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【クレバテスⅡ】クレンはなぜ神学校の生徒まで襲う?尖兵を放った目的とトアの書を巡る対立

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『クレバテスⅡ』でクレンがソルセインに尖兵を放ったのは、神学校の生徒を無差別に殺すこと自体が目的だったわけではない。
第5幕ではローメインとヴォーデインがトアの書を狙い、才能ある生徒たちを動かしてクレンへ仕掛けており、第8幕の尖兵もその対立が激化した先にある。
つまりクレンは「教師なのに突然敵になった」のではなく、ルナを守るため人間社会へ入った魔獣王が、勇者伝承とトアの書を巡る別の魔獣王の企みに対して、自分の力で反撃へ出たと見ると一連の行動がつながる。

  1. 第1章 結論|クレンの狙いは生徒を殺すことではなく、トアの書を奪おうとする側を止めること
    1. 第8幕だけを見ると「教師だったクレンが生徒を襲った」ように見える
    2. 第5幕から見ると、先に生徒を戦力へ変えたのはローメインとヴォーデイン側だった
  2. 第2章 クレンはそもそも何のためにソルセインへ来たのか
    1. 第1幕ではルナの教師になるために入り、第2幕では学校の内側まで探り始めている
    2. クレンは最初から人間社会の常識より、ルナと自分の目的を優先してきた
  3. 第3章 第5幕で先に仕掛けたのはローメインとヴォーデイン側だった
    1. トアの書を狙う動きが、生徒まで巻き込む争いへ変わっていく
    2. 巨大な影の塔を作った時点で、クレンは学校の秩序より相手との決着を優先していた
  4. 第4章 クレンはなぜ眷属魔獣を生徒へ向けたのか
    1. 生徒たちはヴォーデインの「紋」を使い、すでに戦う側へ組み込まれていた
    2. 「相手が生徒だから手を出さない」という発想をクレンは最優先にしていない
  5. 第5章 第8幕でナイエと尖兵が激突|同じ神学校にいたクレンと教師が敵味方に分かれた
    1. ナイエから見れば、クレンの事情より目の前の生徒を守ることが先になる
    2. ナイエを追い詰めても尖兵が止まらないところに、クレン側の徹底した戦い方が見える
  6. 第6章 クレンは人間の味方なのか敵なのか|基準は最初からルナと自分の目的にある
    1. 第1期からクレンは「人間を守る英雄」になったわけではない
    2. ルナを守るためなら人間社会へ入るが、学校を守るために魔獣王である自分を捨てるわけではない
  7. 第7章 ソルセインへの攻撃は、クレンとヴォーデインの対立が表面化した場面だった
    1. 第8幕で見えているのは「クレン対生徒」ではなく、二体の魔獣王の争いに学校が巻き込まれた構図
    2. クレンの目的を見ると、これからヴォーデインとの直接対決へ向かう流れまでつながってくる

第1章 結論|クレンの狙いは生徒を殺すことではなく、トアの書を奪おうとする側を止めること

第8幕だけを見ると「教師だったクレンが生徒を襲った」ように見える

『クレバテスⅡ』第8幕「友の記憶」では、
ナイエが生徒たちを守りながら、
クレンの放った尖兵と戦う。
ここだけを見ると、かなり奇妙な状況に見える。

クレンは第2期で、
神学校ソルセインへ入り込んだ人物である。
しかも表向きには、
ルナ専属の魔術教師という立場まで得ている。
学校を襲う敵として登場した人物ではなかった。

それなのに第8幕では、
そのクレンが放った尖兵が学校内を動き、
教師のナイエが生徒を守るために戦っている。
教師として入ったクレンと、
教師として生徒を守るナイエが対立する形になった。

このため、
「クレンは人間側を裏切ったのか」
「神学校の生徒まで殺すつもりなのか」
「最初から学校を利用するつもりだったのか」
という疑問が出てくる。

ただ第5幕まで戻ると、
クレンが突然生徒を敵視したわけではないことが分かる。
争いの中心にあるのは、
クレンが持つトアの書と、
その力を狙うローメインたちの動きである。

学長ローメインの背後には、
北の魔獣王ヴォーデインがいる。
彼らは勇者伝承を復活させるため、
クレンの持つトアの書を必要としていた。
そのため学校そのものが争奪戦の舞台へ変わっていく。

クレンもそれを察知し、
第5幕では巨大な影の塔を出現させる。
そしてトアの書を欲しがる者へ、
奪えるものなら奪ってみろと言わんばかりに
正面から挑発する行動へ出た。

一方のローメインも、
一般の生徒たちをそのまま巻き込むのではなく、
まず多くの生徒を眠らせる。
そのうえで残った才能ある生徒たちへ、
トアの書を奪うよう命じていく。

つまりこの時点で、
神学校の生徒は単なる傍観者ではなくなっている。
ヴォーデインやローメインの計画によって、
クレンからトアの書を奪うための戦力として
実際に動かされる側へ入ってしまった。

クレンから見れば、
目の前にいるのが学生だから戦わない、
という状況ではなくなっている。
自分の持つトアの書を奪うため、
相手側の力として向かってくる以上、
何らかの対抗手段を出す必要がある。

