PR

【転生貴族3期】トーマスは最後どうなる?

記事内に広告が含まれています。

『転生貴族』のトーマスは、バサマークの死後も生き残り、ミレーユの働きかけでアルスのもとへ移る。
ただし、主君を殺したクランを許したわけではなく、最初からアルスへ忠誠を誓うこともしない。
敵として立ちはだかった男が、新しい居場所で働きながら、アルスを仕える相手として認め始めていく。

Web原作第343話までのネタバレあり。

第1章 トーマスは最後どうなる? 処刑されず、アルスのもとへ

トーマスの捕縛後の行方
場面 トーマスの状態
バサマークの死後 処刑されず拘束が続く
姉の勧誘後 アルスと面会する
カナレへ移った後 試しに働き、主を見極める

バサマークを失っても、トーマスは生き残る

バサマークのために戦っていたトーマスを見ると、
敗れた後の身が気にかかる。
主君への忠誠が強い分、
降伏して新しい相手に仕える姿は想像しにくい。
クランへの反発を隠さないままなら、
主君と同じように命を奪われてしまうのか。
姉のミレーユと、もう一度話す機会が
あるのかも気になるところになる。

結論から言うと、トーマスは
バサマークの死後も生き残る。
捕らえられたまま処刑される展開にはならず、
ミレーユの働きかけによって
アルスのいるカナレへ移る。
敵将としてアルスたちの前に立ちはだかった男に、
別の場所で働く道が開かれる。
主君の敗北が、そのまま本人の最期にはつながらない。

ただし、命が助かったからといって、
すぐクランへ頭を下げるわけではない。
バサマークを殺した相手に仕えたくないという
思いは強く残る。トーマスにとって、
戦が終わったことと、気持ちに決着がついたことは
同じではない。周囲が新しい日々へ進み始めても、
自分だけはそのままでは動けない。

アルスのもとへ来た時も、
最初から忠誠を誓う姿にはならない。
しばらく働き、仕える相手として認められるかを
確かめる形になる。アルスにも、
自分を必要な人材かどうか判断してよいと伝える。
居場所をもらうだけの関係ではなく、
互いに相手を見ながら始める関係に近い。

その後のWeb原作では、
兵の訓練などを担当し、
ローベント家の中で役割を持つ。
さらに第343話でも軍事について話す場に
登場している。少なくとも、捕虜となった後に
姿を消し、生死不明のまま終わる人物ではない。
戦場で使っていた力を、
今度はアルス側のために働かせていく。

ここで少し安心するのは、
トーマスのこれまでを全部捨てることが、
生き残る条件になっていない点にある。
バサマークに仕えた過去も、姉への反発も、
新しい場所へ来た途端に消えるわけではない。
扱いづらさを残したままでも、働く場所は得られる。
きれいに気持ちを切り替えないところが、
かえって自然に見える。

もちろん、ここでいうその後は、
物語全体の最後の瞬間までを指していない。
Web原作で確認できる範囲の行方として、
生存とカナレでの活動が描かれている。
誰と最終決戦をするのか、
復讐が果たされるのかといった先まで、
一つの結末にまとめられる段階ではない。

アニメでトーマスの行方が気になったなら、
まずは主君と運命を共にして
死ぬわけではないと答えられる。
ただ、生きていることだけで
気持ちが軽くなる人物でもない。
命をつないだ先で、誰のために力を使うのかを
選び直していく。彼のその後で気になるのは、
そこからの歩みになる。

新しい居場所はクランの直属ではなくローベント家

アルスもクランに仕える立場にあるため、
トーマスがカナレへ移る話には
少し引っ掛かりが残る。
直属ではなくても、結局はクラン側に入るのではないか。
本人も同じ点をミレーユへ指摘しており、
名前だけ仕える相手を替えれば
納得するような話にはなっていない。

それでも、日々顔を合わせ、指示を受け、
自分の働きを見てもらう相手が誰になるかは大きい。
主君を殺した当人のすぐ下で働くのか、
別の領主を自分で見極めるのかでは、
気持ちの置き場が変わる。
アルスはまだ、トーマスが直接知る機会の少ない
若い領主でもある。

しかも、ミレーユの誘いには、
牢から出られるという目先の話だけでは
済まない含みがある。
アルスは優秀な人材を集め、
将来大きな勢力を持つかもしれない。
姉はその先行きを示しながら弟へ会うことを勧める。
トーマスの中に残る思いと、
アルスの未来がつながる余地を作っている。

ただ、アルス自身がトーマスの復讐を
引き受けると約束したわけではない。
ミレーユの見通しと、
アルスが本人へ示した態度は分けられる。
面会したアルスが受け入れたのは、
まず領地のために働いてもらい、
自分を認めてもらう形になる。
最初から同じ目的で固く結ばれた仲間ではない。

