ペルギウスがルーデウスを警戒したのは、初対面の若者からラプラスを思わせるほど異常な魔力を感じ取ったから。
さらにオルステッドへ傷を負わせた過去まで知っていたため、「何を望み、その力を何に使う人間なのか」を確かめる必要があった。
空中城塞で交わされた質問を追うと、ルーデウス本人が思う以上に、周囲から危険な存在として見られていたことが分かる。
- 第1章 結論|ペルギウスがルーデウスを警戒したのは、ラプラスを思わせる異常な魔力を感じ取ったから
- 第2章 「金か、力か?」|ペルギウスはルーデウスが何を求めて動く人間なのかを見ていた
- 第3章 ラプラスを連想しただけで空気が変わった|ペルギウスにとっては昔話ではなく実戦の記憶
- 第4章 「ヒトガミを知っているか?」|空中城塞へ入る前からルーデウスは別の角度でも見られていた
- 第5章 ザノバには笑ったのにルーデウスには厳しい|二人への態度の差で警戒の強さが見えてくる
- 第6章 「息子が生まれたら連れてこい」|シルフィとの子供までペルギウスが気にした背景
- 第7章 空中城塞で見えたのは、ルーデウス本人も気づいていない「外から見た危険さ」だった
第1章 結論|ペルギウスがルーデウスを警戒したのは、ラプラスを思わせる異常な魔力を感じ取ったから
空中城塞へ転移した時点で、ルーデウスの魔力量はペルギウスに見抜かれていた
第8話「空中城塞」で、
ルーデウスはナナホシの紹介を受け、
甲龍王ペルギウスと初めて正式に向き合う。
目的は戦いではない。
転移迷宮から救出した後も意思疎通ができない母ゼニスについて、
長い時を生きるペルギウスなら何か知っているのではないか。
その手掛かりを求めて、
ルーデウスはケイオスブレイカーまでやって来た。
ところが、謁見が始まってルーデウスが名乗ると、
ペルギウスの態度は最初からかなり厳しい。
歓迎の言葉より先に出てきたのは、
ルーデウスを空中城塞へ転移させる際に苦労したという話だった。
ペルギウスが使う転移魔術には限界があり、
自分を超えるほどの魔力を持つ相手には簡単には作用しない。
それなのにルーデウスは、
その限界へ触れるほど大量の魔力を内包していた。
そしてペルギウスの口から出てくるのが、
魔神ラプラスの名前になる。
ルーデウスの魔力は、
ラプラスを思わせるほど巨大だった。
もし転移の瞬間にルーデウスが本気で抵抗していれば、
ペルギウスでも城へ移動させられなかった可能性がある。
本人は何もしていないのに、
到着した時点ですでに異常な存在として見られていた。
ルーデウス自身には、その自覚が薄い。
幼い頃から膨大な魔力を持ち、
長年それを使ってきたため、
自分にとっては今さら珍しい話でもない。
バーディガーディからも過去に、
ラプラス級の魔力量を指摘されている。
だからペルギウスからラプラスの名前を出されても、
「またその比較か」という程度に受け止めてしまう。
しかしペルギウス側では重さがまったく違う。
ラプラスは四百年前のラプラス戦役で世界を揺るがした存在であり、
ペルギウス自身が戦った宿敵になる。
後世の人間が伝説として聞く名前ではない。
自分の記憶の中に、
実際に戦った相手として残っている。
そのラプラスを思わせる魔力を持つ青年が、
突然自分の城へ入ってきた。
ペルギウスはすぐに、
城内でその巨大な魔力を使わないよう釘を刺す。
まだルーデウスが何かしたわけではない。
敵意を示したわけでもない。
それでも「ここでは使うな」と先に告げる。
この時点で、
ペルギウスがルーデウスを普通の客人として見ていないことが分かる。
ルーデウスは当然困惑する。
自分は暴れに来たわけではない。
母の状態を聞きたい。
できれば召喚魔術についても知りたい。
それだけなのに、
なぜ初対面からここまで危険人物のように扱われるのか分からない。
そこでルーデウスは、
フィットア領転移事件の直前に起きた出来事を思い出す。
幼いルーデウスが空へ向かって巨大な魔術を放とうとした際、
光輝のアルマンフィが現れ、
ギレーヌと衝突した。
もしかするとペルギウスは、
あの件を根に持っているのではないか。
そう考え、
ルーデウスから転移事件の話を出してしまう。
ところがペルギウスは、
最初その出来事さえ思い出していない。
アルマンフィから耳打ちされて、
ようやく「あの時の少年か」とつながる。
つまり最初の警戒は、
昔のアルマンフィとの一件から始まったものではない。
やはり目の前にいるルーデウス自身、
特に異常な魔力を見た瞬間から始まっていた。
さらにペルギウスは、
ルーデウスが龍神オルステッドへ手傷を負わせたことまで知っていた。
ここで空気がもう一段重くなる。
第1期第21話「ターニングポイント2」で、
ルーデウスはオルステッドと遭遇している。
あの戦闘は、
ルーデウス側から見れば勝負にすらなっていない。
ルイジェルドもエリスも圧倒され、
ルーデウス自身も心臓を潰されて瀕死になった。
最後に放った魔術によってオルステッドへ傷をつけたものの、
対等に戦ったわけではない。
本人からすれば、
「一方的に負けた末、最後に一発届いただけ」という感覚になる。
だが、外から伝わる情報は違って見える。
龍神オルステッドへ傷を負わせた若い魔術師。
しかもラプラスを思わせるほどの魔力量を持っている。
その人物が、
ナナホシやアリエルたちと共に自分の城へ現れた。
ペルギウスが何も確認せず歓迎する方が、
不自然な状況だった。
ペルギウスは、
才能のある者ほど自分の力を過信することがあるとルーデウスへ告げる。
オルステッドへ傷を負わせたことで増長している可能性まで考え、
もし自分と戦うつもりなら覚悟しろと警告する。
その瞬間には周囲に控える使い魔たちまで殺気を漂わせ、
謁見の空気が一気に張り詰める。
ルーデウスからすれば、
とんでもない誤解になる。
オルステッドには完敗している。
ペルギウスと戦う気もない。
目の前には十二の使い魔まで控えており、
勝てるとも思っていない。