そこで投入されるのが、
クレンの眷属魔獣や尖兵である。
第8幕でナイエが相手にしている存在も、
こうした対立が激しくなった先に出てきている。

だから、
クレンの目的を
「神学校の生徒を皆殺しにすること」と見ると、
それまでの流れと噛み合わない。

クレンが守ろうとしているのは、
学校そのものでもなければ、
ソルセインにいる全生徒の安全でもない。
自分の目的に必要なものを守り、
ヴォーデイン側の企みを通さないことが優先されている。

ここが人間側とクレンの大きな違いでもある。
ナイエから見れば、
どんな事情があろうと生徒は守るべき存在である。
教師である以上、
尖兵が生徒へ迫れば自分が前に立つ。

しかしクレンは、
人間社会の教師という肩書きを持っていても、
根本では魔獣王クレバテスである。
人間の学校の規則や、
教師としての倫理だけで行動しているわけではない。

そのため第8幕では、
同じ学校にいた二人が
正反対の立場へ分かれる。
ナイエは生徒を守るために戦い、
クレン側の尖兵は目的遂行のために前へ進む。

この衝突を見ると、
クレンが「敵になった」というより、
これまで隠れていた価値観の違いが
表面へ出てきたと考えた方が分かりやすい。

第5幕から見ると、先に生徒を戦力へ変えたのはローメインとヴォーデイン側だった

第8幕の戦闘だけを見ると、
最初にクレンが学校へ攻撃を仕掛けたように感じやすい。
だがソルセイン編の流れを追うと、
その前から学校内部では別の争いが動いている。

特に大きいのが、
勇者伝承を巡るローメインとヴォーデインの計画である。
彼らが必要としているのが、
クレンの手元にあるトアの書だった。

クレンは、
相手が自分の持つものを狙っていることを知る。
そして第5幕では、
身を隠して逃げ回るのではなく、
自ら巨大な影の塔を作って相手を誘い込む。

これはかなりクレンらしい行動でもある。
相手が何を企んでいるか分かったうえで、
自分の方から戦場を作り、
来るなら来いという形へ持っていく。

ところがローメイン側も、
自分だけでトアの書を奪いに行くわけではない。
学校にいる若い生徒たちの力を利用する。
ここで神学校そのものが、
大人たちの争いへ巻き込まれていく。

さらに生徒側には、
通常とは違う力まで関わってくる。
ヴォーデインの存在と結び付く「紋」の力によって、
若い生徒たちは本来以上の力を発揮し、
クレン側の眷属魔獣と戦う状態へ入っていく。

その力は、
単なる授業の成果とは違う。
神学校で魔術を学んでいた生徒が、
突然、本物の戦闘へ投入される。
しかも自分たちの身体へ負担を掛ける危険まで伴っている。

ここまで来ると、
クレンから見た相手は
「何も知らない一般生徒」だけではない。
ヴォーデイン側の力を使い、
トアの書へ迫ってくる戦闘要員としても存在している。

もちろん、
人間側から見れば話は別である。
本人たちが大きな企みの全貌を知らず、
大人や魔獣王の思惑に利用されているなら、
本来は守られるべき若者でもある。

この温度差が、
第8幕でナイエとクレン側がぶつかる原因になる。
ナイエには、
生徒が利用されているからこそ守る責任がある。
クレンには、
相手が誰であれ自分を妨害する戦力なら排除する発想がある。

だからクレンの行動は、
人間の教師として見れば冷酷である。
だが魔獣王クレバテスとして見れば、
以前からそれほど変わっていない。

クレンは、
人間すべてを守るために行動しているわけではない。
自分にとって重要なものが何かを見極め、
そこを守るためなら、
人間社会の都合を無視することもある。

第8幕で尖兵が学校へ入り込んだことは、
その性質が再びはっきり出た場面である。
教師としてソルセインにいるからといって、
クレンが完全に人間側へ変わったわけではなかった。

そしてこの点を理解すると、
「クレンは敵なのか」という問いにも
単純な答えを出しにくくなる。
人間全体の味方ではないが、
人間を無差別に滅ぼしたいだけでもない。

ルナに関わるもの。
トアの書。
ヴォーデインの企み。
勇者伝承。
クレンは自分の目的に沿って、それらの優先順位を決めて動いている。

第8幕で生徒まで巻き込まれたのは、
クレンが突然残虐になったからではない。
ソルセインという学校自体が、
すでに魔獣王同士の思惑がぶつかる場所へ
変わってしまっていたからなのである。

第2章 クレンはそもそも何のためにソルセインへ来たのか

第1幕ではルナの教師になるために入り、第2幕では学校の内側まで探り始めている

クレンがなぜ生徒と戦う側へ回ったのかを見るには、
そもそも彼がソルセインへ来た経緯まで戻る必要がある。
クレンは最初から、
普通の教師として安定した生活を送るために学校へ来たわけではない。

前シーズンからクレンの行動を変え続けているのが、
赤子のルナである。
当初のクレバテスは、
人間という種族そのものを
高い場所から見下ろすような存在だった。

十三人の勇者が自分を討ちに来ても、
圧倒的な力で返り討ちにする。
人間の武器も魔術も、
魔獣王にとって決定的な脅威にはならない。
その力の差は物語の最初から明確だった。

