『転生重騎士』のエルマは、デスアームドを力で押し切ったのではなく、敵の性質と地形を使い、攻撃できる短い隙を作っている。
ルーチェが敵を動けなくし、エルマが〈死線の暴竜〉と〈不惜身命〉を重ねた攻撃を通すことで、レベル差のある相手を倒している。
注意を引く魔石、弾き返される盾、尾を狙う連携をたどると、最後の斬撃までに二人がつないだ行動が見えてくる。
第1章 エルマが勝てたのは、 敵を止める連携と短時間の攻撃を 組み合わせたから
| 戦闘中の難しさ | 二人の対処 | 決着へのつながり |
|---|---|---|
| 速く、接近も危険 | 注意を引き、地形と反動で動く | 尾を狙う時間と位置を作る |
| 脚が攻撃を妨げる | 尾の欠損で行動不能へつなぐ | 強化して接近できる隙が生まれる |
| 硬く、体力と回復力も高い | 不惜身命と死線の暴竜を重ねる | 短時間の斬撃で決着を狙う |
レベル差を埋めたのは、 攻撃力だけではない
エルマが強いスキルを使えば勝てる。
そう聞いても、デスアームドを前にした場面では
安心しきれない。相手は速く、硬く、
少しずつ与えた傷からも立て直してくる。
剣を振るう前に近づくことさえ危ない相手へ、
どうやって最後の攻撃を届かせたのかが気になる。
勝利につながったのは、敵を動けなくする連携と、
その短い時間に攻撃を集中させる切り札になる。
ルーチェがデスアームドの動きを止め、
エルマが〈死線の暴竜〉と〈不惜身命〉を重ねた力を通す。
攻撃力の大きさだけでなく、
攻撃できる状況を二人で作っている。
アニメ第16話「不惜身命」は、
存在進化した相手を前に、逃げられなくなった二人が
一度きりの機会を狙う戦いになる。
ロックセンチピードへ使った方法を、
もう一度繰り返せばよい状況ではない。
さっきまで通じた攻めを手放し、
相手の性質に合わせて組み直す必要がある。
逃げれば助かるという選択も、エルマには取りにくい。
Web原作では、この相手から逃げ切る難しさに加え、
主が徘徊すれば、ほかの冒険者へ
被害が広がることも気にしている。
自分たちの退却だけで危険が消える相手ではなく、
その場で倒す手段を探さなければならない。
この戦いでエルマがすることは、
最初から敵の硬い身体を斬り続けることではない。
ルーチェを尾へ向かわせ、
自分は敵の注意を引いて時間を稼ぐ。
最後に攻撃を担う本人が、その手前では、
仲間を動かすために攻撃を引き受ける側へ回っている。
ルーチェも、エルマのそばで回復を待つだけの役ではない。
危険な相手の背や岩を渡り、
尾を狙い、その後は自分が追われる。
エルマが立つ場所を確保する時間と、
敵を止めるきっかけの両方に、
彼女の動きが関わっている。
そこで一見頼りなく映る行動にも役目が生まれる。
エルマの魔石攻撃は甲殻へ傷を付けられない。
それでも、ルーチェを気にした敵の注意を自分へ戻せる。
与えたダメージだけを見れば小さい行動が、
作戦を続けるためには欠かせない。
盾で敵へ向かう場面も、
相手を押し返して圧倒する流れではない。
能力の差でエルマの方が弾かれるものの、
その反動を移動と回避へ使う。
高いレベルの相手に正面から勝てないことまで、
動きの中へ織り込んでいる。
こうした手順で欲しいのは、
少しずつ相手の体力を減らすことだけではない。
ルーチェが尾へ届き、エルマが岩の上へ移り、
その後の一手を実行できる位置にそろうことになる。
戦闘の途中で二人がどこにいるかが、
最後の威力と同じくらい関わっている。
ルーチェが作る隙と、 エルマが通す決定打
Web原作では、尾を狙われたデスアームドが
ルーチェを追い、大岩の周囲を回った末に、
自分の尾を顎で傷つける。
尾が欠損すると、短時間動けなくなる。
スタンと呼ばれるこの行動不能の間だけは、
近づく相手を妨げる脚も働かなくなる。
つまり、止まった敵へ強い技を当てるという
単純な形の前に、なぜ止められるのかという仕掛けがある。
エルマは敵の怒り方や身体の長さを知り、
ルーチェは、その知識だけでは実行できない
危険な移動を引き受ける。
二人の得意なことが別々のところで働く。
エルマの不惜身命は、
防御力を攻撃力へ移すスキルになる。
その力は大きいものの、発動には隙があり、
使っている間はMPを消耗する。
MPはスキルに使う力を表す。
強化してから都合のよい機会を長く待てる能力ではない。
そこで敵のスタンが、威力の話へつながる。
動きが止まっている間なら、
発動の隙を狙われにくく、
剣を届かせる動きも邪魔されにくい。
ルーチェが作った短い時間を、エルマが攻撃へ変えることで、
切り札の危険をできるだけ抑えている。
この点で、敵を止めることと攻撃力を上げることは、
別々に成功すればよいわけでもない。
先に強化して時間を失えば苦しくなり、
敵が止まってもエルマが遠ければ届かない。
二つを同じ短い機会に合わせるため、
そこまでの位置取りが必要になる。
不惜身命の存在を知るだけなら、
エルマ一人にもできる。
しかし、相手の注意を別の方向へ向け、
尾の欠損へつなげるにはルーチェがいる。
知識を持つ人と、それを実行して支える人を分けるだけでは
収まらず、二人が交互に危険を受け持っている。
戦闘後のエルマも、ルーチェが動きを止めてくれたから
攻撃できたと振り返る。
大きな威力を出した自分だけの成果として終えていない。
最後に剣を振った人のそばに、
それを可能にした仲間の行動が、
本人の言葉としても残る。
だから、この勝利には、
エルマがレベル75の相手といつでも互角に戦えるようになった
という余裕はない。
相手の強さは途中でも二人を脅かし続ける。
その不利を消し去るのではなく、
一度だけ大きな攻撃を通す状況へ絞って、
二人で決着を狙っている。
見ていてほっとするのは、
強い剣撃が出た瞬間だけではない。
傷を付けられない魔石や、弾き返される盾まで、
その前の行動がつながったと分かるところにもある。
勝てた背景には、
相手を止めるまでを投げ出さなかった二人の動きがある。
第2章 レベル75のデスアームドは、 どこが厄介?
