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【無職転生Ⅲ】老デウスの日記で「未来が全部ひっくり返る」|ロキシー・シルフィ・エリスを失った絶望の記録

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老デウスの日記には、ロキシー、シルフィ、エリスを失い、ルーデウス自身まで壊れていく未来が残されている。
しかし現在のルーデウスがその日記を読むことで、地下室を避け、家族へ頼り、エリスとの誤解を解き、ヒトガミへの向き合い方まで変わっていく。
つまり老デウスの日記は絶望を記録しただけの本ではなく、一度失敗した未来を材料に、現在の選択を変えて「未来が全部ひっくり返る」きっかけになった記録になる。

  1. 第1章 老デウスの日記はどこから悲惨になる?最初の分岐はロキシーだった
    1. 最初から絶望の記録ではなく、家族と暮らす普通の日常から始まっている
    2. ロキシー死亡だけでなく、救おうとした過程でクリフまで失う
  2. 第2章 ロキシーを失った後、ルーデウスはどう変わっていった?
    1. パウロ死亡時には立ち直れたが、未来では自分を立ち直らせたロキシー自身がいなくなる
    2. 魔術師として強くなる一方、家族へ戻る力を失っていく
  3. 第3章 シルフィは日記の中でどうなる?家を出た後に迎える最期
    1. ロキシーを失った後、シルフィへ頼れなかったことが次の崩壊につながる
    2. アスラまで追った時には遅く、処刑場でシルフィの死を知る
  4. 第4章 エリスはなぜ日記の中で何度も老デウスの前へ現れる?
    1. 老デウスは最後まで「エリスに捨てられた」という第1期の誤解を引きずっている
    2. 最後は老デウスを庇って死亡し、そこで初めてエリスの本心を知る
  5. 第5章 シルフィ死亡後、日記そのものはどう変わった?
    1. 紙質が変わるほど長い空白があり、再開後は別人のような内容になる
    2. それでもエリスだけは何度も現れ、日記の中で消えない存在になる
  6. 第6章 現在のルーデウスは日記を読んで何を変えた?
    1. 読み終えた直後、最初にしたのは強くなることではなくシルフィとロキシーへ近づくこと
    2. 日記は未来予知ではなく、同じ失敗を避けるための行動表に変わっていく
  7. 第7章 老デウスの日記が残したものは「悲惨な未来」だけではない
    1. ロキシー・シルフィ・エリスの死亡順より重要なのは、現在のルーデウスが同じ失敗を繰り返さなくなったこと
    2. 老デウスが人生を失敗したからこそ、現在のルーデウスには「失わない選択」が残された

第1章 老デウスの日記はどこから悲惨になる?最初の分岐はロキシーだった

最初から絶望の記録ではなく、家族と暮らす普通の日常から始まっている

老デウスの日記というと、
ロキシー。
シルフィ。
エリス。
大切な人を次々に失った悲惨な未来ばかりが印象に残る。
しかし日記の最初から、
ルーデウスが絶望しているわけではない。
むしろ序盤には、
現在のルーデウスとほとんど変わらない穏やかな生活が残っている。

日記を書き始めた頃のルーデウスは、
ペルギウス。
ゼニス。
召喚魔術。
転移魔術。
これから調べたいことが増えたため、
忘れないように記録を残そうと考えている。
つまり最初の目的は、
未来への遺書でもヒトガミへの復讐記録でもない。
日常と研究を書き残す、
普通の日記だった。

その内容もかなり平和。
アイシャが、
家の近くで変なネズミが死んでいたことを嫌がる。
近所では魔石病にかかった猫が見つかり、
ルーデウスは家族へ手洗いなどを呼びかける。
エリナリーゼの妊娠を知れば、
クリフたちを祝福する。
この段階では、
目の前の出来事を危険な未来と結び付けていない。

さらに日記には、
ペルギウスから召喚魔術を教わったこと。
ザノバとケイオスブレイカーの芸術品を見たこと。
娘ルーシーの寝顔。
ロキシーとの夫婦生活。
現在のグレイラット家で起きている、
小さな幸福まで書かれている。
だから後半の悲惨さが、
最初から決められていたようには見えない。

第3期第3話「帰ってきた日常」でも、
この時期のルーデウスは、
ロキシーを第二の妻として迎え、
シルフィ。
娘ルーシー。
ノルン。
アイシャ。
家族と一緒に生活している。
ラノア魔法大学へ復帰し、
ロキシーも教師として教壇へ立つ。
日記の序盤にある平穏は、
アニメで描かれてきた現在の日常とそのまま重なる。

だから老デウスの日記が怖いのは、
最初から暗い未来が書かれているからではない。
現在のルーデウスが持っているものと、
ほとんど同じ幸福から始まる。
家族がいる。
友人がいる。
研究したいことがある。
翌日の予定がある。
そこから少しずつ、
現在とは違う未来へ外れていく。

その変化の直前には、
すでに小さな兆候が並んでいる。
変なネズミ。
魔石病にかかった猫。
ロキシーの体調不良。
しかし当時のルーデウスは、
それぞれを一つの線として見ることができない。
未来の日記を読む現在のルーデウスだけが、
後から因果をつなげられる。

ここが、
老デウスの日記を単なる死亡者一覧として読む場合との大きな違いになる。
ロキシーが死ぬ。
シルフィが死ぬ。
エリスが死ぬ。
結果だけなら数行で書ける。
しかし日記には、
その直前まで普通に暮らしていたルーデウスが、
何を危険と認識できず、
どこから判断を誤ったかまで残っている。

そして日記の空気が、
はっきり変わる瞬間が来る。
ロキシーが倒れる。
少し前から体調が悪かった。
発熱。
上級解毒魔術を使っても治らない。
ルーデウスは、
また難しい病気なのではないかと考え、
クリフへ診てもらおうとする。

この時点でも、
まだロキシーが死ぬとは考えていない。
第3期ではナナホシのドライン病にも向き合い、
ソーカス草まで探して治療へつなげた。
ルーデウスには、
病気なら原因を調べ、
必要な治療を探せばいいという経験がある。
だから未来でも、
ロキシーを救うために動き始める。

