第9話で草薙素子が裁判から逃亡したのは、ただ有罪判決を恐れて逃げたのではなく、ゴラントル諜報部に狙われた自分を公安9課から切り離し、敵が次に仕掛けてくる場所へ自ら出ていく行動だった。
人質を取り高速ヘリまで要求した派手な逃走には光学迷彩が使われ、原作では荒巻が草薙の考えを察して逃亡の隙を作り、さらに義体を囮として暗殺側を誘い出すところまで計算されている。
草薙は公安9課を裏切ったのではなく、第1話から築いてきた9課を残したまま自分だけが表向き消え、その先で原作の「クロマ」へ続く新しい立場へ進んでいく。
第1章 結論|草薙の裁判逃亡は「罪から逃げた」のではなく、自分を公安9課から切り離す行動だった
人質と高速ヘリまで要求したのは、普通の逃亡ではなく「草薙素子が逃げた」と世間へ見せる必要があった
第9話「BRAIN DRAIN ii」で草薙素子は、
テロリスト殺害の被告として法廷へ立ったあと、
おとなしく判決を待つ道を選ばない。
人質を取り、逃走用の高速ヘリまで要求し、
公安9課の少佐から一転して「逃亡犯」として法廷を飛び出していく。
ここだけ見ると、
草薙が有罪判決を恐れて逃げたようにも見える。
しかし第8話から草薙自身は、
自分が誤ってテロリストのリーダーを射殺したことだけではなく、
その場面を撮影した映像がなぜマスコミへ流れたのかを追っていた。
第9話ではゴラントル諜報部が裏で動いていると見て、
裁判へ送られる前から独自に捜査を続けている。
つまり草薙が確かめたいのは、
「自分が撃ったかどうか」ではない。
誰が公安9課の作戦を把握し、
射殺の瞬間だけを外部から記録し、
世論と政治を動かせる形で公開したのかという事件の外側になる。
法廷で被告席へ座り続けても、
ゴラントル諜報部やその背後へ近づくことはできない。
そこで草薙は、
裁かれる側から自分で降りる。
しかも密かに姿を消すのではなく、
人質を取って高速ヘリまで要求する大騒動へ変える。
これなら報道も捜査側も、
「草薙素子は逃亡した」と確実に認識する。
公安9課から草薙が切り離された状態を、
敵側にも分かるほど大きく見せることができる。
原作「BRAIN DRAIN」でも、
草薙は罠にはめられて殺人罪で裁判へ送られるが、
その先でただ逃げ切るだけの行動は取らない。
自分を狙っている相手が次に何をするのかを読み、
逃亡後まで含めて敵を動かす側へ回っていく。
第9話の派手な逃走劇は、
犯罪者になって追われること自体を次の一手へ使った場面になる。
公安9課を裏切ったのではなく、9課を残したまま「草薙だけが外へ出る」形を作った
もう一つ重要なのは、
草薙が公安9課そのものを敵に回したわけではないことになる。
第1話「PROLOGUE + SUPER SPARTAN i」では、
草薙自身が犯罪を未然に防ぐ特殊部隊の設立を望み、
同じ構想を持っていた荒巻と出会う。
荒巻から捜査を任され、その後バトーたちと公安9課を作り上げてきた。
つまり9課は、
草薙にとって命令されて仕方なく所属していた部署ではない。
自分が必要だと考え、
荒巻と一緒に形にした攻性組織になる。
だから第9話で突然、
仲間を捨てて自分だけ逃げたと見ると不自然さが残る。
むしろ草薙が9課へ残れば、
ゴラントル諜報部から狙われている草薙と、
公安9課全体を切り離せなくなる。
すでに射殺映像が報道され、
国会や世論まで9課へ目を向け始めている以上、
少佐を組織内へ抱え続ければ荒巻やバトーたちまで同じ問題へ巻き込まれる。
そこで草薙自身が逃亡犯となり、
表向き公安9課の外へ出る。
敵から見れば、
守っていた組織から離れた草薙は狙いやすくなる。
一方の9課側も、
「逃げた草薙をかばっている組織」という位置から一度離れられる。
第1話では荒巻と出会って公安9課へ入った草薙が、
第9話では荒巻を残して公安9課から出ていく。
