薬膳ヤクは89歳という圧倒的な人生経験を持つため、恋太郎の彼女になっても彼から守られるだけの存在にはならない。
普段は彼女たちを受け止める恋太郎が、ヤクの前では年下の少年として子供扱いされ、むしろ見守られる側へ回っていく。
薬膳ヤクと恋太郎の関係を追うと、見た目の年齢とは反対に立場が逆転する、ファミリーでも珍しい恋の形が見えてくる。
第1章 結論|薬膳ヤクだけは恋太郎を年下の少年として見る
89歳のヤクから見れば、高校生の恋太郎はまだ若い
薬膳ヤクと恋太郎の関係が他の彼女たちと大きく違うのは、見た目と実際の年齢差が完全に逆転していること。
ヤクは小学生ほどに見える小さな身体。
恋太郎は高校生。
並んで歩けば、どう見ても恋太郎の方が年上に見える。
でも本当は、ヤクが89歳。
人生経験では恋太郎より遥かに上になる。
だからヤクは、恋太郎の彼女になっても最初から「守られるだけの少女」にはならない。
恋太郎が緊張する。
どう接すればいいのか迷う。
その様子を、ヤクは落ち着いて見ている。
恋人になったからといって、89年間の人生まで消えるわけではない。
年長者としての感覚が、そのまま二人の距離へ出てくる。
第32話「楠莉先輩のおばあさん」でも、この違いは出会った直後から分かる。
楠莉を巡る騒動が一段落する。
そこへ祖母のヤクが現れる。
恋太郎と目が合う。
そして、これまでの彼女たちと同じように「ビビーン」が走る。
恋太郎にとって、また新しい運命の相手が現れた瞬間になる。
ただ今回は、相手の情報があまりにも特殊。
楠莉のおばあちゃん。
89歳。
なのに見た目は幼い。
しかも自分の運命の相手。
恋太郎ほど何人もの彼女と向き合ってきた人物でも、すぐにいつもの調子へ戻れない。
そこに、高校生らしい戸惑いが出る。
一方のヤクは、恋太郎ほど大きく取り乱さない。
恋太郎ファミリーの事情を知る。
楠莉が恋太郎の彼女だということも分かっている。
それでも、自分の気持ちから逃げない。
恋太郎を年下の少年として見ながら、一人の男性としても見る。
この二つを自然に両立している。
ここで大事なのは、ヤクの子供扱いが恋太郎を見下したものではないこと。
恋太郎が頼りないと言いたいわけでもない。
何人もの彼女を大切にし、困れば全力で助ける人物だと分かっている。
それでも89歳のヤクから見れば、高校生はまだ若い。
その年齢差が、自然と年長者のような接し方につながる。
恋太郎はこれまで、彼女たちを包む側に回ることが多かった。
相手が不安なら励ます。
自信を失えば、その人物の良さを伝える。
危険があれば前へ出る。
そんな恋太郎が、ヤクの前では自分の方が落ち着かせてもらう。
ここが二人の関係の大きな逆転になる。
恋太郎がヤクを支えることもある。
でもヤクも恋太郎を見守れる。
恋人でありながら、年長者でもある。
小さな身体なのに、精神的には恋太郎よりずっと余裕がある。
この二重の立場が、薬膳ヤクと恋太郎を他の組み合わせとは違うものにしている。
普段は彼女を包む恋太郎が、ヤクには包まれる側へ回る
恋太郎がこれまで彼女たちとどう向き合ってきたかを見ると、ヤクとの違いはさらに分かりやすい。
好本静との出会いでは、静が会話そのものに大きな不安を抱えていた。
声で気持ちを伝えることが苦手。
本の文章を指し、それを相手に読んでもらう。
そんな方法で人とつながっていた。
恋太郎は、その方法を否定しなかった。
普通に話せばいいとも言わない。
静がどうすれば気持ちを伝えやすくなるのかを考える。
相手を自分に合わせるのではなく、自分から静の世界へ入っていく。
ここに恋太郎らしい包容力が出ている。
栄逢凪乃に対しても同じ。
凪乃は効率を重視し、恋愛のように数字で測れない感情を遠ざけようとする。
恋太郎はその考えを力ずくで否定しない。
一緒に過ごす。
時間を重ねる。
その中で、効率では測れないものを凪乃自身が感じられるようにしていく。
唐音にも、また違う難しさがあった。
好きなのに素直になれない。
優しくした直後に強い言葉が出る。
第2期では、そのツンデレそのものが揺らぐ場面まで描かれた。
それでも恋太郎は、都合よく素直になった唐音だけを求めない。
強がるところまで含めて、唐音そのものを大切にする。
楠莉に対しても、薬好きだからという一点で否定しない。
薬を作る。
失敗する。
恋太郎ファミリー全体が巻き込まれる。
それでも楠莉から薬を取り上げる方向へは進まない。
