『タコピーの原罪』――可愛い見た目からは想像できない衝撃展開で話題の本作。その“感情ぐちゃぐちゃ”な世界観を形づくっているのが、個性派声優陣とスタッフたちの熱量です。
タコピー役の間宮くるみ、しずか役の上田麗奈をはじめとした実力派キャスト陣。そして、『Dr.STONE』の飯野慎也監督×『ガンダム』や『ダンジョン飯』経験者・長原秀和によるビジュアルの融合。
この記事では、声優・スタッフのキャリアや裏話を紹介しながら、どんな意図でこの作品が作られたのかを紐解いていきます。キャラの声の“温度”や、演出の裏にある“選択”の意味を知れば、『タコピー』がもっとクセになりますよ。
この記事を読むとわかること
- タコピーの声優とスタッフの全貌がまるわかり!
- キャラの感情表現を支える演出と構成の工夫!
- “かわいいのに怖い”世界観の裏にある制作哲学!
タコピーの原罪 声優&スタッフ完全ガイド
タコピー役・間宮くるみ──“無垢さ”と“狂気”の声の秘密
一言で言えば、「なぜこの人選が可能だったのかスタッフを称賛したい」。それがタコピー役・間宮くるみに対する率直な印象です。
間宮さんといえば『クレヨンしんちゃん』のひまわりや、『とっとこハム太郎』のハム太郎役などで知られる“赤ちゃんボイスと癒やしボイス”の二刀流。
その彼女が、見た目だけなら完全に“ゆるキャラ”なタコピーに命を吹き込むことに、納得しかありません。語尾の「〜っピ!」に絶妙なニュアンスを持たせ、無邪気さと軽い違和感を同時に感じさせる演技はまさに神業。
「かわいい」を通り越して「なんか怖い…でも憎めない」という感情にさせるのは、声のトーンの変化と間(ま)の演出があるからこそです。
しずか役・上田麗奈──セリフ以上の“静かな熱”を放つ表現力
しずかを演じるのは、上田麗奈さん。『鬼滅の刃』栗花落カナヲ役や、『BEASTARS』のハルなど、いわゆる“感情を抑えた中にも激しさがある”キャラクターで評価の高い声優です。
今回のしずかも、まさにその文脈にドンピシャ。多くを語らない、目で訴える系のヒロインを演じるにあたり、上田さんの“息遣いの演技”が作品に大きな奥行きを与えています。
特にチャッピーの死後の数話では、セリフが少ないのに“泣いてるのか怒っているのか分からない声”が鳴っているような気がする…という視聴者の感覚、あれこそが演技力のなせる技。
言葉ではなく“沈黙の余白”でキャラの心を伝える上田さんの力量に、制作陣の信頼を感じます。
まりな・東役など主要キャスト紹介──意外な人選の背景とは
まりなを演じるのはファイルーズあいさん。筋トレ系YouTuberのようなパワフルな印象の彼女が、あの“病み全開少女”を演じる…?と思いきや、これがものすごくハマっています。
声に含まれる「理不尽さ」「情緒不安定さ」「支配欲」が圧倒的にリアルで、SNSでは「声だけで胃が痛くなる」と話題に。
東役の村瀬歩さんも、抑制された少年の声を出す名手であり、静かな怒りと諦めを滲ませる演技が視聴者の心にじわじわと浸透します。ど
ちらも“人間味の不安定さ”を表現できる声優であることが共通点。つまり、この作品のキャスティングに必要なのは「感情を爆発させる人」ではなく、「感情の出口が詰まってる人の声」を出せる人たちだったということなんです。
飯野慎也(監督・シリーズ構成)の挑戦
Dr.STONEからの転身──“癒し系恐怖”という新ジャンル
飯野慎也監督と聞いて「科学と冒険の人!」と思う方、正解です。彼は『Dr.STONE』の演出を手掛けた実績があり、エンタメと論理的構成の両立に定評のある人。
しかし『タコピーの原罪』では、真逆とすら言える“静かなる恐怖”に挑戦しています。どこか温かい絵柄のなかに、人がどんどん壊れていく様を忍び込ませるこのスタイル、視聴者の心にじわじわ来る“後からくる系ホラー”。
見せたいものを直球で投げず、あえてノーコン気味にぶつけてくる演出に、「監督、怖すぎです」と思わずつぶやいてしまいます。
脚本としての意図──“善意の暴走”をどう描きたかったのか
本作はシリーズ構成も飯野監督が担当しており、構成の“呼吸”からもその意図がにじみ出ています。特に印象的なのが、タコピーの「ハッピーにするピ!」という口癖。
このセリフ、ほとんど呪文です。善意しか知らないタコピーの行動が、結果的に相手を追い詰めていく。監督はこれを「善意の“暴走機関車”」のように扱い、あえて途中で止めない。
そのぶん、受け止める側(しずかや東)が“どう乗るか”で物語が左右される構図になっています。この設計、かなり冷静かつ計算された脚本構築で、意図的に視聴者の“感情のズレ”を引き起こしているのがすごい。
飯野監督自身のコメントから読み解く現場の温度感
飯野監督はインタビューで「子どもたちの声にならない感情を、映像で語りたかった」と語っています。つまり、本作は“見てわかる話”ではなく“感じてしまう話”を目指した作品なんですね。
シーンの一つひとつがまるで詩のように、台詞では語られない情報で満たされており、視聴者がどこで引っかかるかは人それぞれ。この“感じ方を委ねる構成”こそ、飯野演出の肝です。
また、「タコピーが“かわいいけど怖い”存在になるよう、ギャップを徹底的に設計した」との発言もあり、完全に視聴者を翻弄する気まんまん。ああもう、やられましたよ、監督。
長原圭太(キャラクターデザイン)の美学
タコピーとしずかデザインのこだわり──“かわいさ”と“不穏さ”の両立