しかし、
ここから日記の書き方そのものが変わる。
普通の家庭生活。
娘の話。
研究。
友人との出来事。
それまで書いていた日常が消えていき、
病気。
治療。
移動。
失敗。
死。
短く重い記録が続くようになる。
老デウスの日記が悲惨になる境目は、
ロキシーの発病から始まる。

ロキシー死亡だけでなく、救おうとした過程でクリフまで失う

未来のルーデウスは、
ロキシーが倒れても諦めない。
病気を調べ、
魔石病だと突き止め、
神級解毒魔術が必要だと知る。
そこで治療法を求め、
ミリス神聖国へ向かう。
まだこの段階では、
間に合えばロキシーを救えると考えている。

しかし神級解毒魔術は、
その場で簡単に教えてもらえる術ではない。
詠唱そのものが、
大聖堂の奥深くに保管されている。
しかも一言二言の短い呪文ではなく、
簡単には記憶できないほど膨大。
ルーデウスは、
必要な情報を持ち帰らなければならない。

この過程で、
クリフまで死亡する。
日記には、
それまで比較的丁寧に書かれていた文章から一転して、
「クリフが死んだ」
という非常に短い記録が残る。
その直後には、
しばらく何も書きたくないという状態へ入る。
ロキシーを救う途中で、
さらに仲間まで失っている。

クリフは、
第2期ラノア魔法大学編から長く付き合ってきた相手。
エリナリーゼとの関係。
呪い研究。
魔道具。
ルーデウスとは、
単なる同級生以上の付き合いになっている。
そのクリフを失いながらも、
未来のルーデウスはロキシーの元へ戻ろうとする。

日記には、
別の転移魔法陣まで何とか辿り着き、
「あと少し」と書く段階もある。
もう少し。
戻れば助けられる。
そう思って進んでいる。
ところが帰宅した時、
待っていたのは治療成功ではない。

家に戻る途中、
エリスとギレーヌにも遭遇する。
エリスは何かを伝えようとするが、
老デウスへ続くルーデウスは、
すでに二人の妻がいるとして拒絶する。
エリスは愕然とし、
ギレーヌも冷たい視線を残して去る。
後に大きな後悔となるすれ違いまで、
この時点ですでに始まっている。

そして家へ到着すると、
家族が沈痛な表情で待っている。
ロキシーは、
身体の半分を結晶化させて死亡。
苦労して持ち帰った神級解毒魔術も、
間に合わない。
救うために遠くまで走り、
仲間まで失ったのに、
最後には何も取り戻せなかった。

日記には、
その後のロキシーの葬式も残る。
何もする気になれない。
涙だけが出る。
周囲の出来事へ関心を持てない。
それまで家族や友人について細かく書いていた人物が、
一気に世界へ興味を失っていく。

ここが、
老デウスの日記で最初に大きく壊れる地点。
地下室を開ける。
ネズミが逃げる。
ロキシーが感染する。
治療法を探す。
クリフを失う。
帰還する。
ロキシーも間に合わない。
一つの罠が、
一人の死だけでは終わらず、
周囲まで巻き込み始めている。

第2章 ロキシーを失った後、ルーデウスはどう変わっていった?

パウロ死亡時には立ち直れたが、未来では自分を立ち直らせたロキシー自身がいなくなる

ロキシー死亡後の老デウスを理解するには、
第2期第23話「帰ろう」と比べると分かりやすい。
転移迷宮でゼニスを救出したルーデウスは、
その代償として、
左腕。
父パウロ。
さらに以前のように意思疎通できなくなったゼニス。
一度に複数のものを失っている。

マナタイトヒュドラとの戦闘では、
パウロがルーデウスを庇って死亡。
目的だったゼニス救出には成功しているのに、
ルーデウスは、
自分の判断。
自分の力不足。
父親の最期。
複数の後悔に押し潰される。
宿へ戻っても、
すぐ次へ進めない。

第23話で、
そんなルーデウスへ声を掛けたのがロキシー。
パウロを失った事実は消せない。
ゼニスの状態も戻せない。
それでも、
一人で沈み続けるルーデウスのそばへ行き、
再び生きる方向へ引き戻す。
この場面があるから、
未来でロキシーを失う重さが全く違う。

さらに第24話「嗣ぐ」では、
ルーデウスが半年ぶりにラノアへ帰る。
シルフィ。
ノルン。
アイシャ。
家族へ、
転移迷宮で起きたことを話す。
パウロ死亡。
ゼニスの状態。
そしてロキシーとの関係まで、
逃げずに伝える。

ノルンから強く責められる場面もある。
それでも最終的には、
ロキシーも家族として迎えられる。
ルーデウスは、
パウロを失った後も、
家族との関係を完全には壊さなかった。
苦しい出来事を抱えたままでも、
帰る家へ戻れている。

老デウスの日記では、
この構図が反転する。
パウロ死亡時には、
ロキシーがいた。
シルフィもいた。
帰る家もあった。
だから大きな喪失の後でも、
人との関係の中へ戻ることができた。

しかし未来では、
そのロキシー自身が死ぬ。
しかもヒュドラのように、
目の前の敵へ負けた結果ではない。
地下室を開けた。
ネズミを逃がした。
食べ物を通して感染した。
後から原因を知れば、
自分の判断へ戻ってくる。

日記には、
シルフィが元気付けようとしていることも書かれる。
それでも老デウスへ続くルーデウスの心は晴れない。
ロキシーがいない。
幼少期に家の外へ連れ出してくれた。
パウロが死んだ時にも支えてくれた。
人生の節目で何度も自分を前へ動かした相手を失った。

この喪失は、
第1期第23話「目覚め、一歩、」とも重なる。
エリスが手紙を残して去った時、
ルーデウスは、
転生してから変われたと思っていた自分を見失い、
再び前世のように引きこもる。
強さを失ったからではなく、
大切な相手との関係を失ったことで、
生活そのものが止まる。

