サラキア王女の輿入れは、単なる王女の結婚ではなく、レベリス王国とスフェンドヤードバニアの関係を強めるための婚姻外交だった。
そのため移動経路の下見、騎士団の護衛、宗教側の対応まで大きく動き、そこへヴェルデアピス傭兵団のハノイまで入り込んでくる。
しかもハノイは一度ベリルたちを襲った側なのに、後にはグレン王子とサラキア王女を逃がし、さらに二人を守る仕事として戦うため、彼の立場を追うと王女の婚姻の裏で誰が何を守ろうとしているのかが見えてくる。
第1章 結論|ハノイが王女の輿入れに関わるのは、婚姻が二国の力関係を動かすから
サラキア王女の結婚は、本人だけでなくレベリス王国とスフェンドヤードバニアを結ぶ話だった
サラキア王女の輿入れは、
王女が好きな相手のもとへ嫁ぐというだけの話ではない。
グレン王子との婚姻によって、
レベリス王国とスフェンドヤードバニアの関係そのものが動く。
もともとサラキアは、
グレン王子のもとへ嫁ぐ予定になっていた。
二人の仲が悪いわけではなく、
互いに相手を嫌って進められる婚姻でもない。
ただし、
王族同士が結ばれる以上、
個人の感情だけでは終わらない。
王女が他国の王族へ嫁げば、
その後の外交や軍事にも影響が出る。
実際に後の原作では、
レベリス王国が
スフェンドヤードバニアへ支援を申し出る流れが出てくる。
そこではサラキアが嫁いだことが、
援助へ踏み込む大きな名目の一つになる。
つまり婚姻によって、
両国の距離が縮まる。
スフェンドヤードバニアに何か起きれば、
レベリス王国も以前より深く関わりやすくなる。
逆に見れば、
この結び付きを歓迎しない者にとっては
サラキア王女の輿入れそのものが
力関係を変えてしまう出来事になる。
だから第7話では、
王女が通る経路を事前に確かめる。
第8話では、
その帰路でアリューシアたちが襲撃される。
そしてさらに先では、
実際の婚姻の場まで
平穏には終わらない。
王族の結婚を巡って、
騎士団や宗教勢力まで動き始める。
ここへ関わってくるのが、
ハノイ・クレッサと
ヴェルデアピス傭兵団である。
第8話では、
ハノイたちはベリルたちを襲う側にいる。
この場面だけなら、
サラキア王女の輿入れを邪魔する敵に見える。
ところが後になると、
同じハノイが
グレン王子とサラキア王女を
危険から逃がす側へ回る。
つまりハノイ自身が、
一貫して婚姻を潰そうとしていたわけではない。
彼は王女の敵として動く人物ではなく、
依頼によって立場を変える傭兵である。
ここが、
王女輿入れの裏側を見るうえで大きい。
国家同士の思惑がぶつかる場所では、
正規軍だけが動くわけではない。
表に名前を出したくない勢力が、
外部の傭兵を使うこともある。
そしてその傭兵は、
別の依頼を受ければ今度は反対側へ立つ。
ハノイが敵にも護衛にもなるのは、
気持ちが突然変わったからではない。
サラキア王女の婚姻を巡って、
彼へ仕事を出す側が変化しているからである。
だからハノイを見ると、
この輿入れが単なる結婚ではなく、
複数の勢力が動く国家案件だったことが見えてくる。
第8話の襲撃より先を見ると、ハノイは「婚姻反対派」ではないと分かる
第8話でハノイたちが襲ってくると、
どうしても
「王女の輿入れを止めたい勢力」
という印象が強くなる。
しかも時期は、
サラキア王女が
スフェンドヤードバニアへ向かう準備をしている頃である。
そのため、
ハノイ自身が王女の婚姻を
邪魔したいようにも見える。
しかし原作の先まで追うと、
その見方では説明できない場面が出てくる。
婚姻の儀を巡って騒動が起きた後、
ハノイは
グレン王子とサラキア王女を守る仕事へ関わる。
ベリルやアリューシアは、
当然すぐ警戒する。
以前、自分たちを襲った大剣使いが
目の前へ現れるからだ。
それでもその場で重要なのは、
過去の決着ではない。
王子と王女を安全な場所へ