薬を好きでいることも含めて、楠莉という人物を受け止めている。
こうして見ると、恋太郎は一貫して「支える側」に立ってきた。
静には言葉を届ける場所を作る。
凪乃には感情を知る時間を作る。
唐音には自分らしくいられる場所を作る。
楠莉には薬を好きなままでいられる場所を作る。
相手ごとに方法は違っても、恋太郎が先に手を差し伸べる。
だからヤクが入ると空気が変わる。
恋太郎が戸惑う。
ヤクが待つ。
恋太郎が緊張する。
ヤクが余裕を見せる。
これまで彼女たちを包んできた恋太郎が、今度は自分の方を包んでもらえる。
89歳のヤクだからこそ生まれる関係になる。
恋太郎はヤクの前でも、全力で愛することをやめない。
でも常に自分が先頭に立つ必要はない。
完璧に振る舞えない瞬間があってもいい。
年下らしく戸惑ってもいい。
その姿まで受け止めてもらえる。
ここに、恋太郎自身の新しい居場所が生まれている。
第2章 第32話の散歩で立場が完全に逆転する
散歩へ誘うのはヤク、ドギマギしているのは恋太郎
第32話で二人の特殊な関係が最も分かりやすくなるのが、ヤクが恋太郎を散歩へ誘う場面。
新しい彼女が加わった直後。
普通なら、恋太郎の方が声を掛ける。
会話を引っ張る。
相手の緊張を解く。
そんな流れになっても不思議ではない。
ところが今回は、ヤクの方から動く。
恋太郎との関係を受け入れたあと、そのまま二人の時間へ進む。
恋をしたからといって、どうすればいいのか分からず立ち止まり続けない。
89歳まで生きてきた人物らしく、自分の感情を受け入れる速度が早い。
そこに、若い彼女とは違う余裕がある。
反対に、恋太郎はかなり意識している。
隣にいるヤクを見る。
身体は小さい。
外見だけなら自分よりずっと年下。
でも頭の中には「89歳」という数字がある。
さらに楠莉のおばあちゃんでもある。
恋人として近づきたい気持ちと、年長者へ接する感覚がぶつかる。
恋太郎にとって楠莉は大切な彼女。
その祖母まで自分の彼女になる。
孫と祖母。
二人とも恋太郎ファミリーへ入る。
これまで何度も常識外れの恋愛を受け入れてきた恋太郎でも、簡単に慣れられる関係ではない。
そのため、いつもより高校生らしい緊張が表に出る。
ヤクは、そんな恋太郎を見て急かさない。
自分まで慌てない。
年齢差を盾にして威張ることもしない。
幼い見た目を利用して若者のように振る舞うこともしない。
ただ自分のまま、恋太郎と歩く。
その自然さが、逆に89歳らしさを強く見せる。
遠くから二人だけを見れば、恋太郎が幼い少女を連れて歩いているように見える。
でも会話を追うと印象が逆になる。
落ち着いているのはヤク。
緊張しているのは恋太郎。
小さなヤクの方が、精神的には一歩先にいる。
見た目と立場が完全に反転している。
ヤクが恋太郎を子供扱いするのも、この流れの中にある。
恋太郎が幼稚だからではない。
高校生として見れば、むしろかなりしっかりしている。
それでも89歳のヤクから見れば若い。
恋太郎が生まれる何十年も前から、ヤクは人生を歩いてきた。
その差は、恋人になったからといって消えない。
だから恋太郎も、ヤクの前では無理に大人でいなくていい。
相手の年齢を意識して戸惑う。
恋人としての距離を探す。
時には先に誘ってもらう。
その姿をヤクが受け止める。
これまでとは違う形で、二人の距離が近づいていく。
見た目では恋太郎が年上、会話ではヤクが年長者になる
ヤクと恋太郎を並べた時、最初に目へ入るのは身体の差になる。
高校生の恋太郎。
8歳ほどに見えるヤク。
背丈も大きく違う。
何も知らなければ、恋太郎の方が保護する側に見える。
そこだけなら、89歳と高校生にはまず見えない。
ところがヤクが話し始めると、印象が変わる。
古風な口調。
「わし」という一人称。
若者とは少し違う感覚。
新しい物事への距離。
小さな身体の中に、長く生きてきた人物がそのままいる。
外見だけが若返っていることが、会話から伝わってくる。
恋太郎は、その部分を無視できない。
小さな少女としてだけ扱えば、ヤクの本当の姿を見ていないことになる。
89歳の年長者として堅苦しく接するだけでも、恋人として距離は縮まらない。
二つの顔を同時に持つヤクだから、恋太郎も自分の接し方を探していく。
ヤクも、恋太郎を年下として見るだけでは終わらない。
恋太郎は運命を感じた相手。
楠莉を大切にしている少年。
