覚えていない彼女に向かって
「俺はお前の英雄だ」と名乗ったことだ。
今後レムがどこまで思い出すのか、
どのような気持ちでスバルと向き合うのかは、
この時点の描写と分けて考えたい。

昔のレムを大切に思うことと、
今のレムを一人の人物として見ることは両立する。
第1期の笑顔や言葉を覚えている視聴者ほど、
目覚めた彼女に早く同じ反応を求めたくなる。
しかし彼女自身には、今見ている世界が現実だ。
スバルの知る過去だけで今のレムを決めつければ、
目覚めた本人が何を感じるかが置き去りになる。
これからの彼女の言葉にも耳を傾ける必要がある。

スバルは長い眠りの間、一度もレムを諦めなかった。
その思いが軽いものではないことを、
第26話から監視塔までの旅が証明している。
けれど次に問われるのは、昔のレムを取り戻す力だけではない。
自分を知らないレムと、どう一緒に歩いていくかだ。
「俺はお前の英雄だ」という名乗りは、
彼女に思い出を押し付けるための答えではなく、
今の彼女にも信じてもらえるかという始まりなのである。

第7章 「俺はお前の英雄だ」は、レムとの新しい約束になった

第18話でレムが信じたスバルは、第85話でも諦めなかった

第85話でレムが目を覚ましたことは、
スバルにとって長い旅の到達点だった。
しかし、二人の関係が元に戻ったわけではない。
レムはスバルを覚えておらず、
かつて交わした言葉も思い出せない。
それでもスバルは、目の前の彼女に向かって
「俺はお前の英雄だ」と名乗った。

この言葉を聞くと、第1期第18話「ゼロから」が重なる。
あのときのスバルは、何もかも諦めようとしていた。
エミリアとの関係を壊し、魔女教の襲撃も防げず、
レムを救えなかった周回まで経験している。
自分には何もできないと泣き、
レムと一緒に逃げる未来を選ぼうとした。
そんなスバルを引き戻したのがレムだった。

レムは、スバルの失敗を知らなかったわけではない。
屋敷で不器用に働いていた姿も、
魔獣との戦いで無茶をした姿も見ている。
第11話「レム」で、自分を救おうとするスバルに
新しい生き方を教えられた経験もあった。
だから彼女は、スバルが自分を否定しても、
自分の知っている彼の姿を信じ続けられた。

第18話のレムが伝えたのは、
誰にも負けない強さを持つ英雄の姿ではない。
失敗しても、怖くても、誰かを助けようとする姿だった。
スバルはその言葉を受け取り、
第19話「白鯨攻略戦」では仲間を集めるために動いた。
逃げることしか考えられなかった少年が、
自分の力だけでは勝てない敵に挑む道を選んだ。
レムの言葉は、実際に彼の行動を変えていた。

その後、スバルは多くの戦いを経験した。
白鯨を倒し、魔女教と戦い、
聖域ではエミリアやベアトリスを救おうとした。
水門都市プリステラでも仲間と協力し、
プレアデス監視塔では自分の記憶まで失っている。
それでも、眠り続けるレムを救いたいという願いは、
ほかの問題に押し流されることがなかった。

そして第85話では、今度はレムが
スバルとの過去を知らない立場になった。
かつてスバルを立ち上がらせた少女が、
今は彼を英雄だと思った経験さえ覚えていない。
それでもスバルは、自分が何者かを伝えるとき、
レムがかつて信じてくれた姿を選んだ。
彼女から受け取った言葉を、
何年たっても手放していなかったことが分かる。

ただし、レムにとっては初めて聞く名乗りだ。
第18話のように涙を流して受け入れたわけでもない。
スバルが過去を覚えているからといって、
レムまで同じ気持ちになれるとは限らない。
だから、この言葉の価値は、
彼女がすぐ思い出してくれるかどうかだけでは決まらない。
忘れられても、スバルが約束を守ろうとすることにある。

第1期ではレムがスバルの未来を信じた。
第4期では、スバルがレムとの未来を諦めなかった。
相手が自分を覚えていなくても、
大切に思う気持ちまで失われるわけではない。
二人の立場が逆になったことで、
「英雄」という言葉には新しい重さが生まれた。

レムの記憶が戻らなくても、二人はもう一度始められる

レムが目覚めた後、スバルには
以前とは違う難しさが待っている。
眠っている間は、彼女を守ることができても、
レム自身の気持ちを確かめることはできなかった。
しかし、目覚めたレムは自分で話し、
相手を疑うことも、拒むこともできる。
スバルが望む関係と、レムが望む関係が
最初から一致する保証はない。

ここで思い出したいのが、第1期の屋敷編だ。
第7話では、レムがスバルを疑い、
命を奪うほど二人の関係は険悪だった。
それでも第10話の魔獣との戦いや、
第11話でレムの過去に触れた出来事を経て、
少しずつ互いを見る目が変わっていった。
初めから信頼があったわけではないからこそ、
二人が親しくなった過程には重みがある。

今回も、スバルが昔の出来事を説明するだけで、
同じ関係へ戻れるとは限らない。
レムが知らない男を警戒するなら、
その警戒にも向き合わなければならない。
自分は以前から大切に思っていたと伝えても、
相手が同じ気持ちになるまでには時間がかかる。
それはスバルの思いが足りないからではなく、
レム自身が失った経験を持っているからだ。

一方で、昔の記憶がないからといって、
これから信頼を築けないわけでもない。
第1期のレムも、スバルを最初から知らなかった。
彼の行動を見て、失敗を知り、
自分を助けようとする姿に心を動かされた。
今のレムがスバルを知らないなら、
これからの行動によって知ってもらう道が残っている。

だから第85話の再会は、救出の成功であると同時に、
新しい関係が始まる場面でもあった。
スバルは眠ったレムを起こすという願いをかなえた。
しかし、彼女が自分を信じてくれるかどうかは、
これまでの功績だけでは決まらない。
今度は目覚めたレム自身が、
目の前のスバルを見て判断することになる。

それでも、二人には一つの希望がある。
第1期では、疑い合っていた関係から
相手を信じられるところまで進んだ。
スバルはその過程を覚えている。
レムが何を怖がり、何に傷つき、
どんな行動に心を動かされたのかも知っている。
以前の思い出を押しつけるのではなく、
その経験を今の彼女のために生かすことはできる。

第85話でスバルが口にした
「俺はお前の英雄だ」という言葉は、
過去の関係が戻ったことを告げるものではない。
かつてレムが信じてくれた自分を、
これからも失わずにいたいという願いだ。
そして、今のレムにもいつか信じてもらえるように、
もう一度向き合っていく決意にも聞こえる。

レムは目覚めた。
しかし、スバルとの記憶は戻っていない。
第1期第18話で彼を救った言葉も、
今のレムにはまだ懐かしい思い出ではない。
それでもスバルは、彼女へ同じ言葉を返した。
かつてレムがスバルをゼロから立たせたように、
今度はスバルが、二人の関係をゼロから始める。

第85話「シャウラ/英雄」が残したのは、
昔のレムを取り戻したという結末ではなかった。
自分を知らないレムの前でも、
スバルは英雄であろうとする。
その姿をこれから彼女がどう受け止めるのか。
長い眠りが終わったことで、
ようやく二人は同じ時間を歩けるようになった。
本当の再会は、そこから始まっていく。

Re:ゼロまとめ

『Re:ゼロ』の考察・キャラ解説・王選・魔女教・大罪司教関連記事をまとめています。
スバル、エミリア、レム、ラインハルト、アル、魔女教、暴食、プレアデス監視塔の記事はこちら。

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