逃がさなければならない。
ハノイは、
安全な経路を使って
二人を避難させる側へ動く。
第8話とは立場が完全に逆になっている。
これを見ると、
ハノイは
「サラキアをスフェンドヤードバニアへ嫁がせたくない」
という思想で動いていたわけではないと分かる。
彼が重視するのは、
その時に受けた仕事である。
だから第8話の襲撃と、
後の王族護衛は両立する。
そしてこの性質こそ、
輿入れの裏に傭兵団が入り込む怖さでもある。
王国の騎士なら、
誰を守るのかは基本的に決まっている。
だが傭兵は、
依頼が変われば剣を向ける相手も変わる。
サラキア王女の婚姻を巡る裏側では、
そんな外部戦力まで動いていた。
それほど二国の結び付きには、
利益と不利益を感じる者がいたのである。
第2章 サラキア王女の輿入れは何を変える?二国を結び直す婚姻外交
グレン王子との結婚によって、サラキアは他国へ渡るだけでなく二国を結ぶ存在になる
サラキア王女が
グレン王子へ嫁ぐ話は、
かなり早い段階から
王家の重要案件として動いている。
ベリルがその話を知った時にも、
単なる恋愛相談としてではなく、
王女が他国へ嫁ぐ予定として伝えられる。
サラキア本人も、
グレン王子を嫌っている様子ではない。
グレン側も、
サラキアを拒絶しているわけではない。
だから二人の関係だけを見れば、
無理やり引き離されるような婚姻ではない。
ただし王族である以上、
結婚によって背負うものが大きい。
サラキアはレベリス王国の王女でありながら、
嫁いだ後はスフェンドヤードバニアで暮らす。
実際、
婚姻の準備が進むと、
サラキアは相手国の形式を学び始める。
式の進め方も、
スフェンドヤードバニア側へ合わせる。
国が変われば、
文化も変わる。
暮らし方も変わる。
王女自身が新しい国の習慣へ
適応しなければならない。
婚姻の儀も、
スフェンドヤードバニアの宗教と深く結び付いている。
スフェン教のもとで、
グレンとサラキアは夫婦の誓いを交わす。
この時点で、
サラキアは単なる客人ではない。
相手国の王族と結ばれ、
その国の将来に深く関わる人物へ変わる。
後にはグレンが
王位継承第一位となる王太子の立場を固める。
それに伴い、
サラキアも王太子妃という立場になる。
つまり輿入れは、
結婚式を終えれば完了するだけの出来事ではない。
サラキアがその後、
スフェンドヤードバニアの王家へ
入り続けることにつながっている。
そしてその関係は、
レベリス王国側にも残る。
娘や妹を嫁がせた国で
大きな問題が起きれば、
完全な他国として無関係ではいられない。
ここに、
王族婚姻の強さがある。
後にはレベリス王国が支援へ踏み込むほど、サラキアの婚姻が外交の足場になる
サラキアとグレンの婚姻が
ただの形式ではなかったことは、
その後の二国関係を見るとさらに分かる。
スフェンドヤードバニア側が
大きく揺れた後、
レベリス王国は
隣国への支援を申し出る。
その時に大きいのが、
サラキア王女が嫁いでいるという事実である。
王女が暮らす国だから助ける。
婚姻によって結ばれた相手だから支援する。
そう説明できるため、
レベリス側には介入する足場が生まれる。
もちろん、
支援には善意だけではない面もある。
相手国を助ければ、
国民からの印象も良くなる。
政治的な影響力も高めやすくなる。
つまりサラキアの婚姻は、
二国を仲良くする象徴であると同時に、
レベリス王国が相手国へ関与する入口にもなる。
だからこそ、
この結婚によって得をする者だけではなく、
不利益を感じる者も出てくる。
今まで保っていた立場が弱くなる者。
外国の影響力が強まることを嫌う者。
王位や宗教を巡って、
別の考えを持つ者もいる。
そうした複数の思惑が、
婚姻の周囲へ集まっていく。
第7話で、
わざわざ一か月ほどかけて
輿入れ経路を確認するのもそのためである。
