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【アニメMAO】21話 双馬はなぜ摩緒の診療所から逃げた?助けられても白眉と御降家へ戻った少年の執着

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21話 双馬が摩緒の診療所から逃げたのは、摩緒を単純に憎んでいたからではなく、自分が属する場所をまだ御降家側だと思っていたから。
兄・一馬が獣に心を喰われた過去を知りながら、双馬自身は獣の力と御降家への憧れを捨てられず、そこへ白眉が入り込んでいく。
摩緒に命を救われても戻れなかった少年の行動を追うと、双馬が悪人だから敵対したのではなく、力と居場所への執着に引かれて白眉側へ進んだことが見えてくる。

  1. 第1章 結論|双馬が診療所から逃げたのは、摩緒を嫌ったからではなく御降家へ戻りたかったから
    1. 摩緒に助けられても、双馬の心までは摩緒側へ移っていなかった
    2. 双馬にとって「帰る場所」はまだ白眉と御降家の側だった
  2. 第2章 双馬は兄・一馬との戦いの後、摩緒にどう助けられたのか
    1. 獣に心を喰われた一馬と戦い、双馬自身も深く傷ついていた
    2. 本来なら敵側の摩緒が見捨てなかったことが、双馬の立場をさらに複雑にした
  3. 第3章 双馬は摩緒を本当に敵だと思っていたのか
    1. 命を救われたことで、摩緒を単純な敵としては見られなくなっている
    2. 摩緒への敬意があっても、御降家にいる限り敵対する位置から抜けられない
  4. 第4章 双馬はなぜそこまで御降家へ惹かれたのか
    1. 兄・一馬より自分の方が獣を扱えるという思いが、御降家への憧れにつながった
    2. 御降家は双馬にとって「強くなれる自分」を信じられる場所だった
  5. 第5章 白眉は双馬のどこへ入り込んだのか
    1. 兄より自分の方が強いという自負が、白眉に利用されやすい隙になった
    2. 「必要とされる場所」があることも、双馬を御降家へ引き戻した
  6. 第6章 双馬は悪人なのか?助けられても敵側へ戻る少年の危うさ
    1. 一馬のように心を失ったわけではなく、自分で白眉側を選んでいる
    2. 被害者でも悪人でもなく、双馬は自分の執着に引かれて危うい側へ進んでいる
  7. 第7章 診療所から逃げた場面は、双馬が救われる道を一度自分から捨てた瞬間だった
    1. 摩緒の診療所には残れたのに、双馬は御降家へ戻る方を選んだ
    2. 白眉へ戻ったことで、双馬はさらに獣と御降家へ縛られていく

第1章 結論|双馬が診療所から逃げたのは、摩緒を嫌ったからではなく御降家へ戻りたかったから

摩緒に助けられても、双馬の心までは摩緒側へ移っていなかった

第21話で双馬は、一馬との戦いで深く傷つく。
その双馬を助けたのが摩緒だった。
敵対する立場にいる少年だからと見捨てず、診療所へ運び、傷の手当てまでしている。
それだけを見れば、双馬がそのまま摩緒のもとへ残っても不思議ではない。
ところが双馬は、摩緒の目を盗むように診療所から姿を消す。

この行動は、摩緒への敵意だけでは説明しにくい。
双馬は助けられたこと自体を理解している。
摩緒が自分を殺そうとしていないことも分かっている。
それでも残らなかった。
双馬にとって摩緒の診療所は、身体を休められる場所ではあっても、自分が帰る場所ではなかった。

双馬の意識は、まだ御降家側にある。
加神家に生まれ、獣の力へ強く惹かれてきた。
兄・一馬がその獣に心を喰われても、自分まで同じになるとは考えていない。
むしろ兄には扱えなかった力を、自分なら扱えるという自負が残っている。
その思いが御降家とのつながりを切れなくしている。

だから摩緒に救われたことと、摩緒の側へ移ることは別になる。
命を救われた。
傷も治療された。
それでも、自分が信じてきたものまで一晩で捨てられるわけではない。
双馬の中では、恩と所属が別々に存在している。

ここが双馬の分かりにくさになる。
摩緒を完全な敵として憎んでいるなら、逃げる行動は単純になる。
しかし実際には、摩緒へ向けた感情はそれだけではない。
助けてもらった事実がある。
その一方で、自分の居場所だと思っている御降家もある。
二つの間で揺れながら、最終的には御降家側へ戻る方を選んだ。