高いHP・防御力・回復力で、 連撃だけでは削りきれない
デスアームドが現れた直後、
ルーチェはもう一度背へ乗って攻撃しようとする。
先ほどまで、その方法でロックセンチピードを倒せている。
ところが、エルマは同じ連撃では難しいと判断する。
身体の大きい百足という見た目が似ていても、
戦える条件は変わっている。
Web原作のこの戦闘では、
エルマのレベルは54、デスアームドは75になる。
差は21。レベルが高い相手へ挑むこと自体は
初めてではなくても、今回の差を、
いつもの少し背伸びした戦いとして
受け流せる状態ではない。
エルマがまず問題にするのは、
相手のHP、防御力、回復力の高さになる。
HPは残り体力を表す。
デスアームドは最大274のHPを持つうえ、
頑丈な装甲で攻撃を受け、傷ついても回復する。
体力の多さだけを見て、攻撃回数を増やせばよいとはならない。
たとえば、少し傷を付けて距離を取り、
また近づいて同じ攻撃を入れる方法では、
離れている間に立て直されるおそれがある。
これは戦い方を考えるための例になる。
実際の相手にも高い回復力があるため、
攻撃できた回数がそのまま討伐への進み具合にはならない。
さらに、防御力が高ければ、
一度に与えられる損傷そのものも小さくなる。
敵の体力が多いことと、
こちらの刃が通りにくいことが重なるため、
何度か連撃を当てれば終わるという見通しを立てにくい。
攻撃する機会を増やすだけでは足りなくなる。
ルーチェには〈ダイススラスト〉もある。
しかし、強い結果を何度も引いて倒す方針にも
無理があるとエルマは考える。
よい結果を待つ間に回復され、
必要な攻撃がさらに増えれば、
短い隙を何度作っても追いつかない可能性がある。
このため、相手の硬さを越えられる力を、
短い時間へ集中させる必要が生まれる。
強い技があるから短期決戦を選んだという順番だけではない。
長く削り合うことが通じにくい相手だから、
大きな攻撃を出せる方法を切り札として選ぶことになる。
ところが、威力のある攻撃を用意するだけでもまだ届かない。
デスアームドは速く、攻撃力も高い。
正面へ立てば、こちらの剣が届く前に相手の巨体や顎が来る。
倒すために近づく行動自体が、
命を落とすきっかけになりかねない。
しかも、身体へ近づいた敵には、
脚を激しく動かして吹き飛ばそうとする性質がある。
大きな胴体が見えているから攻撃し放題になるわけではない。
エルマたちの力量では、その脚をさばきながら
自由に斬り続けることは難しい。
速さと脚の動きが、 近づくことまで難しくする
ここは、進化前に背へ乗って
連撃を通せた場面との違いが大きい。
敵の大きな身体が、
今度は近づく者を押し返す危険にもなる。
ルーチェの動きがよくても、近づく経路を選ばなければ、
攻撃する前の段階で妨げられてしまう。
遠くへ離れれば安心できるわけでもない。
デスアームドには〈デスニードル〉があり、
毒を帯びた鋭い投擲物を速く、何発も飛ばしてくる。
近接を避けた相手へも手が届くため、
距離を取るだけでは危険から外れられない。
岩陰へ入る方法も、前と同じには使えない。
相手自身の足が速く、
追われながら遮蔽物へ入る時間を取りにくい。
盾や障害物の陰にいれば一息つけるという間が減り、
エルマは逃げ続ける方針から
別の動きへ切り替える必要がある。
岩そのものも、デスアームドは顎で砕きながら進んでくる。
進化前の長い身体を岩へ引っ掛けて
時間を稼いだ方法が、
そのまま同じ効果を出すとは限らない。
相手の強さは数値だけでなく、
地形の使い方へも影響している。
それでも、岩が壊されるから
地形が何の役にも立たない、とはならない。
隠れ続ける壁として使うのは難しくても、
巨体を回り込ませたり、
高さのある足場へ移ったりする使い方は残る。
エルマは同じ岩場を、前の敵とは別の役目で使い直している。
そうなると、速さだけを上げて走り勝てばよいともならない。
Web原作では、死線の暴竜で素早さを倍にした後でも、
なおデスアームドの方が速いとエルマは感じている。
強化を使っても、
素直に一直線で逃げる競争には勝てていない。
敵の速さを認めたうえで、
巨体の取り回し、魔法の発動前に鈍る動き、
尾を狙われた際の反応へ活路を探す。
