魔界大帝キシリカがナナホシを救う鍵になるのは、7000年前に消えたドライン病を知り、体内の魔力を排出するソーカス草まで覚えていたから。
ルーデウスたちはキシリカを見つければ終わりではなく、ドライン病の治療法を聞いたあと、ソーカス草を求めて不死魔王アトーフェへつながる騒動へ進んでいく。
キシリカとナナホシを追うと、現代では失われた治療の知識を魔界大帝がもう一度つなぎ直し、ナナホシが帰還研究を続けられるところまで命をつないだことが見えてくる。
第1章 結論|キシリカは治療する人物ではなく、失われた治療法へ導く案内人
7000年前のドライン病を「昔の病」として知っていた
ナナホシを救ううえでキシリカが重要なのは、強い治癒魔術を使えるからではない。
キシリカ自身がナナホシへ治療を施すわけでもない。
大きいのは、現代ではほとんど忘れられたドライン病を知っていたこと。
7000年前に姿を消した病でも、キシリカにとっては遠い昔の記憶として残っている。
第3期第9話でナナホシが倒れたあと、問題になったのは病名だけではない。
ドライン病だと分かっても、どうすれば治せるのかが分からない。
現代では患者がほとんどいない。
治療法も日常の知識から消えている。
そこで、長い時代を生きてきた存在へ頼る必要が出てくる。
名前が挙がるのが魔界大帝キシリカ・キシリス。
キシリカは第1期から登場している。
腹を空かせてルーデウスと出会い、食事の礼として予見眼を与えた人物。
見た目や言動は軽い。
でも実際には、普通の人間では届かないほど古い時代を知っている。
ここでその長寿が、初めて病気の治療へ直結する。
ドライン病は現代の医師にとって未知に近い。
キシリカには違う。
かつて実際に存在した病として知っている。
だから症状を聞いて、何が必要なのかまで話を進められる。
キシリカが示したのがソーカス草。
葉を茶として飲む。
すると身体へ溜まった魔力を外へ排出できる。
ナナホシの病気へ必要だったのは、傷を塞ぐことではない。
体内に蓄積した魔力を外へ出すことだった。
ここがキシリカの大きな役目になる。
ドライン病の発症そのものを止めたわけではない。
ナナホシへ直接薬を与えたわけでもない。
でも「何を探せば助かるのか」を初めて示した。
治療の道が止まっていたところへ、進む方向を作った。
だからキシリカは、医者というより案内人に近い。
病名を知る。
古い対処法も知る。
さらに、その材料がどこにあるのかまで記憶している。
一つの知識だけではなく、治療へつながる道筋を持っている。
それができるのは、キシリカが今の時代だけを生きている人物ではないから。
数千年前の出来事が、本人にとっては歴史書の中だけにある話ではない。
古い病。
古い土地。
魔族たちの過去。
そうしたものが、自分の記憶とつながっている。
ナナホシに必要だったのは、現代の常識ではなく古い常識だった。
7000年前に消えた病なら、7000年前を知る存在へ聞く。
その発想がキシリカへつながる。
そしてキシリカの記憶が、ソーカス草へつながる。
ここで「キシリカを見つければ治る」という単純な話にはならない。
キシリカは治療法を知っている。
でもソーカス草そのものをすぐ持っているわけではない。
次に必要なのは、その薬草を探すこと。
だからルーデウスたちの旅は、キシリカを見つけたところからさらに続く。
この先にアトーフェが出てくる。
キシリカから治療法を聞く。
ソーカス草の所在を追う。
魔王たちの領域へ向かう。
ナナホシを救う話が、魔界大帝から不死魔王へ広がっていく。
つまりキシリカは、ナナホシを直接治す人物ではない。
7000年前に途切れた治療の知識を、現代へ戻した人物。
その一言がなければ、ルーデウスたちは何を探せばいいのかさえ分からなかった。
そこが、キシリカがナナホシを救う鍵になる大きなところになる。
キシリカの一言から、ソーカス草を探す新しい旅が始まる
キシリカへ辿り着いた時点で、ルーデウスたちの目的は一つ。
ナナホシを助けること。
そのために魔大陸まで来た。
だからキシリカを発見した瞬間には、ようやく治療へ近づいたように見える。
でも本当に大変なのは、その先。
キシリカからドライン病の話を聞く。
ソーカス草が必要だと分かる。
それなら次は、実物を手に入れなければならない。
知識だけではナナホシの身体へ届かない。
キシリカは、昔ソーカス草が生えていた場所も知っている。
さらに魔王たちの土地で栽培されていることも知っている。
だから治療法の説明が、そのまま次の行き先へつながる。
キシリカは病名を教えるだけでなく、旅の方向まで決める存在になる。
ここでルーデウスたちの目的が変化する。
キシリカを探す旅。
そこからソーカス草を探す旅へ。
さらにアトーフェ側へつながる騒動へ。
一つ答えが出るたび、次の問題が現れる。
この流れが面白い。
ナナホシの病気を治したい。
そのために古代の知識が必要。
キシリカを探す。
見つけた。
でも薬草がない。