薬膳家の騒動へ巻き込まれても逃げない人物。
そういう恋太郎を見たうえで、彼女として近づいていく。
年下だから恋愛対象にならないという感覚ではない。
ここが二人の面白いところ。
ヤクは恋太郎を若いと思っている。
でも一人の男性として認めている。
恋太郎もヤクを年長者として敬う。
でも一人の彼女として愛する。
年齢差を消して恋人になるのではない。
年齢差を残したまま恋人になる。
だから二人の関係には、独特の双方向性がある。
恋太郎はヤクを守れる。
ヤクも恋太郎を支えられる。
恋太郎は愛情を注ぐ。
ヤクは、その愛情を余裕を持って受け止める。
どちらか一方だけが大人になる必要がない。
薬膳ヤクと恋太郎の関係が特殊なのは、単に89歳と高校生だからではない。
その年齢差が、普段の恋太郎の立場まで変えてしまうこと。
彼女たちを包んできた恋太郎が、ヤクには年下として見守られる。
それでも二人は恋人として向き合う。
この逆転が、ヤクとの恋を他の彼女とは違うものにしている。
第3章 恋太郎はこれまで彼女たちを支える側だった
静・凪乃・唐音との関係を見ると、恋太郎はいつも先に手を差し伸べている
薬膳ヤクとの関係が特別に見えるのは、これまでの恋太郎を振り返ると分かりやすい。
恋太郎は、彼女から守ってもらうより自分から支えることが多かった。
相手が困っている。
自信を失っている。
気持ちをうまく言葉にできない。
そんな時、恋太郎はほとんど迷わず前へ出る。
好本静との出会いでは、その姿勢がかなり鮮明だった。
静は会話そのものが苦手。
自分の気持ちを声にすることにも大きな不安がある。
本の文章を指し、それを相手に読んでもらう。
そうやって何とか人とつながっていた。
恋太郎は、その方法を笑わなかった。
普通に話せるようになればいいとも言わない。
どうすれば静がもっと気持ちを伝えやすくなるのかを考える。
相手を自分に合わせるのではない。
自分から静の世界へ入る。
静が静のままでいられる場所を作る。
ここに恋太郎らしい包容力が出ていた。
栄逢凪乃との関係でも同じ。
凪乃は効率を重視する。
必要か。
不要か。
無駄があるか。
物事をかなり明確に分ける人物だった。
恋愛も、最初は非効率なものに見える。
時間を使う。
感情に振り回される。
答えが数字で出るわけでもない。
それでも恋太郎は、凪乃の考えを力ずくで否定しない。
一緒に過ごす。
その時間から、効率だけでは測れないものを凪乃自身に感じてもらう。
唐音にも、また違う壁があった。
好きなのに素直になれない。
嬉しいのに怒る。
優しくした直後に強い言葉が出る。
本心と態度が反対へ走る。
それが唐音らしさでもある。
第2期では、そのツンデレそのものが揺らぐ出来事も起きた。
素直な唐音だけを見れば、恋太郎にとって接しやすくなったようにも見える。
でも恋太郎は、それを単純に喜ばない。
強がるところも含めて唐音。
照れるところも含めて唐音。
恋太郎は、都合よく変わった相手ではなく本人そのものを見ている。
楠莉に対しても同じ。
薬を作る。
失敗する。
恋太郎ファミリーまで巻き込まれる。
それでも恋太郎は、薬を好きなこと自体を否定しない。
楠莉から薬を取り上げれば安全になる。
でも、それでは楠莉らしさまで奪ってしまう。
恋太郎はそこへ踏み込まない。
こうして見ると、恋太郎はずっと相手の弱さや個性を受け止める側にいる。
静には言葉を届ける道を作る。
凪乃には感情を知る時間を作る。
唐音には自分らしく戻れる場所を作る。
楠莉には薬を好きなままでいられる場所を作る。
彼女ごとに違っても、恋太郎が先に手を差し伸べる点は共通している。
だからヤクが入ると、空気が変わる。
恋太郎の方が戸惑う。
ヤクが待つ。
恋太郎が緊張する。
ヤクが余裕を見せる。
これまで彼女たちを包んできた恋太郎が、自分の方を包んでもらえる。
そこが大きい。
ヤクは恋太郎を年下として見られる。
でも同時に、彼氏としても見ている。
だから子供扱いするだけでは終わらない。
恋太郎の愛情を受け取る。
そのうえで、自分からも返す。
恋太郎が一方的に支える形ではなくなる。
何人の彼女が増えても、恋太郎は一人ずつ違う形で向き合ってきた
恋太郎ファミリーは人数が多い。
それだけを見ると、全員との関係が似てしまいそうにも見える。
恋太郎が全員を好きになる。
全員へ愛情を注ぐ。
困れば助ける。
大きな枠だけなら確かに共通している。