この対になった流れまで見ると、
裁判逃亡は単なる逃亡劇ではなく、
草薙と9課の関係が次の段階へ移る場面として見えてくる。
第2章 草薙はなぜ裁判へ送られた?第7話の人形使いから第8話の誤射まで続いていた異変
第8話の射殺だけが原因ではなく、第7話で人形使いへダイブした直後から草薙自身が変わっていた
草薙が裁判へ送られる直接の発端は、
第8話「INTERMISSION + BRAIN DRAIN i」で起きたテロリスト射殺になる。
公安9課が船上へ突入し、
バトーたちと武装テロリストを制圧していく中、
草薙は本来なら生きたまま確保したいリーダーへ発砲し、
その場で殺してしまった。
普段の草薙を知っているほど、
ここには違和感が残る。
格闘、射撃、電脳戦のどれでも高い能力を持ち、
現場指揮まで任されてきた草薙が、
重要人物を誤って射殺する。
単なる腕の失敗として流せないのは、
一つ前の第7話で人形使いと接触した直後だからになる。
第7話「BYE BYE CLAY」で草薙は、
自らを情報の海で発生した生命体だと語る人形使いへ直接ダイブする。
事件後に目を覚ましてもすべてが元通りになったわけではなく、
第8話では人形使いの気配を時折感じる状態が続いていた。
その不安定さを抱えたまま海上作戦へ入り、
そこで普段なら避けるはずの射殺を起こしている。
しかも人形使い事件では、
公安9課が外務省側のプロジェクト2501へ踏み込み、
公安6課が回収しようとしていた人形使いを巡って正面から衝突した。
草薙はその中心人物として人形使いへ接触している。
第8話の誤射だけを切り出すより、
第7話で外務省側の秘密へ触れた草薙が、
その直後から異変を抱えていたところまで続けて見る必要がある。
射殺の瞬間だけが報道へ流れ、テロ阻止より「草薙が人を殺した」という話へ変えられた
第8話でさらに不自然なのは、
草薙が誤射したことだけではない。
公安9課が船上のテロを制圧している最中、
草薙がリーダーを撃った瞬間が外部から記録され、
その映像が第9話でマスコミへ流出している。
公安9課は、
日高外務大臣暗殺へつながる可能性まであるテロ事件を追っていた。
ところが世間へ先に届いたのは、
9課が何を阻止しようとしていたのかではなく、
「公安の草薙素子がテロリストを射殺した」という映像だった。
事件全体から一場面だけを切り出すことで、
テロ対策の作戦が公安職員による殺人事件へ姿を変えてしまう。
その結果、
問題は現場内部の処分では済まなくなる。
マスコミが動き、
世論が草薙へ向き、
公安9課の活動そのものまで注目され、
草薙は殺人の責任を問われて法廷へ送られる。
そこで草薙自身も、
偶然映像が漏れたとは考えず、
ゴラントル諜報部が裏で糸を引いていると疑って動き始める。
だから第9話の裁判は、
第8話で草薙が撃ったから自動的に始まったわけではない。
誤射という実際の失敗へ、
作戦映像の流出、報道、世論、外国諜報部の工作が重なり、
草薙を公安9課から切り離せるほど大きな事件へ変えられた。
そして草薙は、
その用意された法廷へおとなしく収まらない。
第7話で人形使いへ触れ、
第8話で自分でも考えにくい誤射を起こし、
第9話ではその一発を利用した謀略によって裁かれる側へ回る。
だからこそ最後には、
人質と高速ヘリまで使って「被告席に座る草薙」そのものを捨てることになる。
第3章 荒巻も逃亡を知っていた?法廷で見せた二人の無言の連携
原作では荒巻が草薙の本心を察し、あえて席を外して逃げる隙を作っている
第9話の裁判で気になるのは、
草薙が突然一人で暴走したのか、
それとも荒巻がある程度まで逃亡を読んでいたのかという点になる。
原作「BRAIN DRAIN」ではこの部分がかなり分かりやすく、
荒巻は草薙が法廷に残るつもりがないと察し、
あえてその場を離れて逃げられる隙を作る。