しかも双馬には、一馬の件が残っている。
兄は加神家の獣を身体へ納め、最後には心を喰われた。
双馬自身もその悲劇の当事者になる。
兄を止めなければならない状況まで追い込まれた。
普通なら、加神家の獣そのものから距離を置いてもおかしくない。

それでも双馬は、獣への執着を失わない。
兄と同じにはならない。
自分ならもっと上手く扱える。
そんな思いが残っているからこそ、獣と御降家から簡単には離れられない。
摩緒に救われても戻ったのは、双馬の中でまだ「自分は御降家側の人間だ」という感覚が強かったからになる。

双馬にとって「帰る場所」はまだ白眉と御降家の側だった

双馬が診療所から消えた場面は、単なる逃走ではない。
自分がどこへ戻るかを選んだ場面でもある。
摩緒のもとに残れば、少なくともすぐ命を狙われることはない。
一馬の件について話すこともできる。
獣から距離を取る道もあった。
それでも双馬は、その道を選ばなかった。

その先にいるのが白眉になる。
白眉は双馬にとって、ただの上位者ではない。
御降家へつながる存在であり、双馬が求める力へ近づける人物でもある。
自分を必要としてくれる。
獣の力を否定しない。
双馬が捨てきれないものを、そのまま肯定する側にいる。

摩緒は逆になる。
摩緒から見れば、一馬を壊した獣は危険なもの。
同じ悲劇を双馬へ繰り返させたくない。
双馬を救おうとすればするほど、獣との距離を取らせる方向へ進む可能性が高い。
しかし双馬自身は、まだそこまで獣を手放す気になっていない。

だから双馬にとっては、摩緒の優しさがそのまま居心地の良さにはならない。
助けてもらった。
でも、自分が欲しいものまで認めてもらえるとは限らない。
白眉の側なら、自分の執着を否定されずに済む。
その違いが、双馬を再び御降家へ引き戻していく。

双馬が逃げたのは、摩緒に恩を感じなかったからではない。
むしろ恩があるからこそ、行動に迷いが見える。
それでも最後に選んだのは、自分がこれまで信じてきた側だった。
人は一度助けられただけで、長く抱えてきた価値観まで簡単には変えられない。
双馬の逃走には、その頑固さが出ている。

第2章 双馬は兄・一馬との戦いの後、摩緒にどう助けられたのか

獣に心を喰われた一馬と戦い、双馬自身も深く傷ついていた

双馬が診療所へ運ばれるまでには、兄・一馬との重い出来事がある。
一馬は加神家の当主として獣を身体へ納めた。
しかし、その力を最後まで御し切れなかった。
獣の邪気に心まで侵され、夜の街で人を襲う通り魔へ変わっていく。
双馬にとっては、敵を倒すというより兄を止める戦いだった。

相手が見知らぬ妖なら、迷いは少ない。
だが一馬は兄になる。
以前の姿を知っている。
言葉を交わした時間もある。
その人物が、獣に心を喰われて別人のようになっている。
双馬は戦いながら、兄を失う現実まで突きつけられる。

その戦いで双馬自身も傷つく。
一馬を止めるために前へ出た結果、身体は限界に近づく。
精神的にも余裕がない。
兄の悲劇を目の前で受け止めた直後になる。
そんな双馬を放っておかなかったのが摩緒だった。

摩緒は双馬を診療所へ運ぶ。
敵側だからと切り捨てない。
御降家に関わる少年だからと、傷を放置することもしない。
医者として目の前の傷を治す。
双馬からすれば、自分が警戒していた相手に命をつながれた形になる。

ここで双馬の中に、摩緒への見方が少し揺らぐ。
少なくとも「ただの敵」ではない。
自分が弱っている時に利用することもできた。
捕まえて情報を聞き出すこともできた。
それでも摩緒は、まず双馬の身体を治すことを優先した。

だから診療所から逃げたことが、余計に印象に残る。
嫌いな相手から逃げただけなら簡単な話になる。
しかし双馬は、助けられた直後に自分からその場所を離れている。
摩緒の行動を見てもなお、御降家側へ戻る意志の方が強かった。
そこに双馬の深い執着が見える。