でも実際には、一人ずつ距離が違う。
静には静の速度。
凪乃には凪乃の考え方。
唐音には唐音の強がり。
楠莉には楠莉の薬への情熱。
恋太郎は、相手が違えば自分の接し方も変えてきた。
そこへヤクが入る。
89歳。
楠莉の祖母。
幼い外見。
古風な口調。
長い人生経験。
これまでの彼女たちとは、最初から持っているものがかなり違う。
だから恋太郎も、同じ型では向き合えない。
ヤクに恋愛を教える必要はない。
自分が全部を守る必要もない。
むしろ恋太郎の方が年下として見られる。
相手の余裕へ預ける時間も生まれる。
ここが他の彼女とはかなり違う。
恋太郎は何人もの彼女を支えている。
その姿だけを見ると、かなり完成された人物に見える。
でもヤクから見れば高校生。
まだ若い。
経験していないことも多い。
そこを無理に持ち上げず、年下として扱える。
89歳のヤクだからできることになる。
恋太郎も、その扱いを拒む必要がない。
いつも自分が完璧でいなくていい。
戸惑うこともある。
照れることもある。
相手から先に歩み寄ってもらうこともある。
それでも二人の関係は崩れない。
むしろ、その姿まで見せられることが新しい。
ここで恋太郎の包容力が一方通行ではなくなる。
恋太郎がヤクを包む。
ヤクも恋太郎を包む。
恋太郎が彼女を守る。
ヤクも恋太郎を見守る。
どちらか一方だけが大人になる必要がない。
この双方向の距離が、ヤクとの恋を強くしている。
恋太郎が全員を同じように愛しているわけではないことも、ここから見えてくる。
全員を大切にする。
でも関係の形は一人ずつ違う。
ヤクにはヤクの距離。
恋太郎が年下として扱われることまで、その関係の一部になる。
だから彼女が増えても、ヤクは埋もれない。
第4章 89歳のヤクは、恋太郎の全力愛に飲まれない
恋太郎の強い愛情を受けても、ヤクには人生経験の余裕がある
恋太郎の愛情は、普通の高校生とはかなり違う。
相手が困れば動く。
危険があれば飛び込む。
必要な言葉があれば全力で伝える。
彼女のためなら、自分の限界を簡単に越える。
その全力さが、恋太郎という人物の大きな特徴になっている。
彼女たちも、その愛情に何度も圧倒されてきた。
嬉しくなる。
照れる。
泣く。
自分がここまで大切にされるとは思わなかった。
恋太郎の行動によって、自分自身への見方まで変わる。
恋太郎が先に大きな愛情を見せる場面は多い。
ヤクの場合、その形が少し違う。
もちろん恋太郎の愛情を軽く扱うわけではない。
嬉しいものは嬉しい。
恋人として大切にもする。
でも恋太郎の勢いに全部を持っていかれない。
89年間を生きてきた分、自分の足で立っている。
第32話でも、ヤクは受け身のままではない。
恋太郎との関係を受け入れる。
自分から散歩へ誘う。
まだ始まったばかりの恋でも、必要以上に怖がらない。
恋太郎がどう反応するのかを見る。
そのうえで、自分から距離を縮めていく。
恋太郎の方は、むしろそこで緊張する。
二人きり。
相手は新しい彼女。
しかも89歳。
さらに楠莉の祖母。
普段なら相手の緊張を解く恋太郎が、今回は自分の方に戸惑いを抱える。
ヤクは、その恋太郎を見ても慌てない。
ここに人生経験の差が出る。
恋太郎が生まれる遥か前から、ヤクは生きてきた。
家族を見てきた。
時代の変化も見てきた。
若い頃から長い時間を積み重ねている。
その年月が、簡単には崩れない落ち着きにつながっている。
だから恋太郎の全力愛も、ヤクにとって一方的に圧倒されるものにはなりにくい。
大きな愛情として受け取る。
そのうえで、自分の側からも返す。
恋太郎に守られるだけではない。
自分も恋太郎を見守る。
関係の重心が片方へ寄りすぎない。
しかもヤクは、恋太郎が何人もの彼女と交際していることだけを見て判断しない。
楠莉へどう向き合っているのか。
薬膳家の騒動でどう動いたのか。
相手を大切にする姿勢が本物なのか。
そういう部分を見ることができる。
ここにも、長く人を見てきたヤクの余裕がある。
恋太郎が完璧に振る舞えない瞬間があっても、ヤクはそこで失望しない。
戸惑う。
照れる。
少し言葉に詰まる。
そんな高校生らしい部分まで含めて見る。
恋太郎にとっても、それはかなり珍しい関係になる。
恋人でありながら、若い恋太郎を見守る側にも回れる
ヤクが特別なのは、恋太郎を好きになっても年長者としての感覚が消えないところ。