次の場所へ行く。
まるで古い伝承を一つずつ辿るように治療へ近づいていく。
しかもキシリカ自身も、ただ静かに情報を教えて終わらない。
本人の事情がある。
アトーフェとの関係もある。
昔からの魔族同士の縁まで出てくる。
ナナホシの病気という真剣な問題へ、キシリカの騒がしい人生が横から入り込んでくる。
それでも最終的には、その騒動がソーカス草へつながる。
キシリカを探したことが無駄にならない。
むしろ治療へ進むための最初の扉だったと分かる。
だからキシリカの役目は「治療法を知っている人」で終わらない。
ナナホシを救うために、ルーデウスたちを次の場所へ動かす。
その結果、アトーフェや魔王たちの領域まで話が広がる。
一人の古い魔族の記憶が、現在のナナホシの命へつながっている。
第2章 第9話「慟哭」でルーデウスたちは、ナナホシを救うため魔大陸へ向かう
ドライン病までは判明しても、治療法を知る者がいなかった
第9話でナナホシが倒れた時、最初の問題は病名が分からないことだった。
突然咳き込む。
吐血する。
身体が弱っていく。
普通の体調不良ではない。
ルーデウスたちも、簡単な治癒だけでは済まないと分かる。
調べた先で出てきたのがドライン病。
7000年前には姿を消したとされる病気。
ここで一つの答えは出る。
でも病名が分かっただけでは、ナナホシは助からない。
次に必要なのは治療法になる。
ところが現在では、ドライン病そのものがほぼ忘れられている。
患者がいない。
実際に治療した経験を持つ者もいない。
名前を知っていても、どう対処すればいいのかまでは分からない。
現代の知識だけでは止まってしまう。
ナナホシの状態は待ってくれない。
研究を休めばいいという段階でもない。
帰還研究より先に、まず身体を助けなければならない。
そこでルーデウスたちは、病気が存在していた時代を知る者へ目を向ける。
候補になるのがキシリカ。
魔界大帝として長い時代を生きている。
第1期では、ルーデウスへ魔眼を与えた人物。
その時にも人間離れした存在だと分かっていた。
今回は、その長寿そのものが必要になる。
ルーデウスにとっても、キシリカは一度会った相手。
完全に未知の人物ではない。
腹を空かせていた。
食事を渡した。
予見眼をもらった。
奇妙ではあるが、話が通じない相手でもない。
だから「昔のことを知っているかもしれない」と頼る価値がある。
こうしてルーデウスたちは魔大陸へ向かう。
目的は戦争でも冒険でもない。
ナナホシを助ける知識を探すため。
かつてデッドエンドとして旅した土地へ、今度は病人を救うために戻ることになる。
魔大陸へ戻れば、過去の人物とも再会する。
ノコパラ。
昔のリカリス。
第1期の記憶が次々と戻る。
でも今回のルーデウスには、懐かしさへ浸っている余裕はない。
探しているのはキシリカ。
ここが第1期との大きな違い。
昔は自分とエリスが生き延びるために魔大陸を進んだ。
今回はナナホシの命をつなぐために戻ってきた。
同じ土地でも、旅の目的はまるで違う。
そしてキシリカを探し出したことで、ようやく治療への道が動く。
ドライン病を知っている。
ソーカス草を知っている。
現代の人々には届かなかった情報が、一気に出てくる。
だから魔大陸へ渡った判断が、そのままナナホシを救う一歩になる。
そこで名前が挙がったのが、古代を知る魔界大帝キシリカだった
キシリカが選ばれたのは、単に有名な魔族だからではない。
強い魔眼を持っているからだけでもない。
重要なのは、生きてきた時間。
7000年前の病気へ触れられるほど、普通の人間とは違う時間を持っている。
現代の医師が知らない。
魔術師も知らない。
古い文献にしか残っていない。
そんな問題になれば、必要なのは常識の外にいる人物。
キシリカはまさにそこへ当てはまる。
第1期では、魔眼をくれる変わった魔界大帝という印象が強かった。
でも第3期では、その存在の別の価値が見える。
長く生きている。
古い病を知る。
古い土地も知る。
昔の魔族たちの事情まで知る。
つまりキシリカは、強さだけでなく「記憶」が力になっている。
現在の人間には失われたものを、自分の中へ残している。
だからドライン病のような古すぎる問題ほど、キシリカの価値が上がる。
ナナホシ自身が特殊な存在という点も重なる。
7000年前に消えた病。
日本から転移した身体。
現代では普通起こらない症状。
普通ではない患者を救うには、普通ではない知識が必要になる。
その答えがキシリカだった。
そしてこの出会いは、そこで終わらない。
キシリカからソーカス草の話を聞く。
さらに薬草の所在を追う。
アトーフェの名前が出てくる。
次の土地へ向かう。
ナナホシの治療が、一つの長い旅へ変わっていく。
だから第9話後半でキシリカを探し始めたことは、単なる再登場への導入ではない。
ナナホシの命を救うための本格的な治療探しが始まった瞬間。
キシリカは、その旅の最初の答えを持っている人物になる。
