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【氷の城壁2期】ヨータを好きになると不幸になる?美姫一筋の陽太が「つらい」と言われる理由

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『氷の城壁』のヨータを好きになるとつらい、という言い方には、優しく接してくれる彼の恋心が美姫へ向いていることが重なる。
陽太の親切がうれしくても、それが自分への恋愛感情とは限らないところに、片思いする側の苦しさがある。
性格や家庭環境に問題があるから不幸になると決めつけず、友人への優しさと美姫への思いの違いから考える。

この先は原作13巻までのネタバレあり。

  1. 第1章 ヨータを好きになると不幸になる? 美姫以外へ向きにくい恋心
    1. 陽太自身が人を不幸にする、 という話ではない
    2. 優しくされても、 恋の相手に選ばれるとは限らない
  2. 第2章 優しいから期待してしまう? 陽太の近くにいる心地よさ
    1. 困っている時に助けてくれる、 穏やかな接し方
    2. 自分にも向けられる優しさを、 特別と思いたくなる
  3. 第3章 小雪への優しさも恋ではない? 親しさと好意が重なる場面
    1. 気を張らずに話せる相手でも、 恋人とは限らない
    2. 湊からは恋に見えた、 二人の距離
  4. 第4章 美姫一筋でも恋は簡単に進まない ――陽太自身の片思い
    1. 友人として近くにいるほど、 伝えるのが怖くなる
    2. 告白しても、 同じ気持ちが返ってくるとは限らない
  5. 第5章 陽太に欠点はない? 穏やかな顔だけでは分からない本音
    1. 優しい人でも、 自分の希望を言えるとは限らない
    2. 家庭で抱える悩みと、 恋人を不幸にする性格は別
  6. 第6章 美姫を好きな陽太は、 ほかの誰かを選べないのか
    1. 作中の恋心と、 描かれていない交際の仮定を分ける
    2. 一途さだけで、 ほかの恋の結末までは決まらない
  7. 第7章 陽太の恋は報われる? 美姫との関係が変わる原作のその後
    1. 告白を断られた時点で、 二人の関係は終わらない
    2. 美姫から近づく展開と、 片思いの頃との違い

第1章 ヨータを好きになると不幸になる? 美姫以外へ向きにくい恋心

陽太の親切と恋心は、同じではない
相手 描かれる関係
小雪 助け合い、
悩みも話せる友人
美姫 長く恋心を向けている相手
ほかの女子が好きになったら 優しさだけでは、
恋が実るか分からない
不幸になる? 交際相手を必ず
不幸にする根拠はない

陽太自身が人を不幸にする、 という話ではない

ヨータを好きになると不幸になる、と聞くと、
優しそうな顔の裏に何かあるのかと
身構えてしまう。
アニメで小雪を助け、穏やかに話す陽太を
見ていれば、なおさら気になるところになる。
けれど、この言い方から、
彼が恋人を傷つける人物と決めることはできない。
中心にあるのは、
陽太の恋心が美姫へ向いていることになる。

日野陽太は、親しい相手を気遣い、
話しやすい空気を作ってくれる。
小雪への接し方にも、その穏やかさが出ている。
一方で、恋愛として好きな相手は安曇美姫。
自分にも親切にしてくれる人なのに、
その人の特別な気持ちは別の相手へ向いている。
好きになるとつらいという読みには、
この近さと届かなさが重なっている。

不幸という言葉はかなり強い。
陽太へ恋をすれば必ず悲惨な結末になるとか、
付き合うとひどい扱いを受けるとか、
そこまでの話ではない。
親切がうれしいから惹かれるのに、
その親切だけでは恋の手応えを確かめられない。
友人としては近づけても、恋人になれるかは別。
その苦しさを強く言い表した言葉として
受け取れる。

ただし、美姫以外の女子が陽太へ恋をして傷つく、
という一連の出来事を、
作中の確定したエピソードとして
並べることもできない。
ここで扱うのは、彼の美姫への気持ちや、
友人への接し方から考えられる片思いのつらさになる。
実際に描かれた人間関係と、
もし好きになったらという想像を混ぜずに考える。