この距離が残っているから、
加入後の変化にも手応えがある。
姉から聞いた評判だけでなく、
実際に領地を見て、人材を見て、
アルスを評価する時間がある。
敵として知っていた相手の陣営を、
今度は内側から眺める。
そこで見える姿は、戦場でぶつかった時とは変わってくる。

アルスの側にとっても、
有能なら何の迷いもなく迎えられるというほど
単純ではない。これまで敵として戦い、
主君への恨みも抱える相手になる。
それでも、すぐに忠誠を求めて関係を閉じるより、
働きながら互いを知る道を選ぶ。
トーマスが踏み出せるだけの余白を残した
受け入れ方に見える。

生き残った後のトーマスは、
完全に自由な放浪者にも、
何もかも納得した忠臣にもならない。
過去への思いを持ち、新しい場所で働き、
次の主としてアルスを認めるか迷っている。
敵として戦った人物が仲間になる途中を省かずに描くため、
カナレへ来た後も彼の表情が気になってくる。

第2章 捕らえられたトーマスは、 どう扱われていた?

戦に敗れても失われなかった能力への評価

トーマスは、ただバサマークのそばにいた
家臣ではない。アルスたちが攻略に苦しむ側の
軍師として、策を重ね、兵を動かしていた。
アニメ第24話のベルツド城攻略でも、
一度見抜いたと思った策の先に罠がある。
相手にすると厄介な男だからこそ、
捕らえられた後の処遇にも緊張が残る。

強敵が敗れた時、視聴している側には
勝利への安堵がある。
その一方で、あれほど必死に戦った人物を、
戦が終わったからもう不要と切り捨てられると後味が重い。
トーマスは忠誠を曲げにくい相手でもあり、
単純な降参では話が済まない。
負けた後のほうが、
彼の頑固さが際立つ面もある。

Web原作で捕縛後の行方が話題になる時、
トーマスはアルカンテスへ移されている。
クランへ従う様子はなく、拘束が続いている。
戦力としてはすでに敗れていても、
気持ちまで屈したわけではない。
捕らえた側が望む返答をしないまま、
時間が過ぎている状態になる。

クランは、その能力を手放すには惜しいと見ている。
敵の主力を打ち破ったからといって、
本人の才まで低く評価してはいない。
むしろ、使える人材として迎えたい気持ちがある。
敗将になったことと、
能力がなくなったことを同じにしていない点が、
トーマスの生存につながっている。

ここで助かるのは、ミレーユの弟という関係だけが
頼みではないこと。トーマス自身にも、
敵から必要とされるだけの力がある。
姉が話を持ち込むより前に、
クランは家臣としての可能性を見ている。
その評価があったからこそ、
説得の機会を残す扱いにも
つながっていたと考えられる。

能力を惜しまれている状況は、
希望にもなるが、本人には別の苦しさもある。
生き残るためにその力を誰へ渡すかを問われるためにある。
トーマスが命だけを優先して返答しない以上、
周囲には頑固に見えても、
本人にとって譲れない部分がそこに残っている。

ただし、能力が高いから
戦の責任を問われないと決まるわけでもない。
同じ陣営にいた人々が皆、
同じ処遇を受けるわけではない中で、
彼は拘束されたまま使い道を探られている。
助命と自由が一緒に与えられた状態ではなく、
身柄を押さえられたまま交渉を待つ立場にある。

トーマスからすれば、自分の力を認められても、
その相手に尽くしたいとは限らない。
能力を評価する言葉が、
主君を失った痛みの埋め合わせになるわけではない。
クラン側の好条件と、
トーマス側の譲れない気持ちがかみ合わない。
才を惜しまれるだけでは動けないところに、
彼らしさが残っている。

結果として、すぐに殺される道は
避けられているものの、
そのままでは次の居場所も決まらない。
クランは迎えたい、トーマスは従いたくない。
その行き詰まりへ外から入ってくるのが
ミレーユになる。姉の登場は、
単なる家族の面会ではなく、
止まっていた話を動かすきっかけにもなる。

幽閉されたまま、勧誘を拒む日々

ミレーユが訪ねた時、
トーマスが収容されているのは地下牢ではない。
アルカンテス城の中にある、
ある程度の広さを持つ部屋になる。
クランは家臣に迎えたい人物を、
環境の悪い地下へ置いてはいない。
ただ処刑を待つ囚人のような扱いとは違い、
相手の価値を認めた対応が取られている。

それでも、扉の前には武装した兵士が立っている。
脱走を防ぐための見張りがあり、
自分の意思で外へ出られる暮らしではない。
広い部屋があることと、
自由を与えられていることは別になる。
待遇が比較的よくても、主君を失った後に
閉じ込められている状況そのものは変わらない。