ルーデウスは、
大切な人の喪失に強い人物ではない。
むしろ何度も、
そこで崩れてきた。
ただ過去には、
そのたびに別の誰かがいた。
ゼニスを思い出す。
シルフィと再会する。
ロキシーに支えられる。
家族へ帰る。
人との関係が、
何度も立て直すきっかけになっている。

未来の日記では、
その立て直す側の人間が減っていく。
だからロキシー死亡は、
一人を失うだけでは終わらない。
老デウスという人物が、
現在のルーデウスとは違う方向へ変わり始める最初の大きな段階になる。

魔術師として強くなる一方、家族へ戻る力を失っていく

ロキシー死亡後のルーデウスは、
何もできないまま終わるわけではない。
むしろ魔術師としては、
ここからさらに強くなる。
情報を集める。
ヒトガミについて調べる。
戦闘を重ねる。
魔術研究へ深く入り、
現在のルーデウスには使えない技術まで身につけていく。

しかし、
その成長と家庭の再生は一致しない。
現在のルーデウスは、
何か問題が起きれば、
ザノバ。
クリフ。
シルフィ。
ロキシー。
ナナホシ。
周囲の知識や力を借りる場面が多い。
一人で全て解決する人物ではない。

老デウスへ続く未来では、
ロキシーを救えなかった経験が、
逆に人との距離を広げる。
助けを求めても間に合わなかった。
治療法を探しても失敗した。
仲間まで死んだ。
そうした経験が、
次第に「自分でもっと強くなる」方向へ彼を押していく。

日記の文章にも、
その変化が出始める。
序盤には、
家族のこと。
友人のこと。
研究。
娘の寝顔。
生活の細かな出来事が並ぶ。
ロキシー死亡後は、
そうした記録が減り、
喪失。
怒り。
移動。
戦闘。
相手への不信。
行動の中心が変わっていく。

ここで怖いのは、
老デウスが単純に悪人になるわけではないこと。
ロキシーを忘れたわけでもない。
むしろ忘れられない。
だからこそ、
自分がもっと強ければ。
もっと早く治療法を手に入れられれば。
ヒトガミの罠を見抜いていれば。
後悔を埋めるように、
力と知識を求める。

しかし強くなっても、
ロキシーは戻らない。
魔術研究が進んでも、
過去の失敗は消えない。
さらに周囲との関係まで壊れれば、
その次に失った相手から立ち直らせてくれる人も減る。
ここからシルフィ。
エリス。
ザノバ。
現在ルーデウスを支えている人々との未来まで変わっていく。

だから老デウスの日記の悲惨さは、
誰が何番目に死んだかだけではない。
最初のロキシー死亡から、
ルーデウス本人の判断が変わる。
判断が変わるから、
次の人間関係も変わる。
その結果を受けて、
さらに本人が変わっていく。

現在のルーデウスが日記を読む時、
ここに強い衝撃を受ける。
未来の自分は、
全く知らない別人ではない。
第1期でエリスを失って崩れた自分。
第2期でパウロを失って動けなくなった自分。
その性質が、
支えてくれる人まで失った先で極端になった姿。

つまり老デウスの日記は、
未来で人が死んだ記録であると同時に、
ルーデウス自身が少しずつ現在の自分ではなくなっていく記録でもある。
最初の決定的な変化が、
ロキシーの死。
そこから先、
魔術師としては前へ進みながら、
人生では戻る場所を失っていく。

第3章 シルフィは日記の中でどうなる?家を出た後に迎える最期

ロキシーを失った後、シルフィへ頼れなかったことが次の崩壊につながる

ロキシーを失った後も、
シルフィはルーデウスのそばに残っている。
励まそうとする。
支えようとする。
未来の日記でも、
シルフィ自身はすぐ離れたわけではない。
むしろ壊れかけたルーデウスへ、
最後まで家族として近づこうとしている。

この場面は、
第2期第12話「伝えたい」から続く二人の関係を考えると重い。
ラノア魔法大学でフィッツの正体がシルフィだと分かり、
ルーデウスは長く気づけなかったことを謝る。
シルフィは想いを告げ、
二人は結ばれる。
第13話「夢のマイホーム」では、
結婚へ向けて家探しまで始める。

第2期後半では、
その家がルーデウスにとって帰る場所になる。
ノルン。
アイシャ。
ルーシー。
そして後にはロキシーも加わる。
転移迷宮でパウロを失った後も、
ルーデウスが完全に孤独へ戻らなかったのは、
この家とシルフィの存在が大きい。

ところが老デウスの日記では、
ロキシー死亡後のルーデウスが、
シルフィの支えを受け取れなくなる。
シルフィは、
ロキシーを忘れさせようとするように近づく。
抱いてもいい。
悲しみを自分へぶつけてもいい。
そこまで寄り添おうとする。

しかし未来のルーデウスは、
それを拒絶する。
今シルフィを抱けば、
ロキシーの代わりとして扱ってしまう。
八つ当たりの対象にしてしまう。
それは良くないと考える。
ここまでは、
むしろシルフィを傷つけまいとする判断にも見える。

問題は、
その後に別の場所で崩れること。
酒場で酒を飲み、
娼婦に声を掛けられ、
酔った勢いで関係を持つ。
シルフィの申し出は拒絶したのに、
知らない女性とは一夜を過ごしてしまう。
しかも後から、
自分でも失敗だったと理解する。

シルフィとの間には、
当然深い亀裂が入る。
口をきいてもらえなくなる。
どうすればいいか分からない。
エリナリーゼがいれば、
何か助言をもらえたかもしれない。
そんなことまで日記へ書く。
すでにルーデウス自身の判断力が、
普段とは大きく変わっている。

そしてある朝、
シルフィがいなくなる。
部屋には、
ルーデウスから贈られた服や装飾品だけが残る。
リーリャは、
すぐ追いかけろと促す。
それでも未来のルーデウスは、
自分には追う資格がないのではないか。
離婚されて当然ではないか。
そう考えて動けない。