エルマの知識は、能力差をなかったことにするものではなく、
差があるままでも触れられる隙を
見つけるために使われている。
硬いから近づいて何度も攻撃したいのに、
近づけば脚が危ない。
離れると魔法が来て、時間をかけると回復される。
こうした行き詰まりが重なっているため、
敵を短時間止め、大きな攻撃を通すという二つの条件が、
勝利のために必要になる。
デスアームドが厄介なのは、
レベル75という数字が大きいだけではない。
二人が選べそうな行動を、別々の能力で狭めてくる。
エルマの作戦が細かく見えるのも、
その一つ一つを避けながら、
最後に攻撃できる場面を残す必要があるからになる。
第3章 傷を付けられない魔石を、 なぜ投げた?
狙いはダメージより、 敵の注意を自分へ戻すこと
土の針が出ても、
デスアームドの甲殻には傷が付かない。
強敵を倒すための行動として見ると、
これでは足りないと焦る場面になる。
しかし、エルマが魔石に任せたい仕事は、
ここで相手の体力を大きく減らすことではない。
敵がどちらを向くかを変えることになる。
作戦の始まりでは、
エルマが〈シールドバッシュ〉でルーチェを高く飛ばしている。
盾で押し上げてもらった彼女は、
敵の甲殻を蹴り、岩を渡って尾の方へ向かう。
地面からただ走って近づくのではなく、
高さと身軽さを使って危険な身体を越えていく。
Web原作の作戦を伝える場面では、
ルーチェは詳しい説明を待たず、
何をすればよいかをエルマへ尋ねる。
本人も不安のある状況でも、まず動こうとする。
その返事を受け、エルマは短く役目を伝え、
尾へ向かう行動を始めてもらっている。
エルマも、説明が足りないことを
全く気にしていないわけではない。
それでも、敵が迫る中で長く話す時間は取れない。
先に必要な動きを伝え、
状況が変わるたびに次の指示を出す形になる。
二人のやり取りにも、待ってもらえない戦闘の切迫感がある。
そのとき、デスアームドがルーチェへ目を向ける。
彼女が狙う尾へたどり着く前に、
敵が移動を警戒し始めている。
ここでエルマまで一緒に尾へ走ってしまえば、
相手の注意を別の場所へ置く役がいなくなる。
二人が同じところを狙えばよい場面ではない。
エルマは土属性の魔石を取り出し、力を込めて投げる。
Web原作では、敵の顔の近くに土塊の針が生まれる。
重騎士が魔石を直接使った攻撃では、
相手の装甲を傷つけるほどの威力は出ない。
それでも敵は、
ルーチェを警戒する動きからエルマへ向き直る。
その変化が、投げた魔石の成果になる。
HPが減らなくても、敵の行動へ影響は出ている。
相手がルーチェを見続ける状態を外し、
彼女が動く側と、敵が追う側を分ける。
ダメージの出なさと、
作戦上の役立ち方が一致していないところが面白い。
これを、魔石だけで相手をずっと引き付けられる
という能力として広げる必要はない。
その場では顔の近くへの攻撃が、
敵の関心を戻す働きをしている。
敵の注意がどちらへ向いているかを見て、
エルマは持っている手段を、その瞬間に必要な用途へ使っている。
甲殻に傷が付かないことを知ったうえで、
なお使う価値がある。
ここでの目標が討伐そのものだけなら、
威力のない一手は遠回りにも見える。
しかし作戦には、ルーチェを先へ行かせる段階があるため、
小さな攻撃にも別の仕事が生まれる。
しかも、注意を自分へ戻せば、その後は自分が追われる。
エルマの行動は、
離れた場所から安全に仲間を助けるだけではない。
相手がルーチェを見ている怖さを減らす代わりに、
自分の側へ危険を引き取ることになる。
ルーチェが尾へ回り込む時間を、 エルマが引き受ける
そこへライフシールドと死線の暴竜が続く。
ルーチェが尾を狙う間、
エルマは自分で少しでも長く動ける条件を整える。
魔石を投げるところで役目が終わるのではなく、
引き付けた相手から生き延びる動きまでが一続きになる。
二人の分担を、攻撃役と守る役へ固定することも難しい。
エルマは最後の決定打を担うものの、
この段階では敵を引き受ける側になる。
ルーチェはまだ倒し切るための攻撃をしていなくても、
次の機会を作るために動いている。
このため、エルマがその場で
一番大きな攻撃を選ばないことにもつながりがある。