会いに来た姉も、好きなようには振る舞えない。
ミレーユは二人だけで話したいと求めるが、
兵士は規則を曲げず、立ち会いが必要と伝える。
姉弟のやり取りでありながら、
敵側が管理する場所での面会でもある。
身内だからすべてが許される場ではないことが、
この対応から伝わってくる。

部屋にいるトーマスは少しやつれ、
姉へ険しい顔を向ける。
普段通りの軽口を投げられても、
うれしそうには応じない。
会いたかった気持ちが表に出る再会ではなく、
相手の顔を見ただけで反発が先に立つ。
ミレーユが来れば簡単に気分が晴れるという
状況ではない。

ここは、命が助かっているなら十分と思うだけでは
届かない場面に見える。
トーマスは自分の待遇以上に、
誰に仕えるかを大事にしている。
快適な部屋へ移されたとしても、
失った主君は戻らず、クランへの感情も消えない。
物を与えれば気持ちまで動くような相手ではない。

そのため、牢を出たいかどうかだけを尋ねても、
勧誘は進みにくい。
外へ出る条件がクランへ従うことなら、
トーマスは拘束を受け入れてでも拒む。
その頑なさは危うくもあるが、
忠誠を簡単に売らない人物として見てきた姿とはつながる。
負けた途端に態度を変えないところが、
敵でも気になる。

ミレーユが差し出すのは、
そのままクランの前へ連れていく道とは違う。
まずはアルスに会い、
別の主を知るという選択になる。
拘束された場所から出るためだけではなく、
出た後に何を目指せるかまで示そうとしている。
トーマスがようやく耳を傾けるには、
目先の待遇以外の話が必要になっている。

第3章 生きて出られても、 クランには仕えたくない

バサマークへの恩は、敗戦でも消えない

バサマークが敗れたからといって、
トーマスの中で主君の価値まで
なくなるわけではない。
戦の勝敗と、受けた恩の重さを別々に抱えている。
勝者に従うほうが生きやすくても、
それで過去を片づけられない。
主君がいなくなった後のトーマスは、
そうした立ち止まり方をしている。

ミレーユがバサマークを低く言うと、
トーマスははっきり反発する。
すでに亡くなった相手でも、
侮られることを許したくない。
自分を勧誘するための言葉であっても、
主君への恩を否定されれば受け入れない。
彼の心を動かすには、
単に相手の敗北を突きつけても足りない。

この反発には、失った人との関係を
他人に決められたくない気持ちも重なる。
戦争に負けた人物として評されるバサマークと、
トーマスが仕えた主君の姿は、
同じ言葉では語れない。
外から見れば敗将でも、
本人にとっては受けたものがある。
その差は、戦の結果だけでは埋まらない。

クランへの拒絶も、
ただ相性が悪いという話ではない。
自分の主君を殺した当人の下で働くことになる。
能力を必要とされていても、
これから命令を受けるたびに
主君の最期と向き合う可能性がある。
優遇されたから忘れようとは、
簡単に言えない相手になる。

ここでトーマスの頑固さを、
世渡りが下手というだけで片づけるのは少し寂しい。
仕える相手をどう選ぶかは、
彼が自分で持っていたい部分でもある。
戦では身柄を奪われても、
誰へ忠誠を向けるかまで勝者に渡したくない。
その最後の抵抗が、勧誘を拒む姿ににじんでいる。

トーマスがバサマークをかばう言葉には、
相手がもう自分を助けてくれない状況でも
恩を忘れない姿が出ている。
これから褒賞をもらうための忠誠ではなく、
すでに受けたものへの思いになる。
先の得にならなくても捨てない関係があると分かるから、
新しい主への返事も軽くできない。

一方で、その気持ちを守り続けるだけでは、
拘束から抜け出しにくい。
主君のために何かしたいと思っても、
閉じ込められた部屋では動けない。
拒み続けることが忠誠の証しになっているようで、
その忠誠を行動へ移す機会も失っている。
この行き詰まりが、
姉の誘いを受け止める土台になる。

バサマークの死後も生きることは、
主君を忘れることと同じではない。
新しい相手のもとで働くことも、
すぐ過去への裏切りになるとは限らない。
それでも本人の中では、
その区切りを簡単につけられない。
トーマスが動くまでに時間が必要なのは、
仕事探しより深いところで迷っているためと考えられる。

アルスたちの勝利を願いながら見ていても、
主君への思いを捨てきれない
トーマスの姿には引っ掛かる。
敵だから倒してほしい気持ちと、
ここで死んでほしくない気持ちは同時に生まれ得る。
彼が生きる道を選ぶ時も、
忠誠まで薄くなってしまわないでほしいと感じる場面になる。

アルスへの勧誘にも、すぐには応じない

ミレーユは、仕えるのは
自分が仕えるアルスであって、
クランの直属ではないと話す。
しかし、トーマスはアルスもクランの家臣なら
同じではないかと返す。
細かな立場の違いを示しただけでは、
本人の中にある敵味方の線は動かない。
そこを見落とさず、疑問をぶつけている。