ところがルナを預かったことで、
クレバテスの行動は少しずつ変わっていく。
人間を理解する必要が生まれ、
アリシアを蘇らせ、
ルナを育てるために人間社会へ関わるようになる。

ルナが将来、
ハイデン王国で生きていくことを考えれば、
国そのものが滅びたり、
別の勢力に支配されたりすることも困る。
クレンは人間への愛情だけで動くのではなく、
ルナの未来を成立させるために周囲へ手を出していく。

第2期第1幕でも、
その流れが続いている。
クレンはトアラたちと合流し、
ルナの今後について話が進む。
そこでクレンが担うことになるのが、ルナの魔術教育だった。

クレンは、
ルナ専属の魔術教師となる。
ただしルナはまだ幼く、
実際に教育を始めるのは三歳頃からとされる。
すぐに教師として授業が始まるわけではない。

そこで生まれるのが、
それまでの約二年間という時間である。
クレンはアリシアと共に
神学校ソルセインへ入ることになる。
ここから第2期の学園編が本格的に始まる。

表向きだけなら、
将来ルナへ魔術を教えるために
教師側の立場で学校にいるようにも見える。
しかしソルセインには、
それだけでは済まない秘密がある。

第2幕では、
アリシアも「アリッサ」として生徒側へ入り、
魔術実習へ参加している。
レイやメリーメリー、
アンドリューら学生たちとの関係も生まれていく。

一方でクレンは、
ただ授業を眺めているだけではない。
学校に眠る勇者伝承や、
トアの書へつながるもの、
ソルセイン内部に潜む思惑へ近づいていく。

つまり第1幕の時点から、
クレンにとってソルセインは
「教師として働く職場」だけではない。
ルナの未来と、自分が抱えている問題が交差する場所になっている。

この前提があるから、
第8幕で尖兵を出した時にも、
「教師なのになぜ」という疑問だけでは足りなくなる。
教師はクレンの一つの立場であって、
クレンという存在のすべてではない。

クレンは最初から人間社会の常識より、ルナと自分の目的を優先してきた

クレンの行動を理解しにくくするのは、
人間の側から見れば
味方のように見える場面が増えてきたことにもある。

前シーズンでは、
アリシアと共に旅をし、
ルナを守り、
ハイデンの情勢にも関わっていく。
そのため徐々に、
人間側の仲間になったような印象が強くなる。

だがクレン自身は、
人間国家へ忠誠を誓ったわけではない。
ソルセインへ来たからといって、
神学校を守る使命を与えられたわけでもない。
根本にある基準は別のところにある。

最も分かりやすいのがルナである。
クレンが人間社会へ深く関わるようになったのも、
ルナを預かったことが大きい。
人間の赤子を育てるため、人間を観察し始めた。

アリシアをそばに置いていることも、
人間という存在を理解する助けになっている。
人間の身体、
感情、
社会、
国家の仕組みまで、
クレンは必要に応じて知ろうとしていく。

だが、
人間を知ることと、
人間の価値観へ完全に従うことは別である。
クレンは今でも、
必要なら自分の圧倒的な力を使う。

第2期のソルセインでも同じである。
教師という肩書きがあっても、
学校側が自分の持つトアの書を狙えば、
大人しく差し出す人物ではない。

第5幕で影の塔を作った行動は、
その性格をよく示している。
隠れてやり過ごすのではなく、
敵が欲しがっているものをあえて見せ、
奪えるなら来いという場所を作る。

これは教師ナイエの発想とは大きく違う。
ナイエなら、
まず生徒の安全を考える。
学校で戦闘が起きないようにすることが
教師として重要になる。

クレンの場合は、
自分へ仕掛けてくる相手がいるなら、
戦う場所を自分で作ることさえ選ぶ。
その結果として学校の生徒が関わることになっても、
人間社会の常識だけで行動を止めるわけではない。

ここに、
第8幕の尖兵へ続くものがある。
クレンは教師だったのに突然敵になったのではない。
教師として生活している間も、
魔獣王としての判断基準は残り続けていた。

一方で、
クレンが人間を完全に無価値だと思い続けているわけでもない。
ルナとの生活や、
アリシアとの旅を通じて、
以前とは違う行動も見せるようになっている。

だからこそ面白い。
人間の味方へ完全に変わったわけでもない。
かといって、
最初の頃と同じように
人間などどうでもいいと切り捨てるだけでもない。

第8幕で生徒とクレン側が衝突するのは、
その中間にいる現在のクレンが見える場面でもある。
自分にとって重要な目的が脅かされれば、
人間と再び敵対することもある。

そしてその争いの中心には、
トアの書と勇者伝承、
さらにヴォーデインの存在がある。
ソルセインへ来た時には教師だったクレンが、
学校の内部へ潜む大きな企みを知ることで、
少しずつ戦う側へ引き戻されていく。

第1幕ではルナの教師。
第2幕ではソルセインの内部へ入る。
第5幕ではトアの書を巡ってローメイン側と対立。
そして第8幕では、クレンの尖兵とナイエが直接ぶつかる。

この流れまで追うと、
第8幕だけでクレンが豹変したわけではないことが分かる。
ソルセインへ入り込んだ時から続いていた対立が、
ついに生徒のいる場所まで噴き出したのである。