恋愛を始めた瞬間に89年間の人生がなくなるわけではない。
恋太郎だけを見て、急に十代の少女のようになるわけでもない。
ヤクはヤクのまま恋をする。
そこが大きい。
恋太郎を子供扱いするのも、その一つ。
高校生の恋太郎は十分しっかりしている。
何人もの彼女を支える。
問題が起きれば動く。
家族へも真剣に向き合う。
年齢以上に大人びて見える場面も多い。
それでも89歳のヤクから見れば若い。
だから恋太郎が無理をして大人らしく振る舞わなくてもいい。
分からないことがある。
緊張することがある。
年上の女性を前にして戸惑う。
そんな姿まで、ヤクは受け止められる。
恋太郎がいつも先頭に立つ必要がない。
この関係は、恋太郎にとっても珍しい。
彼女に頼られることを恋太郎は嫌がらない。
むしろ全力で応える。
でもヤクとの間では、自分が相手の余裕へ預けられる時間も生まれる。
ただ一緒に歩く。
話す。
相手の方が落ち着いている。
それだけでも、いつもの恋太郎とは違う。
見た目では恋太郎が守る側。
精神的な余裕ではヤクが上。
恋太郎が手を差し伸べる時もある。
ヤクが恋太郎を包む時もある。
この行き来があるから、単純な年上と年下だけでは終わらない。
恋人としての距離がその中に残る。
しかもヤクは楠莉の祖母でもある。
恋太郎が大切にしている彼女の家族。
だから恋太郎を見る視点も一つではない。
孫の恋人として見る。
年下の少年として見る。
自分の運命の相手として見る。
その全部が一人の恋太郎へ重なっている。
恋太郎も同じ。
ヤクを彼女として大切にする。
楠莉の祖母として敬う。
89歳の人生経験も受け止める。
どれか一つだけを選ぶわけではない。
複数の立場を持つヤクへ、そのまま向き合う。
だから二人の関係は薄くならない。
薬膳ヤクと恋太郎の特殊さは、年齢差そのものより、そこから生まれる距離にある。
恋太郎の全力愛をヤクが余裕を持って受け止める。
恋太郎が支えるだけではない。
ヤクも恋太郎を見守る。
その双方向の形があるから、ヤクとの恋は他の彼女とは違うものになっている。
第5章 見た目は幼いのに、恋人になっても89歳らしさが消えない
古風な口調や落ち着きが、恋太郎との年齢差を何度も見せる
薬膳ヤクは恋太郎の彼女になっても、若い女性のように振る舞おうとはしない。
身体は小さい。
顔立ちも幼い。
でも中身まで若返ったわけではない。
89年間で身についた感覚は、そのままヤクの中に残っている。
だから恋太郎との会話でも、年長者らしい空気が自然に出てくる。
分かりやすいのが話し方。
ヤクは自分のことを「わし」と呼ぶ。
言葉遣いも古風。
恋太郎と並んだ姿だけを見れば、どうしても年下の少女に見える。
ところが一度話し始めると、その印象がすぐに崩れる。
小さな身体の中に、本当に89歳の女性がいると感じられる。
服装にも、その感覚が出ている。
和服姿。
草履。
若返った身体に合わせて、無理に高校生らしい格好へ寄せようとはしない。
恋太郎の彼女になったからといって、恋太郎の世代へ自分を合わせるわけでもない。
そこにヤクらしい自然さがある。
現代の機械や言葉への距離も同じ。
若い世代なら普通に使うものでも、ヤクには馴染みが薄い。
横文字にも強いわけではない。
だから恋太郎や楠莉たちとの会話で、世代の差がふっと顔を出す。
身体が幼くなっても、育った時代まで変わったわけではない。
このズレがヤクの年齢を何度も思い出させる。
ただし、知らないことが多いから幼いわけではない。
むしろ逆。
新しい機械には恋太郎の方が詳しくても、人生経験ではヤクが圧倒的に上。
恋太郎が教えられることもある。
ヤクが教えられることもある。
二人の間では、どちらか一方だけが何でも知っている形にはならない。
それでも精神的な余裕では、ヤクが一歩上に見える。
恋太郎が緊張する。
年齢差を意識する。
どう接すればいいのか迷う。
ヤクは、その様子を見ながら自分の速度を崩さない。
恋人になった直後から、この差がはっきり出ている。
ここで面白いのは、ヤクが恋太郎を若者として見ながらも、恋愛相手としてはきちんと扱っていること。
子供扱いする。
でも見下さない。
年下だと思う。
でも恋人としての気持ちは変わらない。
この二つが同時にある。
だから単なる祖母と孫のような関係にはならない。
恋太郎も、ヤクを幼い身体だけで扱わない。
小さいから守る。
年上だから敬う。