この返答は、勧誘される側として筋が通っている。
トーマスがカナレで兵を強くすれば、
その力はクランの陣営にも役立つ。
直属でないから無関係とは言い切れない。
アルスに会いさえすれば
すべて解決するという話ではなく、
その先にも矛盾を抱えることになる。

だからこそ、ミレーユはアルスの今の地位だけでなく、
将来の成長へ話を向ける。
人を見抜く力があり、優秀な者を集め、
大きな勢力になるかもしれない。
その見通しは、現在の主従関係を固定したまま
語る誘いとは違う。
トーマスが動く先に、
今とは別の可能性を示している。

ただし、トーマスはその説明だけでは応じない。
他に家臣を集めればよいと返し、
自分が行く必要を認めない。
相手が優秀らしいという評判だけで、
主君を失った気持ちまで切り替えられない。
役に立てる場所があることと、
そこへ行きたいと思えることの間には距離がある。

ミレーユのほうも、その場で
クランへの忠誠を弟に求めてはいない。
主君を殺した相手を好きになれとも、
今までを忘れろとも説き切らない。
むしろ、トーマスが何に動かされるかを探りながら、
別の入口を作っていく。
姉の言い方は厳しくても、
弟の反発の強さ自体は分かっているように見える。

クランに仕えることを拒む相手へ、
クランの家臣を紹介する。
勧め方だけを見れば、
うまくいきそうにない話でもある。
ミレーユがそれでもアルスの名を出すのは、
直属かどうかという肩書き以上に、
実際に会わせたいと思うだけの
手応えがあるためとも考えられる。

ここで気になるのは、
アルスがまだ面前にいない点にある。
トーマスは、姉の言葉を通して
若い領主の姿を聞いている。
知らない子供を新しい主として勧められても、
簡単に信用できない。
後で実際に会い、働く姿を確かめる時間が必要になることは、
この場面からもつながる。

勧誘の段階で全部を納得させなかったことが、
後の関係にはむしろ合っている。
クランへの恨みを持ったままでも、
まずは会いに行く。
その小さな変更なら、
トーマスにも選べる余地がある。
忠誠を丸ごと移すより前に、
人を知るための一歩だけを踏み出す形になる。

第4章 ミレーユはどうやって、 頑固な弟を連れ出した?

ここからはWeb原作の
勧誘後の展開にも触れる。

嫌っていても、言い返せない姉との関係

ミレーユは、弟に会いたいという話を
アルスへ持ちかけ、
自分で書状を運んでクランに面会する。
手紙の返事を待つより、
直接行ったほうが早いという動き方になる。
普段の軽さを残したまま、必要な話は自分で進める。
弟を放っておかないことが、
言葉より先に行動へ表れている。

ただ、迎えに来た姉を見て、
トーマスが素直に喜ぶ場面にはならない。
ミレーユは冗談を交えて話すが、
弟は冷たく返す。
明るく再会を祝う空気とはほど遠い。
戦の後なら姉弟の仲も自然に戻る、
という都合のよい展開にしないところが、
二人の関係らしく見える。

ミレーユの軽口には、場を緩める働きがあっても、
トーマスへそのまま通じるわけではない。
同じ親だろうと突っ込んでほしい冗談にも、
弟は応じない。
姉が普段の調子で近づこうとしても、
弟はまだ同じ場所へ戻れない。
その温度差に、閉じ込められていた時間の重さも
感じられる。

話が進まなくなると、
ミレーユはトーマス自身の過去へ踏み込む。
バサマークへの恩を口にするなら、
自分に助けられてきたことも忘れていないかと問う。
主君への忠誠を否定するだけでなく、
弟が切り離していた姉とのつながりを持ち出す。
嫌いだから無関係とは言い切れない間柄になる。

トーマスはその言葉へすぐ反論できず、黙る。
姉の言い方を気に入らないとしても、
助けられた記憶まで消せるわけではない。
ミレーユへの反発と、
借りがあるという自覚は別々に残っている。
好きか嫌いかだけでは済まない身内のやり取りが、
ここでは強く出てくる。

この場面のミレーユは、
優しく励ますだけの姉ではない。
弟の痛いところを突き、厳しい言葉も使う。
トーマスが聞いて気分のよい説得ではなく、
見ている側も少しひやりとする。
それでも、ただ侮って置き去りにするのではなく、
連れ出すためにここまで来ている点は変わらない。

トーマスが何を言われても平気な弟なら、
こうしたやり取りは成立しにくい。
姉に認めたくない部分があるからこそ、
言葉が刺さる。反対にミレーユも、
弟がまったく動かない相手とは見ていない。
二人にしか分からない積み重ねが、
他人の勧誘とは違う強さを持っている。