第3章 第5幕で先に仕掛けたのはローメインとヴォーデイン側だった

トアの書を狙う動きが、生徒まで巻き込む争いへ変わっていく

第5幕まで進むと、
ソルセインで起きている争いは、
クレン一人が学校を荒らしている話ではないことが見えてくる。
その中心にあるのが、クレンの持つトアの書だった。

学長ローメインの背後には、
北の魔獣王ヴォーデインがいる。
二人が進めようとしているのは、
勇者伝承を再び動かすための企みである。
そのためにトアの書が必要になっていた。

クレンも当然、
自分の持つ書が狙われていることを察している。
そこで選んだのが、
逃げ回って隠す方法ではなかった。
巨大な影の塔を出現させ、相手を正面から誘い込む。

欲しいなら奪いに来ればいい。
そう言わんばかりの態度で、
クレンは自分から戦いの場所を作る。
この時点ですでに、
学校の日常は大きく崩れ始めている。

一方のローメインも、
自分だけでクレンへ向かうわけではない。
一般の生徒たちを眠らせ、
残された才能ある生徒を利用し、
トアの書を奪う側へ回していく。

ここが非常に重要である。
第8幕だけを見ると、
クレンの尖兵が生徒へ襲いかかっているように見える。
だがその前段階では、
生徒たち自身が大人の企みに組み込まれている。

神学校で学ぶ若者だった者たちが、
突然、魔獣王同士の思惑へ巻き込まれる。
授業で使っていた魔術とは違い、
相手を倒し、
目的の品を奪うための力を求められる。

さらに、
生徒たちが使う「紋」の力も危険である。
本来の限界を越えるような力を引き出し、
ヴォーデインの影響を受けながら戦う。
若い身体へ大きな負担が掛かる戦いでもある。

クレンからすれば、
目の前にいるのは単なる学生ではなくなっている。
自分のトアの書を奪うため、
ヴォーデイン側の力を使い、
実際に向かってくる戦力になっている。

もちろん、
生徒本人たちがすべてを理解しているとは限らない。
むしろ大きな計画の中で、
利用されている側と見る方が自然な者もいる。
そこが人間側から見た時の苦しさになる。

ナイエのような教師からすれば、
生徒が敵の力を使っているからといって、
簡単に切り捨てることはできない。
利用されているなら、
なおさら守らなければならない相手である。

しかしクレンは、
その判断を人間の教師と同じようにはしない。
誰に操られているのかより、
今こちらへ向かってくる脅威なのかを優先する。
そこに魔獣王としての冷たさが残っている。

第5幕は、
この価値観の違いが生徒を挟んで現れ始めた回でもある。
ローメインとヴォーデインは生徒を戦力へ変え、
クレンはその戦力へ対抗する。
結果として、学校の若者が最も危険な場所へ置かれてしまう。

だからクレンだけを見て、
「なぜ生徒を襲ったのか」と考えると、
半分しか見えない。
先に学校そのものを戦場へ変えた側がいて、
その対抗手段としてクレンも力を出しているのである。

巨大な影の塔を作った時点で、クレンは学校の秩序より相手との決着を優先していた

クレンの行動で印象的なのが、
第5幕で作り出した巨大な影の塔である。
普通の教師なら、
学校の中で戦闘が起きないように動く。
生徒の安全を最優先するのが自然だろう。

だがクレンは違う。
自分の持つトアの書を狙う相手がいると分かると、
むしろ相手を誘い込み、
自分の有利な場所で迎え撃とうとする。

これは、
クレンがソルセインの一員になったわけではないことをよく示している。
教師という肩書きは持っている。
しかし学校の平穏を守ることが、
彼の最優先事項ではない。

クレンの中で大きいのは、
自分の目的とルナに関わる未来である。
そして、
その未来を脅かすものや、
自分が重要と考えるものを奪おうとする相手には容赦しない。

トアの書も、
単なる学校の教材ではない。
勇者伝承や、
魔獣王同士の思惑へまでつながる重要な品である。
だからクレンも簡単には渡さない。

ローメイン側が生徒を動かしたことで、
対立はさらに複雑になる。
クレンが本気で反撃すれば、
相手の側に立たされた生徒も危険になる。
しかし相手が生徒だからと力を引けば、トアの書を奪われかねない。

クレンはここで、
人間社会の感情より、
自分の基準を優先する。
生徒だから守る。
教師だから学校を守る。
そうした役割に自分を縛らない。

これは第1期から変わっていない部分でもある。
クレンは人間の常識に合わせるために生きている存在ではない。
必要だから人間社会へ入り、
必要だからアリシアをそばに置き、
必要だからハイデンへ関わってきた。

ルナとの関係によって、
以前より人間へ関心を持つようにはなった。
だがそれは、
人間を無条件に守る存在へ変わったことを意味しない。

だから第5幕の影の塔は、
教師クレンから魔獣王クレバテスへ戻った瞬間というより、
最初から残っていた本質が表へ出た場面と見る方が近い。

そしてその本質が、
第8幕の尖兵へ続いていく。
学校の生徒を守ることより、
ヴォーデイン側の動きを止めることを優先する。
そこにナイエとの決定的な違いが生まれるのである。