今は敵を自分へ向けなければ、
ルーチェの移動が難しくなる。
先の威力を出すために、手前では威力以外の変化を選ぶ。
戦闘の目的が、一つの攻撃の中だけで完結していない。
ルーチェの動きを前へ進めるには、
エルマが相手を見ていることも必要になる。
彼女が移動を始めたからといって、
敵が気付かず待ってくれるわけではない。
目が向いた変化へすぐ対応することで、
作戦が途中で崩れるのを防いでいる。
この場面では、ルーチェがどこへ行くかだけでなく、
その間に敵へ何をさせるかが決まっている。
尾へ向かう道筋を作るために、
顔の側で注意を引く。
二人が別々の方向へ動くことが、
ばらばらに逃げることではなく、同じ作戦へつながっている。
そして、敵を引き受ける時間にも限りがある。
相手は格上で、
追い続けられるほど安全ではない。
エルマが持ちこたえている間に、
ルーチェは尾へ届かなければならない。
一方が頑張れば何分でも待てるような、
余裕のある分担にはなっていない。
ここが見ていて落ち着かない。
ルーチェの方を見なくなったから安心できても、
今度はエルマが追われる。
二人のどちらかが安全になれば終わるのではなく、
その安全を短い時間ずつ渡しながら、
次の場所へ進んでいる。
魔石の攻撃が生んだのは、
相手を倒したという結果ではなく、
二人の作戦を続けられる向きの変化になる。
エルマへ向き直ったことで、ルーチェの行動がつながる。
小さな一手が次の人の動く時間へ変わっているところに、
この戦いの連携が見える。
不惜身命の大きな攻撃力へ届く前から、
二人は相手を動かす工夫を重ねている。
エルマは剣の威力で倒す準備と並行して、
仲間が行動できる時間を作っている。
傷を付けられなかった魔石も、
その最後へ向かう手順の中に残っている。
第4章 エルマは、弾き飛ばされる盾で どう生き残った?
〈ライフシールド〉で守りを作り、 〈死線の暴竜〉へつなぐ
敵の注意を引けば、
次に自分へ来る攻撃をしのがなければならない。
エルマがここで使うのは〈ライフシールド〉になる。
HPを最大値の20%支払い、
その分の耐久力を持つ障壁を全身へ張る。
体力を減らして守りを作るため、
傷を回復する動きとは違う。
一見すると、強敵に追われているのに、
さらに体力を使って大丈夫なのかと不安になる。
ただ、この支払いで残りHPを下げることが、
〈死線の暴竜〉の条件へつながる。
守りを張る動作が、
攻撃力と素早さを上げる準備にもなっている。
この場面の盾には、持っている盾と、
HPを使って張るライフシールドの二つがある。
後者は身体全体を覆う障壁になるため、
盾を構える動作そのものとは分かれる。
エルマは障壁を用意してから、
手にした盾の技で敵と接触している。
そのため、ライフシールドが崩れることは、
持っている盾が消えてしまうことでもない。
衝撃を受け止める障壁と、
押したり弾かれたりする動作の道具が、
同じ場面で別の働きをしている。
盾の技だけで衝撃を無害にできたわけではないところが、
接触する一瞬の怖さになる。
死線の暴竜は、HPが最大値の20%以下のとき、
攻撃力と素早さが100%上昇する能力になる。
元の数値と同じ量が加わるため、2倍に当たる。
エルマは体力をただ削られるままにするのではなく、
シールドを作りながら強化の範囲へ入っている。
Web原作では、この段階のエルマのHPは22、
最大値は145と示される。
残りは最大値の約15%になるため、
20%以下という条件に入っている。
一方で、身体そのものに残る体力は少ない。
強化できたことが、
そのまま十分な余裕を持てたことにはならない。
そこで得た素早さを使い、
エルマは岩と壁の狭間へ走る。
デスアームドの巨体が動きにくい場所を選び、
直線の速さで競うのを避ける。
しかし、その強化後でさえ、敵の方が速い。
能力を上げるだけで逃げ切れる場面には変わっていない。
さらに、身体のすぐそばへ来られると、
激しく動く脚が危ない。
シールドがあるからといって、
好きなだけ接近されてよいわけではない。
少ない体力で追われるエルマには、
距離を保つ必要と、地形へ入り込む必要が同時にある。
追走の中で、デスアームドが