魔界大帝という大きな肩書。
予見眼を与えた過去。
食べ物へ弱い性格。
そうした要素の奥に、数千年を超える知識がある。
今回ルーデウスたちが本当に必要としていたのは、その古い記憶だった。
第3章 キシリカは何者?7000年前の病まで知る魔界大帝
現代人には歴史でも、キシリカには自分が知っている昔の出来事
キシリカがナナホシを救う鍵になるのは、魔眼を持っているからだけではない。
もっと大きいのは、普通の人間では届かないほど長い時間を生きていること。
現在では伝承や古文書にしか残っていない出来事でも、キシリカにとっては自分が知っている昔の話になる。
ドライン病も、その一つだった。
第9話でナナホシの病名が判明しても、周囲はすぐ治療へ進めなかった。
7000年前には消えた病。
今を生きる治癒術師にとっては、実際の患者を見る機会すらない。
名前が残っていても、何をすれば助かるのか分からない。
そこで必要になったのが、当時に近い知識を持つ存在になる。
キシリカは魔界大帝を名乗る。
第1期では腹を空かせた姿で現れ、ルーデウスへ予見眼を与えた。
その印象が強いため、食いしん坊で騒がしい人物にも見える。
でも本来は、魔族の長い歴史と深くつながる存在。
生きてきた時間そのものが、普通の人物とはまるで違う。
そのためドライン病という言葉にも反応できる。
現代では珍しいどころか、ほぼ消えた病。
でもキシリカには「そんなものもあった」と振り返れるだけの時間がある。
ここが普通の医師や魔術師との決定的な差になる。
しかも知っているのは病名だけではない。
どういう身体に起きるのか。
何を使えば症状へ届くのか。
どこにその材料があったのか。
古い病気と、古い薬草が同じ記憶の中でつながっている。
だからキシリカは、単なる物知りではない。
失われた知識を一本の道へ戻せる人物。
ドライン病。
ソーカス草。
魔王たちの土地。
それぞれが現在では別々の情報でも、キシリカの中では昔から知っている一続きのものになっている。
この強みは、魔眼より地味に見える。
予見眼なら未来が見える。
万里眼なら遠くを見られる。
すぐ凄さが分かる。
それに比べれば「昔の病気を覚えている」は目立ちにくい。
でもナナホシが倒れた場面では、その知識こそ最も必要だった。
どれだけ強い魔術を持っていても、何を治せばいいのか分からなければ動けない。
キシリカは、治療の入口そのものを示せる。
だから今回の彼女は、戦闘より知識で価値を見せる。
第1期のルーデウスにとって、キシリカは魔眼をくれた人物だった。
第3期では、その印象が一段広がる。
魔眼を与えられる。
遠くも見られる。
さらに7000年前の病気まで知っている。
長命であること自体が、一つの異能になっている。
だからキシリカを「魔界大帝だから強い」で終わらせると、今回の重要さは見えにくい。
ナナホシを救う場面では、強さより記憶。
古い時代を知ること。
今では誰も覚えていないものを覚えていること。
そこがルーデウスたちに必要だった。
キシリカが現れたことで、7000年前と現在が一本につながる。
古代の病に苦しむナナホシ。
その病を昔から知る魔界大帝。
そして治療へ必要なソーカス草。
普通なら断絶している三つが、一人の記憶によって結びついていく。
魔眼だけでなく、長すぎる寿命そのものがキシリカ最大の武器になる
キシリカといえば、まず魔眼が有名。
自分自身が複数の魔眼を持つ。
さらに他人へ魔眼を与えることもできる。
ルーデウスの予見眼も、キシリカから与えられたもの。
だから能力の中心は目にあるように見える。
でも長く生きていることも、同じくらい大きい。
何千年も前の話を知っている。
昔存在した病気を知っている。
失われた植物を知っている。
魔族同士の古い関係まで覚えている。
この情報量は、魔眼では代わりにくい。
特に今回のような問題では、それがはっきりする。
ナナホシの病気は、現代の知識では古すぎる。
だから新しい医術を探すだけでは足りない。
昔どう治していたかを知る必要がある。
ここでキシリカの時間が役に立つ。
しかも彼女は、古い知識を学問として覚えているのではない。
実際に長い時代を生きてきた。
そのため地名や魔王の話まで一緒に出てくる。
治療法だけ聞いて終わらず、次にどこへ行くかまで話が進む。
ここがルーデウスたちには大きい。
病気の名前は分かった。
次は治療法。
治療法が分かった。
次は材料。
材料が分かった。
次は所在。
一つずつ行き止まりになりそうなところを、キシリカの記憶が先へつないでいく。
つまりキシリカは、ナナホシの治療を完成させる人物ではない。
でも治療が止まらないように、次の答えを出し続ける人物。
古い知識の連鎖を持っているからこそ、それができる。
その力が、やがてアトーフェへまで話を広げる。
キシリカの昔の人間関係。
魔王たちの領域。
ソーカス草が残っている場所。
ナナホシの病気から始まった話が、魔族の長い歴史へ入り込んでいく。