美姫一筋という言葉にも、
二つの受け止め方がある。
好きな相手を変わらず大切にしていると見れば、
心強く感じられる。
その一方で、自分が美姫以外の立場なら、
近くにいても恋の向きが変わらないように見える。
陽太の性格が場面ごとに変わるのではなく、
誰の位置からその一途さを見るかで、
感じるものが違ってくる。

優しくされても、 恋の相手に選ばれるとは限らない

小雪が陽太と話している場面には、
相手の機嫌をうかがわずに済むような落ち着きがある。
そんな接し方をされたら、
特別に思いたくなる気持ちも想像できる。
けれど、陽太が相手を大切に扱うことと、
その相手へ恋をしていることは同じではない。
安心できる人だからこそ、
その違いが分かった時には寂しくなる。

ここで、陽太は優しいだけで
誰にでも期待させる、と責めるのも
少し違うと感じる。
困っている人を助けたり、
友人の話を聞いたりすること自体は、
恋の約束ではない。
受け取る側がうれしくなることはあっても、
彼が意図して気を持たせているとまでは言えない。
親切な行動の後ろへ、
確認できない計算まで付け足す必要はない。

それでも、好きになった側のつらさは消えない。
自分にだけ冷たければ、
距離を置くきっかけになることもある。
けれど、友人として親しくしてくれる相手なら、
会うたびにうれしい時間も生まれる。
そのうれしさを手放したくないのに、
恋として近づけているとは限らない。
私は、その離れにくさが
この疑問の切ないところと感じる。

陽太に何か重大な欠点があるから、
好きにならないほうがよいという答えにはならない。
むしろ、気遣いや穏やかさに惹かれる部分があるから、
ほかの人へ向いた恋心が気になる。
彼のよさを説明する場面と、
恋が届きにくいと感じる場面が、
きれいには分かれない。
好きになるきっかけが、
そのまま諦めにくさにもつながっている。

同じつらいという言葉でも、
陽太へ片思いする人の寂しさと、
陽太が美姫に抱える切なさは、向きが違う。
前者は、自分へ恋が向いていないつらさ。
後者は、好きな相手から
どう見られているか分からないつらさになる。
彼をめぐる恋を考えると、
この二つが同時にあることに気づく。

そして、陽太自身も、
好きな相手から同じ気持ちを
返してもらえるとは限らない。
美姫を大切にしてきたからといって、
すぐ交際へ進めるわけではない。
誰かを好きにさせる側としてだけ見るより、
彼も片思いで迷っていると知ると、
穏やかな顔の見え方が変わる。
不幸を運んでくる人というより、
本人も恋に困っている。

第2章 優しいから期待してしまう? 陽太の近くにいる心地よさ

困っている時に助けてくれる、 穏やかな接し方

陽太の優しさが分かりやすく見えるのが、
小雪がナンパに困っているところを
助ける場面になる。
アニメ第2話で、小雪は彼に助けられた後、
美姫も交えて話す時間を持つ。
ひとりで対処しにくい時に、
顔を知る相手が入ってくれる。
その安心は、言葉で親切な人と紹介されるより、
ずっと身近に伝わってくる。

この時の助けを、
すぐ小雪への恋心の表れにすることはできない。
ただ、小雪の側からすれば、
困っていた時間が終わり、
その場にいられるようになる出来事になる。
陽太の行動には、
相手を喜ばせるための大きな演出がなくても、
気持ちを楽にする力がある。
好きになる入口を想像しやすいのは、
そうした場面があるためと感じる。

湊がぐいぐい距離を詰める時の戸惑いと比べると、
陽太との会話には別の近さがある。
小雪が自分の調子で言葉を返せることが、
親しさにつながっていく。
たくさん話しかけてもらうことより、
急いで反応しなくてもよいことがうれしい時もある。
陽太に惹かれる気持ちは、
派手な出来事だけから生まれるとは限らない。