自分がどれほど低姿勢でも、
外から見える「ルーデウス・グレイラット」の姿だけが異様に強大になっている。
ここに第8話の面白い食い違いがある。
ルーデウスは自分を、
母を心配して情報を求めてきた一人の息子として考えている。
一方のペルギウスから見ると、
ラプラス級の魔力を宿し、
龍神へ傷を与えた危険な才能の持ち主になる。
本人が考える自分と、
英雄から見たルーデウスの姿には大きな隔たりがあった。
その後、ルーデウス自身も空中城塞での一日を振り返り、
なぜ自分が警戒されたのか少しずつ理解していく。
召喚術に通じたペルギウスからすれば、
ラプラス級の魔力を持つ人間が召喚魔術まで学ぼうとしている。
何に使うのか分からなければ、
なおさら簡単には信用できない。
最初の冷たい態度は、
単純にルーデウスを嫌っているからではなかった。
ペルギウスは、
ルーデウスの中にある巨大な力を先に見ていた。
そして、
その力を持つ青年が何を望み、
何のために動いているのか。
そこを確かめるまでは、
城の主として無警戒ではいられなかった。
第2章 「金か、力か?」|ペルギウスはルーデウスが何を求めて動く人間なのかを見ていた
ナナホシが「敵ではない」と告げて、ようやくルーデウスは客人として扱われる
謁見の空気を変えたのはナナホシだった。
ペルギウスから次々に警告されるルーデウスを見て、
ナナホシが間へ入る。
ルーデウスは自分の研究へ多大な魔力を提供してくれた協力者であり、
敵ではない。
だからもう少し穏やかに接してほしいと伝える。
ペルギウスにとって、
ナナホシの言葉には一定の信用があった。
ここでようやく態度が少し変わる。
敵として追い払うのではなく、
ナナホシの協力者として話を聞く。
その流れでルーデウスへ投げられるのが、
「何を望む」
「金か、力か」
という問いだった。
この質問は、ペルギウスらしい。
目の前にいる青年は、
とてつもない魔力を持っている。
オルステッドへ傷をつけたという話まである。
それほどの力を持つ若者が、
自分のような伝説級の人物へ会いに来た。
ならば、さらに力を欲しがっているのか。
あるいは金や権力を求めているのか。
しかも一行には、
アスラ王国の王位を目指すアリエルもいる。
ペルギウスは直前に、
アリエルが自分の後ろ盾を欲していることも見抜いている。
権力者や野心を持つ者が、
何を求めて近づいてくるのか。
何度も見てきた人物でもある。
だからルーデウスに対しても、
最初に欲望の向きを確認したと見れば自然になる。
ところがルーデウスの返答は、
金でも力でもなかった。
彼が持ち出したのは母ゼニスのことだった。
ベガリット大陸の転移迷宮で救出したものの、
以前のようには話せない。
言葉を発さず、
表情も乏しくなっている。
何が起きているのか。
回復する方法はないのか。
ルーデウスが本当に知りたかったのは、
そこだった。
ここで「強大な魔術師」という外側の印象と、
ルーデウス本人の行動が初めて噛み合わなくなる。
ペルギウスが想定したのは、
金やさらなる力を欲する青年だった。
実際にルーデウスが求めたのは、
母を助けるための知識だった。
自分自身を強くする話ではなく、
家族を救う話へ向かった。
ペルギウスも、
ここでは話を拒絶しない。
ゼニスの状態を聞くと、
古い迷宮には人間を取り込み、
自らの一部のように変えてしまうものがあると話し始める。
そこから神子や呪子と呼ばれる存在へ話が進み、
ゼニスに起きた変化へ新たな可能性が見えてくる。
さらにペルギウスの視線は、
ルーデウスの後ろにいたエリナリーゼへ向かう。
彼女もまた、
約二百年前に迷宮から救い出され、
記憶を失った状態だった。
ルーデウスはそこで初めて、
エリナリーゼがゼニスと似た境遇を経験していたことを知らされる。
謁見へ来るまで、
ルーデウスが期待していたのは、
「ペルギウスならゼニスを治す方法を知っているかもしれない」
という希望だった。
だが返ってきたのは、
万能な治療法ではない。
代わりに、
自分のすぐ近くに似た経験をした人物がいたという事実だった。
ゼニスについて止まっていた情報が、
思わぬところから動き始める。
この一連の会話を見ると、
「金か、力か」という問いの前後で、
ペルギウスの接し方が変化しているのが分かる。
最初は巨大な魔力を持つ危険な若者として警告する。
ナナホシから敵ではないと聞く。
何を欲しているのか尋ねる。
そこで母親についての知識を求めていることが判明する。
つまりルーデウスは、
自分の答えによって、
「力を得るために空中城塞へ乗り込んできた青年」
ではないことを示している。
しかもペルギウスへ媚びて、
財産を求めるわけでもない。
ゼニスを助けるため、
知らないことを教えてほしいと頭を下げる。
この姿は、
最初にペルギウスが警戒した人物像とはかなり違う。
もちろん、
ここだけでペルギウスが完全に信用したわけではない。
ルーデウスの巨大な魔力そのものは消えない。
オルステッドへ傷を与えた過去も変わらない。
召喚魔術への興味も持っている。
だから謁見が終わった後でも、
ルーデウス自身は「まだ警戒されている」と感じている。
それでも、
追い出されてはいない。
空中城塞への滞在も続く。
母についての質問にも答えてもらえた。
敵として排除される関係から、
一定の距離を置きながら会話できる関係までは進んでいる。
この差をさらに印象的にするのが、
同じ謁見でのザノバへの態度になる。
ザノバが自動人形の設計図にあった紋章を見せ、
狂龍王カオスについて尋ねると、
ペルギウスの反応は一変する。
ザノバが人形への情熱を語ると、
ペルギウスは嬉しそうに笑い、
城の宝物殿にあるカオスの作品まで見せると約束する。
ルーデウスは、
その光景を見て驚く。
自分への態度とはまるで違う。
つまりペルギウスは、
誰に対しても最初から冷酷な人物というわけではない。
興味や価値観が合えば、
かなり柔らかい一面も見せる。