だから今回のキシリカは、魔眼を配る人物として見るより「時間を生きすぎた案内人」として見る方が近い。
7000年前の病を、現在の問題として扱える。
それだけ長い時間を持つ存在だからこそ、ナナホシの命を次へつなぐ知識を出せた。
第4章 キシリカが教えた治療への鍵は「ソーカス草」
ソーカス草を茶にすると、ナナホシの身体へ溜まった魔力を排出できる
キシリカから出てきた治療への鍵が、ソーカス草。
ドライン病へ必要なのは、単に身体を休ませることではない。
治癒魔術で傷を塞ぐことでもない。
ナナホシの体内へ溜まっている魔力を外へ出さなければならない。
そこで使われるのが、この古い薬草になる。
ドライン病は、ナナホシの身体へ魔力が蓄積したことで起きている。
日本から身体ごと転移したナナホシには、この世界の人間のような魔力がない。
異世界で長く暮らすうちに、外から入った魔力が少しずつ身体へ残る。
その積み重ねが、咳や吐血へつながった。
だから普通の治療では足りない。
熱を下げる。
痛みを取る。
傷を治す。
それだけでは、身体の中に残った魔力が消えない。
原因そのものが残れば、また症状が出る。
そこで魔力を排出する方法が必要になる。
キシリカは、その方法としてソーカス草を挙げる。
葉を茶にして飲む。
すると体内の魔力を外へ出せる。
現在ではほとんど知られていない病に対して、現在ではほとんど知られていない薬草が必要になる。
古い病と古い治療が、ここでつながる。
この情報が大きいのは、ルーデウスたちが初めて具体的に動けるようになるから。
それまではナナホシが苦しんでいる。
病名は分かった。
でも何を探せばいいか分からない。
キシリカの言葉によって、目標が「ソーカス草」に変わる。
これで旅の形も変わる。
キシリカを探す。
見つける。
話を聞く。
次は薬草を探す。
治療への道が一段ずつ具体的になっていく。
ただしソーカス草を知っただけでは、まだナナホシは助からない。
実物が必要。
どこにあるかを知らなければならない。
そしてその所在を追うことで、さらに魔族側の事情へ入り込むことになる。
だからキシリカの答えは、解決であると同時に次の出発点。
「これを使えばいい」で終わらない。
「ではそれはどこにある?」がすぐ始まる。
ここが第9話以降の続きへつながるところになる。
ナナホシ本人はケイオスブレイカーで待つしかない。
身体が弱っている。
自分で薬草を探しに行けない。
だからルーデウスたちが動く。
キシリカの情報を持って、ナナホシの代わりに治療法を取りに行く。
病気の話が、ここから冒険へ変わる。
治癒室の中だけで終わらない。
古代の知識。
魔大陸。
魔王。
薬草。
それらを辿って、一人の患者へ戻ってくる。
無職転生らしい大きな世界の広がりが、ナナホシの治療へ集まっていく。
治癒魔術では届かなかった「体内の魔力」を外へ出すことが必要だった
ナナホシの治療が難しかったのは、症状だけを見ると普通の病気に見えるところにもある。
咳。
吐血。
身体の衰弱。
まず治癒魔術を使いたくなる。
でも本当の問題は、その奥にある。
ナナホシの身体には、長い年月をかけて魔力が溜まっている。
それを外へ出さなければならない。
だから傷を治すだけでは再び悪くなる。
病気の正体と治療法が、かなり強く結びついている。
ここでキシリカの知識がもう一度重要になる。
現代ではドライン病自体が消えている。
ならば「魔力を外へ出す薬草」という発想も残りにくい。
治療法が忘れられたのは、必要とされる機会がなくなったからでもある。
ソーカス草も同じ。
昔はドライン病の患者へ使われていた。
患者がいなくなれば、治療に使う文化も消える。
そのうち何のための草だったのかも分からなくなる。
病と薬の両方が、歴史の奥へ沈んでいった。
それをキシリカが掘り起こす。
病名を聞く。
古い記憶を辿る。
ソーカス草へ行き着く。
一人の長命な魔族が覚えていたことで、失われていた治療がもう一度現在へ戻る。
だからソーカス草は、ただの薬草ではない。
キシリカが持つ古代の知識が、実際にナナホシの身体へ届く形になったもの。
ここからルーデウスたちは、知識を実物へ変えるためにさらに動くことになる。
そしてソーカス草を飲めば、ナナホシの身体から魔力を排出できる。
症状は改善する。
研究へ戻ることもできる。
でも一度飲めば、完全に体質が変わるわけではない。
ナナホシは魔力を持たないまま。
異世界に暮らせば、また魔力へ触れる。
だからその後もソーカス草を茶にして飲み続ける必要がある。
治療は一回の奇跡ではなく、身体を守りながら生きる方法へ変わる。
ここまで見ると、キシリカが与えたものの大きさが分かる。
一つの薬草の名前。
でもそれによってナナホシは、ただ命をつなぐだけではなく、この世界で帰還研究を続ける時間まで取り戻せる。
キシリカの古い記憶が、ナナホシの未来そのものへつながっている。
第5章 キシリカを見つけても終わらない|ソーカス草はどこにある?