本来なら敵側の摩緒が見捨てなかったことが、双馬の立場をさらに複雑にした

摩緒と双馬は、最初から同じ目的で動いているわけではない。
双馬は白眉に付き従い、御降家の側にいる。
摩緒から見れば、警戒して当然の人物になる。
それでも傷ついた双馬を前にすると、摩緒は敵味方だけで判断しない。
目の前に治療が必要な者がいるなら助ける。

この態度は、双馬にとって厄介でもある。
摩緒が明確な悪人なら、迷わず敵だと思える。
助けられた恩もない。
御降家へ戻ることにも迷わない。
しかし実際には、摩緒は双馬の命を救っている。
だから双馬の中には、敵意だけでは片付けられない感情が残る。

それでも診療所を去る。
ここで双馬は、摩緒への恩より自分の立場を優先した。
白眉のもとへ戻る。
御降家へ戻る。
獣の力を捨てない。
その選択を自分でしている。
誰かに無理やり連れ戻されたわけではないところが大きい。

双馬は完全な被害者ではない。
一馬を失った傷がある。
加神家の事情も背負っている。
白眉から利用される余地もある。
それでも最終的にどこへ行くかは、自分で選んでいる。
この自発性が、双馬を単純な可哀想な少年だけでは終わらせない。

同時に、完全な悪人とも言い切れない。
摩緒に助けられたことを理解できる。
兄への感情もある。
自分の立場に迷いもある。
それでも御降家へ戻ってしまう。
双馬は、善悪がはっきり分かれた人物ではなく、自分の執着に引かれて危うい方向へ進む少年として見えてくる。

診療所から逃げた場面は、その危うさが一番分かりやすく出た。
助けてもらった場所に残る道はあった。
摩緒と話す道もあった。
それでも双馬は、これまでの自分を捨てない方へ戻った。
第21話の逃走は、双馬がまだ摩緒側へ踏み出せないことをはっきり示した場面になる。

第3章 双馬は摩緒を本当に敵だと思っていたのか

命を救われたことで、摩緒を単純な敵としては見られなくなっている

双馬が診療所から逃げたからといって、摩緒への敵意だけで動いているとは限らない。
むしろ第21話では、その逆のものまで見えている。
一馬との戦いで傷ついた双馬を、摩緒は見捨てなかった。
御降家側の少年だからと捕らえるより先に、負傷した身体を診療所へ運んでいる。
双馬はその事実を、自分の身体で知ることになった。

これは双馬にとって小さくない出来事になる。
白眉の側から見れば、摩緒は対立する人物。
五色堂で起きた過去を背負い、御降家の兄弟子たちとも複雑な関係を持つ。
双馬もその対立の外側にはいない。
ところが実際に摩緒と接すると、聞かされていた敵の姿とは少し違う。

摩緒は双馬へ恩を着せようとしない。
弱っているところへつけ込んで、無理にこちら側へ引き込もうともしない。
目の前に傷ついた人間がいるから治す。
これまで菜花や多くの患者へ向けてきた態度と同じように、双馬にも医者として向き合う。
双馬からすれば、そこで一度価値観を揺さぶられる。

兄・一馬の件も重なっている。
一馬は加神家の獣に心を喰われ、通り魔へ変わっていった。
双馬にとって最も苦しい時期に、白眉側ではなく摩緒が身体を救った。
本当に摩緒がただの敵なら、ここまでして助ける必要はない。
その矛盾を双馬も感じていたはずになる。

だから診療所から去る場面は、摩緒を拒絶したというより、そこに留まれなかったと見る方が近い。
助けられたことは分かる。
摩緒が悪人ではないことも見えてくる。
しかし、それだけでこれまで信じてきた御降家や白眉とのつながりを切ることはできない。
双馬の中では、二つの感情が同時に残っている。

ここが双馬という人物の面白いところになる。
摩緒を嫌っているから敵側にいる、という単純な構図ではない。
自分を助けた人への感情。
御降家への憧れ。
獣への執着。
兄を越えたいという思い。
それらが重なり、摩緒に救われてもそのまま味方にはなれない。