ただし、姉だから弟を何でも
従わせられるわけではない。
実際、最初の誘いは拒まれているし、
説得の途中にも沈黙がある。
ミレーユが弟の気持ちをすべて支配しているというより、
反発の残る相手へ、
知っている手掛かりを一つずつ
差し出しているように見える。

耳元のひと言で変わったトーマスの反応

やり取りの終わりに、ミレーユは
トーマスの耳元へ顔を寄せ、何かを囁く。
弟は少し目を見開き、
それまでの拒絶一辺倒の反応から変わる。
その場では何を言ったか明かされず、
会ってみればよいという姉の言葉が続く。
ここは、口にした内容がどうしても気になる。

トーマスの返事も、
今すぐ行くという即答にはならない。
少し時間が欲しいという態度へ変わる。
断ると繰り返していた相手が、
自分の中へ持ち帰る話として受け止める。
それだけでも、勧誘が別の段階へ進んだことが伝わる。
姉の話を受け入れる準備が、
ようやく生まれている。

耳打ちの言葉を、
その場の台詞として作ってしまう必要はない。
後のWeb原作では、
ミレーユがアルスの将来をどう見ていたかが、
トーマスの内心から分かる。
彼は姉の見通しを思い出し、
アルスがミーシアンの覇者になる可能性へ
気持ちを向けている。
囁きの含みを知る手掛かりは、後から与えられる。

立ち会う兵士がいる面会で、
姉が耳元へ寄る動きにも含みがある。
周囲には聞こえない形で弟へ渡された言葉になる。
ただ、その場にいた誰がどこまで察したかまでは
広げられない。
表向きの勧誘だけでは動かなかった弟に、
別の可能性が届いたことが大きい。

ただし、将来の見通しには確証がないと、
ミレーユ自身も含みを残している。
確定した未来を保証して弟を連れ出すのではなく、
アルスに会えば別の道が見えるかもしれないと示す。
その不確かさがあっても、
牢の中で何もできない状態とは
違う選択肢になっている。

トーマスにとっては、
主君への思いを捨てる誘いより、
残したまま動ける誘いのほうが
届きやすかった可能性がある。
バサマークを忘れて新しい生活を楽しもうという話なら、
反発したまま終わったかもしれない。
アルスの成長を確かめることが、
自分の目的とも結びつく余地を持つ。

一方、ミレーユが単に復讐を
けしかけたいだけとも言い切れない。
弟を拘束された場所から出し、
新しい主と出会わせる動きでもある。
軽口や厳しさが目立つため、
まっすぐな姉の優しさには見えにくい。
それでも、結果として弟が
これから働ける場所へつなげている。

姉弟が笑って抱き合う場面より、
ここではトーマスが
会いに行くと決められることが大きい。
嫌いな姉に連れ出される形でも、
自分の目で人を見られるようになる。
説得は完全な和解ではなく、
止まっていた弟の時間を少し進めるものになる。
ミレーユらしい、回り道の多い迎え方に見える。

第5章 アルスに会っても即忠誠とはならない 「試用期間」

仕えるに値する領主か、自分の目で確かめる

ミレーユがトーマスを連れて帰ってきた時、
アルスは勧誘がうまくいったのか気にしている。
姉の勢いは知っていても、
弟が応じるかには自信を持てない。
実際に大男が部屋へ入ってくれば、
人材としての期待も高まる。
それでも、来てくれたことと忠誠を得たことは、
まだ同じではない。

アルスから家臣になるつもりかと聞かれ、
トーマスは首を横に振る。
ここで一度、うまくいったと思った空気が止まる。
姉と一緒に現れた以上、
話は全部ついているのではないかと期待したくなるが、
本人はそこまで進んでいない。
面会することと仕えることを、きちんと分けている。

トーマスが申し出るのは、
しばらく領地のために働くことになる。
アルスが仕えるに値しない領主なら、自分は去る。
逆に、アルスが自分を不要と判断したなら、
雇い続けなくてよいと伝える。
相手だけを試すのではなく、
自分も働きで評価される条件を出している。

このやり取りは、降伏した敵将が
勝者へ命乞いする姿とは違う。
生きる場所は求めても、
無条件の忠誠までは差し出さない。
自分がどんな相手に力を貸すかという判断は、
なお手元に残している。
捕虜の立場から離れた後に、
自分の意思で関係を始めようとしている。

アルスを若い子供として見ているトーマスにとって、
評判だけで長く仕える相手を決めるのは難しい。
鑑定の力がすごいと聞いても、
それだけで領地の運営や人への接し方まで
分かるわけではない。
実際に働いてみれば、
姉の話にはなかった部分も見えてくる。
その時間を求める姿勢にはうなずける。