第4章 クレンはなぜ眷属魔獣を生徒へ向けたのか

生徒たちはヴォーデインの「紋」を使い、すでに戦う側へ組み込まれていた

クレンが眷属魔獣や尖兵を出した場面だけを見ると、
力のない学生へ魔獣王が攻撃しているように見える。
だが実際の戦場では、
生徒側も何もせず逃げているだけではない。

ローメインの指示を受けた者たちは、
トアの書を奪うために動き、
さらにヴォーデインと関係する「紋」の力まで使う。
その力によって、
普段の学生とは違う戦闘力を発揮する。

ここで第2幕の魔術実習を思い出すと、
変化の大きさが分かりやすい。
あの時のメリーメリーやレイ、
アンドリューたちは、
ランプへ火を灯す課題に挑んでいた。

教師の前で魔術を使い、
成功すれば評価され、
失敗しても授業の中でやり直せる。
まだそこには、
神学校らしい安全な枠があった。

ところが第5幕以降では、
同じ若者たちが本物の戦闘へ関わる。
魔術を使う目的も、
課題を成功させるためではない。
トアの書を奪うために敵とぶつかることになる。

しかも「紋」の力は、
本人の通常の能力だけで戦うものではない。
ヴォーデインの影響を受け、
身体の限界を越えるような力を引き出す。
強くなれる代わりに危険も大きい。

クレンから見れば、
その生徒たちは
ヴォーデインの計画を実行する手足にもなっている。
学校の制服を着ているからといって、
戦場では無害な存在とは扱えない。

だから眷属魔獣を投入する。
生徒を狙うこと自体が目的なのではなく、
トアの書へ近づく戦力を押し返すために、
自分の側の駒を出している。

ここには、
クレンらしい徹底した判断がある。
相手の年齢や立場より、
今どちら側に立って動いているかを見る。
感情より、状況を優先している。

ただし、
これが人間側から見れば非常に危険である。
生徒たちはヴォーデインに利用されている可能性が高く、
自分の意思だけで戦争を始めた者とは限らない。

それでもクレンが眷属魔獣を向ければ、
生徒は本当に傷つく。
ナイエにとっては、
そこにどんな事情があっても見過ごせない。

このため、
第8幕ではナイエが生徒を守る側へ立つ。
クレンの目的と、
教師ナイエの責任が正面からぶつかるのである。

「相手が生徒だから手を出さない」という発想をクレンは最優先にしていない

クレンの行動が怖く見えるのは、
人間側なら当然考える一線を、
必ずしも同じようには考えていないからである。

学校には子供や若者がいる。
普通なら、
戦闘を避けるべき場所である。
まして教師という立場なら、
まず彼らを危険から遠ざけることが求められる。

ナイエは、
まさにその価値観で動く。
尖兵が現れれば、
自分が生徒より前へ出る。
勝てるかどうかよりも、
生徒へ攻撃を通さないことを優先する。

一方のクレンは、
ソルセインを特別な聖域として見ていない。
学校だろうと王宮だろうと、
自分の目的に関わる争いが起きれば、
必要な力を使う。

第1期でも、
クレンは人間の命を
人間と同じ重さでは見ていなかった。
十三人の勇者が襲ってきた時には、
圧倒的な力で一瞬にして返り討ちにしている。

その後、
ルナやアリシアと関わることで変化はした。
人間の感情を知り、
人間社会へ入り、
以前なら見過ごしたような出来事へも関わるようになる。

だが根本まで完全に人間化したわけではない。
敵対する相手が人間なら攻撃できない、
子供なら絶対に手を出せない、
という決まりで動いている存在ではない。

それが第2期で改めて表へ出る。
人間側から見ると味方に近づいていたクレンが、
必要なら学生相手にも
眷属魔獣を使う。

ここで、
「クレンは実は悪だった」という話へ戻るわけでもない。
むしろ彼が最初から
人間の善悪だけでは測れない存在だったことを思い出させる。

ルナを守る。
アリシアと行動する。
ハイデンへ関わる。
こうした行動だけを見ていると、
クレンが人間側へ完全に移ったように感じやすい。

しかしヴォーデインとの対立では、
その境界が再びはっきりする。
人間を守ることより、
魔獣王として自分が阻止すべきものを優先する。
その過程で生徒も巻き込まれてしまう。

しかも相手側の生徒たちも、
「紋」の力で通常以上の戦闘力を与えられている。
クレンにとっては、
守られるだけの存在と見るより、
ヴォーデインが作った危険な戦力として映る。

ここでナイエとクレンの立場は完全に分かれる。
ナイエは、
生徒が操られているからこそ守る。
クレンは、
操られていても自分へ向かってくるなら対処する。

どちらが同じものを見ても、
判断基準が違う。
第8幕で尖兵とナイエが戦うのは、
その違いが目に見える形になった場面でもある。

そしてこの衝突を辿ると、
クレンが神学校を攻撃する目的も見えやすくなる。
学校を壊したいわけでも、
生徒を憎んでいるわけでもない。

トアの書を守る。
ヴォーデイン側の計画を止める。
自分の目的を妨害する戦力を排除する。

そのためなら、
人間側が「学校だから」「生徒だから」と守ろうとする線を、
クレンは越えることができる。
そこに魔獣王クレバテスが、
今も人間とは違う存在であることがはっきり表れているのである。