四人で過ごすようになると、
陽太の穏やかさは、一度きりの親切ではなく
日々の会話の中に置かれる。
勉強会や学校で一緒にいる時間が増えれば、
相手がどんな返し方をするかも分かってくる。
何かが起きた時だけ助ける人ではなく、
普段も話しやすい人になっていく。
その積み重なりが、
近くにいたくなる気持ちと重なる。

陽太と小雪の間では、
助けてもらう方向も一つには決まっていない。
帰り道には、小雪が自転車に気づいて
陽太をかばう場面もある。
いつも守られる側にいなくてよいことも、
二人の気楽さにつながって見える。
彼の優しさだけで続く関係ではなく、
小雪からも気遣いが返っている。

陽太のよさを、何でも受け止めてくれる
便利な相手として説明すると、
本人の気持ちが抜けてしまう。
彼にも困ることや疲れることがある。
ただ、普段はそれが前に出にくいため、
話す側は自分のことを出しやすくなる。
その居心地のよさと、
彼がどこまで自分を見せているかは、
別々に進むこともある。

自分にも向けられる優しさを、 特別と思いたくなる

好きになり始めると、
相手の小さな行動にも目が留まりやすくなる。
助けてくれたこと、話を聞いてくれたこと、
気まずくならずに一緒にいられたこと。
陽太のように接し方が穏やかな相手なら、
その一つずつを大切に感じる気持ちは想像できる。
大きな告白がなくても、
好きになる時間は積み重なっていく。

ただ、自分にとって忘れにくい出来事が、
相手にとっても恋の始まりとは限らない。
小雪を助ける場面にも、
友人を放っておけない陽太の行動として
見える部分がある。
してくれたことが大きいほど、
自分も同じくらい特別なのではと期待したくなる。
その期待と、相手の中にある気持ちが
ずれるところがつらい。

周りの人にも優しくしている姿を見ると、
安心する一方で、
自分だけではないと気づくこともある。
この揺れを、陽太が悪いことをしている場面に
変える必要はない。
人として大切にされている実感があっても、
恋の相手として選ばれている実感には
つながらないことがある。
その二つを同時に感じる難しさがある。

特に、陽太の美姫への気持ちが見えてくると、
同じ笑顔でも違って見え始める。
自分との会話が楽しいことと、
美姫を恋愛の相手として好きなことが、
彼の中では両立していると分かるためになる。
優しかった時間を全部勘違いと呼ぶのも寂しい。
友人として大切にされたことまで、
嘘になるわけではない。

だから、陽太を好きになるつらさを考えると、
冷たく扱われる場面より、
普通に優しくしてもらえる時間が浮かぶ。
会えばうれしい。
でも、そのうれしさの先に
自分の望む関係があるとは言い切れない。
彼のそばが居心地よく見えるほど、
恋心が別へ向いていることを知った時の
寂しさも想像しやすくなる。

第3章 小雪への優しさも恋ではない? 親しさと好意が重なる場面

気を張らずに話せる相手でも、 恋人とは限らない

小雪と陽太の親しさを見て、
二人が付き合うのではと感じる場面はある。
困った時に助けてもらい、
気を張らずに会話できるようになり、
家庭で抱えることまで話す。
恋が始まりそうな出来事に見えるのに、
二人の関係はそこへ進まない。
ここが、陽太の優しさと恋心の違いを
考える手掛かりになる。

小雪にとって陽太は、
無理に自分を変えなくても話せる相手になっていく。
人と接する時の警戒が強い小雪には、
その気楽さが大きい。
ただ、落ち着いて話せることと、
恋人としてそばにいたいと思うことは
重ならない場合もある。
安心できる関係に、
必ず恋愛という名前が付くわけではない。

陽太の側にも、
小雪へ悩みを見せる時間がある。
普段は人を気遣う彼が、
自分の苦しさを話せる関係になる。
助ける人と助けられる人のまま固定されず、
互いの事情に触れている。
その近さは確かに深い。
それでも、彼の美姫への好意が
小雪へ移ったことを示すものにはならない。