トーマスの返答は、
アルスに失礼とも取られかねない強さがある。
それでも、誓えないものを誓ったふりにしない。
後で約束が崩れるより、
最初に自分の状態を明かす。
迎える側には厳しい言葉でも、
何を認めれば関係が進むのかは、
むしろはっきりしている。

アルスは能力を見抜けても、
トーマスの心まで思い通りにできるわけではない。
有能な人材と分かることと、
その人に信じてもらうことは別の仕事になる。
これまで敵として戦った相手なら、
なおさら急には進まない。
鑑定があるから一度の面会で解決する話ではないところが、
ここでははっきりしている。

トーマスにしても、働きながら相手を知るなら、
姉の言葉をそのまま信じたことにはならない。
自分の判断で残るか去るかを選べる。
ミレーユに押し切られた形から一歩離れ、
領主としてのアルスを自分で確かめられる。
頑固な彼にも受け入れやすい始まり方に見える。

最初から仲間として笑い合う展開も気持ちよいが、
トーマスにはこの遠慮のなさが合っている。
相手に気に入られる返答より、
自分がまだ誓えないことを伝える。
その厳しい条件を聞いた上で受け入れてもらえるなら、
少なくとも嘘の忠誠で取り繕わずにいられる。

忠誠を急がせず受け入れるアルス

アルスとトーマスの関係の変化
段階 態度や行動
面会した時 すぐには忠誠を誓わない
仕事を始めてから 兵の訓練などを担う
家臣たちを見て アルスの能力を認め始める

アルスは、忠誠を誓えないなら来るなとは返さない。
自分を認めてもらえるよう、
領主として努めると応じる。
従うと口にすることを先に求めるより、
働く中で相手の気持ちが変わる余地を残している。
主君を失った直後のトーマスへ、
無理な区切りを押しつけない受け止め方になる。

ここでアルスが受け取ったのは、
完成した忠臣ではなく、
これから関係を作れるかもしれない相手になる。
能力への期待は大きくても、信頼はまだ育っていない。
その両方を持ったまま仕事を任せるため、
歓迎だけでも警戒だけでも足りない。
人を集める力の先に、人と付き合う難しさがある。

しかも、働きぶりを見せる必要があるのは
トーマスだけではない。
アルスも、仕えたいと思える領主かどうかを
見られる立場になる。
部下へ一方的に評価を下す関係ではなく、
主君の側も日々の判断で試される。
トーマスの条件を受け入れた返答には、
その緊張も含まれている。

この始まり方なら、
トーマスがアルスを認める時にも、
単に恩に縛られたからでは済まなくなる。
助け出された借りだけで残るのか、
領地や人材を見て自分でもよいと思うのか。
その違いを確かめる時間がある。
後の内心の変化は、こうした距離を置いた期間が
あるために自然につながる。

もちろん、受け入れる側が何も備えず
大事なことを任せるわけではない。
アルスは加入後、能力が高くても、
いきなり重要な仕事を与えることには慎重になる。
人材として歓迎することと、
初日からすべてを預けることは分けている。
トーマスの立場を考えれば、
その扱いにも現実味がある。

試用期間という形は、
トーマスをずっと疑って遠ざけるためだけのものではない。
実際に必要な仕事を任され、
役に立てる場面が生まれる。
何もさせずに忠誠だけを待たれるより、
自分の力を出しながら居場所を確かめられる。
彼の気性にも、そのほうが合っているように見える。

アルスのもとに残るかどうかを、
最初の一日で決め切らなくてよい。
クランへの恨みが残っていても、
姉のことが気に入らなくても、
まず目の前の領地で働いてみる。
その程度の始まりを許したことが、
トーマスにとっては大きい。
捕虜として待つだけの時間から、
行動して選べる時間へ変わっていく。

第6章 仲間になった後は何をする? 兵の訓練と、新しい主への評価

戦場以外でも役に立つトーマス

トーマスが来たからには、
何の仕事を任せるかが必要になる。
アルスが最初に思い浮かべるのは、
ミレーユの指示のもとで
ランベルクの運営に関わってもらう案になる。
姉と同じ陣営に移ったのだから、
一緒に働けばよさそうにも見える。
しかし、本人はそこですぐ嫌な顔をする。

姉の指示で働くことはごめんと、
トーマスははっきり拒む。
連れてきてもらったからといって、
弟が急に従順になるわけではない。
ミレーユもその反応を受け、
別の役割を与えたほうがよいと助言する。
再会で全部解決したことにせず、
日々の働き方にも二人の距離が残っている。

話し合いの末、
任されるのはカナレの兵の訓練になる。
敵として戦った時のトーマスの部隊は、
精鋭としての力を持っていた。
その兵を育てた経験が、
今度はアルス側の備えに使われる。
戦場で困らされた相手の強みを、
別の形で頼る展開になる。