第8話では、
確認を終えた一行が帰る途中で襲われる。
そして実際の婚姻では、
大聖堂に教会騎士が配置され、
ベリルやアリューシアまで武器を預けることになる。
普通の結婚式ではない。
王族二人の安全を守るため、
入場時から厳重な警戒が敷かれている。
それでも儀式は、
最後まで平穏には進まない。
夫婦の宣誓が行われ、
指輪交換へ進もうとしたところで、
聖堂の外が騒がしくなる。
つまり王女の輿入れは、
準備段階から本番まで、
常に何かが起きる可能性を抱えていた。
そしてその危険の中で、
一度は敵だったハノイたちが
今度は王子と王女を守る側へ現れる。
ここまで見ると、
ハノイの立場が変わることも、
単独の驚きではなくなる。
サラキア王女の婚姻そのものが、
レベリス王国、
スフェンドヤードバニア、
王族、
騎士団、
宗教勢力、
そして傭兵まで巻き込む出来事だった。
ハノイは、
その複雑な動きを
最も分かりやすく見せる人物なのである。
第3章 第7話でなぜ一か月かけて移動経路と警備まで確認したのか
フルームヴェルク領への遠征は、夜会よりサラキア王女の輿入れ準備が大きかった
第7話では、
ベリルとアリューシアが
フルームヴェルク辺境伯領へ向かう。
表向きには夜会への招待がある旅だった。
しかし実際には、
近く予定されているサラキア王女の輿入れに備え、
王女が通る経路を確かめる役目も含まれている。
フルームヴェルク領は、
スフェンドヤードバニアとの国境に近い。
レベリス王国から王女を送り出すなら、
避けて通れない重要な地域になる。
王族の移動では、
ただ道がつながっていればいいわけではない。
馬車が安全に通れるか。
休憩できる場所はあるか。
襲撃を受けやすい地点はないか。
さらに、
経路上を治める領主とも
事前に話を付けておく必要がある。
王女が通過する日に、
通常通りの警備だけでは足りないからである。
アリューシアが同行するのも、
この任務を考えれば自然である。
騎士団長自身が現場を見れば、
本番でどの程度の兵を置くべきか判断できる。
そこへベリルも加わる。
彼は正式な騎士団長ではないものの、
アリューシアを育てた剣士であり、
危険が起きた時には大きな戦力になる。
第7話の夜会では、
華やかな社交の場が描かれる。
ベリル自身も慣れない空気の中へ入り、
貴族たちと接することになる。
だがその裏では、
王女を安全に国外へ送り届けるための準備が
着々と進んでいた。
だから第8話で、
その帰路が襲われたことは重い。
安全確認をしてきた者たち自身が、
帰る途中で待ち伏せを受けたからである。
経路を調べる側が狙われるなら、
王女本人が通る本番では
さらに大きな危険を想定しなければならない。
しかも襲撃者は、
普通の盗賊ではない。
ベリルやアリューシアを含む一行へ
正面から仕掛けられるほどの実力を持っていた。
第7話の下見は、
第8話の戦闘によって
単なる事前確認では済まなくなる。
本番の輿入れを守るための警戒そのものが、
一段階引き上げられる出来事になったのである。
以前から王族が狙われる危険があったから、輿入れは普通の花嫁行列では済まない
サラキア王女の輿入れで
厳重な警備が必要になるのは、
王族だからというだけではない。
この世界では、
王族を狙った事件そのものが
現実の危険として存在している。
王女が国境を越えるとなれば、
普段より長時間、
王都の守りから離れることになる。
街道へ出れば、
建物の中とは違って
守る方向も増える。
山道や林があれば、
伏兵を置かれる可能性もある。
だから本番前に、
アリューシアたちが自分の目で経路を見る。
地図だけでは分からない危険を、
実際に歩いて確かめていく。
さらに領主との調整も必要になる。
どこまでが王都側の護衛で、
どこから現地兵が加わるのか。
国境を越える瞬間の警備も考えなければならない。