この場面は、
第1期第23話「目覚め、一歩、」とかなり似ている。
あの時はエリスが手紙を残して去り、
ルーデウスが再び引きこもる。
今回も、
大切な女性が家から消え、
自分は捨てられて当然だと考える。
人との関係を失った時、
行動より自己否定が先に来る性質が、
未来でも残っている。

しかし未来では、
ゼニスが止まったルーデウスを動かす。
言葉を話せない状態のゼニスが、
何度もルーデウスの頬を叩く。
何かを説明したわけではない。
それでもルーデウスは、
その行動を、
いつまで悩んでいるのかと叱られているように受け取る。

ようやくシルフィを追うと決め、
情報を集める。
そこで分かるのが、
シルフィはアリエルと一緒に、
アスラ王国へ向かったということ。
卒業までまだ時間が残っているのに、
予定を早めて本国へ戻った。
アスラ国内で、
王位継承を巡る動きが始まっていたためになる。

アスラまで追った時には遅く、処刑場でシルフィの死を知る

シルフィを追う旅は、
すぐには進まない。
途中で再びエリスと遭遇する。
さらに豪雪地帯で足止め。
ようやくアスラ王国へ着いても、
ミリス神聖国で神級解毒魔術を盗んだ件により、
ルーデウス自身が指名手配されている。
国境から普通に入ることさえできない。

拘束されそうになり、
一度逃走。
盗賊ギルドと接触し、
トリスという女性の案内を受ける。
顔を隠すため、
フードと仮面を装着。
偽名まで使い、
身分を隠してアスラ国内へ入り直す。
シルフィ一人へ会うためにも、
何段階もの障害を越えなければならない。

その間に国内では、
国王の病状悪化。
王子たちの後継争い。
アリエルが兵を集めているという噂。
政治状況が急速に悪化する。
ルーデウスは、
シルフィを捜しながら、
アリエルの動きまで追うことになる。

王都へ着いても、
アリエル。
ルーク。
シルフィ。
三人とも姿がない。
ノトス家へ移ったという情報を追い、
ミルボッツ領へ向かう。
ところがそこでも空振り。
未来のルーデウスは、
常に一歩遅れて動き続ける。

最後に入る情報が、
王都でクーデターが起きたという知らせ。
アリエルは、
第一王子と第二王子を同時に排除しようと動く。
しかし王都側には、
水神。
北帝。
強力な戦力が揃っている。
アリエル側は敗北し、
手勢も壊滅する。

未来のルーデウスが、
王都まであと一日の地点で聞くのは、
クーデター鎮圧の知らせ。
アリエルは捕らえられ、
処刑予定。
手勢は全滅。
そこで日記には、
シルフィはどうなったのかという不安が、
一気に前へ出る。

王都へ着いた後、
ルーデウスが見るのは、
戦闘そのものではない。
すでに終わった後の処刑場。
そこには、
アリエル側として戦った者たちの死体が晒されている。
ルーク。
そしてシルフィも、
その中にいる。

シルフィの身体は、
片腕を失い、
顔には大きな斬り傷が残っている。
しかも死体のまま、
王都の平和を乱した犯罪者として晒され、
市民から石を投げられている。
カラスが死体をついばみ、
石が飛ぶたびに飛び立つ。
未来の日記でも、
この場面は極端に重く記録される。

ここが、
ロキシー死亡とは違う悲惨さになる。
ロキシーの時は、
最後まで救おうとした。
神級解毒魔術を取りに行き、
間に合わなかった。
シルフィの場合は、
夫婦関係を壊した後、
追う決断まで遅れ、
最後には死ぬ瞬間にすら立ち会えない。

しかも現在の時間軸なら、
この未来は避けられる材料が揃っている。
現在のルーデウスは、
老デウスの日記を読んだ直後、
シルフィへ近づく。
辛い時に頼れなくなり、
酷いことを言うかもしれない。
それでも、
いなくならないでほしいと伝える。

シルフィも、
喧嘩になるかもしれないが、
仲直りできると返す。
現在のルーデウスは、
未来の自分が無視した支えを、
今度は受け取ろうとする。
つまり日記は、
シルフィの死亡を知らせるだけでなく、
未来で壊した夫婦関係を、
壊れる前から修正する材料になっている。

第4章 エリスはなぜ日記の中で何度も老デウスの前へ現れる?

老デウスは最後まで「エリスに捨てられた」という第1期の誤解を引きずっている

老デウスの日記で、
ロキシーやシルフィとは違う形で何度も現れるのがエリス。
未来のルーデウスは、
彼女を家族として失ったわけではない。
そもそも再び関係を作る前に、
長年の誤解を抱えたまま進んでいる。
その誤解の起点が、
第1期第23話「目覚め、一歩、」になる。

フィットア領へ帰還した後、
エリスはルーデウスと一夜を過ごす。
ところが翌朝、
ルーデウスが目を覚ますと、
エリスの姿がない。
残されていたのは短い手紙。
エリス本人は、
ルーデウスの隣に並べるほど強くなるため、
剣の修行へ向かった。

しかしルーデウスには、
その意図が伝わらない。
一緒に旅をしてきた。
魔大陸を生き抜いた。
ようやく故郷へ戻った。
その直後に、
女性として結ばれた相手が消える。
ルーデウスは、
自分が捨てられたと受け取る。

公式の第23話でも、
エリスを失った衝撃により、
ルーデウスは再び前世のように引きこもるところまで落ちる。
第2期序盤の「失意の魔術師」まで、
この傷は長く残る。
つまり未来の老デウスが、
エリスへ冷たい態度を取る背景は、
突然生まれたものではない。

現在の時間軸では、
その後シルフィと再会。
結婚。
ロキシーとも結ばれる。
エリスが何を考えて去ったのかを、
ルーデウスはまだ十分に知らない。
老デウスの未来でも、
この誤解が解けないまま年月が進む。

ロキシーを救うためミリスから戻る途中、
ルーデウスはエリスとギレーヌに会う。
エリスは何かを伝えようとする。
しかし未来のルーデウスは、
すでに妻が二人いるとして受け入れない。
エリスは愕然とし、
その場では決定的な再会にならない。