それだけでは足りない。
89歳のヤク本人と向き合う。
古風なところも受け入れる。
現代に疎いところも含めて見る。
相手を若者へ変えようとはしない。
だから二人の恋には、不思議な落ち着きがある。
恋太郎が全部を導く必要がない。
ヤクも無理に若返った自分を演じない。
互いに持っているものが違う。
その違いを消さずに近づいていく。
そこがヤクとの関係を他の彼女とは違うものにしている。
若い彼女へ無理に合わせないから、ヤクだけの距離感が生まれる
恋太郎ファミリーには、個性の強い彼女が多い。
性格も違う。
恋太郎への接し方も違う。
距離の縮め方も違う。
でもヤクは、その中でもかなり独特な位置にいる。
恋人になっても、自分の年齢を隠そうとしないから。
ヤクは89歳という自分を、そのまま恋太郎へ見せる。
若者の言葉に詳しいふりをしない。
機械に強いふりもしない。
恋太郎へ好かれるために、十代の少女のように振る舞う必要もない。
今まで生きてきた自分を持ったまま、恋愛へ入っていく。
これは恋太郎にとっても新しい。
これまで恋太郎は、相手の悩みへ入り込むことが多かった。
何かを助ける。
何かを教える。
何かを守る。
でもヤクは、最初から自分の足で立っている部分が大きい。
恋太郎が全部を何とかしなければならない相手ではない。
だから二人きりの時間も、恋太郎が頑張り続ける形にはならない。
恋太郎が話す。
ヤクが聞く。
ヤクが話す。
恋太郎が聞く。
恋太郎が戸惑えば、ヤクが待つ。
必要ならヤクの方から距離を縮める。
関係が一方向へ流れない。
ここに89歳という年齢が強く効いている。
ヤクは長く生きてきた。
自分の好き嫌いも分かっている。
何を無理に変える必要がないかも分かっている。
だから恋太郎に合わせるため、自分を作り直そうとしない。
恋太郎の前でも、自分のままでいられる。
恋太郎も、そのヤクをそのまま愛する。
古風なところがある。
現代的な感覚とずれるところもある。
それでも「直した方がいい」とはならない。
恋太郎が好きなのは、若者に合わせたヤクではない。
89歳として生きてきた薬膳ヤク本人になる。
この関係があるから、子供扱いにも嫌な感じが出にくい。
ヤクは恋太郎を若いと思っている。
でも恋太郎の真剣さは認めている。
恋太郎はヤクを年長者として見る。
でも恋人として距離を置きすぎない。
互いに相手の立場を認めたうえで近づく。
見た目だけなら、ヤクの方が守られる側に見える。
でも実際には、恋太郎が少し力を抜ける相手でもある。
何人もの彼女を支える恋太郎。
いつも誰かのために動く恋太郎。
そんな恋太郎へ、「まだ若い」と言える人物が現れた。
これだけでもファミリーの中でかなり珍しい。
だからヤクの89歳らしさは、恋愛の邪魔になるものではない。
むしろ二人だけの距離を作るものになる。
幼い外見と長い人生。
恋人としての近さと、年長者としての余裕。
その両方があるから、薬膳ヤクは他の彼女とは違う位置に立っている。
第6章 楠莉の祖母でありながら、恋太郎の彼女でもある
恋太郎から見れば「彼女のおばあちゃん」がそのまま新しい彼女になる
ヤクと恋太郎の関係をさらに特殊にしているのが、薬膳楠莉の存在。
ヤクは89歳というだけではない。
恋太郎がすでに付き合っている楠莉の祖母。
その人物と恋太郎自身も運命の出会いをする。
ここで関係は、一気に普通ではなくなる。
恋人の家族へ会う。
祖父母へ挨拶する。
そこまでは珍しくない。
でも恋太郎の場合、その祖母まで自分の恋人になる。
しかもヤクは、楠莉より遥かに年上でありながら、見た目は同じくらい幼い。
家族関係と外見と恋愛が、全部違う方向へ伸びている。
恋太郎はすでに楠莉を大切にしてきた。
薬の騒動へ巻き込まれる。
大人の姿も小さな姿も知る。
楠莉の突飛な行動にも付き合う。
そのうえで薬膳家まで訪れる。
恋太郎と薬膳家の関わりは、ヤクと出会う前からかなり深くなっている。
そこへヤクが現れる。
最初は楠莉のおばあちゃんとして見るはずの相手。
年長者として接するはずの人物。
ところが目が合った瞬間、運命の出会いになる。
恋太郎にとっては、家族として敬う相手と恋人として愛する相手が一人の中で重なる。
ここがかなり特殊。
恋太郎が戸惑うのも自然になる。
楠莉は大切な彼女。
ヤクも運命の相手。
でもヤクは楠莉の祖母。
どちらか一つの関係だけを見ればいいわけではない。
恋人。