草薙はすでにゴラントル諜報部の関与を疑い、
自分が裁判へ送られたところまで含めて罠だと見ている。
荒巻も第8話の射殺映像が外へ流れた経路を調べ、
単純な現場事故として草薙を処分すれば終わる事件ではないと分かっている。
だから二人は法廷で「今から逃がす」「了解した」と
露骨な相談をするのではなく、互いの判断を読んだまま動く。
ここで第1話の二人を思い出すと、
第9話のやり取りがさらに分かりやすい。
第1話では草薙自身が犯罪を未然に防ぐ特殊部隊を欲しがり、
同じ構想を持っていた荒巻が草薙たちを公安9課へ迎えた。
荒巻が命令し、草薙がただ従う関係ではなく、
最初から同じ目的を別の立場で追う二人だった。
だから第9話でも、
荒巻が全面的に逃亡計画を指示した共犯者と見るより、
草薙なら法廷に閉じ込められたまま終わらないと理解し、
その判断を止めなかったと見る方が近い。
草薙も荒巻へ細部まで説明せず、
自分が9課の外へ出ることで事件を引き受ける。
第9話の逃亡劇が一見「茶番」のように映るのも、
追う側と逃げる側の一部が、
互いの考えを読みながら動いているからでもある。
視聴者には大捕物に見える一方で、
草薙はその騒ぎ自体を敵へ見せる材料として利用している。
第1話では荒巻と一緒に9課を作り、第9話では荒巻を残して草薙だけが外へ出る
第1話から第2話にかけて、
荒巻は予算と権限を確保し、
草薙、バトーたちを中心とする攻性組織を形にしていく。
草薙も公安9課という居場所を与えられたのではなく、
自分が欲しかった組織を荒巻と一緒に作った側だった。
それだけに第9話で草薙が9課から離れる場面は、
単なる上司と部下の別れより重い。
裁判で草薙を守り続ければ、
ゴラントル諜報部に狙われた本人だけでなく、
荒巻やバトーたちまで政治問題の中心へ残る。
一方で草薙が逃亡犯として外へ出れば、
表向きは「9課から逃げた少佐」として切り離せる。
敵側から見ても、組織の保護を離れた草薙は次に狙いやすい標的になる。
第9話で荒巻と草薙が見せる距離感は、
仲違いして公安9課が壊れた場面ではない。
第1話では同じ方向を向いて組織へ入った二人が、
今度は9課を残す荒巻と、外へ出る草薙へ分かれる。
だから放送後に第1話を思わせる構図や二人の無言の信頼へ
反応が集まったのも分かりやすい。
草薙が荒巻を裏切ったのなら、
逃亡後に9課そのものを敵へ回す必要がある。
しかし実際には逆で、
草薙は自分だけを表へ出し、
荒巻たちは9課へ残す形を選んでいる。
裁判からの逃亡は、
二人の信頼が切れた場面ではない。
言葉にしなくても互いの次の手を読める関係が、
公安9課を離れる瞬間まで残っていた場面でもある。
第4章 人質と高速ヘリは何のため?光学迷彩まで使った派手な逃走劇
造顔作家を人質に取り、武装した高速ヘリと燃料まで要求して「草薙がここにいる」と見せた
法廷を抜けた草薙は、
そのまま静かに地下へ潜るような逃げ方をしない。
造顔作家を人質に取り、
高速ヘリだけでなく燃料や装備まで要求し、
警察と公安側が大規模に包囲せざるを得ない状況を作る。
逃げ切るだけなら目立たない方が有利なのに、
草薙はむしろ自分の居場所を大きく見せている。
人質の周囲には簡単に近づけない仕掛けまで置かれ、
捜査側は草薙がすぐそばで監視していると考える。
ところが人質は拘束を解いて動き始め、
危険な場所を抜けて救出側へ近づいていく。
その瞬間も「草薙は人質を残して逃げた」と見えるが、
実際には光学迷彩を使った草薙が人質と一緒に移動している。
第1話から草薙が何度も使ってきた光学迷彩は、
第9話では単に姿を消す装備ではない。
敵にも捜査側にも「見えている草薙」と
「本当はそこにいる草薙」を分けるために使われる。
分かりやすい場所へ姿を置けば、
草薙を消したい勢力もそこへ手を出してくる。
逃亡劇そのものが、次の攻撃を誘う舞台になっている。