アニメ第7話では、
小雪が陽太の母親と出会い、
家庭事情と彼のつらさを知る。
いつも穏やかな人にも、
身近な場所で言えない気持ちがあると
見えてくる場面になる。
小雪と陽太は、楽しい時だけ
一緒にいる相手ではなくなっている。
だから二人の親しさを、
軽い友達付き合いと呼ぶのもしっくりこない。

私は、この二人が恋人にならなくても、
話せたことの大きさが残るところにほっとする。
悩みを打ち明けたら恋が始まる、
という一本道ではない。
小雪の返事で陽太の気持ちが
少し楽になったとしても、
それだけで美姫への恋が消えるわけではない。
別の相手を好きなまま、
友人との関係を深める時間がある。

湊からは恋に見えた、 二人の距離

一方、湊から見ると、
小雪と陽太の距離は恋に見えやすい。
小雪が自分には身構えるのに、
陽太とは自然に話している。
その違いが気になれば、
二人の間に特別な好意があるのではと
想像してしまう。
親しさを外から見ているだけでは、
本人がどんな種類の気持ちを向けているかまでは
分からない。

原作5巻の紹介にも、
湊が小雪は陽太を好きと
勘違いしていることが示されている。
つまり、小雪と陽太の関係が恋に見えるという印象は、
作品の外からの想像だけではない。
ただ、湊がそう思っていることと、
実際に二人が恋をしていることは別になる。
この食い違いが、
四人のすれ違いにもつながっている。

アニメ第6話でも、湊は、
小雪が陽太を好きになれば
苦しむのではと考える。
ここは、彼に何か問題があるのかと
気になる場面になる。
ただし、それは湊が見た二人についての考えで、
小雪の将来を説明する確定事項ではない。
陽太を知る友人の見立てにも、
小雪への読み違いが入り込んでいる。

湊が気にしているのは、
小雪が陽太と話している事実だけではなく、
自分が同じように近づけていないことでもあると読める。
好きな相手が、
自分の知らない表情で友人と話す。
その気安さがうらやましく見える。
陽太の行動を見ているのに、
そこには湊自身の焦りも混ざっている。

陽太を好きになるとつらいという疑問に戻ると、
この関係には分かりやすい例がある。
親しく話せる、弱いところを知っている、
助けてもらったことがある。
それでも恋愛感情の証明にはならない。
小雪と陽太が築いた関係は大切でも、
彼の本命が誰かという問いへの答えは、
美姫のままになる。

ただし、小雪が陽太への片思いに苦しんだ、
という話へ置き換えることもできない。
二人が親しく見えたことと、
小雪が失恋したことは同じではないからになる。
描かれているのは、
友人として気楽に話せる関係と、
周囲からの読み違い。
その違いがあるため、
陽太の優しさを一律に思わせぶりと
呼ぶことも難しくなる。

第4章 美姫一筋でも恋は簡単に進まない ――陽太自身の片思い

友人として近くにいるほど、 伝えるのが怖くなる

陽太の一途さは、
美姫以外の誰かから見れば届きにくさにつながる。
一方、本人の側から見ると、
美姫への気持ちを抱えたまま
友人として過ごす時間になる。
好きな人のそばにいられるのに、恋人ではない。
その立場で迷っている陽太も、
また近さと届かなさの間にいる。

陽太と美姫には、
中学時代に塾で知り合い、
湊も交えて過ごしてきた関係がある。
告白して返事をもらうことだけが、
二人の接点ではない。
すでに一緒にいて楽しい時間があり、
気を許せる会話もある。
だからこそ、好意を伝えれば得られるものだけでなく、
今の関係が変わることも気になる。

好きな相手と友人でいられる時間は、
苦しいだけではない。
美姫と笑って話せること自体が
うれしい場面もある。
そのうれしさがあるほど、
今のままでよいと思いたくなることもある。
陽太が長く気持ちを胸に置いてきた姿には、
ただ勇気がないというより、
すでにある関係を失いたくない思いが見える。