第5章 第8幕でナイエと尖兵が激突|同じ神学校にいたクレンと教師が敵味方に分かれた

ナイエから見れば、クレンの事情より目の前の生徒を守ることが先になる

第8幕「友の記憶」では、
これまで水面下で進んでいたクレン側とヴォーデイン側の対立が、
ついに神学校の生徒がいる場所へ直接入り込んでくる。
そこで前に立つのが教師のナイエである。

ナイエが相手にするのは、
クレンが放った尖兵だった。
ここまで来ると、
トアの書を巡る争いは
秘密の場所だけで進むものではなくなっている。

ナイエにとって重要なのは、
クレンが何を狙っているかより、
今まさに生徒へ危険が及んでいることだった。
教師としてそこにいる以上、
尖兵を通すわけにはいかない。

だからナイエは、
生徒たちを守りながら戦う。
自分だけ逃げることもせず、
尖兵の前へ立ち、
生徒と敵の間へ身体を入れるように踏みとどまる。

この場面を見ると、
クレンとナイエの立場の違いがはっきりする。
クレンはヴォーデイン側の企みを止めるため、
眷属魔獣や尖兵を使う。
ナイエは、その結果として危険にさらされた生徒を守る。

つまり二人は、
最初から互いを倒したい敵だったわけではない。
それぞれが守ろうとしているものが違うため、
結果として同じ場所で衝突する形になっている。

クレン側にとっては、
ヴォーデインの影響を受けた生徒たちが
トアの書へ迫る戦力になっている。
そこを止めなければ、
自分の狙いが崩されてしまう。

一方のナイエからすれば、
生徒が誰かに利用されているのなら、
なおさら守るべき相手である。
生徒自身が巨大な争いを始めたわけではない以上、
簡単に敵として切り捨てることはできない。

この違いによって、
第8幕では同じソルセインにいた者同士が
事実上の敵味方へ分かれる。
教師ナイエと、
教師として学校へ入ったクレンの側が正面からぶつかるのである。

ただし、
ここでクレン本人が
ナイエを個人的に憎んでいるわけではない。
ナイエを倒すことが最終目的でもない。

尖兵の行動は、
もっと大きな争いの途中にある。
トアの書を狙うローメイン。
その背後にいるヴォーデイン。
さらにクレンがそれへ対抗して出した眷属魔獣。

第8幕のナイエは、
その大きな対立へ途中から巻き込まれた側とも言える。
だからこそ視聴者からすると、
「なぜクレンがナイエたちを襲っているのか」が分かりにくくなる。

ナイエを追い詰めても尖兵が止まらないところに、クレン側の徹底した戦い方が見える

ナイエは尖兵を相手にするが、
戦いは簡単には終わらない。
彼女自身も戦える教師ではあるものの、
相手を完全に押し切れるほどの余裕はない。

そのためナイエは、
生徒を守りながら少しずつ追い詰められていく。
第8幕では、
幼い頃に抱いた勇者への憧れを思い出すほど、
彼女自身が極限へ近づいていく。

ここで尖兵側が、
ナイエの事情を考えて攻撃を止めることはない。
教師なのか、
生徒を守っているのか、
どんな過去を持っているのか。
そうした人間側の事情とは関係なく進んでくる。

この冷たさは、
クレンの眷属であることを考えると分かりやすい。
クレンが求めているのは、
相手へ情けを掛けながら学校を守ることではない。
妨害する戦力を止め、自分の目的を通すことにある。

一方でナイエは、
尖兵を倒すことそのものが目的ではない。
自分がそこで戦い続けることで、
生徒へ攻撃が届かない時間を作っている。

この違いも大きい。
クレン側は目的を達成するために前へ進む。
ナイエは守るべき相手がいるから前に立つ。
両者の戦う基準が全く異なる。

そしてナイエが絶体絶命へ追い込まれたところで、
気を失っていたメリーメリーが目を覚ます。
ここまでナイエが尖兵を止めていたことによって、
次の動きへつながる時間が生まれる。

第2幕では、
メリーメリーはレイやアンドリューと並び、
魔術実習で実力を見せる生徒だった。
そんな彼女でさえ、
第8幕では気絶して動けない状態へ追い込まれている。