荒巻自身も現場へ出て包囲側へ立つため、
外から見れば課長が逃亡した部下を追っている構図になる。
ここでも公安9課が草薙を公然とかばう形を避けながら、
草薙側は自分を狙う相手が動きやすい状況を作っている。
派手な大捕物そのものが、
草薙と9課が離れたことを世間へ示す材料になっている。
草薙は逃げ切ることより、敵に「殺せる」と思わせるところまで計算していた
原作ではこのあと、
草薙を消したいイスラエル側の工作員が動き、
狙撃側へ電脳工作を仕掛けて草薙を撃たせる。
普通なら逃亡計画の失敗に見えるが、
草薙は自分が口封じの標的になることまで読んでいた。
敵が欲しいのは逮捕された草薙ではなく、
公安6課や外国諜報部へつながる情報を持った草薙の死だからになる。
そこで重要になるのが、
全身義体という草薙の身体になる。
狙われる義体と、
草薙本人の脳殻を同じ場所へ置いておく必要はない。
敵には「草薙を仕留めた」と思わせながら、
本物の草薙はバトーの助けを受けて別の経路へ抜けられる。
人質、高速ヘリ、光学迷彩まで使った大騒動は、
最後に暗殺側を動かすところまで含めた仕掛けだった。
敵が草薙を追い、
「今なら公安9課から離れている」
「ここで消せる」と考えて初めて、
隠れていた相手が自分から手を出してくる。
だから第9話の逃走を、
「少佐なら普通に逃げられるのに、なぜこんなに派手なのか」
と感じたなら、その違和感はかなり大事になる。
草薙は追跡を振り切るだけなら、
光学迷彩や電脳技術を使って
もっと静かに姿を消す手段を持っている。
それでも人質を取り、
高速ヘリまで要求し、
公安と警察を集める大事件へした。
わざと大きく動いたからこそ、
世間にも敵にも
「公安9課を離れた逃亡中の草薙素子」
という姿をはっきり見せられた。
第1話では光学迷彩を使って任務現場から姿を消した草薙が、
第9話では同じ装備を使いながら、
自分を狙う相手まで表へ引っ張り出す。
人質も高速ヘリも単なる派手な逃走道具ではなく、
草薙が公安9課の外へ出たことを見せ、
次に自分を殺そうとする者へ一手打たせるための逃走劇へつながっている。
第5章 草薙は本当に公安9課を辞める?仲間を裏切って逃げたわけではない
第9話で9課を離れたのは、荒巻やバトーまで自分の事件へ巻き込ませないためだった
第9話で草薙が法廷から逃げ、
公安9課の外へ出たことで、
「少佐は本当に9課を辞めるのか」
という疑問が一気に強くなる。
人質まで取り、高速ヘリを要求し、
世間から見れば完全に公安の逃亡犯になったからだ。
ただ、第1話からの草薙を見ると、
公安9課へ愛着がないまま逃げたわけではない。
草薙は荒巻に命令されて仕方なく入った人物ではなく、
犯罪へ先回りして動ける攻性組織を自分自身も求め、
荒巻と考えを共有したうえで9課の中心へ入っている。
バトー、トグサ、イシカワたちと現場を重ね、
自分で作った居場所に近い組織だった。
第1話では荒巻が予算と権限を確保し、
草薙たちをまとめて公安9課を形にしていく。
草薙もそこで与えられた仕事だけをこなすのではなく、
現場判断を任され、
荒巻からも「少佐」として大きな裁量を与えられていく。
だから第9話で突然9課を捨てたと考えるより、
自分を9課から切り離す必要が生まれたと見る方が自然になる。
第8話のテロリスト射殺映像が流れた時点で、
世論の矛先は草薙一人だけではなく公安9課へ向かい始めている。
秘密性の高い公安組織が、
「現場で人間を殺した部隊」として報道へ乗れば、
荒巻の指揮責任や9課の権限そのものまで問題にされる。
草薙を守ろうとすればするほど、
公安9課全体が政治問題へ引きずり出される状態だった。
さらに草薙自身は、
ゴラントル諜報部が裏で糸を引いていると見ている。
もし狙いが草薙だけではなく、
人形使い事件で外務省側へ踏み込んだ公安9課そのものなら、