美姫は、周囲から人気者として見られる一方で、
そのイメージに合わせ続ける苦しさも抱えている。
陽太が好きなのは、
外から見える華やかな姿だけではないと、
小雪との会話から伝わってくる。
きれいに振る舞えた時だけ好かれるのではない。
その安心があるからこそ、
彼の一途さを心強く感じる見方も生まれる。

美姫が自分へ向ける親しさを、
陽太はそのまま恋と決めていない。
小雪との会話が周囲から恋に見えたのとは逆に、
彼は自分の好きな相手の近さを、
簡単には期待へ変えられない。
仲がよいからこそ、
友人としての返事にも慣れている。
距離が近ければ告白しやすい、
とは進まないところが切ない。

この美姫への向き方を知ると、
ほかの女子にとって彼の一途さが
高い壁に見えるのも想像できる。
少し親しくなれば恋が動くという相手ではなく、
長く大切にしている人がいる。
ただ、その壁の向こう側にいる陽太も、
恋がかなうと分かって待っているわけではない。
彼自身の気持ちも、
安全な場所には置かれていない。

告白しても、 同じ気持ちが返ってくるとは限らない

陽太は、抱えていた気持ちを美姫へ伝える。
原作8巻では、その告白に
美姫がどう答えるかが描かれ、
アニメ第15話は、
美姫が告白を断った後から始まる。
長く好きでいたことも、
相手を大切にしてきたことも、
その場で同じ気持ちが返る保証にはならない。
陽太の恋にも、はっきり届かない時間がある。

ここで、こんなに優しい陽太を選ばない
美姫が悪い、とは感じない。
美姫にとっても、
友人として大切にしてきた相手への返事になる。
人として好きな気持ちと、
恋人として付き合いたい気持ちは同じではない。
陽太を好きになる側が直面するかもしれない違いを、
美姫と陽太自身の関係も抱えている。

断られた後に難しいのは、
相手への好意が、返事を聞いた時刻で
きれいに消えるわけではないことになる。
これからどんな顔で会うのか、
今までの調子で話せるのか。
陽太と美姫だけでなく、
四人で過ごす時間にも気まずさが入り込む。
告白は、答えを聞けばすべて片づく
出来事にはなっていない。

四人のうち二人の恋が動くと、
残る二人も、同じようには振る舞えなくなる。
陽太の告白は彼一人の秘密から、
美姫も返事を考える話へ変わる。
友人の輪があるから話しやすくなる時もあれば、
その輪を変えたくなくて言いにくくなる時もある。
陽太の迷いには、その近さも重なる。

小雪が陽太から告白の顛末を聞く場面も、
二人の関係が友人として
続いていることを示している。
陽太が誰を好きかを知ったうえで、
小雪は美姫とも話そうとする。
恋愛の矢印が自分へ向いていなくても、
相手の恋に関わることはある。
陽太のそばにいる人が、
すべて恋の競争相手になるわけではない。

私は、陽太の告白のつらさには、
好きと伝えたことで明日からの会話まで
変わってしまう怖さを感じる。
普段の穏やかさだけを見ていると、
恋も落ち着いて進められそうに思える。
けれど、大切な相手への返事を待つ時には、
彼も同じように困る。
美姫一筋という短い説明の中には、
その時間まで含まれている。

第5章 陽太に欠点はない? 穏やかな顔だけでは分からない本音

優しい人でも、 自分の希望を言えるとは限らない

陽太に問題があるのかと聞かれた時、
何もない完璧な人と答えるのも違うと感じる。
彼は周囲を気遣える一方で、
自分の寂しさや望みを、
いつも自然に出せる人物ではない。
人から見える穏やかさと、
自分の中で抱えているものには差がある。
付き合いやすそうな印象だけでは、
その部分が見えにくい。