その中でルーデウスだけが特に強く警戒されたことが、
逆にはっきりする。
ペルギウスの目には、
ルーデウスの「力」が先に映っていた。
だがルーデウスが空中城塞へ来た目的は、
その力をさらに巨大にすることではなかった。
ゼニスを救いたい。
ナナホシの研究にも協力している。
家族や身近な人間のために動いている。
謁見を進めるほど、
巨大な魔力だけでは分からなかった人物像が少しずつ見えてくる。
だから第8話の「金か、力か」という一言は、
単なる豪快な質問で終わらない。
ルーデウスほどの力を持つ者が、
次に何を欲しがるのか。
力を自分の欲望へ使う人物なのか。
それとも、
別のものを守るために使う人物なのか。
その分かれ目に置かれた問いとして見ると、
あの謁見の緊張感がさらに強く見えてくる。
そしてルーデウスが選んだ答えは、
金でも力でもない。
「母のことを知りたい」だった。
ペルギウスが最初に見たのは、
ラプラスを連想させる危険な魔力。
その奥から出てきたのは、
母を助ける手掛かりを探して空中城塞まで来た息子だった。
第8話で二人の距離が完全に縮まったわけではない。
むしろ警戒は残ったままになる。
それでも、
ペルギウスがルーデウスを
「強大な魔力を持つ未知の人物」として見る段階から、
その力を何のために使う人間なのかを見る段階へ進んだ。
空中城塞で交わされた質問は、
その最初の境目になっていた。
第3章 ラプラスを連想しただけで空気が変わった|ペルギウスにとっては昔話ではなく実戦の記憶
ペルギウスはラプラス戦役を生き残った当事者だから、巨大な魔力を軽く見ない
ルーデウスにとって、
ラプラスという名前は歴史上の大人物に近い。
魔神として恐れられ、
世界へ大きな傷を残した存在だという知識はある。
だが、実際にその本人と戦った経験までは持っていない。
ペルギウスは違う。
四百年前のラプラス戦役を戦い、
魔神ラプラスを封印した側にいる。
当時を直接知る者だからこそ、
「ラプラスに似た魔力」という言葉の重さがまるで違う。
ルーデウスが空中城塞へ転移してきた時、
ペルギウスはその膨大な魔力をすぐに感じ取っている。
転移させるだけでも手間がかかった。
もし本人が拒絶していたなら、
簡単には城へ呼び込めなかったほどだった。
しかも目の前にいるのは、
まだ若い一人の魔術師になる。
年齢だけを見れば、
ラプラスのような存在を連想するような人物には見えない。
ところが内側に抱えている魔力量だけが、
明らかに常識から外れている。
この時点でペルギウスが見るのは、
ルーデウスの人柄より先に危険性になる。
穏やかに話している。
頭も下げている。
敵意も見せていない。
それでも力そのものが巨大なら、
城主として無視するわけにはいかない。
ペルギウスには、
力の大きさが世界をどこまで壊せるのかという記憶がある。
ラプラス戦役は伝承ではない。
実際に戦い、
仲間と共に止めた災厄になる。
だから似たものを感じれば警戒する。
ルーデウス本人には、
そこまで深刻な感覚がない。
自分の魔力が多いことは昔から知っている。
幼少期から魔術を使い続け、
魔力量も普通ではないと何度も言われてきた。
本人にとっては、
すでに自分の身体の一部になっている。
この差が大きい。
ルーデウスは、
「魔力が多いだけでなぜそこまで怖がられるのか」
という側にいる。
ペルギウスは、
「それだけの魔力を持つ者をなぜ警戒しないのか」
という側にいる。
さらにペルギウスが気にしていたのは、
魔力量だけではなかった。
ルーデウスが龍神オルステッドへ傷を負わせたことも、
すでに耳へ入っていた。
ここで危険度が一気に上がる。
第1期第21話「ターニングポイント2」で、
ルーデウスはオルステッドと遭遇している。
あの場面をルーデウス側から見れば、
完全な敗北だった。
ルイジェルドもエリスも通じず、
本人もほとんど抵抗できないまま追い詰められていく。
最後には心臓を潰され、
命そのものを失いかけた。
ルーデウスが最後に放った魔術も、
オルステッドを倒したわけではない。
ただ、それでも確かに傷を負わせている。
ルーデウスからすれば、
「一発通っただけ」に近い。
だがオルステッドを知る者からすれば、
その一発こそ異常になる。
あの龍神へ傷をつけること自体が、
誰にでもできる話ではない。
ペルギウスから見れば、
ラプラスを思わせるほどの魔力量。
さらにオルステッドへ手傷を与えた実績。
その二つを持つ若者が、
突然自分の城へ現れている。
しかもルーデウスは、
ナナホシの召喚研究にも深く関わっている。
魔力量だけでなく、
召喚魔術へ接近する立場まで持っている。
ペルギウスが慎重になる材料は、
一つではなく複数重なっていた。
だから謁見で、
才能のある者ほど増長することがあると警告する。
オルステッドへ傷を負わせたことで、
自分の力を過信しているのではないか。
ペルギウスはそこまで考えている。
もちろんルーデウスには、
そんな気持ちはほとんどない。
オルステッドとの力量差は、
本人が一番よく知っている。
あの相手へ勝ったなどとは到底思えない。
むしろ再会したくない相手として恐れている。
ここでも、
本人と周囲の評価が大きくずれている。
ルーデウスはオルステッドへ完敗した人間として自分を見る。
ペルギウスは、
オルステッドへ傷をつけられた人間として見る。
同じ出来事でも、
どこを見るかで人物像がまるで変わってしまう。
ペルギウスが警戒していたのは、
ルーデウスがすでに敵だからではない。
まだ敵か味方か分からないのに、
持っている力だけがあまりにも大きいからだった。
何を考え、
その力をどこへ向けるのか。
それが分からない段階では、
無条件に歓迎できない。
空中城塞での緊張した謁見は、
ルーデウスの強さを自慢する場面ではない。
むしろ本人が知らないところで、
自分の存在がどれほど大きく見られているのかが分かる場面になる。
幼い頃から魔術を使い、
多くの戦いを越えてきたルーデウス。