摩緒への敬意があっても、御降家にいる限り敵対する位置から抜けられない

双馬の立場を難しくしているのは、気持ちと所属が一致していないところになる。
摩緒に助けられた。
だから摩緒を嫌い続ける必要はなくなっていく。
それでも自分が御降家側に戻れば、戦場では摩緒と向き合う可能性がある。
個人的な感情と、現在いる場所が別方向へ動いている。

これは『MAO』で何度も描かれてきた関係にも近い。
五色堂で共に修行していた兄弟子たちも、すべてが単純な敵味方には分かれない。
百火には百火の事情がある。
華紋にも独自の立場がある。
不知火や白眉にはさらに別の目的がある。
昔の縁が残ったまま、現在では違う側へ立っている。

双馬もその複雑な世界へ入っている。
摩緒を認めることと、摩緒の味方になることは同じではない。
助けられた恩があることと、御降家を捨てることも別になる。
だから双馬が後に摩緒と対立しても、「恩を忘れた」とだけ見ると少し違う。
本人の中では、まだ御降家へ戻る方が自然だった。

診療所から逃げた瞬間、双馬にはいくつかの道があった。
摩緒へ事情を話す。
一馬のことをさらに聞く。
獣から距離を取る。
そのまま治療を受け続ける。
しかし双馬は、そこへ留まらず自分が知っている世界へ戻る。

その選択には、安心感もあったはずになる。
摩緒の診療所は安全でも、双馬にとっては知らない側の場所。
白眉や御降家は危険でも、自分が長く見てきた側になる。
人は必ずしも安全な場所を選ぶとは限らない。
自分が何者なのか分かる場所へ戻ろうとすることもある。

双馬にとって御降家は、敵味方だけで決められる場所ではない。
力を認めてもらえる場所。
自分が何者かを証明できる場所。
加神家の獣を捨てなくてもいい場所。
だから摩緒への感情が変わり始めても、帰る場所まで簡単には変えられなかった。

第4章 双馬はなぜそこまで御降家へ惹かれたのか

兄・一馬より自分の方が獣を扱えるという思いが、御降家への憧れにつながった

双馬を御降家へ戻したものを考えると、加神家の獣を外すことはできない。
兄・一馬は当主として獣を身体へ納めた。
しかし獣を御することができず、次第に心を喰われていく。
最後には人を襲う通り魔へ変わった。
双馬は、その結末を近くで見ることになった。

普通なら、そこで獣を恐れる。
兄を壊したものへ近づきたくない。
加神家の力そのものを捨てたいと考えても不思議ではない。
しかし双馬は違う方向へ進む。
兄が扱えなかったのなら、自分が扱えばいい。
その自負が残っている。

ここには兄への複雑な感情もある。
一馬を大切に思っていたからこそ、その失敗をただ失敗で終わらせたくない。
兄ができなかったことを弟の自分が成し遂げる。
それが加神家の力を証明することにもなる。
獣は恐怖の象徴であると同時に、兄を越えるためのものにもなっている。

御降家は、そんな双馬の欲求と相性がいい。
特殊な術。
強い呪い。
人ならざるものの力。
そうしたものを遠ざける場所ではなく、力として扱う世界になる。
双馬にとって、自分が獣へ惹かれることを否定されなくて済む。
そこが摩緒の診療所との大きな違いになる。

摩緒のもとにいれば、一馬の末路を踏まえて獣の危険を考えることになる。
だが双馬が欲しいのは「危険だからやめろ」という答えではない。
自分なら扱えることを証明したい。
強くなりたい。
加神家の人間として価値を持ちたい。
その願いを残したまま戻れる場所が、御降家だった。

だから双馬の逃走は、忠誠心だけでは説明しきれない。
御降家へ絶対服従しているから戻ったというより、自分の欲しいものがそこにある。
獣。
力。
自分を認めてもらえる立場。
その全部が、双馬を診療所から外へ向かわせている。

御降家は双馬にとって「強くなれる自分」を信じられる場所だった

双馬はまだ若い。
それでも兄の死という大きな出来事を背負っている。
自分の家に伝わる獣が兄を壊した。
その事実を受け入れるだけでも重い。
もし獣そのものを否定すれば、加神家が長く持ってきたものまで否定することになる。
双馬自身の誇りにも触れてくる。