最初に生えていたドラゴンテイルの洞窟は、すでに失われている
キシリカからソーカス草の名前を聞いた時点で、ルーデウスたちは大きく前進する。
ナナホシの身体へ溜まった魔力を外へ出せる。
葉を茶にして飲ませればいい。
治療へ必要なものが、ようやく具体的な形になった。
ところが、ここですぐ薬草を手に入れられるわけではない。
ルーデウスが「どこにあるのか」と尋ねると、キシリカは昔の群生地を語り始める。
幻の都マイオより北。
赤竜山脈の端。
赤竜の尾と呼ばれた渓谷にある、ドラゴンテイルの洞窟。
その奥深くにソーカス草が群生していたという。
場所が分かった。
それなら取りに行けばいい。
ナナホシを待たせている以上、多少遠くても向かうしかない。
ルーデウスも次の旅を覚悟する。
しかしキシリカの話には続きがある。
そのドラゴンテイルの洞窟は、もう存在しない。
第二次人魔大戦の末期。
龍神と闘神の戦いによって大陸へ大穴が開き、その場所自体が消えてしまったという。
数千年前の治療法を見つけたと思った直後に、薬草の群生地まで数千年前に失われている。
ここで一度、治療への道が閉じたように見える。
ナナホシは待っている。
必要な植物も分かった。
でも生えていた場所が消えている。
古代の病を治すには、古代に失われた植物まで必要だったことになる。
ところがキシリカは、そこで話を終わらせない。
ドラゴンテイルの洞窟は、あくまでソーカス草が最初に発見された場所。
ソーカス草そのものが世界から消えたわけではない。
日の差さない深い洞窟の奥に育つ植物だと説明する。
さらにキシリカは、昔からソーカス茶を気に入っていた。
そこで各地の魔王たちへ命じ、城の地下でソーカス草を栽培させていたという。
絶滅したと思われた薬草が、魔王たちの嗜好品として残されていた。
ナナホシの命を救う植物が、思わぬ形で現在まで生き残っている。
この話が面白いのは、ソーカス草が最初から病人のために保存されていたわけではないところ。
キシリカ自身が茶として好んでいた。
魔王たちも飲む。
そのため栽培が続く。
結果として数千年後、ドライン病になったナナホシへ必要な薬草が残っていた。
キシリカの気まぐれが、遠い未来のナナホシを助けることになる。
本人がそんな未来を想像していたわけではない。
ただソーカス茶が好きだった。
それでも長い時間を経て、その習慣が治療法の保存につながっている。
さらにキシリカは、ソーカス草が自分の城でも栽培されていると明かす。
ルーデウスたちは、幻の植物を求めて失われた洞窟へ行く必要まではない。
古代の薬草は、魔王側でちゃんと受け継がれていた。
ここでようやく、本当にナナホシへ持ち帰れる可能性が見えてくる。
キシリカを見つければ治る。
そこまで単純ではなかった。
病名を知る。
治療法を知る。
薬草の名前を知る。
生えていた場所を知る。
その場所が消えていると知る。
さらに現在の栽培地へ辿り着く。
いくつもの段階を越えて、ようやく実物へ近づいていく。
だからキシリカは、答えを一つだけ出す人物ではない。
古い記憶の奥から次々と手掛かりを取り出す。
一つ行き止まりになっても、別の道を知っている。
7000年前の病と現在のナナホシがつながったのは、この長い記憶があったからになる。
魔王たちがソーカス草を栽培していたことで、治療への道が現在まで残っていた
ソーカス草が魔王たちの城へ残っていると分かれば、状況は大きく変わる。
もう伝説の植物ではない。
実際に栽培されている。
手に入れさえすれば、ナナホシへ持ち帰れる。
治療が現実的なものになる。
しかもキシリカによれば、ソーカス茶は昔から飲まれている。
不死魔王の血族も飲んでいるという。
ナナホシだけのために突然作られた薬ではない。
長い時代を通して使われてきた植物だった。
ここで古い病と魔族の生活がつながる。
人間社会ではドライン病が消え、ソーカス草も忘れられた。
でも魔族側では茶として残った。
同じ世界でも、知識が残っている場所が違う。
だから人間側だけを探していても、治療法へ届かなかった。
ルーデウスたちが魔大陸まで来た価値もここにある。
ラノアで文献を探すだけではない。
実際に古代を知るキシリカへ会う。