祖母。
年長者。
全部を同時に受け止める必要がある。
ヤクの側でも同じ。
恋太郎は、大切な孫が付き合っている少年。
その恋太郎を自分も好きになる。
普通なら、かなり複雑な感情が出てもおかしくない。
でもヤクは、恋太郎ファミリーの関係を受け入れていく。
楠莉の立場を奪おうとはしない。
ここが重要になる。
ヤクが恋太郎を好きになっても、楠莉への家族愛は消えない。
楠莉は孫のまま。
恋太郎は恋人になる。
二つの関係が同時に存在する。
どちらか一方を選ぶ必要がない。
この感覚が、恋太郎ファミリーという場所にも合っている。
恋太郎も、ヤクを「楠莉のおばあちゃん」で終わらせない。
楠莉との関係から切り離して、一人の薬膳ヤクとしても見る。
だからヤクは楠莉の付属物にはならない。
祖母という立場を持ちながら、恋太郎との個別の関係も作っていく。
この複雑さが、ヤクを他の彼女とは違う存在にしている。
恋太郎だけを見れば、89歳の年上彼女。
楠莉を加えれば、彼女の祖母。
薬膳家全体を見れば、家族の中へさらに深く入った恋太郎の相手。
一人の人物に、いくつもの立場が重なっている。
祖母と孫が同じ恋太郎を好きでも、二人の恋は同じ形にならない
楠莉とヤクは、どちらも恋太郎の彼女になる。
祖母と孫。
同じ薬膳家。
見た目まで似ている。
それだけを見ると、二人の恋も近いものになりそうに見える。
でも実際には、恋太郎との距離がまったく違う。
楠莉は勢いが強い。
薬を作る。
思いつけば試す。
恋太郎ファミリーまで巻き込む。
恋太郎との関係にも、そのまま楠莉らしい騒がしさが入る。
二人の時間には、薬や失敗や珍しい騒動がついて回ることも多い。
ヤクは逆。
急がない。
相手を見る。
待つ。
恋太郎が緊張していても、すぐに答えを求めない。
年下として見守る余裕もある。
同じ薬膳家でも、恋太郎との距離の詰め方はかなり違う。
だから祖母と孫が同じ男性を好きでも、関係が重ならない。
楠莉には楠莉の恋。
ヤクにはヤクの恋。
恋太郎も二人を一括りにはしない。
同じ家族だから同じように扱うのではなく、それぞれ別の相手として向き合っている。
ヤクも、自分が祖母だから楠莉より上へ立とうとはしない。
89歳だから優先されるわけでもない。
恋太郎ファミリーの中では、自分も一人の彼女。
楠莉にも楠莉の場所がある。
ヤクにもヤクの場所がある。
そこを奪い合う形にはならない。
そのうえで、祖母と孫の関係は残る。
ヤクは楠莉の成長を見てきた。
薬に夢中になる姿も知っている。
失敗してもまた研究する孫を、長い時間見ている。
恋太郎を好きになったからといって、その過去まで消えるわけではない。
恋太郎にとっても、それは無視できない。
ヤクを大切にする。
楠莉も大切にする。
二人の家族としての関係も大切にする。
誰か一人を選ぶことで別の一人を傷つける形ではなく、二人それぞれへ向き合う。
そこに恋太郎らしさが出る。
だからヤクとの関係で面白いのは、家系図の珍しさだけではない。
祖母なのに彼女。
孫も彼女。
それでも関係が崩れず、一人ずつ違う恋になっていく。
恋太郎ファミリーの特殊さが、薬膳家の中でさらに強く見えてくる。
ヤクは楠莉のおばあちゃんであることを捨てない。
恋太郎を年下として見る感覚も捨てない。
それでも恋人として向き合う。
複数の立場を持ったまま一人の彼女になる。
そこが薬膳ヤクという人物の面白さになる。
そして恋太郎も、ヤクと付き合うことで新しい立場へ入っていく。
彼女の祖母を敬う。
その祖母から子供扱いされる。
でも自分も彼氏としてヤクを大切にする。
普通なら重ならない関係が一つになる。
この複雑さこそ、薬膳ヤクと恋太郎の組み合わせを特別にしている。
第7章 ヤクとの恋では、恋太郎自身の新しい顔が見えてくる
いつも頼られる恋太郎が、ヤクの前では年下として扱われる
薬膳ヤクとの関係を追っていくと、最後に見えてくるのはヤクだけの特殊さではない。
恋太郎自身にも、これまでとは違う顔が出てくる。
普段の恋太郎は、彼女たちから頼られる側。
何かあれば真っ先に動く。
誰かが傷つけば支える。
静には、言葉を伝えやすい場所を作った。
凪乃には、効率では測れない感情を見せた。
唐音には、素直になれない部分まで含めて向き合った。
楠莉が薬で騒動を起こしても、一緒に最後まで走る。
相手が違っても、恋太郎が支える側に立つことは多かった。