サラキア一人を守れば終わりでもない。
同行する侍女や騎士、
馬車そのものも安全に動かす必要がある。
だから準備には時間が掛かる。
一か所だけ見て帰るのではなく、
複数の地点を確認しながら
本番へ備えていくことになる。
その最中に起きたのが、
第8話の襲撃である。
もし下見をしていなければ、
王女本人が同じような場所を通った時に
いきなり攻撃を受けていた可能性もある。
第7話から第8話へ続く流れを見ると、
夜会は華やかな寄り道ではない。
王女の婚姻を安全に成立させるための旅に、
社交の場が組み込まれていたと分かる。
そしてそこへハノイたちが現れたことで、
王女の輿入れには
外交だけではなく実際の武力まで絡み始めるのである。
第4章 襲撃があったのに、なぜサラキア王女の輿入れは中止されなかったのか
ヴェスパーが死にかけても、王族同士の婚姻は一度の襲撃だけでは止められない
第8話の襲撃では、
ヴェスパーが命の瀬戸際まで追い込まれ、
他の騎士たちにも被害が出る。
普通に考えれば、
これほどの事件が起きた直後なら
サラキア王女の輿入れそのものを
延期しても不思議ではない。
しかし原作では、
婚姻の準備はそのまま進んでいく。
出発時期も決まり、
スフェンドヤードバニアでの滞在を経て、
新年に婚姻の儀を行う予定まで組まれていく。
ベリル自身も、
襲撃事件と相手国との関係が
本当に問題ないのかを気にしている。
それでも予定が止まらないのは、
サラキアとグレンの結婚が
二人だけの約束ではないからである。
すでに王家同士が動いている。
現地の領主も準備を進める。
騎士団も護衛計画を立てる。
さらに相手国側も、
王女を迎えるための予定を
組んでいるはずである。
ここまで進んだ婚姻を
正体不明の襲撃一件だけで中止すれば、
それ自体が二国関係へ影響する。
しかも第8話直後には、
誰が襲撃を命じたのか
決定的な証拠まではない。
スフェンドヤードバニア側が怪しく見えても、
疑いだけで
「相手国が暗殺を仕掛けた」とは言えない。
だから事件の調査と、
輿入れの準備を
同時に進める必要が出てくる。
この判断を見ると、
王族の婚姻がどれほど重いかが分かる。
一人の騎士が重傷を負っても、
国家間で動き始めた計画は簡単には止まらない。
止めるのではなく警備を厚くする|第8話の襲撃が本番への警戒をさらに強めた
輿入れを中止しないからといって、
第8話の事件が軽く扱われたわけではない。
むしろ逆である。
実際に武装集団が動いた以上、
本番では同じことを起こさないための
警戒を強めなければならない。
王女本人が移動する時には、
下見より価値の高い標的になる。
狙う側からすれば、
婚姻そのものへ直接打撃を与えられる機会でもある。
だから護衛側は、
経路だけではなく
同行する戦力まで考え直す必要がある。
第8話で分かったのは、
騎士団の実力者がいても
被害を完全には防げないということだった。
ハノイたちのような
実戦経験豊富な傭兵が相手なら、
数を揃えるだけでも足りない。
誰を王女の近くへ置くのか。
前後を誰が固めるのか。
万一襲われた時に、
どこへ退避させるのか。
そうした準備まで必要になる。
そして実際の婚姻の場でも、
警戒は続く。
大聖堂には教会騎士が配置され、
ベリルやアリューシアも
自由に武器を持ち込める状況ではない。
王族同士が誓いを交わす場だからこそ、
儀式そのものにも
厳しい警備が敷かれている。
それでも、
完全な安全は作れない。
婚姻の儀が進む最中にも、
聖堂の外で異変が起こる。
ここまで来ると、
第8話の襲撃が
偶然の一戦ではなかったことが改めて分かる。
サラキア王女の輿入れは、
出発前の下見から
実際の婚姻の儀まで、
常に誰かが守らなければならない出来事だった。
そしてその途中で、
一度は敵として現れたハノイが
後には王子と王女を逃がす側へ回る。