〈デスニードル〉を使おうとする。
速く、数も多い毒の投擲物を、
そのまま受け止める方針は取れない。
ライフシールドの耐久力だけでしのげる攻撃ではないため、
守りを張った後にも回避の手段が必要になる。
エルマが使うのは、魔法を出す前に、
本体の速度と顎の動きが鈍るという性質になる。
攻撃が飛び始めてから逃げるのではなく、
その手前の変化へ反応する。
危険な魔法を持つ敵にも、使うための動作があり、
その瞬間だけ接し方が変わる。
〈デスニードル〉の前兆を読み、 反動で攻撃範囲を外れる
そこでエルマは、
逃げる方向を変えて敵の顔へ踏み込む。
後ろへ離れたい場面で、逆に近づくため、
見ている側にはひやりとする。
けれど、狙っているのは敵をその場で斬ることではなく、
盾を当てた後に起きる動きになる。
〈シールドバッシュ〉は、
相手より能力で劣ると、自分の方が弾かれる。
今回は防御と攻撃の能力で
デスアームドが大きく上回るため、
正面から押し勝つことはできない。
その結果を避けようとするのではなく、
エルマは移動の手段として使っている。
盾越しに衝撃を受け、
ライフシールドは耐久力を使い切って崩れる。
エルマ自身は後方へ飛ばされ、
その動きでデスニードルをかわす。
守りが壊れたことと、回避が成立したことが同じ場面にあるため、
盾を失ったらすべて失敗という形にはならない。
ここで頼ったのは、
毒の攻撃を全部盾で受け切る硬さではない。
最初の接触をしのぎ、
飛ばされる動きで攻撃を外すことになる。
受ける攻撃の量を増やすより、
身体が攻撃の来る場所に残らないようにする使い方になる。
しかも、ただ偶然いい方向へ飛ばされたわけではない。
エルマは盾の角度を調整し、
岩塊の上へ乗れるようにしている。
反動で生き延びた後、
そのまま次の作戦へ加われる位置へ移るため、
回避と着地先の二つをつなげている。
この岩の上という位置が、後から効いてくる。
敵に追われていた場所から離れ、
ルーチェが次に動く間に、
自分も攻撃へ入る場所を取れる。
生き残るための動きが、単なる退避で終わらず、
決着へ向かう配置にもなる。
この段階でも、エルマが全体の能力で
敵を上回ったわけではない。
速さで追われ、盾の競り合いでも弾かれている。
それでも、相手が強いから起きる反動を使えば、
別の行動を実現できる。
押し負けることと、作戦が崩れることが一致していない。
ただし、同じ衝突を何度も安全に繰り返せるとは考えにくい。
ライフシールドはすでに壊れ、
身体の体力も少ない。
ここで稼いだ時間を次へつなげなければ、
また同じ場所から余裕を持ってやり直すことはできない。
エルマの盾は、この戦いでルーチェを飛ばし、
自分を飛ばし、敵の動きから離れるためにも働いている。
強い相手を押し返すためだけの技ではない。
同じ能力を誰へ、どの角度で使うかによって、
二人が動ける場所を変えている。
第5章 デスアームドの動きを止めたのは、 ルーチェとの連携
尾への攻撃で、 追われる相手を切り替える
| 作戦の段階 | 敵の状態と二人の行動 |
|---|---|
| 魔石で注意を戻す | エルマが追われ、ルーチェが尾へ向かう |
| 尾への攻撃で切り替える | ルーチェが追われ、エルマが攻撃位置へ移る |
| 敵の顎を尾へ誘う | 尾が欠損し、敵が短時間動けなくなる |
| 隙を決定打へ渡す | ルーチェが逃れ、エルマが強化して斬り込む |
ルーチェが尾を攻撃すると、
デスアームドの怒りが彼女へ向く。
エルマが岩の上へ退いたところで、
今度はルーチェが追われる側になる。
ひとりが助かったから終わりではなく、
次に危険を引き受ける人へ作戦が渡っていく。
尾を選ぶことにも、相手の性質に沿った狙いがある。
Web原作では、尾はとりわけ大きな損傷が入る弱点というより、
鱗がなく比較的柔らかく、
長くて狙いやすい部分として説明される。
胴体や脚へ触れる場合とは、
近づいた後の危険も違う。
そこを傷つけられると、デスアームドは強く怒る。
尾への一撃で相手を倒し切ることが主な狙いではなく、
反応を引き出す方が作戦の中心になる。
硬い本体へ届かないから弱そうな箇所を何度も狙う、
という攻め方とは違っている。
ルーチェは〈ダイススラスト〉を当て、