本人は家族を守ることへ意識が向いている。
だが四百年前の英雄から見ると、
その身体の中には歴史上の災厄を連想させるほどの力が眠っている。
だからペルギウスは、
最初から笑顔では迎えなかった。
過去にラプラスと戦った者だからこそ、
巨大な力へ軽率に近づかなかった。
「戦うつもりなら覚悟しろ」という警告には、十二の使い魔を従える城主としての用心があった
ペルギウスがルーデウスへ向けた警戒は、
言葉だけでは終わらない。
謁見の場には、
彼が従える使い魔たちが控えている。
ルーデウスが不用意に動けば、
すぐ対応できる布陣になっている。
ルーデウス自身も、
その空気を肌で感じ取っている。
ペルギウス一人だけでも未知数。
さらに周囲には使い魔が並ぶ。
もしここで戦闘になれば、
自分たちが無事では済まないことは分かっている。
だから最初から争う気はない。
言葉遣いも慎重になる。
ゼニスの話を聞きたいだけで、
自分から敵対する必要など何もない。
それでも向こうの警戒は解けない。
ペルギウスが恐れているのは、
ルーデウスが今この瞬間に攻撃することだけではない。
これほどの魔力を持つ人物が、
今後どう変わるかまで含めて見ている。
若く、
まだ立場も固まり切っていない。
だからこそ危うい。
ルーデウスはすでに、
魔術師として普通の範囲を大きく超えている。
それでも本人は、
家族や仲間との日常を優先している。
その姿を知っている読者や視聴者には、
ペルギウスの警戒が過剰にも見える。
だがペルギウスは、
ルーデウスの日常を知らない。
シルフィと家庭を作ったこと。
ゼニスを心配していること。
ノルンやアイシャを大切にしていること。
そうした積み重ねより先に、
巨大な魔力という事実だけを突きつけられている。
初対面とは、
そういうものでもある。
本人の内面は見えない。
見えるのは能力と経歴になる。
そしてルーデウスの能力と経歴は、
ペルギウスから見れば警戒するには十分すぎるものだった。
だからこそ、
その後の「何を望む」という問いが生きてくる。
力を持つこと自体は変えられない。
ならば次に見るべきなのは、
その力を持つ人間が何を欲しているのかになる。
空中城塞での謁見は、
ペルギウスがルーデウスの力を恐れた場面であると同時に、
その力の持ち主がどんな人間なのかを確かめ始めた場面でもあった。
第4章 「ヒトガミを知っているか?」|空中城塞へ入る前からルーデウスは別の角度でも見られていた
質問したのはペルギウスではなくシルヴァリル|第1期のオルステッド戦を思い出す一言
第8話で印象に残る質問は、
ペルギウスとの謁見だけではない。
空中城塞へ入る前、
シルヴァリルが一行へ確認する。
「ヒトガミという名に聞き覚えはあるか」
という問いになる。
ここは混同しやすいが、
直接この質問をしたのはペルギウスではない。
シルヴァリルだった。
ただしペルギウス側の者が、
城へ招き入れる前に確認していること自体が重要になる。
そしてルーデウスには、
この質問へ強烈な既視感がある。
第1期第21話でオルステッドと遭遇した時にも、
同じようにヒトガミを知っているかと問われている。
あの時、
ルーデウスは正直に答えた。
ヒトガミを知っている。
夢のような空間で何度も会い、
助言を受けてきた。
その答えを聞いた直後、
オルステッドの態度は明確に変わっている。
そこから状況は急転する。
ルイジェルドが倒される。
エリスも通じない。
ルーデウスも追い詰められ、
最後には命を奪われかける。
ルーデウスにとって、
「ヒトガミを知っているか」は単なる質問ではなくなっている。
正直に答えた直後に死にかけた記憶と結びついている。
だから第8話で同じ名前を出されれば、
当然身構える。
ルーデウスは、
ヒトガミについて簡単には口を開かない。
過去の経験があるからこそ、
相手が何を知っているのか分からない段階で、
正直に全部話すことが危険だと理解している。
この場面を見ると、
空中城塞でルーデウスが警戒する側でもあることが分かる。
ペルギウスたちはルーデウスを警戒している。
同時にルーデウスも、
ヒトガミという名前を出されたことで相手を警戒する。
互いに情報をすべて見せないまま、
相手がどこまで知っているのか探っている。
第8話の空中城塞には、
この二重の緊張がずっと流れている。
シルヴァリルがなぜ確認したのか。
アニメ第8話の段階では、
すべてが明かされるわけではない。
ただ、
ヒトガミという存在がペルギウス側にとっても、
無視できない名前であることだけは見えてくる。
ルーデウスにとっては、
これまで自分へ助言を与えてきた存在だった。
困った時に現れ、
進む道を示してきた。
疑いを持ちながらも、
完全には切り離せない存在でもある。
しかしオルステッドは、
そのヒトガミを激しく敵視していた。
そして今度は、
ペルギウスの側近まで同じ名前を確認してくる。
ルーデウスが知らないところで、
ヒトガミをめぐる対立が確かに存在している。
この流れがあるから、
ペルギウスのルーデウスへの警戒も、
単純に魔力だけの話では終わらなくなる。
ルーデウス本人には、
複数の危うい接点がある。
ラプラス級の魔力を持っている。
オルステッドへ傷を負わせている。
ヒトガミとも接触している。
さらに召喚魔術の研究にも関わっている。
一つだけなら、
偶然で済むかもしれない。
しかし複数重なると、
外から見たルーデウスはかなり異様になる。
本人は、
家族を守りたいだけの青年だと思っている。
ところが世界の上位にいる者たちから見ると、
重要人物との接点を次々持つ存在になっている。
第8話では、
そのズレが少しずつ表面へ出てくる。
ルーデウス本人が知らないところで、ヒトガミとの接点まで危うい立場を作っている
ルーデウスとヒトガミの関係は、
最初から単純な味方同士ではない。
ヒトガミは夢のような空間へ現れ、
ルーデウスへ助言を与える。
その言葉に従ったことで、
助かった場面もあった。