輿入れを止めるのではなく、
危険を抱えたまま進める。
その中で敵と味方の配置まで変わっていく。
サラキア王女の婚姻は、
ただ祝福される結婚ではない。
政治と警備と武力が同時に動く、
二国にとって大きな転換点だったのである。
第5章 婚姻の儀で浮かぶ別の不穏さ|教皇が姿を見せないことにも違和感が残る
王族同士の婚姻なのに、宗教側の中心人物が見えない
サラキア王女とグレン王子の婚姻は、
国家同士を結ぶだけではなく、
スフェンドヤードバニアの宗教とも深く関わっている。
婚姻の儀は、
単に王宮で誓いを交わす形ではない。
大聖堂を使い、
スフェン教の形式に従って進められる。
サラキアも、
輿入れ前から相手国の作法を学び、
儀式へ備えていく。
王女として嫁ぐ以上、
自分の国の常識だけを持ち込むわけにはいかない。
だからこそ、
婚姻当日の宗教側の動きも重要になる。
王子と王女が結ばれる場なら、
教会側の最高位に近い人物が
関わっていても不自然ではない。
ところが、
ここでベリルたちが気にするのが
教皇の姿である。
王族同士の婚姻であり、
しかも国家間の結び付きを強める重要な儀式なのに、
教皇が前面へ出てこない。
事前に日程も決まっている。
突然決まった式でもない。
教会側が準備する時間も十分にある。
それなのに、
中心にいるはずの人物が見えない。
ベリルたちが違和感を抱くのも自然である。
大聖堂には、
教会騎士が配置されている。
警備そのものが手薄なわけではない。
ベリルやアリューシアも、
武器を自由に持ち込める状態ではない。
王族を守るため、
儀式の場はかなり厳しく管理されている。
それだけ準備されているのに、
教皇だけが見えない。
ここが不自然なのである。
第8話の襲撃では、
外から武力で婚姻へ近づく危険が見えた。
だが実際の婚姻では、
今度はスフェンドヤードバニア内部の
宗教側にも目を向ける必要が出てくる。
王女の輿入れを巡る不穏さは、
街道で剣を振るう傭兵だけではない。
王宮。
教会。
王位。
婚姻。
それぞれの立場が、
同じ儀式の周囲で動いている。
だからサラキアの婚姻は、
無事に国境を越えれば終わりではない。
相手国へ到着した後にも、
別の危険が待っているのである。
夫婦の誓いが進む最中に外が騒がしくなり、婚姻そのものが危機へ変わる
婚姻の儀そのものは、
最初から戦闘状態で始まるわけではない。
グレン王子とサラキア王女は、
大聖堂で向かい合う。
二人が夫婦となるための
正式な手続きが進んでいく。
ここだけを見れば、
長く準備してきた輿入れが
ようやく形になる瞬間である。
サラキアは、
レベリス王国の王女として送り出され、
今度はグレンの伴侶として
新しい立場へ入ろうとしている。
だが、
儀式が進むにつれて
聖堂の外が騒がしくなる。
王族同士の婚姻で、
厳重な警備も敷かれている。
それでも異変を完全には防げない。
ここで、
第7話から続いてきた警戒が
現実のものとして戻ってくる。
経路を下見した。
帰路では襲撃された。
その後も婚姻を止めず、
警備を強めて本番へ進んだ。
それでも、
婚姻の儀の最中に
別の危険が発生する。
つまりサラキアの輿入れは、
一度の襲撃を乗り越えれば終わる話ではなかった。
二国を結ぶ婚姻だからこそ、
その成立を歓迎しない者、
利用しようとする者、
自分の立場を守ろうとする者が集まってくる。
そしてその混乱の中で、
意外な形で再び現れるのが
ハノイ・クレッサである。
第8話では、
ベリルたちへ剣を向けた人物。
その男が今度は、
王子と王女を危険から遠ざける側へ回る。
ここまで来ると、
ハノイを単純な婚姻反対派とは見られない。
婚姻の裏で本当に複雑なのは、
一人の悪人がすべてを動かしていることではない。
複数の勢力が、
それぞれ別の思惑で動いているところにある。
そしてハノイは、
その複雑さを象徴するように