ここは、敵として戦った過去が
失点ばかりにならないところが気持ちよい。
アルスたちへ苦戦を強いた事実が、
そのまま能力への評価にもつながっている。
よく訓練された兵を率いていたからこそ、
こちらの兵も任せたい。
戦の終わりで役割を失った男へ、
これまでの経験を使える仕事が渡される。

兵の訓練を引き受けることは、
リーツの負担を減らすことにもつながる。
有能な人材が増える利点は、
目立つ策や一度の勝利だけではない。
誰かが抱えていた仕事を
別の誰かが支えられるようになる。
トーマスの加入は、カナレを日々動かす
人々の余裕にも関わってくる。

さらに後の場面では、
訓練だけでなく勉強を教える活動もしている。
戦場の軍師として見ていた時には目立たなかった、
知識を人へ渡す働きがある。
誰に何をどこまで教えたかを広げて断定はできないが、
戦が起きない時間にも
居場所を持っていることは分かる。

戦争が終われば、有能な将でも
使う場がなくなるとは限らない。
次の戦への備えを整え、人を育てる仕事には、
現場を知る経験が生きる。
トーマスは敵を倒すための力だけを持つ人物ではなく、
その力を周囲へ渡す働きもできる。
新しい場所へ来た価値が、
日常の仕事として形になっていく。

本人の忠誠が固まる前に、
仕事のほうは始まっている。
気持ちが追いつくまで何もしないのではなく、
まず力を貸しながら領地に関わる。
トーマスを迎える側も、彼自身も、
その時間の中で相手を知れる。
仮の関係であっても、
何も積み重ならないわけではない。

有能な家臣たちを見て、アルスを認め始める

アルスの能力について、
トーマスが目を向けるのは
本人の立派な言葉だけではない。
ローベント家に集まった有能な人々の顔ぶれが、
評価の材料になる。
人を見抜く力があると姉から聞くことと、
その結果として集まった家臣を見ることでは違う。
目の前の人材が、評判の裏付けになっている。

自分自身も能力を見込まれて誘われた一人ではあるが、
それだけなら都合のよい勧誘とも受け取れる。
しかし、ほかにも優秀な者が集まり、
それぞれ働いているなら話は変わる。
アルスの力が口先だけではないと、
自分以外の人々から確かめられる。
トーマスの評価は、そこで少しずつ上がっていく。

その結果、正式に仕えるのも悪くないかもしれないと、
トーマスの内心に変化が生まれる。
最初の条件を忘れたのではなく、
確かめてきたからこそ出てくる気持ちになる。
連れてこられた時点では見えていなかったものを、
カナレでの活動を通して見つけている。

ただ、その変化が描かれる時点でも、
正式な家臣になったと
一足飛びには扱われていない。
働いていること、能力を認めていること、
忠誠を誓うことには、それぞれ段階がある。
長くそこにいるから心まで決まったとまとめず、
本人がどこまで気持ちを動かしているかが描かれる。

試しに働く期間が長くなっても、
そこで過ごした時間が空白になるわけではない。
訓練を通して兵と接し、
ほかの家臣の力を知り、領地の動きを見る。
忠誠の言葉より先に、
暮らしと仕事のつながりができている。
その積み重ねも、
アルスを評価する足場になっている。

アルスが毒を受けたと知った時、
トーマスは領地の先行きまで気にかける。
優秀な人材が残っていても、
中心にいるアルスを失えば、
この先は難しいのではないかと見る。
単に能力の高い家臣を何人も持っているだけではなく、
その人々を一つにつなぐ存在としても
評価が広がっている。

ここには、人を集める能力への評価から、
その人がいなければ成り立ちにくい
集まりへの評価という変化がある。
誰か一人の武勇や知略で代われる役目ではない。
トーマスがアルスを若い子供と見ていた頃より、
領地の中での重さを
具体的に感じるようになっている。

敵として戦った時には、
アルス個人の働きが見えにくい部分もあったはず。
リーツやシャーロット、
軍師たちの力が強ければ、そちらへ注目も向く。
内側へ来てから、その人々が一緒に働く中心を知る。
トーマスが新しい主を認め始める流れには、
そうした見える範囲の変化も重なっている。

第7章 主君を失っても終わらない、 トーマスのその後

アルスへの期待と、消えていないクランへの恨み

カナレで働き始めたトーマスは、
アルスを評価するようになっても、
バサマークを過去の人として忘れてはいない。
新しい相手を認めることと、
前の主君への思いを手放すことは別々に進む。
どちらか一つへすぐ片づけないため、
味方になった後にも彼の中には引っ掛かりが残る。

Web原作では、トーマスの目標として
クランへの復讐が残っている。
したがって、アルス側で働いているから、
クランも許して忠誠を誓ったという受け止め方にはならない。
同じ陣営の中にいても、
頂点にいる相手へ向ける感情まで
そろっているわけではない。