よい結果の攻撃を出している。
しかしエルマは、この段階なら普通の攻撃でも足りると見ている。
勝利への入口が、
大きな威力を引く幸運だけに預けられているわけではなく、
尾へ触れて敵を怒らせることにある。
敵が追う相手を変えたのは、
ルーチェが尾を狙ったことに加え、
エルマが一度距離を取ったことも関わる。
顔の近くで相手を引き付けた段階から、
注意の置き場所をもう一度変えている。
戦闘の途中で、敵が誰を優先するかまで作戦に入っている。
エルマはルーチェへ、大岩の周囲を回るよう伝える。
広い場所へまっすぐ逃げ続けるのではなく、
長い身体の敵を岩の周りへ引き込む。
相手の速さではなく、
身体がどこを通るかを変えることで、
次の仕掛けへ近づけている。
ルーチェが先を走り、
デスアームドの頭が後ろから追う。
その間に、エルマは岩の上を走って攻撃の位置へ移る。
相手の注意が外れた時間を、ただ眺める時間にはしていない。
敵が止まってから動き始めるのでは遅いため、
自分の場所も先に整えている。
尾を狙うルーチェは、敵の頭から離れた場所にいる。
デスアームドが速くても、
彼女を追うには、その長い身体の端まで
向きを変えて迫る時間が要る。
相手の速さに勝つのではなく、
追い付くまでに残る距離を使うところにも、エルマの狙いがある。
そこで、周囲を回れる大岩と、敵の全長が結び付く。
どんな岩でも近くにあれば同じ仕掛けになるわけではない。
エルマは、ルーチェが一周した後、
頭と尾がどう並ぶかまで考えている。
巨体という特徴が、
追い方を誘導するための条件へ変わっている。
ここで使う大岩の周長は、
デスアームドの全長と釣り合っている。
周長は、岩の周りを一周する長さを指す。
ルーチェが一周すると、
長く続く敵の身体の最後、
尾が目の前へ戻ってくる位置関係になる。
敵自身の動きを利用し、 短い行動不能へつなぐ
追ってくるのは敵の頭なのに、
進む先には同じ敵の尾がある。
身体が長いほど強そうに見えた相手が、
その長さのために自分の尾へ近づいてしまう。
エルマは身体の特徴を、
攻撃を受ける面の広さだけではなく、
移動の形として使っている。
とはいえ、岩を一周するだけで勝てるわけではない。
ルーチェは後ろから迫る頭と、
前へ現れた尾の間にいる。
エルマの狙った位置へ来たとしても、
本人の側には逃げ道が狭まったように感じる瞬間になる。
そこでエルマは、
尾を踏んで岩の上へ跳ぶよう指示する。
ルーチェが尾へ足を掛けると、
敵はさらに激しく反応する。
エルマの見立てでは、もう一度尾を攻撃されると思った相手が、
速度を上げて飛び掛かる。
ルーチェは宙へ跳び、
〈曲芸歩術〉で岩を上がって逃れる。
デスアームドの顎が向かった先には、
彼女ではなく自分の尾が残る。
硬い相手へ二人の攻撃だけを当て続けるのではなく、
相手自身の攻撃を、相手の身体へ届かせている。
その結果、尾が欠損し、
デスアームドは短いスタン状態へ入る。
激しく動いて二人を脅かした脚も、その間は働かない。
単に体力を減らすことでは得られなかった、
近づいて攻撃できる静止がここで生まれる。
スタンは、敵を倒したこととは違う。
しばらくすれば動き出す相手なので、
二人はその短い間に次へ移らなければならない。
それでも、発動の隙を抱えるエルマにとっては、
その短い時間が決定的になる。
この連携が怖いのは、ルーチェが敵の反応を引き出すため、
相手の攻撃が届く場所へ入ることになる点にもある。
敵が予定した方へ動いてくれても、
自分がそこから抜けられなければ助からない。
知識の正しさに加え、
彼女の移動する力が必要になる。
ルーチェが尾を斬ったことだけを、
足止めのすべてにすることもできない。
注意の切り替え、岩を回る移動、
跳び上がるタイミングがつながり、
最後に敵の顎が自分の尾へ当たる。
その手前をエルマが支え、彼女が最後まで走り切っている。
ここでようやく、最後の攻撃をエルマへ渡せる。
二人が欲しかったのは、
敵からただ離れることではなく、
相手に攻撃をさせない短い機会になる。
ルーチェが逃げ切ったことと、エルマが攻められることが、
一つの仕掛けでつながっている。
第6章 敵が止まった瞬間、 不惜身命で攻め切れたのはなぜ?