敵から護衛へと立場を変えるのである。
第6章 ハノイはなぜ今度はグレン王子とサラキア王女を守る側へ回ったのか
ベリルとアリューシアは再会した瞬間、以前の襲撃者だと気付いて警戒する
婚姻を巡る騒動の中で、
ベリルたちの前へ
再びハノイ・クレッサが現れる。
当然、
ベリルは忘れていない。
フルームヴェルク領からの帰路で、
自分たちを襲った大剣使いである。
アリューシアも同じである。
仲間が傷つき、
ヴェスパーが命を落としかけた事件の相手を
簡単に信用できるはずがない。
ところが、
再会したハノイは
第8話と同じ立場ではない。
今度の彼は、
グレン王子とサラキア王女を
危険な場所から逃がす側にいる。
ここが、
ハノイという人物を見るうえで
最も大きな転換になる。
もしハノイ自身が、
サラキアの婚姻を潰したい人物だったなら、
王子と王女を守る必要はない。
むしろ混乱に乗じて、
二人を危険へさらす方が
目的には合っているはずである。
だがハノイは、
二人の避難に関わる。
安全な道を知っている者として、
逃走経路へ一行を導く。
ベリルたちは、
過去の因縁を抱えたまま
その案内を受けることになる。
もちろん、
すぐ仲間になったわけではない。
信頼して背中を預ける関係でもない。
それでも、
目の前には王子と王女がいる。
二人の命を守ることが最優先になる。
過去の襲撃への怒りと、
現在の危機への対応。
その二つを分けなければならない。
ここでベリルたちは、
ハノイの立場を
嫌でも見直すことになる。
彼は、
いつでも同じ国を攻撃する敵ではない。
その時に受けた仕事によって、
剣を向ける方向を変える傭兵である。
「敵から味方になった」のではなく、依頼が変わったから剣を向ける先も変わった
ハノイの行動を
善悪だけで見ると分かりにくい。
第8話では、
ベリルたちを襲った。
後には、
王子と王女を守る。
これだけ並べると、
心変わりしたように見える。
だがハノイ自身は、
一貫して傭兵として動いている。
誰かに雇われる。
依頼を受ける。
その仕事を完遂する。
この基準があるから、
以前の敵と
次の仕事で協力することもできる。
ベリルにとっては、
かなり受け入れにくい考え方である。
第8話では、
ヴェスパーが死にかけた。
他の騎士にも被害が出た。
その傷は、
仕事だったと言われても消えない。
それでもハノイ側からすれば、
あれは以前の依頼である。
今の依頼が、
グレン王子とサラキア王女を守ることなら、
今度はそのために戦う。
ここに、
ヴェルデアピス傭兵団の特殊さがある。
彼らは、
レベリス王国の敵ではない。
スフェンドヤードバニアへ
絶対的な忠誠を誓っているわけでもない。
国家ではなく、
契約によって動く。
そのため、
王女の輿入れを巡る情勢が変われば、
同じ傭兵でも
立っている場所が変わる。
そしてこの変化を見ると、
第8話の襲撃の見え方も変わってくる。
ハノイ自身が、
サラキア王女を憎んで襲ったわけではない。
アリューシアを狙う仕事を受け、
その仕事として
ベリルたちへ剣を向けた。
後には、
王子と王女を守る仕事を受け、
今度はその依頼に従う。
だからハノイを追うと、
輿入れの裏で重要なのは
「誰が敵か」だけではないと分かる。
誰が傭兵を雇うのか。
誰を守らせるのか。
誰を消そうとするのか。
そこを見なければ、
本当に動いている勢力は見えてこない。
ハノイが敵から護衛へ回ったことは、
突然の変心ではない。
むしろ、
サラキア王女の婚姻を巡る世界では
立場が固定されていないことを
最も分かりやすく示しているのである。
第7章 ハノイを見ると分かる|王女の輿入れの裏では敵と味方が固定されていない
第8話では襲撃者、婚姻後には護衛側へ回るハノイの立場
第8話の時点で見るハノイは、
ベリルたちへ剣を向ける危険な敵である。
ヴェルデアピス傭兵団を率い、