さらに魔王たちが暮らす土地へ入る。
失われたものを、まだ持っている者から直接受け取る。
ただし、ここからまた別の問題が割り込む。
ソーカス草の話をしている最中、キシリカを追っていた者たちが現れる。
彼らが仕えている相手こそ、不死魔王アトーフェ。
そしてキシリカは、その名前を聞いただけで露骨に嫌がる。
ルーデウスたちにとってはナナホシの治療が最優先。
しかしキシリカにはキシリカの事情がある。
薬草だけもらって帰りたいルーデウス。
アトーフェのところへ行きたくないキシリカ。
そしてキシリカを連れ帰りたいアトーフェの部下たち。
三つの事情が同じ場所でぶつかる。
さらにアトーフェ側の兵士は、ガスロー地方でもソーカス草を栽培していると話す。
栽培方法まで知っている。
必要なら鉢植えも用意できる。
ナナホシの治療を続けるなら、これは非常に大きい。
一回分の茶だけでは足りない。
ナナホシはこの世界にいる限り、再び身体へ魔力を溜める可能性がある。
ならばソーカス草を継続して確保できる方がいい。
その点でも、アトーフェ側へ話がつながる価値が出てくる。
こうして治療探しは、キシリカからさらに別の魔王へ広がる。
古代の薬草を知る魔界大帝。
それを栽培する魔王たち。
そして不死魔王アトーフェ。
ナナホシ一人を救うための旅が、魔族の古い人間関係へまで入り込んでいく。
第6章 そこでアトーフェが出てくる|治療探しが不死魔王との騒動へ変わる
ソーカス草を手に入れたいルーデウスと、アトーフェから逃げたいキシリカの事情がぶつかる
アトーフェの名前が出ると、キシリカの態度が明らかに変わる。
それまで大声で笑っていた魔界大帝が、会いに行くことを嫌がる。
アトーフェは話の通じる相手ではない。
そう言って逃れようとする。
一方、アトーフェの親衛隊にも事情がある。
彼らは長い間キシリカを追っている。
このまま連れ帰れなければ、自分たちがアトーフェから罰を受ける。
そのため力ずくではなく、ルーデウスたちへ頭を下げて協力を求める。
ここでルーデウスにとって重要なのがソーカス草。
親衛隊はガスロー地方でも栽培していると話す。
栽培方法も知っている。
鉢植えまで用意すると申し出る。
ナナホシを救いたいルーデウスには、無視しにくい条件になる。
では、なぜキシリカはそこまでアトーフェから逃げているのか。
深刻な魔族同士の争いがあったようにも見える。
魔界大帝と不死魔王。
古い因縁が隠れているようにも思える。
ところが事情を聞くと、かなりキシリカらしい話が出てくる。
アトーフェが楽しみにしていた酒。
キシリカはそれを一人で全部飲んでしまった。
当然アトーフェは激怒。
親衛隊へキシリカを捕まえるよう命じる。
それが長い追跡の発端になっていた。
ナナホシは命に関わる病気で倒れている。
ルーデウスたちは治療法を求めて魔大陸まで来ている。
その一方でキシリカが追われている原因は、他人の酒を勝手に飲んだこと。
緊迫した治療探しへ、急にキシリカらしい騒動が混ざってくる。
でもルーデウスからすれば、笑って帰るわけにはいかない。
ソーカス草が必要。
栽培方法も欲しい。
できれば今後も安定して確保したい。
ならばアトーフェ側との話を無視する方が難しい。
そこでキシリカを巡る問題と、ナナホシの治療が一本につながる。
ルーデウスが魔王同士の事情へ首を突っ込みたいわけではない。
最初から目的はナナホシ。
でも必要な薬草を追っているうちに、魔王アトーフェのところまで進むことになる。
ここが「キシリカを見つけたら終わり」にならないところ。
キシリカは答えを持っていた。
でもその答えを実物へ変える途中で、新しい人物が出てくる。
その人物がまた普通ではない。
不死魔王アトーフェ。
名前通り、不死魔族の強大な魔王になる。
ナナホシの病気。
キシリカ。
ソーカス草。
アトーフェ。
一見別々に見えるものが、ここで全部つながる。
治療法を追っていただけのルーデウスが、気づけば魔王の騒動へ巻き込まれていく。
不死魔王アトーフェは誰?キシリカを追う親衛隊との出会いから決闘へ進んでいく
アトーフェは、キシリカと同じく長い時代を生きる魔族側の大人物。
不死魔族。
倒されても簡単には終わらない。