発動の隙とMP消費を、 敵の行動不能に合わせる
デスアームドの脚が止まると、
やっと近づけると思える。
けれど、その静かな時間も長くは続かない。
エルマには、敵が再び動く前に防御を崩し、
体力を削り切る必要がある。
スタンを取ったことは勝利ではなく、
最後の攻撃を始められる入口になる。
Web原作では、その瞬間にエルマが
残していたポイントを〈燻り狂う牙〉へ追加し、
不惜身命を習得する。
スキルツリーは、ポイントの配分で能力を覚える仕組みになる。
土壇場で得る技でも、
何を伸ばせば使えるかは本人の知識に入っている。
不惜身命は、装備分を除いた本人の防御力をゼロにし、
下がった分を攻撃力へ足す。
さらに、すでに条件へ入っている
死線の暴竜の強化も重なる。
守りに優れる重騎士の数値が、
今度は硬い敵を破る力へ移る。
Web原作の数値では、
本人の攻撃力40と防御力73を足し、
その合計を死線の暴竜で倍にすると226になる。
黒鋼装備の補正も合わせた攻撃力は241になる。
ただし、これは敵へ必ず241のダメージを与えるという表示ではなく、
エルマ側の攻撃力になる。
ここまで攻撃力を増やせるなら、
敵を止める前に使えばよかったようにも感じる。
しかし、不惜身命は発動にも解除にも隙があり、
使っている間はMPを消耗し続ける。
その状態で敵に追われ、
攻撃の機会を待ち続ける余裕はない。
防御力を失った後にデスアームドの脚や魔法が来れば、
威力を使う前に倒されかねない。
相手を止めてから発動する順番によって、
エルマはその隙を突かれにくくしている。
敵の行動不能が、
強化の危険へ直接かみ合っている。
また、止まった敵へ走るために
長い距離を残していないことも大きい。
エルマはルーチェが追われる間に岩の上を移り、
攻撃へ入れる場所を取っている。
せっかくの静止を、
相手へ届くまでの移動だけに使わずに済む。
このため、作戦には二つの時間が重なる。
敵がスタンしている時間と、
エルマが不惜身命を維持できる時間になる。
どちらも無限ではないため、
今その場で強化し、
すぐに刃を届かせる動きが必要になる。
ポイントを残していたことも、
この場面で使える手段へつながる。
必要な先を知っていても、使えるポイントがなければ、
その瞬間に新しい能力は得られない。
Web原作では追加する10ポイントが残っているため、
危険を承知で後回しにしてきた技へ届いている。
ただし、ここで習得する不惜身命と、
先に速度を上げていた死線の暴竜は、同じ効果ではない。
前半は追走をしのぐための強化を使い、
後半は防御力を攻撃へ移す技を重ねる。
最初からすべての強化を使い続けたのではなく、
戦う段階によって選ぶ能力が変わる。
硬い甲殻を破り、 回復する時間を与えず斬撃を重ねる
敵を止めた直後から探し物を始めたり、
離れたところで準備を重ねたりすれば、
その重なる時間を失う。
エルマが頭の中で組んでいたのは、
強化の種類だけではなく、
どの場所からいつ攻撃へ入るかまでを含む手順になる。
不惜身命を使った後、
エルマは岩を蹴ってデスアームドへ飛び込む。
脚が動かず、攻撃を妨げられにくい身体へ、
強化した斬撃を通す。
先ほどは近づくことさえ危険な相手なのに、
この瞬間だけは、その距離へ入る条件が変わっている。
最初の斬撃で、
デスアームドの甲殻に大きな亀裂が入る。
Web原作では、その衝撃で巨体が跳ね、
続く二振り目で決着へ至る。
強い一撃で決める印象があっても、
相手のHPを無条件に消す効果として戦っているわけではない。
決着が短い攻撃の中へ収まることは、
回復力の高い敵を倒すうえでも関わってくる。
攻撃のたびに大きく距離を取り、
立て直す時間を与える方法とは違う。
生まれた一度の機会へ斬撃を重ねることで、
長い削り合いを避けている。
ただし、スタンさせたから敵の高いHPまで消えたわけではない。
相手の身体はそこにあり、
硬い甲殻を破る必要もある。
ルーチェの行動で攻撃できるようになり、
不惜身命の力でその攻撃を決着へ届かせる。
二つの役目が分かれている。
逆に、攻撃力が増えただけでは、
脚を動かす敵へ安全に接近できない。
強い力と、それを通す状況は別になる。
どちらが上かという比較ではなく、
両方がそろった短い瞬間を使うところに、
この戦闘の勝ち筋がある。
最後の攻撃が大きいほど、
その前のルーチェの時間も重くなる。
彼女が危険を引き受けて作った静止を、
エルマは待たせず攻撃へ使う。
最後に剣を振る役へ戻るまでに、
敵を引き付け、反動で逃れ、位置を取った行動がつながっている。
だから、レベル75へ勝ったことを、
エルマが通常時から同じだけ強いという説明にはできない。
相手が動けない場面へ、
条件の厳しい強化を重ねている。
戦闘全体の不利は残っていても、
決着を狙う時間に限って、強い攻撃を集中させられる。
この勝ち方には、
相手が動き出す前に終わってほしいという緊張が最後まで残る。
攻撃力が跳ね上がっても、
防御を失ったエルマへ余裕が戻ったわけではない。
二振り目が決着へ届くところで、
ようやく二人の危険な受け渡しが終わる。
第7章 勝利後も、エルマが 危険な戦いと振り返るのはなぜ?