ロキシー死亡後も、
エリスは再び現れる。
日記では、
今なら許してあげるという態度で近づく。
しかし老デウス側には、
「自分を捨てた女が今さら何を言っている」
という認識が残っている。
会話そのものが噛み合わない。

聞く耳を持たないルーデウスへ、
エリスは殴りかかる。
ルーデウスも苛立ち、
魔術で吹き飛ばす。
エリスが剣を抜けば、
その場から逃げる。
未来の日記だけ読むと、
二人は再会するたび争っているように見える。

しかし問題は、
互いの前提が全く違うこと。
エリスは、
ルーデウスへ捨てられたと思っていない。
強くなって戻れば、
また隣に立てると思っていた。
一方のルーデウスは、
第1期第23話からずっと、
自分が捨てられたと思っている。

同じ過去を見ているのに、
二人の中で結論だけが逆。
その誤解を解く人物もいない。
だからエリスが追えば追うほど、
老デウスには執拗な相手に見える。
老デウスが拒絶すれば拒絶するほど、
エリスには話の通じないルーデウスに見える。

最後は老デウスを庇って死亡し、そこで初めてエリスの本心を知る

それでもエリスは、
未来のルーデウスから離れない。
シルフィを追う途中にも現れる。
アスラ王国でも姿を見る。
ノトス家へ侵入した時には、
エリスに叩きのめされる。
老デウス側からすれば、
どこへ行っても現れる理解不能な相手になっていく。

その関係が終わるのが、
アトーフェとの戦闘。
未来のルーデウスは、
ヒトガミの情報を求め、
不死魔族で長寿のアトーフェなら何か知っているかもしれないと考える。
場合によっては、
力ずくでも聞き出すつもりで会いに行く。

当然、
話だけでは終わらない。
アトーフェ。
アトーフェ親衛隊。
未来のルーデウスは、
複数を相手に戦闘へ入る。
自分なら対応できると判断するが、
親衛隊のムーアへの警戒が甘くなる。

ムーアは、
高い魔術技術を持つ相手。
未来のルーデウスも、
その実力を知っていたはずなのに、
アトーフェへ注意を集中しすぎる。
戦況が崩れ、
ルーデウス自身が窮地へ入る。
そこで突然飛び込んでくるのがエリスになる。

エリスは、
未来のルーデウスを庇う。
そして死亡する。
ここで初めて、
長年続いたすれ違いの答えが出る。
ギレーヌから、
エリスが再会後どんな思いでルーデウスを追っていたのか、
すべて聞かされる。

エリスは、
復讐するために追っていたわけではない。
迷惑を掛けたいわけでもない。
老デウスの力を奪いたいわけでもない。
ただルーデウスのそばにいたかった。
第1期で去った時から、
気持ちそのものは変わっていなかった。

未来のルーデウスは、
その時になって初めて理解する。
自分はずっと勘違いしていた。
エリスは、
ずっと自分を好きだった。
何度拒絶しても、
殴り合いになっても、
追ってきたのはそのためだった。

しかし理解した時には、
もうエリスは死んでいる。
ここが、
老デウスの日記でも特に残酷なところ。
ロキシーは救おうとして間に合わなかった。
シルフィは追いかけても間に合わなかった。
エリスは、
本人が何度も目の前へ来ていたのに、
自分で拒絶し続けた末に失う。

第1期第23話の手紙が、
ここまで長い悲劇へつながる。
エリスは、
強くなれば気持ちは伝わると思った。
ルーデウスは、
短い手紙を読んで捨てられたと思った。
わずかな説明不足が、
数十年先まで解消されない。
日記を読んだ現在のルーデウスは、
その結末まで知ることになる。

だから老デウスは、
過去へ来た時、
若い自分へエリスに手紙を送れと伝える。
現在のルーデウスも、
日記を読む前から手紙を書き始める。
エリスを受け入れる可能性があることを伝え、
送る前にシルフィとロキシーへ相談しようとする。

つまりエリスの死は、
老デウスの日記の悲劇で終わらない。
現在では、
第1期から続いた最大級の誤解を、
死ぬ前に解く機会へ変わる。
老デウスが何十年も気づかなかったことを、
現在のルーデウスは、
日記を読むことで先に知る。

ロキシー。
シルフィ。
エリス。
三人の死に方は全部違う。
病気で救えない。
追っても間に合わない。
目の前にいたのに気持ちへ気づけない。
老デウスの日記が重いのは、
同じ「死」という結果でも、
ルーデウス自身の失敗がそれぞれ別の形で残されているからになる。

第5章 シルフィ死亡後、日記そのものはどう変わった?

紙質が変わるほど長い空白があり、再開後は別人のような内容になる

老デウスの日記で、
シルフィ死亡後に注目したいのは、
次に誰が死ぬかだけではない。
日記そのものが、
途中で長期間途切れている。
現在のルーデウスが続きを読むと、
前日に読んだ部分から紙質まで変わっている。
つまり数日や数週間ではなく、
年単位で書かなかった可能性が高い。

空白が一年なのか。
二年なのか。
五年なのか。
十年なのか。
現在のルーデウスにも判別できない。
シルフィの死を境に、
日々の出来事を書き残す習慣そのものが消えた。
ここまで来ると、
日記の空白自体が、
老デウスの精神状態を示す記録になる。

それ以前の日記には、
ロキシー。
シルフィ。
クリフ。
エリス。
失った人物について、
苦しいながらも具体的な出来事を書いていた。
ロキシーを救うためにどこへ行ったか。
シルフィを追って何を調べたか。
その時どんな判断をしたか。
失敗の経緯を文章として残そうとしている。

ところがシルフィ死亡後、
その形まで崩れる。
再び日記を書き始めた頃には、
文章の中心が、
町で見かけた女性。
酒場。
娼館。
女性関係。
以前なら家族や研究について書いていた人物とは、
同じ人間と思いにくい内容へ変わっている。

現在のルーデウス自身も、
そこを読んで強い違和感を覚える。
シルフィもロキシーもいなくなったら、
自分は本当にここまで変わるのか。
女性を順位付けする。
娼館を巡る。
ジュリにまで欲望を向けようとする。
未来の自分の文章なのに、
読む側が本人であるほど受け入れにくい。