組織内へ残り続けることは敵へ9課全体を攻撃する口実まで与える。
そこで草薙が逃亡犯となり、
表向き「公安9課から離れた人物」になる価値が出てくる。
敵側から見ても、
荒巻やバトーたちに囲まれた少佐より、
法廷から逃げて孤立した草薙の方が狙いやすい。
警察にも追われ、
組織の保護も失ったように見える。
つまり草薙自身が9課の外へ出ることで、
敵が直接手を出したくなる条件まで作っている。
これは単なる自己犠牲とも少し違う。
草薙は自分を危険な場所へ置きながら、
同時に誰が自分を消しに来るのかを見る側にも回っている。
公安9課を守ることと、
敵を表へ引きずり出すことを、
逃亡という一つの行動で同時に進めている。
バトーとのつながりまで切ったわけではなく、原作では逃亡後も助けを受けている
草薙が公安9課を完全に敵へ回したのなら、
逃亡後はバトーたちとも接触できないはずになる。
ところが原作では、
草薙が敵から暗殺を狙われる段階になると、
バトーが脳殻を別ルートへ運ぶ形で助けている。
ここを見ると「9課を裏切って一人で逃げた」という図ではない。
特に草薙は全身義体で、
身体そのものと脳殻を分けて考えられる。
敵から見える草薙の義体を囮として残し、
本物の脳殻はバトーと別の場所へ移す。
この作戦が成立するのは、
少なくとも草薙とバトーの信頼関係が切れていないからになる。
第1話からバトーは、
草薙の無茶な判断へ文句を言いながらも、
現場では最終的に彼女を支える側へ回ってきた。
草薙もバトーなら自分の判断を理解し、
必要な場面では命令以上の動きをしてくれると知っている。
表面ではぶつかっていても、
実戦では背中を預けられる関係が続いてきた。
第7話の人形使い事件でも、
草薙が危険なダイブへ踏み込んだ時、
最も近い位置にいたのがバトーになる。
人形使いとの接触後、
草薙自身が以前と同じ状態なのか分からなくなっても、
バトーは完全に距離を置くことはしない。
第9話以降の逃亡でも、
その関係が切れずに残っている。
ここが「公安9課を辞める」という言葉だけでは見えにくいところになる。
草薙が手放すのは、
公安9課の少佐という肩書き。
国家組織に所属し、
荒巻の下で正式に動く立場。
それでも荒巻やバトーとの信頼、
9課で積み上げた人間関係まで同時に捨てるわけではない。
だから第9話の逃亡は、
仲間と決別して一人になった場面ではなく、
表向きの所属だけを切り離した場面に近い。
敵には「9課を離れた草薙」を見せ、
本当に必要なところではバトーと連携して生き残る。
草薙らしい二重構造が、
逃亡後にもそのまま続いている。
第6章 原作では逃亡の先で何が起きる?草薙の義体そのものが暗殺者への囮になる
敵は「公安9課から離れた今なら殺せる」と考え、草薙の義体を狙って動き出す
法廷から逃げた草薙にとって、
逃亡できた時点が終わりではない。
むしろここから、
自分を狙っていた側がどう動くかを確かめる段階へ入る。
公安9課の保護を離れ、
世間からも逃亡犯として扱われれば、
敵は「今なら消せる」と判断しやすくなる。
原作では実際に、
草薙を口封じしようとする暗殺側が動く。
狙う側から見れば、
草薙は人形使い事件で公安6課の秘密へ深く触れ、
さらに自分が罠にはめられたことまで調べ始めている。
裁判で有罪にするだけでは、
裏側まで知った本人が生き残る。
そこで最後は、
草薙そのものを消す方へ進む。
裁判で活動を止める。
世論で公安9課から切り離す。
それでもなお草薙が動くなら、
次は本人を物理的に消す。
敵側の手段が一段ずつ強くなる形になる。
草薙もそこまで読んでいるからこそ、
逃亡後にただ身を隠し続けるのではなく、
敵が狙いやすい「草薙素子」を残す。
ここで全身義体という彼女の身体が、
他の逃亡者にはできない使われ方をする。