そこで「自分なら違う」という考えが支えになる。
一馬と同じではない。
自分は獣に負けない。
もっと上手く扱える。
そう信じることで、兄の悲劇に押し潰されずに済む。
双馬にとって力への自信は、自分を守るものでもあった。

御降家は、その自信を保ちやすい場所になる。
獣を捨てろとは言わない。
力を求めることそのものを否定しない。
双馬のように「もっと強くなれる」と考える者にとって、魅力的に映る要素が多い。
そこへ白眉の存在まで加わる。

一方で摩緒の診療所に残れば、別の自分と向き合う必要が出てくる。
兄はなぜ壊れたのか。
本当に獣を使う必要があるのか。
自分まで同じ危険へ入っていないか。
摩緒のそばにいることは、双馬が避けたい問いを突きつけられる場所にもなる。
安全だからこそ、自分の思い込みから逃げられなくなる。

双馬が御降家へ戻ったのは、危険な場所が好きだからではない。
そこにいる方が、自分の信じたい自分でいられるから。
兄より強い自分。
獣を支配できる自分。
加神家を背負える自分。
その像をまだ捨てたくなかった。

だから第21話の逃走は、単なる敵側への帰還ではない。
摩緒の診療所に残れば変わる可能性があった。
それでも双馬は、これまで信じてきた自分を守る方を選んだ。
御降家へ戻った行動には、忠誠以上に「自分はまだ間違っていない」と信じたい気持ちが表れている。

第5章 白眉は双馬のどこへ入り込んだのか

兄より自分の方が強いという自負が、白眉に利用されやすい隙になった

双馬が白眉のもとへ戻るのは、単純な忠誠心だけではない。
双馬には、自分なら兄・一馬より上手く獣を扱えるという思いがある。
一馬は獣に心を喰われた。
それでも双馬は、獣そのものを否定しなかった。
むしろ「自分なら違う」と考えることで、兄の失敗を越えようとしている。

白眉にとって、この感情は入り込みやすい。
双馬が欲しいのは、獣を捨てろという言葉ではない。
自分の力を認めてもらうこと。
もっと強くなれると信じること。
加神家の人間として価値があると感じること。
そこを肯定してくれる相手へ、双馬は自然に引かれていく。

摩緒は逆の立場になる。
一馬が獣に心を喰われたことを知れば、同じ危険を双馬へ繰り返させたくない。
獣そのものから距離を取らせようとする可能性が高い。
双馬にとっては、それが自分の力を否定されることのようにも感じられる。
助けてもらった相手でも、考え方までは簡単に受け入れられない。

白眉は、双馬が捨てたくないものを捨てろとは言わない。
獣への執着。
力への自信。
兄を越えたいという気持ち。
その全部を抱えたまま近づける場所を作る。
双馬からすれば、自分をそのまま認めてもらえるように見える。

ここが白眉の怖いところになる。
無理やり従わせる必要がない。
双馬自身が戻りたくなる条件を作ればいい。
力を求める気持ちを刺激する。
御降家へいることに価値を感じさせる。
そうすれば双馬は、自分で選んだつもりのまま白眉側へ戻っていく。

兄を失った直後の双馬は、特に揺れている。
一馬のようにはなりたくない。
それでも加神家の獣は捨てたくない。
自分なら上手くやれると思いたい。
その気持ちが強いほど、白眉の言葉は入りやすくなる。
双馬の弱さではなく、自信そのものが利用される形になる。

「必要とされる場所」があることも、双馬を御降家へ引き戻した

双馬にとって、摩緒の診療所は安全な場所だった。
しかし安全であることと、自分が必要とされることは同じではない。
摩緒のもとに残れば、まず傷を治す。
獣の危険から離れる。
争いから距離を取る。
双馬自身の力を証明する場面は少なくなる。

御降家では違う。
双馬の力を使う場所がある。
獣を扱える者として見られる。
白眉の側へ立つことで、役割も生まれる。
自分が何者なのか分かる。
双馬にとっては、危険でも居場所として感じやすい条件が揃っている。

一馬の件で、自分の家の在り方まで揺らいでいる。
兄は当主として獣を宿し、その力に敗れた。
双馬からすれば、加神家の価値そのものが崩れかねない出来事だった。
だからこそ、自分が獣を扱えると証明したい気持ちも強くなる。
兄の失敗を、自分が取り返したいという思いまで出てくる。