そんな恋太郎が、ヤクの前では少し変わる。
相手は89歳。
自分より何十年も長く生きている。
しかも楠莉のおばあちゃん。
見た目だけなら幼い少女なのに、実際には圧倒的な年長者。
恋太郎の方が、その落差を強く意識してしまう。
第32話の散歩でも、その違いが分かりやすい。
二人きりになって緊張する恋太郎。
その様子を落ち着いて見るヤク。
恋太郎は、いつものように最初から場を引っ張り切れない。
むしろヤクの方が自然体。
ここで高校生らしい恋太郎の若さが表に出る。
これは恋太郎にとって、かなり珍しい立場になる。
何人もの彼女を支えてきた。
家族へも真剣に向き合ってきた。
危険な場面では身体を張る。
恋愛でも相手の弱さを受け止める。
そんな恋太郎を、ヤクは「まだ若い相手」として見ることができる。
だからヤクの前では、恋太郎が無理に完成した男性でいる必要がない。
分からないことがある。
戸惑うこともある。
年上の女性を前にして緊張する。
相手から先に距離を縮めてもらう。
そういう姿まで、ヤクはそのまま受け止める。
ヤクが恋太郎を子供扱いするのも、その延長にある。
馬鹿にしているわけではない。
恋太郎の能力を低く見ているわけでもない。
恋太郎がどれほど立派でも、89歳から見れば若い。
人生経験の差を無理に消さないから、自然と年長者のような接し方になる。
恋太郎にとって、それは嫌な扱いにはならない。
いつも自分が相手を安心させなければならない。
自分が先に答えを出さなければならない。
そんな関係ではない。
ヤクの前では、自分の方が見守られる瞬間もある。
そこに二人だけの居心地が生まれる。
「全員を同じように愛する」のではなく、一人ずつ違う関係を作っている
恋太郎には多くの彼女がいる。
人数だけを見れば、全員との関係が似てしまいそうにも見える。
誰に対しても全力で愛する。
困れば助ける。
大切だと言葉にする。
大きな枠だけなら、確かに共通している。
でも実際には、一人ずつ距離が違う。
静には静の速度がある。
凪乃には凪乃の考え方がある。
唐音には唐音の強がりがある。
楠莉には楠莉の薬への情熱がある。
恋太郎は、相手が違えば自分の動き方も変えてきた。
ヤクなら、さらに違う。
89歳という人生経験がある。
楠莉の祖母でもある。
恋太郎を年下として見る。
それでも一人の恋人として大切にする。
これまでの彼女にはなかった関係が、最初から出来上がっている。
だから恋太郎も、ヤクに対して同じ型を使えない。
自分が全部教えるわけではない。
自分が全部守るわけでもない。
恋太郎の方が相手の余裕へ預けることもある。
年下として扱われることもある。
それも二人の恋の一部になる。
ここを見ると、恋太郎が大切にしているのは「彼女」という肩書だけではないと分かる。
ヤクならヤク。
静なら静。
凪乃なら凪乃。
一人ずつ違う人物として向き合う。
だから人数が増えても、関係そのものは同じにならない。
ヤクの場合、その違いが特に強い。
恋太郎の彼女。
でも恋太郎より圧倒的に年上。
楠莉のおばあちゃん。
それでもファミリーの中では一人の恋人。
どの立場も消えない。
その全部を持ったまま恋太郎と向き合う。
恋太郎も、それを一つへまとめようとはしない。
ヤクを年上だから敬う。
恋人だから愛する。
楠莉の祖母だから家族としても大切にする。
子供扱いされれば、そこでは年下としての顔も出る。
複数の関係が重なっていても、どれかを否定しない。
だから薬膳ヤクは、単なる「最高齢の彼女」では終わらない。
恋太郎の愛情を受け取れる。
同時に恋太郎を見守れる。
恋人なのに年長者。
小さな姿なのに、精神的には大きな余裕を持つ。
その全部が一つになっている。
薬膳ヤクと恋太郎の関係が特殊なのは、89歳と高校生という年齢差があるからだけではない。
その年齢差によって、普段は彼女たちを包む恋太郎が、ヤクには包まれる側へ回れること。
それでも恋太郎はヤクを全力で愛する。
ヤクも、恋太郎を年下として見ながら恋人として大切にする。
見た目では恋太郎が大人。
会話ではヤクが大人。
恋太郎は彼氏でありながら、ヤクには若い少年として扱われる。
ヤクは小さな彼女でありながら、恋太郎を見守れる年長者でもある。
この逆転があるから、薬膳ヤクとの恋は他の彼女とは違う形になる。


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