敵が目で確認している草薙の身体と、
本当に守るべき脳殻を別々に扱えるからだ。
第7話の人形使いとの接触でも、
草薙は自分の義体と意識の境界へ深く踏み込んでいる。
人形使いから突きつけられたのは、
身体が自分なのか、
記憶が自分なのか、
電脳の中へ存在する意識まで含めて何を本人と呼ぶのかという問題だった。
その直後の第9話以降では、
同じ問いが今度は逃亡の実務へ変わる。
敵が撃つ「草薙素子」は義体なのか。
脳殻が別の場所で生きていれば、
草薙は死んだことになるのか。
全身義体だからこそ、
自分の身体そのものを偽情報として敵へ見せられる。
バトーが脳殻を逃がし、敵には「草薙素子を消した」と思わせるところまでが作戦になる
原作でさらに面白いのは、
敵が草薙を狙撃したことで、
一見すると暗殺が成功したように見えるところになる。
狙撃側は、
そこにいる草薙を仕留めたと判断する。
しかし本当に守るべき草薙の脳殻は、
すでにバトーの助けで別の経路へ移されている。
つまり草薙は、
敵が自分へ銃を向けることまで利用している。
相手が「草薙を殺した」と信じれば、
それ以上追跡する必要はない。
公安9課の少佐も、
法廷から逃げた被告も、
敵が消したかった危険人物も、
一度まとめて死んだことにできる。
ここで人質と高速ヘリを使った第9話の逃亡が効いてくる。
世間へ大きく逃亡を見せ、
公安9課から離れたことを示し、
敵には草薙が孤立していると思わせる。
その先で暗殺まで成功したように見せれば、
草薙を追う側にとって物語はそこで終わる。
しかし実際の草薙は終わっていない。
脳殻は別の場所へ移り、
バトーとの連絡も残り、
公安9課という肩書きだけが消える。
敵が知っている「草薙素子」と、
実際に生き続ける草薙が別々になる。
第9話だけを見ると、
人質と高速ヘリの要求が大げさに感じられる。
光学迷彩を持ち、
電脳戦にも強い草薙なら、
人目につかず静かに消える方が簡単そうに見えるからだ。
だが原作の先まで追うと、
静かに消えるだけでは足りなかったことが分かる。
敵に追わせる必要がある。
公安9課から離れたと信じさせる必要がある。
さらに「今なら草薙を殺せる」と思わせ、
実際に暗殺へ動かせる必要まである。
だから逃亡劇は派手であるほど、
敵へ渡す情報として使いやすかった。
しかも最後には、
全身義体という草薙自身の特徴まで利用する。
身体を囮にして脳殻を逃がし、
敵には暗殺成功を見せる。
第1話から草薙が得意としてきた、
「相手が見ている情報そのものを利用する」戦い方が、
最後には自分の身体へまで向けられる。
表では逃亡犯。
敵から見れば暗殺対象。
公安9課からは離脱した少佐。
しかし実際には、
バトーの助けを受けて生き残っている。
草薙の裁判逃亡は、
ただ追っ手を振り切るための行動ではない。
自分を追う者へ偽物の結末まで見せ、
公安9課の外で再び動ける状態を作るところまで続いている。
第7章 草薙はその後どうなる?公安9課の外へ出た少佐と「クロマ」への流れ
第9話の逃亡は終着点ではなく、「公安9課の草薙素子」から一度消えるための入口になる
第9話で草薙が法廷から逃げたあと、
物語は「逃亡に成功したか」で終わらない。
原作ではその先で義体を囮にし、
敵へ「草薙素子を消した」と思わせるところまで進む。
公安9課の少佐として表へ戻るより、
一度社会から姿を消すこと自体が次の段階になる。
ここまで来ると、
第1話から積み重ねてきた草薙の立場が大きく変わる。
第1話では荒巻と出会い、
犯罪へ先回りする攻性組織を作る側へ入り、
バトーやトグサたちと公安9課を動かしてきた。
第9話では逆に、その肩書きを自分から外す方向へ進んでいる。
ただし草薙自身が、
公安9課の考え方まで捨てたわけではない。
組織の外へ出ても、
相手の電脳へ潜り、
情報を集め、
危険な計画を見つければ自分から踏み込む。