そして何より、非常に戦いを好む。
理屈だけで穏便に話を済ませる相手とは言い難い。
キシリカが「話が通じない」と嫌がるのも、その性格を知っているから。
酒を飲んだことへの怒りだけではない。
捕まってアトーフェの前へ連れて行かれれば、普通の説教で終わる保証がない。
だから半年もの間、逃げ続けていた。
ところがルーデウスたちは、結果としてそのアトーフェ側へ深く関わっていく。
薬草を得るだけ。
最初はそれだけだった。
しかしアトーフェの前では、話が戦いへ転がりやすい。
ルーデウスたちも無関係ではいられなくなる。
アトーフェは相手の強さを見る。
戦う。
自分なりの価値観で相手を認める。
ルーデウス側が「病人を助けたいから薬草だけ欲しい」と考えていても、それだけで終わらせてくれる人物ではない。
ここから治療探しとは思えない規模の騒動になる。
しかもキシリカまで、その場で大人しくしている人物ではない。
逃げる。
騒ぐ。
アトーフェとの間に入り込む。
戦いの最中にもキシリカらしい混乱が起きる。
古い魔王同士の関係が、目の前でそのまま動き始める。
ルーデウスにとっては災難に近い。
でも目的を忘れることはない。
ナナホシが待っている。
ソーカス草を持ち帰らなければならない。
だから魔王との騒動へ巻き込まれても、最終的には治療へ必要なものを確保することが重要になる。
この展開によって、キシリカの存在がさらに大きく見えてくる。
彼女を探さなければドライン病の治療法は分からなかった。
キシリカからソーカス草を聞かなければ、魔王たちの栽培地も分からなかった。
そしてソーカス草を追わなければ、アトーフェへもつながらなかった。
すべての始まりはナナホシの吐血。
そこから7000年前の病へ進む。
魔界大帝を探す。
古代の薬草を知る。
不死魔王のところまで行く。
一人の病気を治すための道が、魔族の歴史を横断するほど大きくなっている。
それでも最後に必要なのは、勝利そのものではない。
アトーフェを倒すことが目的でもない。
ソーカス草を持って帰ること。
ナナホシへ飲ませること。
そして再び生きられる状態へ戻すこと。
だからアトーフェとの騒動も、ナナホシの治療から外れた寄り道ではない。
キシリカが示した古い治療法を、実際に現在へ持ち帰る途中で起きた出来事。
魔界大帝から不死魔王へ。
古代の知識から薬草の実物へ。
ルーデウスたちは一段ずつ、ナナホシが待つ場所へ持ち帰る答えを形にしていく。
第7章 キシリカがナナホシを救ったのは、7000年前に途切れた知識を現代へ戻したから
キシリカがいなければ、ドライン病とソーカス草は結びつかなかった
ナナホシを救った人物は誰か。
そう聞かれると、直接治療した者を思い浮かべやすい。
でも今回のキシリカは、そういう形ではない。
ナナホシへ薬を飲ませたわけでもない。
そばで看病を続けたわけでもない。
それでもキシリカがいなければ、治療はかなり遠かった。
ドライン病という名前だけでは足りない。
何をすればいいのか分からない。
現代ではほとんど患者がいない。
昔の治療法も忘れられている。
そこでキシリカが、古い記憶からソーカス草を引き出す。
茶にして飲めばいい。
体内へ溜まった魔力を外へ出せる。
さらに昔どこに生えていたか。
現在どこで栽培されているか。
そこまで話をつなげる。
ここが一番大きい。
病名。
治療法。
薬草。
栽培地。
これらが別々では、ナナホシのところまで届かない。
キシリカは自分の長い記憶の中で、それを一本につなげた。
7000年前に消えた病だからこそ、現代の人間には分からない。
でもキシリカには、昔の病として残っている。
数千年の時間が断絶にならない。
本人が生き続けているから、知識まで消えずに残る。
だからキシリカの長寿は、単に「昔から生きている」という設定では終わらない。
今回、その長い時間がナナホシの命へ直接つながる。
過去を知っていることが、現在の人間を助ける力になる。
しかもソーカス草が残っていたことにも、キシリカの存在が関わっている。
昔から茶として好んでいた。
魔王たちの城でも栽培される。
結果として、古代の薬草が完全には消えずに残る。
数千年前の嗜好が、未来の患者を助けることになる。