白眉はそこへ役割を与えられる。
お前には力がある。
まだ使える。
ここにいれば価値がある。
そんな位置を示されれば、双馬は戻りやすい。
摩緒に助けられた恩よりも、自分が必要とされる感覚の方が強く働いてしまう。

だから双馬が御降家へ戻る姿は、洗脳された人物のようには見えない。
むしろ本人の願いと白眉の狙いが重なっている。
そこが厄介になる。
嫌々従っているなら離れるきっかけを作りやすい。
だが双馬自身が、そこを自分の居場所だと思っている。

摩緒の診療所から逃げた行動は、その差をはっきり見せた。
身体は救われた。
でも心まで救われたわけではない。
自分が何者なのか。
どこで力を使うのか。
双馬はまだ白眉と御降家の側に答えを求めている。

第6章 双馬は悪人なのか?助けられても敵側へ戻る少年の危うさ

一馬のように心を失ったわけではなく、自分で白眉側を選んでいる

双馬を見ていると、単純な被害者とも悪人とも言い切りにくい。
兄・一馬を失った。
加神家の獣という危険な力を背負っている。
白眉にも利用されやすい。
ここだけ見れば、周囲に振り回されている少年にも見える。
しかし双馬には、自分で選んでいる部分もはっきりある。

摩緒に助けられた後も、診療所へ残らない。
誰かに連れ出されたわけではない。
自分で姿を消す。
そして御降家側へ戻る。
つまり双馬は、何も分からないまま動かされているわけではない。
今いる場所を、自分なりに選んでいる。

ここが一馬との大きな差になる。
一馬は獣に心を喰われ、次第に自分の判断を失っていった。
通り魔として人を襲う頃には、獣の邪気が深く入り込んでいる。
双馬はまだ違う。
考えられる。
迷える。
誰の側へ行くかも自分で決められる。

だから双馬が敵対する行動を取った時、すべてを白眉のせいにすることもできない。
双馬自身に願いがある。
獣を使いたい。
強くなりたい。
兄を越えたい。
御降家の側で自分の価値を持ちたい。
白眉は、その気持ちを利用している。

ただし、それだけで双馬を悪人と決めるのも早い。
摩緒に助けられたことを理解できる。
兄への感情も残っている。
自分の力への不安もある。
まだ何を選ぶかで変われる場所にいる。
そこが、心を完全に喰われた一馬とは違う。

双馬は悪意だけで摩緒に敵対しているわけではない。
自分が正しいと思う道を選び、その結果として摩緒と反対側へ立っている。
だからこそ厄介になる。
本人にとっては裏切りではない。
自分の居場所へ戻っただけ。
その感覚が、摩緒との距離をさらに広げていく。

被害者でも悪人でもなく、双馬は自分の執着に引かれて危うい側へ進んでいる

双馬の行動を追うと、一貫しているのは獣への執着になる。
兄が壊れても捨てない。
自分なら扱えると思う。
御降家へ戻る。
白眉の側へいる。
どの選択にも、自分の力を手放したくない気持ちが見える。

そこには兄への劣等感もある。
一馬は当主だった。
獣を宿した。
双馬にとっては、先に加神家の力を背負った兄になる。
その兄が失敗したことで、双馬には自分が代わりに成功したい思いも出てくる。
兄を否定したいのではなく、兄ができなかったことを自分がやりたい。

だから双馬は、獣から離れることを敗北のように感じている可能性もある。
摩緒の診療所に残る。
獣を捨てる。
御降家から離れる。
それは安全な道でも、双馬からすれば自分の力を諦める道にも見える。
そのため危険な方を選び続けてしまう。

白眉は、その危うさを見逃さない。
双馬の中にある「自分ならできる」を肯定する。
力を与える。
居場所を与える。
必要とされる感覚を与える。
それによって双馬は、白眉へ利用されていることに気づきにくくなる。

摩緒との関係は、ここからさらに複雑になる。
命を助けてもらった恩がある。
でも敵対する。
摩緒が悪い人間ではないことも分かっている。
それでも白眉側へ戻る。
双馬の中で、感情と行動が同じ方向へ向いていない。