タコピーとしずかのビジュアル、ぱっと見は「ほのぼのギャグ系」っぽいんです。でも、よく見るとどこかおかしい。その絶妙な“違和感”を仕込んだのが、キャラクターデザインの長原圭太さんです。
タコピーの表情はずっと一定のように見えて、実は目の縁や口角にごく微妙な変化がつけられていて、「無垢なはずなのに怖い…」という印象を生んでいます。
しずかの顔は感情が読み取りにくく、髪や影の描き方もわざと“光を拒む”ような設計。可愛さと不安のバランスが、ここまで繊細に計算されているとは…まさに職人芸です。
過去作との比較──ガンダムやダンジョン飯との接点
長原さんは『機動戦士ガンダム 水星の魔女』や『ダンジョン飯』にも参加しているベテランで、少年少女の“等身大の不安”を描くのが得意なクリエイター。
ガンダムではテクノロジーと感情の交錯を、ダンジョン飯ではコミカルさと生きることのリアリズムを描いてきましたが、『タコピー』ではその中間を狙っている印象です。
つまり、ギャグでもシリアスでもない“人間っぽいけどどこかズレてる顔”を描くことに長けているんですね。特にしずかの無表情、東の虚ろな目など、「笑ってないのに泣いてもいない」というデザインが物語の空気そのものになっています。
デザインから見えるキャラ心理──視線や色使いに込められた仕掛け
細かく見ていくと、長原デザインのキャラには“感情の交通整理”のような仕掛けが施されています。例えば、しずかは誰かを見るときに真正面から目を合わせない。
東は常に斜め下か、遠くの空を見ている。そしてまりなは、強気な場面ほど真正面を見つめてくる。これは視線で心理状態を語るテクニックで、セリフよりも強いメッセージを視覚的に与えるためのものです。
さらに、キャラごとの色彩も緻密で、しずかの服はくすみがかっていて、まりなは彩度が高め。感情の“温度差”を色で表現しているんですね。アニメって“動く絵”じゃなくて、“動く感情”なんだな…と納得させられる瞬間です。
その他スタッフ陣のスクラムプレイ
音楽:藤澤慶昌──無音演出との“対話”で感情を操る
音楽担当は『ユーフォニアム』『アイドリッシュセブン』などで知られる藤澤慶昌さん。温かくて繊細、それでいてどこか不安をかき立てる旋律が持ち味です。
『タコピーの原罪』では、その音楽性が「音がしないこと」の価値を引き立てる形で使われています。そう、“音楽が流れていない場面”が強烈に印象に残るのです。
これは音楽を“飾り”ではなく“間(ま)を引き立てる対話相手”として扱っているからこそ。特に、しずかが涙を流さずに苦しむ場面で、微かに鳴るピアノの音が胸に刺さるように響きます。BGMなのに、セリフより雄弁。藤澤さんの音楽は、まさに“喋らない登場人物”なのです。
プロップ&美術:10十10・板倉佐賀子ら──道具や背景に隠された伏線
“ハッピー道具”が持つ不穏さの裏には、プロップデザインを担当する10十10さんのセンスが光っています。道具の名前や見た目は可愛らしいのに、その用途や結果はだいたい地獄。
思い出ボックス、仲直りリボン、パタパタつばさ…どれも「最初は微笑むのに、最後は顔が引きつる」系です。さらに、背景美術を手がける板倉佐賀子さんの描く空や教室の色味にも注目です。
例えば、何もない青空が妙に“冷たい”印象を与えたり、まりなの家のシーンでは光が届かないほど影が濃かったり。これは感情を視覚的に反映させた設計で、舞台そのものがキャラクターの内面を語っているのです。
音響・編集など技術スタッフが紡ぐ“リアルのリアリティ”
アニメにおいては「目で見る演出」が語られがちですが、『タコピーの原罪』は耳とタイミングの世界でも勝負しています。音響監督の長崎行男さんは、無音・環境音・生活音の入れ方が神レベル。
たとえば、まりなが階段を駆け下りる音や、チャッピーの首輪が揺れるカラカラ音だけで場面の緊張感を演出するなど、極端に「地味な音」を活かすスタイルです。そして編集は肥田文さん。
セリフの“間”の残し方、場面転換のタイミング、そしてあの“引きのラスト数秒”のゾクッとくる編集は、言わずもがな。こういった“画面に映らない仕事”が、視聴者の心の襞にダイレクトに刺さる要素を作っているのです。
まとめ|声と絵と構成が編む“心をかき乱す三位一体”
『タコピーの原罪』は、かわいらしいキャラデザインや耳に残るセリフの裏に、複雑で重いテーマを詰め込んだ異色作です。その根幹を支えているのが、キャストとスタッフの緻密な仕事ぶりでした。
声だけで“感情の破裂寸前”を表現する演技陣、目に見えない空気を描き出す美術と音響、そして“何も語らない時間”を魅せる構成。どのパートにも職人技が光り、「これって本当にアニメか…?」と戸惑うほどの完成度を誇ります。
心を温めるどころか、逆にぐちゃぐちゃにしてくる。だけど、それがなぜかクセになる。『タコピー』が忘れられない作品になる理由は、まさにこの“三位一体”の連携にあったのです。
この記事のまとめ
- タコピー役・間宮くるみの“無垢で怖い”演技力の魅力
- しずかやまりなの声に込められたキャラ心理の深み
- 飯野慎也監督が描く“善意の暴走”の脚本構造
- 長原圭太が手がけた“かわいさと不穏”の絶妙バランス
- 音楽や音響、美術まで含めたチームワークの結晶
- 視聴後にじわじわ効いてくる“心をかき乱す演出”の正体
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