つまりソルセインの戦いは、
授業で優劣を競っていた頃とは全く違う。
才能ある生徒でも、
本物の魔獣王同士の争いへ巻き込まれれば、
簡単には安全を保てない。

その危険の前に立つのがナイエである。
そして危険を生み出している側の一つに、
クレンの尖兵がいる。
この構図だけを見ると、確かにクレンは敵に見える。

だが第5幕まで戻れば、
その尖兵が出てくる前に
ローメインとヴォーデインが動き、
生徒までトアの書争奪へ投入していたことが分かる。

第8幕は、
クレンが突然神学校を憎んで攻撃した回ではない。
それまで続いていた争いが、
教師や生徒の目の前まで広がった回なのである。

第6章 クレンは人間の味方なのか敵なのか|基準は最初からルナと自分の目的にある

第1期からクレンは「人間を守る英雄」になったわけではない

クレンが神学校の生徒へ尖兵を向けたことで、
改めて気になるのが、
そもそもクレンは人間の味方なのかという点である。

第1期から見ていると、
クレンは次第に人間側へ近づいてきたように見える。
アリシアと行動し、
ルナを育て、
ハイデンの争いにも深く関わってきた。

しかし最初のクレバテスは、
人間を守る存在ではなかった。
十三人の勇者が自分を討伐しに来た時も、
圧倒的な力の差で彼らを退けている。

人間側が勇者と呼ぶ者たちも、
魔獣王にとっては
自分へ攻撃を仕掛けてきた存在に過ぎない。
そこに人間同士の英雄観は通用しなかった。

そのクレバテスの行動を変えたのが、
赤子のルナである。
ルナを預かったことで、
人間の子供を育てる必要が生まれ、
人間という種族そのものを観察するようになる。

アリシアを蘇らせて連れて歩いたのも、
ルナを育てるうえで
人間の知識が必要だったことが大きい。
そこからクレンと人間社会との接点が増えていく。

さらにハイデンの状況へ関わる中で、
ルナが将来どう生きるのかも
クレンの行動へ影響してくる。
国が滅びれば、
ルナの未来にも影響が出る。

だからクレンは、
人間の国を助けるような行動も取る。
だがそれは、
「人間は全員守るべきだから」という発想だけではない。
ルナを中心に考えれば必要だから動いている面が強い。

ここを忘れると、
第8幕の行動が急変したように見える。
人間を助けていたクレンが、
突然人間を襲う敵へ戻ったように感じてしまう。

実際には、
クレンは最初から人間側の英雄にはなっていない。
人間社会へ関心を持ち、
ルナやアリシアとの関係で変化しても、
自分の判断基準そのものまで捨てたわけではない。

だからソルセインでも、
生徒の安全と自分の目的が衝突した時、
必ず生徒を優先するとは限らない。
ここがナイエとの決定的な違いになる。

ルナを守るためなら人間社会へ入るが、学校を守るために魔獣王である自分を捨てるわけではない

第2期でクレンが
ルナ専属の魔術教師という立場を得たことは、
かなり象徴的である。
魔獣王だった存在が、
人間の子供へ魔術を教える側になろうとしている。

ただしルナはまだ幼く、
本格的な教育開始まで時間がある。
その間にクレンとアリシアは
神学校ソルセインへ入ることになる。

ここでも、
クレンの中心にいるのはルナである。
学校そのものへの忠誠や、
教師という職業への憧れから
ソルセインへ来たわけではない。

そして学校へ入ると、
そこにはトアの書、
勇者伝承、
ヴォーデインの思惑といった
クレン自身にも無視できない問題が眠っていた。

原作では、
ソルセインに広がる陰謀がさらに明確になる。
最上位魔術である「紋」を手に入れるための試練があり、
失敗すれば凶暴な魔獣へ変わる危険まで存在している。

さらに生徒たちは、
ヴォーデインに操られるように
「紋」の力を発揮し、
クレンが召喚した眷属魔獣へ抗戦する。

しかもその力は、
未熟な肉体の限界を越えるほど過剰である。
生徒を守っているように見えるヴォーデイン側も、
実際には若者の身体を危険へさらしている。

クレンから見れば、
ここで問題なのは
人間と魔獣の単純な戦争ではない。
別の魔獣王が人間社会を利用し、
勇者伝承を復活させようとしていることにある。

だからクレンは、
ソルセインを壊さないことよりも、
その企みを暴き、
止めることを優先する。
原作では巨大な塔を作り、
学園全域を戦場へ変えるところまで踏み込んでいる。

ここまでやる以上、
クレンを人間の味方とだけ呼ぶのは難しい。
学校を守る英雄なら、
自分から学園全域を戦場へ変えるような方法は選びにくい。

だが同時に、
人間の敵とだけ呼ぶのも違う。
ヴォーデイン側の計画を放置すれば、
生徒たちもさらに危険な力へ巻き込まれ、
勇者伝承そのものも大きく動き始める。

クレンが止めようとしている相手は、
人間ではなく、
人間を利用しながら目的を果たそうとする
別の魔獣王ヴォーデインでもある。

ここにクレンの特殊な立場がある。
人間側にも完全には属さない。
ヴォーデイン側にも当然属さない。
自分自身の判断で、
自分が守るべきものを決めている。

その中心にはルナがいる。
さらにトアの書や、
自分が知ろうとしている人間と魔術の秘密がある。
その目的を脅かすものには、
相手が人間でも魔獣王でも対抗する。

だから第8幕の尖兵も、
「クレンが悪に戻った」と見るより、
人間社会へ入った後も
魔獣王としての独自の基準を失っていなかった場面と見る方がつながる。

ナイエは生徒を守る教師。
クレンは教師の肩書きを持ちながら、
人間の学校より自分の目的を優先できる魔獣王。

同じソルセインにいながら、
二人が同じ価値観で動いていなかったことが、
第8幕の戦いではっきり見える。

そしてこの違いは、
この先クレンとヴォーデインの対立がさらに大きくなるほど、
重要になっていく。
クレンが誰の味方なのかではなく、
何を守る時に誰と戦うのかを見る必要があるのである。