一方でルーデウスは、
完全に信用しているわけではない。
胡散臭さも感じている。
必要な時だけ現れ、
一方的に情報を渡してくる。
相手の目的がはっきり見えない。
それでも、
異世界へ転生したルーデウスにとって、
ヒトガミは長く接触してきた特別な存在になる。
だからオルステッドに質問された時も、
そこまで危険な名前だとは思っていなかった。
しかしオルステッド戦を境に、
見え方は変わる。
ヒトガミを知っていると答えただけで、
相手の敵意が明確になる。
それほど深い因縁があるのだと、
ルーデウスは身をもって知らされる。
そして空中城塞でも、
再び同じ名前を確認される。
偶然とは思いにくい。
世界の頂点に近い者たちほど、
ヒトガミという存在を特別視しているように見える。
ここでルーデウスは、
自分が知らない争いの間へ入り込んでいることになる。
ヒトガミから助言を受けてきた。
オルステッドとは死闘になった。
今度はペルギウスの城で、
ヒトガミを知っているか確認される。
本人は、
どちらかの陣営へ参加したつもりなどない。
ただ生きるために助言を受け、
家族を守るために行動してきただけになる。
それでも外側から見れば、
ヒトガミと接触する人物という事実は残る。
だから第8話の警戒は、
ルーデウスの魔力量だけに絞ると少し足りない。
最初に最も強く警戒された原因は、
ラプラスを思わせる魔力になる。
しかし空中城塞へ入るまでの流れを見ると、
ヒトガミとの接点も別の危うさとして置かれている。
ペルギウス本人が、
この時点ですべてを把握していると断定する必要はない。
重要なのは、
彼の側近が城へ入れる前にヒトガミの名を確認したことになる。
それだけでも、
ペルギウス陣営にとって無関係な名前ではないと分かる。
そしてルーデウスは、
この質問へ正直に答えない。
オルステッドの時と同じ失敗を繰り返したくないからだ。
第1期で命を失いかけた経験が、
第3期の空中城塞でも彼の判断へつながっている。
最新話だけを見れば、
一瞬のやり取りに見える。
だが第1期第21話まで戻ると、
同じ質問が二度現れていることが分かる。
そのたびにルーデウスは、
自分が知らない世界の裏側へ少しずつ触れている。
ペルギウスの警戒。
シルヴァリルの確認。
オルステッドの敵意。
ヒトガミの助言。
それぞれ別々に見えた出来事が、
ルーデウスを中心に近づき始めている。
第8話「空中城塞」は、
ペルギウスへ会っただけの回ではない。
ルーデウス自身が、
世界の大きな因縁から見ればどれほど特異な位置にいるのか。
その一端が、
謁見前の短い質問からも見えてくる回だった。
第5章 ザノバには笑ったのにルーデウスには厳しい|二人への態度の差で警戒の強さが見えてくる
狂龍王カオスの話になると、ペルギウスの空気は一気に柔らかくなる
空中城塞での謁見では、
ペルギウスが誰に対しても冷淡な人物ではないことも見えてくる。
その分かりやすい例が、
ザノバとのやり取りになる。
ルーデウスへ向けていた緊張した態度とは、
明らかに空気が違っていた。
ザノバが関心を向けているのは、
戦争でも権力でもない。
長年追い続けてきた人形になる。
ルーデウスたちが研究している自動人形にも、
古い龍族の技術が深く関わっていた。
そこで名前が出てくるのが、
狂龍王カオス。
人形や魔道具へ極めて深い知識を持ち、
自動人形の研究にも関係する龍族になる。
ザノバにとっては、
聞いただけで食いつかずにはいられない相手だった。
普段のザノバは、
人形のことになると遠慮がなくなる。
王族という身分も忘れたように、
造形や構造へ夢中になる。
フィギュア制作でも、
ルーデウス以上の執念を見せてきた。
ラノア魔法大学へ入ってからも、
ザノバが求め続けてきたのは人形制作の腕だった。
ルーデウスの作ったロキシー人形を見て感動し、
自分でも同じものを作りたいと願う。
ところが怪力の呪いがあるため、
細かな作業には何度も苦戦してきた。
それでも諦めない。
ジュリを弟子として迎え、
土魔術や造形を学ばせながら、
自分自身も人形への知識を深めていく。
そんなザノバが、
狂龍王カオスという名前へ反応するのは当然だった。
ペルギウスも、
この話には露骨に食いつく。
それまで王のような威圧感を漂わせていた人物が、
ザノバの人形への情熱を聞くと、
明らかに会話へ乗ってくる。
ここがルーデウスとの大きな違いになる。
ルーデウスが名乗った時には、
まず魔力量を確認された。
ラプラスの名を出される。
オルステッドへ傷を負わせたことまで指摘され、
城内で巨大な魔力を使うなと警告された。
対してザノバには、
そうした殺気立った空気がない。
人形へ興味を持っていると分かれば、
ペルギウス自身も話を続ける。
さらにカオスが残した作品へまで、
話題が広がっていく。
後の原作でも、
ザノバとペルギウスは芸術品や人形を通じて交流を深めていく。
ザノバが出来の良い人形や絵画を見つければ、
空中城塞へ持ち込み、
二人で品評するほどの関係になっている。
つまりペルギウスは、
誰に対しても近寄りがたいわけではない。
自分が価値を認めるものへ真剣に向き合う相手なら、
むしろかなり話が通じる。
芸術や知識への探究心には、
強い敬意を持っている。
ナナホシへの態度も同じになる。
異世界召喚について成果を持ち帰ったナナホシとは、
最初から普通に話している。
召喚術について教える約束も守り、
研究成果についても耳を傾ける。
ここまで見ると、
ルーデウスへの険しい態度だけが浮いて見える。
ペルギウスが偏屈だから、
初対面の人間には全員厳しい。
そういう話ではなかった。
ナナホシには普通に接する。
ザノバとは人形の話で盛り上がる。
ゼニスについて質問されれば、
知っている範囲で答える。
それでもルーデウスには、
最初から強い警戒を向けた。
つまり問題は、
ペルギウスの性格ではなく、
ルーデウス自身にあったことになる。
正確にはルーデウスの人格が悪いのではなく、