だから第21話の双馬は、善悪だけで見ると分かりにくい。
悪人だから逃げたのではない。
摩緒が嫌いだからでもない。
自分の力と居場所を捨てられず、その執着に引かれて御降家へ戻った。
まだ変われる少年が、危うい方を自分で選んだところに、この場面の重さがある。

第7章 診療所から逃げた場面は、双馬が救われる道を一度自分から捨てた瞬間だった

摩緒の診療所には残れたのに、双馬は御降家へ戻る方を選んだ

双馬が摩緒の診療所から姿を消した場面は、短いのにかなり重い。
傷は治療されている。
摩緒に殺される危険もない。
そのまま残れば、少なくとも身体を休めることはできた。
それでも双馬は、自分からそこを離れた。

つまり双馬には、残る道もあった。
摩緒へ一馬のことを話す。
加神家の獣について聞く。
白眉や御降家から距離を取る。
そのまま治療を受けながら、自分の今後を考える。
いくつもの道が残されていた。

それでも選んだのは、これまで自分がいた側へ戻ることだった。
ここに双馬の頑固さが出ている。
摩緒が悪人ではないことは、もう分かり始めている。
自分を助けたのも事実。
それでも「だから摩緒の側へ行く」とはならない。

双馬の中では、御降家への思いがまだ強い。
加神家の獣を扱いたい。
自分の力を認めさせたい。
兄・一馬ができなかったことを、自分ならできると証明したい。
その思いを捨てれば、自分まで何者でもなくなるように感じていた可能性もある。

摩緒の診療所は、安全な場所だった。
でも双馬にとっては、今までの自分を変えなければ残れない場所でもあった。
獣への執着を疑う。
白眉との関係を疑う。
御降家への憧れも疑う。
双馬にとっては、そちらの方が怖かったのかもしれない。

だから逃げた。
摩緒からではなく、自分が変わる可能性から逃げたようにも見える。
助けられたことで、これまで信じていたものへ疑問が生まれた。
その疑問に向き合う前に、双馬は慣れた側へ戻っていく。
第21話の逃走は、その弱さまで見える場面になる。

白眉へ戻ったことで、双馬はさらに獣と御降家へ縛られていく

御降家へ戻れば、双馬はこれまでの自分でいられる。
獣を求めても否定されない。
強くなりたいと言っても止められない。
白眉の側では、その欲望そのものが利用できる。
だから双馬にとっては居心地が悪くない。

問題は、その居心地の良さが安全とは限らないこと。
一馬は獣に心を喰われた。
双馬はその結末を知っている。
それでも獣を捨てない。
そこへ白眉が入り込めば、双馬は兄とは違う形で同じ力へ縛られていく。

一馬は獣に飲み込まれた。
双馬は獣を求める自分の気持ちに引かれていく。
兄弟で形は違う。
でも、どちらも加神家の獣から自由になれていない。
その共通点が、双馬の今後を不安にさせる。

ただし双馬には、まだ一馬と違う余地が残っている。
心を完全に失ってはいない。
摩緒に助けられたことも覚えている。
白眉の側へ戻ったのも、自分の意思。
だから同じように、別の道を選び直すこともできる。

そこが双馬の物語で一番気になるところになる。
このまま御降家への心酔を深めるのか。
白眉に利用され続けるのか。
それとも摩緒に助けられた記憶が、どこかで双馬を止めるのか。
第21話では、その答えはまだ出ていない。

診療所から逃げた場面は、双馬が完全に敵になった瞬間ではない。
むしろ、救われる道を一度自分から外れた瞬間になる。
安全な場所を捨て、危険でも自分が信じたい側へ戻った。
その選択が、双馬をさらに御降家と白眉へ近づけた。

だから双馬の逃走は、単なる移動ではない。
摩緒に助けられても、まだ変われなかった。
兄の悲劇を知っても、まだ獣を捨てられなかった。
白眉の危うさが見えても、まだ御降家へ戻った。
その一つ一つが、双馬の未熟さと執着をはっきり見せている。

そして、その未熟さがあるからこそ今後が気になる。
双馬はまだ一馬のように壊れてはいない。
摩緒との関係も完全には切れていない。
御降家へ戻った今も、選び直す余地は残っている。
第21話の逃走は、双馬がどこへ向かうのかを大きく分けた最初の分岐点だった。

MAOまとめ

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