第7章 ソルセインへの攻撃は、クレンとヴォーデインの対立が表面化した場面だった

第8幕で見えているのは「クレン対生徒」ではなく、二体の魔獣王の争いに学校が巻き込まれた構図

第8幕だけを見ると、
ナイエがクレンの尖兵と戦っているため、
物語の対立は
「クレン対神学校」に見えやすい。

だが第5幕からの流れを追うと、
本当にぶつかっているのは
クレンとソルセインの生徒ではない。
その奥にはヴォーデインの存在がある。

ローメインの背後には、
北の魔獣王ヴォーデインがいる。
勇者伝承を再び動かそうとし、
そのためにクレンが持つトアの書へ手を伸ばしている。

生徒たちも、
その争いの外側にはいられなかった。
一般の生徒が眠らされ、
才能のある者たちが残され、
トアの書を奪うために動かされていく。

さらに「紋」の力まで使われ、
未熟な身体で
本来以上の戦闘力を引き出される。
生徒たちは自分たちだけの争いではない場所へ
踏み込まされている。

クレンも、
それに対して眷属魔獣を召喚する。
第8幕では尖兵が動き、
ナイエが生徒を守りながら
その攻撃を受け止めることになる。

だから、
表面では教師と尖兵が戦っていても、
その背景では
クレバテスとヴォーデインという
魔獣王同士の思惑がぶつかっている。

ソルセインは、
二体の魔獣王が直接向き合う前に、
その力がぶつかる場所になってしまった。
そこへ人間の教師や生徒が挟まれている。

この構図が見えると、
クレンがなぜ学校の中でまで
眷属魔獣を使うのかも分かりやすくなる。
相手を単なる学長や学生として見ていないからだ。

クレンが警戒しているのは、
その背後にいるヴォーデインである。
人間を利用して勇者伝承を動かそうとする相手を、
学校だからというだけで見過ごすことはできない。

一方で、
ナイエにはそんな大きな事情より
目の前の生徒の方が重要になる。
だから魔獣王同士の対立が、
教師と尖兵の戦闘として現れている。

クレンの目的を見ると、これからヴォーデインとの直接対決へ向かう流れまでつながってくる

クレンがソルセインで動く目的は、
第8幕だけで終わるものではない。
原作まで視野を広げると、
クレバテスとヴォーデインの対立は
さらに直接的なものへ進んでいく。

つまり第8幕の尖兵は、
最終的な決着そのものではない。
二体の魔獣王が
互いの目的を邪魔し始めた段階で生まれた衝突である。

ヴォーデインは、
勇者伝承を復活させようとしている。
そのためにローメインを動かし、
ソルセインの生徒まで利用する。
トアの書も、その計画に必要なものとして狙われる。

クレンは、
その書を簡単に渡さない。
相手が生徒を使うなら、
自分も眷属魔獣を出す。
人間の学校であっても、
必要なら戦場に変える。

この行動だけを見ると、
かなり乱暴で危険である。
しかしクレン自身は、
学校の平穏を守るために
ソルセインへ来た人物ではない。

ルナの未来。
自分が持つトアの書。
勇者伝承。
そして別の魔獣王ヴォーデイン。

こうしたものが絡んだ時、
クレンは人間社会の規則よりも
自分の判断を優先する。

第8幕でナイエが
その尖兵と戦うことになったのも、
クレンがナイエ個人を敵視したからではない。
ナイエが生徒を守る側に立ち、
尖兵の進路を塞いだからである。

ここまで見ると、
クレンが「誰の味方なのか」という問いにも
単純な答えは出せない。
人間の味方だけでもなく、
人間の敵だけでもない。

ルナに必要なら人間を助ける。
自分の目的を妨げるなら人間とも戦う。
ヴォーデインが企みを進めるなら、
同じ魔獣王であっても対立する。

その独自の立場こそ、
クレンという存在の一番大きな特徴である。

だから第8幕のソルセイン攻撃は、
クレンが急に悪役へ変わった場面ではない。
人間社会へ入り込んでもなお、
魔獣王としての判断基準を持ち続けていたことが
はっきり出た場面だった。

そしてヴォーデイン側も、
生徒を守る善良な勢力ではない。
若い者たちへ「紋」の力を使わせ、
勇者伝承のために
学校そのものを利用している。

結果として最も苦しい立場に置かれるのが、
ナイエや生徒たちである。
魔獣王同士の大きな目的とは関係なく、
自分たちの学校で命を懸けなければならない。

第8幕の尖兵を見て、
「クレンはなぜ生徒まで襲うのか」と疑問を持つ。
その先まで追うと、
答えはクレンの残酷さだけにはない。

ソルセインそのものが、
すでにクレンとヴォーデインの争いへ組み込まれていた。
生徒も教師も、
その対立から逃れられなくなっていたのである。

だからクレンを見る時は、
人間の味方か敵かだけで分けるより、
何を守ろうとしているのか、
誰がその目的を妨げているのかを見る方が分かりやすい。

第8幕の尖兵は、
神学校襲撃という一場面であると同時に、
クレバテスとヴォーデインの対立が
人間の世界へ本格的に噴き出した場面でもあるのである。

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