外から見える能力と経歴が危険すぎた。
ラプラスを思わせる魔力量。
オルステッドへ手傷を負わせた過去。
召喚魔術にも興味を持っている。
まだ若く、
これから何をするのかも分からない。
ザノバには、
そうした危うさがない。
人形が好きだ。
古い技術を知りたい。
素晴らしい作品を見たい。
その欲望は極めて分かりやすい。
だからペルギウスも、
ザノバが何を求めているのかすぐ理解できる。
強大な軍事力を手にしたいわけでもない。
王位を狙っているわけでもない。
ただ人形に夢中になっている。
ルーデウスには、
それが最初には見えなかった。
巨大な力がある。
異常な経歴もある。
それなのに本人が何を望んでいるのか分からない。
だからこそ、
「金か、力か」と聞く必要があった。
ザノバとの会話で笑うペルギウスを見ると、
それまでのルーデウスへの態度が、
単なる威圧ではなかったことが逆にはっきりする。
ルーデウス自身も「自分にだけ厳しくないか」と感じるほど差があった
ルーデウスから見ても、
この態度の違いはかなり印象的だった。
自分は謁見が始まってすぐ、
巨大な魔力を問題視された。
さらにオルステッドとの件まで持ち出され、
空気を張り詰めさせられている。
それなのにザノバが人形を語れば、
ペルギウスは話を聞く。
興味を示す。
作品の話まで広げる。
同じ謁見の中とは思えないほど、
接し方が違う。
ルーデウスとしては、
面白くないというより戸惑いに近い。
自分は何をしたのか。
まだ空中城塞へ来たばかりで、
ペルギウスへ敵意を見せた覚えもない。
しかし、
それこそが両者の認識の違いだった。
ルーデウスは、
自分が「まだ何もしていない」と考える。
ペルギウスは、
すでに何をしてきた人物なのかを見ている。
魔大陸を生き延びた。
魔術大学では高い能力を見せる。
迷宮攻略にも参加する。
オルステッドと遭遇してなお生き残り、
その身体へ傷まで与えた。
本人には、
どれも必死に生き延びた結果でしかない。
だが外から並べて見ると、
十八歳ほどの青年が持つ経歴とは思えない。
さらに魔力はラプラス級。
そんな人物が目の前に来れば、
四百年前の戦争を知るペルギウスが、
まず力の向きを確認するのも無理はない。
一方のザノバは、
人形の話をすれば人形しか見えなくなる。
ある意味、
ペルギウスからすると非常に信用しやすい。
何を欲しがっているのかが分かる。
何を見て喜ぶのかも分かる。
カオスの作品を見せれば、
純粋に感動するであろうことも想像できる。
人間を判断する時、
力の大きさだけではなく、
その人物が何へ執着しているかを見る。
ペルギウスのやり取りには、
そんな部分も見えてくる。
そしてルーデウスも、
ゼニスについて尋ねたことで、
自分が何を求めているのかを初めて見せた。
金ではない。
力でもない。
母親を救いたい。
そのために知識が欲しい。
そこから会話は、
少しずつ普通のものへ変わっていく。
ザノバとの態度の差は、
ペルギウスがルーデウスだけを嫌っていた証拠ではない。
むしろ、
ルーデウスを特別に危険な人物として見ていた証拠に近い。
そして会話を重ねることで、
巨大な魔力の奥にいる本人まで、
少しずつ見えるようになっていった。
第6章 「息子が生まれたら連れてこい」|シルフィとの子供までペルギウスが気にした背景
妻だと知った直後、ペルギウスはルーデウスとシルフィの子供へ関心を向ける
第8話の謁見では、
ルーデウス本人への質問だけでなく、
シルフィとのやり取りにも気になる言葉が残される。
シルフィがルーデウスの妻だと分かると、
ペルギウスは二人の関係にも関心を向ける。
そして話は、
二人の間に生まれる子供へまで及ぶ。
この時点で、
ルーデウスとシルフィには娘ルーシーがいる。
ルーデウスにとっては、
待望の第一子になる。
ベガリット大陸から帰還した後も、
父親として娘を大切にしている。
ところがペルギウスが気にしたのは、
娘の存在だけではなかった。
シルフィとの間に息子が生まれたなら、
自分のところへ連れてくるよう告げる。
一見すると、
名付け親になってやろうという好意にも聞こえる。
しかし、
ここまでのルーデウスへの警戒を見た直後だけに、
少し不穏さが残る言葉でもある。
なぜ娘ではなく息子なのか。
なぜルーデウスとシルフィの子供へ、
ペルギウスがわざわざ関心を示すのか。
第8話だけでは、
すべてを説明し切らない。
ただ、
それまでに出てきたラプラスという名前を重ねると、
ペルギウスが何を気にしているのかが見えてくる。
ルーデウスは、
ラプラスを思わせる巨大な魔力を持っている。
さらにシルフィにも、
普通の人間とは違う特徴がある。
シルフィは生まれつき、
髪が緑色だった。
『無職転生』の世界では、
緑色の髪はスペルド族を連想させ、
周囲から恐れられる原因にもなっていた。
幼い頃には、
その髪色を理由に虐められている。
ルーデウスと出会った時も、
泥を投げられ、
一人で泣いていた。
そこからルーデウスと魔術を学び、
少しずつ強くなっていった。
フィットア領転移事件では、
シルフィ自身も遠くへ飛ばされる。
その際、
魔力を限界まで使用した影響で髪は白く変化した。
その後はフィッツとして、
アリエルを守りながら生きてきた。
ルーデウスもシルフィも、
普通ではない魔力的特徴を持つ。
だから二人の子供について、
ペルギウスが何かを警戒する余地が生まれる。
ここで深く関わってくるのが、
ラプラス因子になる。
ルーデウスの異常な魔力量も、
後にラプラスとのつながりから説明されていく。
シルフィにも、
ラプラスへつながる特徴が存在している。
そしてラプラスは、
永遠に消滅した存在ではない。
再びこの世界へ現れる可能性がある。
ペルギウスにとって、
これは遠い未来の噂ではない。
ラプラスが復活すれば、
再び戦わなければならない。
四百年前に一度戦ったからこそ、
次の出現にも強い関心を持っている。
だから、
ラプラスへつながる特徴を持つ二人が夫婦だと知れば、