これはナナホシから見れば、かなり奇妙な巡り合わせ。
日本から突然異世界へ飛ばされた。
この世界では珍しい身体だから、古代の病にかかった。
そして治すためには、人間より遥かに長く生きる魔界大帝の記憶が必要になる。
ナナホシは、この世界へ馴染みたい人物ではない。
ずっと日本へ帰ろうとしている。
それでも命を守るには、この世界の最古級の知識へ頼ることになる。
帰りたい異世界人を救うのが、異世界の長い歴史そのものという形になる。
ルーデウスもその間をつなぐ。
ナナホシの病気を知る。
魔大陸へ行く。
キシリカを探す。
ソーカス草を求める。
アトーフェ側の騒動にも巻き込まれる。
そして必要なものを持ち帰る。
一つでも欠ければ治療へ届かない。
特に最初の「ソーカス草」という名前がなければ、何を探すかも分からなかった。
だからキシリカは治療者ではなくても、治療への入口として非常に大きい。
ナナホシの命を救う道を開いた人物になる。
ソーカス草を持ち帰ったことで、ナナホシは再び帰還研究を続けられる
ソーカス草を手に入れれば、ようやく旅の目的がナナホシへ戻ってくる。
魔大陸。
キシリカ。
アトーフェ。
魔王たちの事情。
そこまで広がった話が、最後は一人の少女の身体へ戻る。
ナナホシはソーカス草を茶として飲む。
体内に溜まっていた魔力が排出される。
身体の状態が落ち着く。
ここでようやく、倒れた時の危機から抜け出せる。
ただし、これで何も気にしなくてよくなるわけではない。
ナナホシ自身の身体は、この世界の人間へ変わったわけではない。
魔力を持たない状態は続く。
異世界で暮らす限り、また少しずつ魔力が溜まる可能性がある。
だからソーカス茶は、一度だけ飲む特効薬ではない。
今後も身体を守るために必要になる。
定期的に飲む。
魔力を排出する。
そうしながら、この世界で生活を続けることになる。
ここで栽培用のソーカス草まで確保する価値が出る。
一回分だけ持ち帰っても、また必要になれば魔大陸へ探しに行かなければならない。
育てられる状態で持ち帰れば、継続して治療へ使える。
ナナホシの今後まで考えた形になる。
そして身体が落ち着けば、ナナホシは再び帰還研究へ戻れる。
魔法陣。
召喚。
転移。
日本へ帰る方法。
病に倒れる直前まで追い続けていたものを、もう一度続けられる。
ここがソーカス草の本当の大きさ。
ただ命を救っただけではない。
ナナホシが「日本へ帰る」という自分の目的を続ける時間まで取り戻している。
病気で止まりかけた人生が、もう一度前へ動く。
その最初の手掛かりを出したのがキシリカ。
だから「キシリカはナナホシを救える?」への答えは、かなりはっきりしている。
直接治癒するのではない。
失われた治療法を知っている。
その知識が、ソーカス草へつながる。
そしてソーカス草が、ナナホシの未来へつながる。
第1期では、キシリカはルーデウスへ予見眼を与えた。
あの時は一人の少年へ新しい力を渡した。
第3期では、一人の少女へ生き続ける方法をつなぐ。
同じキシリカでも、残すものが違う。
魔界大帝という肩書。
複数の魔眼。
長すぎる寿命。
一見すると大げさな要素ばかり。
でも今回、一番役立ったのは数千年前のことを覚えていたこと。
強さより、記憶が人を救っている。
だからナナホシとキシリカのつながりは、偶然の再会だけでは終わらない。
7000年前に消えた病。
古代から残った薬草。
現在まで生きる魔界大帝。
そして日本へ帰ろうとするナナホシ。
遠く離れていたものが、全部一つにつながる。
キシリカが過去を覚えていたから、ナナホシは未来へ進める。
今回の治療探しで一番大きいのは、そこになる。
無職転生Ⅲまとめ
『無職転生Ⅲ』の記事を、第3期の放送範囲・ナナホシと転移事件・ペルギウスと空中城塞・未来ルーデウス・オルステッド・魔導鎧・エリスとの再会・ルーデウスの家族などに分けてまとめています。
ルーデウス、エリス、シルフィ、ロキシー、ナナホシ、ペルギウス、オルステッド、ゼニス、アリエル、クリフ、エリナリーゼなど、気になる人物や物語の謎はこちらから探せます。
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