この変化は、
第1期第23話「目覚め、一歩、」ともつながる。
エリスが去った直後、
ルーデウスは部屋へ閉じこもり、
再び前世の引きこもりに近い状態へ戻った。
一度大きな喪失を受けると、
生活そのものを放棄するところまで崩れる。
その性質は未来でも消えていない。

第2期では、
そこから立ち直る材料があった。
ラノア魔法大学。
フィッツとして再会したシルフィ。
第12話「伝えたい」で、
フィッツの正体がシルフィだと知り、
互いの気持ちを確認。
第14話「披露宴」では、
アリエルやザノバたちを家へ招き、
夫婦として新しい生活を始める。

つまり現在のルーデウスは、
人との関係が戻るたび、
生活も戻っている。
しかし老デウスの未来では、
ロキシーが死ぬ。
シルフィも死ぬ。
支えてくれた相手が、
一人ずつ消えていく。
その後に日記が長期間途切れるのは、
単なる書き忘れではなく、
日常を記録する意欲まで失った結果に見える。

さらに不気味なのが、
アイシャ。
ノルン。
リーリャ。
ゼニス。
ルーシー。
家族の名前まで、
再開後の日記ではほとんど出てこないこと。
同じ家族が生きている可能性があっても、
老デウスの関心がそこへ向かなくなっている。
家庭を中心に生きていた現在との距離が、
文章だけでもかなり大きい。

ザノバやジュリの名前は、
時折出てくる。
しかし以前のように、
研究仲間。
人形作り。
魔道具。
そうした具体的な共同作業が中心ではない。
人との関係を育てる記録から、
自暴自棄な生活の記録へ変質している。

ここが、
老デウスの日記を読む時に見落としにくい部分。
紙が変わる。
空白期間ができる。
文章の内容が荒れる。
家族の名前が消える。
一つ一つが、
シルフィ死亡後にルーデウスの生活基盤そのものが壊れたことを示している。

それでもエリスだけは何度も現れ、日記の中で消えない存在になる

再開後の日記で、
家族の名前が減っていく一方、
何度も出てくる人物がエリスになる。
老デウスは、
彼女から逃げ回っている。
町で出会う。
殴られる。
不機嫌そうな顔をされる。
それでも関係を切り切れない。

この時の老デウスは、
エリスへ複雑な感情を持っている。
第1期第23話で、
エリスに捨てられたと思い込んだ傷。
再会後も話が噛み合わない。
何度も追ってくることへの苛立ち。
それでも完全に無関心にはなれない。
日記にも、
復讐されるのが怖いから関わらないという、
弱気な記述まで残る。

シルフィ。
ロキシー。
二人を失った後でも、
エリスだけは何度も目の前へ出てくる。
だから日記の中で、
彼女は単なる過去の女性ではなく、
老デウスが最後まで解けなかった問題として残る。

その関係が終わるのが、
アトーフェとの戦闘。
老デウスは、
ヒトガミの情報を求め、
長命な不死魔族なら何か知っているかもしれないと考える。
アトーフェと親衛隊を相手に戦闘へ入り、
ムーアの魔術まで重なって窮地へ追い込まれる。

そこへエリスが飛び込む。
老デウスを庇う。
そして死亡する。
その後ギレーヌから、
エリスが長年何を考えていたのかを聞かされる。
初めて、
自分がずっと誤解していたことを知る。

この瞬間、
第1期第23話から続いたすれ違いが、
何十年越しに終わる。
ただし解けた時には、
本人がもういない。
だから日記後編のエリス死亡は、
三人目の悲劇というだけではなく、
老デウスが過去の自分の誤解まで見直すきっかけになる。

そしてここから、
日記の役割がまた変わる。
ただ失敗を記録するだけではない。
どこで間違えたか。
何を若い自分へ伝えるべきか。
過去へ戻る研究と、
未来を変えるための記録へ近づいていく。

第6章 現在のルーデウスは日記を読んで何を変えた?

読み終えた直後、最初にしたのは強くなることではなくシルフィとロキシーへ近づくこと

老デウスの日記を読んだ現在のルーデウスは、
すぐ魔術の修行へ向かわない。
武器を集めるわけでもない。
最初に起きる変化は、
もっと身近な行動。
今そばにいる家族へ、
自分から近づくことになる。

日記前編を読んだ時点で、
ルーデウスはかなり動揺する。
ロキシー死亡。
シルフィとの決裂。
シルフィの最期。
文章を書いたのが未来の自分だから、
その時の感情まで想像できてしまう。
気分が悪くなり、
途中で読む手を止め、
実際に吐くところまで追い込まれる。

その直後、
廊下にはシルフィがいる。
現在のシルフィは生きている。
白い髪。
普段着。
心配そうに声を掛ける。
しかし日記を読んだルーデウスには、
未来で片腕を失い、
顔に傷を負い、
死体を晒されたシルフィの姿まで重なって見える。

そこでルーデウスは、
説明より先にシルフィを抱きしめる。
未来では、
ロキシーを失った悲しみを、
シルフィへうまく頼れなかった。
元気付けようとする彼女を受け入れられず、
別の女性へ逃げ、
夫婦関係を壊した。
現在では、
その失敗をする前に距離を縮める。

この行動は、
第2期第12話「伝えたい」で結ばれた時と対照的。
当時は、
フィッツの正体に気づけなかったことを謝り、
シルフィの告白を受け、
ようやく互いの気持ちを確かめた。
第14話では披露宴まで開き、
夫婦として生活を始める。

老デウスの日記を読んだ後は、
その関係を「一度成立したから大丈夫」と考えなくなる。
未来では、
結婚したシルフィとも壊れた。
だから現在のルーデウスは、
辛い時に自分が閉じるかもしれないこと。
酷い態度を取るかもしれないこと。
それでも離れないでほしいことを、
先に伝えようとする。