小雪と家庭の話をする場面では、
陽太の普段と違う面が見えてくる。
周囲へ優しくできる人が、
自分はここにいてよいのかと悩むこともある。
他人のつらさへ気づけることと、
自分の気持ちを楽にできることは同じではない。
相手の事情を聞く側に見えた陽太が、
話を聞いてもらう側にもなる。

陽太が自分の気持ちを小さく扱うと、
周囲には困っていないように
映ることがあると私は読む。
本人が譲ったから問題がない、
笑っているから平気、と受け取りやすくなるためになる。
けれど、気を遣う人の返事には、
言わなかった希望が残ることもある。
彼の優しさを、何をしても傷つかない強さと
同じにすることはできない。

好きな相手と親しくなっても、
その人が何を望んでいるか分からないと、
近くにいる側も戸惑う。
陽太が自分を抑えてしまう面は、
恋人関係になってからも
会話の難しさにつながり得る。
ただ、それは彼と付き合えば不幸になるという予告ではない。
自分の希望を言葉にすることが、
彼にとって簡単ではないという話になる。

一途で優しいから何の行き違いも起きない、
と期待すると、陽太の戸惑いは見えにくくなる。
逆に、うまく希望を言えない面があるから
悪い恋人、と決めるのも飛躍になる。
彼は人を大切にしながら、
自分の気持ちの扱いにも迷う。
穏やかな人にも困り方があると分かると、
表情の見え方が少し変わる。

穏やかな姿の奥にある気持ち
外から見える姿 描かれる内側
周囲を気遣う 自分の希望を
言いにくい面もある
友人と自然に話す 家庭では寂しさを抱える
美姫を大切にする 関係が変わることには
怖さもある

家庭で抱える悩みと、 恋人を不幸にする性格は別

陽太の実母は亡くなっており、
その後、父の再婚によって
今の家族と暮らしている。
現在の母は彼へ優しく接しているものの、
弟や妹との違いを意識して、
自分だけが少し外にいるような感覚を抱える。
家庭で起きた事情と、
そこで本人がどう感じたかは、
同じ一行には収まらない。

アニメ第7話で小雪が知るのも、
家族構成だけではなく、
陽太が抱えてきた感情になる。
周囲から見て優しい家族に思えても、
本人が寂しく感じることはある。
恵まれているのだから悩まないはず、
と片づけられないところが苦しい。
陽太は、誰かに露骨に拒まれた話だけを
しているわけではない。

母親が優しいことは、
陽太にとっても分かっている。
だからこそ、寂しいと感じる自分を
どう扱えばよいのか困ってしまうのだと思う。
誰かを嫌いになれば説明できる感情でもない。
家族を大切に思う気持ちと、
自分だけ違うと感じる気持ちが一緒にあるため、
簡単に相手へ話せなくなると読める。

ここから、家庭に悩みがある人は
恋人を不幸にする、と結びつける根拠はない。
今の母を悪者にすることも、
陽太の寂しさをわがままと決めることも、
描かれた気持ちから離れてしまう。
彼の家の事情は、
穏やかな顔の裏に何を抱えているかを
知る手掛かりになる。
将来の恋愛への判定材料ではない。

小雪は、陽太の話を聞くことで、
彼が自分とは違う形で孤独を抱えていると知る。
ひとりで過ごす小雪と、
周囲へ柔らかく接する陽太は、
表面の振る舞いが違う。
それでも、家庭で自分の居場所を
考えてしまう感覚には触れ合う部分がある。
人とよく話せることだけでは、
孤独がない証明にはならない。

この場面を踏まえると、
陽太の恋人になれば何でも癒やしてもらえる
という想像も、少し変わる。
彼も、話を聞いてほしい側になる人として
見えてくるためになる。
ただ、誰かが彼を全部救わなければならない
という話でもない。
普段は隠れている気持ちを、
相手へ少しずつ話せるかどうか。
その難しさが彼の人間関係には残っている。