9課で培った攻性の姿勢は残したまま、
今度は国家組織の肩書きなしで動く人物になっていく。
原作のその後では、
草薙は「クロマ」という別名を使いながら活動する。
公安9課を離れたあとも、
電脳空間や義体を使って事件へ関わり続け、
完全に引退して平穏な生活へ入るわけではない。
第9話の逃亡は、
草薙が活動をやめる場面ではなく、
活動する場所と立場を変える場面になる。
しかも「クロマ」という別名は、
単に警察から隠れるための偽名だけではない。
公安9課の少佐として知られた草薙素子が一度消え、
別の身分、別の義体、別の立場で電脳社会へ入り直す。
敵から見える名前と、
実際に動いている本人を切り離すという点でも、
第9話の逃亡と同じ発想が続いている。
第7話の人形使い、第8話の誤射、第9話の逃亡まで続けて見ると、草薙自身の居場所が変わっていく
この流れは、
第9話だけを見ても少し分かりにくい。
大きな変化の始まりは、
第7話「BYE BYE CLAY」で人形使いへ直接ダイブしたところにある。
自分とは何か、
義体と意識の境界はどこにあるのかという問題へ、
草薙自身がそれまで以上に深く触れることになる。
第8話では、
人形使いとの接触後も気配が残り、
普段なら避けるはずのテロリスト射殺まで起こす。
第9話ではその誤射を外国諜報部へ利用され、
裁判へ送られ、
最後には公安9課という居場所から自分で外へ出る。
三話続けて見ると、
草薙の立場だけでなく本人そのものが少しずつ揺れている。
さらに第1話へ戻ると、
変化の幅がもっと分かりやすい。
最初の草薙は、
自分の能力を最大限使える場所として公安9課を必要としていた。
荒巻という指揮官がいて、
バトーたち仲間がいて、
国家権力を使って危険へ先に踏み込める。
その組織こそ草薙が望んだ場所だった。
ところが人形使いへ触れたあと、
草薙自身の世界は公安9課だけでは収まらなくなる。
身体が全身義体でも自分は自分なのか。
電脳の中で生まれた存在と自分は何が違うのか。
国家組織に所属する少佐という肩書きも、
草薙素子を構成する一部分にすぎないと見えてくる。
だから第9話の逃亡を、
「裁判から逃げた大胆な少佐」で終わらせると少しもったいない。
草薙は第1話から公安9課の中心として生きてきたが、
人形使いとの接触を境に、
その肩書きだけでは収まらない人物へ変わり始めている。
逃亡はその変化を外側から決定的にする出来事になる。
荒巻との関係も、
バトーとの関係も完全には切れない。
それでも表向きは公安9課から離れ、
敵には死んだと思わせ、
別名で活動できる場所へ移っていく。
「公安9課の草薙素子」という一つの身分を捨てても、
草薙本人の能力や判断まで消えるわけではない。
第1話では公安9課へ入る側だった。
第7話では人形使いと接触し、
第8話では自分の判断へ異変が出て、
第9話では裁判と逃亡を通して組織の外へ出る。
そしてその先ではクロマという別の顔まで持つ。
人質を取り、
高速ヘリを要求し、
光学迷彩を使い、
最後には義体まで囮にする。
ここまで大きな騒ぎを起こして草薙が手に入れたのは、
単なる逃走時間ではない。
公安9課の少佐でも、
裁判の被告でも、
敵が追い続ける草薙素子でもない状態へ移るための余白だった。
だから草薙の裁判逃亡は、
公安9課を裏切った場面でも、
犯罪者になって逃げただけの場面でもない。
公安9課の少佐という立場を一度消し、
敵から見える草薙素子まで消したうえで、
別の名前、別の場所から動き続けるための分岐点になる。
第9話の逃走劇を原作のその後まで追うと、
人質、高速ヘリ、荒巻との別れ、バトーの協力が、
すべて「草薙素子を一度消す」という一本の流れへつながっていく。



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