ロキシーが帰宅した後も同じ。
現在のルーデウスは、
ロキシーの後をついていく。
ソファへ座れば隣へ行く。
三つ編みへ触れる。
いつも通りの会話をするのではなく、
もっと近くで話したいと求める。
未来で失った相手が目の前に生きていることを、
確かめるような行動になる。

第2期第23話「帰ろう」では、
パウロを失ったルーデウスへ、
ロキシーが声を掛けた。
現在は逆。
未来でロキシーを失った自分を読んだルーデウスが、
生きているロキシーへ自分から近づく。
過去回と未来の日記が、
ここで反対方向につながる。

つまり日記を読んだ最初の成果は、
未来知識を使った戦略ではない。
家族へ頼る。
一人で抱えない。
相手がいるうちに言葉を交わす。
老デウスができなかったことを、
現在のルーデウスがその日のうちに始めている。

日記は未来予知ではなく、同じ失敗を避けるための行動表に変わっていく

日記を読む前から、
老デウスは若い自分へ、
いくつかの警告を残している。
ナナホシへ相談する。
エリスへ手紙を送る。
ヒトガミを疑う。
ただし、
すぐ敵対してはいけない。
地下室だけ止めれば終わる話ではない。

現在のルーデウスは、
エリスへの手紙も書き始める。
内容は、
彼女を受け入れる可能性があるというもの。
しかしそのまま勝手に送らない。
シルフィ。
ロキシー。
二人へ相談してから決めようとする。
ここも老デウスの未来との差になる。

老デウスは、
エリスの気持ちを知らないまま拒絶した。
現在のルーデウスは、
未来でエリスがどう動いたかを知っている。
しかしだからといって、
今の家族を無視してエリスだけを迎えるのでもない。
日記で見た失敗を、
別の失敗へ置き換えないように動く。

ヒトガミへの態度も同じ。
完全に信用しない。
しかし老デウスの怒りをそのまま引き継ぎ、
即座に敵対もしない。
次に夢へ現れた時、
疑っていることを伝えながら、
距離を保つ方向へ変わる。
老デウスが何十年もかけて知った危険を、
現在では最初から前提にできる。

ナナホシへ相談することにも、
第2期からの積み重ねがある。
第2期第9話「白い仮面」で、
ルーデウスはサイレント・セブンスターと再会。
彼女がナナホシであり、
自分と同じ日本から来た人物だと知る。
その後は転移。
召喚。
魔法陣。
世界を越える現象について、
一緒に研究を進めてきた。

老デウスが使ったのは、
時間を遡る転移。
普通の魔術師へ話しても、
荒唐無稽と受け取られる可能性が高い。
しかしナナホシなら、
異世界転移そのものを経験している。
現在のルーデウスが相談相手として選ぶのも、
過去回から積み上げた関係があるからになる。

そして日記後編を読むと、
最終的に現在のルーデウス自身が、
「こうならないように動かなければならない」
という方向へ考えを固める。
重要なのは、
未来が確定したと受け取っていないこと。
老デウスが通った道を知ったから、
別の道を選べると考える。

ロキシーを失わない。
シルフィへ頼る。
エリスとの誤解を放置しない。
ナナホシへ相談する。
ヒトガミを警戒する。
日記に書かれた一つ一つの悲劇が、
現在では具体的な行動へ反転していく。

だから老デウスの日記は、
未来で誰が死んだかを知る本だけではない。
未来の自分が、
どの場面で判断を誤り、
誰へ頼らず、
誰の気持ちを勘違いし、
どんな順番で孤立したかを読む記録になる。

そして現在のルーデウスは、
読んだその日から、
同じ自分にならないために動き始める。
老デウスの日記が本当に未来を変えるのは、
書かれた悲劇を知った瞬間ではない。
生きているシルフィを抱きしめ、
ロキシーの隣へ座り、
まだ間に合う人間関係へ手を伸ばした瞬間からになる。

第7章 老デウスの日記が残したものは「悲惨な未来」だけではない

ロキシー・シルフィ・エリスの死亡順より重要なのは、現在のルーデウスが同じ失敗を繰り返さなくなったこと

老デウスの日記は、
ロキシー。
シルフィ。
エリス。
大切な人を次々に失う未来が強烈すぎるため、
どうしても「誰がどんな順番で死ぬか」に目が向きやすい。
しかし現在のルーデウスにとって、
本当に重要なのは死亡順そのものではない。

ロキシーを失った時、
自分はどう崩れたのか。
シルフィへ頼れず、
どんな判断をして夫婦関係を壊したのか。
エリスが何度も目の前へ現れたのに、
なぜ気持ちを理解できなかったのか。
日記には、
結果だけでなく、
未来の自分が間違えていく過程まで残っている。

最初の大きな分岐は、
地下室。
ヒトガミの助言に従い、
扉を開ける。
ネズミが逃げる。
食べ物へ接触。
ロキシーが魔石病へ感染。
この一連の流れは、
老デウス自身が未来を最後まで生きたからこそ、
最初の一手まで遡って見つけられた。

現在では、
まずそこを変えられる。
地下室へ行かない。
感染源となるネズミを処理する。
ロキシーの魔石病を発生させない。
未来のルーデウスが、
神級解毒魔術を求めてミリスまで走り、
クリフまで失った過程そのものを消せる。

しかし日記の価値は、
地下室を回避したところで終わらない。
老デウスは、
ロキシーを失った後、
シルフィへ頼れなかった。
悲しみを一人で抱え、
酒と女性関係へ逃げ、
夫婦関係を壊す。
その結果、
シルフィはアリエルと共に家を出る。

現在のルーデウスは、
この未来を先に読む。
だから日記を閉じた直後、
生きているシルフィへ近づく。
未来で自分が酷い態度を取るかもしれない。
それでも離れないでほしい。
今までなら実際に問題が起きてから考えたことを、
未来の失敗を知った状態で先に伝える。

ロキシーへも同じ。
第2期第23話「帰ろう」では、
パウロ死亡後に沈んだルーデウスを、
ロキシーが支えた。
未来の日記では、
そのロキシー自身を失ったことで、
ルーデウスがさらに深く崩れる。
現在では、
帰宅したロキシーの隣へ自分から座り、
生きている相手との距離を確かめるように接する。