第6章 美姫を好きな陽太は、 ほかの誰かを選べないのか

作中の恋心と、 描かれていない交際の仮定を分ける

美姫を好きな陽太に、
ほかの誰かが近づいても無駄なのか。
ここは、気になるところになる。
ただ、作中で美姫への好意が描かれていることと、
彼が生涯ほかの人を好きになれないことは
同じではない。
今向いている恋心から、
描かれていない未来のすべてまでは分からない。

まして、美姫に断られた後で
別の女子と付き合えば、
その相手を必ず傷つけると断定することはできない。
陽太が美姫を忘れられないまま交際を続ける話を、
実際に起きた出来事として
示せるわけではないからになる。
誰かの代わりにされるつらさは想像できても、
その想像を彼の行動歴に変えることはできない。

知恵袋で見かける、
陽太を好きになるとつらいという疑問への答えも、
美姫以外の立場から見た一途さという読みになる。
陽太を知るための問いとしては自然でも、
そこで出た感想が、
そのまま作品の設定になるわけではない。
優しいのに自分へは恋を向けてくれない、
という切なさを表す言い方として考えられる。

陽太について知りたい疑問が、
恋人に冷たいのか、
女性関係で困らせるのかという心配なら、
優しさと美姫への好意だけでは、
その心配を裏づけられない。
気持ちが返らず悲しいことと、
相手からひどい扱いを受けることは違う。
不幸という強い表現には、
この二つが混ざりやすくなっている。

もし好きになったら、という話をする時にも、
陽太が相手へ何を伝えたかで関係は変わる。
友人として親しくする場合と、
交際を申し込む場合では、
相手の期待も同じにはならない。
ところが、存在しない交際の細部までは分からない。
彼の一途さから考えられることにも、
そこで限りがある。

その限りを置いたうえで言えるのは、
美姫への気持ちが続いている間、
彼の親切だけを手掛かりに恋の進展を期待すると、
つらく感じる可能性があることになる。
自分と話す時の楽しさと、
ほかの相手を好きな気持ちが、
彼の中では両立している。
その事実に気づいた時の寂しさが、
このテーマの中心になる。

一途さだけで、 ほかの恋の結末までは決まらない

一途さは、誰かを幸せにする性格と、
ほかの誰かを不幸にする性格へ、
きれいに分かれるものではない。
美姫に向く好意は、陽太自身の気持ちになる。
その気持ちが自分へ向かないことを悲しく感じても、
誰かを好きなこと自体が
相手を傷つける企みにはならない。
返ってこない恋のつらさと、相手の悪意は別になる。

だから、陽太に好きな人がいると知った側の
気持ちまで、勘違いしただけと軽く扱いたくはない。
優しくされた時間がうれしくて好きになることはある。
相手に落ち度がなくても、
かなわないと分かれば寂しい。
その寂しさを説明するために、
陽太の中へ隠れた欠点を探し出す必要はないと感じる。

逆に、陽太は一途で優しいのだから、
好きになった人は傷つくはずがないとも言えない。
恋として選ばれたい時には、
人として大切にされるだけでは
埋まらない気持ちもある。
彼のよさを認めることと、
その相手への片思いが苦しいことは両立する。
いい人を好きになれば楽な恋になる、
とは限らない。

美姫との関係がどう変わるかは、
陽太だけの努力でも決まらない。
美姫自身が、自分は彼をどう思っているのかを考え、
言葉にすることが必要になる。
長く思い続けたから相手が応えるという交換ではない。
その関係を見ても、陽太が優しいことと、
恋が実ることの間には、
相手の気持ちがある。

陽太を好きになると不幸になる、
という言い方を少しほどくと、
優しくしてくれる相手でも、
自分を恋人として選ぶとは限らないという話になる。
ここには、彼だけに隠れた怖さがあるわけではない。
好きな人の中に別の大切な相手がいる。
その身近な苦しさが、
陽太の一途さによって強く見えている。

第7章 陽太の恋は報われる? 美姫との関係が変わる原作のその後

告白を断られた時点で、 二人の関係は終わらない

陽太自身の恋は、
告白を断られた時点では終わらない。
原作では、その後も美姫との関係が続き、
13巻で美姫の側から思いを伝える流れへ進む。
アニメ第15話で気まずさを抱えた二人を見た後だと、
この先もう一度話せるのかが気になる。
その問いには、関係が改めて動く時間があると
答えられる。