帰路の一行を襲撃している。
ヴェスパーは命の瀬戸際まで追い込まれ、
他の騎士たちにも被害が出た。
ベリルやアリューシアからすれば、
忘れられる相手ではない。
ところがサラキア王女の輿入れを追っていくと、
同じハノイが
グレン王子とサラキア王女を
危険から逃がす側へ現れる。
ここでハノイを、
途中から改心した人物と見ると分かりにくい。
第8話で襲った時にも、
後に王子と王女を守った時にも、
ハノイは傭兵として仕事をしている。
誰かを強く憎んだから襲う。
誰かを好きになったから守る。
そうした個人的な感情だけで
剣を向ける方向を決めているわけではない。
その時に何を依頼されたのか。
誰を守る仕事なのか。
誰と戦う必要があるのか。
そこがハノイの行動を変える。
だから第8話では、
アリューシアたちの敵になる。
別の局面では、
グレンとサラキアを守るために動く。
この変化があるからこそ、
王女の輿入れの裏側も見えてくる。
国家同士の争いなら、
レベリス王国対スフェンドヤードバニアという
単純な二つの陣営に分かれそうに見える。
しかし実際には、
王族がいる。
騎士団がいる。
宗教勢力もいる。
さらに外部から雇われる傭兵までいる。
同じ国の中でも、
全員が同じものを望んでいるとは限らない。
王女の婚姻を歓迎する者もいれば、
力関係が変わることを嫌う者もいる。
そのため、
昨日まで敵だった人物が
今日は同じ相手を守ることさえ起こる。
ハノイは、
その複雑さを最も分かりやすく見せる人物なのである。
サラキアの輿入れは結婚式で終わらず、その後の二国関係まで変えていく
サラキア王女の輿入れを
婚姻の儀だけで見ると、
王女がグレン王子へ嫁いで終わるように見える。
しかしその後まで追うと、
この結婚が持つ重さはさらに大きくなる。
グレンは後に、
スフェンドヤードバニアで
王太子として立場を固めていく。
サラキアも、
その伴侶として王太子妃の位置へ入る。
つまりレベリス王国の王女が、
隣国の将来を担う王族と
強く結び付くことになる。
その結果、
スフェンドヤードバニアで問題が起きた時にも、
レベリス王国は
以前より関与しやすくなる。
実際に後には、
レベリス側から支援へ動く話も出てくる。
そこではサラキアが嫁いでいることが、
二国を結ぶ大きな足場になる。
第7話で、
わざわざ輿入れの経路を確認したこと。
第8話の帰路で襲撃が起きたこと。
婚姻の儀で異変が起きたこと。
これらは別々の事件ではなく、
サラキアの婚姻によって
二国の関係が動いていく途中で起きている。
そしてその流れの中を、
ハノイも通っている。
最初は襲撃者。
その後は王子と王女を守る側。
さらにベリルたちと同じ方向へ
剣を向けることもある。
だからハノイについて、
「結局、敵なのか味方なのか」と考えても
一つには決められない。
彼はレベリス王国の騎士ではない。
グレン王子の忠臣でもない。
サラキア王女へ忠誠を誓った人物でもない。
ヴェルデアピス傭兵団の頭領として、
その時の契約に従って動いている。
そこが分かると、
第8話での襲撃と
後の護衛が矛盾しなくなる。
同時に、
サラキア王女の輿入れが
ただ祝福されるだけの結婚ではなかったことも見えてくる。
婚姻によって二国が近づけば、
新しく利益を得る者がいる。
逆に、
今までの立場を失う者も出てくる。
だから護衛が必要になる。
だから裏で傭兵が動く。
そして情勢が変われば、
その傭兵を雇う側まで変わる。
ハノイは、
サラキア王女の輿入れを邪魔するためだけに存在する敵ではない。
彼が敵にも護衛にもなる姿を追うことで、
王女の婚姻の裏では
国名だけでは分けられない複数の思惑が
同時に動いていたことが見えてくるのである。


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