その子供を気にすること自体は不思議ではない。
この段階でルーデウスは、
そこまで事情を理解していない。
自分の魔力量についても、
生まれつき多かった程度の認識が強い。
シルフィとの子供が、
ラプラスと結びつく可能性まで考えてはいない。
ペルギウスだけが、
もっと長い時間軸から二人を見ている。
ルーデウスとシルフィにとって、
子供は家族になる。
ペルギウスからすると、
その血筋に何が現れるかという別の問題も重なる。
この温度差が、
「息子が生まれたら連れてこい」という一言を妙に重くしている。
後に本当に息子が生まれ、この時の一言がラプラスへの警戒だったとつながっていく
この発言が単なる冗談ではなかったことは、
原作のかなり先で改めて分かる。
ルーデウスとシルフィの間には、
後に息子ジークハルトが誕生する。
そこでルーデウスは、
空中城塞で交わした昔の会話を思い出す。
ペルギウスは以前、
シルフィとの間に息子が生まれたら、
連れて来るよう言っていた。
だから実際に、
ジークハルトをペルギウスのもとへ連れていくことになる。
そしてその場では、
あの時ペルギウスが何を警戒していたのかが、
かなりはっきりした形で表へ出てくる。
問題は、
その子供がラプラスなのかどうかだった。
ルーデウス自身も、
その頃にはラプラス因子について以前より知識を得ている。
オルステッドにも息子を見てもらい、
ラプラスではないとの見立ても受ける。
それでもペルギウスが自分で確認しなければ、
納得しない可能性を考えて空中城塞へ向かう。
この後の出来事まで見ると、
第8話での一言の見え方が大きく変わる。
ペルギウスは、
可愛い子供が生まれたら見せてほしいと、
軽い気持ちだけで言っていたわけではない。
ラプラスがどこへ転生するのか。
誰の子供として現れるのか。
再び戦うべき相手が、
どこから生まれてくるのか。
四百年前から生きるペルギウスには、
それを見張り続ける必要がある。
そしてルーデウスは、
その候補を考えるうえで無視できない存在だった。
本人自身がラプラス級の魔力を持つ。
妻のシルフィにもラプラス因子へつながる特徴がある。
ならば二人の間に生まれる子供を気にする。
ペルギウス側から見ると、
かなり自然な流れになる。
一方でルーデウスからすれば、
恐ろしい話になる。
自分にとって子供は、
歴史の道具ではない。
ラプラス候補でもない。
大切な家族になる。
後にジークを連れてペルギウスへ会った際には、
もし本当に息子がラプラスだったとしても、
簡単に殺させるつもりはないという姿勢まで見せる。
家族を守る時のルーデウスは、
普段とはまるで違う強硬さを持つ。
この先の展開を知ると、
第8話の謁見には、
二人の価値観の違いまで早くから置かれていたことが分かる。
ペルギウスは、
世界を守る側からラプラスを見る。
再来すれば、
再び災厄になる可能性がある。
ならば復活の兆候を見逃すことはできない。
ルーデウスは、
家族を守る側から子供を見る。
たとえ大きな運命を背負っていたとしても、
生まれたばかりの我が子を、
未来の災厄として扱うことはできない。
第8話の段階では、
そこまで激しい衝突にはならない。
ただ、
ペルギウスがルーデウスを見た瞬間から、
ラプラスという存在を強く意識している。
巨大な魔力を見てラプラスを連想する。
シルフィとの夫婦関係を知る。
そして、
二人の間に生まれる息子へまで話を伸ばす。
すべて同じ線の上にある。
だからペルギウスの警戒は、
「ルーデウスが今ここで暴れるか」
だけではなかった。
その力がどこから来たのか。
これから何を生み出すのか。
未来まで含めて見ていた。
ルーデウス自身は、
母ゼニスのために空中城塞へ来ただけだった。
だがペルギウスの目には、
四百年前のラプラス戦役と、
これから起こり得る次のラプラス戦役まで重なっている。
二人が同じ場所で話していても、
見ている時間の長さが違う。
第8話で突然出てきた
「息子が生まれたら連れてこい」という言葉は、
その違いが最も分かりやすく表れた一言だった。
第7章 空中城塞で見えたのは、ルーデウス本人も気づいていない「外から見た危険さ」だった
本人は母を助けたいだけでも、ペルギウスには世界級の力を持つ若者に見えていた
第8話の空中城塞で、
ルーデウスは最初から最後まで戦うつもりなどない。
ペルギウスへ会いたかった最大の目的も、
母ゼニスについて何か知っているのではないかという期待だった。
金が欲しいわけでもない。
地位が欲しいわけでもない。
空中城塞を手に入れたいわけでもない。
むしろ十二の使い魔を前にして、
敵対すれば危険だと十分に理解している。
それでもペルギウスは警戒した。
ここが、第8話のやり取りで最も大きいところになる。
ルーデウスが自分をどう見ているかと、
周囲の強者がルーデウスをどう見ているか。
その二つが、
すでに大きく離れている。
ルーデウス自身にとって、
膨大な魔力は生まれた頃から付き合ってきたものになる。
幼少期から無詠唱魔術を練習し、
魔力を使い切ることを繰り返してきた。
その結果として、
常識外れの魔力量を持つようになった。
本人にとっては、
生活の延長線上にある力になる。
だがペルギウスから見れば違う。
転移魔術を使うだけでも負荷を感じるほどの魔力量。
その大きさは、
四百年前に戦ったラプラスを思わせる。
さらに、
その青年は龍神オルステッドへ傷を負わせたことがある。
ルーデウス本人は、
あの戦いを誇れるものだとは思っていない。
第1期第21話では、
ルイジェルドもエリスも圧倒され、
自分もほとんど何もできないまま心臓を潰された。
最後に放った魔術が、
わずかにオルステッドへ届いた。
本人からすれば、
勝利などとは程遠い出来事になる。
しかし外から見れば、
「龍神へ傷を負わせた魔術師」という情報だけでも十分に異常になる。
しかもその魔術師が、
ラプラス級の魔力まで持っている。
本人の中では、