ただし、その展開を、
陽太がずっと待っていたら美姫が折れた、
という形で受け取ると、
彼女の変化が抜けてしまう。
美姫も、自分が陽太へどんな気持ちを向けているかを考え、
二人で出かけ、伝えようとする側になる。
陽太が望む相手へ、
一方的に気持ちを届け続けるだけの場面では
なくなっている。

原作13巻の第107話から第110話にかけては、
美姫の告白と、
その後の二人の戸惑いが一続きになる。
気持ちを伝えられたから、
陽太がすぐ恋人らしく振る舞えるわけではない。
長く友人として過ごし、
一度は断られた相手から好意が返る。
うれしいはずの出来事にも、
すぐには追いつけないところがある。

美姫が告白する側へ回ると、
陽太が自分をどう見ているかを、
今度は彼女も気にするようになる。
これまで好意を向けられていた側でも、
恋として相手を意識すると、
同じ会話が簡単には進まない。
片方だけが待ち、片方だけが答える関係から、
互いの返事が気になる二人へ変わっていく。

ここで見える陽太は、
何でも穏やかに受け止める
余裕のある人だけではない。
望んでいた相手に選ばれても、
どう返せばよいか迷う。
美姫の気持ちが変わった事実を受け止めることと、
自分の気持ちを自由に出せることは、
同時にできるとは限らない。
その戸惑いまで続くため、
片思いが実った瞬間だけでは話が閉じない。

私には、ここで二人がそれぞれの気持ちを
出そうとするところがうれしい。
陽太が美姫に合わせ続けるだけでも、
美姫が一途さへのお礼として応えるだけでもない。
好きだから、
これからどんな関係でいたいかを話す時間になる。
彼の優しさに甘えるだけの関係から、
彼自身の希望も見える関係へ近づいていく。

美姫から近づく展開と、 片思いの頃との違い

美姫との恋が実ると分かっても、
そこまでの陽太のつらさが消えるわけではない。
一緒にいられるうれしさと、
恋人としては見てもらえない寂しさが、
長く同じ関係の中にあった。
その時間を経た彼が、
今度は好意を受け取ることにも戸惑う。
落ち着いて見える人の恋が、
本人の中ではずっと静かに進んでいたとは限らない。

この結末から、
陽太を好きになる人は全員不幸になるという話にはならない。
少なくとも、美姫と陽太の関係は、
すれ違ったまま閉じるものではない。
一方で、美姫以外の誰かが彼を好きになった場合の
結末まで、ここから決めることもできない。
作中で描かれた恋と、
別の立場から想像する片思いは、
同じ答えにはならない。

陽太に惹かれる部分は、
困った時に助けてくれること、
話を急がせないこと、
相手を気遣うことにある。
けれど、それらは恋愛感情と一緒にだけ
現れる行動ではない。
小雪との関係にも、その違いが描かれている。
優しくされた時間が本物でも、
恋の相手として選ばれるかどうかは別になる。
そこに、好きになる側のつらさがある。

同時に、陽太自身も、
優しい人という印象だけでは説明できない。
家庭の中で寂しさを感じ、
自分の望みを抑え、
美姫への好意にも迷ってきた。
その悩みは、恋人を不幸にする証拠ではなく、
彼にも聞いてほしい本音があることを示している。
助けてくれる人の側にも、
誰かへ話したいことが残っている。

ヨータを好きになるとつらい、
という言葉には、近くにいて優しくしてくれるのに、
彼の恋心は美姫へ向いているという
届かなさが重なる。
だからこそ、好きになってしまう気持ちも
想像しやすい。
陽太が悪い人だから苦しくなるのではなく、
いい人と思う相手でも、
自分と同じ恋をしているとは限らない。
その寂しさが、この言葉にはある。

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