作戦を知っていても、 失敗を受け止める余裕は少ない
レベル75の相手を倒したのだから、
エルマも少し誇らしくなってよさそうに見える。
しかし、Web原作の戦闘後では、
本人は同じような危険な戦いを積極的にしたいとは考えていない。
勝ったという結果と、
次も安心して試せるという気持ちは分かれている。
不惜身命を解除すると、エルマの防御力が戻る。
ここで初めて、最後の攻撃の間には、
その守りが失われていたことがもう一度響く。
敵の身体が動かなくなっても、
技を使う本人の危険まで消えていたわけではない。
しかも、頼りにしたライフシールドは、
デスニードルを避けるための衝突ですでに壊れている。
最後の攻撃時にも同じ障壁が残って、
もしもの一発を受け止めてくれる状態ではない。
前半で助けになった守りを使い切った後の勝負になる。
最後の攻撃に入るエルマの体力も少ない。
Web原作の振り返りでも、
小さな損傷が致命的になり得ることを本人が気にしている。
防御力を攻撃へ回す強化は、
敵を倒す力を増やす一方で、
自分が次の攻撃を受けたときの余裕を増やしてはくれない。
作戦がうまく進んだから、
何があっても助かったとは言えない。
ルーチェが尾から離れるのが遅れたり、
エルマが攻撃の位置へ届かなかったりすれば、
同じ強化があっても使う場面は変わる。
成功した手順の中に、途中で崩れる危険も含まれている。
それでも、何も考えず偶然に頼った戦いとも違う。
敵の攻撃前に動きが鈍ること、
尾を狙われると怒ること、
尾が欠損すると動けなくなることを使っている。
危険を消せない中で、
起こせる変化を具体的に選んでいる。
この二つが同居するため、
勝利後のエルマの言葉にも納得がいく。
作戦を組める知識はあるけれど、
その知識が本人やルーチェを無傷の場所へ置いてくれるわけではない。
正しい手順を知っていても、
実行する瞬間には自分たちの身体を動かさなければならない。
ルーチェは勝利を喜び、エルマを褒める。
一方のエルマは、
彼女に無茶をしてもらったことも分かっている。
倒した人を褒める声のそばに、
止めるまで走った人への思いがある。
このやり取りには、二人とも戻ってこられた安堵がにじむ。
エルマがルーチェへ任せられた背景には、
以前のエンブリオ戦での実績もあると
Web原作で触れられる。
今回は初めて会った相手へ、
危険な移動をただ命じているわけではない。
それまでに見てきた行動が、
任せられるかという判断にも残っている。
ただし、信頼しているから怖さがなくなるのではない。
ルーチェ本人は、追われながら次の動きを確かめ、
余裕のない声も上げている。
それでも指示を受けて跳び、
岩を上がって逃れる。
エルマの作戦を実行できることと、
本人が平然としていることは違う。
討伐後のレベルアップと、 勝つ前の力量は分かれる
討伐後には、大きな経験値とレベルアップがある。
Web原作ではエルマのレベルが54から62へ上がり、
8段階の成長を得る。
しかし、この上昇はデスアームドを倒した結果になる。
途中で62へ上がってから、
弱った相手を押し切った流れではない。
つまり、勝つ前のエルマと勝った後のエルマを一つにすると、
戦闘時の不利が小さく見えてしまう。
レベル54で作戦を通し、その後に62になる。
成長の大きさは、
戦っている間にどれほど背伸びした相手を前にしていたかにもつながる。
さらに、二人は〈悪夢殺し〉という称号も得る。
Web原作では、レベル70以上の存在進化した主を
倒した証として示され、
主へ攻撃する際の攻撃力が7%上がる。
これも今回の討伐を終えて得た効果で、
最初からデスアームド戦を助けた能力ではない。
称号が加われば、
次の強敵へ持っていけるものは増える。
一方で、今回の進化や危険な立ち回りを、
報酬のために何度も繰り返したいとはエルマは考えていない。
得たものが大きいことと、
失敗したら失うものが小さいことは同じではない。
報酬には、高いレベルの魔石もある。
Web原作では大きな金額になると分かり、
ルーチェが驚く。
最後にはそうした声を交わせるところへ戻るため、
戦っている間の張り詰めた空気との違いがうれしい。
二人が生き残ったからこそ、次に使えるものの話ができる。
ただ、勝利後もずっとその場にとどまれるわけではない。
主を失ったダンジョンは崩壊へ向かうため、
回収も進めなければならない。
剣を振り終えた後には、
冒険者として帰るための仕事が続く。
大きな勝利が、二人の日々の行動へ戻っていく。
この戦いを通して、エルマは能力の低さを
気持ちだけで越えたわけではない。
傷を付けない魔石で注意を引き、
押し負ける盾で離れ、
ルーチェが作る静止へ強化を合わせた。
勝てない部分を認めたまま、
別の役立て方を選んでいる。
ルーチェも、最後の攻撃をエルマへ任せるまでに、
敵の目を引き、尾へ届き、
追われる時間を走り切る。
どちらかがもう一人の力をただ増やしたというより、
互いの次の行動を可能にしている。
レベル差のある相手へ通ったのは、その受け渡しになる。
エルマがデスアームドへ勝てたのは、
強化だけで戦闘の不利を消したからではない。
二人で一度の隙を作り、
その隙に勝負を集めたためになる。
ルーチェが走り切り、エルマの二振り目が届いた後には、
強い技を見た満足と一緒に、
二人とも無事でよかったという気持ちが残る。


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