必死に生き延びてきた結果。
ペルギウスから見れば、
世界でも無視できない力を持つ青年。
この認識の差が、
謁見の緊張を生んでいた。
だからペルギウスは、
まず能力を見る。
その次に、
何を求めているのかを見る。
「金か、力か」
この問いは、
ルーデウスの欲望を測るための分岐点だった。
もしここで、
さらなる力が欲しいと答えていたら、
ペルギウスの警戒はもっと強くなっていた可能性がある。
すでに十分すぎる力を持つ者が、
さらに上を求めている。
それは四百年前の戦争を知る者からすれば、
かなり危険な姿に映る。
ところが返ってきたのは、
母親のことだった。
転移迷宮から救出したゼニスが、
なぜ以前のように話せないのか。
何か戻す方法はないのか。
ルーデウスは、
自分自身を強くする知識ではなく、
家族を助けるための知識を求めた。
そこで初めて、
ペルギウスから見えるルーデウスの姿が少し変わっていく。
巨大な魔力だけでは分からない。
オルステッドとの戦歴だけでも分からない。
本人が何を大切にしているかは、
会話しなければ見えてこない。
ルーデウスが母を気に掛ける。
ナナホシの研究にも協力する。
ザノバやクリフとも行動している。
シルフィとは夫婦になり、
娘も育てている。
そうした姿は、
「危険な才能を持つ若者」という一面だけでは説明できない。
それでも、
ペルギウスの警戒が完全に消えるわけではない。
ルーデウスの力は本物になる。
ラプラスとの関連も消えない。
シルフィとの子供にまで、
ペルギウスが関心を向けるほどになる。
だから二人の関係は、
一度の謁見で親友になるようなものではない。
一定の距離を置く。
相手の力を認める。
何を考えているかを見る。
必要なら知識を貸す。
だが無条件には信用しない。
そんな関係の始まりだった。
ペルギウスの質問を追うと、ルーデウスが世界の中心へ近づいていることまで見えてくる
空中城塞で交わされた質問を振り返ると、
ルーデウスがいつの間にか、
世界の大きな因縁へ近づいていることも分かる。
最初には、
シルヴァリルからヒトガミを知っているか確認される。
それは第1期で、
オルステッドから受けた質問と重なる。
謁見では、
ペルギウスから魔力量を指摘される。
そこで出てくる名前はラプラス。
さらにオルステッドへ傷を負わせた過去まで知られている。
続いて、
何を望むのかと問われる。
そしてシルフィとの関係を知れば、
今度は二人の間に生まれる息子へ関心を向ける。
一つ一つを別々に見ると、
不思議な質問が続いただけにも見える。
だが並べてみると、
全部がルーデウスの周囲に集まり始めている。
ヒトガミ。
オルステッド。
ラプラス。
ペルギウス。
どれも『無職転生』の世界で、
非常に大きな存在になる。
ルーデウスは、
自分から世界の中心人物になろうとして動いてきたわけではない。
幼い頃は家族と暮らし、
フィットア領転移事件では帰郷を目指した。
ラノア魔法大学では、
自分自身の問題を解決しようとしていた。
結婚してからは、
さらに家庭へ意識が向いている。
第2期では、
ゼニス救出のためベガリット大陸へ向かい、
父パウロを失った。
帰還後は、
失ったものを抱えながら家族を守ろうとしている。
そんなルーデウスが、
第3期では空中城塞へ来ている。
本人の目的は、
相変わらず身近なものになる。
ゼニスを助けたい。
ナナホシの研究にも付き合う。
友人たちと一緒に動く。
しかし、
その行動の先で出会う相手がどんどん大きくなっている。
ペルギウスから見れば、
この青年はすでに「ただの魔術師」ではない。
だからこそ、
質問を重ねる。
何者なのか。
何を望んでいるのか。
力を何へ使うのか。
ヒトガミとの関係はあるのか。
その血筋から何が生まれるのか。
ルーデウス本人には、
どれも大袈裟に感じる部分がある。
だが、
これまでの人生を外から眺めれば、
警戒される材料は十分に揃っている。
巨大な魔力。
転移事件との関わり。
龍神との遭遇。
ヒトガミとの接触。
召喚研究への参加。
ラプラス因子へつながる特徴。
本人が意識しないまま、
世界の重要人物たちと次々に線がつながっている。
だから第8話のペルギウスとの謁見は、
単なる初対面ではなかった。
ルーデウスが、
世界の上位にいる者からどう見えているのか。
それが初めてかなり露骨に突きつけられた場面になる。
ペルギウスが最初に見たのは、
家族思いの父親ではない。
ラプラスを思わせるほどの魔力を持ち、
オルステッドにまで傷をつけた青年だった。
そこから会話を重ね、
ようやく母を助けたい息子の顔が見えてくる。
「金か、力か」と問われて、
ルーデウスが選んだのはどちらでもなかった。
その答えがあったからこそ、
二人は最初の緊張だけで終わらず、
会話を続けることができた。
空中城塞での警戒は、
ルーデウスを敵と断定したものではない。
むしろ、
これほどの力を持つ人間だからこそ、
何を大切にしているのかを確かめる必要があった。
第8話で投げかけられた一つ一つの質問は、
ルーデウスの強さだけではなく、
その強さを持ったまま、
どんな人間として生きるのかまで見ようとするものだった。
そしてその答えとして見えてきたのは、
世界を支配したい青年ではない。
母を助けたい。
家族を守りたい。
仲間を助けたい。
そんな身近なものを抱えながら、
いつの間にか世界級の力を持ってしまったルーデウスの姿だった。
無職転生Ⅲまとめ
『無職転生Ⅲ』の記事を、第3期の放送範囲・ナナホシと転移事件・ペルギウスと空中城塞・未来ルーデウス・オルステッド・魔導鎧・エリスとの再会・ルーデウスの家族などに分けてまとめています。
ルーデウス、エリス、シルフィ、ロキシー、ナナホシ、ペルギウス、オルステッド、ゼニス、アリエル、クリフ、エリナリーゼなど、気になる人物や物語の謎はこちらから探せます。
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