アルスが倒れた時、
トーマスは別の州で仕官先を探す可能性にも
気持ちを向ける。
主君の仇に届くには、
どこかで力を使える立場が必要になる。
ここでカナレにいることだけが目的ではないと分かる。
自分がどの先行きを望んでいるかは、
なおバサマークの死とつながっている。

それでも、アルスがまだ死んだと
決まったわけではないと、成り行きを見守る。
すぐ離れるのではなく、残って待つ時間を選ぶ。
心の中では次の道も想定しながら、
今いる場所を簡単に捨ててもいない。
新しい相手への期待が、
以前より確かなものになっているように見える。

この場面を、トーマスは復讐のためだけに
アルスを利用していると決めると、
途中で芽生えた評価が薄くなる。
反対に、すでに過去を乗り越えたとすれば、
クランへの恨みが消えてしまう。
新しい主を認め始める気持ちと、
昔の主への忠誠が、同じ胸の中に残っている。

誰かを亡くした後、別の人を頼ることには、
以前の関係を裏切るような
ためらいが生まれる場合もある。
トーマスは感傷を長く語る人物ではないが、
仕える相手をすぐ決めない姿に、
その難しさを重ねたくなる。
残ることを選んでも、
忘れたわけではないという距離がある。

また、ミレーユの見通しは、
トーマスにとって未来への希望にもなっている。
気に入らない姉の言葉でも、
能力に関する読みは無視できない。
アルスが将来どこまで成長するのかを見届けることが、
自分の次の道にも関わる。
カナレで働く時間には、
現在の仕事と先への期待が重なる。

ただし、その期待からクランへの反乱や
復讐の成功までを先取りはできない。
トーマスが何を望んでいるかと、
実際に何が起きるかは別になる。
現時点の行方として分かるのは、
主君を失った後も命をつなぎ、
自分の力を使いながら、
次に仕える相手を見極め続ける姿になる。

姉への反発を残しながら、同じ陣営で働く

ミレーユとの関係も、
同じ場所へ来たから完全に仲直りしたとは言えない。
トーマスは姉の力を認めながら、
人柄には反発している。
優秀だと思うことと、
一緒にいたいと思うことがそろわない。
相手が身内だからこそ、
素直に認めたくないものも残っているように映る。

仕事を任される場面でも、
姉の指示で動くことには抵抗する。
それでも、違う役割なら同じ領地で働ける。
二人の距離を無理に縮めず、
兵の訓練という別の仕事を持たせたことで、
カナレにいる道が続いていく。
仲がよくなるまで何も始められないわけではない。

ここでアルスが、姉弟というだけで
仲よく働けと押し切っていないところにも安心がある。
トーマスの拒絶を聞き、
ミレーユも別の役割に賛成し、働き方を変える。
人材の相性がよくないなら、
配置で避けられる部分もある。
感情を無理に直す前に、
仕事として成り立つ形を探している。

敵同士の時は、
相手の癖を知る姉の強さが目立っていた。
味方になった後には、
同じ人を上司にしたくないという、
もっと身近な反発へ形が変わる。
命のやり取りをしていた二人が、
今は働き方で揉めている。
その変化には、二人とも生きているからこその安堵もある。

ミレーユも、弟を連れてきたところで
役目を終えるだけではない。
同じ陣営で活動する以上、
弟はまた姉の判断や働きを見ることになる。
嫌っていても、実力まで見ないことにはできない。
トーマスの中で、姉への反発と信頼に近い評価が
離れず続くところが、二人らしく感じられる。

姉に連れ出されながら、
姉の下では働かないという頑固さも残る。
その矛盾を抱えたまま居場所が見つかるところに、
少しほっとする。
トーマスが別人のように丸くならなくても、
新しい場所で役に立てる。
その後の姿には、
彼らしさを残した生存の手応えがある。

トーマスのその後は、救い出された瞬間より、
新しい場所で働く姿の中に実感がある。
訓練を任され、教える仕事をし、
アルスの将来を見つめる。
捕虜の頃には選べなかった行動を、
今は一つずつ選んでいる。
主君を失った人物の人生が、
そこで止まらず続いている。

バサマークと同じ最期になるのかという不安には、
生き残ると答えられる。
ただ、生存の先にあるのは、
何もかも忘れた明るい再出発ではない。
主君への恩も、クランへの恨みも、
姉への苛立ちも残る。
それでも、アルスのもとで働き、
自分の力を必要とされる日々が始まる。

忠誠を誓うとすぐ口にしないトーマスへ、
アルスは認めてもらえるよう努めると返す。
その返答があるから、
新しい関係は途中のままでも始められる。
敵将として敗れた後、
彼にはまだ人を選ぶ時間が残っている。
ミレーユが連れ出した先には、
主君を失っても続けられる暮らしがある。

コメント

タイトルとURLをコピーしました