エリスについても、
日記がなければ第1期第23話の誤解を、
長く抱え続ける可能性があった。
エリスは、
強くなるために去った。
ルーデウスは、
捨てられたと思った。
未来ではその食い違いを解けないまま、
何度再会しても拒絶し続ける。

最後には、
エリスが老デウスを庇って死亡。
ギレーヌから本心を聞かされ、
そこで初めて、
ずっと自分を想っていたと理解する。
日記を読んだ現在のルーデウスには、
その結末まで先に分かる。
だからエリスへ手紙を送るという、
未来にはなかった選択が生まれる。

ここで重要なのは、
日記を読んだから全て正解になるわけではないこと。
エリスを受け入れるなら、
シルフィとロキシーとの関係もある。
ヒトガミを疑うなら、
すぐ敵対していいわけでもない。
未来を知ったことで、
新しい選択肢が増えただけになる。

それでも、
何も知らずに同じ失敗へ進む未来とは大きく違う。
第1期のターニングポイント2では、
オルステッドが何者か知らずに遭遇した。
第2期のターニングポイント3では、
ベガリットへ行った先でパウロが死ぬことを知らなかった。
これまでのルーデウスは、
選んだ後に結果を知る人生を送ってきた。

老デウスの日記を受け取った後は、
初めてその順番が逆になる。
結果を先に知る。
失敗した自分まで知る。
その上で、
現在の選択を変える。
だから日記は、
未来を見せる道具というより、
現在のルーデウスが選び直すための材料になる。

老デウスが人生を失敗したからこそ、現在のルーデウスには「失わない選択」が残された

老デウス本人にとって、
日記は幸福な人生の記録ではない。
ロキシーを失う。
クリフを失う。
シルフィを失う。
エリスを失う。
ザノバを含め、
現在ならそばにいる人々まで次々に消えていく。
そのたびに老デウス自身も変わっていく。

魔術師としては強くなる。
知識は増える。
新しい魔術を研究する。
ヒトガミについて調べる。
重力に関わる術。
転移。
時間そのものを遡る研究。
若い頃には届かなかった領域へ進み続ける。

しかし人生では、
強くなるほど孤独になる。
ここが老デウスの未来で最も皮肉なところ。
第1期からルーデウスは、
魔術を覚えることで外へ出た。
ロキシーに教えられ、
エリスと旅をし、
ルイジェルドと魔大陸を越えた。
強くなることが、
人との関係を広げる力になっていた。

老デウスの未来では逆。
強くなる目的が、
守るためではなく、
失った後の復讐へ変わっていく。
家族と暮らしながら研究する現在ではなく、
ヒトガミを追うために研究する未来。
同じ魔術の成長でも、
向かう方向が全く違う。

それでも老デウスは、
最後まで全部を諦めたわけではない。
自分の未来を元へ戻すことはできない。
ロキシーも。
シルフィも。
エリスも。
死んだ人間を現在へ戻す術は完成しない。
そこで発想そのものを変える。

失った人を未来で蘇らせるのではなく、
失う前の自分へ情報を渡す。
現在の自分を救えないなら、
過去の自分に同じ人生を歩ませない。
そのために時間転移を研究し、
身体を大きく消耗させながら、
第11話のルーデウスの前まで戻ってくる。

そして持ってくるのが、
未来の武器だけではない。
日記。
何十年分もの失敗。
誰が死んだか。
どんな判断をしたか。
何を誤解したか。
どこでヒトガミを信じたか。
老デウス自身の人生が、
そのまま現在のルーデウスへの警告書になる。

だから老デウスの日記は、
「未来で全員死んだ」というだけなら、
ここまで大きな価値を持たない。
本当に重いのは、
未来の自分が、
どの段階ならまだ止められたのかまで残していること。

地下室を開けない。
ロキシーを守る。
シルフィへ頼る。
エリスとの誤解を放置しない。
ナナホシへ相談する。
ヒトガミを無警戒に信じない。
さらにその先で、
オルステッドという存在との関係まで、
老デウスの未来とは違う方向へ進める余地が生まれる。

第1期では、
ルーデウスにとってオルステッドは、
突然現れて自分を殺しかけた恐ろしい相手だった。
赤竜の下顎で胸を貫かれ、
一度は完全な敵として刻まれている。
しかし老デウスの日記を得た後は、
ヒトガミこそ警戒すべき存在だと分かる。
過去回で敵に見えた人物の位置まで、
未来の情報によって変わっていく。

ここまで考えると、
老デウスの日記は、
絶望の未来を書いた本から、
現在の人間関係を守るための本へ役割が反転している。
老デウス本人には、
もう使えない情報。
しかし若いルーデウスには、
まだ全部使える。

シルフィは生きている。
ロキシーも生きている。
エリスも生きている。
ザノバ。
ナナホシ。
家族。
仲間。
未来では失った人々が、
現在にはまだ残っている。

だから日記の最後に残るものは、
絶望だけではない。
未来のルーデウスが失敗したから、
現在のルーデウスには、
失敗する前に止まる場所が分かる。
老デウスが何十年もかけて失った人生が、
現在では、
大切な人を失わないための選択へ変わっていく。

ロキシー。
シルフィ。
エリス。
老デウスの日記で三人を失った順番を知ることは、
確かに強烈。
しかし本当に重要なのは、
その順番を現在では繰り返さなくていいこと。
悲惨な未来を記録した日記が、
同じ未来を消すための一冊へ変わったところに、
老デウスが過去へ戻った最大の価値がある。

無職転生Ⅲまとめ

『無職転生Ⅲ』の記事を、第3期の放送範囲・ナナホシと転移事件・ペルギウスと空中城塞・未来ルーデウス・オルステッド・魔導鎧・エリスとの再会・ルーデウスの家族などに分けてまとめています。
ルーデウス、エリス、シルフィ、ロキシー、ナナホシ、ペルギウス、オルステッド、ゼニス、アリエル、クリフ、エリナリーゼなど、気になる人物や物語の謎はこちらから探せます。

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